説明

水処理装置

【課題】装置を大型化することなく、処理効率を向上させることができる水処理装置を提供することを目的としている。
【解決手段】円筒状電極3と、この円筒状電極3の円筒中心軸に沿って張られた線状電極4とからなる電極対の円筒状電極の内部に向かって被処理水を水滴状にして噴射するとともに、円筒状電極3内でストリーマ放電を発生させて、ストリーマ放電によって生じる活性種によって被処理水中の処理対象物質を分解処理する水処理装置であって、円筒状電極と線状電極の間の、噴射された水滴が衝突する位置に、前記処理対象物質を吸着可能な物質を含む吸着部材91,92を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水、下水、排水等に含有される有機物、無機物、微生物を、放電により発生するラジカル、オゾン等の活性種により分解処理する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上水、下水、産業排水、プールなどの分野で、水中の有機物の酸化分解、殺菌、脱臭等の処理のためにオゾンが用いられている(特許文献1参照)。
しかしながら、オゾンは酸化力が弱く、親水化、低分子化はできても無機化することはできない。また、ダイオキシン等の難分解性有機物は分解できない。
【0003】
そこで、処理能力を向上させるために、放電によりオゾンを発生させるとともに、オゾンより酸化力が強いOHラジカルやOラジカル等を発生させ、このオゾン及びラジカルを含む放電空間に被処理水を曝すことによって、オゾンだけでなく、ラジカルによっても酸化処理するようにした水処理装置が提案されている(特許文献2参照)。
しかし、ラジカルは寿命が短く、消滅しやすく、そのため効率が悪く、上記のような先に提案された水処理装置ではラジカルによる酸化作用を十分に発揮させることができない。
【0004】
上記のような問題を解決するために、本発明の発明者らは円筒状電極と、この円筒状電極の円筒中心軸に沿って張られた線状電極とからなり、円筒状電極の円筒の開口端を上下方向に向けて処理室内に配置された少なくとも一対の電極対と、電極対の上方から被処理水を円筒状電極の内部に向かって水滴状にして噴射する噴射ノズルと、を備え、円筒状電極内でストリーマ放電を発生させて、ストリーマ放電によって生じる活性種によって被処理水中の処理対象物質を分解処理する水処理装置を先に提案している。
【0005】
すなわち、この水処理装置は、円筒状電極と、線状電極との間に上下方向に長い放電空間を形成し、細かい水滴にした被処理水をこの放電空間の上方から下方に落下させて、被処理水の活性種との接触面積を大きくすることによって、放電によって発生するオゾン、OHラジカル、Oラジカル等の活性種による被処理水中の処理対象物質の分解処理能力を上げるようにしている。
【0006】
また、この水処理装置の場合、円筒状電極及び線状電極の上下方向の長さを長くすれば放電空間が長くなるため、単位時間あたりの処理能力を上げることができる。
しかし、円筒状電極及び線状電極の上下方向の長さを長くすれば、装置全体の上下寸法も大きくなり、設置スペースの問題が生じる。
【0007】
【特許文献1】特開平9−267096号公報
【特許文献2】特開2000−279977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて、装置を大型化することなく、処理効率を向上させることができる水処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明にかかる水処理装置は、円筒状電極と、この円筒状電極の円筒中心軸に沿って張られた線状電極とからなり、円筒状電極の円筒の開口端を上下方向に向けて処理室内に配置された少なくとも一対の電極対と、この電極対の円筒状電極の内部に向かって被処理水を水滴状にして噴射する噴射ノズルと、を備え、円筒状電極内でストリーマ放電を発生させて、ストリーマ放電によって生じる活性種によって被処理水中の処理対象物質を分解処理する水処理装置であって、円筒状電極と線状電極の間の、噴射された水滴状の被処理水が衝突する位置に、前記処理対象物質を吸着可能な物質を含む吸着部材が配置されていることを特徴としている。
【0010】
本発明において、吸着部材としては、噴射された水滴状の被処理水中の処理対象物質を吸着できるとともに、円筒状電極と線状電極との間で発生する放電を阻害しなければ、その形状や放電空間内での配置は、特に限定されない。
吸着部材の形状としては、特に限定されないが、例えば、ストリーマ放電を阻害しないように、線状や板状が好ましい。
【0011】
また、吸着部材の設置位置は、ストリーマ放電の発生を阻害せず、水滴の落下を完全に阻害しなければ、特に限定されないが、例えば、線状電極に対して立体交差状態となる位置に配置する、電極対の上下方向に複数段並べて配置するよく、上記のように吸着部材の形状を、線状や板状とした場合には、上下で隣り合う吸着部材が立体交差する配置とすることが好ましい。
【0012】
なお、立体交差の角度は90度に限らず、90度未満でも構わない。例えば、90度未満であれば、吸着部材に衝突した水滴が吸着部材の傾斜に沿って吸着部材を伝い落ちる場合もある。
また、吸着部材を上下に複数段も受ける場合、その段数は、ストリーマ放電の発生を阻害しないとともに、吸着部材が水滴の落下を完全に阻害しない限り、できるだけ多段に設けることが好ましく、線状または板状の吸着部材が設けられた部分を鉛直方向に投影したとき、その投影面積が、水滴の落下面積と略同じなるように配置することが好ましい。
【0013】
吸着部材の大きさ(線状をしている場合は吸着部材の径、板状をしている場合は厚さおよび幅)は、特に限定されないが、0.1mm〜6mmが好ましい。すなわち、0.1mm未満では吸着部材の材質によっては、放電空間で発生する活性種の作用によって、短時間で崩壊してしまうおそれがあり、6mmを越えると、ストリーマ放電の発生を阻害するおそれがある。
【0014】
吸着部材を設ける密度は、特に限定されないが、上下方向に配置する場合、上下方向のピッチを1mm〜50mmとすることが好ましい。
【0015】
吸着部材の材質としては、処理対象物質が吸着可能な物質を含んでいて、処理対象物質を吸着できれば、特に限定されないが、例えば、無機質多孔体、無機質多孔体の焼結体及び有機質多孔体が挙げられ、放電空間に曝された場合の耐久性及び機械的強度等を考慮する無機質多孔体が好ましい。そして、これらは単独で用いても、複数種複合させて用いるようにしても構わない。また、ステンレス鋼線の周囲を上記無機質多孔体や有機多孔体によってコーティングしたものでも構わない。
上記無機質多孔体としては、特に限定されないが、例えば、メソポーラスシリカ、アロフェン、珪藻土、酸性白土、セピオライト、アタパルジャイト、ゼオライト、シリカゲルなどが挙げられ、放電空間に曝された場合の耐久性及び機械的強度等を考慮すると、無機質多孔体が好ましく、一般に難分解物質は分子の大きさが数〜数十nmであるため、メソポーラスシリカ、アロフェン、珪藻土、セピオライト、アタパルジャイト、シリカゲル等のメソポア(2〜50nm)を多く有する多孔体が好ましい。
なお、上記無機質多孔体は単独で用いても、複数種複合させて用いるようにしても構わない。
上記有機質多孔体としては、特に限定されないが、例えば、活性炭やイオン交換樹脂の多孔体が挙げられる。そして、これらは単独で用いても、複数種複合させて用いるようにしても構わない。
【0016】
円筒状電極及び線状電極の材質は、導電性があり耐食性に優れたものであれば、特に限定されないが、ステンレス鋼やチタンが好適である。
また、円筒状電極は、特に限定されないが、壁面が網状、あるいは、壁面に多数の透孔が穿設されている構成が好ましい。
線状電極の形状は、特に限定されないが、例えば、ワイヤー電極、ネジ状電極、剣山状電極、ワイヤーブラシ状電極が挙げられ、ストリーマ発生効率を高めるために、ネジ状電極、剣山状電極、ワイヤーブラシ状電極などの放電先端がシャープに尖った形状を備えたものが好ましい。
【0017】
さらに、円筒状電極及び線状電極は、1対だけでなく複数対備えていてもよい。
円筒状電極及び線状電極の給電方法は、円筒状電極と線状電極との間でストリーマ放電が発生すれば、特に限定されないが、円筒状電極を接地電極とし、線状電極を高圧パルス印加電極とすることが好ましい。
【0018】
噴射ノズルの数は、特に限定されず、1つ以上備えていればよい。また、円筒状電極及び線状電極を2対以上備えるような場合は、噴射ノズルは2つ以上備えていてもよい。
噴射ノズルから噴射される水滴の大きさは、特に限定されないが、1500μm以下(好ましくは10μm以上1500μm以下)が好ましい。
【0019】
また、水滴は、円筒状電極の円筒の内壁面近傍のみを落下するように、噴射ノズルから噴射されるようにしてもよい。
すなわち、放電空間内には、活性種が円筒状電極の円筒の内壁面近傍に高密度に存在するので、効率よく処理対象物質を分解処理できる。
なお、内壁面近傍とは、円筒状電極の中心軸を中心とする円筒半径の1/2径の仮想円筒と、円筒状電極の円筒内壁面とに囲まれた部分をいう。
【0020】
さらに、本発明の水処理装置においては、円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加する高圧電源や、水を受けて貯める貯水槽と、この貯水槽に貯められた水を被処理水として被処理水供給手段に送るポンプとからなる被処理水循環構造を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
上記のように、本発明にかかる水処理装置は、円筒状電極と、この円筒状電極の円筒中心軸に沿って張られた線状電極とからなり、円筒状電極の円筒の開口端を上下方向に向けて処理室内に配置された少なくとも一対の電極対と、この電極対の円筒状電極の内部に向かって被処理水を水滴状にして噴射する噴射ノズルと、を備え、円筒状電極内でストリーマ放電を発生させて、ストリーマ放電によって生じる活性種によって被処理水中の処理対象物質を分解処理する水処理装置であって、円筒状電極と線状電極の間の、噴射された水滴状の被処理水が衝突する位置に、前記処理対象物質を吸着可能な物質を含む吸着部材が配置されているので、装置を大型化することなく、処理効率を向上させることができる。
【0022】
すなわち、被処理水は、放電空間を通過する間に、放電によって発生するオゾン、OHラジカル、Oラジカル等の活性種によって被処理水中に含まれる処理対象物質が分解処理される。しかも、水滴の状態で放電空間を通過させて、処理対象物質が活性種と接触する面積が大きくして処理効率を上げるようにしている。しかし、吸着部材を設けていない場合、処理対象物質は水滴とともに重力加速度によって落下速度がどんどん大きくなりながら落下する。したがって、処理対象物質の放電空間内での滞留時間はそれほど長くない。
一方、本発明のように、吸着部材が設けられることによって、吸着された処理対象物質は放電空間内に留められ、放電空間内の滞留時間が長くなる。したがって、同じ長さの放電空間であっても、処理効率が向上する。
【0023】
また、吸着部材が上下方向に複数段設けられている構成とすれば、上段の吸着部材で吸着されなかった処理対象物質も、下段の吸着部材により吸着され、より処理効率が向上する。
そして、吸着部材を線または板状で構成すれば、吸着部材によってストリーマ放電が阻害されず、効率よく処理することができる。
また、上下で隣り合う線または板状の吸着部材が立体交差している構成とすれば、さらに処理効率が上がる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかる水処理装置の1つの実施の形態を模式的にあらわす断面図である。
【図2】図1の円筒状電極部分の拡大図である。
【図3】図2のX−X線断面図である。
【図4】実施例1,2及び比較例1の水処理装置の処理能力を比較してあらわすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる水処理装置の1つの実施の形態をあらわしている。
【0026】
図1に示すように、この水処理装置1は、処理室2と、円筒状電極3と、線状電極4と、複数の長尺吸着部材91と、多数の吸着枠状部9と,被処理水タンク5と、ポンプ6と、噴射ノズル7と、被処理水供給ホース71と、高圧電源である高電圧パルス発生装置8とを備えている。
処理室2は、例えば、アクリル樹脂等の絶縁材料で形成され、円筒状をした処理室本体21と、処理室本体21の下端を、通水孔22a部分を除いて閉鎖するように設けられた下部蓋部22とを備えている。
また、下部蓋部22は、被処理水タンク5の開口を上から塞ぐように設けられている。
【0027】
円筒状電極3は、例えば、図2に示すように、ステンレス鋼線31とステンレス鋼線32が縦横に等ピッチで編まれたステンレス網を円筒状に加工することによって得られ、外径が処理室本体21の内径より少し小さな図3に示すような円筒形をしている。
線状電極4は、例えば、直径0.28mmのステンレス鋼線で形成され、図3に示すように、円筒状電極3の中心軸に沿うように設けられている。
【0028】
吸着枠状部9は、2枚の長尺吸着部材91と、2枚の短尺吸着部材92とから形成され、平面視矩形をしている。
そして、吸着枠状部9は、円筒状電極3の高さ方向に等ピッチで複数段設けられていて、図3に示すように、上下で隣接する吸着枠状部9は、矩形の長手方向が直交している。すなわち、上下で隣接する長尺吸着部材91(または短尺吸着部材92)と長尺吸着部材91(または短尺吸着部材92)とは、立体的に直交している。
長尺吸着部材91及び短尺吸着部材92は、珪藻土焼結体からなる板材であって、それぞれ処理対象物質を吸着可能になっているとともに、その長手方向の両端縁に図3に示すように溝状の切り込み93が設けられている。
【0029】
そして、格段の吸着枠状部9は、以下のようにして形成されるようになっている。
(1)一枚の長尺吸着部材91(または短尺吸着部材92)の一方の切れ込み93を、いずれかのスレンレス鋼線32とステンレス鋼線32との間で1本のスレンレス鋼線31に嵌め込んだのち、同じ段のスレンレス鋼線32とステンレス鋼線32との間で他方の切れ込み93を他のステンレス鋼線31に嵌り込むようにして、下面をステンレス鋼線32に受けさせて円筒状電極3に支持させる。
(2)もう一枚の長尺吸着部材91(または短尺吸着部材92)を先に円筒状電極3に支持させた長尺吸着部材91(または短尺吸着部材92)に平行となるように上記と同様にして円筒状電極3に支持させる。
(3)2枚の短尺吸着部材92(または長尺吸着部材91)を、それぞれに直交するとともに、蒸気のようにして円筒状電極3に支持された2つの長尺吸着部材91(または短尺吸着部材92)端部に端部を重ね合わさるとともに、2つの長尺吸着部材91(または短尺吸着部材92)に直交するように、上記と同じようにして切り込み93を長尺吸着部材91(または短尺吸着部材92)と同じステンレス鋼線31に嵌り込むようにする。
【0030】
被処理水タンク5は、下部蓋部22の通水孔22aを下方から臨むように設けられている。
ポンプ6は、処理水タンク5に内に設けられ、被処理水タンク5内の被処理水Wを、被処理水供給ホース71を介して噴射ノズル7に送るようになっている。
【0031】
噴射ノズル7は、被処理水供給ホース71を介して送られてきた被処理水を円筒状電極3の上部開口に向かって噴射するようになっている。
また、噴射ノズル7は、図示していないが、平板状をした噴射部を備え、この噴射部に、円筒状電極3の内径より少し小径の円上に等ピッチで、多数の噴射孔(図示せず)が開けられており、この噴射孔から円筒状電極3の内壁面近傍に沿って鉛直方向に被処理水Wを小さな水滴Mとして噴射するようになっている。
【0032】
高電圧パルス発生装置8は、例えば、以下のように動作する。
高圧直流電源からの電流が抵抗を介してコンデンサに供給され、コンデンサが充電される。目標電圧までコンデンサが充電された後、トリガ回路からの高電圧のトリガパルスによりトリガトロンギャップスイッチがオン状態になる。このとき、コンデンサに充電された電荷がパルストランスの1次側に流れ込み、相互インダクタンスにより2次側にパルス状の誘起電圧が発生する。
【0033】
すなわち、高圧パルス発生装置8は、このようにしてパルストランスの2次側に生じた高電圧パルスが、接地電極である円筒状電極3と高圧印加電極である線状電極4と間に印加されて、円筒状電極3と線状電極4との間でストリーマ放電を起こすようになっている。
【0034】
この水処理装置1は、以下のようにして、被処理水中の処理対象物質を分解処理するようになっている。
すなわち、被処理水タンク5に処理対象物質を含む被処理水Wが仕込まれるとともに、パルスパワー発生装置8によって、円筒状電極3と線状電極4との間に、高電圧をパルス状に印加することによって、円筒状電極3内に上下方向に円筒状となったストリーマ放電空間が形成される。
一方、被処理水Wは、被処理水タンク5内からポンプ6によって、ホース71を介して噴射ノズル7に送られ、噴射部72の噴射孔72aから円筒状電極3の円筒内近傍に向かってミスト状の水滴Mとなって噴射される。
【0035】
そして、噴射された水滴Mは、重力加速度によって加速しながら放電空間内を落下していくが、噴射された水滴Mのうちの少なくとも一部が、円筒状電極3内を落下していく際に、長尺吸着部材91あるいは短尺吸着部材92に接触する。そして、長尺吸着部材91あるいは短尺吸着部材92に接触した水滴M中の処理対象物質が長尺吸着部材91あるいは短尺吸着部材92に吸着される。
また、放電空間を通過した水滴Mは、下部蓋部22の通水孔22aを介して再び被処理水タンク5に受けられ、噴射ノズル7へと循環される。
【0036】
すなわち、この水処理装置1は、ストリーマ放電によって、オゾン、OHラジカル、Oラジカル等の活性種が放電空間内に発生する。
そして、この放電空間内を水滴Mとなった被処理水Wが落下していく間に活性種によって被処理水W中の処理対象物質が分解処理される。
【0037】
しかも、円筒状電極3内に長尺吸着部材91及び短尺吸着部材92からなる枠状吸着部9が多段に配置されているので、これらの長尺吸着部材91あるいは短尺吸着部材92に当たった水滴M中の処理対象物質は、長尺吸着部材91あるいは短尺吸着部材92に吸着され、放電空間内に長時間止まることになる。したがって、長尺吸着部材91及び短尺吸着部材92を設けない場合に比べ、単位時間あたりの処理能力が向上する。
また、上下で隣接する長尺吸着部材91(または短尺吸着部材92)と長尺吸着部材91(または短尺吸着部材92)とは、立体的に直交していて、上下方向から見たとき交点部分でしか重なりあわないので、水滴Mがいずれかの長尺吸着部材91及び短尺吸着部材92に衝突しやすい。
【0038】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、パルスパワー発生装置を備えていたが、パルスパワー発生装置は市販のものを別途用意するようにしても構わない。
上記の実施の形態では、円筒状電極の網目を利用して長尺吸着部材及び短尺吸着部材を支持していたが、例えば、円筒状電極の近傍に線状電極に平行な支柱部材を、線状電極を中心にして放射状に別途設け、この支柱に吸着部材を支持するようにしても構わない。
【0039】
また、上記の実施の形態では、各段の枠状吸着部が平面視矩形となるとともに、隣接する上下の段でその矩形の長軸が直交するように円筒状電極に支持されていたが、枠状吸着部は、平面視三角形、五角形、六角形をしていても構わないし、吸着部材は、枠状に配置しなくても構わない。
さらに、上記の実施の形態では、枠状吸着部が上下方向に等ピッチで設けられていたが、上下方向でピッチを変えても構わないし、上下方向で吸着部材の厚みや幅を変えるようにしても構わない。
【0040】
上記の実施の形態では、長尺吸着部材および短尺吸着部材の端部に設けられた切り込みに円筒状電極を構成する縦方向のステンレス鋼線をはめ込むことによって長尺吸着部材および短尺吸着部材を円筒状電極に支持していたが、噴射ノズルから噴射される水滴の圧によって外れなければ他の固定方法を用いるようにしても構わない。
上記の実施の形態では、長尺吸着部材(または短尺吸着部材)の端部が直接短尺吸着部(または長尺吸着部材)の端部に重なるようになっていたが、横方向のステンレス鋼線を間に介在させた状態で長尺吸着部材(または短尺吸着部材)の端部が直接短尺吸着部(または長尺吸着部材)の端部に重なるようにしても構わない。
【0041】
上記の実施の形態では、処理室がアクリル樹脂で形成されていたが、ストリーマ放電によって発生する活性種に対しての耐久性を備えたものが好ましく、例えば、金網入りの繊維強化樹脂(FRP)でも構わない。
上記の実施の形態では、噴射ノズルから水滴を鉛直方向の噴射するようにしていたが、円筒状電極の側方から水滴を噴射し、水滴を円筒状電極の網目を介して放電空間内に供給するようにしても構わない。
【0042】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と対比させて説明する。
(実施例1)
図1に示す水処理装置1を用い、以下の実験条件で精製水にインジゴカルミンが20ppmの濃度で含まれる被処理水を水処理し、紫外可視分光光度計(島津製作所社製商品名UVmini−1240)を用いて250nmでの被処理水の吸光度の経時変化を調べた。
〔実験条件〕
・被処理水量:1リットル
・被処理水の噴射速度(循環速度):3L/分
・パルス電圧:25kV
・放電回数:100回/秒
・円筒状電極の材質:直径1.0mmのステンレス鋼線を8mmピッチで格子状に編んだ網
・円筒状電極の内径:36mm
・円筒状電極の長さ(中心軸方向の長さ):300mm
・噴射ノズルから円筒状電極までの距離:200mm
・枠状吸着部の段数:33段
・枠状吸着部の上下の段のピッチ:8mm
・長尺吸着部材及び短尺吸着部材の材質:珪藻土焼結体(鈴木産業社製商品名豊ヘルス)
・長尺吸着部材及び短尺吸着部材の厚さ:6mm
・長尺吸着部材及び短尺吸着部材の幅:6mm
・長尺吸着部材の長さ:30mm
・短尺吸着部材の長さ:20mm
・上下に隣り合う段の長尺吸着部材と長尺吸着部材、及び短尺吸着部材と短尺吸着部材の立体交差角度:42度
【0043】
(実施例2)
枠状吸着部の段数を17段、枠状吸着部の上下の段のピッチを16mmとした以外は、上記実施例1と同様にして、被処理水の吸光度の経時変化を調べた。
【0044】
(比較例1)
吸着部材を設けなかった以外は、上記実施例1と同様にして、被処理水の吸光度の経時変化を調べた。
【0045】
上記実施例1,2及び比較例1で調べた被処理水の吸光度の経時変化を、ブランクとしての精製水と対比して図4に示した。
図4に示すように、吸着部材を設けることによって、処理効率がよくなり、吸着部材の段数を多くすればより処理効率がよくなることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の水処理装置は、特に限定されないが、例えば、有機物を含む排水の浄化、汚染水の殺菌などに用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 水処理装置
2 処理室
3 円筒状電極
4 線状電極
5 被処理水タンク
6 ポンプ
7 噴射ノズル
71 ホース
8 高電圧パルス発生装置(高圧電源)
9 枠状吸着部
91 長尺吸着部材
92 短尺吸着部材
W 被処理水
M 水滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状電極と、この円筒状電極の円筒中心軸に沿って張られた線状電極とからなり、円筒状電極の円筒の開口端を上下方向に向けて処理室内に配置された少なくとも一対の電極対と、
この電極対の円筒状電極の内部に向かって被処理水を水滴状にして噴射する噴射ノズルと、を備え、
円筒状電極内でストリーマ放電を発生させて、ストリーマ放電によって生じる活性種によって被処理水中の処理対象物質を分解処理する水処理装置であって、
円筒状電極と線状電極の間の、噴射された水滴状の被処理水が衝突する位置に、前記処理対象物質を吸着可能な物質を含む吸着部材が配置されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
吸着部材が、線状電極に対して立体交差状態で設けられている請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
吸着部材が上下方向に複数段設けられている請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
吸着部材が線状または板状をしている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の水処理装置。
【請求項5】
上下で隣り合う吸着部材が立体交差している請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
吸着部材が無機質多孔体、無機質多孔体の焼結体及び有機質多孔体の少なくともいずれか1種からなる請求項1〜請求項5のいずれかに記載の水処理装置。
【請求項7】
無機質多孔体が、メソポーラスシリカ、アロフェン、珪藻土、酸性白土、セピオライト、アタパルジャイト、ゼオライト、シリカゲルからなる群からなる少なくともいずれか1種から形成されている請求項6に記載の水処理装置。
【請求項8】
有機質多孔体が、活性炭及びイオン交換樹脂の少なくともいずれか1種から形成されている請求項6に記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−67790(P2011−67790A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222614(P2009−222614)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】