説明

水位測定装置

【課題】フィルタの適用により求めた水位が実際の液面水位に収束するまでの時間を短縮させる。
【解決手段】車両に搭載の液体タンクに取り付けた水位計から読み込んだ液体の水位に対して、時定数τ1を有するフィルタを適用してフィルタ値を演算した後、最終的な水位としてこのフィルタ値を出力する水位測定装置において、その車両が停止しているか否かを判定し(S11)、停止していると判定された場合には、その液体の液面が安定しているか否かを判定し(S12)、その液面が安定している場合には、フィルタの時定数τ1をより小さな時定数τ2に切り替える(S13)。一方、液面が安定していないと判定された場合であっても、車両が停止していると判定されてから第2の所定時間T2が経過した後には(S14)、液面は安定しているとみなしてフィルタの時定数τ1をτ2に切り替える(S13)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体タンクに貯蔵される液体の水位を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液体タンクに貯蔵される液体の水位を測定する水位測定装置として、特開2008−82725号公報(特許文献1)に記載されるように、水位計で測定した水位に対して1秒より大きな時定数のフィルタを適用して演算したフィルタ値を、水位として出力する技術が提案されている。これにより、液面の揺れを平滑化し、液揺れの影響を受け難くして水位測定精度の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−82725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液揺れの影響を低減する時定数を有するフィルタを適用すると、例えば、液体タンクを搭載した車両が停止した後、タンク内の液面の揺れが落ち着いてきても、出力される水位が、実際の液面の水位に収束するまでに時間を必要としてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、出力される水位が実際の液面水位に収束するまでの時間を短縮させた水位測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明に係る水位測定装置は、液体タンクに貯蔵される液体の水位を測定する水位計と、水位計により測定された水位に対して、所定時定数を有するフィルタを適用したフィルタ値を演算するフィルタ手段と、フィルタ手段により演算されたフィルタ値を水位として出力する出力手段と、液体タンクに貯蔵された液体の液面が安定しているか否かを判定する第1の判定手段と、液面が安定していると判定された場合に、フィルタの所定時定数をより小さな値に切り替える時定数切替手段と、を含んで構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水位計で測定した水位に対して、液揺れの影響を低減する所定時定数を有するフィルタを適用していても、液面が安定していると判定された場合には、フィルタの所定時定数をより小さな値に自動的に切り替えるので、出力される水位が実際の液面の水位に収束するまでの時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を適用した排気浄化装置の全体構成図
【図2】第1の制御プログラムの実施形態を示すフローチャート
【図3】第2の制御プログラムの実施形態を示すフローチャート
【図4】時定数を切り替えない場合の出力水位を示す説明図
【図5】時定数を切り替えた場合の出力水位を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付された図面を参照して本発明を詳述する。
【0010】
図1は、本発明を適用した排気浄化装置の全体構成を示す。
【0011】
エンジン10の排気マニホールド12に接続される排気管14には、排気流通方向に沿って、一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)へと酸化させる窒素酸化触媒16と、還元剤前駆体としての尿素水溶液を噴射供給する噴射ノズル18と、尿素水溶液を加水分解して得られるアンモニアを使用して窒素酸化物(NOx)を還元浄化するNOx還元触媒20と、NOx還元触媒20を通過したアンモニアを酸化させるアンモニア酸化触媒22と、が夫々配設される。
【0012】
還元剤タンク24(液体タンク)に貯蔵される尿素水溶液は、その底部で吸込口が開口すると共に、尿素水溶液を吸い込んで圧送するポンプモジュール26及び尿素水溶液の噴射流量(供給流量)を制御する流量制御弁を内蔵した添加モジュール28が介装された供給配管30を介して、噴射ノズル18に供給される。また、還元剤タンク24には、尿素水溶液の水位L0を測定する水位計32が取り付けられる。水位計32としては、例えば、還元剤タンク24の天壁から底壁に向けて、横断面が円環形状をなす内側電極及び外側電極が同心に垂下され、両電極間の静電容量変化から水位L0を測定する静電容量式、フロート式、光学式などの公知の各種水位計を利用することができる。
【0013】
一方、窒素酸化触媒16と噴射ノズル18との間に位置する排気管14には、エンジン運転状態としての排気温度Teを測定する排気温度センサ34が取り付けられる。水位計32及び排気温度センサ34の各出力信号は、コンピュータを内蔵した還元剤添加コントロールユニット(以下「還元剤添加ECU」という)36に入力される。また、還元剤添加ECU36には、エンジン10の各種制御を行うエンジンコントロールユニット(以下「エンジンECU」という)38から、CAN(Controller Area Network)などのネットワークを介して、エンジン回転速度及び負荷などのエンジン運転状態や車速情報が入力される。そして、還元剤添加ECU36は、そのROM(Read Only Memory)などに記憶された第1の制御プログラムを実行することで、尿素水溶液の水位Lを測定するためのフィルタ手段及び出力手段を、第2の制御プログラムを実行することで、第1の判定手段、時定数切替手段、停車判定手段及び第2の判定手段を、夫々具現化する。なお、還元剤添加ECU36は、尿素水溶液の水位測定処理に加え、エンジン運転状態に応じて、ポンプモジュール26及び添加モジュール28を電子制御する。
【0014】
かかる排気浄化装置において、エンジン運転状態に応じて噴射ノズル18から噴射供給された尿素水溶液は、排気熱及び排気中の水蒸気を利用して加水分解され、アンモニアへと転化される。転化されたアンモニアは、NOx還元触媒20において排気中のNOxと還元反応し、水(H2O)及び窒素(N2)へと転化される。このとき、NOx還元触媒20におけるNOx浄化率を向上させるべく、窒素酸化触媒16においてNOがNO2へと酸化され、排気中のNOとNO2との比率が還元反応に適したものに改善される。一方、NOx還元触媒20を通過したアンモニアは、その排気下流に配設されたアンモニア酸化触媒22により酸化されるので、アンモニアがそのまま大気中に放出されることが防止される。
【0015】
図2は還元剤添加ECU36において所定時間t1(サンプリング時間)ごとに繰り返し実行される、第1の制御プログラムを示す。
【0016】
ステップ1(図では「S1」と略記する。以下同様)では、水位計32から水位L0を読み込む。
【0017】
ステップ2では、水位L0に対して、所定時定数τ1を有するフィルタを適用したフィルタ値F1を演算する。ここで、所定時定数τ1は、例えば数百秒といった、液揺れの影響を低減する1秒より大きな時定数である。フィルタ値F1は、例えば、「F1=(L0×t1/τ1)+(F1×(1−t1/τ1))」なる式により、前回演算されたフィルタ値F1(前回値)を用いて演算される。
【0018】
ステップ3では、最終的な水位Lとして、フィルタ値F1を出力する。
【0019】
次に、図3は還元剤添加ECU36において所定時間t2ごとに繰り返し実行される、第2の制御プログラムを示す。なお、t2はt1と等しい時間であってもよい。
【0020】
ステップ11では、車両が停止しているか否かを判定する。「車両が停止している」状態とは、車速が0となっている状態をいい、かかる判定は、還元剤添加ECU36に入力される車速情報に基づいて行うことができる。そして、車両が停止していると判定された場合には、ステップ12へと進む一方(Yes)、車両が停止しておらず走行中であると判定された場合には、ステップ15へ進む(No)。なお、車両が停車しているか否かに関わらず液面が安定しているか否かにより、後述のフィルタ時定数の切り替えを行う場合には、本ステップを省略してもよい。本ステップの省略により、還元剤添加ECU36の処理速度を向上させることもできる。
【0021】
ステップ12では、液体タンク24に貯蔵された液面が安定しているか否かを判定する。かかる判定は、フィルタ値F1の変動が所定範囲内にある状態が第1の所定時間T1だけ連続するという条件を満足するか否かにより行う。「フィルタ値F1の変動が所定範囲内にある」場合としては、例えば、前記の第1の制御プログラムにおいて演算されたフィルタ値F1の変化率の絶対値が所定値αより小さい状態となる場合や、同じくフィルタ値F1の刻々変化する最高値と最小値の幅が所定範囲β内に収まる状態となる場合などがある。ここで、所定値αや所定範囲βは、後述のようにフィルタ時定数を切り替えた場合であっても、十分安定した液面の水位Lを出力し得るようなフィルタ値の変化率や変位量を示す値であり、第1の所定時間T1は、このような安定した液面の水位Lが持続すると判断できるのに十分な時間である。そして、前記条件を満たす場合には、ステップ13へと進む一方(Yes)、前記条件を満たさない場合には、ステップ14へと進む(No)。
【0022】
ステップ13では、フィルタの所定時定数τ1をより小さい時定数τ2に切り替える。時定数τ2は、例えば数百ミリ秒といった、水位Lの収束を考慮した1秒より小さい値である。なお、第1の制御プログラムにおいて、時定数切り替え後最初に演算されるフィルタ値F2は、切り替え以前に水位計32により最後に測定された水位L0を前回値として算出される。このため、最初に演算されるフィルタ値F2、すなわち出力される水位Lは、その実測水位L0と等しい値となる。
【0023】
ステップ14では、ステップ11において車両が停止していると初めて判定されたときから、第2の所定時間T2だけ経過しているか否かを判定する。ここで、第2の所定時間T2は、車両が停止してから、液面の揺れが収まっていると推定される時間であり、何らかの原因により一時的にステップ12の条件を満たさなかった場合であっても、一定時間経過後には液面が安定しているとみなして、確実にフィルタ時定数の切り替えを行う点において意義のある時間である。従って、第2の所定時間T2は、前述の第1の所定時間T1よりも長い時間である。そして、車両停止から第2の所定時間T2だけ経過している場合には(Yes)、ステップ13へと進む一方、車両停止から第2の所定時間T2が経過していない場合には(No)、ステップ15へと進む。なお、還元剤添加ECU36の処理速度を向上すべく、本ステップの判定は省略することもできる。この場合、ステップ12の条件を満たさない場合には(No)、直接ステップ15へ進む。
【0024】
ステップ15では、フィルタの所定時定数τ2をより大きい時定数τ1に切り替える。
【0025】
かかる水位測定装置によれば、水位計32で測定した水位L0に対して、第1の制御プログラムにおいて所定時定数τ1を適用していても、車両が停止し、かつ、液面が安定している場合には、より小さい時定数τ2に自動的に切り替わる。また、時定数切り替え後最初に演算されるフィルタ値F2は、切り替え以前に水位計32により最後に測定された水位L0を前回値として算出される。このため、図4に示すような時定数の切り替えのない場合と比べ、図5に示すように、出力される水位Lが実際の液面の水位L0に収束するまでの時間を短縮させることができる。
【0026】
なお、本発明は、排気浄化装置に限らず、例えば、燃料タンクに貯蔵される燃料の水位、化学プラントで使用する薬品の水位などを測定することにも適用可能である。この場合には、還元剤添加ECU36に代えて、コンピュータ又はこれを内蔵した各種コントロールユニットにおいて、制御プログラムを実行するようにすればよい。
【符号の説明】
【0027】
24 還元剤タンク
32 水位計
36 還元剤添加ECU36

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体タンクに貯蔵される液体の水位を測定する水位計と、
前記水位計により測定された水位に対して、所定時定数を有するフィルタを適用したフィルタ値を演算するフィルタ手段と、
前記フィルタ手段により演算されたフィルタ値を水位として出力する出力手段と、
前記液体タンクに貯蔵された液体の液面が安定しているか否かを判定する第1の判定手段と、
前記液面が安定していると判定された場合に、前記フィルタの所定時定数をより小さな値に切り替える時定数切替手段と、
を含んで構成されたことを特徴とする水位測定装置。
【請求項2】
前記第1の判定手段は、前記フィルタ値の変動が所定範囲内にある状態が第1の所定時間連続したときに、前記液面が安定していると判定することを特徴とする請求項1記載の水位測定装置。
【請求項3】
車両が停止しているか否かを判定する停車判定手段をさらに備え、
前記第1の判定手段は、前記停車判定手段により車両が停止していると判定され、かつ、前記フィルタ値の変動が所定範囲内にある状態が第1の所定時間連続したときに、前記液面が安定していると判定することを特徴とする請求項1記載の水位測定装置。
【請求項4】
車両が停止しているか否かを判定する停車判定手段と、
前記停車判定手段により車両が停止していると判定されてから第2の所定時間経過したときに、前記液面が安定していると判定する第2の判定手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の水位測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−127984(P2011−127984A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285954(P2009−285954)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】