説明

水処理方法及びその装置

【課題】 担体の磨耗が少なく、かつ担体の活性を高く保持して、安定した処理性能を維持することができる水処理方法及びその装置を提供する。
【解決手段】 微生物を包括固定化した粒状の担体16を流動させ、被処理水12と担体とを接触させることにより被処理水12中の有害成分を生物学的に処理して除去する反応槽10と、反応槽10から担体16の一部を引抜くポンプ25と、引抜いた担体16を保管する担体保管タンク26と、保管された担体16を反応槽10に投入する開閉弁30を備える。反応槽10に流入する被処理水12の有害成分を検出計36で検出し、制御器38では有害成分の負荷に応じて担体の引抜きと投入を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水処理方法及びその装置に係り、特に微生物を固定化した粒状の担体を用いて被処理水中の有害成分を生物学的に処理して除去する水処理方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
閉鎖系水域における富栄養化の問題に対処するために、流入廃水中の窒素を除去することが強く望まれている。窒素は主にアンモニア性窒素の形態で下水や各種産業廃水に含まれる。廃水中のアンモニア性窒素を除去する方法としては、生物学的な方法が一般に採用されている。この方法は硝化細菌を用いてアンモニア性窒素を亜硝酸や硝酸に酸化し、次に脱窒細菌を用いて亜硝酸や硝酸を窒素ガスに変換して除去する。
【0003】
硝化細菌は増殖速度が遅いため、安定した窒素除去を行うためには、硝化反応槽では窒素の負荷が0.2〜0.4kg-窒素/m/日の範囲の低負荷運転を行う必要があり、硝化反応槽の大型化を招く。この対策として、硝化細菌を包括固定化した担体を硝化反応槽に投入して硝化細菌を高濃度に保持する方法が普及しつつある。この方法によれば硝化反応槽を小型化した高速処理が可能となる。
【0004】
硝化細菌ばかりでなく、有機物分解菌、環境ホルモン分解菌などを高濃度に保持して高速処理するために、これらの微生物を包括固定化した担体が実用規模で使用され、又は研究開発されている。この種の担体は通常は粒状に形成され、被処理水との接触効率を高めるために機械的に又は曝気によって被処理水と混合攪拌し、流動させた状態で使用する。担体の材料としては主に高分子ゲルが利用される(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3389811号公報
【特許文献2】特許第3514360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した担体は被処理水と激しく混合攪拌されるために長期間の運転によって徐々に磨耗する。特に高分子ゲルを用いて微生物を包括固定化した担体は磨耗が激しい。さらに、担体を低負荷の条件で長時間使用すると担体内の微生物が自己分解して減少し活性が低下する。その結果、微生物を高濃度に保持して高速処理するという本来の利点が減殺するという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を改善し、担体の磨耗が少なく、かつ担体の活性を高く保持して、安定した処理性能を維持することができる水処理方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る水処理方法は、微生物を包括固定化した粒状の担体が流動する反応槽に被処理水を供給し、前記流動する担体と被処理水とを接触させることにより前記被処理水中の有害成分を生物学的に処理して除去する水処理方法において、前記有害成分の負荷に応じて前記反応槽で流動させる担体量を制御することを特徴とする。
【0008】
上記方法において、前記有害成分の負荷が下限値以下であれば前記担体の一部を反応槽から引抜き、前記有害成分の負荷が上限値以上又は処理水の水質が基準値以上であれば前記引抜いた担体を反応槽に投入することが望ましい。前記有害成分が窒素成分である場合には、当該窒素成分の負荷の下限値を50mg-窒素/h/L-担体未満に設定することが望ましい。
【0009】
また、本発明に係る水処理装置は、微生物を包括固定化した粒状の担体を流動させ被処理水と担体とを接触させることにより被処理水中の有害成分を生物学的に処理して除去する反応槽と、前記有害成分の負荷に応じて前記反応槽内で流動させる担体量を調整する担体量調整手段とを具備したことを特徴とする。
【0010】
前記担体量調整手段が、前記反応槽から前記担体の一部を引抜く担体引抜き手段と、前記担体引抜き手段によって引抜いた担体を保管する担体保管手段と、前記担体保管手段に保管された担体を前記反応槽に投入する担体投入手段とによって構成されたことが望ましい。また、前記反応槽に流入する被処理水及び/又は反応槽から排出する処理水の水質をモニタリングするモニタリング手段を備え、前記モニタリング手段によるモニタリング結果に基づいて前記担体量調整手段を制御するようにしたことが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有害成分の負荷が低い時には、反応槽で流動させる担体量を少なくするように制御する。このため、流動させない担体はその期間中は空曝気や攪拌を受けず、担体の磨耗を少なくすることができる。また、反応槽では担体に対する有害成分の負荷が常に適正な範囲に保持されることになり、担体の活性を高く保持して安定な生物処理を継続させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る担体はモノマー材料やプレポリマー材料と微生物を混合し、この混合液を固化することによって得られる。固化する方法としては重合、イオン供給、結晶化などがよい。モノマー材料としてはアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、トリアクリルフォルマートなどがよい。プレポリマー材料としてはポリエチレングリコールジアクリレートやポリエチレングリコールメタアルリルレートがよく、その誘導体を用いることもできる。担体は球状、角型又は筒状などに成形され、大きさは球相当径として1〜10mmがよい。固定化する微生物濃度は、例えば硝化細菌の場合には硝化細菌数が10個/mL-担体以上であると活性が発現する。製造時の硝化細菌数を10個/mL-担体以上とすると、適正な馴養によって担体内部で10個/mL-担体以上に増殖する。
【0013】
固定化する微生物は活性汚泥、硝化細菌群、脱窒細菌群、嫌気性アンモニア酸化細菌群などの複合微生物、又は硝化細菌、脱窒細菌、嫌気性アンモニア酸化細菌、アオコ分解菌、PCB分解菌、ダイオキシン分解菌、環境ホルモン分解菌などの純粋菌などがある。
【0014】
このような担体を用いた基礎実験結果を以下に説明する。固定化する微生物として硝化細菌を用いた。すなわち、硝化細菌濃縮液(菌数10個/mL)30部、ポリエチレングリコールジアクリレート10部、テトラメチルエチレンジアミン0.5部、水59.25部を混合した懸濁液に重合剤として過硫酸カリウム0.25部を添加すると重合が始まり、ゲル化する。このゲルを1辺が3mmの立方体に切断し、基礎実験用の担体とした。
【0015】
実験1(磨耗特性実験)
反応槽壁面(コンクリート製や鋼板製)と担体との衝突による担体の磨耗を想定し、以下の加速実験を行った。すなわち、有効容積が2Lの攪拌機付き水槽の壁面に紙やすりを貼り付け、水2Lと担体200mLを投入した。攪拌機の回転数を60rpmとして攪拌し、担体の容積変化を調べた。図5に実験結果を示す。線Aで示したように担体の容積は日数の経過とともに直線的に減少している。これに対し50日〜100日までの間、担体を水槽から抜き取って保管し、100日目から再度、水槽に投入して同様に攪拌した結果を線Bで示す。この実験結果から、担体が長期間の攪拌によって磨耗し、徐々に減容すること、担体を抜き取り保管するとその分、磨耗が少なくなり、寿命を長くできることが判明した。
【0016】
実験2(空曝気実験)
馴養することによって硝化細菌が十分に増殖した担体(硝化細菌数10個/mL-担体)を栄養のない清水中で空曝気し、硝化細菌数の変化を調べた。比較のために担体を水切りした後に所定の温度で保管した場合についても調べた。図6に実験結果を示す。図6において線Cは空曝気した場合、線Dは20℃で保管した場合、線Eは5℃で保管した場合を示す。空曝気すると担体の硝化細菌数が半減期4日で減少する。これは、空曝気によって硝化細菌が自己分解したためである。一方、空曝気せずに保管すると菌数の減少は少なく、特に5℃で保管した場合には菌数はほとんど減少しない。
【0017】
実験3(担体内部での菌の増殖実験)
製造直後の担体(硝化細菌数10個/mL-担体)をアンモニア性窒素濃度100〜400mg/Lの原水に投入し、窒素成分負荷を10〜313mg-N/h/L-担体に変化させ、各負荷における培養1ヶ月後の硝化細菌の増殖状況を調べた。図7に実験結果を示す。窒素成分負荷が10又は21mg-N/h/L-担体と低い場合には、硝化細菌数はほとんど増殖しない。担体として活性が発現する硝化細菌数10個/mL-担体以上にするためには窒素成分負荷を33mg-N/h/L-担体以上、好ましくは50mg-N/h/L-担体程度に保持すべきであることが判る。
【0018】
本発明は上述の基礎実験結果に基づいて成されたものである。図1は本発明の第1実施形態を示す装置系統図である。反応槽10は被処理水12の流入口と処理水14の排出口15を有する。また、反応槽10内には微生物を包括固定化した粒状の担体16が投入されている。担体16の投入総量は反応槽10の有効容積に対して5〜25%程度とする。固定化した微生物が硝化細菌などの好気性微生物である場合には、反応槽10の底部に配設した散気手段18にブロワ20から空気を送り込み、反応槽10内を曝気する。この曝気エネルギによって、担体16が流動して流入した被処理水12と担体16とが激しく混合接触する。その結果、被処理水12中の除去対象である有害成分が担体16に固定化された微生物と接触し、有害成分は微生物の生物学的な作用によって分解又は酸化し除去される。なお、固定化した微生物が脱窒細菌などの嫌気性微生物である場合には、散気手段18の代わりに攪拌機を用いるか又は不活性ガスを反応槽10内に吹き込むことによって担体16を流動させる。
【0019】
反応槽10の排出口15側にはスクリーン22が設けられ、このスクリーン22によって担体16と処理水14が分離される。反応槽10にはポンプ25を具備した担体引抜き管24が接続し、引抜き管24の他端は担体保管タンク26に接続している。担体保管タンク26を冷蔵設備内に配置し、5℃程度の環境下に置くことが望ましい。ポンプ25によって反応槽10から引抜かれた被処理水と担体16は担体保管タンク26の上部に送り込まれ、担体16は下方に沈降して保管される。担体16と分離した被処理水は溢流樋28を経て反応槽10に戻される。担体保管タンク26の底部には自動開閉弁30を具備した担体投入管32が接続し、担体投入管32の他端は反応槽10に接続している。
【0020】
被処理水の流入管34には被処理水中の有害成分濃度を検出する検出計36が配設されている。検出計36の検出値は制御器38に送信され、制御器38では、検出計36から送信された被処理水中の有害成分濃度の検出値に基づいて反応槽10における有害成分の負荷を算出する。また、反応槽10に投入されている担体量が判明している場合には、担体に対する有害成分の負荷をも算出する。そして、制御器38では算出したこれらの有害成分の負荷に応じて、担体引抜き手段であるポンプ25の駆動と、担体投入手段である自動開閉弁30の開閉を制御する。
【0021】
すなわち、有害成分の負荷が下限値以下であれば、制御器38はポンプ25を一時的に駆動させて、反応槽10に投入されている担体16の一部を反応槽10から引抜き、引抜いた担体16を担体保管タンク26に送り込む。担体保管タンク26では送り込まれた担体16を一時的に保管する。また、有害成分の負荷が上限値以上であれば自動開閉弁30を一時的に開とし、担体保管タンク26に保管された担体16の少なくとも一部を反応槽10に投入する。なお、担体16の1回分の引抜き量、投入量は全担体量の3〜5%程度とする。また、担体保管タンク26の容量には制限があるので、担体保管タンク26で保管する担体16の最大量を例えば全担体量の20〜40%程度に制限することが好ましい。有害成分の負荷が下限値と上限値との間であれば上記した担体16の引抜きと投入を行わずに現状の運転を継続する。
【0022】
この第1実施形態によれば、有害成分の負荷が下限値以下の時に、担体16の一部を反応槽10から引抜いて、担体保管タンク26で保管するようにした。このため、反応槽10では担体単位容積当たりの有害成分の負荷がその分、上昇し、空曝気や低負荷の状態を回避できる。このため、反応槽10における担体16の活性の低下を防止することができる。また、有害成分の負荷が上限値以上の時には、引抜いた担体16を反応槽10に戻すようにした。このため、反応槽10では担体単位容積当たりの有害成分の負荷が常に適正な範囲に保持されることになり、安定な生物処理を継続させることができる。また、担体保管タンク26に保管された担体16はその保管期間中は空曝気や攪拌を受けずに5℃程度の環境下に静置されるので、活性の低下や磨耗を受けない。このため、本実施形態の方法及び装置によれば担体の磨耗が少なく、かつ担体の活性を高く保持して、安定した処理性能を維持した水処理を実現することができる。なお、有害成分がアンモニア性窒素である場合には、当該窒素成分の負荷の下限値を30〜50mg-窒素/h/L-担体に設定することが望ましい。すなわち、図7に示したように、窒素成分の負荷が30〜50mg-窒素/h/L-担体の付近では担体16は硝化細菌数が10〜10個/mL-担体程度であり、活性が十分にある。この担体16を引抜き、保管することで、保管期間中に活性を高く維持できる。このため、反応槽10に再投入した時には、即座に活性を発揮することができる。
【0023】
図2は本発明の第2実施形態を示す装置系統図である。図2において図1と同一の符号を付した要素は、図1と同様の要素であり説明を省略する。この第2実施形態では、処理水の排出口15に処理水の水質をモニタリングする水質計40が配置され、水質計40の検出値が制御器38Aに送信される。制御器38Aでは検出計36から送信された被処理水中の有害成分濃度の検出値と、水質計40から送信された処理水の検出値に基づいて、担体引抜き手段であるポンプ25の駆動と、担体投入手段である自動開閉弁30の開閉を制御する。
【0024】
図3は当該実施形態での制御例を示すフローチャートである。まず、ステップS100では水質計40の検出値が制御器38Aに送信され、処理水の水質が適正(排水基準値以下)であれば次のステップS110に移る。また、処理水の水質が不適正(排水基準値以上)であれば反応槽10での担体量が不足していると判断し、制御器38Aでは反応槽10に担体を投入するように制御する(S120)。ステップS110では検出計36から送信された被処理水中の有害成分濃度の検出値に基づいて反応槽10における有害成分の負荷を算出する。また、反応槽10に収容されている担体量が判明している場合には、担体に対する有害成分の負荷をも算出する。そして、制御器38では算出したこれらの有害成分の負荷が下限値以下であれば、制御器38はポンプ25を一時的に駆動させて、反応槽10に収容されている担体16の一部を反応槽10から引抜き、引抜いた担体16を担体保管タンク26に送り込む(S130)。なお、担体16の1回分の引抜き量、投入量は前記第1実施形態と同様に全担体量の3〜5%程度とする。また、担体保管タンク26で保管する担体16の最大量も全担体量の20〜40%程度に制限する。したがって、保管した担体16が最大量に達している場合には、ステップS110において有害成分の負荷が下限値以下であっても引抜きは行わず、現状の運転を継続する。
【0025】
また、有害成分の負荷が下限値を越えていれば現状の運転を継続する。以降、同様の手順で数時間に1回の頻度で同様の制御を繰り返す。流入する被処理水の水質変動が激しい場合には、各時点の検出計36の検出値によって有害成分の負荷を算出すると、算出値も被処理水の水質変動に合わせて変動し、制御が不安定になる。したがって、有害成分の負荷を算出する際には、検出計36の検出値を所定の時間帯(例えば、制御間隔時間)で平均化した値を用いることが望ましい。
【0026】
この第2実施形態によれば、処理水14の水質をモニタリングして、当該水質が不適正(排水基準値以上)であれば反応槽10に担体を投入するようにしたので、処理水14の水質安定化を図ることができる。
【0027】
本発明は第1実施形態や第2実施形態に限定されない。例えば被処理水12や処理水14の水質のモニタリング及び制御器38や38Aの自動制御系を省略することが可能である。すなわち、被処理水12や処理水14の定期的なサンプリングによる水質検査の結果に基づき、運転員がマニュアルで担体引抜き手段や担体投入手段を操作する構成も本発明に含まれる。
【0028】
また、担体引抜き手段としては図1や図2に図示した渦巻き式などのポンプ25に替えてエアリフト式のポンプを採用してもよい。担体投入手段も図1や図2に図示した自動開閉弁30に替えて各種のポンプを採用してもよい。さらに、本発明に係る担体量調整手段は、第1、第2実施形態に示した担体引抜き手段と担体保管手段と担体投入手段とによって構成されたものに限定されない。
【0029】
図4は本発明の第3実施形態を示す装置系統図である。図4において図1と同一の符号を付した要素は、図1と同様の要素であり説明を省略する。反応槽10内には上端と下端が開放された仕切り壁42が設けられている。仕切り壁42で仕切られた左側の領域が担体量調整手段としての担体16の保管エリア44であり、この保管エリア44の左側面は急傾斜面とされている。また、仕切り壁42で仕切られた右側の領域が担体16の流動エリア45とされる。仕切り壁42の下端側には上下方向にスライドする開閉扉46が設けられている。図4は開閉扉46を締めた状態であり、流動エリア45で流動する担体16の一部が仕切り壁42の上端を乗り越えて保管エリア44に入り込み沈降することによって、担体16は保管エリア44の下部に一時的に保管される。開閉扉46を引き上げて開放すると、保管エリア44内に保管された担体16が流動エリア45に流れ込み、流動エリア45内の他の担体16と同様に流動して被処理の生物学的な処理に寄与する。
【0030】
保管エリア44内に保管された担体16は保管期間中には流動せず空曝気もされないので、磨耗せず、活性も低下しない。開閉扉46の開度又は開閉頻度を調整することにより、保管エリア44内に保管する担体16の量を調整することができる。換言すれば反応槽10内で流動させる担体量を調整することができる。したがって、有害成分の負荷に応じて反応槽10内で流動させる担体量を好適な量に制御することによって、担体の磨耗が少なくかつ担体の活性を高く保持して、安定した処理性能を維持することができる。
【実施例】
【0031】
実施例1
硝化細菌濃縮液(菌数10個/ml)50部、ポリエチレングリコールジアクリレート4部、アクリルアミド1部、テトラメチルエチレンジアミン0.5部、水44.25部を混合した懸濁液に重合剤として過硫酸カリウム0.25部を添加すると重合が始まり、ゲル化する。このゲルを1辺が3mmの立方体に切断し、実験用の担体とした。実験条件は以下のとおりである。
実験装置 図1に示したものと同様
被処理水 BOD約10mg/L、アンモニア性窒素32〜280mg/L
反応槽における被処理水の滞留時間 8時間
反応槽における担体の充填率 20%
担体に対する窒素負荷 20〜175mg-窒素/h/L-担体
上記した条件で連続処理した。被処理水の水質変動が大きく、当初は窒素負荷が120mg-窒素/h/L-担体で定常運転をしていたが、その後、窒素負荷が30mg-窒素/h/L-担体に低下した時点で担体の引抜きを開始した。担体総量に対して担体を40%引抜いた時点で引抜きを停止し、引抜いた担体を常温で保管した。その後、窒素負荷が100mg-窒素/h/L-担体を越えた時点で引抜いた担体の全量を反応槽に再投入した。このようにして、窒素負荷30mg-窒素/h/L-担体で担体を引抜き、窒素負荷100mg-窒素/h/L-担体で担体を再投入する運転を繰り返した。その結果、担体の磨耗率は年間2%であり、引抜き保管をしない場合の年間磨耗率3%に比べて、担体の磨耗率が著しく低下し、担体の磨耗に対する寿命が1.5倍に向上した。また、引抜き保管をしない場合では処理水のアンモニア窒素濃度が4〜24mg/Lの範囲で変動した。一方、担体の引抜き、再投入を行った場合には処理水のアンモニア窒素濃度が4〜8mg/Lであり、安定した処理水を得ることができた。
【0032】
実施例2
実施例1で用いた同一のものを実験用の担体とした。実験条件は以下のとおりである。
実験装置 図2に示したものと同様
被処理水 BOD約10mg/L、アンモニア性窒素124〜280mg/L
反応槽における被処理水の滞留時間 8時間
反応槽における担体の充填率 20%
担体に対する窒素負荷 78〜175mg-窒素/h/L-担体
(計画負荷 140mg-窒素/h/L-担体)
上記した条件で連続処理した。処理水のアンモニア性窒素濃度の判断基準を5mg/Lに設定し、5mg/L以下では担体の引抜きを開始した。担体総量に対して担体を40%引抜いた時点で引抜きを停止し、引抜いた担体を常温で保管した。また、アンモニア性窒素濃度が5mg/Lを越えると引抜いた担体の全量を反応槽に再投入した。このようにして、担体の引抜きと再投入を繰り返す運転を行った。その結果、担体の磨耗率は年間2%であり、引抜き保管をしない場合の年間磨耗率3%に比べて、担体の磨耗率が著しく低下し、担体の磨耗に対する寿命が1.5倍に向上した。
【0033】
実施例3
嫌気性アンモニア酸化細菌濃縮液(菌数10個/mL)34部、ポリエチレングリコールジアクリレート6部、テトラメチルエチレンジアミン0.5部、水59.25部を混合した懸濁液に重合剤として過硫酸カリウム0.25部を添加すると重合が始まり、ゲル化する。このゲルを1辺が3mmの立方体に切断し、実験用の担体とした。実験条件は以下のとおりである。
実験装置 図2に示したものと同様。ただし、散気手段による曝気を行わずに反応槽内を攪拌することによって、槽内を嫌気条件に維持して運転
被処理水 アンモニア性窒素300mg/L、亜硝酸性窒素260mg/L
反応槽における被処理水の滞留時間 4時間
反応槽における担体の充填率 15%
上記した条件で連続処理した。処理水の全窒素濃度の判断基準を80mg/Lに設定し、80mg/L以下では担体の引抜きを開始した。担体総量に対して担体を30%引抜いた時点で引抜きを停止し、引抜いた担体を5℃で保管した。また、全窒素濃度が100mg/Lを越えると引抜いた担体の全量を反応槽に再投入した。このようにして、担体の引抜きと再投入を繰り返す運転を行った。その結果、担体の磨耗率は年間4%であり、引抜き保管をしない場合の年間磨耗率6%に比べて、担体の磨耗率が著しく低下し、担体の磨耗に対する寿命が1.5倍に向上した。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態を示す装置系統図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す装置系統図である。
【図3】第2実施形態での制御例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第3実施形態を示す装置系統図である。
【図5】実験1の実験結果を示すグラフである。
【図6】実験2の実験結果を示すグラフである。
【図7】実験3の実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0035】
10………反応槽、12………被処理水、14………処理水、16………担体、18………散気手段、20………ブロワ、22………スクリーン、24………担体引抜き管、25………ポンプ、26………担体保管タンク、28………溢流樋、30………自動開閉弁、32………担体投入管、34………流入管、36………検出計、38,38A………制御器、40………水質計、42………仕切り壁、44………保管エリア、45………流動エリア、46………開閉扉。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を包括固定化した粒状の担体が流動する反応槽に被処理水を供給し、前記流動する担体と被処理水とを接触させることにより前記被処理水中の有害成分を生物学的に処理して除去する水処理方法において、前記有害成分の負荷に応じて前記反応槽で流動させる担体量を制御することを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
前記有害成分の負荷が下限値以下であれば前記担体の一部を反応槽から引抜き、前記有害成分の負荷が上限値以上又は処理水の水質が基準値以上であれば前記引抜いた担体を反応槽に投入することを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記有害成分が窒素成分であり、当該窒素成分の負荷の下限値が50mg-窒素/h/L-担体未満である請求項2に記載の水処理方法。
【請求項4】
微生物を包括固定化した粒状の担体を流動させ被処理水と担体とを接触させることにより被処理水中の有害成分を生物学的に処理して除去する反応槽と、前記有害成分の負荷に応じて前記反応槽内で流動させる担体量を調整する担体量調整手段とを具備したことを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
前記担体量調整手段が、前記反応槽から前記担体の一部を引抜く担体引抜き手段と、前記担体引抜き手段によって引抜いた担体を保管する担体保管手段と、前記担体保管手段に保管された担体を前記反応槽に投入する担体投入手段とによって構成されたことを特徴とする請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記反応槽に流入する被処理水及び/又は反応槽から排出する処理水の水質をモニタリングするモニタリング手段を備え、前記モニタリング手段によるモニタリング結果に基づいて前記担体量調整手段を制御するようにしたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−88047(P2006−88047A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277121(P2004−277121)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000005452)日立プラント建設株式会社 (1,767)
【Fターム(参考)】