説明

水処理装置及び水処理方法

【課題】複数の吸着塔を直列に隣接接続し、メリーゴーランド方式による水処理を行う水処理装置において、通液する吸着塔の切り替えを行う際にも、水のpHを放流基準内に保持し、かつ優れた処理能力も発揮可能な水処理装置等を提供する。
【解決手段】吸着剤が充填された3基以上の吸着手段と、これら吸着手段のうち使用順序が連続する任意の2基を使用順序に従って直列に接続し、被処理液を前段に供給する手段10と後段を経由し被処理液から前記物質が吸着処理された処理済み液を回収する手段20と、前段の破過に伴い後段を使用順序が連続する新たな2基の前段とし使用順序に従う吸着手段を新たな2基の後段として使用順序に従って吸着手段を切り替える手段と、切り替え手段によって切り替えられた新たな2基の前段に被処理液を供給する前段階として、被処理液を前記新たな2基の後段に供給し新たな2基の前段に移送して回収する逆送手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水や、各種工場、例えば食品工場、化学工場からの工業廃水、家庭等からの生活廃水等、各種廃水を処理する水処理装置、及びこれを用いた水処理方法に関する。
さらに詳しくは、本発明は、水中のリン、ホウ素、ヒ素、フッ素イオンを選択的に吸着除去できる水処理装置または水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染、富栄養化に対応するため、飲料水、工業用水、工業廃水、下水道処理水、環境水中のリン、ホウ素、ヒ素、フッ素イオン等の環境基準が強化され、それらを除去する技術への要望が高まってきている。
例えば、リンは富栄養化の原因物質の一つであり、閉鎖系水域で規制が強まっており、具体的には、閉鎖系水域のリンの排水基準は0.5〜2mg/リットル以下に規制されている。
また、ホウ素は、植物の育成にとって必須の元素であるが、過剰に存在すると植物の成長に悪影響を及ぼすことが知られており、更には、人体に対しても、飲料水中に含まれると、健康への影響、特に生殖機能の低下等の健康障害を起こす可能性が指摘されている。
【0003】
また、ヒ素は、非鉄金属精錬工業の排水や、地熱発電所の熱排水、また特定地域の地下水等に含まれている。ヒ素は、生体への蓄積性があり、慢性中毒、体重減少、知覚傷害、肝臓障害、皮膚沈着、皮膚がんなどを発症すると言われている。ヒ素は、排水基準で0.1mg/リットル以下に規制されている。
フッ素は、金属精錬、ガラス、電子材料工業等からの排水に多く含まれている。フッ素は、過剰に摂取すると、斑状歯、骨硬化症、甲状腺障害等の慢性フッ素中毒症等の人体への悪影響を引き起こすことが知られている。フッ素の水質基準は、水道水の場合には0.8mg/リットル以下とされている。
【0004】
上記のような各種有害イオンを除去する技術として、下記特許文献1には、いわゆるメリーゴーランド方式で通水するイオン除去・回収システムが提案されている。
これは、無機イオン吸着体と有機高分子から構成される吸着剤が、3塔の固定床吸着塔(以下、これらを通液順に従ってA塔、B塔、C塔と称する)に充填された構成を有しているシステムである。
まずA塔とB塔とを直列に連通させた構成とし、A塔からB塔に通液して除去処理を行う。A塔が破過してA塔の吸着体の利用率が十分高くなった段階でA塔の使用を停止し、続いてB塔とC塔とを直列に連通させた構成とし、B塔からC塔に通液して除去処理を行って、その間にA塔の活性化処理を行う。
次に、B塔が破過したらC塔と活性化されたA塔とを直列に連通させた構成とし除去処理を行って、その間にB塔の活性化処理を行う。
このように、3塔を2塔ずつ直列に連通させ、あらかじめ定められた使用順序で循環的に用いることにより、連続的にかつ吸着体の利用率を高く維持したまま、破過による廃水への有害物の漏れがないようにして有害物除去処理を行うものである。
【0005】
図11に、上述した従来システムの一例の模式的構成図を示す。
図11に示す水処理装置においては、まず、A塔とB塔とを直列に連通した構成として用いるとき、被処理液(図中の原水1)は、検出器D1→弁V1→吸着塔A→弁V8→検出器D3→吸着塔B→弁V5→ライン20→検出器D8の順に通過し、最終的に処理された状態の処理済み液(図中の処理水2)となる。
以下、B塔とC塔とを用いる場合、C塔とA塔とを用いる場合においても、ラインを切り替えることによって同様の通液が行われ、最終的に処理済み液(図中の処理水2)が得られる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−346545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように各種有害イオンの除去を行う場合には、下記のような問題がある。
前工程で使用されていた2塔(例えば、上記A塔とB塔)から、新たに使用される2塔(例えば、上記のB塔とC塔)に切り替わった場合、吸着剤活性化のために過剰量に使用されている酸やアルカリが、新たに処理に加わった後段の塔(この場合、C塔)内に存在しているため、そのまま被処理液を塔内(B塔とC塔)に順送すると、処理済み液(処理水2)のpHが、前工程から急激に変化してしまい、環境基準を満たさなくなるという問題が生じた。
この問題に対応するためには、従来、処理済み液を更に中和するという操作を必要としていた。
特に、下水二次処理などの処理量が大量である場合、上述したシステムを適用すると、処理済液のpHを放流基準のpH5.8〜8.6にまで中和するためには、膨大な量の中和剤(酸またはアルカリ)が必要とされるため、コスト面、環境面の課題となっていた。
【0008】
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑みて、いわゆるメリーゴーランド方式の水処理装置において、使用する吸着手段を切り替える際、回収される処理済み水(処理水)のpHが放流基準内に収まるように調整する構成を具備する水処理装置、及びこれを用いた水処理方法を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の発明として、上述した従来技術の課題の解決を図るべく、下記構成を有する水処理装置を提案する。
被処理液に含有された物質を吸着しうる吸着剤が充填されており、あらかじめ使用順序が循環的に定められた3基以上の吸着手段と、前記吸着手段のうち、前記使用順序が連続する任意の2基を、前記使用順序に従って直列に接続し、かつ使用順序に従う方向に前記被処理液を移送する順送手段と、前記被処理液を、前記2基の吸着手段のうちの前段に供給する手段と、前記前段に続いて、前記2基の吸着手段のうちの後段を経由し、前記被処理液中の含有物質が吸着処理された処理済み液を回収する手段と、前記前段の破過に伴い、前記後段を、前記使用順序が連続する新たな2基の前段とし、かつ前記使用順序に従う前記後段に続く吸着手段を前記新たな2基の後段として、前記使用順序に従って吸着手段を繰り返し切り替える切り替え手段と、前記切り替え手段によって切り替えられた前記新たな2基の前段に前記被処理液を供給する前段階として、前記被処理液を前記新たな2基の後段に供給し、前記新たな2基の前段に移送して回収する逆送手段と、を具備する水処理装置を提供する。
逆送手段によって被処理液が新たな2基の前段に移送されることにより、新たな後段中に過剰にある吸着剤活性化用の酸またはアルカリが、新たな2基の前段中の吸着剤を再活性化する。
【0010】
前記水処理装置は、前記順送手段によって前記被処理液の移送を行ったとき、および前記逆送手段によって前記被処理液の移送を行ったときの双方で、被処理液の水質を検知可能な水質検出手段を具備していることが好ましい。
【0011】
前記吸着剤は、少なくとも無機イオン吸着体を含有しているものであることが好ましい。
【0012】
前記無機イオン吸着体は、下記式(1)で表される金属酸化物を少なくとも一種含有していることが好ましい。
MNxOn・mH2O・・・・・・(1)
但し、式(1)中、xは0〜3、nは1〜4、mは0〜6である。MおよびNは、Ti、Zr、Sn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Si、Cr、Co、Ga、Fe、Mn、Ni、V、Ge、Nb、及びTaからなる群から選ばれる金属元素であり、互いに異なるものとする。
【0013】
前記金属酸化物が、下記(a)〜(c)のいずれかの群から選ばれた1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。
(a)水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、及び水和酸化イットリウム。
(b)チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、及びイットリウムからなる群から選ばれる金属元素と、アルミニウム、珪素、及び鉄からなる群から選ばれる金属元素との複合金属酸化物。
(c)活性アルミナ。
【0014】
前記吸着剤は、少なくとも有機高分子樹脂及び前記無機イオン吸着体を含んでおり、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、前記連通孔を形成するフィブリルの内部に空隙を有し、当該空隙の少なくとも一部が前記フィブリルの表面で開孔しており、かつ前記フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に、前記無機イオン吸着体が担持されているものであることが好ましい。
【0015】
また、第二の発明として、上記水処理装置を用いた水処理方法を提案する。
すなわち、まず、前記順送手段により前記被処理液を前記2基の吸着手段のうちの前段に供給し、前記2基の後段を経由した前記被処理液から前記物質が吸着処理された処理済み液を回収する工程を行う。前記前段の破過に伴い、前記後段を前記使用順序が連続する新たな2基の新たな前段とし、かつ前記使用順序に従って前記後段に続く吸着手段を新たな2基の後段として、前記使用順序に従って繰り返し切り替える工程を行う。続いて、前記逆送手段により、前記新たな2基の前段に前記被処理液を供給する前段階として、前記被処理液を前記新たな2基の後段に供給し、続いて前記新たな2基の前段に移送して回収する逆送工程を行う。
逆送工程によって被処理液が新たな2基の前段に移送されることにより、新たな後段中に過剰に存在している吸着剤活性化用の酸またはアルカリが新たな2基の前段中の吸着剤を再活性化する機能を発揮し、処理済み液のpHの調整を別途行う必要はなくなる。
【0016】
なお、前記逆送工程は、前記新たな2基の前段から回収される被処理液の水質が、排出基準を満たしている状態で終了することが望ましい。
これにより、続いて行う順送工程で新たな2基となった吸着手段の機能を有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被処理液中に含有されている有害物質等を、良好な状態となるまで確実に除去でき、回収された処理済液に対して別途中和する工程を必要とせず、放流基準内に調整でき、従来必要とされていた中和用の薬剤の量を大幅に低減化できた。
更に、逆送工程において、新たな後段となった吸着塔から溶出した活性化薬剤が前段の吸着剤を再活性化し、吸着能力を高めることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々変形して実施することができる。
【0019】
本実施の形態において用いられる水処理装置の一例の概略構成図を図1に示す。
図1の水処理装置は、吸着手段として3塔の吸着塔(A塔、B塔、C塔)が配置された構成を有している。
なお、吸着塔の数は3塔以上であれば、循環的に切り替えて連続的に使用できるが、いわゆるメリーゴーランド方式の機能や、設備構成の簡易化の観点から、3塔構成が好適である。
4塔以上とする場合であっても、使用順序を維持して2塔ずつ以上を直列に使用し、同時に少なくとも1塔が休止状態となるようにしておけば、さらに1塔あたりの吸着剤の利用率を高めることができる。
下記においては、図1に従って3塔の吸着塔が配列された構成の水処理装置を例として説明する。
【0020】
吸着塔A〜Cには、被処理液(原水1)に含有されている有害物質や不要物等を吸着する機能を備えた吸着剤が充填されている。
この吸着剤は、上記物質を吸着する機能を有する材料であればよいが、有害イオンを除去するためには、所定のイオン交換体であることが必要である。
イオン交換体を活性化させるためには、酸またはアルカリによる処理が必要とされる。このため、水処理装置のライン上には、水質検出手段(以下、単に検出器と言うこともある)として、pH検出器や、被処理液(原水1)からの除去対象である有害イオンの濃度を測定するための濃度計を、配置することが好適である。
【0021】
以下、吸着剤がイオン交換体としての機能を具備しているものとして説明する。
3塔の吸着塔は、A塔→B塔→C塔→A塔(以下、繰り返し)の順に、使用順序が定められているものとする。
原水1の処理は、使用順序が連続する任意の2塔ずつを用いるものとし、上記の使用順序に従う。
具体的には、A塔とB塔とを直列に連通させて使用→B塔とC塔とを直列に連通させて使用→C塔とA塔とを直列に連通させて使用→A塔とB塔とを直列に連通させて使用、というように、1塔ずつ循環的に切り替えて処理を行う。
【0022】
この水処理装置においては、使用順序が連続する任意の2基を、前記使用順序に従って直列に接続し、当該使用順序に従って前記被処理液を移送する機能を備えた順送手段が設けられている。
順送手段について具体的に説明する。
吸着塔Aの出口ライン21から弁V8と検出器D3を経由して吸着塔Bの入り口ライン12に至る順送用のライン41、吸着塔Bの出口ライン22から弁V10と検出器D5を経由して吸着塔Cの入り口ライン13に至る順送用のライン42、及び、吸着塔Cの出口ライン23から弁V12と検出器D7を経由して吸着塔Aの入り口ライン11に至る順送用のライン43が順送手段を構成している。
このようなライン構成とすることにより、いわゆるメリーゴーランド方式が有効に機能する。
【0023】
本実施の形態における水処理装置においては、所定の供給手段によって、被処理液(原水1)は、直列に連通した2基の吸着塔のうちの前段に供給されるようになされている。
前段に原水1を供給する供給手段としては、系外から原水1を水処理装置に導入し、検出器D1を経由して各吸着塔の入り口配管の弁V1、V2、V3に到達するライン10が設けられている。
なお、弁V1、V2、V3の開閉を適宜切り替えることによって、吸着塔A〜Cのうちの目的とする塔に供給できるようになされている。
また、吸着塔のうち、定められた使用順序に従って順送の場合に順序が前のものを「前段」といい、後のものを「後段」と称する。
【0024】
本実施の形態における水処理装置においては、前記前段に続いて後段を経由した後の処理済み液を回収する手段が設けられているものとする。
この処理済み液(処理水2)を回収する手段としては、各吸着塔の下部の出口配管であるライン21、22、23から、各々弁V4、V5、V6を経て、放流出口前の検出器D8に至るライン20が設けられている。
検出器D8によって放流基準(水質環境基準)が満たされていると判定されると、処理水2は系外に放流される。
【0025】
本実施の形態における水処理装置は、前段の破過に伴い、前記後段を前記使用順序が連続する新たな2基の前段とし、かつ前記使用順序に従って前記後段に続く吸着手段を前記新たな2基の後段とするようにして、前記2基を新たな2基に使用順序に従って繰り返して切り替える切り替え手段を具備している。
この切り替え手段としては、弁V1〜V6、V8、V10、V12、検出器D3、D5、D7が、それぞれ設けられている。
その際、切り替え前に使用していた2基のうちの後段の吸着塔を、新たな2基の前段とし、かつ使用順序に従ってそれまで使用していた後段に続く吸着塔を新たな2基の後段とするように、各弁の開閉を行う。このような操作により、新たな2基に切り替わる。
【0026】
図2に、A塔とB塔とが直列に連通された構成とし、原水1から有害物質等を吸着除去する場合の装置構成図を示す。
弁V1、V8、V5が開となり、その他の弁は閉となっている。図中の実線のラインに沿って矢印方向に原水1が流れていく。具体的には、検出器D1、弁V1、吸着塔A、弁V8、検出器D3、吸着塔B、弁V5、検出器D8の順に通水される。
なお、図2中の破線のラインは液が流れていない状態であり、吸着塔Cは、活性化処理を受けているか、または休止中であることを意味する。以下においても同様である。
【0027】
水処理装置を図2に示す構成とし、原水1の通水を行い、吸着処理をしばらく行うと、吸着塔Aの吸着機能が低下していき、検出器D3で吸着対象である有害イオンが検出されるようになる。
しかしながら、有害イオンが検出された初期段階では、まだ吸着塔Aの中に有害イオンを吸着していない吸着剤がそれなりに残存した状態であるので、そのまま有害イオン濃度が、定められた基準値に到達するまで吸着塔Aの使用を継続する。そして、基準値に到達した段階で、吸着塔Aが破過した状態となったと判断し、使用を停止する。
【0028】
上述のように前段が破過した後、切り替え手段によって、新たな2基の処理塔が直列に連通する構成に組み替えるようにする。
本実施の形態における水処理装置は、新たな前段となった処理塔に原水1(被処理液)を供給する前段階として、原水1(被処理液)を、新たな後段となった処理塔に供給し、新たな前段の処理塔に移送して回収する機能を有する逆送手段を具備している。
この逆送手段は、新たな2基の吸着塔に切り替えて通常の吸着処理を開始する際に、処理水のpHが急激に変化し、放流するための水質の排出基準を超えないようにする機能を有している。
なおここで、「逆送」とは、あらかじめ定められた使用順序、すなわち被処理液の通液方向に対して逆の方向に液送する意味である。
図1の例における逆送手段としては、吸着塔Aの出口ライン21から弁V7を通るように分岐し、検出器D2を経由して吸着塔Cの入り口ライン13に至るライン51、吸着塔Bの出口ライン22から弁V9を通るように分岐し、検出器D4を経由して吸着塔Aの入り口ライン11に至るライン52、また、吸着塔Cの出口ライン23から弁V11を通るように分岐し、検出器D6を経由して吸着塔Bの入り口ライン12に至るライン53が、該当する。
【0029】
吸着塔Aと吸着塔Bとが直列に連通された構成で除去処理を行った後、前記切り替え手段によって新たな2基の処理塔に組み替え、処理塔Bが新たな前段となり、処理塔Cが新たな後段となる。
被処理液の逆送を行う工程について、図3を参照して説明する。
図3に示す構成の水処理装置においては、弁V3、V11、V5が開となり、他の弁が閉となっており、図中の矢印方向に被処理液(原水1)が流れている。
具体的には、検出器D1、弁V3、吸着塔C、弁V11、検出器D6、吸着塔B、弁V5、検出器D8の順に流れている。この場合、吸着塔Cは新しく使用が開始された吸着塔(新たな後段)である。
この吸着塔Cをそのまま使用すると、吸着塔Cの吸着剤の活性化処理に過剰に用いた酸またはアルカリが流出し、流出液のpHは、放流するための水質の排出基準を超えてしまう。
しかし、本実施の形態における水処理装置においては、ライン53を経由して吸着塔Bに通液されるようになされている。
このように逆送を行うことにより、吸着塔Cから流出した酸またはアルカリが、吸着塔Bの吸着剤を活性化する。
なお、この逆送工程においては、吸着塔Bの出口ライン22から放出される被処理液が、放流水質基準を満たしていることを確認することが必要である。これにより、吸着塔Bの吸着剤の有効利用が図られ、かつ回収される逆送した被処理液の水質の排出基準も満たすようになる。
【0030】
上述した逆送工程において回収される被処理液のpHがほぼ均一になってきたことを確認した段階で、新たな前段の吸着塔内の過剰量の酸またはアルカリが消費されたものと判断される。
この後、図4に示すように、各弁を切り替えて、吸着塔B(前段)と吸着塔C(後段)を直列に連通させた構成とし、この順序に従って被処理液(原水1)を順送し、通常の吸着除去工程の2段目を行う。
すなわち、図4においては、弁V2、V10、V6が開となり、その他の弁が閉となって図中の矢印に従って液流れが行われる。これにより原水中の有害イオンが吸着除去される。なお、吸着塔Bと吸着塔Cが稼動している間は、吸着塔Aは活性化処理を受けて休止した状態となって、後の使用に備えられる。
【0031】
上述したように、吸着塔Bと吸着塔Cを組み合わせた構成による吸着除去工程を継続して行うと、吸着塔B(前段)が破過し、検出器D5が所定の基準濃度以上の有害イオンを検知するようになる。
この段階で吸着塔Bの使用を停止し、再び上述した操作と同様にして吸着塔の切り替えと逆送工程とを行う。この場合の水処理装置の構成と逆送工程の液流れを図5に示す。
図5においては、吸着塔C(前段)と吸着塔A(後段)が直列に連通するようになっており、逆送工程においては、弁V1、V7、V6が開となり、その他の弁が閉となって、図中の矢印に従って被処理液(原水1)が流れるようになされている。
ここで、吸着塔Aは、上記休止状態において活性化処理が施されているため、吸着塔Aから流出する処理液には活性化のために過剰に使用された酸またはアルカリが含まれた状態となっている。そこで逆送工程によって吸着塔Aから吸着塔Cに移送を行うことにより、吸着塔Cの吸着剤を活性化し、かつpHが放出水質基準内に制御される。
【0032】
上述した逆送工程を継続して行い、処理済み液(処理水2)のpHが安定化したら、吸着塔Cと吸着塔Aとをあらかじめ定められた使用順序に対して順方向になるように弁を開閉し、図2、図4の場合と同様にして3段目の吸着除去工程を行う。
この場合の液流れの状態を図6の矢印に示す。図6においては、弁V3、V12、V4が開となり、その他の弁が閉となって吸着除去工程が行われる。吸着塔Aと吸着塔Cが稼動している間は、吸着塔Bは休止中となり、活性化処理を受ける。
【0033】
上述したように吸着塔Cと吸着塔Aを用いた吸着除去工程を継続して行うと、やがて吸着塔Cが破過し、検出器D7が所定の基準濃度以上の有害イオンを検知するようになる。この段階で吸着塔Cの使用を停止し、再び上述した操作と同様にして吸着塔の切り替えと逆送工程とを行う。この場合の液流れの状態を図7の矢印に示す。図7においては、弁V2、V9、V4が開となり、その他の弁が閉となっており、吸着塔Bから排出される処理水のpHが安定するまで逆送工程を行う。
処理済み液(処理水2)のpHが安定化したら、順方向に液流れを切り替えて、図2に示したように、吸着塔Aと吸着塔Bとを順方向に直列に接続して状態として吸着除去工程を行う。
以下同様に、図2から図7に示した装置構成として、被処理液に対する有害物質の除去を繰り返し行う。
【0034】
上述したように、順送工程による吸着除去工程、適用する吸着塔の切り替え、及び逆送工程によるpH調整を繰り返して行うことにより、処理済み液(処理水2)が所定の放流基準を外れることなく、有害イオンの除去を長期に亘って連続的に行うことが可能になる。
【0035】
次に、上述した水処理装置を構成する吸着塔A〜Cから排出される処理済み液に対し、所定の測定を行う機能を有する検出器D1〜D7は、該当箇所の水質を測定可能な機能を有していれば特に限定されるものではない。
例えば、pH計、酸化還元電位計、伝導度計、濁度計、溶存酸素計、各種のイオン測定手段が挙げられる。
イオン測定手段としては、処理対象とするイオン種類によって適宜選択可能である。具体的には、リン酸イオン濃度計、フッ素イオン濃度計、ホウ酸イオン濃度計等があげられる。リン酸イオンを処理対象とする場合には、全リン濃度計を使用することもできる。特に、処理水のpHを直接的に管理できる点で、水質検出手段にはpH計を含めるのが好ましい。また、これらの測定状態はオンラインで監視することには限定されず、オフラインでサンプリングした処理水を、例えばICP発光分析法や比色法等を用いて適宜検査し管理するようにしてもよい。
また、吸着塔の切り替えのタイミングについては、検出器によって吸着塔内の吸着済み処理水の容量を検出することにより判断してもよいが、通水時間を計測することによって判断するようにしてもよい。
【0036】
また、上述した水処理装置おいては、直列に用いる吸着塔数を2とした場合について説明したが、吸着塔数は適宜変更が可能である。
吸着塔数が増加すると、有害イオンの処理能力は上昇するが、一方においては、水処理装置としてのイニシャルコストが高額になる。
よって、直列に連通した状態として稼動させる吸着塔の最小数は2であり、最大数は、水処理装置が具備している吸着塔総数よりも1少ない数となる。
【0037】
次に、吸着塔内に充填される吸着剤について説明する。
吸着剤は被処理液に含有されている物質を吸着する機能を有するものであり、特に限定されるものでない。
例えば、下水、食品工場、化学工場、家庭などから発生する廃水に含まれる有害イオンを吸着する機能を有するものとしては、無機イオン吸着体が好適である。
なお、無機イオン吸着体とは、イオン吸着現象またはイオン交換現象を示す無機物質をいうものとする。
例えば、天然物ではゼオライトやモンモリロナイト、各種の鉱物性物質があり、合成物系では金属酸化物等がある。天然物としてはアルミノケイ酸塩で単一層格子をもつカオリン鉱物、2層格子構造の白雲母、海緑石、鹿沼土、パイロフィライト、タルク、3次元骨組み構造の長石、ゼオライト等が挙げられ、合成物系では、金属酸化物、多価金属の塩、不溶性のヘテロポリ酸塩、不溶性ヘキサシアノ鉄酸塩等が挙げられる。
【0038】
上記多価金属の塩としては、下記式(2)のハイドロタルサイト系化合物が挙げられる。
2+(1−X)M3+x(OH-)(2+x−y)(An-)y/n・・・(2)
但し、式(2)中、M2+はMg2+、Ni2+、Zn2+、Fe2+、Ca2+及びCu2+からなる群から選ばれる少なくとも1種の二価の金属イオンを示し、M3+はAl3+及びFe3+からなる群から選ばれる少なくとも1種の三価の金属イオンを示し、An-はn価のアニオンを示し、0.1≦x≦0.5であり、0.1≦y≦0.5であり、nは1または2である。
【0039】
上記金属酸化物は、下記式(1)により表されるものである。
MNxOn・mH2O・・・(1)
但し、式(1)中、xは0〜3、nは1〜4、mは0〜6であり、MおよびNは、Ti、Zr、Sn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Si、Cr、Co、Ga、Fe、Mn、Ni、V、Ge、Nb及びTaからなる群から選ばれる金属元素であり、互いに異なるものとする。
【0040】
上記金属酸化物は、上記式(1)中のmが0で表せる未水和(未含水)の金属酸化物であってもよいし、mが0以外の数値で表せる水和(含水)金属酸化物であってもよい。
【0041】
また、上記式(1)中のxが、0以外の数値である場合は、含有される各金属元素が規則性を持って酸化物全体に均一に分布しているものとする。例えば、ペロブスカイト構造、スピネル構造等を形成しており、ニッケルフェライト(NiFe24)、ジルコニウムの含水亜鉄酸塩(Zr・Fe24・mH2O mは0.5〜6)のように金属酸化物に含有される各金属元素の組成比が一定に定まった化学式で表される複合金属酸化物となっている。
【0042】
吸着剤を無機イオン吸着体とするときには、リン、ホウ素、フッ素、ヒ素の吸着性能に優れている点から、水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、水和酸化イットリウム;チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、イットリウムからなる群から選ばれる金属元素と、アルミニウム、珪素、鉄からなる群から選ばれる金属元素との複合金属酸化物、および活性アルミナからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物を適用することが好ましい。また、硫酸アルミニウム添着活性アルミナ、硫酸アルミニウム添着活性炭等も好ましい。
なお、上記式(1)で表される金属酸化物は、M、N以外の金属元素が固溶した状態となっていてもよい。例えば、式(1)に則ってZrO2・mH2Oという式で表される水和酸化ジルコニウムである場合、鉄が固溶した水和酸化ジルコニウムであってもよい。
また、無機イオン吸着体は、式(1)で表される金属酸化物を複数種含有したものであってもよい。
【0043】
無機イオン吸着体における金属酸化物の分布状態は、特に制限されるものではない。しかし、金属酸化物の特性を有効活用し、コストパフォーマンスに優れる無機イオン吸着体とするためには、特定の金属酸化物の周りを他の金属酸化物が覆った混合体構造となっていることが好ましい。このような構造としては、例えば、四三酸化鉄の周りを水和酸化ジルコニウムが覆った構造が挙げられる。
【0044】
また、金属酸化物には他の元素を固溶している金属酸化物も含むものとし、例えば、ジルコニウムが固溶した四三酸化鉄の周りを鉄が固溶した水和酸化ジルコニウムが覆った構造も好適なものとして挙げられる。
水和酸化ジルコニウムは、リン、ホウ素、フッ素、ヒ素等のイオンに対する吸着性能や繰り返し使用に対する耐久性能は高いがコスト高である。
一方、四三酸化鉄は、水和酸化ジルコニウムに比較してリン、ホウ素、フッ素、ヒ素等のイオンに対する吸着性能や繰り返し使用に対する耐久性能は低いが、非常に安価である。
従って、四三酸化鉄の周りを水和酸化ジルコニウムで覆った構造にした場合、イオンの吸着に関与する無機イオン吸着体の表面付近は、吸着性能、耐久性能が高い水和酸化ジルコニウムになる一方、吸着に関与しない内部は安価な四三酸化鉄になるため、高吸着性能、高耐久性能で、かつ低価格の、コストパフォーマンスに極めて優れる吸着剤として利用することができる。
【0045】
リン、ホウ素、フッ素、ヒ素等の環境や健康に有害なイオンの吸着除去に対して、コストパフォーマンスに優れる吸着剤を得るという観点から、無機イオン吸着体は、式(1)中のMおよびNの少なくとも一方が、アルミニウム、珪素、鉄から選ばれる金属元素でありこれらの金属酸化物の周りを、式(1)中のMおよびNの少なくとも一方が、チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、イットリウムからなる群から選ばれる金属元素の酸化物で覆われた構造とすることが好ましい。
【0046】
上記の場合、無機イオン吸着体中の、アルミニウム、珪素、鉄からなる群から選ばれる金属元素の含有比率に関しては、アルミニウム、珪素、鉄からなる群から選ばれる金属元素と、チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、イットリウムからなる群から選ばれる金属元素との合計モル数をT、アルミニウム、珪素、鉄からなる群から選ばれる金属元素のモル数をFとした場合、F/T(モル比)が、0.01〜0.95の範囲であることが好ましく、0.1〜0.90の範囲であることがより好ましく、0.2〜0.85であることがさらに好ましく、0.3〜0.80であることが特に好ましい。
F/T(モル比)の値が過大であると、吸着性能、耐久性能が低くなる傾向があり、小さくなると低価格化に対する効果が小さくなるためである。
【0047】
また、金属によっては、金属元素の酸化数が異なる複数の形態の金属酸化物が存在するが、無機イオン吸着体中で安定に存在できるものであれば、その形態に制限はない。
例えば、鉄の酸化物である場合は、空気中での酸化安定性の問題から、水和酸化第二鉄(FeO1.5・mH2O)、または水和四三酸化鉄(FeO1.33・mH2O)が好適である。
【0048】
なお、無機イオン吸着体には、その製造工程中に不純物元素が混入する場合があるが、無機イオン吸着剤としての機能を害さない範囲において支障はない。
混入する可能性がある不純物元素としては、例えば、窒素(硝酸態、亜硝酸態、アンモニウム態)、ナトリウム、マグネシウム、イオウ、塩素、カリウム、カルシウム、銅、亜鉛、臭素、バリウム、ハフニウム等が挙げられる。
【0049】
また、無機イオン吸着体に関しては、比表面積が吸着性能や耐久性能に影響する。このため、比表面積が一定の範囲内に規定することが好ましい。
具体的には、窒素吸着法により求められるBET比表面積が20〜1000m2/gの範囲であることが好ましく、30〜800m2/gであることがより好ましく、50〜600m2/gであることがさらに好ましく、60〜500m2/gであることが特に好ましい。
無機イオン吸着体のBET比表面積が小さすぎると、吸着性能が低下し、大きすぎると酸やアルカリに対する溶解性が大きくなり、その結果繰り返し使用に対する耐久性能が低下する。
【0050】
上記式(1)により表される金属酸化物は、下記の方法により製造できる。
例えば、当該金属塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の塩類水溶液中に、アルカリ水溶液を添加して得られた沈殿物をろ過、洗浄した後、乾燥することにより得られる。
なお、乾燥工程は、風乾で行うか、もしくは約150℃以下、好ましくは約90℃以下の温度条件で約1〜20時間程度の処理を行う。
【0051】
次に、上記式(1)中のMおよびNの少なくとも一方がアルミニウム、珪素、鉄からなる群から選ばれる金属元素である金属酸化物の周りを、式(1)中のMおよびNの少なくとも一方がチタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、イットリウムからなる群から選ばれる金属元素である金属酸化物で覆った構造とした無機イオン吸着体の製造方法について説明する。
下記の例においては、四三酸化鉄の周りを酸化ジルコニウムによって覆った構造とした無機イオン吸着体を製造する場合について説明する。
【0052】
まず、ジルコニウムの塩化物、硝酸塩、硫酸塩等のジルコニウムの塩と、鉄の塩化物、硝酸塩、硫酸塩等の鉄の塩とを、上述のF/T(モル比)が所望の値になるように混合した塩類水溶液を作製する。
その後、アルカリ水溶液を添加して、pHを8〜9.5、好ましくは8.5〜9に調整し、沈殿物を生成する。
この後、水溶液の温度を30〜80℃、好ましくは40〜60℃に調整し、また、pHを8〜9.5、好ましくは8.5〜9に保ちながら、酸化性ガス、例えば空気を吹き込み、液相に第一鉄イオンが検出できなくなるまで、酸化処理を行う。
これにより生じた沈澱を濾別し、水洗した後、乾燥処理を施す。乾燥処理は風乾するかもしくは約150℃以下、好ましくは約90℃以下で約1〜20時間程度の熱処理を行う。
乾燥後の含水率は、約6〜30重量%の範囲内であることが好ましい。
【0053】
前記製造工程において用いられるジルコニウムの塩としては、具体的に、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOC12)、四塩化ジルコニウム(ZrC14)、硝酸ジルコニウム(Zr(NO34)、硫酸ジルコニウム(Zr(SO42)等が挙げられる。これらは例えばZr(SO42・4H2O等のような含水塩であってもよい。これらの金属塩は、通常、1リットル中に約0.05〜2.0モルの溶液状で用いられる。
また、前記製造工程において用いられる鉄の塩としては、硫酸第一鉄(FeSO4)、硝酸第一鉄(Fe(NO32)、塩化第一鉄(FeC12)等の第一鉄塩が挙げられる。これらもFeSO4・7H2Oなどの含水塩であってもよい。これらの第一鉄塩は通常、固形物で加えられるが、溶液状で加えてもよい。
【0054】
また、前記製造工程において用いられるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、炭酸ナトリウム等が挙げられる。アルカリ水溶液は、約5〜20重量%の水溶液とすることが好ましい。
酸化性ガスを吹き込む場合、その時間は、酸化性ガスの種類等によって異なるが、通常約1〜10時間程度である。酸化剤としては、たとえば過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等が用いられる。
【0055】
上記のようにして作製した無機イオン吸着体は、そのままの状態でも吸着塔内に充填して使用することができるが、通常、粒度が小さく、カラム等に充填して通液すると圧力損失が大きくなることが多い。そこで、所定のバインダ等を用いて造粒し、粒度を調整することが好ましい。
【0056】
次に、吸着剤として好適な形態について説明する。
吸着塔に充填する吸着剤の形態は、多孔性成形体であることが好ましい。
多孔性成形体は、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含み、連通孔を有し、多孔質な構造を有するものとする。さらに、外表面にはスキン層が無く、表面の開口性に優れている。
さらに、連通孔を形成するフィブリル内部にも空隙を有し、その空隙の少なくとも一部はフィブリル表面で開孔しているものとする。
【0057】
なお、上記吸着剤を構成する多孔性成形体の外表面開口率は、走査型電子顕微鏡で表面を観察した視野の面積中に占める全ての孔の開口面積の和の割合をいうものとする。具体的には、10000倍で成形体表面を観察し外表面開口率を実測したところ、表面開口率の範囲が10〜90%であることが好ましく、特に15〜80%の範囲であることが好ましい。
表面開口率が10%未満であると、リン等の吸着対象物質の成形体内部への拡散速度が遅くなる。一方において90%を超えると、成形体の力学的強度が不足するという問題を生じる。このため、上記数値範囲とすることが好ましい。
成形体の外表面開口径は、上記のように走査型電子顕微鏡で表面を観察して求められる。
孔が円形の場合はその直径、円形以外の場合は、同一面積を有する円の円相当直径を用いる。
孔の表面開口径の好適な範囲は、0.005μm〜100μmであり、特に0.01μm〜50μmが望ましい。0.005μm未満であると、リン等の吸着対象物質の成形体内部への拡散速度が遅くなりやすく、一方、100μmを超えると成形体の強度が不足しやすいためである。
【0058】
上記吸着剤を構成する多孔性成形体は、連通孔を形成するフィブリル内部にも空隙を有し、かつ、その空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開孔しているものとする。上述した無機イオン吸着体は、このフィブリルの外表面及びフィブリル内部の空隙表面に担持されているものとする。フィブリル自体も多孔質であるため、内部に埋め込まれた吸着基質である無機イオン吸着体も、リンのような吸着対象物質と接触でき、有効に吸着剤として機能する。
多孔性成形体は、吸着基質の微細な吸着サイトがバインダで塞がれることが少なく、吸着基質の機能が有効に発揮されるという利点を有している。
なお、上記フィブリルとは、有機高分子樹脂からなり、成形体の外表面及び内部に三次元的に連続した網目構造を形成する繊維状の構造体を意味する。
フィブリル内部の空隙及びフィブリル表面の開孔の状態は、走査型電子顕微鏡で成形体の割断面を観察することにより判定でき、フィブリルの断面には空隙があり、フィブリルの表面は開孔していることがわかる。
さらに、無機イオン吸着体の粉末が、フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に担持されている様子が観察できる。
フィブリルの太さは、0.01μm〜50μmが好ましい。フィブリル表面の開孔径は、0.001μm〜5μmが好ましい。
【0059】
多孔性成形体は、連通孔が成形体表面付近に最大孔径層を有していることが好ましい。
ここで、最大孔径層とは、多孔性成形体の表面から内部に至る連通孔の孔径分布中で最大の部分をいうものとする。
多孔性成形体にボイドと称される円形又はだ円形(指状)の大きな空隙がある場合には、ボイドが存在する層が最大孔径層となる。
上記成形体表面付近とは、外表面から中心部へ向かって、成形体の割断径の25%までの内側を意味する。最大孔径層が成形体表面付近にあると、吸着対象物質の内部への拡散を速める効果が発揮される。すなわちリンのような吸着対象物質を素早く成形体内部に取り込み、処理水中から除去できる。
最大孔径及び最大孔径層の位置は、成形体の表面及び割断面を走査型電子顕微鏡で観察して求められる。連通孔の孔径は、孔が円形の場合はその直径、円形以外の場合は、同一面積を有する円の円相当直径を用いる。
多孔性成形体の形態としては、特に限定されるものではないが、例えば、粒子状、糸状、シート状、中空糸状、円柱状、中空円柱状等の任意の形態とすることができる。特に、成形体を水処理分野において吸着剤として使用する場合には、カラム等に充填して通水する際の圧力損失、接触面積の有効性の点、取り扱い易さの点から粒子状が好ましく、特に球状粒子(真球状のみならず、楕円球状であってもよい)が好ましい。
【0060】
多孔性成形体が球状であるときの平均粒子径は、レーザー光による回折の散乱光強度の角度分布から求めた球相当径のモード径(最頻度粒子径)であるものとする。平均粒子径は、100〜2500μmが好ましく、特に200〜2000μmが好ましい。平均粒径が100μm未満であるとカラムやタンク等に充填した際に圧力損失が大きくなりやすく、一方において平均粒径が2500μmより大きくなると、カラムやタンクに充填したときの表面積が小さくなり、処理効率が低下する。
【0061】
多孔性成形体の空孔率Pr(%)は、成形体の含水時の重量W1(g)、乾燥後の重量W0(g)、及び成形体の比重をρとしたとき、下記式(3)により表される。
Pr=(W1−W0)/(W1−W0+W0/ρ)×100・・・(3)
【0062】
上記空孔率Pr(%)は、50%〜90%であることが好ましく、特に60〜85%が好ましい。50%未満であるとリン等の吸着対象物質と吸着基質である無機イオン吸着体との接触頻度が不十分となりやすい。一方において90%を超えると成形体の強度が不十分となる。
【0063】
多孔性成形体における無機イオン吸着体の担持量は、成形体の乾燥時の重量をWd(g)、灰分の重量Wa(g)とするとき、下記式(4)により表される。
担持量(%)=Wa/Wd×100・・・(4)
【0064】
ここで、灰分は、成形体を800℃で2時間焼成したときの残分をいう。担持量は、30〜95%が好ましく、さらに好ましくは40〜90%であり、特に65〜90%が好ましい。無機イオン吸着体の担持量が30%未満であると、リン等の吸着対象物質と吸着基質である無機イオン吸着体との接触頻度が不十分となるおそれがあり、一方において担持量が95%を超えると、多孔質成形体の強度が不十分となるおそれがある。
吸着基質と有機高分子樹脂を練り込んで成形を行うことにより、担持量を多く保ちかつ強度の強い成形体を得ることができる。
【0065】
多孔性成形体の比表面積は、下記式(5)により定義される。
比表面積(m2/cm3)=SBET×かさ比重(g/cm3)・・・(5)
但し、SBETとは、成形体の単位重量あたりの比表面積(m2/g)である。
【0066】
比表面積は、成形体を室温で真空乾燥した後、BET法を用いて測定することができる。
かさ比重は、粒子状、円柱状、中空円柱状等の形状が短いものは、湿潤状態の成形体を、メスシリンダー等を用いて、みかけの体積を測定し、その後、室温で真空乾燥して重量を求めることにより得られる。
糸状、中空糸状、シート状等、形状が長いものについては、湿潤時の断面積と長さを測定して、両者の積から体積を算出し、その後、室温で真空乾燥して重量を求めることにより得られる。
【0067】
多孔性成形体の比表面積は、5m2/cm3〜500m2/cm3の範囲であることが好ましい。比表面積が5m2/cm3未満であると、吸着基質の担持量及び吸着性能が不十分となりやすい。一方、比表面積が500m2/cm3を超えると、成形体の強度が不足しやすい。
【0068】
一般的に、吸着基質である無機イオン吸着体の吸着性能(吸着容量)は、無機イオン吸着体の比表面積に比例する場合が多い。多孔性成形体の単位体積あたりの無機イオン吸着体の表面積が小さいと、カラムやタンクに充填したときの吸着容量、吸着性能が小さく、高速処理を達成することが困難となるおそれがある。
【0069】
多孔性成形体は、フィブリルが複雑に絡み合った三次元網目構造を有しているものが好ましい。
この場合、フィブリル自体も空隙を有しているため、表面積が大きくなる。これに、更に大きい比表面積をもつ吸着基質(無機イオン吸着体)を担持させると、単位体積あたりの表面積もより大きくなり、吸着剤としての機能が高くなる。
【0070】
次に、多孔性成形体の製造方法について説明する。
多孔性成形体は、有機高分子樹脂とその良溶媒と無機イオン吸着体と水溶性高分子とを混合した後、成形し、貧溶媒中で凝固させることにより得られる。
有機高分子樹脂としては、特に限定されるものではないが、湿式相分離による多孔化手法に適用可能な材料が好ましい。たとえば、ポリスルホン系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン系ポリマー、ポリ塩化ビニリデン系ポリマー、アクリロニトリル系ポリマー、ポリメタクリル酸メチル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、セルロース系ポリマー、エチレンビニルアルコール共重合体系ポリマー等、多種類が挙げられる。特に、水中での非膨潤性と耐生分解性、さらに製造の容易さから、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましく、さらに親水性と耐薬品性を兼ね備えている点で、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が好ましい。
【0071】
良溶媒としては、有機高分子樹脂及び水溶性高分子を共に溶解する材料であればよく、特に限定されるものではない。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。
これらの良溶媒は、単独で用いてもよく、混合溶媒としてもよい。
有機高分子樹脂の良溶媒中における含有率は、特に限定されるものではないが、5〜40重量%が好ましく、さらには、7〜30重量%が好ましい。
有機高分子樹脂の良溶媒中における含有率が5重量%未満であると、最終的に得られる成形体の強度が不十分となるおそれがある。
また、40重量%を超えると、空孔率の高い多孔性成形体が得られにくい。
【0072】
上記水溶性高分子としては、上述した有機高分子樹脂と相溶性のあるものであれば特に限定されない。
例えば、天然高分子としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラーギナン、アラビアゴム、トラガント、ペクチン、デンプン、デキストリン、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン等が挙げられる。また、半合成高分子では、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン等が挙げられる。さらに、合成高分子では、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、さらに、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール等のポリエチレングリコール類が挙げられる。
これらの水溶性高分子の中でも、耐生分解性を有する点で合成高分子が好ましい。
【0073】
また、水溶性高分子としては、連通孔を形成するフィブリル内部にも空隙を有する構造を発現する効果が高いという観点から、ポリビニルピロリドンが特に好ましい。
ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、2000〜2000000の範囲が好ましく、2000〜1000000の範囲がより好ましく、2000〜100000の範囲がさらに好ましい。
上記重量平均分子量が2000未満であると、フィブリル内部に空隙を有する構造を発現させる効果が低くなる傾向があり、2000000を超えると、成形する時の粘度が上昇して、成形が困難となる傾向がある。
【0074】
多孔性成形体における水溶性高分子の含有量は、成形体の乾燥時の重量をWd(g)、成形体から抽出した水溶性高分子の重量をWs(g)とするとき、下記式(6)により表される。
含有量(%)=Ws/Wd×100・・・(6)
【0075】
水溶性高分子の含有量は、水溶性高分子の種類、分子量に左右されるが、0.001〜10%が好ましく、0.01〜1%がより好ましい。
上記含有率が0.001%未満であると、多孔性成形体の表面を開口させる効果が十分に得られないおそれがあり、一方において10%を超えると相対的にポリマー濃度が薄くなり、実用上十分な強度が得られないおそれがある。
【0076】
上記多孔性成形体中の水溶性高分子の重量Wsは、次のようにして測定することができる。
まず、乾燥した成形体を乳鉢等で粉砕した後、この粉砕物から水溶性高分子の良溶媒を用いて水溶性高分子を抽出し、次いで該抽出液を蒸発乾固して、抽出した水溶性高分子の重量を求める。
抽出した蒸発乾固物の同定と、フィブリル中に残存して抽出されなかった水溶性高分子の有無の確認は、赤外吸収スペクトル(IR)等により行うことができる。
さらに、フィブリル中に残存して抽出されなかった水溶性高分子がある場合は、多孔性成形体を、有機高分子樹脂と水溶性高分子の両方の良溶媒で溶解後、無機イオン吸着体をろ過して除いた液を作成し、次いで、該液体をGPC等を用いて分析して水溶性高分子の含有量を定量することができる。
【0077】
上述した多孔性成形体における水溶性高分子の含有量は、水溶性高分子の分子量、有機高分子樹脂とその良溶媒の組み合わせを変えることにより、適宜調整可能である。
例えば、分子量の高い水溶性高分子を使用すると、有機高分子樹脂との分子鎖の絡み合いが強固になり、成型時に貧溶媒側に移行しにくくなり、含有量が高くなる。
【0078】
上記貧溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール等のアルコール類、エーテル類、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類等の有機高分子樹脂を溶解しない液体を適用できる。特に水が好適である。
また、上記貧溶媒中に有機高分子樹脂の良溶媒を若干量添加することにより、凝固速度を制御できる。
水中に混合する良溶媒の割合は、0〜40%が好ましく、0〜30%がより好ましい。
混合比が40%を超えると、凝固速度が遅くなるため、液滴等に成形したポリマー溶液が、貧溶媒中への突入する時及び貧溶媒中を移動中に、貧溶媒と成形体の間で摩擦低抗の影響を受けて、形状が歪になる傾向がある。
【0079】
貧溶媒の温度に関しては、特に限定されるものではないが、−30℃〜90℃の範囲が好ましく、より好ましくは0℃〜90℃、さらに好ましくは0℃〜80℃である。
貧溶媒の温度が90℃を超えたり、又は−30℃未満であると、貧溶媒中の成形体の状態が安定しにくくなったりするからである。
【0080】
多孔性成形体を製造する際、無機イオン吸着体は、微粒子であることが好ましい。この場合、粒子径は0.01μm〜100μmが好ましく、0.01μm〜50μmがより好ましく、さらには0.01μm〜30μmの範囲であることが好ましい。
無機イオン吸着体の粒子径が0.01μmより小さいと、多孔性成形体製造時におけるスラリー粘度が上昇し、成形が困難となる傾向がある。一方、100μmより大きいと、無機イオン吸着体の比表面積が小さくなるため、吸着性能が低下する傾向がある。
なお、ここでいう粒子径とは、一次粒子と、一次粒子が凝集した二次粒子の両方、または混合物の粒子径をいう。
無機イオン吸着体の粒子径は、レーザー光による回折の散乱光強度の角度分布から求めた球相当径のモード径(最頻度粒子径)である。
【0081】
次に、上述した多孔性成形体を吸着塔に充填し、吸着剤とした場合のイオンの処理方法について説明する。
多孔性成形体は、液体と接触させて水中に存在するイオンを吸着除去する機能を有している。
吸着対象イオンは、限定されるものではなく、陰イオン、陽イオンのいずれもが対象となる。
例えば、陰イオンでは、リン(リン酸イオン)、フッ素(フッ化物イオン)、ヒ素(ヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン)、ホウ素(ホウ酸イオン)、ヨウ素イオン、塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、及び酢酸等の各種有機酸のイオンが挙げられる。
陽イオンでは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、カドミウム、鉛、クロム、コバルト、ストロンチウム、及びセシウム等が挙げられる。
【0082】
無機イオン吸着体は、ある特定のイオンに対して特異的な選択性を示すため、下水や産業排水のように雑多なイオンが共存する中から、リン等の特定のイオンを除去することを目的とした場合に好適である。
具体的には、リン、ホウ素、フッ素、ヒ素イオンの除去には、無機イオン吸着体として、下記(a)〜(c)のいずれかの群から選ばれた1種又は2種以上の混合物を選択するのが好ましい。
(a)水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、及び水和酸化イットリウム。
(b)チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン及びイットリウムからなる群から選ばれる金属元素と、アルミニウム、珪素、及び鉄からなる群から選ばれる金属元素との複合金属酸化物。
(c)活性アルミナ。
【0083】
なお、上記実施形態においては吸着塔を代表させた「吸着手段」については、何ら限定されるものではなく、吸着剤と被処理液とを接触させる構成を具備していればよい。
吸着剤を所定の容器内に充填して用いる場合、その容器の形状や多孔性成形体の充填層の形状については、多孔性成形体と被処理液が接触できればよく、例えば、円筒状、円柱状、多角柱状、箱型等の容器が適用できる。
但し、カラムや図1〜図7に示すような吸着塔内に充填して、被処理液を通液して接触させていく方式が、多孔性成形体の特徴である接触効率の高さを充分に引き出せるという点において優れている。
また、上述した容器から多孔性成形体が流出しないように、固液分離機構、例えば目皿やメッシュ等を具備していることが好ましい。
容器の材質は、特に限定されるものではないが、ステンレス、FRP(ガラス繊維入り強化プラスチック)、ガラス、各種プラスチック等が適用でいる。耐酸性を付与するために、内面をゴムやフッ素樹脂ライニングしてもよい。
【0084】
上述した多孔性成形体と被処理液との接触方式についても、特に限定されるものではない。
例えば、吸着剤(多孔性成形体)の充填層を固定床とする場合には、円柱状、多角柱状、箱型の多孔性成形体の充填層に上昇流または下降流で通水する方式や、円筒状の多孔性成形体の充填層に円周方向外側から内筒へ通水する外圧方式や、その逆方向に通水する内圧方式や、箱型の充填層に水平方向に通水する方式等が適用できる。
また、多孔性成形体の充填層を流動床方式としてもよい。
【0085】
本実施の形態における水処理装置は、前処理として水中の縣濁物質を固液分離する手段を具備した構成とすることが好ましい。
あらかじめ水中の縣濁物質を除去しておくことにより、多孔性成形体の表面の閉塞を防止でき、吸着性能を十分発揮できる。
例えば、凝集沈殿、沈降分離、砂ろ過、膜分離が、上記固液分離する手段の例として挙げられる。
特に、設置面積が少なく、清澄なろ過水が得られる膜分離技術を取り入れた構成とすることが好ましい。
膜分離技術としては、逆浸透膜(RO)、限外ろ過膜(UF)、精密ろ過膜(MF)等が挙げられる。膜の形態は、平膜、中空糸、プリーツ、スパイラル、チューブ等、各種適用でき、特に限定されるものではない。
【0086】
また、被処理液(原水)のpHは、水処理装置に供給する前に、吸着対象イオンと、無機イオン吸着体の組み合わせとを考慮して好適な範囲に調整しておくことが好ましい。
例えば、液中のリンを吸着対象とし、水和酸化ジルコニウムまたは四三酸化鉄を水和酸化ジルコニウムで覆った構造の無機イオン吸着体を適用する場合には、pH範囲は、pH1.5〜10に調整することが好ましく、さらにはpH2〜7の範囲とすることが好ましい。
また、液中のホウ素を吸着対象とし、水和酸化セリウムまたは四三酸化鉄を水和酸化セリウムで覆った構造の無機イオン吸着体を適用する場合には、pH範囲は、pH3〜10に調整することが好ましく、さらには、pH5〜8の範囲とすることが好ましい。
【0087】
また、フッ素を吸着対象とし、水和酸化セリウムまたは四三酸化鉄を水和酸化ジルコニウムで覆った構造の無機イオン吸着体を適用する場合には、pH範囲は、pH1〜7に調整しておくことが好ましく、更には、pH2〜5の範囲に調整することが好ましい。
また、ヒ素を吸着対象とし、水和酸化セリウムまたは四三酸化鉄を水和酸化セリウムで覆った構造の無機イオン吸着体を適用する場合には、pH範囲はpH3〜12に調整することが好ましく、更には、pH5〜9の範囲に調整することが好ましい。
【0088】
なお、多孔性成形体(吸着剤)は、所定の脱着液と接触させて吸着した陰イオンを脱離させ、続いて酸性水溶液で処理することにより、再利用可能となる。
このように再利用することにより、コストの低減化が図られ、廃棄物量を減らすこともできる。
また、多孔性成形体は、耐久性に優れているため、繰り返し使用に適している。
【0089】
上記脱着液としては、アルカリ性溶液が用いられる。
このアルカリ性溶液のpHは、pH10以上であれば陰イオンを脱離させる効果が得られるが、pH12以上とすることが好ましく、pH13以上とすることがより好ましい。
アルカリ濃度は、0.1wt%〜30wt%の範囲が好ましく、さらには0.5〜20wt%の範囲が好ましい。アルカリ濃度が0.1wt%未満であると、陰イオンを脱離させる効果が十分に得られなくなる。一方、30wt%を越えると、脱離効果に変化がなくなり、薬剤コストが高くなる。
【0090】
上記脱着液であるアルカリ性水溶液を通液させる速度については、特に制限されることはないが、通常流速SV0.5〜15(1/hr)の範囲が好ましい。
SV0.5よりも遅いと、脱着工程が長時間となり、効率的に実用的でなくなる。
一方、SV15よりも高速であると、多孔性成形体とアルカリ水溶液との接触時間が短くなりすぎ、脱着効率が低下する。
【0091】
また、上記脱着液の成分については、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム等の無機アルカリ、及び有機アミン類等が挙げられる。特に、廃水中のリンイオンを吸着した多孔性成形体を、水酸化ナトリウムで脱着した場合、脱着液中に含まれるリン酸ナトリウムは、溶解度が比較的小さいという観点から、脱着液としては水酸化ナトリウムが好適である。
【0092】
脱着液であるアルカリ水溶液は再利用され、脱着されたイオンは回収される。
具体的には、イオンを吸着した多孔性成形体にアルカリ水溶液を接触させ、アルカリ液中にイオンを溶離させる。続いて、イオン溶離液に、対象とするイオンと沈殿を生じ得る晶析薬剤を添加し、沈殿を生成させ、これを除去する。
これにより、アルカリ水溶液は再利用可能なものとなり、イオンは沈殿物として回収できる。
【0093】
上記晶析薬剤としては、金属の水酸化物が挙げられる。
金属の水酸化物は、リン、ホウ素、フッ素、ヒ素といった陰イオンと結合して金属塩を生成し沈殿物となる。
また水酸化物が脱着液のアルカリ源となるため、再生液を回収、リサイクルすることによりクローズな系とすることができる。
晶析薬剤の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムが挙げられる。
【0094】
上記晶析薬剤としては、難溶性沈殿物すなわち溶解度の低い沈殿が得られるという観点から、多価金属の水酸化物が好ましい。
上記の中でも、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムが特に好ましく、コストの観点からは水酸化カルシウムが好ましい。
例えば、溶離液中にフッ素がフッ化ナトリウムとして存在する場合に、下記反応式(7)に従い、高濃度のアルカリが回収できる。
2NaF+Ca(OH)2→2NaOH+CaF2↓・・・(7)
【0095】
同様に、溶離液中にリン酸ナトリウムとして存在している場合には、下記反応式(8)に従い、アルカリが回収できる。
さらに、晶析したリン酸カルシウムは、肥料等に再資源化が可能である。
6Na3PO4+10Ca(OH)2→18NaOH+Ca10(OH)2(PO46↓・・・(8)
【0096】
上記晶析薬剤としての、金属の水酸化物の添加量は、対象とするイオンに対して1〜4倍当量とすることが好ましい。この添加量が等モル以下であると、沈殿除去効率が劣化し、4倍当量を超えると、除去効率はほとんど変わらないのでコスト的に不利となる。
沈殿を除去する工程における液のpHは6以上であることが好ましく、更にアルカリ水溶液を回収して、再利用することを考慮すると、pH12以上、さらにはpH13以上に保持することが好ましい。なお、pHが6未満であると、沈殿物の溶解度が大きくなり、沈殿効率が低下する。沈殿を除去する工程においては、金属の水酸化物の他に、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等の無機系凝集剤や、高分子凝集剤を併用してもよい。
【0097】
さらに、上記のように、脱着したイオンを回収する工程においては、イオンを脱着した脱着液を冷却して、沈殿物を晶析させて除去することが好ましい。
このような脱着液を冷却する工程は、特に、リン酸イオンを吸着した多孔性成形体を、水酸化ナトリウムを用いて脱着した場合に好適である。
冷却手段に関しては、特に限定されるものではなく、通常のチラーや熱交換機等が適用できる。
冷却温度は、脱着したイオンを晶析できる温度であれば、特に制限されるものではないが、例えば、5〜25℃の範囲が好ましく、5〜10℃の範囲がさらに好ましい。
5℃未満であると、コスト的に不利となり、10℃を超えると、沈殿物を晶析させる効果が十分に得られないおそれがある。
また、冷却によるリン酸ナトリウムの晶析を効果的に行うためには、新たに水酸化ナトリウムを加えて、脱着液中の水酸化ナトリウム濃度を上昇させてもよい。
【0098】
沈殿物の固液分離方法については、特に限定されるものではないが、通常、沈降分離、遠心分離、ベルトプレス機、スクリュープレス機、膜分離法等が適用できる。
特に、設置面積が少なくて、清澄なろ過水を得ることができるという観点から、膜分離法が好ましい。
膜分離法には、例えば、限外ろ過膜(UF)、精密ろ過膜(MF)、透析膜等が適用できる。膜の形態は、例えば、平膜、中空糸、プリーツ、チューブ状等のいずれであってもよく、限定されるものではない。
上記膜分離法のうち、ろ過の速度と精度の観点から、限外ろ過膜(UF)、精密ろ過膜(MF)等が好ましい。
【0099】
上述したイオンの脱着工程が終了した後、多孔性成形体はアルカリ性となっている。
この状態では、再び被処理液中のイオンを吸着する能力は低くなっているため、酸性水溶液を用いて、多孔性成形体の周囲のpHを所定値に戻す操作、すなわち活性化処理を行う必要がある。
酸性水溶液は、特に限定されないが、硫酸、塩酸等の水溶液が用いられる。濃度は、0.001〜10wt%程度であればよい。濃度が0.001wt%未満であると、活性化終了までに時間がかかりすぎコスト的に不利となる。一方、濃度が10wt%を超えると、酸性水溶液の取り扱い上の危険性等の点で問題が生じるおそれがある。
酸性水溶液の通液速度については、特に制限はないが、SV0.5〜30(1/hr)の範囲が好ましい。SV0.5未満であると、活性化時間がかかりすぎ、他方において、SV30を超えると、多孔性成形体と酸性水溶液の接触時間が短くなり、十分な活性化効果が得られないおそれがある。
【0100】
上記活性化処理においては、多孔性成形体がある吸着塔(あるいはカラム等の所定の空間)と、所定のpH調整槽との間で、活性化処理用の酸性水溶液が循環するようなシステムを適用することが好ましい。
このようなシステムとすることにより、イオン脱着工程を経てアルカリ側にシフトした多孔性成形体のpHを、無機イオン吸着体の耐酸性を考慮して、ゆるやかに所望のpHに戻すことができる。
例えば、酸化鉄はpH3以下では酸による溶解が著しいことが知られている。酸化鉄を多孔性成形体に担持した場合、従来の活性化方法は、先の鉄の溶解という問題があるため、pH3以上という薄い酸で処理するしか方法がなかった。しかし、大量の処理液を使用する必要があり、また処理時間も長時間必要となるという欠点があった。
このような問題に鑑み、多孔性成形体の活性化処理においては、多孔性成形体がある所定の空間とは別途にpH調整槽を設けておき、活性化液を循環させるようにすることが望ましい。これにより、装置の全体構成をコンパクト化でき、活性化液を有効に利用することができる。通液速度は、通常SV1〜200(1/hr)の範囲が好適であり、さらには、SV10〜100の範囲が好ましい。通液速度がSV1未満であると、活性化処理時間がかかりすぎ、一方においてSV200を超えると、ポンプ動力が必要でありコスト的に不利になる。
【0101】
上述したイオンの脱着工程、及び活性化処理工程は、多孔性成形体に吸着剤が充填された状態で行うことができる。
すなわち、被処理液(原水)の吸着操作が終了した後、アルカリ性水溶液、酸性水溶液を順番に通液していくことにより、容易に再生させることができるのである。この場合、通液方向は、上向流、下向流のいずれであってもよい。
【0102】
多孔性成形体は、耐薬品性、強度に優れているため、この再生処理を数十回から数百回以上繰り返してもイオンの吸着性能はほとんど低下しない。
【実施例】
【0103】
次に、具体的な実施例と比較例を挙げて説明する。
(実施例1)
まず、多孔性成形体を製造した。
エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH、日本合成化学工業(株)、ソアノールE3803(商品名))10g、ポリビニルピロリドン(PVP、BASFジャパン(株)、Luvitec K30 Powder(商品名))10g、ジメチルスルホキシド(DMSO、関東化学(株))80gを、セパラフラスコ中に投入し、60℃に加温して溶解し、均一なポリマー溶液を得た。
このポリマー溶液100gに対し、無機イオン吸着体として酸化ジルコニウム粉末(岩谷産業(株))60gを加え、よく混合して、複合高分子スラリーを得た。
【0104】
上記複合高分子スラリーを40℃に加温し、側面に直径5mmのノズルを開けた円筒状回転容器の内部に供給し、この容器を回転させ、遠心力(15G)によりノズルから液滴を形成し、60℃の水からなる凝固浴槽中に吐出させ、複合高分子スラリーを凝固させた。その後、洗浄、分級を行い、平均粒径550μmの球状成形体を得た。この球状成形体を、pH3の硫酸酸性溶液に浸漬して活性化処理を行い、多孔性成形体である吸着剤を得た。
【0105】
この例においては、図1に示す構成の水処理装置を用いた。
まず、下水浄化センターにおける下水二次処理水を、あらかじめ、粒径0.6mmの珪砂と粒径1.5mmのアンスラサイトからなる砂ろ過床に速度SV40(1/hr)で通水し、SS(浮遊固形分)を除去し、これに、リン酸三ナトリウム(Na3PO4・12H2O)を溶解し、リン濃度1.0mg−P/リットルの液を調製した。これを図1中の原水1として使用した。原水のpHは7.8であった。
【0106】
上記により作製した多孔性成形体4mlを、内径10mmの吸着塔A、B、Cに各々充填した。
検出器D8としては、pH計(堀場製作所製、F−22)とリン濃度計(HACH社製、フォスファックス・コンパクト)を設置して、処理された後の処理水2の水質を測定した。
【0107】
まず、水処理装置を構成する各弁の状態を制御して、図2中の矢印に示す液流れとなるようにした。具体的には、弁V1−開、弁V5−開、弁V8−開とし、その他は閉とした。
この状態で、SV40(1/hr)の速度で通水を行った。
すなわち、原水1が、検出器D1、弁V1、吸着塔A、弁V8、検出器D3、吸着塔B、弁V5、検出器D8の順に通過するようにした。
この場合の、通水時間と処理済み液(処理水)のpH及びリン濃度との関係を、図8中のA→Bの領域に示す。
【0108】
続いて、検出器D8においてリン濃度が、0.3mg−P/リットル(ppm)を超過した時点で、弁の切り替えを行い、図3に示すような構成として、いわゆる逆送工程を行った。
具体的には、弁V1−閉、弁V2−閉、弁V3−開、弁V4−閉、弁V5−開、弁V6−閉、弁V7−閉、弁V8−閉、弁V9−閉、弁V10−閉、弁V11−開、弁V12−閉とした。この状態で、原水1が、検出器D1、弁V3、吸着塔C、弁V11、検出器D6、吸着塔B、弁V5、検出器D8の順に通過するようにした。
すなわち、後段に位置している吸着塔Cから、前段に位置している吸着塔Bに、あらかじめ定められた使用順序に対して逆方向になるように通水した。
この場合の、通水時間と処理済み液(処理水)のpH及びリン濃度との関係を、図8中のC→Bの領域に示す。
【0109】
図3に示す装置構成により行った逆送工程において得られた処理水2に対し、検出器D8でpHの測定及び監視を行った。pHが放流基準(pH5.8)に到達した段階で、流路の切り替えを行い、通水方向を順方向に戻して、2段目の吸着除去工程を行った。
この場合の各弁の状態を図4に示す。
具体的には、弁V1−閉、弁V2−開、弁V3−閉、弁V4−閉、弁V5−閉、弁V6−開、弁V7−閉、弁V8−閉、弁V9−閉、弁V10−開、弁V11−閉、弁V12−閉とした。この状態で、原水1を、検出器D1、弁V2、吸着塔B、弁V10、検出器D5、吸着塔C、弁V6、検出器D8の順に通過するようにした。
すなわち、前段に位置している吸着塔Bから、後段に位置している吸着塔Cに、順方向になるように通水した。
この場合の、通水時間と、処理水のpH及びリン濃度との関係を、図8中のB→Cの領域に示す。
【0110】
図8に示すように、処理済み液(処理水)のリン濃度は、0.5mg−P/L以下に保たれ、良好な処理状態が維持され、かつ処理水が放流基準(pH5.8)未満を満たしていることが確認された。
【0111】
(比較例1)
図1に示す構成の水処理装置を用いたが、図3中の矢印に示すような逆送工程を行わなかった。すなわち、吸着塔を切り替えても、吸着除去工程のみを継続して行った。
その他の条件は、上述した実施例1と同様の方法により通水を行った。
この場合の処理水のpHとリン濃度変化を図9に示す。
この例によると、吸着塔A→吸着塔Bの通水から、吸着塔B→吸着塔Cへ流路を切り替えた際、処理水のpHが放流基準の下限値(pH5.8)を超過してしまった。これは、後段の吸着塔C中の吸着剤が過度に機能し、逆送による緩和が行われなかったためである。
【0112】
(比較例2)
吸着塔Cに充填する吸着剤に対する活性化処理において、硫酸を用いてpH6となるようにし、意図的に活性不十分な状態とした。
その他の条件は上記比較例1と同様の方法により通水を行った。
この場合の処理水のpHとリン濃度変化を図10に示す。
この例によると、吸着塔A→吸着塔Bの通水から、吸着塔B→吸着塔Cへ流路を切り替えた際に、処理水のpHは低下するが、上記のように吸着塔Cの吸着剤の活性化を意図的に不十分なものとしたため、放流基準を超過することは防止された。
しかしながら、通水を継続していくと、処理水のリン濃度が直ぐに上昇してしまい、リン除去の効果という観点からは、実用上不十分なものとなった。
【0113】
(実施例2)
まず、多孔性成形体を製造する。
無機イオン吸着体として、酸化ジルコニウム粉末に替えて、酸化セリウム粉末(岩谷産業(株))を用いた。その他の条件は、上記実施例1における多孔性成形体の製造方法と同様として、平均粒径550μmの球状の多孔性成形体を得た。この多孔性成形体をpH3の塩酸酸性溶液に浸漬して活性化処理を行い、吸着剤とした。
この例においては、図1に示す構成の水処理装置を用いた。
まず、下水浄化センターにおける下水二次処理水に、フッ化ナトリウム(NaF)を溶解し、フッ素濃度8mg−F/Lの液を調製して原水1とした。
検出器は、イオンクロマトグラフ法によりフッ素濃度を測定する機能を有している装置(横河アナリティカルシステムズ製、IC−7000)を用いた。
その他の条件は、実施例1と同様として通水試験を行った。
すなわち、吸着塔A→吸着塔Bの順方向で通水を行い、続いて吸着塔C→吸着塔Bの方向に逆方向で通水を行い、続いて吸着塔B→吸着塔Cの順方向で通水を行った。
この例においては、順方向、及び逆方向の通水のいずれの状態においても、処理水2のフッ素濃度が0.5mg−F/L以下に保たれ、良好な処理状態が維持できていることが確認された。また、逆送工程により新たな後段となった吸着塔の活性状態が適切に緩和われたことにより、処理水のpHが放流基準(pH5.8)未満となり、望ましい状態で水処理が継続されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の水処理装置、及びこれを用いた水処理方法は、下水工場、食品工場、化学工場等から排出される各種工業廃水や、家庭等の生活排水等を処理するために広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】水処理装置の典型的な構成を示した模式図である。
【図2】一段目の吸着除去工程における液流れ状態を示す模式図である。
【図3】二段目の吸着除去工程の前工程として行う逆送工程における液流れ状態を示す模式図である。
【図4】二段目の吸着除去工程における液流れ状態を示す模式図である。
【図5】三段目の吸着除去工程の前工程として行う逆送工程における液流れ状態を示す模式図である。
【図6】三段目の吸着除去工程における液流れ状態を示す模式図である。
【図7】一段目の吸着除去工程の前工程として行う逆送工程の液流れ状態を示す模式図である。
【図8】実施例1におけるpHの時間変化とリン濃度の時間変化とを示した図である。
【図9】比較例1におけるpHの時間変化とリン濃度の時間変化とを示した図である。
【図10】比較例2におけるpHの時間変化とリン濃度の時間変化とを示した図である。
【図11】従来の水処理装置の典型的な構成を示した模式図である。
【符号の説明】
【0116】
V1〜V12 弁
D1〜D8 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液に含有された物質を吸着しうる吸着剤が充填されており、あらかじめ使用順序が循環的に定められた3基以上の吸着手段と、
前記吸着手段のうち、前記使用順序が連続する任意の2基を、前記使用順序に従って直列に接続し、かつ使用順序に従う方向に前記被処理液を移送する順送手段と、
前記被処理液を、前記2基の吸着手段のうちの前段に供給する手段と、
前記前段に続いて、前記2基の吸着手段のうちの後段を経由し、前記被処理液中の含有物質が吸着処理された処理済み液を回収する手段と、
前記前段の破過に伴い、前記後段を、前記使用順序が連続する新たな2基の前段とし、かつ前記使用順序に従う前記後段に続く吸着手段を前記新たな2基の後段として、前記使用順序に従って吸着手段を繰り返し切り替える切り替え手段と、
前記切り替え手段によって切り替えられた前記新たな2基の前段に前記被処理液を供給する前段階として、前記被処理液を前記新たな2基の後段に供給し、前記新たな2基の前段に移送して回収する逆送手段と、を具備する水処理装置。
【請求項2】
前記順送手段によって前記被処理液の移送を行ったとき、および前記逆送手段によって前記被処理液の移送を行ったときの双方で、前記被処理液の水質を検知する水質検出手段を具備している請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記吸着剤が、少なくとも無機イオン吸着体を含有している請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記無機イオン吸着体が、下記式(1)で表される金属酸化物を少なくとも一種含有している請求項3に記載の水処理装置。
MNxOn・mH2O・・・・・・(1)
(但し、式(1)中、xは0〜3、nは1〜4、mは0〜6である。MおよびNは、Ti、Zr、Sn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Si、Cr、Co、Ga、Fe、Mn、Ni、V、Ge、Nb、及びTaからなる群から選ばれる金属元素であり、互いに異なるものとする。)
【請求項5】
前記金属酸化物が、下記(a)〜(c)のいずれかの群から選ばれた1種又は2種以上の混合物である請求項4に記載の水処理装置。
(a)水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、及び水和酸化イットリウム。
(b)チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、及びイットリウムからなる群から選ばれる金属元素と、アルミニウム、珪素、及び鉄からなる群から選ばれる金属元素との複合金属酸化物。
(c)活性アルミナ。
【請求項6】
前記吸着剤は、少なくとも有機高分子樹脂及び前記無機イオン吸着体を含んでおり、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、
前記連通孔を形成するフィブリルの内部に空隙を有し、当該空隙の少なくとも一部が前記フィブリルの表面で開孔しており、かつ前記フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に、前記無機イオン吸着体が担持されている請求項3乃至5のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項7】
被処理液に含有された物質を吸着しうる吸着剤が充填されており、あらかじめ使用順序が循環的に定められた3基以上の吸着手段と、
前記吸着手段のうち、前記使用順序が連続する任意の2基を、前記使用順序に従って直列に接続し、かつ使用順序に従う方向に前記被処理液を移送する順送手段と、
前記被処理液を、前記2基の吸着手段のうちの前段に供給する手段と、
前記前段に続いて、前記2基の吸着手段のうちの後段を経由し、前記被処理液中の含有物質が吸着処理された処理済み液を回収する手段と、
前記前段の破過に伴い、前記後段を、前記使用順序が連続する新たな2基の前段とし、かつ前記使用順序に従う前記後段に続く吸着手段を前記新たな2基の後段として、前記使用順序に従って吸着手段を繰り返し切り替える切り替え手段と、
前記切り替え手段によって切り替えられた前記新たな2基の前段に前記被処理液を供給する前段階として、前記被処理液を前記新たな2基の後段に供給し、前記新たな2基の前段に移送して回収する逆送手段と、を具備する水処理装置を用いる水処理方法であって、
前記順送手段により、前記被処理液を、前記2基の吸着手段のうちの前段に供給し、前記2基の後段を経由して吸着処理がなされた後の処理済み液を回収する工程と、
前記前段の破過に伴い、前記後段を、前記使用順序が連続する新たな2基の新たな前段とし、かつ前記使用順序に従って前記後段に続く吸着手段を新たな2基の後段として、前記使用順序に従って繰り返し切り替える工程と、
前記逆送手段により、前記新たな2基の前段に前記被処理液を供給する前段階として、前記被処理液を前記新たな2基の後段に供給し、続いて前記新たな2基の前段に移送して回収する逆送工程とを有する水処理方法。
【請求項8】
前記逆送工程は、前記新たな2基の前段から回収される被処理液が、排出基準を満たしている状態で終了することを特徴とする請求項7に記載の水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−272742(P2008−272742A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84911(P2008−84911)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】