説明

水処理装置

【課題】水処理装置として磁気分離装置を備え、該磁気分離装置の磁気フィルタの洗浄時間の短縮化を図る。
【解決手段】金属物質あるいは/および磁性物質を含有する除去物を含む処理液を磁気フィルタ12に通し、除去物を磁着して分離する磁気分離装置5を備えた水処理装置であって、磁気分離装置には、複数の磁気フィルタ12を並べた状態で支持棒10に着脱自在に取り付け、該支持棒を透磁性材からなる送液管6内に移動自在に収容し、送液管6の長さ方向の一側部に磁石を配置して前記送液管内の磁気フィルタに磁性を付与する磁気分離領域X1とすると共に他側部を洗浄領域X2とし、支持棒10に連結した移動手段で、支持棒を磁気分離領域と洗浄領域との間で往復移動させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液中から除去物を分離する水処理装置に関し、詳しくは、処理液中に含まれる磁性物質を磁気フィルタで捕捉する磁気分離装置を備えたものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所、火力発電所、焼却処理設備のボイラーで発生する復水、前記設備およびその他の工場で発生する排水、さらにタンカーに搭載されるバラスト水貯留タンク内のバラスト水を濾過処理する装置は従来多数提供されている。
【0003】
従来、原子力プラントで発生する酸性放射線廃棄物溶液の処理システムとして特開平10−332885号公報(特許文献1)で、酸性放射線廃棄物溶液の濃縮液をフィルタで不溶性固形物を濾過分離することが提案されている。なお、フィルタの詳細は記載されていない。
また、特開昭60−195493号公報(特許文献2)に記載の粒状イオン交換樹脂を用いた覆水脱塩装置よりなる覆水浄化系において、前記復水脱塩装置の上流側に覆水加熱器を設け、覆水中に含まれる鉄クラッドを除去できるものとしている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のようにフィルタ(濾過膜)で固液分離する場合、濾過膜の通過に時間がかかり、かつ、濾過膜に捕捉粒子が堆積して目詰まりが発生しやすいため、間欠的に洗浄が必要である等の理由から、処理水の高速大量処理が困難である。
また、特許文献2に記載の装置では復水脱塩処理装置でも目詰まりが発生しやすいと共に加熱工程が必要となる問題がある。
前記除去物による目詰まりが発生すると、排水処理装置を一旦停止してフィルタ等を交換する必要がある。大量の排水処理を行う場合、フィルタの交換頻度が増え、排水を発生するプラントの稼働を停止しなければならず、稼働停止が長くなると、それに伴う損失は多大となる。
【0005】
また、排水用の配管には鉄錆びが発生し易く、該鉄錆びを除去できる洗浄液を配管中に供給して錆びを除去しているが、該洗浄液中に浮遊する鉄粉を除去して排水する必要があり、配管の鉄錆処理に時間を必要とすると共に、排水温度が高温であると排水温度を低下させて処理する必要がある。このように、排水処理に時間がかかると、前記と同様に、プラントの稼働を停止しなければならず、稼働停止時間が長くなると、それに伴う損失は多大となっている。
【0006】
さらに、近年、船舶に積載するバラスト水の処理が問題となっている。バラスト水は空荷状態でも安全に航行するために積載される海水であり、バラスト水は出港時に付近の海域から取水し、入港時の積荷の積載時に海洋へ排水され、例えば、日本から出港するオイルタンカーに日本海域の海水がバラスト水として積載され、入港地の中近東の海域に排水される。このようにバラスト水が取水した海域と異なる海域に排水されると、海水中の生物が本来の生息地でない海域に移動させられることとなり、海洋の生態系に大きな影響を及ぼすこととなる。よって、「船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理」のための国際条約が採択され、条約内容に沿ってバラスト水を浄化処理することが求められている。
【0007】
この種の水浄化装置として、本出願人は、特開2000−254544号公報(特許文献3)において、藻等の植物性微生物からなる被除去物を含む原水を、比較的高速で被除去物を分離除去できる磁気分離装置を提供している。
該磁気分離装置は、原水に鉄酸化物粒子を添加して、被除去物に磁性を付与した後に、磁気フィルタを通過させて、被除去物を磁気フィルタに磁着して分離除去している。このように磁気で被除去物を分離除去しているため、磁気フィルタの水通過用の空孔を広くしても被除去物を分離除去でき、水処理の高速化を図ることができる。
しかしながら、前記磁気分離装置において、被除去物が堆積した磁気フィルタを効率よく洗浄あるいは交換する必要があり、この点でも改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−332885号公報
【特許文献2】特開昭60−195493号公報
【特許文献3】特開2000−254544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来の水処理装置として濾過膜からなるフィルタを用いた場合は目詰まりの発生により洗浄、交換に時間がかかる問題があり、また、従来提供している磁気分離装置においても磁気フィルタの洗浄、交換の問題が解決されていない。
【0010】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、水処理を高速化できる磁気分離装置を用い、該磁気分離装置において、磁気フィルタの洗浄・交換を迅速に行え、かつ、洗浄による処理停止時間の大幅短縮を図ることを第一の課題としている。
また、洗浄時にも水処理を継続して行えることを第二の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、金属物質あるいは/および磁性物質を含有する除去物を含む処理液を磁気フィルタに通し、前記除去物を磁着して分離する磁気分離装置を備えた水処理装置であって、
前記磁気分離装置には、複数の前記磁気フィルタを並べて支持棒に着脱自在に取り付け、該支持棒を透磁性材からなる送液管内に移動自在に収容し、
前記送液管の長さ方向の一半側に磁石を配置し、前記送液管内の磁気フィルタに磁性を付与する磁気分離領域とすると共に他半側を洗浄領域とし、
前記支持棒に連結した移動手段で、支持棒を前記磁気分離領域と洗浄領域との間で往復移動させることを特徴とする水処理装置を提供している。
【0012】
前記送液管の処理液流入側の上流側を、磁石を配置して前記送液管内の磁気フィルタに磁性を付与する磁気分離領域とすると共に下流側を洗浄領域としていることが好ましいが、逆配置としてもよい。
【0013】
前記送液管の前記洗浄領域の先端に洗浄水供給管を接続し、前記洗浄領域に前記磁気フィルタを移動させている洗浄期間に前記送液管に処理液流入側と反対側から洗浄液を流入して逆洗浄する構成としていることが好ましい。
【0014】
前記のように、本発明の水処理装置の磁気分離装置では、磁気フィルタを支持棒で着脱自在に支持し、該支持棒を送液管中で移動手段により、処理液中に浮遊する金属物質や磁性物質を磁気フィルタに付着させる磁気分離領域と、磁気フィルタに堆積した捕捉物を除去する洗浄および磁気フィルタを取り出す洗浄領域とを往復移動させている。これにより磁気フィルタを管外に取り出さずに、送液管中で洗浄することができ、磁気フィルタの洗浄に要する時間を短縮できる。その結果、再起動時間を大幅に短縮でき、設備の稼働効率を低下させない利点がある。
さらに、定期的に送液管中で磁気フィルタを洗浄しているため、磁気フィルタの交換頻度を大幅に低減でき、磁気フィルタの交換に伴う稼働停止時間を短くすることができる。
【0015】
前記磁気フィルタはステンレス鋼、鉄、ニッケル、コバルト等を主成分とした磁性金属体からなる細線をメッシュ状に編成して空孔を形成し、該空孔の合計面積(目開き面積)の平均面積を、例えば、磁気フィルタの全投影面積中の20%から85%としている。これは20%より小さいと流速がかせげず、詰まりやすくなり、85%より大きくなると強度がもたずに破損しやすくなることによる。
前記メッシュ(金網)の作成方法としては、下記の手法が挙げられる。
平織(ひらおり):標準の織り網(線を1本づつ交差)・最も一般的な織り方
綾織(あやおり):交互に線2本乗越しさせた織り方
平畳織(ひらたたみおり):畳表状、縦線(相接)と横線のメッシュがちがう(綾畳織もある)
クリンプ網:ギアで線を波形に曲げて編んだもの・バーベキュー網など
溶接金網:線を編まずに、上下交差させスポット溶接でとめたもの
亀甲金網(きっこう):六角形に編んだもの・鳥小屋など
前記メッシュは各空孔を囲む一辺を1インチ(25.4mm)程度としている。
また、金属板をマスクとエッチング液を用いたメタルマスク法によって作成することも可能である。
磁気フィルタをCoやNiを多く含むステンレス線材で形成すると、錆が発生しにくく、耐久性を有する磁気フィルタとすることができる。磁化率とトレードオフの関係になりやすく両立させることがポイントとなる。
【0016】
前記磁気分離領域に配置する磁石は円筒状とし、該磁石の内部、磁石の内部と外部、あるいは磁石を囲んで前記送液管を配置している。
前記磁石として永久磁石を用いても良いが、超電導磁石を用いることが好ましい。
該超電導磁石は、超電導線材からなる超電導コイルを用い、該超電導線材として、高温超電導線材(Bi−2223系銀シース線材、Re系薄膜線材)を用いることが好ましい。
この高温超電導コイルの冷却は、冷媒を用いない(冷媒フリー)の冷凍機冷却型システムとしても良いし、液体窒素を用いた液体窒素冷却または液体窒素過冷却システムとしても良い。
【0017】
前記のように、超電導コイルを用いて磁気分離を行うと、超電導コイルが発生する強い磁界中に配置するステンレス鋼等の磁性体からなる磁気フィルタの細線の回りに強い磁場と磁気勾配を形成できる。この強い磁場と磁気勾配を利用して、前記処理液中に分散する前記磁性粒子が付着して磁性が付与された非磁性物質を細線回りに磁着して分離できる。
また、超電導線材として酸化物超電導線材を用いると、金属系超電導線材と比較して、臨界温度が高いため、温度上昇による臨界電流密度の低下が小さく、クエンチしにくい高い安定性を有し、電磁石の動作が安定する。
また、冷媒として液体窒素を用いることも可能なことから、特にバラスト水の処理装置として用いる場合、船舶に搭載されて用いられても船舶のゆれに対して極めて安定である。かつ、酸化物超電導線材を用いた電磁石は、金属系の超電導線材を用いた電磁石よりも軽量かつコンパクトな構成とすることができ、船舶等の設置面積や重量に制約が大きい場所に設置される場合に有利である。
【0018】
前記磁気フィルタを支持する支持棒は、並設する磁気フィルタを位置決め支持する一側部と、前記送液管中を貫通させる他側部を備え、かつ、該他側部の先端を油圧シリンダ等の前記移動手段に連結している。前記一側部と他側部とは着脱自在に連結しても良いし、一体化してもよい。
【0019】
前記支持棒の断面積は磁気フィルタの断面積の1/10〜1/3程度の細い棒と、磁気フィルタの断面積を大きくすることが好ましい。しかしながら、支持棒は長尺であるため細くすると多数の磁気フィルタを取り付けていると共に、移動手段により送液管中を移動させるため、撓みやすくなるため、補強枠を取り付けて撓むことなく直進できるようにしていることが好ましい。
即ち、前記送液管内の支持棒に前記磁気フィルタを間隔をあけて並列して取り付け、これら磁気フィルタと送液管の内周面との間に隙間を設けていると共に、前記磁気フィルタの間あるいは/および磁気フィルタの取付部の両端に補強枠を前記支持棒に取り付け、
前記補強枠は、外周枠部と、中心部に前記支持棒を貫通支持する取付穴を設けた中央部と、該中央部と前記外周枠部とを連結する周方向に間隔をあけて設けた連結部とを有する形状とし、
前記外周枠部の外周面にOリングを取り付け、該Oリングを前記送液管の内周面に摺接させている。
【0020】
前記のように、支持棒に補強枠を取り付け、該補強枠の外周のOリングを送液管の内周面に摺接させると、支持棒を移動時に送液管の中心軸線位置に保持できる。このように、支持棒が撓むことなく移動させることができるため、支持棒に取り付けた磁気フィルタの外周が送液管の内周面に接触して移動がスムーズに行えなくなる事態の発生を防止できる。
【0021】
前記補強枠はエンジニアリングプラスチックあるいは耐海水性ステンレスから形成し、前記Oリングはシリコーンゴム、EPDM、NBR、HNBR、フッ素ゴムのいずれか一種からなり、その外周面にダイヤモンドライクカーボンからなる表面被覆層を設け、かつ、前記補強枠が摺接する前記送液管の内周面にダイヤモンドライクカーボンからなる表面被覆層を設けていることが好ましい。
このように、摺接するOリングの表面と送液管の内周面とにダイヤモンドライクカーボンからなる被覆層を設けると、耐摺動性および耐食性を高めることができる。
【0022】
本発明では、前記送液管は1本以上とし、1本の場合は、該送液管内の前記支持棒を移動して前記磁気フィルタを前記洗浄領域に移動させている期間は、処理液処理の停止期間としている。
【0023】
処理液作動を連続させて、前記第二の課題を解決するには、前記送液管を複数本配置し、1本の送液管内の前記支持棒を移動して前記磁気フィルタを前記洗浄領域に移動させている期間は、他の送液管内の支持棒で支持した前記磁気フィルタは前記磁気分離領域に位置させ、処理液処理を継続させている。
該構成とすると、処理液の処理量を常に一定化して、処理液処理を継続することができる。
例えば、6本の送液管を円形に配置し、その周囲を前記磁石で囲んでいる。この場合、1本の送液管を前記洗浄領域に移動させている間、残りの5本の送液管中では磁気フィルタを磁気分離領域に位置させて、磁気フィルタによる除去物の捕捉を行っている。前記洗浄領域で磁気フィルタを洗浄した後は磁気分離領域に移動させ、定期的に、別の1本の送液管中の支持棒を洗浄領域に移動し、これを繰り返すことにより、常に5本の送液管中で磁気分離を継続することができる。
【0024】
前記処理液中に非磁性物質からなる除去物が含まれている場合には、処理液中に磁性粒子を投入し、該非磁性物質に磁性を付与し磁性物質とし、前記磁気フィルタで捕捉している。
なお、処理液中の鉄錆び等の金属粉末のみを除去する場合には、磁性粒子を投入する必要はないが、磁性物質の磁性が弱い場合には磁性粒子を投入して磁性を強くして磁気フィルタで捕捉し易くすることが好ましい。
【0025】
また、非磁性物質に付着していない磁性粒子が磁気フィルタに磁着した状態のままであると、磁性粒子の無駄になるが、本発明では、前記磁気フィルタの洗浄領域において、洗浄時には送液管に洗浄液を流入するため、磁気フィルタに付着した磁性粒子を再度洗浄液中に取り出すことができる。該洗浄液を磁気分離領域の送液管中に溜め、洗浄後に流入する処理液と混合すると、再度磁性粒子を処理液中の非磁性物質に付着させて再利用することができる。これにより、磁性粒子の使用量を低減することができ、高価な磁性粒子のコストを低減することができる。
【0026】
前記磁性粒子の平均粒径は0.1μm〜50μmとしていることが好ましく、より好ましくは0.1μm〜20μmである。
前記磁性粒子の平均粒径を前記範囲とすることにより、0.1μm〜100μmの処理液中に含まれる細菌等の非磁性物質も効率良く捕捉することができる。
また、磁性粒子の平均粒径を0.1μm以上とすることで、磁性粒子を非磁性物質に付着しやすくすると共に付着後に遊離させにくくできる。一方、磁性粒子の平均粒径が50μmを越えると流路を構成する配管の底に堆積して有効に働かないという問題が生じる。
【0027】
添加する磁性粒子は、鉄、ニッケル、コバルト、銀等の磁性金属の単体あるいは合金、これらの酸化物が好適に用いられ、生物系や有機系の材料を混ぜ合わせたものでもよい。特に、マグネタイト等の鉄酸化物粒子が好適に用いられる。
該磁性粒子として表面に水酸基を有する鉄酸化物粒子を用いると、処理液中に植物性微生物が存在すると、これら植物性微生物の表面にも水酸基が存在するため、水素結合が形成され、鉄酸化物粒子により微生物に磁性を付与することができる。
【0028】
前記磁性粒子は、例えば、処理液の供給路に磁性粒子投入部を設けて、処理液中に磁性粒子を投入して分散させている。
【0029】
また、洗浄水供給管は前記送液管の両端と接続し、前記洗浄期間に送液管内に洗浄液を循環して供給する構成としてもよい。
【0030】
前記送液管は、前記洗浄領域の部分では、前記磁気フィルタを取り出し可能に半割管を着脱自在に連結して形成し、前記洗浄領域を磁気フィルタの取出領域と兼用していることが好ましい。該構成とすると、磁気フィルタの交換を容易に行うことができる。
【0031】
さらに、前記送液管の前記洗浄領域の先端側に給水管を接続し、前記磁気フィルタにより除去物を除去した後の前記処理液を、該処理液を排出するプラントあるいはタンクへ給水する配管系を備える構成としてもよい。
この場合、前記送液管に先端に連続する配管を分岐させ、分岐管の一方に前記洗浄水供給管を連結し、他方に給水管を連結し、かつ、これら分岐管に開閉弁を取り付けている。
【0032】
さらに、前記磁気分離装置の下流に膜濾過装置を設け、該膜濾過装置に、前記処理液を排出するプラントあるいはタンクへ給水する配管系を備えた構成としてもよい。
前記膜濾過装置を構成する濾過膜としては、中空糸膜、スパイラル、平膜などが挙げられる。これらの膜はフッ素系の樹脂で成形することが好ましい。具体的には、ポリテトラフルオラエチレン(PTFE)、テトラフルオラエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルコキシエチレン3元重合体(EPE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等、およびこれらの任意の2種以上の混合樹脂でもよく、特に、耐熱性、耐久性、耐薬品性を備えたPTFE系の中空糸を集束した中空糸膜モジュールが好適に用いられる。
このように、磁気分離装置と膜濾過装置を組み合わせると、磁気分離装置で捕捉できなかったμm、サブμm単位の微細な不純物まで捕捉でき、処理液を完全な純水とすることができる。
【0033】
本発明の磁気分離装置で使用する送液管および磁気フィルタはステンレス等の金属製としているため、ボイラーで発生する復水等の50〜400℃の高温液であっても、処理液を温度低下させる工程を経ずにそのまま処理することができる。よって、高温処理液の除去物の分離に適したものである。特に、本発明は90〜200℃の高温の水処理に適している。
【0034】
本発明の水処理装置は、原子力発電所、火力発電所、紙パルプ工場、民生のボイラーや焼却設備で用いる冷却液から生じる処理液、ブロー水、復水、循環水等のいずれかで発生する処理液の処理に好適に用いられる。
特に、原子力発電所や火力発電所では処理液処理のために稼働停止が発生すると、該稼働停止による損失額は多大であり、よって、処理液処理を継続でき、処理液処理による稼働停止を発生させないメリットは非常に大きい。
【0035】
さらに、本発明の水処理装置はバラスト水の処理にも好適に用いられる。
本発明の水処理装置は大量の処理液を効率良く処理できる磁気分離装置を備えているため、オイルタンカー等の船舶に貯留されるバラスト水の水処理に好適となる。
バラスト水の処理に用いる場合、バラスト水中に浮遊及び沈殿する藻類を含む植物微生物もしくは動物微生物は非磁性物質であるため、前記磁性粒子をバラスト水中に投入して磁性物質として送液管に通し、前記磁気フィルタで捕捉している。
【発明の効果】
【0036】
前述したように、本発明の水処理装置では、磁気フィルタを並設した磁気分離装置において、並設した磁気フィルタを送液管内で洗浄領域に移動して送液管中で一括して洗浄することができ、管外に磁気フィルタを取り出すことなく洗浄することができる。よって、洗浄時間の短縮化を図ることができる。
【0037】
また、送液管を複数本設けると、その内の一本を順次定期的に洗浄領域に移動し、残りの送液管は磁気分離領域に位置させて磁気分離で処理液処理をすると、前記洗浄領域に磁気フィルタを移動して洗浄している期間は該送液管に処理液の供給を一旦停止しても、他の送液管に継続して処理液を供給でき、処理液処理を停止することなく且つ常時定量の処理液処理を行うことができる。
また、夜間停止する場合等では、送液管を1本としてもよい。
さらに、磁石に対し配管は1本として、磁石と配管が一対のものを多数並べることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の磁気分離装置を備えた水処理装置の第一実施形態の概略構成図である。
【図2】前記磁気分離装置の概略正面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】(A)は前記磁気分離装置で用いる支持棒の平面図、(B)は支持棒で支持される磁気フィルタの拡大側面図、(C)は(B)のC−C線断面図である。
【図5】図2のV−V線断面図である。
【図6】前記磁気分離装置で用いる送液管を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図7】送液管を洗浄水供給管と接続している状態を示す説明図である。
【図8】配管図である。
【図9】(A)〜(D)は作動工程を示す図面である。
【図10】(A)(B)は第一実施形態の変形例を示す概略図である。
【図11】第二実施形態の要部概略図である。
【図12】第三実施形態のバラスト水処理装置の全体構成図である。
【図13】第三実施形態の水処理装置のブロック図である。
【図14】(A)(B)(C)は第四実施形態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の水処理装置の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図9に示す第一実施形態は、原子力発電所または火力発電所などで発生するボイラーの復水からなる処理液を処理するものである。
【0040】
図1に概略的に示すように、発電所の原子炉あるいは燃焼室内100での冷却水から発生する蒸気を配管を介してタービン101、タービン101から復水器1へと供給し、該復水器1から給水ポンプ2を経て前記燃焼室100へと循環させている経路において、復水器1と給水ポンプ2との間に、本発明の図2〜図9に示す磁気分離装置5からなる水処理装置を介設し、復水からなる処理液Q1中に浮遊する除去物(主として金属粉)を磁気分離で捕捉している。
【0041】
図2に示すように、磁気分離装置5は、復水器1側より復水が流入する上流側に磁気分離領域X1と下流側に洗浄領域X2を備え、かつ、洗浄領域X2の下流に後述する支持棒の引出領域X3を設けている。
前記磁気分離領域X1から洗浄領域X2にかけて、長さL1の送液管6を固定している。該送液管6は本実施形態では6本(6A〜6F)とし、図3に示すように、間隔をあけて円形に配置している。該送液管6は非磁性ステンレス、またはFRPやプラスチック等からなる透磁性材で形成しており、本実施形態では非磁性ステンレスで形成している。
【0042】
前記送液管6の回りを超電導磁石8で囲んで、各送液管6内に磁場を形成している。該超電導磁石8は酸化物超電導線材が巻回されたコイルで形成し、該コイルを超電導温度に保持する冷却容器9内に収容している。本実施形態では、ビスマス2223系の酸化物超電導線材のダブルパンケーキコイルを軸線方向に積層した積層コイルから構成している。なお、超電導磁石に代えて永久磁石を用いても良い。
【0043】
前記各送液管6内には、支持棒10を移動自在に収容している。該支持棒10は図4(A)に示すように、磁気フィルタ支持側となる上流側を左右一対の磁気フィルタ支持棒部10a、10bで形成し、下流側の1本の引出用棒部10cと連結材10dを介して着脱自在に連結している。前記左右一対の磁気フィルタ支持棒部10aと10bは送液管6内の対向位置に軸線方向に延在させている。
【0044】
前記磁気フィルタ支持棒部10a、10bで支持する磁気フィルタ12は図4(B)に示すように、磁性体の金属線材のメッシュからなる。本実施形態では、線径1mmのステンレス製の金網12aで形成している。金網12aの左右両側に前記磁気フィルタ支持棒部10a、10bが貫通する貫通穴12b、12cを設け、かつ、金網12aの外周にステンレス製の外周補強枠12dを設けている。さらに、金網12aの中心位置および外周補強枠12dの90度間隔をあけた位置に図4(C)に示すようにのステンレス製のスペーサー12eを突設している。
磁気フィルタ支持棒部10a、10bを磁気フィルタ12の貫通穴12b、12cにそれぞれ通して、例えば、20〜30枚等の多数枚の磁気フィルタ12を並設している。並列した磁気フィルタ12は前記スペーサー12eによって隙間が保持され、本実施形態ではスペーサー12eの厚さt1を2mmとしているため、隣接する磁気フィルタ12と2mmの隙間を設けている。本実施形態の磁気フィルタ12では、外周補強枠12dを含めた直径D1を79mmとしている。
かつ、前記磁気フィルタ12の外周補強枠12dは、送液管6の内周面の全周に移動用隙間をあけて配置している。
【0045】
前記磁気フィルタ支持棒部10a、10bに連結する引出用棒部10cは、洗浄領域X2に伸長し、その先端に移動手段を構成する油圧シリンダ14のロッド14aを連結材15、クランプ17を介して連結している。該油圧シリンダ14は図5に示すように、洗浄領域X2に設置した支持枠台16の上面に搭載し、該支持枠台16内に送液管6を配管している。
支持棒10を油圧シリンダ14により送液管6内を往復移動させ、ロッド14aの引込位置では、図2中に上側位置の送液管6Aに示すように、支持した磁気フィルタ12を磁気分離領域X1に位置させている。また、ロッド14aの伸長位置では図2中で下側位置の送液管6Dに示すように、支持棒10を支持棒引出領域X3へと引き出している。
【0046】
油圧シリンダ14は6本のロッド14aを備え、各ロッド14aは油圧シリンダ14内に設けた6個の油圧室に取り付け、各ロッド14aをそれぞれ連結材15を介して各支持棒10に連結し、支持棒10を順次間欠的に移動させている。
即ち、1本の支持棒10を支持棒引出領域X3に移動して磁気フィルタ12を洗浄している間、残りの5本の支持棒10を磁気分離領域X1へ移動して磁気フィルタ12を超電導磁石8により担磁させて、処理液中の除去物を磁気分離している。
前記磁気フィルタ12を洗浄領域X2で洗浄した後、該磁気フィルタ12を支持する支持棒10を磁気分離領域X1へと移動させ、ついで、別の1本の支持棒10を引き出し、該支持棒10で支持された磁気フィルタ12を洗浄している。このように、6本の送液管6A〜6F内の支持棒10を順次引き出して洗浄し、これを繰り返すことにより、常時、5本の送液管6内で磁気分離作用を継続している。
【0047】
前記洗浄領域X2は、磁気フィルタ12の取出領域を兼ねるものとしている。
即ち、図6に示すように、前記各送液管6は磁気分離領域X1に位置する一側部は無端状の円筒6iとしている一方、洗浄領域X2に位置する他側部は軸線方向に沿って分割した半割の円筒6h1、6h2としている。これら半割筒6h1と6h2との上下分割端にはフランジ6f1、6f2を突設し、互いに接合してボルトBで締結している。磁気フィルタ12の取り出し時にはボルトBを外し、半割筒6h1、6h2を分離させて磁気フィルタ12を取り出している。
【0048】
前記各送液管6の洗浄領域X2側の先端外周にそれぞれ配管20を接続し、図7に示すように、配管20を分岐させて、分岐管の一方に洗浄水供給管23を接続する一方、分岐管24に給水管25を接続し、該給水管25に前記給水ポンプ2を設けている。
また、各送液管6の磁気分離領域X1側の先端外周にそれぞれ配管を接続し、該配管を分岐させて、一方の分岐管に洗浄水循環管28を接続する一方、他方の分岐管に処理液(復水)供給管30を接続し、該処理液供給管30を前記復水器1と接続している。
【0049】
詳細には、図8の配管図に示すように、復水器1から供給される処理液Q1を原水槽31に貯留し、処理液供給管30を通して各送液管6に供給し、処理済み液Q2を配管24を介して濾過水槽32に一旦貯留する。該濾過水槽32内の処理済み液(濾過水)Q2の一部は給水ポンプ側に接続している。処理済み液Q2の残部は洗浄水供給管23を通して各送液管6に逆洗浄水W1として供給し、送液管6の洗浄領域X2の先端側へ所要圧力で流入させている。送液管6内で磁気フィルタ12を洗浄した洗浄水W2は洗浄水循環管28へ流出させ、再度、洗浄水供給管23を通して送液管6へ供給し、洗浄水を循環させている。なお、前記洗浄水循環管28に流量計33を介設し、設定濁度以上の場合は排水槽34へ排水し、設定濁度未満になると洗浄水供給管へと循環させている。なお、図8中、36は流路開閉弁、37は圧力計である。
【0050】
つぎに、本発明の水処理装置の処理動作を図9を用いて説明する。
処理動作は1本の送液管6で説明するが、残りの他の送液管6においても同様である。
図9(A)に示すように、磁気フィルタ12を磁気分離領域X1に位置させ、処理液供給管30より供給される処理液Q1中に浮遊する鉄粉等を磁気フィルタ12で捕捉して分離する。
即ち、前記超電導の磁石8で発生する磁場によりこれら磁気フィルタ12を磁化させており、処理液Q1が磁化された磁気フィルタ12を通過すると、処理液Q1に含まれた鉄粉等の磁性物質からなる除去物が磁気フィルタ12に磁着する。かつ、磁気フィルタ12の網目より大きい非磁性物質の除去物も磁気フィルタ12で捕捉する。これにより、磁気フィルタ12を通過した処理済み液Q2は磁性物質の除去物Mおよび磁気フィルタ12の網目より大きな除去物を含まない浄水となる。該処理済み液Q2は分岐管24を介して濾過水槽32に一旦貯留し、濾過水槽32内より一部は給水ポンプ2を介して原子炉等へ送給し、残部は洗浄水用として貯留する。
【0051】
前記動作が所要時間経過し、送液管6内の磁気フィルタ12の除去物が堆積する時期になると、図9(B)に示すように、油圧シリンダ14のロッド14aを伸長させて支持棒10を移動させ、磁気フィルタ12を洗浄領域X2へ移動させる。かつ、処理液供給管30からの処理液Q1の送液管6への供給を一旦停止し、かつ、送液管6内の処理済み液Q2をすべて排出する。
【0052】
ついで、図9(C)に示すように、濾過水槽32に溜めている処理済み液Q2を洗浄水供給管23を通して送液管6の洗浄領域X2の先端側から逆洗浄水W1として供給し、送液管6の洗浄領域X2内に所要圧力で流入させ、送液管6中に逆洗浄水W1を溜めて、磁気フィルタ12を洗浄する。
【0053】
ついで、図9(D)に示すように、送液管6内で磁気フィルタ12を洗浄した洗浄水W2は洗浄水循環管28へ流出させ、再度、洗浄水供給管23を通して送液管6へ供給し、洗浄水を循環させている。なお、洗浄水循環管28に介設した流量計33により濁度を検出し、濁度が設定以上の初期段階は排水槽34へ排水し、濁度が設定濁度未満になると洗浄水供給管23へと循環している。
【0054】
前記した洗浄工程は、6本の送液管のうち、1本の送液管だけを順次行い、他の5本の送液管は図9(A)に示す磁気分離工程を継続している。よって、処理液Q1の供給量を常時5本の送液管6への供給量に保持している。
【0055】
このように、前記した磁気分離装置5を備えた本発明の水処理装置は、磁気フィルタ12の洗浄を送液管中から取り出すことなく行え、よって、洗浄時間の大幅短縮を図ることができる。かつ、複数本の送液管を配置し、その内の1本の送液管を洗浄している間、他の送液管では処理液の磁気分離処理を行っているため、継続して定量の処理液の磁気分離処理を行うことができる。
特に、磁気分離装置では、復水等の処理液に含まれる鉄粉等の磁性物質からなる処理液中に浮遊する除去物が磁気フィルタ12に積極的に磁着するため、磁気フィルタ12の網目(濾過用空孔)を大きくしても除去物を捕捉できる。その結果、大量の処理液を高速で流通させることができ、処理速度の高速化を図ることができる。
しかも、送液管6、磁気フィルタ12はステンレス等の金属材で形成しているため耐熱性に優れ、処理液が100℃を越える復水の処理を行う場合においても、復水を冷却して温度低下を図る工程を必要としない。
【0056】
前記第一実施形態では、送液管6を6本用いて、超電導磁石8で囲んでいるが、処理液量が比較的少なく、かつ、処理液を排出するプラントのラインが夜間等に定期的に停止する工場等で使用する場合には、1本の送液管を用いてもよい。この場合、ライン停止時に送液管内の磁気フィルタを洗浄領域に移動させて洗浄し、ライン稼働時に磁気分離領域に戻しておけばよい。
【0057】
また、前記実施形態では、超電導磁石8で送液管6を囲んでいるが、図10(A)に示すように、複数本の送液管6を円筒状磁石13の内周側と外周側とに分けて配置してもよい。さらに、図10(B)に示すように、円筒状磁石13を小径とし、その外周に複数本の送液管6を配置してもよい。該構成とすると、円筒状磁石を小型化でき、コスト低下を図ることができる。
【0058】
図11に第二実施形態の水処理装置の要部を示す。
第二実施形態では、処理液Q1中に浮遊する非磁性物質からなる除去物を除去するため、処理液Q1を送液管6に供給する前に前記原水槽31に磁性粒子Pの投入部31aを設けている。かつ、該投入部31aに、処理液Q1と磁性粒子Pとを撹拌混合する磁性粒子供給手段(図示せず)を設けていることが好ましい。
前記磁性粒子Pとして表面に水酸基を有するマグネタイトからなる鉄酸化物粒子を用いる。磁性粒子Pの平均粒径は0.1μm〜50μmとしている。この場合、非磁性物質が0.1μm〜100μmの場合、処理液Q1の量を100質量%とすると磁性粒子Pは0.05〜5質量%添加している。
【0059】
処理液Q1と磁性粒子Pとを撹拌することにより処理液Q1に含まれる非磁性物質に磁性粒子Pを付着させて磁性を付与している。
磁性粒子Pが非磁性物質に付着することにより磁性を帯びた非磁性物質を磁気フィルタに付着させることができ、かつ、非磁性物質に付着しなかった磁性粒子Pも磁気フィルタ12に磁着させて捕捉できる。
さらに、処理液Q1中に浮遊する鉄粉等の磁性物質にも磁性粒子Pが付着し、磁性物質も第一実施形態と同様に磁気フィルタで捕捉できる。
特に、μm単位、サブμ単位の微生物等からなる非磁性物質に磁性粒子Pを付着させて磁気フィルタで捕捉できるため、磁気分離装置5で処理された処理済み液の浄化度を高めることができる。
【0060】
前記図8に示す配管図において、第二実施形態の磁性粒子投入部を設ける場合には、復水器1から原水槽31との間に磁性粒子投入部38、流量計33を設け、かつ原水槽31と処理液供給管30との間にラインミキサー35を介設している。該ラインミキサー35を設けて、原水と磁性粒子とを撹拌している。このように、インラインで磁性粒子の撹拌を行うと、大きなスペースをとるプロペラを付設した貯水タンクで撹拌する必要がなく、該貯水タンクを無くしてもよい。
【0061】
図12および図13に第三実施形態を示す。
第三実施形態の水処理装置は、船舶のバラストタンクに貯留されるバラスト水からなる処理液の浄化処理用としている。
図12に示すように、磁気分離装置5をオイルタンカー等の大型船舶60に搭載し、積載したバラスト水からなる処理液Q1に浮遊及び沈殿する藻類を含む植物微生物もしくは動物微生物からなる非磁性物質の除去処理を航行中に行なうものである。
詳細には、バラストタンク50に貯留された処理液Q1を配管61を介して磁気分離装置5に供給し、該配管61の一部に前記第二実施形態と同様に磁性粒子投入部(図示せず)を設け、バラスト水からなる処理液Q1に磁性粒子Pを投入している。
磁気分離装置5は2台(5A、5B)備え、各磁気分離装置5A、5Bの構成は第一実施形態と同一の構成としている。
【0062】
前記磁気分離装置5の下流に一時貯溜槽55を配置し、その下流に、さらにPTFE製の中空糸を集束して設けた中空糸膜モジュール56を収容した2台の濾過装置57を配置し、該濾過装置57で濾過した浄水を空きのバラストタンクに戻している。かつ、一部を電解装置58へ送り、電解後に中空糸膜モジュール56へ逆洗浄水として供給している。
前記中空糸膜モジュール56の各中空糸の平均空孔半径は1.0〜0.1μmとしている。
このように、下流に中空糸膜モジュール56を備えた濾過装置57を配置すると、磁気分離装置でも捕捉できなかった超微細な0.1μm以上の固形物や細菌からなる被除去物を捕捉できると共に細菌までも捕捉することができる。かつ、PTFE製の中空糸は、耐久性、耐薬品性に優れている利点がある。
【0063】
このように、バラスト水の水処理装置では、磁気分離工程と濾過工程により、バラスト水に含まれる0.1μm以上の海洋生物を分離除去でき、バラスト水中に含まれる固形物の95%以上を確実に分離することができる。
詳細には、磁気分離工程でバラスト水中の固形物の90質量%以上を除去し、濾過工程で、前記磁気分離工程で固形物が分離除去された処理水中の固形物及び磁性粒子を捕捉し、バラスト水中の固形物の98質量%以上を除去している。
【0064】
図14(A)(B)(C)に、前記第一〜第三実施形態のいずれの実施形態の水処理装置に適用できる送液管6内に配置する支持棒10に補強枠70を取り付けた第四実施形態を示す。
【0065】
図14(A)に示すように、送液管6内に移動自在に収容している支持棒10は、長尺で且つ磁気フィルタ12の取付面積を大きくするために小径としており、本実施形態では支持棒10の断面積は1/10〜1/8としている。このように、支持棒10を小径かつ長尺とし、かつ、多数の磁気フィルタ12を取り付けているため、移動時等に撓む恐れがある。そのため、支持棒10には磁気フィルタ12の間に間隔をあけて補強枠70を取り付け、該補強枠70を送液管6の内周面と摺動させる一方、支持棒10に取り付ける磁気フィルタ12の外周面と送液管6の内周面との間には隙間を設けて、磁気フィルタ12の外周枠が送液管6の内周面と摺接しないようにしている。
【0066】
補強枠70は送液管6の内径に相当する外径を有する外周枠部70aと中央部70bとを放射状に設けた連結部70cで連結し、中央部70bの中心に支持棒10を密嵌して貫通支持する取付穴70dを設けた円形板としている。このように、補強枠70を中抜き形状とすることで軽量化し、支持棒10に荷重をかけないようにしている。
また、外周枠部70aの外周面にOリング71を外嵌固定し、該Oリング71を送液管6の内周面に摺接させている。
【0067】
前記補強枠70は剛性および強度を有するエンジニアプラスチックあるいは耐海水性を有するステンレスで形成している。該ステンレスはSUS316L、あるいは29質量%のクロム、4質量%のマグネシウム、2質量%のニッケルを含む合金が好適に用いられる。
【0068】
前記Oリング71はシリコーンゴムあるいはEPDMからなり、該ゴム成分の表面にダイヤモンドライクカーボンからなる被覆層71aを設け、耐水性、特に、耐海水性を向上させている。前記ダイヤモンドライクカーボンからなる被覆層71aは水素含有量が0.01%〜10%、好ましくは、0.1%〜5%としている。
また、補強枠70と摺接する送液管6の内周面にも前記Oリング71の被覆層と同様なダイヤモンドライクカーボンからなる被覆層6xを設けている。
【0069】
前記のように、支持棒10に補強枠70を取り付け、該補強枠70の外周のOリング71を送液管6の内周面に沿って摺動させることにより、支持棒10に撓みを発生させず、送液管6の中心軸線位置に保持して直進できるようにしている。これにより、支持棒10が撓んだ場合に磁気フィルタ12の外周枠が送液管6の内周面と接触して、支持棒10の移動がスムーズに行えなくなる事態の発生を防止している。
一方、支持棒10の移動時に互いに摺接するOリング71の外面の被覆層71aと送液管6の内周面の被覆層6xとしてダイヤモンドライクカーボンの被覆層を設けているため、耐摺動性および耐食性を高めることができる。
【0070】
前記実施の形態はすべての点で例示であって、これら実施形態に限定されず、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の磁気分離装置を備えた水処理装置は、前記原子力発電所、火力発電所の排水処理、バラスト水の処理に限定されず、製紙排水の処理、工場排水(半導体、鉄鋼、食品処理等)の処理、病院の排水処理、等の固形物を多く含む工業排水の浄化装置として広く用いることができる。さらには、海水淡水化装置の脱塩工程の前処理装置としても有効である。
【符号の説明】
【0072】
1 復水器
2 給水ポンプ
5 磁気分離装置
6(6A〜6F) 送液管
10 支持棒
12 磁気フィルタ
13 磁石
14 油圧シリンダ
23 洗浄水供給管
70 補強枠
X1 磁気分離領域
X2 洗浄領域
X3 支持棒引出領域
Q1 処理液
Q2 処理済み液
W1 逆洗浄水
P 磁性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属物質あるいは/および磁性物質を含有する除去物を含む処理液を磁気フィルタに通し、前記除去物を磁着して分離する磁気分離装置を備えた水処理装置であって、
前記磁気分離装置には、複数の前記磁気フィルタを並べて支持棒に着脱自在に取り付け、該支持棒を透磁性材からなる送液管内に移動自在に収容し、
前記送液管の長さ方向の一半側に磁石を配置し、前記送液管内の磁気フィルタに磁性を付与する磁気分離領域とすると共に他半側を洗浄領域とし、
前記支持棒に連結した移動手段で、支持棒を前記磁気分離領域と洗浄領域との間で往復移動させることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記送液管の処理液流入側の上流側を、磁石を配置して前記送液管内の磁気フィルタに磁性を付与する磁気分離領域とすると共に下流側を洗浄領域としている請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記送液管の前記洗浄領域の先端に洗浄水供給管を接続し、前記洗浄領域に前記磁気フィルタを移動させている洗浄期間に前記送液管に処理液流入側と反対側から洗浄液を流入して逆洗浄している請求項1または請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記送液管内の支持棒に前記磁気フィルタを間隔をあけて並列して取り付け、これら磁気フィルタと送液管の内周面との間に隙間を設けていると共に、前記磁気フィルタの間あるいは/および磁気フィルタの取付部の両端に補強枠を前記支持棒に取り付け、
前記補強枠は、外周枠部と、中心部に前記支持棒を貫通支持する取付穴を設けた中央部と、該中央部と前記外周枠部とを連結する周方向に間隔をあけて設けた連結部とを有する形状とし、
前記外周枠部の外周面にOリングを取り付け、該Oリングを前記送液管の内周面に摺接させている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記補強枠はエンジニアリングプラスチックあるいは耐海水性ステンレスから形成し、前記Oリングはシリコーンゴム、EPDM、NBR、HNBR、フッ素ゴムのいずれか一種からなり、その外周面にダイヤモンドライクカーボンからなる表面被覆層を設け、かつ、
前記補強枠が摺接する前記送液管の内周面にダイヤモンドライクカーボンからなる表面被覆層を設けている請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記送液管を複数本配置し、1本の送液管内の前記支持棒を移動して前記磁気フィルタを前記洗浄領域に移動させている期間は、他の送液管内の支持棒で支持した前記磁気フィルタは前記磁気分離領域に位置させ、処理液処理を継続させている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記送液管は1本であり、該送液管内の前記支持棒を移動して前記磁気フィルタを前記洗浄領域に移動させている期間は処理液処理の停止期間としている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記磁気分離領域に、円筒状に前記磁石を配置し、該磁石の内部、磁石の外部、あるいは磁石の内部と外部とに前記送液管を配置している請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記処理液中に磁性粒子を投入し、該処理液中に含まれる非磁性物質に磁性を付与して前記磁性物質とし、前記磁気フィルタで捕捉している請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項10】
前記洗浄水供給管は前記送液管の両端と接続し、前記洗浄期間に送液管内に洗浄液を循環して供給している請求項3乃至請求項9のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項11】
前記送液管は、前記洗浄領域の部分では、前記磁気フィルタを取り出し可能に半割管を着脱自在に連結して形成し、前記洗浄領域を磁気フィルタの取出領域と兼用している請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項12】
前記磁気分離領域に配置する前記磁石は超電導磁石からなる請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項13】
前記磁気分離装置の下流に膜濾過装置を設けている請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項14】
前記処理液は50〜400℃の高温液である請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項15】
前記処理液はボイラーで発生する復水である請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項16】
前記処理液はバラスト水からなる請求項7乃至請求項13のいずれか1項に記載の水処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−149103(P2010−149103A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149122(P2009−149122)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】