説明

水処理システム及び水処理方法

【課題】スラグを含む燐除去濾材で被処理水に含まれる燐を除去するにおいて、燐の除去効率を高めた水処理装置及び水処理方法を提供する。
【解決手段】被処理水に含まれる燐を燐除去濾材に接触させて除去する水処理システムにおいて、被処理水と接触させる燐除去濾材がスラグを含んでおり、平均粒子径が0.1mm以下のスラグを用いた構成とする。この場合、前記平均粒子径のスラグを選択的に使用することで燐除去濾材が高い燐除去性能を発揮し、その結果、燐の排出基準値が引き下げられたとしても、それに対応することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システム及び水処理方法に関し、特に、被処理水に含まれる燐(リン)を燐除去濾材に接触させて除去する水処理システム及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下水や廃水などの排出基準値は、排出汚濁防止法や条例によって定められている。排出基準は、環境保護のため厳しさが増す傾向にあり、富栄養化原因の一つである燐についても例外でない。海外に目を向けても燐の排出基準が強化される傾向にあり、例えば大韓民国では全リン(T−P)濃度で0.2mg/lまで引き下げられる予定である。
【0003】
燐除去能力を発揮する濾材としては、例えば製鐵所等で副生されるスラグが知られている(例えば、特許文献1−4)。しかしながら、従来の方法では除去効率が十分でなく、厳しい排出基準値が設定された場合に実施できなくなる場合がある。
【0004】
さらに、従来の方法は、スラグの燐除去活性を高めるために被処理水に継続的にアルカリ溶液を添加している。このような被処理水への薬液添加は、環境保護の観点からは省略することが望まれる。しかしながら、従来の燐除去濾材では、アルカリの添加無くしては十分に燐を除去することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−262044号公報
【特許文献2】特開2006−341226号公報
【特許文献3】特開平9−242217号公報
【特許文献4】特開2002−86139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、スラグを含む燐除去濾材で被処理水に含まれる燐を除去するにおいて、燐の除去効率を高めた水処理装置及び水処理方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、被処理水への薬液添加を省略しても、安定して燐を除去することのできる水処理装置及び水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水処理システムは、被処理水に含まれる燐を燐除去濾材に接触させて除去する水処理システムにおいて、被処理水と接触させる燐除去濾材がスラグを含んでおり、前記スラグの平均粒子径が0.1mm以下であることを特徴とする。
【0009】
なお、「被処理水に含まれる燐」は、水に溶解している燐(リン)の化合物を意味しており、燐除去濾材によって除去することによって全リン濃度(T−P)が下がるものが含まれる。
【0010】
前記スラグは、高い燐除去活性を得るために、Feの含有率が10質量%〜40質量%の範囲内であることが好ましい。燐除去濾材は、燐の除去を続けていくと次第に活性が低下していく。そのため、水処理システムは、所定時間又は所定量の燐を除去した燐除去濾材の表面を洗浄するための酸性溶液を供給する手段と、酸洗浄後の燐除去濾材を活性化するためのアルカリ溶液を供給する手段と、を備えていることが好ましい。
【0011】
被処理水を燐除去濾材に接触させるための装置構成としては、例えば、スラグを粘土質系バインダーと混合し、平均粒子径0.3mm〜1.5mmの粒状に造粒し、焼成した燐除去濾材を、被処理水が通水される濾過装置に充填した濾過塔方式とすることができる。或いは、平均粒子径0.3mm以下の粒状に造粒し、焼成した燐除去濾材を被処理水に添加して撹拌する撹拌槽と、燐が除去された被処理水から燐除去濾材を分離回収する固液分離装置と、分離した燐除去濾材を新たな被処理水に再添加する手段と、を備えた構成とすることもできる。
【0012】
本発明の水処理方法は、スラグを含む燐除去濾材に被処理水を接触させて燐を除去する水処理方法において、前記スラグの平均粒子径が0.1mm以下であることを特徴とする。
【0013】
燐除去濾材は、燐の除去を続けていくと次第に活性が低下していく。そのため、所定時間又は所定量の燐を除去した燐除去濾材に酸性溶液を供給して表面を洗浄し、酸洗浄後の燐除去濾材をアルカリ溶液に浸漬させるか、又は熱処理して濾材活性化をすることが好ましい。
【0014】
環境保護に貢献しつつ、燐を除去するために、燐除去濾材の燐除去活性を高めるためのアルカリ溶液を被処理水に継続添加せずに燐の除去を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被処理水に含まれる燐をスラグを含む燐除去濾材に接触させて除去するにおいて、平均粒子径0.1mm以下のスラグを用いたことにより、スラグが高い燐除去活性を発揮する。従って、排出基準値(例えば、全リン濃度で0.2mg/l)に引き下げられたとしても、排出基準値を下回る濃度にまで燐を除去することが可能である。
【0016】
さらに本発明によれば、高い燐除去活性を発揮する濾材を用いているので、従来方法のようにスラグの活性を高めるためのアルカリ溶液を被処理水に継続添加しなくとも、安定した燐除去を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に従う水処理システムの全体構成を示す。
【図2】スラグの平均粒子径と燐の除去効率の相関関係を示すグラフである。
【図3】本発明の第2実施形態に従う水処理システムの全体構成を示す。
【図4】本発明の効果を確認するために行った試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態に従う水処理システム及び水処理方法について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、以下に説明する実施形態によって本発明の技術的範囲は何ら限定解釈されることはない。
【0019】
(第1実施形態)
第1実施形態に従う水処理システムについて、図1を参照しながら説明する。水処理システム1は、図1に示すように、被処理水の原水を貯留する原水槽2と、被処理水に含まれる固形分(特に、濁質)を除去する第1濾過装置3と、原水槽2にある被処理水を第1濾過装置3に供給する第1供給ポンプ31と、第1濾過装置3で濾過された被処理水(一次処理水)を貯留する一次処理水槽32と、被処理水に含まれる燐を除去する第2濾過装置4と、一次処理水槽32にある被処理水を第2濾過装置4に供給する第2供給ポンプ33と、第2濾過装置4で濾過された被処理水(二次処理水)を貯留する二次処理水槽41を備えている。各装置は、例えば配管などの流路を介して連結されており、バルブV1−V15の開閉によって通水流路の切り替えを行う構成である。
【0020】
水処理システム1で処理する原水は、例えば本システム1よりも上流の処理工程において生物的処理が行われた下水や廃水などである。一般的に、生物的処理が行われた原水の全リン濃度は、3〜10mg/l又はそれ以上である。但し、原水の種類が限定されることはなく、燐を含むすべての水を処理対象とすることができ、さらに原水中の全リン濃度も制限されない。ただ、原水のpHは5.8〜8.6程度の中性領域であることが好ましい。
【0021】
第1濾過装置3は、例えば上下に配管が接続された濾過塔34の内部に濾過砂を充填した装置を用いることができる。濾過塔34内には、例えば面内に多数の通水孔が形成された支持部材(例えば、目皿)35の上に濾過砂利などを充填して支持層36が形成され、この支持層36の上に濾過砂を充填して濾過砂層37が形成されている。原水槽2からの被処理水は、濾過塔34の上部から供給され、濾過砂層37及び支持層36を通過して濾過塔34の下部から排出される。他方、後述する逆洗を行う際には、被処理水の供給を中断し、洗浄水を濾過塔34の下部から供給して上部から排出する。なお、濾過砂層37の上にアンスラサイトを充填して、濾過砂層37とアンスラサイト層の2層濾過方式とすることもできる。
【0022】
第2濾過装置4は、例えば上下に配管が接続された濾過塔42A(42B)の内部に燐除去濾材を充填した装置を用いることができる。濾過塔42A(42B)内には、例えば面内に多数の通水孔が形成された支持部材(例えば、目皿)43A(43B)の上に濾過砂利などを充填して支持層44A(44B)が形成され、この支持層44A(44B)の上に燐除去濾材を充填して燐除去濾材層45A(45B)が形成されている。被処理水(一次処理水)は、濾過塔42A(42B)の上部から供給され、燐除去濾材層45A(45B)及び支持層44A(44B)を通過して濾過塔42A(42B)の下部から排出される。第2濾過装置4は、このように同一構成の2塔の濾過塔42A(42B)を並列配置した構成である。そして、バルブV12−V15の開閉によって通水する濾過塔42A(42B)を切り替えることができる。従って、連続運転を必要とする場合は、例えば予め決めた通水時間が経過する度に通水する濾過塔42A(42B)を切り替え、休止している濾過塔42A(42B)に対して後述する濾材の再活性化処理を行うように運転することができる。なお、必ずしも2塔方式にしなくともよく、1塔としてもよく、反対に3塔以上であってもよい。
【0023】
燐除去濾材は、平均粒子径0.1mm以下、好ましくは平均粒子径が0.04〜0.08mmの範囲内にあるスラグ(Slag)を粘土質系のバインダーと混合し、例えば平均粒子径が0.1〜1.5mmの範囲内となる粒状に造粒したものが好ましい。より好ましくは、造粒後に例えば600〜900℃で2時間程度焼成したものである。さらに好ましくは、スラグの平均粒子径が0.1mm以下であって、最大粒子径が0.1〜0.12mmである。粘土質系のバインダーは、例えばベントナイト,モンモリロナイトなどを用いることができる。スラグとバインダーの比率は、例えばスラグ:バインダー=50〜90%:10〜50%とすることができる。また、燐除去濾材は、空塔速度(SV)が3〜10hr−1となるように充填量を決めるのが好ましい。
【0024】
ここで、平均粒子径0.1mm以下のスラグを用いた理由について説明する。背景技術の欄でも述べたように、従来においてもスラグを燐除去濾材とすることが検討されてきたが、厳しい排水基準が設定された場合の適用可能性が懸念されていた。本発明者らは、鋭意研究の結果、図2の試験結果から明らかなように、平均粒子径が0.1mm以下のものを選択的に用いることによって燐の除去効率が飛躍的に向上することを突き止め、その結果、全リン(T−P)濃度0.2mg/l以下にまで燐を除去できる燐除去濾材の具現化に至ったのである。図2は、平均粒子径が異なるスラグを用いて、前述の方法で燐除去濾材を調製し、実際に被処理水を通水したときの燐除去率をそれぞれ示している。特許文献1−4などの従来技術は、平均粒子径が比較的大きいスラグを主体としており、特許文献1においては篩操作によって平均粒子径が0.15mm以下のものを予め除外することまで行っていた。そのため、平均粒子径が0.1mm以下のものを選択的に使用することにより、燐の除去効率が飛躍的に向上することを想到し得なかったのである。
【0025】
スラグを構成する各成分の比率は、以下に示す成分表の範囲内であることが好ましい。特に、Feを多く含んでいる方が燐の除去を良好に行うことができるので、Feの含有量が10〜40質量%の範囲内であることが好ましい。このようなスラグとしては、鉄鋼スラグが好ましく、その中でも高炉スラグが好適である。但し、前述した理由により、例えば篩操作又は粉砕することによって、平均粒子径0.1mm以下のスラグを選択的に使用する。なお、成分表中の「その他」は不純物である。
【0026】
【表1】

【0027】
説明を図1に戻し、水処理システム1は、さらに燐除去濾材の再活性化を行う手段を備えている。再活性化の方法は、従来方法とは異なり、先ず酸性溶液による濾材表面の洗浄を行い、その後にアルカリ溶液を供給して濾材を活性化させる。そのための手段として、洗浄液である酸性溶液を貯留する酸性溶液槽5と、酸性溶液を第2濾過装置4に供給する酸性溶液ポンプ51と、活性化溶液であるアルカリ溶液を貯留するアルカリ溶液槽52と、アルカリ溶液を第2濾過装置4に供給するアルカリ溶液ポンプ53を備えている。さらに、燐除去濾材を洗浄した後の酸性溶液を回収する洗浄液回収槽54を備えている。
【0028】
酸性溶液は、例えば0.01〜10質量%、好ましくは0.5〜2.0質量%の塩酸を用いることができる。その他、HSO,HNOなどを用いることもできる。また、アルカリ溶液は、例えばNaOHを用いることができる。なお、必ずしもアルカリ溶液による活性化を行わなくともよく、例えば酸洗浄後の濾材を濾過塔42A(42B)から取り出し、焼成することによって活性化するようにしてもよい。
【0029】
再活性化は、燐除去濾材の活性が低下し過ぎないように、予め決めた時間で周期的に行うことが好ましい。時間による方法以外にも、所定量の燐を除去する度に再活性化を行うようにしてもよく、或いは、二次処理水の全リン濃度が予め決めた上限値に達する度に再活性化を行うようにしてもよい。
【0030】
さらに水処理システム1は、固形分を捕捉して濾過抵抗が次第に増加する第1濾過装置3を洗浄(逆洗)するために、一次処理水を洗浄水として第1濾過装置3に供給する第1逆洗ポンプ38、第1濾過装置3から排出される濁質を含んだ洗浄水を回収する逆洗排水槽39を備えている。また、第2濾過装置4の通水抵抗が増加した場合に、二次処理水を洗浄水として第2濾過装置4に供給する第2逆洗ポンプ46を備えており、第2濾過装置4から排出される洗浄水も逆洗排水槽39で回収する。逆洗は、通水抵抗が増加し過ぎないように、予め決めた時間で周期的に行うことが好ましい。その他にも、圧力センサーで通水抵抗を測定し、通水抵抗が予め決めた上限値に達する度に逆洗を行うようにしてもよい。
【0031】
各装置を連結する流路(例えば、配管)の途中に配置されているバルブV1−V15は、各工程における通水経路を切り替えるために、手動又は自動で開閉制御される。バルブV1−V4は、第1濾過装置3に被処理水を通水して濾過するプロセス工程と、第1濾過装置3を逆洗する洗浄工程との切り替えを行う。バルブV5−V11は、第2濾過装置4に一次処理水を通水して濾過するプロセス工程と、濾材を再活性化する工程と、第2濾過装置4を逆洗する洗浄工程の切り替えを行う。バルブV12−V15は、濾過塔42Aと濾過塔42Bとの通水の切り替えを行う。
【0032】
本実施形態の水処理システム1は、環境保護の観点から被処理水への薬液添加は原則として行わない。しかし、原水のpHが放流基準値を外れる場合には、第2濾過装置4の手前で酸性溶液又はアルカリ溶液を添加して中和するようにする。pHの調整範囲は、例えば5.8〜8.6の中性領域とする。そのための手段として、被処理水を中和するための酸性溶液及び/又はアルカリ溶液を貯留する中和液槽6と、中和液槽6にある中和液を被処理水に添加する中和ポンプ61を備えている。そして、配管の途中、又は二次処理水槽41から被処理水をサンプリングしてpHを測定し、pHの測定結果に基づいて中和液を添加する。なお、作図の便宜上、一組みの中和液槽6と中和ポンプ61を記載しているが、酸性溶液とアルカリ溶液の両方を用いてpH調整をする場合には、それぞれ別個の槽とポンプを備えるようにする。
【0033】
続いて、上述の水処理システム1で燐を除去する処理方法について説明する。
先ず、燐を除去するプロセス工程においては、原水槽2にある被処理水を第1供給ポンプ31によって第1濾過装置3に供給し、固形分(所謂、SS分)を濾過分離して一次処理水槽32に貯留する。さらに、一次処理水槽32にある被処理水を第2供給ポンプ33によって第2濾過装置4に送液するが、被処理水のpHによっては中和ポンプ61を稼働させてpH調整を行う。
【0034】
第2濾過装置4に供給された被処理水は、燐除去濾材層45A(45B)を通過する際に燐が濾過分離され、二次処理水槽41に貯留される。二次処理水槽41にある被処理水は、ポンプ(不図示)などによって下流の工程に送液されるか、或いは放流される。なお、燐の除去のメカニズムを簡単に説明しておくと、被処理水中の燐成分とスラグ表面とが接触したときに燐成分とスラグ表面とが反応して、燐成分が化学的にスラグ表面に捕捉される。このように化学的に濾過分離が行われるため、燐の除去を続けていくとスラグ表面が燐の反応物で覆われていき、有効表面積の減少に伴い活性が低下することになる。物理的な洗浄で取り除くことは難しい。従って、周期的に以下の再活性化を行う。
【0035】
再活性化は、被処理水の供給を中断して行う。従って第2濾過装置4を2塔方式とし、一方の濾過塔42A(42B)で被処理水を処理しつつ、他方の濾過塔42B(42A)に対して再活性化を行うようにし、プロセス工程を中断しないことが好ましい。再活性化は、先ず、洗浄液である酸性溶液を酸性溶液ポンプ51によって濾過塔42A(42B)に供給し、濾過塔42A(42B)から排出される洗浄液を洗浄液回収槽54で回収する。酸性溶液は、濾過塔42A(42B)内のpHが1以下となる濃度及び流量で供給することが好ましい。また、酸性溶液による洗浄時間は、例えば10〜30分とすることができる。
【0036】
このように、先ず酸性溶液で洗浄することによって、スラグ表面にある燐の反応物を除去することができ、スラグの有効表面が現れることによって活性が回復する。有効表面積が回復すればそのまま再使用することも可能ではあるが、より確実な再活性化のために、燐除去濾材をアルカリ溶液に浸漬させる処理を行う。アルカリ溶液は、酸性溶液の供給を停止した後、アルカリ溶液ポンプ53によって供給する。そして、例えばpH11〜14の液中に燐除去濾材が浸漬する状態を形成し、この状態を例えば12時間以上維持することによって活性化させる。
【0037】
アルカリ溶液による活性化は長時間を要する場合がある。そのため、アルカリ溶液による活性化に代えて、焼成による活性化を行うようにしてもよい。この場合、濾過塔42A(42B)から燐除去濾材を取り出し、例えば600〜900℃で2時間程度焼成する。
【0038】
なお酸性溶液による洗浄は、スラグ表面にある燐の反応物を除去でき、また、洗浄排水に含まれる燐を抽出すれば、捕捉した燐を有効活用できる特長がある。その反面、酸洗浄することによってスラグの粒子径が次第に小さくなっていくことが懸念される。よって、酸洗浄の回数が多数回に及んだ場合は、燐除去濾材を交換することが好ましい。使用後の燐除去濾材は、土壌改良剤、農業用肥料などとして再利用することができる。
【0039】
また、第1濾過装置3の通水抵抗が上昇した場合、第1供給ポンプ31を停止し、バルブV1−V4の開閉によってプロセス工程から洗浄工程へラインの切り替えを行う。そして第1逆洗ポンプ38によって洗浄水を濾過塔34の下部から供給し、濾過砂を洗浄する。濾過塔34の上部から排出される洗浄排水は、逆洗排水槽39に回収される。第2濾過装置4の通水抵抗が上昇した場合にも、同様にして逆洗を行う。
【0040】
上述の実施形態によれば、平均粒子径0.1mm以下のスラグを粘土質系のバインダーと混合し、粒状に造粒した燐除去濾材を用いたことにより、スラグが高い燐除去活性を発揮する。その活性は、排出基準値(例えば、全リン濃度で0.2mg/l)に引き下げられたとしても、排出基準値を下回る濃度にまで燐を除去できるほどに高活性である。
【0041】
さらに上述の実施形態によれば、高い燐除去活性を発揮する燐除去濾材を用いたことにより、従来方法のように燐除去濾材の活性を高めるためのアルカリ溶液を被処理水に継続添加しなくともよく、環境保護に貢献しつつ安定した燐除去を行うことが可能である。
【0042】
さらに上述の実施形態によれば、燐除去濾材の再活性化において、先ず酸性溶液による洗浄を行うようにしたことにより、スラグ表面にある燐の反応物を除去することができ、スラグの有効表面を出現させることによって活性を回復させることができる。さらに、酸洗浄の洗浄排水に含まれる燐を抽出すれば、捕捉した燐を有効活用することも可能となる。
【0043】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に従う水処理システムについて、図3を参照しながら説明する。上述の第1実施形態は、被処理水が通水される濾過塔方式の装置構成であったが、本実施形態に従う水処理システムは、被処理水に燐除去濾材を添加して撹拌する撹拌槽方式の装置構成である。
【0044】
水処理システム100は、一端側に被処理水の供給口71、他端側に排出口72を有する撹拌槽7を備えている。撹拌槽7は、仕切壁73によって複数の領域に区画されており、一端側から順に、濾材添加領域を兼ねた第1撹拌領域74、第2撹拌領域75、濾材回収領域76を形成している。原水槽2にある被処理水は、供給ポンプ31によって供給口71に連続的に供給され、各領域(74→75→76)を通過して排出口72から排出される。なお、必ずしも仕切壁73によって各領域74〜76を形成しなくともよく、各領域74〜76をそれぞれ独立した槽で形成するようにしてもよい。
【0045】
濾材添加領域を兼ねた第1撹拌領域74は、燐除去濾材を被処理水に添加する領域であると共に、燐除去濾材が添加された被処理水を撹拌する領域であり、例えば、駆動モータによって回転される撹拌羽根を備えた撹拌装置74aが配置されている。第2撹拌領域75も、燐除去濾材が添加された被処理水を撹拌する領域であり、例えば、駆動モータによって回転される撹拌羽根を備えた撹拌装置75aが配置されている。第1及び第2撹拌領域74,75が、実質的に燐の除去を行う領域であり、この領域内で燐除去濾材を均一に分散させることによって、燐成分とスラグ表面の反応を促進させる。従って、第1及び第2撹拌領域74,75の容積や被処理水の供給流量などは、燐が所定の目標値以下まで分解できる滞留時間となるように設計されている。供給流量は、流量計31aの検出結果に基づいて調節する。なお、燐が所定の目標値以下まで分解できるのであれば第1撹拌領域75のみとしてもよく、反対に撹拌領域の数を増やすようにしてもよい。
【0046】
濾材回収領域76は、被処理水から燐除去濾材を分離するための領域である。図3には、一例として被処理水と濾材の比重差を利用して固液分離する沈降分離槽を示している。沈降分離槽の底部には、燐除去濾材を含むスラリー液を底部から抜き出すための濾材回収ポンプ8が接続されている。一方、沈降分離槽の上部側に排出口72が接続されており、燐除去濾材を含まない清澄水がオーバーフローして排出される。但し、濾材回収領域76は、被処理水から燐除去濾材を分離回収できればよく、他の固液分離装置に置き換えることも可能である。他の固液分離装置としては、例えばデカンタなどの遠心分離装置や濾過装置などが一例として挙げられる。
【0047】
濾材回収ポンプ8は、配管などの流路を介してサイクロン81と接続されており、燐除去濾材を含むスラリー液をサイクロン81に供給する。濾材回収ポンプ8は、濾材回収領域76の液面を制御するために、例えば液面計76aの検出結果に基づいてON−OFF制御する。サイクロン81は、スラリー液から燐除去濾材を分離して回収槽82に供給すると共に、分離水を配管などの流路を介して濾材添加領域を兼ねた第1撹拌領域74に戻す。回収槽82内の燐除去濾材は、再び濾材添加領域を兼ねた第1撹拌領域74に添加され、これにより燐除去濾材を循環使用する。なお、バルブ8aは、第1撹拌領域74及び第2撹拌領域75の底部に濾材が堆積した場合に開閉して、濾材回収ポンプ8の液流を利用して堆積している濾材を舞上げるのに使用する。
【0048】
但し、燐を除去することで次第に燐除去濾材の活性が低下するので、回収槽82内にある燐除去濾材の一部を周期的又は連続的に抜き出して再活性化の処理を行う。再活性化は、既述したように、先ず燐除去濾材を酸性溶液で洗浄し、次にアルカリ溶液に浸漬させるか、或いは焼成を行う。再活性化された燐除去濾材は、例えばホッパーなどの濾材添加装置83によって濾材添加領域を兼ねた第1撹拌領域74に添加する。燐除去濾材の新規補充もこの濾材添加装置83によって行う。濾材添加装置83は、例えば水分を除去するドライエアーユニット84を介して供給するコンプレッサーエアー(圧縮エアー)を駆動力として濾材を供給する構成である。
【0049】
本実施形態で使用する燐除去濾材は、例えば造粒後の平均粒子径が0.1〜0.3mmの範囲内となる粒状のものを用いるのが好ましい。但し、これに限定はされず、第1実施形態と同様のものを使用してもよく、造粒をしないで平均粒子径0.1mm以下のスラグをそのまま使用してもよい。平均粒子径0.1mm以下のスラグをそのまま使用する場合も、焼成した方が燐の除去効率が安定する。
【0050】
このような実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、濾過塔方式との比較において、本実施形態には、接触面積の増加により、反応速度と反応効率を向上するという利点がある。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
続いて、本発明の効果を確認するために行った実施例1について説明する。本例は、第1実施形態の濾過塔方式に対応するものであり、濾過カラム(φ75mm,高さ1000mm)に燐除去濾材を充填し、原水を通水して燐を除去した実施例1である。より詳しくは、層厚が700mmとなるように濾過カラム内に燐除去濾材を充填し、全リン濃度が10mg/lの原水を、SV=10hr−1となるように通水した。
【0052】
実施例1の結果を表2に示す。表2の結果から明らかなように、95%以上という高い除去率が達成され、目標値(0.2mg/l)以下まで燐を除去できることが確認できた。
【表2】

【0053】
(実施例2)
本例は、パイロットプラントを用いたスケールアップ試験である。より詳しくは、濾過塔(φ850mm,高さ2500mm)内に、層厚が800mmとなるように燐除去濾材を充填し、全リン濃度が3mg/lの被処理水を、SV=5hr−1となるように通水した。
【0054】
実施例2の結果を表3に示す。表3の結果から明らかなように、97%以上という高い除去率が達成され、目標値(0.2mg/l)以下まで燐を除去できることが確認できた。
【表3】

【0055】
(実施例3)
本例は、第2実施形態の撹拌槽方式に対応するものであり、サイズがL1580mm×D1440mm×H3080mmの撹拌槽7を用い、経時的に燐の濃度を測定し、除去率を算出した。試験1−3は、原水に対する濾材の割合を約0.7質量%に設定した。試験4−5は、原水に対する濾材の割合を約0.3質量%に設定した。その他の詳しい試験条件及び試験結果については、図4に示す。
【0056】
図4の試験結果から明らかな通り、いずれの試験においても90%を超える除去率を達成しており、目標値(0.2mg/l)以下にまで燐を除去することができた。今回の試験では、原水の燐濃度を約3mg/lに設定しているが、それ以上又はそれ以下の濃度の原水にも通水速度、ろ材の添加量又は攪拌槽内でのろ材と原水の接触時間を調整することにより対応することが可能である。また、試験4−5の結果に基づけば、原水に対する濾材の割合を約0.3質量%にしても高い除去率を達成できており、濾材の使用量を節約できる利点も確認できた。
【0057】
以上、本発明を具体的な実施形態に則して詳細に説明したが、形式や細部についての種々の置換、変形、変更等が、特許請求の範囲の記載により規定されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることが可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。従って、本発明の範囲は、前述の実施形態及び添付図面に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものに基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0058】
1 水処理システム
2 原水槽
3 第1濾過装置
4 第2濾過装置
42A,42B 濾過塔
45A,45B 燐除去濾材層
5 酸性溶液(洗浄液)槽
51 酸性溶液ポンプ
52 アルカリ溶液(再活性化溶液)槽
53 アルカリ溶液ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に含まれる燐を燐除去濾材に接触させて除去する水処理システムにおいて、
被処理水と接触させる燐除去濾材がスラグを含んでおり、前記スラグの平均粒子径が0.1mm以下であることを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
前記スラグは、Feの含有率が10質量%〜40質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記水処理システムは、所定時間又は所定量の燐を除去した燐除去濾材の表面を洗浄するための酸性溶液を供給する手段と、酸洗浄後の燐除去濾材を活性化するためのアルカリ溶液を供給する手段と、を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記燐除去濾材は、前記スラグを粘土質系バインダーと混合し、平均粒子径0.3mm〜1.5mmの粒状に造粒し、焼成したものであり、被処理水が通水される濾過装置に充填されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記燐除去濾材は、前記スラグを粘土質系バインダーと混合し、平均粒子径0.3mm以下の粒状に造粒し、焼成したものであり、
前記水処理システムは、前記燐除去濾材を被処理水に添加して撹拌する撹拌槽と、燐が除去された被処理水から燐除去濾材を分離回収する固液分離装置と、分離した燐除去濾材を新たな被処理水に再添加する手段と、を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項6】
スラグを含む燐除去濾材に被処理水を接触させて燐を除去する水処理方法において、
前記スラグの平均粒子径が0.1mm以下であることを特徴とする水処理方法。
【請求項7】
所定時間又は所定量の燐を除去した濾材に酸性溶液を供給して表面を洗浄し、酸洗浄後の燐除去濾材をアルカリ溶液に浸漬させるか、又は熱処理して濾材活性化をすることを特徴とする請求項6に記載の水処理方法。
【請求項8】
燐除去濾材の活性を高めるためのアルカリ溶液を被処理水に添加せずに燐の除去を行うことを特徴とする請求項6又は7に記載の水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−10061(P2013−10061A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143063(P2011−143063)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【特許番号】特許第5020397号(P5020397)
【特許公報発行日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(391023415)株式会社アサカ理研 (6)
【Fターム(参考)】