説明

水処理方法及びそれに用いる水処理システム

【課題】被処理水中の、特にCODを著しく低減させ、CODが高い被処理水からも、次亜塩素酸の発生が充分に抑制され、安全で水質変動が極めて少ない安定した処理水を低コストで得ることができる水処理方法及びそれに用いる水処理システムを提供すること。
【解決手段】被処理水に対して、オゾンを供給するオゾン処理(1A)と、微生物により有機物を分解する生物処理(2)とを少なくとも行う水処理方法であって、オゾン処理(1A)において、オゾン注入率を一定範囲に制御し、オゾン処理(1A)の後に生物処理(2)を行うと共に、生物処理(2)による生物処理水を、オゾン処理(1A)に使用することによって、オゾン処理(1A)と生物処理(2)との間で循環処理を行うことを特徴とする水処理方法、及びそれに用いる水処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理方法及びそれに用いる水処理システムに関する。さらに詳しくは、例えば最終処分場浸出水や下水二次処理水といった廃水等の被処理水中の、特に化学的酸素要求量(以下、CODという)を著しく低減させ、次亜塩素酸の発生を充分に抑制し、安全で水質変動が極めて少ない安定した処理水を低コストで得ることが可能な水処理方法、及びそれに用いる水処理システムに関する。
【0002】
なお、本明細書において「水処理」とは「水浄化」を意味し、被処理水中のCODを低減させる操作に加え、被処理水を消毒、殺菌、脱色等する操作や、被処理水中の生物学的酸素要求量(以下、BODという)、難生物分解性物質、菌類等の低減や有機物の分解、透明度の改善等を行う操作も含む。
【背景技術】
【0003】
近年、水資源は有限なものであることから、廃水を浄化して再利用することの重要性が再認識されてきている。一方、上水道水源では微量汚染物質による汚染が問題となっており、従来の窒素やリンの除去を目的とした高度処理に加え、脱臭、脱色、殺菌、微量汚染物質の除去を目的とした処理方法の導入が検討されている。
【0004】
廃水処理には、一般に、活性汚泥法を代表とする生物処理法が適用される。しかしながら、該生物処理法はBODの低減効果は非常に高いものの、難生物分解性物質由来のCODを低減する効果は小さいため、高いCOD低減効果を得るには、別途処理が必要である。特に近年は、閉鎖性水域におけるCODが環境基準を達成していない箇所も多く、CODの低減が重要視されている。
【0005】
そこで、生物処理後のCODを低減するために、従来は活性炭処理が行われていたが、吸着後の活性炭を廃棄もしくは再生しなければならず、廃水処理の維持管理費が上昇するという問題があった。
【0006】
これに対して、前記活性炭処理の代わりにオゾンを利用してCODを低減する試みもなされている。オゾンを利用した場合には、活性炭処理を行った場合と比較してランニングコストを低くすることが可能である。しかしながら、オゾンは反応初期には速やかにCODを低減させることが可能であるものの、その処理効果には限界があり、通常廃水の30〜60%程度のCODを低減させた後は、オゾン注入率を増大させても、CODの低減効果は低下してしまう。したがって、オゾン処理は、目的とするCOD低減率が低い場合でなければ効果的ではない。しかも、一般にオゾン処理を行うと、難生物分解性物質が易生物分解性物質へと変換されてBODが増加してしまう。
【0007】
そこで、オゾン処理と前記生物処理とを併用し、廃水中のBODの増加を抑制しながらCODを低減させる方法が各種提案されている(例えば、特許文献1〜8参照)。
【0008】
しかしながら、生物処理において生物活性炭を用いる場合、CODが高い廃水を処理する際に生物活性炭の負荷が上昇し、CODの低減に伴って発生する汚泥量が多くなる。その結果、生物活性炭層が閉塞する危険性が高まって生物活性炭層の逆洗頻度が上昇し、水処理システムを満足に運転することができなくなる。
【0009】
また、オゾン処理において廃水に大量のオゾンを注入すると、ランニングコストが上昇するだけでなく、オゾンは被酸化性物質の酸化に利用されると共に、廃水中の塩素イオンと反応してしまうため、オゾンの注入量に比例して次亜塩素酸の発生量が増加する。発生した次亜塩素酸は、次の生物処理において生物を死滅させてしまうため、期待されるCOD低減効果が得られないといった悪影響が現れる。またオゾン処理水を次工程で利用しない場合には、高濃度の次亜塩素酸を含んでいるため、次亜塩素酸を分解した後に放流しなければならない。
【0010】
このように、高いCOD低減効果を得ようとする場合には、オゾン処理で必要とされるオゾン量が多くなるため、単にオゾン処理と生物処理とを行うだけでは目標とするCOD低減効果を期待することができない他、廃水中の塩素イオン濃度が高い場合には特に、前記次亜塩素酸の発生に起因する悪影響が生じるという問題がある。
【特許文献1】特開平09−511448号公報
【特許文献2】特開平10−192892号公報
【特許文献3】特開平11−342398号公報
【特許文献4】特開2000−000595号公報
【特許文献5】特開2000−079384号公報
【特許文献6】特開2001−149982号公報
【特許文献7】特開2001−300576号公報
【特許文献8】特開2002−292395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記背景技術に鑑みてなされたものであり、例えば廃水等の被処理水中の、特にCODを著しく低減させ、CODが高い被処理水からも、次亜塩素酸の発生が充分に抑制され、安全で水質変動が極めて少ない安定した処理水を低コストで得ることができる水処理方法及びそれに用いる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、
被処理水に対して、オゾンを供給するオゾン処理(1A)と、微生物により有機物を分解する生物処理(2)とを少なくとも行う水処理方法であって、
前記オゾン処理(1A)において、オゾン注入率を一定範囲に制御し、
前記オゾン処理(1A)の後に、前記生物処理(2)を行うと共に、
前記生物処理(2)による生物処理水を、前記オゾン処理(1A)に使用することによって、オゾン処理(1A)と生物処理(2)との間で循環処理を行うことを特徴とする、水処理方法、及び
オゾン処理(1A)のためのオゾン処理槽と、生物処理(2)のための生物処理槽とを少なくとも備えた水処理システムであって、
前記オゾン処理槽が、オゾン注入率を一定範囲に制御することが可能な構造を有し、
前記オゾン処理槽の後段に、前記生物処理槽が備えられ、
前記オゾン処理槽と前記生物処理槽との間が循環構造であることを特徴とする、前記水処理方法に用いる水処理システム
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水処理方法及びそれに用いる水処理システムによれば、例えば廃水等の被処理水中の、特にCODを著しく低減させ、CODが高い被処理水からも、次亜塩素酸の発生が充分に抑制され、安全で水質変動が極めて少ない安定した処理水を得ることができる。しかも被処理水の水質に関らず、また同じ水質の被処理水を従来の方法で処理した場合と比較して、少量かつ適量のオゾンでの処理が可能で、効率的に低ランニングコストで操業することができるといった優れた効果が同時に発現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の水処理方法では、被処理水に対して、オゾンを供給するオゾン処理(1A)と、微生物により有機物を分解する生物処理(2)とを少なくとも行い、オゾン処理(1A)において、オゾン注入率を一定範囲に制御し、オゾン処理(1A)の後に生物処理(2)を行うと共に、生物処理(2)による生物処理水を、オゾン処理(1A)に使用することによって、オゾン処理(1A)と生物処理(2)との間で循環処理を行うことを特徴とするものである。
【0015】
なお本発明の対象となる「被処理水」には特に限定がないが、例えば最終処分場浸出水、下水二次処理水、河川水、地下水、湖沼、工場排水、農業排水、ゴミ処理排水といった水処理を要するものをいい、本発明の水処理方法及び水処理システムは、塩化物イオン濃度が高く、次亜塩素酸が生成し易い最終処分場浸出水や、水浄化の必要性及び得られる処理水の利用性がより高い下水二次処理水の水処理に特に好適である。また特に限定がないが、例えばCODMnが20mg/Lを超える被処理水のCOD低減に有効であり、塩素イオン濃度が300mg/L程度の被処理水は勿論のこと、塩素イオン濃度が500mg/Lを超える被処理水を対象とすることが可能である。
【0016】
以下に本発明の水処理方法及びこれに用いる水処理システムを図面に基づいて説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る水処理方法に用いる水処理システムを示す模式図である。図1において、1aは被処理水にオゾン処理(1A)を施すオゾン処理槽、4a1は該オゾン処理槽1aに備えられた溶存オゾン濃度測定部、4a2は該オゾン処理槽1aに備えられた廃オゾンガス濃度測定部、2は被処理水に生物処理(2)を施す生物処理槽である。
【0018】
オゾン処理槽1aは、後述するように、オゾン処理(1A)においてオゾン注入率を一定範囲に制御することが可能な構造を有している。また、オゾン処理槽1aと生物処理槽2との間は、後述するように、オゾン処理(1A)と生物処理(2)との間で循環処理を行うことが可能な循環構造である。
【0019】
まず被処理水槽5内の被処理水αは、ポンプ51にてオゾン処理槽1aへ移送される。次にオゾン処理槽1aへ移送された被処理水αに対して、酸素発生器7よりオゾン発生器8を経たオゾンβを供給する。供給されたオゾンβは被処理水αと接触して吸収され、これによって被処理水α中の難生物分解性物質等の汚濁物質が分解される等、被酸化性物質が酸化され、COD、菌類等が低減される。なおかかるオゾンβは、図1及び以下に説明する図2及び図4に示すように、酸素発生器7からオゾン発生器8を経て供給されてもよいが、これら酸素発生器7及びオゾン発生器8を経ずに直接供給する手段によって供給されてもよく、オゾンβの供給方法は限定されない。
【0020】
オゾン処理(1A)において、被処理水αへのオゾンβの供給量、すなわちオゾン注入率を一定範囲に制御する。かかるオゾン注入率は、例えば、被処理水α中の溶存オゾン濃度を測定したり、オゾン処理(1A)にて排出される廃オゾンガス濃度を測定することによって制御することができる。
【0021】
被処理水α中の溶存オゾン濃度を測定してオゾン注入率を制御する場合、オゾン処理槽1aに備えられた溶存オゾン濃度測定部4a1にて溶存オゾン濃度を測定する。このように、オゾン処理槽1aにてオゾン処理(1A)を施す際に被処理水α中の溶存オゾン濃度を測定し、オゾン注入率を正確に一定範囲に制御することにより、被処理水αが水質変動した場合であっても、水質変動が極めて小さく、一定の良範囲に水質が維持された安定した処理水を得ることができる。
【0022】
オゾン注入率は、被処理水αの水質及び目標とする処理水の水質に応じて溶存オゾン濃度の範囲を決定して制御することが好ましいが、オゾン注入率が高すぎる場合には、オゾンが被酸化性物質の酸化に利用されるだけでなく、被処理水α中の塩素イオンと反応して次亜塩素酸を発生する恐れがあるので、溶存オゾン濃度が10mg/L以下、さらには5mg/L以下、特に1mg/L以下となるようにオゾン注入率を制御することが好ましい。逆に、オゾン注入率が低すぎる場合には、被処理水α中の被酸化性物質の酸化が不充分となり、COD、菌類等が充分に低減されない恐れがあるので、溶存オゾンが検知される濃度以上となるようにオゾン注入率を制御することが好ましい。
【0023】
なお、オゾンを被酸化性物質と反応させ、かつ次亜塩素酸の生成を抑制するという点を考慮すると、オゾン処理(1A)におけるオゾン注入率を、重量比で、被処理水α中のCODの3倍以下となるように制御することが好ましく、また溶存オゾン濃度を確保するという点を考慮すると、該オゾン注入率を、重量比で、被処理水α中のCODの1倍以上となるように制御することが好ましい。
【0024】
オゾン処理槽1aに備える溶存オゾン濃度測定部4a1としては、溶存オゾン濃度の測定が容易であり、溶存オゾン濃度をより正確に一定範囲に制御することが可能であるという点から、例えば溶存オゾン濃度計が好適に用いられる。
【0025】
溶存オゾン濃度計としては、例えば紫外線吸収方式の濃度計や隔膜ポーラログラフ方式の濃度計が、精度及び取り扱い性に優れる点から好ましい。溶存オゾン濃度は、被処理水を採取してからモニタリングするまでの距離や被処理水の水量等によって測定値が変化する場合があるので、かかる溶存オゾン濃度計としては、例えば検出部及び制御部を有し、オゾン処理槽1aと検出部とを接続することによって被処理水α中の溶存オゾン濃度を連続的に測定し得るもの、あるいは連続的にオゾン処理槽1aより検出部に被処理水αを導入させ得るもの等が好適に用いられる。また被処理水の流量、水温や使用時の湿度といった溶存オゾン濃度計の使用環境は、用いる濃度計の適用範囲に応じて適宜調整することが好ましい。
【0026】
なお本実施の形態1においては、前記溶存オゾン濃度計以外の手段を溶存オゾン濃度測定部4a1として用いることもできる。
【0027】
被処理水α中の溶存オゾン濃度を測定する他、例えば前記したように、オゾン処理(1A)にて排出される廃オゾンガス濃度を測定してオゾン注入率を制御することができる。
【0028】
前記廃オゾンガス濃度は、溶存オゾン濃度と一定の範囲内で相関関係にあるので、その範囲内であれば被処理水α中の溶存オゾン濃度を測定する代わりに、オゾン処理槽1aに備えられた廃オゾンガス濃度測定部4a2にて廃オゾンガス濃度を測定してオゾン注入率を制御してもよい。
【0029】
オゾン注入率は、前記したように、被処理水αの水質及び目標とする処理水の水質に応じて廃オゾンガス濃度の範囲を決定して制御することが好ましいが、オゾン注入率が高すぎる場合には、オゾンが被酸化性物質の酸化に利用されるだけでなく、被処理水α中の塩素イオンと反応して次亜塩素酸を発生する恐れがある。ただし、廃オゾンガス濃度は初期オゾン濃度やオゾン反応塔での吸収効率によっても異なるので、システムに応じて実験的かつ経験的に適宜定めることが好ましい。
【0030】
オゾン処理槽1aに備える廃オゾンガス濃度測定部4a2としては、廃オゾンガス濃度の測定が容易で正確であるという点から、例えばオゾンガス濃度計が好適に用いられる。
【0031】
オゾンガス濃度計としては、最も普及している紫外線吸収方式の濃度計が、経済面、性能面からみて好ましいが、これに限定されるものではない。
【0032】
なお本実施の形態1においては、前記オゾンガス濃度計以外の手段を廃オゾンガス濃度測定部4a2として用いることもできる。
【0033】
被処理水の水質変動が大きくない場合には、あらかじめオゾン注入率と被処理水α中の溶存オゾン濃度との関係を定め、この定めた関係に従ってオゾン注入率を制御することも可能である。
【0034】
オゾン処理槽1aにおける被処理水αのオゾン処理条件は、被処理水αへのオゾン注入率が一定範囲に制御され、所望の効果が充分に発現される限り特に限定がなく、被処理水αの水質や目的とする処理水の水質等に応じて適宜変更することができるが、例えばオゾン処理時間(滞留時間)は3〜60分間程度、さらには5〜15分間程度であることが好ましい。
【0035】
なお前記オゾン処理(1A)にて用いられたオゾンの一部は、オゾン処理槽1aから廃オゾン分解装置10に移送されて分解された後、ポンプ101にてシステム外へと排出される。
【0036】
オゾン処理槽1aにて前記のごとくオゾン処理(1A)が施された被処理水αは、生物処理槽2へ移送される。該生物処理槽2では微生物による被処理水α中の有機物の分解が行われ、主に被処理水αに含有される易生物分解性物質が分解される。
【0037】
このようにオゾン処理(1A)の後に生物処理(2)を行うと、被処理水α中の難生物分解性物質が、オゾン処理(1A)にて、微生物に分解され易い易生物分解性物質にあらかじめ分解され、次いで生物処理(2)にて、微生物による有機物(易生物分解性物質)の分解が充分に進行するという大きな利点がある。また後の生物処理(2)にて易生物分解性物質の分解が行われることから、オゾン処理(1A)では有機物(難生物分解性物質)を完全に分解してしまうのではなく、有機物の易生物分解性を高めればよいので、従来の方法と比較してオゾン注入率を低減させることができるという利点もある。また同時に、かかる生物処理(2)によって被処理水αのBODも低減され、生物処理(2)に先立って行われたオゾン処理(1A)で用いたオゾンによってBODが増加した場合であっても、かかるBODは充分に低減され得る。
【0038】
生物処理(2)の方法には特に限定がないが、例えば生物膜法、好気性ろ床法、活性汚泥処理法等を採用することができる。なお、生物処理の方法としては、これらの他にも生物活性炭処理法が一般的であるが、CODが高い場合には、生物活性炭層が閉塞して生物活性炭層の逆洗頻度が上昇する恐れが大きいので、該生物活性炭処理法は採用しないことが好ましい。
【0039】
生物膜法は、多種の微生物の膜を利用する方法であり、例えば接触曝気法が多用される。該接触曝気法は、例えばプラスチックの担体に微生物の膜を付着させ、その微生物によって有機物等を摂取、分解させる、担体保持型の生物膜にて処理する方法である。
【0040】
好気性ろ床法は、内部にろ材を充填した生物膜ろ過方式の好気性ろ床を用いる方法であり、移動床式方法と固定床式方法とがある。ろ材としては、例えば多孔質セラミック等があげられ、該ろ材表面の好気性微生物により有機物を分解させ、BODを低減するものである。
【0041】
活性汚泥処理法は、多種の微生物を含んだ活性汚泥を利用する方法であり、生物処理槽内の被処理水を活性汚泥と撹拌、曝気して被処理水中の有機物を酸化分解させるものである。処理物を分離、沈殿させて上澄水を得た後の生成汚泥の一部は、返送汚泥として生物処理槽に送られ、槽内汚泥の微生物濃度の調整に用いられる。
【0042】
これら生物処理(2)の方法の中でも、有機物の分解効果及びBODの低減効果が大きく、たとえ前段のオゾン処理(1A)におけるオゾンが少量、生物処理槽2に流入したとしても、生物機能が保持され易いという点から、生物膜法が好適に採用される。なお生物処理(2)に用いることができる微生物として、通常、例えば従属栄養細菌、硝化菌、大腸菌、原生動物、ワムシ類、貧毛類、線虫類等があげられるが、本発明においては、微生物としては被処理水の水質や処理方法に適したものが自然に順養されていく場合が多い。
【0043】
生物処理槽2における被処理水αの生物処理条件は、充分な処理効果が得られる限り特に限定がなく、被処理水αの水質や目的とする処理水の水質、用いる微生物の活性適用温度等に応じて適宜変更することができるが、例えば生物処理時間(滞留時間)は5〜600分間程度、さらには7〜60分間程度であることが好ましい。
【0044】
なお生物処理槽2では微生物の増殖による目詰まりを防止するために、通常逆洗が行われる。
【0045】
生物処理槽2にて生物処理(2)が施された後、該生物処理(2)による生物処理水を前記オゾン処理(1A)に使用することによって、オゾン処理(1A)と生物処理(2)との間で循環処理を行う。
【0046】
従来のように、オゾン処理と生物処理とを順次複数回繰り返す処理を行った場合には、後段での処理ほど、被処理水中の汚濁物質濃度が低下して溶存オゾン濃度が上昇し易く、これによって次亜塩素酸が発生し易い状態となり、被処理水の濃度といった水質変動の影響を受けて処理が不安定になるという問題が生じてしまう。しかしながら、本発明の水処理方法では、オゾン処理(1A)と生物処理(2)との間で循環処理を行うので、このような従来の問題が生じることはなく、安全で水質変動が極めて少ない安定した処理水を、被処理水の水質に関らず、少量かつ適量のオゾンで効率的に低ランニングコストで得ることができる。
【0047】
オゾン処理(1A)と生物処理(2)との間で循環処理を行う回数には特に限定がなく、例えば被処理水の水質や目標とする処理水の水質に応じて適宜決定すればよいが、通常オゾン処理(1A)と生物処理(2)とのセットを2〜20回程度行うことが好ましい。
【0048】
オゾン処理(1A)と生物処理(2)との間で所望の回数の循環処理を行った後、生物処理槽2から処理水槽11に移送された処理水δは、種々目的に応じて再利用される。なお必要に応じて、処理水槽11中の処理水δをポンプ111にて生物処理槽2へ移送し、生物処理槽2内の逆洗を行ってもよい。
【0049】
(実施の形態2)
図1に示す水処理システムで行われる、前記実施の形態1に係る水処理方法では、オゾン処理槽1aにて、オゾン注入率を一定範囲に制御して被処理水にオゾン処理(1A)を施し、次いで生物処理槽2にて、被処理水に生物処理(2)を施し、これらオゾン処理(1A)及び生物処理(2)との間で循環処理を行うが、本発明の実施の形態2に係る水処理方法では、オゾン処理槽1aにおけるオゾン処理(1A)に代えて、促進酸化処理槽1bにおいて、被処理水にオゾン及び過酸化水素を供給して促進酸化処理(1B)を施す。
【0050】
このように、本実施の形態2に係る水処理方法は、オゾン処理(1A)以外は前記実施の形態1に係る水処理方法と同じであるので、該オゾン処理(1A)に代わる促進酸化処理(1B)についてのみ、以下に詳細に説明する。
【0051】
図2は、本発明の実施の形態2に係る水処理方法に用いる水処理システムを示す模式図である。図2において、1bは被処理水に促進酸化処理(1B)を施す促進酸化処理槽、4b1は該促進酸化処理槽1bに備えられた溶存オゾン濃度測定部、4b2は該促進酸化処理槽1bに備えられた廃オゾンガス濃度測定部、2は被処理水に生物処理(2)を施す生物処理槽である。
【0052】
促進酸化処理槽1bは、後述するように、促進酸化処理(1B)においてオゾン注入率を一定範囲に制御することが可能な構造を有している。また、促進酸化処理槽1bと生物処理槽2との間は、後述するように、促進酸化処理(1B)と生物処理(2)との間で循環処理を行うことが可能な循環構造である。
【0053】
まず被処理水槽5内の被処理水αは、ポンプ51にて促進酸化処理槽1bへ移送される。次に促進酸化処理槽1bへ移送された被処理水αに対して、酸素発生器7よりオゾン発生器8を経たオゾンβを供給し、過酸化水素タンク9のポンプ91にて過酸化水素γの水溶液を供給する。これらオゾンβ及び過酸化水素γの供給により、被処理水α中の溶存オゾンと過酸化水素とが反応して強力な酸化剤であるヒドロキシルラジカル(以下、OHラジカルという)が発生し、該OHラジカルの強い酸化力により被処理水α中の難生物分解性物質等の汚濁物質が分解されされる等、被酸化性物質が酸化され、COD、菌類等が低減される。なおかかるオゾンβは、図2に示すように、酸素発生器7からオゾン発生器8を経て供給されてもよいが、これら酸素発生器7及びオゾン発生器8を経ずに直接供給する手段によって供給されてもよく、オゾンβの供給方法は限定されない。
【0054】
促進酸化処理(1B)において、被処理水αへのオゾンβの供給量、すなわちオゾン注入率を一定範囲に制御する。かかるオゾン注入率は、例えば、被処理水α中の溶存オゾン濃度を測定したり、促進酸化処理(1B)にて排出される廃オゾンガス濃度を測定することによって制御することができる。
【0055】
被処理水α中の溶存オゾン濃度を測定してオゾン注入率を制御する場合、促進酸化処理槽1bに備えられた溶存オゾン濃度測定部4b1にて溶存オゾン濃度を測定する。このように、促進酸化処理槽1bにて促進酸化処理(1B)を施す際に被処理水α中の溶存オゾン濃度を測定し、オゾン注入率を正確に一定範囲に制御することにより、被処理水αが水質変動した場合であっても、水質変動が極めて小さく、一定の良範囲に水質が維持された安定した処理水を得ることができる。
【0056】
オゾン注入率は、被処理水αの水質及び目標とする処理水の水質に応じて溶存オゾン濃度の範囲を決定して制御することが好ましいが、オゾン注入率が高すぎる場合には、オゾンが被酸化性物質の酸化に利用されるだけでなく、被処理水α中の塩素イオンと反応して次亜塩素酸を発生する恐れがある他、発生したOHラジカルが汚濁物質の分解やCOD、菌類等の低減効果を発現する前に溶存オゾンと反応して消失してしまい、充分な効果が得られない恐れがあるので、溶存オゾン濃度が10mg/L以下、さらには5mg/L以下、特に1mg/L以下となるようにオゾン注入率を制御することが好ましい。逆に、オゾン注入率が低すぎる場合には、被処理水α中の被酸化性物質の酸化が不充分となり、COD、菌類等が充分に低減されない恐れがあるので、溶存オゾンが検知される濃度以上となるようにオゾン注入率を制御することが好ましい。
【0057】
なお、オゾンを被酸化性物質と反応させ、かつ次亜塩素酸の生成を抑制するという点を考慮すると、促進酸化処理(1B)におけるオゾン注入率を、重量比で、被処理水α中のCODの3倍以下となるように制御することが好ましく、また溶存オゾン濃度を確保するという点を考慮すると、該オゾン注入率を、重量比で、被処理水α中のCODの1倍以上となるように制御することが好ましい。
【0058】
促進酸化処理槽1bに備える溶存オゾン濃度測定部4b1としては、溶存オゾン濃度の測定が容易であり、溶存オゾン濃度をより正確に一定範囲に制御することが可能であるという点から、例えば溶存オゾン濃度計が好適に用いられる。
【0059】
溶存オゾン濃度計としては、例えば前記実施の形態1にて例示したものがあげられるが、隔膜ポーラログラフ方式の濃度計は誤動作する可能性があるため、その場合は紫外線吸収方式の濃度計が好適である。また、被処理水の流量、水温や使用時の湿度といった溶存オゾン濃度計の使用環境は、用いる濃度計の適用範囲に応じて適宜調整することが好ましい。
【0060】
なお本実施の形態2においても、前記溶存オゾン濃度計以外の手段を溶存オゾン濃度測定部4b1として用いることができる。
【0061】
被処理水α中の溶存オゾン濃度を測定する他、例えば前記したように、促進酸化処理(1B)にて排出される廃オゾンガス濃度を測定してオゾン注入率を制御することができる。
【0062】
前記廃オゾンガス濃度は、溶存オゾン濃度と一定の範囲内で相関関係にあるので、その範囲内であれば被処理水α中の溶存オゾン濃度を測定する代わりに、促進酸化処理槽1bに備えられた廃オゾンガス濃度測定部4b2にて廃オゾンガス濃度を測定してオゾン注入率を制御してもよい。
【0063】
オゾン注入率は、前記したように、被処理水αの水質及び目標とする処理水の水質に応じて廃オゾンガス濃度の範囲を決定して制御することが好ましいが、オゾン注入率が高すぎる場合には、オゾンが被酸化性物質の酸化に利用されるだけでなく、被処理水α中の塩素イオンと反応して次亜塩素酸を発生する恐れがある他、発生したOHラジカルが汚濁物質の分解やCOD、菌類等の低減効果を発現する前に溶存オゾンと反応して消失してしまい、充分な効果が得られない恐れがある。ただし、廃オゾンガス濃度は初期オゾン濃度やオゾン反応塔での吸収効率によっても異なるので、システムに応じて実験的かつ経験的に適宜定めることが好ましい。
【0064】
促進酸化処理槽1bに備える廃オゾンガス濃度測定部4b2としては、廃オゾンガス濃度の測定が容易で正確であるという点から、例えばオゾンガス濃度計が好適に用いられる。オゾンガス濃度計としては、例えば前記実施の形態1にて例示したものがあげられる。
【0065】
なお本実施の形態2においても、前記オゾンガス濃度計以外の手段を廃オゾンガス濃度測定部4b2として用いることができる。
【0066】
被処理水の水質変動が大きくない場合には、あらかじめオゾン注入率と被処理水α中の溶存オゾン濃度との関係を定め、この定めた関係に従ってオゾン注入率を制御することも可能である。
【0067】
さらに本実施の形態2に係る水処理方法においては、促進酸化処理(1B)にて被処理水αへのオゾン注入率を一定範囲に制御すると同時に、かかる被処理水αへの過酸化水素注入率も一定範囲に制御してもよい。このようにオゾン注入率だけでなく過酸化水素注入率も一定範囲に制御して促進酸化処理(1B)を行った場合には、被処理水αが水質変動した場合であっても、水質変動が極めて小さく、一定の良範囲に水質が維持された安定した処理水を得ることができ、しかも被処理水の水質にかかわらず、極めて少量のオゾンや過酸化水素での処理が可能であるという優れた効果が大きく発現されるという利点がある。
【0068】
促進酸化処理(1B)において、被処理水αへの過酸化水素γの供給量、すなわち過酸化水素注入率を一定範囲に制御するには、例えば、被処理水α中の溶存過酸化水素濃度を測定すればよい。
【0069】
被処理水α中の溶存過酸化水素濃度を一定範囲に制御するには、促進酸化処理槽1bに溶存過酸化水素濃度測定部を設置し(図2中には示さず)、該溶存過酸化水素濃度測定部にて溶存過酸化水素濃度を測定すればよい。
【0070】
過酸化水素注入率は、被処理水αの水質及び目標とする処理水の水質や、オゾン注入率の制御範囲に応じて、溶存過酸化水素濃度の範囲を決定して制御することが好ましいが、過酸化水素注入率が高すぎる場合には、発生したOHラジカルが汚濁物質の分解やCOD、菌類等の低減効果を発現する前に溶存過酸化水素と反応して消失してしまい、充分な効果が得られない恐れがあるので、溶存過酸化水素濃度が10mg/L以下、さらには5mg/L以下となるように過酸化水素注入率を制御することが好ましい。逆に、過酸化水素注入率が低すぎる場合には、OHラジカルの発生が少なく、やはり汚濁物質の分解やCOD、菌類等の低減が不充分になる恐れがあるので、溶存過酸化水素濃度が0.01mg/L以上、さらには0.1mg/L以上となるように過酸化水素注入率を制御することが好ましい。
【0071】
促進酸化処理槽1bに備える溶存過酸化水素濃度測定部としては、溶存過酸化水素濃度の測定が容易であり、より正確に一定範囲に制御することが可能であるという点から、例えば溶存過酸化水素濃度計が好適に用いられる。
【0072】
溶存過酸化水素濃度計としては、例えば酸性過マンガン酸カリウム滴定方式の濃度計、紫外線透過吸収方式の濃度計、ヨウ素電量滴定方式(逆滴定方式)の濃度計等があげられるが、精度及び取り扱い性に優れる点から酸性過マンガン酸カリウム滴定方式の濃度計が好ましい。ただしこの場合、被処理水α中のオゾンも測定濃度に影響を及ぼすことがあるので、曝気する等して被処理水α中のオゾンを除去してから測定に供することが望ましい。また溶存過酸化水素濃度は、被処理水を採取してからモニタリングするまでの距離や被処理水の水量等によって変化する場合があるので、かかる溶存過酸化水素濃度計としては、例えば検出部及び制御部を有し、促進酸化処理槽1bと検出部とを接続することによって被処理水α中の溶存過酸化水素濃度を連続的に測定し得るもの、あるいは連続的に促進酸化処理槽1bより検出部に被処理水αを導入させ得るもの等が好適に用いられる。被処理水の流量、水温や使用時の湿度といった溶存過酸化水素濃度計の使用環境は、用いる濃度計の適用範囲に応じて適宜調整することが好ましい。
【0073】
なお本実施の形態2においては、前記溶存過酸化水素濃度計以外の手段を溶存過酸化水素濃度測定部として用いることもできる。
【0074】
このように、促進酸化処理(1B)における被処理水αへの過酸化水素注入率は、例えば、被処理水α中の溶存過酸化水素濃度を測定することによって制御することができ、該過酸化水素注入率は、オゾン注入率1に対して0.01以上、さらには0.02以上とすることが好ましく、また0.5以下、さらには0.3以下とすることが好ましい。
【0075】
なお促進酸化処理(1B)において、溶存オゾン濃度を測定することによって被処理水αへのオゾン注入率を一定範囲に制御する場合には、溶存オゾン濃度と併せて溶存過酸化水素濃度も同時に測定して調整してもよい。
【0076】
促進酸化処理槽1bにおける被処理水αの促進酸化処理条件は、被処理水αへのオゾン注入率、及び必要に応じて過酸化水素注入率が一定範囲に制御され、所望の効果が充分に発現される限り特に限定がなく、被処理水αの水質や目的とする処理水の水質等に応じて適宜変更することができるが、例えば促進酸化処理時間(滞留時間)は3〜60分間程度、さらには5〜15分間程度であることが好ましい。
【0077】
なお前記促進酸化処理(1B)にて用いられたオゾンの一部は、促進酸化処理槽1bから廃オゾン分解装置10に移送されて分解された後、ポンプ101にてシステム外へと排出される。
【0078】
また、本実施の形態2においては、被処理水にオゾン及び過酸化水素を供給して促進酸化処理(1B)を施すが、このようなオゾンと過酸化水素との組み合わせの代わりに、オゾンと紫外線との組み合わせを採用することもできる。被処理水にオゾンを供給し、かつ紫外線を照射することによって、前記のごとくオゾン及び過酸化水素を供給した際と同様の促進酸化処理(1B)の効果を得ることができる。
【0079】
促進酸化処理槽1bにて前記のごとく促進酸化処理(1B)が施された被処理水αは、生物処理槽2へ移送され、前記実施の形態1に係る水処理方法と同様に、該生物処理槽2において生物処理(2)が施される。
【0080】
生物処理槽2にて生物処理(2)が施された後、該生物処理(2)による生物処理水を前記促進酸化処理(1B)に使用することによって、促進酸化処理(1B)と生物処理(2)との間で循環処理を行う。
【0081】
従来のように、促進酸化処理と生物処理とを順次複数回繰り返す処理を行った場合には、後段での処理ほど、被処理水中の汚濁物質濃度が低下して溶存オゾン濃度や溶存過酸化水素濃度が上昇し易く、これによってOHラジカルや次亜塩素酸が発生し易い状態となり、被処理水の濃度といった水質変動の影響を受けて処理が不安定になるという問題が生じてしまう。しかしながら、本発明の水処理方法では、促進酸化処理(1B)と生物処理(2)との間で循環処理を行うので、このような従来の問題が生じることはなく、安全で水質変動が極めて少ない安定した処理水を、被処理水の水質に関らず、少量かつ適量のオゾンで効率的に低ランニングコストで得ることができる。
【0082】
促進酸化処理(1B)と生物処理(2)との間で循環処理を行う回数には特に限定がなく、例えば被処理水の水質や目標とする処理水の水質に応じて適宜決定すればよいが、通常促進酸化処理(1B)と生物処理(2)とのセットを2〜20回程度行うことが好ましい。
【0083】
促進酸化処理(1B)と生物処理(2)との間で所望の回数の循環処理を行った後、生物処理槽2から処理水槽11に移送された処理水δは、種々目的に応じて再利用される。なお必要に応じて、処理水槽11中の処理水δをポンプ111にて生物処理槽2へ移送し、生物処理槽2内の逆洗を行ってもよい。
【0084】
なお、本実施の形態2に係る水処理方法では、前記促進酸化処理(1B)を多段階にて行うこともできる。
【0085】
図3は、本発明の実施の形態2に係る水処理方法に用いる水処理システムにおいて、多段で備えられた促進酸化処理槽を示す模式図である。図3において、1b1、1b2、1b3はいずれも、被処理水に促進酸化処理(1B)を施す促進酸化処理槽である。
【0086】
まず促進酸化処理槽1b1へ移送された被処理水に対して、オゾンβ1及び過酸化水素γ1の水溶液を供給した後、被処理水を促進酸化処理槽1b2へと移送し、オゾンβ2及び過酸化水素γ2の水溶液を供給する。次いで被処理水を促進酸化処理槽1b3へと移送し、オゾンβ3及び過酸化水素γ3の水溶液を供給した後、後段の生物処理槽2へと被処理水を移送する。
【0087】
このように促進酸化処理(1B)を多段階にて行う際には、オゾン及び過酸化水素の注入を分割して行うことができるので、例えば被処理水中の溶存オゾン濃度や溶存過酸化水素濃度が一度に高くなりすぎず、同じ酸化剤量であってもより高い処理効果が発揮され、さらに次亜塩素酸の生成を抑制したり、一度に過剰なOHラジカルが発生するのを防止することができるという利点がある。したがって、促進酸化処理(1B)を多段階にて行うことにより、安全で水質変動が極めて少ない安定した処理水を、さらに効率的に、かつ、より低ランニングコストで得ることができる。
【0088】
なお、促進酸化処理(1B)を多段階にて行う場合、その回数には特に限定がなく、例えば被処理水の水質や目標とする処理水の水質に応じて適宜決定すればよいが、通常2〜4段階程度行うことが好ましい。
【0089】
(実施の形態3)
さらに本発明の水処理方法の一実施形態として、オゾン処理(1A)又は促進酸化処理(1B)の前に砂ろ過処理(3)を行うことができる。かかる砂ろ過処理(3)を行う場合の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に示すのは、オゾン処理(1A)を行う実施形態において、あらかじめ砂ろ過処理(3)を行う水処理方法であるが、該オゾン処理(1A)の代わりに促進酸化処理(1B)を行う実施形態の場合も同様である。
【0090】
図4は、本発明の実施の形態3に係る水処理方法に用いる水処理システムを示す模式図である。図4において、1aは被処理水にオゾン処理(1A)を施すオゾン処理槽、4a1は該オゾン処理槽1aに備えられた溶存オゾン濃度測定部、4a2は該オゾン処理槽1aに備えられた廃オゾンガス濃度測定部、2は被処理水に生物処理(2)を施す生物処理槽、3は被処理水に砂ろ過処理(3)を施す砂ろ過器である。
【0091】
オゾン処理槽1aは、前記したように、オゾン処理(1A)においてオゾン注入率を一定範囲に制御することが可能な構造を有している。また、オゾン処理槽1aと生物処理槽2との間は、前記したように、オゾン処理(1A)と生物処理(2)との間で循環処理を行うことが可能な循環構造である。
【0092】
まず被処理水槽5内の被処理水αは、ポンプ51にて砂ろ過器3へ移送される。かかる砂ろ過器3では被処理水α中に含まれる浮遊物質、リン等があらかじめ除去されたり、BODがあらかじめ低減される。このような砂ろ過処理(3)により、後のオゾン処理(1A)での溶存オゾンの必要量を低減させることができ、オゾンの使用量をより少量とすることが可能である。
【0093】
なお被処理水α中のリンを除去したい場合等は、前処理として凝集剤を添加し、スタティックミキサ内で凝集剤と被処理水αとを混合して被処理水α中に含まれるリン等を固形化させ、砂ろ過処理(3)に供することも可能である。
【0094】
前記凝集剤には無機系凝集剤と有機系凝集剤とがある。無機系凝集剤としては、例えば硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(以下、PACという)等のアルミニウム系凝集剤や塩化第二鉄等の鉄系凝集剤があげられる。また有機系凝集剤としては、例えばポリアクリルアミド系高分子凝集剤等があげられる。かかる凝集剤は、その効果の発現を考慮して被処理水αの種類及び目的に応じた量で被処理水αに添加することが好ましい。
【0095】
砂ろ過処理(3)に用いられる砂ろ過器3には特に限定がないが、例えば上向流移床型砂ろ過器等が例示され、ろ床上にろ過砂利層及びろ過砂層が順次積層されたものが通常用いられる。かかるろ過砂としては、不純物や扁平、脆弱な砂を多く含まず、石英質が多く、堅い均等なものが好ましい。また例えば有効径が0.8〜2.5mm程度、均等係数が1.5程度以下のろ過砂を好適に用いることができる。
【0096】
前記砂ろ過器3における被処理水αの砂ろ過処理条件は、充分な処理効果が得られる限り特に限定がなく、被処理水αの水質や目的とする処理水の水質等に応じて適宜変更することができるが、例えばろ過速度は100〜1000m/日程度、さらには200〜700m/日程度であることが好ましい。またかかる砂ろ過処理中には、ろ過砂の洗浄のために、10〜30L/m2/分程度の流量で適宜空気を供給することが好ましい。
【0097】
また砂ろ過器3では、通常被処理水αのろ過と並行してろ床の洗浄が行われる。汚れたろ床は空気と水とで混合洗浄され、この後、逆洗排水から分離したろ床はろ過水と対向流で洗浄され、再びろ床面に戻る。
【0098】
砂ろ過器3にて砂ろ過処理(3)が施された被処理水αには、図1の模式図にて示した実施の形態1の水処理システムと同様に、前記オゾン処理槽1aでのオゾン処理(1A)及び生物処理槽2での生物処理(2)が循環して施され、処理水槽11に移送された処理水δは、種々目的に応じて再利用される場合もある。なお必要に応じて、処理水槽11中の処理水δをポンプ111にて生物処理槽2へ移送し、生物処理槽2内の逆洗を行ってもよい。
【0099】
なお本発明の水処理システムにおいて、図1、2及び4の模式図には示していないが、システム全体が効率的かつ安全で正確に連続操業されるように、溶存オゾン濃度測定部4a1、4b1、廃オゾンガス濃度測定部4a2、4b2、被処理水槽5のポンプ51、酸素発生器7、オゾン発生器8、過酸化水素タンク9のポンプ91、廃オゾン分解装置10のポンプ101、処理水槽11のポンプ111等は、それぞれが運転制御されている。
【0100】
このように本発明によれば、例えば廃水等の被処理水中の、特にCODを著しく低減させ、CODが高い被処理水からも、次亜塩素酸の発生が充分に抑制され、安全で水質変動が極めて少ない安定した処理水を得ることができる。しかも被処理水の水質に関らず、また同じ水質の被処理水を従来の方法で処理した場合と比較して、少量かつ適量のオゾンでの処理が可能で、効率的に低ランニングコストで操業することができる。
【0101】
次に本発明の水処理方法及びそれに用いる水処理システムを以下の実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0102】
実施例1(オゾン処理(1A)+生物処理(2)の循環処理)
図1の模式図に示す水処理システムにて最終処分場浸出水生物処理水の処理を24時間連続して行った。なお用いた最終処分場浸出水生物処理水のCODMnは80mg/Lであり、塩素イオン濃度は10000mg/Lであった。各処理の条件は以下のとおりである。
【0103】
(ア)オゾン処理
溶存オゾン濃度:手分析にて適時確認
オゾン注入率:溶存オゾン濃度が約0.3mg/L以下となるように手調整
滞留時間:10分間
【0104】
(イ)生物処理
処理方法:接触曝気法(担体保持型の生物膜を使用)
処理温度:最終処分場浸出水生物処理水温度20℃
滞留時間:20分間
【0105】
(ウ)循環処理
オゾン処理と生物処理とのセット:3回
【0106】
前記各条件にて処理を行った結果、得られた処理水のCODMnは21mg/Lとなっており、処理前と比較して充分に低減していた。なお、処理水からの塩素臭は感じられなかった。
【0107】
実施例2(促進酸化処理(1B)+生物処理(2)の循環処理)
実施例1において、オゾン処理に代えて促進酸化処理を行った他は、実施例1と同様にして最終処分場浸出水生物処理水の処理を行った。なお水処理システムとしては、図2の模式図に示す水処理システムを使用した。促進酸化処理及び循環処理の条件は以下のとおりである。
【0108】
(ア)促進酸化処理
溶存オゾン濃度:手分析にて適時確認
オゾン注入率:溶存オゾン濃度が約0.3mg/L以下となるように手調整
過酸化水素注入率:3mg/L(一定)
滞留時間:10分間
【0109】
(ウ)循環処理
促進酸化処理と生物処理とのセット:3回
【0110】
前記各条件にて処理を行った結果、得られた処理水のCODMnは12mg/Lとなっており、処理前と比較して著しく低減していた。なお、処理水からの塩素臭は感じられなかった。
【0111】
比較例1(オゾン処理のみ)
実施例1において、生物処理(オゾン処理と生物処理との循環処理)を行わず、オゾン処理のみを24時間連続して行った他は、実施例1と同様にして最終処分場浸出水生物処理水の処理を行った。なお、水処理システムとしては、図1の模式図に示す水処理システムにおいて、オゾン処理槽1aの後段に生物処理槽2を備えず、オゾン処理槽1aからの処理水が処理水槽11へ直接移送されるものを使用した。
【0112】
前記条件にて処理を行った結果、得られた処理水のCODMnは35mg/Lであり、処理前と比較して充分には低減していなかった。また、処理水からは塩素臭が強く感じられた。
【0113】
実施例1及び2のように、オゾン処理又は促進酸化処理においてオゾン注入率を一定範囲に制御し、かつ、オゾン処理又は促進酸化処理と生物処理との間で循環処理を行った場合には、最終処分場浸出水生物処理水のCODMnが80mg/Lと極めて高いにも関らず、オゾン注入率を低く制御することができ、CODMnが約10〜20mg/Lと極めて低く、さらには次亜塩素酸の発生も充分に抑制され、安全で水質変動が少ない安定した処理水を容易に得ることができることがわかる。
【0114】
さらに、実施例1と実施例2とを比較すると、実施例2のように促進酸化処理を行った場合には、CODの低減効果がより大きいことがわかる。
【0115】
これに対して、比較例1では生物処理(オゾン処理と生物処理との循環処理)を行わずにオゾン処理のみを行ったため、CODMnが35mg/Lと高いままで、かつ次亜塩素酸が発生した処理水しか得ることができないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の水処理方法及び水処理システムは、例えば最終処分場浸出水、下水二次処理水、河川水、地下水、湖沼、工場排水、農業排水、ゴミ処理排水等の被処理水の水処理に有効利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】実施の形態1に係る水処理方法に用いる水処理システムを示す模式図
【図2】実施の形態2に係る水処理方法に用いる水処理システムを示す模式図
【図3】実施の形態2に係る水処理方法に用いる水処理システムにおいて、多段で備えられた促進酸化処理槽を示す模式図
【図4】実施の形態3に係る水処理方法に用いる水処理システムを示す模式図
【符号の説明】
【0118】
1a オゾン処理槽
1b、1b1、1b2、1b3 促進酸化処理槽
2 生物処理槽
3 砂ろ過器
4a1、4b1 溶存オゾン濃度測定部
4a2、4b2 廃オゾンガス濃度測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に対して、オゾンを供給するオゾン処理(1A)と、微生物により有機物を分解する生物処理(2)とを少なくとも行う水処理方法であって、
前記オゾン処理(1A)において、オゾン注入率を一定範囲に制御し、
前記オゾン処理(1A)の後に、前記生物処理(2)を行うと共に、
前記生物処理(2)による生物処理水を、前記オゾン処理(1A)に使用することによって、オゾン処理(1A)と生物処理(2)との間で循環処理を行うことを特徴とする、水処理方法。
【請求項2】
オゾン処理(1A)において、被処理水中の溶存オゾン濃度を測定することによってオゾン注入率を制御する、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
溶存オゾン濃度が10mg/L以下となるようにオゾン注入率を制御する、請求項2に記載の水処理方法。
【請求項4】
オゾン注入率を、被処理水中の化学的酸素要求量の3倍以下(重量比)となるように制御する、請求項2に記載の水処理方法。
【請求項5】
オゾン処理(1A)にて排出される廃オゾンガス濃度を測定することによってオゾン注入率を制御する、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項6】
生物処理(2)を担体保持型の生物膜にて行う、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項7】
オゾン処理(1A)に代えて、オゾン及び過酸化水素を供給する促進酸化処理(1B)を行う、請求項1〜6のいずれか1つに記載の水処理方法。
【請求項8】
促進酸化処理(1B)を多段階にて行う、請求項7に記載の水処理方法。
【請求項9】
オゾン処理(1A)のためのオゾン処理槽と、生物処理(2)のための生物処理槽とを少なくとも備えた水処理システムであって、
前記オゾン処理槽が、オゾン注入率を一定範囲に制御することが可能な構造を有し、
前記オゾン処理槽の後段に、前記生物処理槽が備えられ、
前記オゾン処理槽と前記生物処理槽との間が循環構造であることを特徴とする、請求項1に記載の水処理方法に用いる水処理システム。
【請求項10】
オゾン処理槽の代わりに、促進酸化処理(1B)のための促進酸化処理槽が備えられた、請求項9に記載の水処理システム。
【請求項11】
促進酸化処理槽が多段で備えられた、請求項10に記載の水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−58078(P2010−58078A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228107(P2008−228107)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】