説明

水分散スラリー塗料の製造方法

【課題】塗料樹脂粒子同士の合着が防止されて、貯蔵安定性に優れ、しかも、焼き付け硬化後の塗膜の表面平滑性に優れた水分散スラリー塗料の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂(b)、又は、溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させた溶液(c)に、粒子(A)が水性媒体(F)に分散されてなる水性分散液(G)を加え混合させることにより、樹脂(b)又は溶液(c)の粒子を形成させ、溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させた場合はさらに溶剤(y)を除去し、粒子(A)の体積平均粒径より大きい体積平均粒径を有し樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)が水性媒体(F)中に分散してなる水性分散体(X)を得る水分散スラリー塗料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散スラリー塗料の製造方法に関する。さらに詳しくは、貯蔵安定性、および、焼き付け硬化後の塗膜の表面平滑性に優れた水分散スラリー塗料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境に配慮した産業技術を推進するために、産業界では環境規制に合う低VOC(揮発性有機化合物、以下同様の意味を示す。)の塗料が望まれている。また低VOC塗料の塗膜の薄膜化、高仕上がりへの要求も著しい。このような低VOCの塗料として粉体塗料、粒径1〜10μmの粉体塗料を水中に分散させた水分散スラリー塗料及び水性塗料がある。
【0003】
これらの塗料の中で粉体塗料は、仕上がり向上の為に微粒子化すると塗着効率が大幅に低下するので、粒径が5μm以下の粒子を使用することは難しい。また塗装設備も、粉体専用設備が必要となる。また、粒径0.3μm以下の水性塗料(水性エマルション塗料など)は仕上がり性が不十分で、既存の水性設備を利用できるものの、ワキなどが発生するといった問題がある。
【0004】
これに対し水分散スラリー塗料は、既存の水性塗装設備で塗装可能であるといった利点があり、また水性塗料(水性エマルション塗料など)に比べて、粒径が大きいためワキが発生しにくく、仕上がりも良好である(例えば、特許文献1参照。)。水分散スラリー塗料の製造方法としては、溶融させた塗料組成物を高圧下で連続的に造粒し、界面活性剤を含有する水溶液中に分散する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この製造方法では粗大粒子が多く発生し、焼付け硬化後の塗膜が損なわれやすく、該粗大粒子を取り除く工程が幾つも必要になる。また、有機溶剤に溶解させた塗料樹脂組成物を界面活性剤を用いて水中で乳化し、その後粉砕する方法も開示されている(例えば、特許文献3)。この方法で製造される水分散スラリー塗料では、粉砕工程を有するため、ガラス転移温度の低い塗料組成物を用いると十分に粉砕することができないという問題があり、塗料組成物のガラス転移温度を高く設定し、粉砕し易くする必要がある。しかし、この場合には焼付け硬化後の塗膜の平滑性が不十分になる。ガラス転移温度を低く設計することで平滑性を改善することが可能であるが、粉砕工程での効率が悪くなり、塗料樹脂粒子同士が合着しやすくなり、貯蔵安定性が悪化する。
【特許文献1】特開平7−258601号公報
【特許文献2】特表2003−522824号公報
【特許文献3】特表2003−524030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、塗料樹脂粒子同士の合着が防止されて、貯蔵安定性に優れ、しかも、焼き付け硬化後の塗膜の表面平滑性に優れた水分散スラリー塗料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
樹脂(b)、又は、溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させた溶液(c)に、粒子(A)が水性媒体(F)に分散されてなる水性分散液(G)を加え混合させることにより、樹脂(b)又は溶液(c)の粒子を形成させ、溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させた場合はさらに溶剤(y)を除去し、粒子(A)の体積平均粒径より大きい体積平均粒径を有し樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)が水性媒体(F)中に分散してなる水性分散体(X)を得ることを特徴とする水分散スラリー塗料の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水分散スラリー塗料の製造方法は、得られた水分散スラリー塗料が、下記の点で優れているという効果を奏する。
(1)塗料の粒子同士が合着することがなく、貯蔵安定性に優れる。
(2)焼き付け後の硬化塗膜の表面平滑性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の水分散スラリー塗料の製造方法は、第1工程:粒子(A)が分散されてなる水性分散液(G)を製造する、第2工程:樹脂(b)、又は、溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させた溶液(c)に、粒子(A)が分散されてなる水性分散液(G)を加え、混合する、第3工程:溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させた場合はさらに溶剤(y)を除去し、粒子(A)の体積平均粒径より大きい体積平均粒径の樹脂粒子(B)が分散してなる水性分散体(X)を得る、以上の2又は3個の工程からなることができる。
以下、各工程について順に説明する。
【0009】
第1工程:粒子(A)が分散されてなる水性分散液(G)を製造する。
水性分散液(G)中における粒子(A)の体積平均粒径は、好ましくは0.001μm以上0.5μm以下であり、製造のし易さ及びコストの観点からより好ましくは0.005μm以上、さらに好ましくは0.01μm以上であり、貯蔵安定性の観点からより好ましくは0.4μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下である。
【0010】
本発明において、粒子(A)は、樹脂(a1)からなる樹脂粒子(A1)、無機物(a2)からなる無機粒子(A2)及び(A1)、(A2)の混合粒子が挙げられ、樹脂(a1)からなる樹脂粒子(A1)であることが好ましい。
【0011】
本発明において、樹脂(a1)としては、水性分散液を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂であっても使用でき、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても良いが、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂(a1)としては、上記樹脂の2種以上を併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散液が得られやすいという観点からビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびそれらの併用である
樹脂(a1)としては、反応性官能基を有するものであることが好ましい。
【0012】
樹脂(a1)における反応性官能基としては、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、加水分解性シリル基、ブロック化カルボキシル基、ブロック化アミノ基およびブロック化イソシアネート基などが挙げられ、製造時および保管時の貯蔵安定性の観点から、好ましいのは、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、ブロック化カルボキシル基、ブロック化アミノ基およびブロック化イソシアネート基、さらに好ましいのはエポキシ基、水酸基およびブロック化イソシアネート基である。
【0013】
ブロック化カルボキシル基におけるブロック化剤としては、アンモニア、第3級アルコール(炭素数4〜19、例えばt−ブタノール、トリエチルカルビノール、トリブチルカルビノール、トリフェニルカルビノール)およびビニル化合物(炭素数4〜18、例えば2−メチルプロペン、2−メチルヘキセン)などが挙げられる。これらのうち貯蔵安定性および熱処理時の脱離のしやすさの観点から、好ましいのは第3級アルコール、さらに好ましいのはt−ブタノールおよびトリエチルカルビノールである。
ブロック化アミノ基におけるブロック化剤としては、ケトン[炭素数3〜15、例えば、脂肪族ケトン(アセトン、メチルイソブチルケトンなど)、芳香族ケトン(ベンゾフェノンなど)、脂環式ケトン(ジシクロヘキシルケトン)などが挙げられる。これらのうち貯蔵安定性および熱処理時の脱離のしやすさの観点から、好ましいのは脂肪族ケトン、さらに好ましいのはメチルイソブチルケトンである。
【0014】
ブロック化イソシアネート基におけるブロック化剤としては、オキシム(炭素数3〜10、例えば、アセトキシム、メチルエチルエトキシム)、アルコール(炭素数1〜18の1価アルコール、例えばメチルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール)、フェノール化合物[炭素数6〜20の1価フェノール、例えば単環フェノール(フェノール、ニトロフェノールなど)、多環フェノール(1−ナフトールなど)]、ラクタム(炭素数4〜15、例えば、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、γ−バレロラクタム)などが挙げられる。これらのうち貯蔵安定性および熱処理時の脱離のしやすさの観点から、好ましいのはオキシムおよびラクタム、さらに好ましいのはアセトキシム、ε−カプロラクタムである。
【0015】
樹脂(a1)1分子における反応性官能基の数は、塗膜強度の観点から、好ましくは1個以上、さらに好ましくは2個以上である。
【0016】
前記反応性官能基を導入して樹脂(a1)を形成させる方法としては、該反応性官能基を有するモノマーを(共)重合させる方法、該反応性官能基を有する重合開始剤を用いて(共)重合を行う方法、および(共)重合を行った後、樹脂を変性して該反応性官能基を導入する方法などが挙げられる。これらのうち、反応性官能基の導入のしやすさの観点から好ましいのは、該反応性官能基を有するモノマーを(共)重合させる方法である。
【0017】
ビニル系樹脂は、ビニル系モノマーを単独重合または共重合したポリマーである。ビニル系モノマーとしては、下記(1)〜(10)が挙げられる。
【0018】
(1)ビニル系炭化水素:(1−1)脂肪族ビニル系炭化水素:アルケン類、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、前記以外のα−オレフィン等;アルカジエン類、例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン。
(1−2)脂環式ビニル系炭化水素:モノ−もしくはジ−シクロアルケンおよびアルカジエン類、例えばシクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン等;テルペン類、例えばピネン、リモネン、インデン等。
(1−3)芳香族ビニル系炭化水素:スチレンおよびそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキルおよび/またはアルケニル)置換体、例えばα−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン等;およびビニルナフタレン。
【0019】
(2)カルボキシル基含有ビニル系モノマー及びその塩:炭素数3〜30の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物およびそのモノアルキル(炭素数1〜24)エステル、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエステル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸等のカルボキシル基含有ビニル系モノマー;ならびにそれらの塩。
【0020】
(3)スルホン基含有ビニル系モノマー、ビニル系硫酸モノエステル化物及びこれらの塩:炭素数2〜14のアルケンスルホン酸、例えばビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸;およびその炭素数2〜24のアルキル誘導体、例えばα−メチルスチレンスルホン酸等;スルホ(ヒドロキシ)アルキル−(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アクリルアミド、例えば、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、アルキル(炭素数3〜18)アリルスルホコハク酸、ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(エチレン、プロピレン、ブチレン:単独、ランダム、ブロックでもよい)モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル[ポリ(n=5〜15)オキシプロピレンモノメタクリレート硫酸エステル等]、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル、および硫酸エステルもしくはスルホン酸基含有モノマー;ならびにそれらの塩。
【0021】
(4)燐酸基含有ビニル系モノマー及びその塩:(メタ)アクリロイルオキシアルキル(C1〜C24)燐酸モノエステル、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、フェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1〜24)ホスホン酸類、例えば2−アクリロイルオキシエチルホスホン酸;ならびにそれらの塩。
【0022】
なお、上記(2)〜(4)の塩としては、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩もしくは4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0023】
(5)ヒドロキシル基含有ビニル系モノマー:ヒドロキシスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、庶糖アリルエーテル等。
【0024】
(6)含窒素ビニル系モノマー:(6−1)アミノ基含有ビニル系モノマー:アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、クロチルアミン、N,N−ジメチルアミノスチレン、メチルα−アセトアミノアクリレート、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルチオピロリドン、N−アリールフェニレンジアミン、アミノカルバゾール、アミノチアゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノイミダゾール、アミノメルカプトチアゾール、これらの塩等、(6−2)アミド基含有ビニル系モノマー:(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、桂皮酸アミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジベンジルアクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N−メチルN−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等、(6−3)ニトリル基含有ビニル系モノマー:(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレート等、(6−4)4級アンモニウムカチオン基含有ビニル系モノマー:ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジアリルアミン等の3級アミン基含有ビニル系モノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)、(6−5)ニトロ基含有ビニル系モノマー:ニトロスチレン等。
【0025】
(7)オキシラン又はオキソラン基含有ビニル系モノマー:グルシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等。
【0026】
(8)ハロゲン元素含有ビニル系モノマー:塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン、クロロプレン等。
【0027】
(9)ビニルエステル、ビニル(チオ)エーテル、ビニルケトン、ビニルスルホン類:(9−1)ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα−エトキシアクリレート、炭素数1〜50のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等]、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン類[ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等]等、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系モノマー[ポリエチレングリコール(分子量300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド30モル付加物(メタ)アクリレート等]、ポリ(メタ)アクリレート類[多価アルコール類のポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等;(9−2)ビニル(チオ)エーテル、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル2−エチルヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニル2−メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、ビニル2−ブトキシエチルエーテル、3,4−ジヒドロ1,2−ピラン、2−ブトキシ−2’−ビニロキシジエチルエーテル、ビニル2−エチルメルカプトエチルエーテル、アセトキシスチレン、フェノキシスチレン、(9−3)ビニルケトン、例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルフェニルケトン;ビニルスルホン、例えばジビニルサルファイド、p−ビニルジフェニルサルファイド、ビニルエチルサルファイド、ビニルエチルスルフォン、ジビニルスルフォン、ジビニルスルフォキサイド等。
【0028】
(10)その他のビニル系モノマー:イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等。
【0029】
ビニル系モノマーの共重合体としては、上記(1)〜(10)の任意のモノマー同士を、2元またはそれ以上の個数で、任意の割合で共重合したポリマーが挙げられるが、例えばスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0030】
樹脂(a1)は、水性媒体(F)中で樹脂粒子(A1)を形成することが必要であることから、少なくとも水性媒体(F)に完全に溶解していないことが必要である。そのため、ビニル系樹脂が共重合体である場合には、ビニル系樹脂を構成する疎水性モノマーと親水性モノマーの比率は、選ばれるモノマーの種類によるが、一般に疎水性モノマーが10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。疎水性モノマーの比率が、10%以下になるとビニル系樹脂が水溶性になり、粒子形態をとれなくなり、樹脂粒子(A1)の貯蔵安定性が損なわれる。ここで、親水性モノマーとは、親水基を有するモノマー、例えばカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホン基、燐酸基、チオール基等を有するモノマー、及びその塩をいうものとする。
【0031】
ポリエステル樹脂としては、ポリオールと、ポリカルボン酸またはその酸無水物またはその低級アルキルエステルとの重縮合物などが挙げられる。ポリオールとしてはジオール(11)および3価以上のポリオール(12)が、ポリカルボン酸またはその酸無水物またはその低級アルキルエステルとしては、ジカルボン酸(13)および3価以上のポリカルボン酸(14)およびこれらの酸無水物または低級アルキルエステルが挙げられる。ポリオールとポリカルボン酸の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0032】
ジオール(11)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;その他、ポリラクトンジオール(ポリε−カプロラクトンジオールなど)、ポリブタジエンジオールなどが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。
【0033】
3価以上のポリオール(12)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);トリスフェノール類(トリスフェノールPAなど);ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記トリスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物;上記ノボラック樹脂のアルキレンオキサイド付加物;アクリルポリオール[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他のビニル系モノマーの共重合物など。]などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコールおよびノボラック樹脂のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはノボラック樹脂のアルキレンオキサイド付加物である。
【0034】
ジカルボン酸(13)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデセニルコハク酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);炭素数8以上の分岐アルキレンジカルボン酸[ダイマー酸、アルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸など)、アルキルコハク酸(デシルコハク酸、ドデシルコハク酸、オクタデシルコハク酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。
3価以上のポリカルボン酸(14)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ジカルボン酸(13)または3価以上のポリカルボン酸(14)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてもよい
【0035】
ポリエステル樹脂中に反応性官能基(カルボキシル基、水酸基等)を導入する方法としては、カルボキシル基含有成分と水酸基含有成分の反応における当量比(COOH/OH)を調整する方法が挙げられる。
カルボキシル基を導入する場合の該当量比は、塗膜の硬化性および樹脂の顔料分散性の観点から、好ましくは1を越え10以下、さらに好ましくは1.1〜3、また、水酸基を導入する場合の該当量比は、硬化後の樹脂の耐候性および樹脂の顔料分散性の観点から、好ましくは0.2以上1未満、さらに好ましくは0.7〜0.9である。
上記ポリエステル樹脂の製造方法としては、ポリカルボン酸とポリオールとの脱水重縮合反応、ポリカルボン酸のエステル形成性誘導体とポリオールとのエステル交換反応などの通常のポリエステル重合方法が挙げられる。
【0036】
ポリウレタン樹脂としては、ポリイソシアネート(15)と活性水素基含有化合物{水、ポリオール[前記ジオール(11)および3価以上のポリオール(12)]、ジカルボン酸(13)、3価以上のポリカルボン酸(14)、ポリアミン(16)、ポリチオール(17)等}との重付加物などが挙げられる。
【0037】
ポリイソシアネート(15)としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネートおよびこれらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物など)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。上記芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI[粗製ジアミノフェニルメタン〔ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)またはその混合物との縮合生成物;ジアミノジフェニルメタンと少量(たとえば5〜20重量%)の3官能以上のポリアミンとの混合物〕のホスゲン化物:ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)]、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。上記脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートなどの脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。上記脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−および/または2,6−ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。上記芳香脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、m−および/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などが挙げられる。また、上記ポリイソシアネートの変性物には、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物などが挙げられる。具体的には、変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDIなど)、ウレタン変性TDIなどのポリイソシアネートの変性物およびこれらの2種以上の混合物[たとえば変性MDIとウレタン変性TDI(イソシアネート含有プレポリマー)との併用]が含まれる。これらのうちで好ましいものは6〜15の芳香族ポリイソシアネート、炭素数4〜12の脂肪族ポリイソシアネート、および炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネートであり、とくに好ましいものはTDI、MDI、HDI、水添MDI、およびIPDIである。
【0038】
ポリアミン(16)の例としては、脂肪族ポリアミン類(C2〜C18):(1)脂肪族ポリアミン{C2〜C6アルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)、ポリアルキレン(C2〜C6)ポリアミン〔ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン,トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなど〕};(2)これらのアルキル(C1〜C4)またはヒドロキシアルキル(C2〜C4)置換体〔ジアルキル(C1〜C3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミンなど〕;(3)脂環または複素環含有脂肪族ポリアミン〔3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなど〕;(4)芳香環含有脂肪族アミン類(C8〜C15)(キシリレンジアミン、テトラクロル−p−キシリレンジアミンなど)、脂環式ポリアミン(C4〜C15):1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4’−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)など、複素環式ポリアミン(C4〜C15):ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン、1,4ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなど、芳香族ポリアミン類(C6〜C20):(5)非置換芳香族ポリアミン〔1,2−、1,3−および1,4−フェニレンジアミン、2,4’−および4,4’−ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン(ポリフェニルポリメチレンポリアミン)、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリアミン、ナフチレンジアミンなど;核置換アルキル基(メチル、エチル、n−およびi−プロピル、ブチルなどのC1〜C4アルキル基)を有する芳香族ポリアミン、たとえば2,4−および2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,4−ジエチル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジイソプロピル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジブチル−2,5−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノメシチレン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリイソプロピル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジメチル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジイソプロピル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジブチル−1,5−ジアミノナフタレン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、3,3’,5,5’−テトライソプロピルベンジジン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジエチル−3’−メチル−2’,4−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジイソプロピル−3’−メチル−2’,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−2,2’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなど〕、およびこれらの異性体の種々の割合の混合物;(6)核置換電子吸引基(Cl、Br、I、Fなどのハロゲン;メトキシ、エトキシなどのアルコキシ基;ニトロ基など)を有する芳香族ポリアミン〔メチレンビス−o−クロロアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、2−クロル−1,4−フェニレンジアミン、3−アミノ−4−クロロアニリン、4−ブロモ−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジクロル−1,4−フェニレンジアミン、5−ニトロ−1,3−フェニレンジアミン、3−ジメトキシ−4−アミノアニリン;4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−5,5’−ジブロモ−ジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)オキシド、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)デカン、ビス(4−アミノフェニル)スルフイド、ビス(4−アミノフェニル)テルリド、ビス(4−アミノフェニル)セレニド、ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)ジスルフイド、4,4’−メチレンビス(2−ヨードアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−ブロモアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−フルオロアニリン)、4−アミノフェニル−2−クロロアニリンなど〕;(7)2級アミノ基を有する芳香族ポリアミン〔上記(5)〜(6)の芳香族ポリアミンの−NH2の一部または全部が−NH−R’(R’はアルキル基たとえばメチル,エチルなどの低級アルキル基)で置き換ったもの〕〔4,4’−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン、1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼンなど〕、ポリアミドポリアミン:ジカルボン酸(ダイマー酸など)と過剰の(酸1モル当り2モル以上の)ポリアミン類(上記アルキレンジアミン、ポリアルキレンポリアミンなど)との縮合により得られる低分子量ポリアミドポリアミンなど、ポリエーテルポリアミン:ポリエーテルポリオール(ポリアルキレングリコールなど)のシアノエチル化物の水素化物などが挙げられる。
【0039】
ポリチオール(17)としては、エチレンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオールなどが挙げられる。
【0040】
エポキシ樹脂としては、ポリエポキシド(18)の開環重合物、ポリエポキシド(18)と活性水素基含有化合物{水、ポリオール[前記ジオール(11)および3価以上のポリオール(12)]、ジカルボン酸(13)、3価以上のポリカルボン酸(14)、ポリアミン(16)、ポリチオール(17)等}との重付加物、またはポリエポキシド(18)とジカルボン酸(13)または3価以上のポリカルボン酸(14)の酸無水物との硬化物などが挙げられる。
【0041】
ポリエポキシド(18)は、分子中に2個以上のエポキシ基を有していれば、特に限定されない。ポリエポキシド(18)として好ましいものは、硬化物の機械的性質の観点から分子中にエポキシ基を2〜6個有するものである。ポリエポキシド(18)のエポキシ当量(エポキシ基1個当たりの分子量)は、通常65〜1000であり、好ましいのは90〜500である。エポキシ当量が1000を超えると、架橋構造がルーズになり硬化物の耐水性、耐薬品性、機械的強度等の物性が悪くなり、一方、エポキシ当量が65未満のものを合成するのは困難である。
【0042】
ポリエポキシド(18)の例としては、芳香族系ポリエポキシ化合物、複素環系ポリエポキシ化合物、脂環族系ポリエポキシ化合物あるいは脂肪族系ポリエポキシ化合物が挙げられる。芳香族系ポリエポキシ化合物としては、多価フェノール類のグリシジルエーテル体およびグリシジルエステル体、グリシジル芳香族ポリアミン、並びに、アミノフェノールのグリシジル化物等が挙げられる。多価フェノールのグリシジルエーテル体としては、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ハロゲン化ビスフェノールAジグリシジル、テトラクロロビスフェノールAジグリシジルエーテル、カテキンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ピロガロールトリグリシジルエーテル、1,5−ジヒドロキシナフタリンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、オクタクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェニルジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフチルクレゾールトリグリシジルエーテル、トリス(ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、ジナフチルトリオールトリグリシジルエーテル、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、p−グリシジルフェニルジメチルトリールビスフェノールAグリシジルエーテル、トリスメチル−tret−ブチル−ブチルヒドロキシメタントリグリシジルエーテル、9,9’−ビス(4−ヒドキシフェニル)フロオレンジグリシジルエーテル、4,4’−オキシビス(1,4−フェニルエチル)テトラクレゾールグリシジルエーテル、4,4’−オキシビス(1,4−フェニルエチル)フェニルグリシジルエーテル、ビス(ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、フェノールまたはクレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル体、リモネンフェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル体、ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルの反応から得られるジグリシジルエーテル体、フェノールとグリオキザール、グルタールアルデヒド、またはホルムアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル体、およびレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル体等が挙げられる。多価フェノールのグリシジルエステル体としては、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。グリシジル芳香族ポリアミンとしては、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジフェニルメタンジアミン等が挙げられる。さらに、本発明において前記芳香族系として、p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、トリレンジイソシアネートまたはジフェニルメタンジイソシアネートとグリシドールの付加反応によって得られるジグリシジルウレタン化合物、前記2反応物にポリオールも反応させて得られるグリシジル基含有ポリウレタン(プレ)ポリマーおよびビスフェノールAのアルキレンオキシド(エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)付加物のジグリシジルエーテル体も含む。複素環系ポリエポキシ化合物としては、トリスグリシジルメラミンが挙げられる;脂環族系ポリエポキシ化合物としては、ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエーテル、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、およびビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミン、ダイマー酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。また、脂環族系としては、前記芳香族系ポリエポキシド化合物の核水添化物も含む;脂肪族系ポリエポキシ化合物としては、多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル体、多価脂肪酸のポリグリシジルエステル体、およびグリシジル脂肪族アミンが挙げられる。多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル体としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルおよびポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。多価脂肪酸のポリグリシジルエステル体としては、ジグリシジルオキサレート、ジグリシジルマレート、ジグリシジルスクシネート、ジグリシジルグルタレート、ジグリシジルアジペート、ジグリシジルピメレート等が挙げられる。グリシジル脂肪族アミンとしては、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。また、本発明において脂肪族系としては、ジグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートの(共)重合体も含む。これらのうち、好ましいのは、脂肪族系ポリエポキシ化合物および芳香族系ポリエポキシ化合物である。ポリエポキシドは、2種以上併用しても差し支えない。
【0043】
樹脂(a1)のガラス転移温度(以下、Tgと記す。)は、貯蔵安定性の観点から、好ましくは0℃〜100℃、さらに好ましくは20℃〜95℃、より好ましくは30℃〜90℃である。水分散スラリー塗料を作製する温度よりTgが低いと、合一を防止する効果が小さくなる。なお、本発明におけるTgは、DSC測定から求められる値である。
【0044】
樹脂粒子(A1)が水や分散時に用いる溶剤に対して、溶解したり、膨潤したりするのを低減する観点から、樹脂(a1)の分子量、SP値(SP値の計算方法はPolymer Engineering and Science,Feburuary,1974,Vol.14,No.2,P.147〜154による)、結晶性、架橋点間分子量等を適宜調整するのが好ましい。
【0045】
樹脂(a1)の数平均分子量(GPCにて測定、以下Mnと略記)は、好ましくは1000以上、さらに好ましくは1400以上、SP値は、好ましくは4〜18、さらに好ましくは5〜14である。
【0046】
また、樹脂(a1)に架橋構造を導入させても良い。かかる架橋構造は、共有結合性、配位結合性、イオン結合性、水素結合性等、いずれの架橋形態であってもよい。
【0047】
樹脂(a1)からなる樹脂粒子(A1)の製造方法としては、(i)ビニル系樹脂の場合において、モノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法または分散重合法等の乳化剤又は分散剤存在下の重合反応により、直接、樹脂粒子の水性分散液を製造する方法、(ii)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加あるいは縮合系樹脂の場合において、前駆体(モノマー、オリゴマー等)またはその溶剤溶液を適当な分散剤存在下で水性媒体(F)中に分散させ、その後に加熱したり、硬化剤を加えたりして硬化させて樹脂粒子の水性分散液を製造する方法、(iii)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加あるいは縮合系樹脂の場合において、前駆体(モノマー、オリゴマー等)またはその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化しても良い。)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法、(iv)あらかじめ重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であっても良い。)により作製した樹脂を機械回転式またはジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂粒子を得た後、適当な分散剤存在下で水中に分散させる方法、(v)あらかじめ重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であっても良い。)により作製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂粒子を得た後、該樹脂粒子を適当な分散剤存在下で水中に分散させる方法、(vi)あらかじめ重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であっても良い。)により作製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、またはあらかじめ溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂粒子を析出させ、次いで、溶剤を除去して樹脂粒子を得た後、該樹脂粒子を適当な分散剤存在下で水中に分散させる方法、(vii)あらかじめ重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であっても良い。)により作製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下で水性媒体(F)中に分散させ、これを加熱または減圧等によって溶剤を除去する方法、(viii)あらかじめ重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であっても良い。)により作製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法等が挙げられる。
【0048】
無機物(a2)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
天然物としては、石灰石(重質炭酸カルシウム)、石英、珪石(シリカ)、ウオラスナイト、石膏、アスベスト、アパタイト、マグネタイト、及びゼオライト等が含まれる。
【0049】
合成物(精製物を含む)としては、金属、金属化合物、その他の複合物等(金属複合化合物、非金属化合物及び非金属複合化合物等)及び有機物を前駆体とする炭化物等が挙げられる。
【0050】
金属としては、室温以上の温度(20〜250℃)で固体である金属であれば使用でき、元素の周期率表において、1族〜16族の金属(亜鉛、アルミニウム、モリブデン、タングステン、ジルコニウム、バリウム、マンガン、コバルト、カルシウム、金、銀、クロム、チタン、鉄、白金、銅、鉛及びニッケル等)等が挙げられ、この他、ニッケル−銅、コバルト−ニッケル、銅−パラジウム、鉄−ビスマス及びアルミニウム−マグネシウム等の合金(固溶体)等も使用できる。
【0051】
金属化合物としては、元素の周期率表において、1族〜16族の金属酸化物(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化スズ、酸化鉄(磁性酸化鉄を含む)及び酸化インジウム等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化金、水酸化マグネシウム等)、金属硫化物(硫化銅、硫化鉛、硫化ニッケル及び硫化白金等)、金属ハロゲン化物(フッ化カルシウム、フッ化スズ及びフッ化カリウム等)、金属炭化物(炭化カルシウム、炭化チタン、炭化鉄及び炭化ナトリウム等)、金属窒化物(窒化アルミニウム、窒化クロム、窒化ゲルマニウム及び窒化コバルト等)、炭酸金属塩(炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、炭酸水素カルシウム、及び炭酸鉄等)、硫酸金属塩(硫酸アルミニウム、硫酸コバルト、硫酸ニッケル及び硫酸バリウム等)及びその他の金属塩(チタン酸塩(チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カリウム等)、ホウ酸塩(ホウ酸アルミニウム、ホウ酸亜鉛等)、燐酸塩(リン酸カルシウム、燐酸マグネシウム等)、アルミン酸塩(アルミン酸イットリウム(YAG)等)及び硝酸塩(硝酸鉄、硝酸鉛等))等が挙げられる。
【0052】
その他の複合物等としては、フェライト、ゼオライト、銀イオン担持ゼオライト、ジルコニア、ミョウバン、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、アルミナ繊維、セメント、ゾノトライト、MOS(宇部興産(株)製)、酸化珪素(シリカ、シリケート、ガラス及びガラス繊維を含む)、窒化珪素、炭化珪素及び硫化珪素等が挙げられる。
【0053】
有機物を前駆体とする炭化物としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、活性炭、竹炭、木炭及びフラーレン等が挙げられる。
【0054】
これらのうち、好ましくはシリカ、炭酸カルシウム、金属及び金属酸化物、及びそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0055】
シリカとしては特に限定はないが、ガラス状シリカ、石英、無定型シリカ、シリカゲル、シリカ粉末、シリカゾルや、シリカ表面をアルミ等で被覆した各種被覆シリカ微粒子、及び樹脂粒子や金属酸化物ゾル等の表面をシリカで被覆したシリカ被覆微粒子、球状シリカ微粒子、棒状シリカ微粒子、球状シリカが連結したネックレス状シリカ微粒子、等が利用できる。また、粒径が前記範囲よりも大きい場合は、粉砕等の工程によって微細化した後に利用することもできる。これらの材料は、日産化学工業(株)製のスノーテックスのような市販品を用いても良いし、ゾルゲル法に代表される各種合成方法に従って調製した物を用いることもできる。
【0056】
金属としては、特に制限されるものではないが、製造コストが安く、他の金属と比較して金属微粒子を比較的製造し易く、また資源的にも比較的豊富に地球上に存在するために安価な材料である、等の観点から、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単独の金属微粒子、またはその合金微粒子のように、Ag、Cu、Niから選択された1種または2種以上を含有していることが好ましい。
【0057】
金属酸化物としては特に限定はないが、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化タンタルなどが用いられる。この中で金属微粒子を比較的製造し易く、安価な材料である等の観点からアルミナ、酸化チタンであることが好ましい。
【0058】
無機物(a2)からなる粒子(A2)の製造方法としては特に限定されることなく、公知の方法で製造できる。例えば(ix)上記無機物を水性媒体中で湿式粉砕する方法、(x)上記無機物を乾式粉砕し、水性媒体中に分散する方法、(xi)ゾルゲル法に代表されるようなアルコキシド化合物による縮合反応を水性媒体中で行う方法、(xii)ハロゲン化金属を水性媒体中で還元・析出させる方法等が挙げられる。
【0059】
上記(i)〜(viii)の方法において、使用する乳化剤または分散剤としては、公知の界面活性剤(D)、水溶性ポリマー(T)等を用いることができる。また、乳化または分散の助剤として溶剤(U)等を併用することができる。
【0060】
水性分散液(G)を構成する成分として水性媒体(F)は貯蔵安定性、塗料の塗工性の観点から、(G)の重量に対して好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは15〜85重量%、特に好ましくは20〜80重量%含有される。界面活性剤(D)は貯蔵安定性、塗膜の耐水性の観点から(G)の重量に対して好ましくは0.01〜20重量%さらに好ましくは0.01〜15重量%、特に好ましくは0.05〜10重量%含有される。粒子(A)は貯蔵安定性、塗膜平滑性の観点から(G)の重量に対して好ましくは0.1〜60重量%、さらに好ましくは0.2〜50重量%、特に好ましくは0.3〜45重量%含有される。水溶性ポリマー(T)は塗膜の耐水性の観点から(G)の重量に対して好ましくは0〜15重量%さらに好ましくは0.2〜10重量%、特に好ましくは0.3〜5重量%含有される。溶剤(U)は貯蔵安定性の観点から(G)の重量に対して0〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜8重量%、特に好ましくは0.2〜5重量%含有される。
【0061】
水性分散液(G)を構成する成分である水性媒体(F)、必要により構成成分となる界面活性剤(D)、水溶性ポリマー(T)及び溶剤(U)は、樹脂粒子(A)製造後、上記範囲内において、後の工程において添加してもよい。
【0062】
界面活性剤(D)としては、アニオン界面活性剤(D−a)、カチオン界面活性剤(D−b)、両性界面活性剤(D−c)、非イオン界面活性剤(D−d)、反応性界面活性剤(D−e)などが挙げられる。界面活性剤(D)は2種以上の界面活性剤を併用したものであってもよい。界面活性剤(D)は、水性分散液(G)に含有させてもよく、又は、後に詳述する樹脂(b)若しくは溶液(c)に含有させてもよい。
【0063】
アニオン界面活性剤(D−a)、としては、カルボン酸またはその塩、硫酸エステル塩、カルボキシメチル化物の塩、スルホン酸塩及びリン酸エステル塩が挙げられる。
【0064】
カチオン界面活性剤(D−b)としては、第4級アンモニウム塩型、アミン塩型などが挙げられる。
【0065】
両性界面活性剤(D−c)としては、カルボン酸塩型両性界面活性剤、硫酸エステル塩型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤、リン酸エステル塩型両性界面活性剤などが挙げられ、カルボン酸塩型両性界面活性剤は、さらにアミノ酸型両性界面活性剤とベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0066】
非イオン界面活性剤(D−d)としては、アルキレンオキシド付加型非イオン界面活性剤および多価アルコ−ル型非イオン界面活性剤などが挙げられる。
【0067】
反応性界面活性剤(D−e)が、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基およびエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有する、特に(D−e)の親水部にそのような基を有する反応性界面活性剤であることが好ましい。反応性の観点から水酸基、ブロックイソシアネート基、アミノ基を有するものがさらに好ましい。反応性官能基を含有する樹脂(a1)及び/又は樹脂(b)との相溶性が低い(D−e)が直接樹脂(a1)及び/又は樹脂(b)と結合するため、塗膜との相溶性が向上し、優れた塗膜強度を示すと共に、硬化された塗膜の耐水性等の塗膜物性に優れる。また、スラリー状組成物保存時には、樹脂の分散安定性が優れる。(D−e)は、特に第2工程直前において、水性分散液(G)中に樹脂(b)を分散させる直前に添加するか、添加しつつ分散させることが好ましい。
【0068】
反応性界面活性剤(D−e)としては、ウレタン樹脂である界面活性剤などが挙げられる。ウレタン樹脂である界面活性剤は、たとえば、1価フェノール又は1価の芳香族アルコールと必要によりビニルモノマーとからなる付加反応物又はそのアルキレンオキサイド付加物、有機ジイソシアネート、ポリオキシエチレン鎖を有するジオール及び/又はジアミンを主要構成要素としてなるウレタン樹脂である。必要に応じて、更に、伸長剤を用いたものであってもよい。
ウレタン樹脂である界面活性剤について、1価フェノール又は1価の芳香族アルコールと必要によりビニルモノマーとからなる付加反応物の部分が疎水部を形成し、ポリオキシエチレン鎖を有するジオール及び/又はジアミンの部分が親水部を形成する。
カルボキシル基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基およびエポキシ基は、(D−e)の疎水部及び/又は親水部に結合しており、好ましくは親水部の側鎖及び/又は末端。さらに好ましくは親水部の末端に化学結合している。
【0069】
反応性界面活性剤(D−e)は、例えば、下記一般式(1)〜(4)で表される化合物の1種又は2種以上からなるのが好ましい。
Q−(−CONH−G−NHCO−J−)m−CONH−G−NHCO−Y (1)
Q−(−CONH−G−NHCO−J−)m−Z (2)
Q−(−CONH−G−NHCO−J−)m−OH (3)
Q−(−CONH−G−NHCO−J−)m−NH2 (4)
式中、Qは、1価フェノール又は1価の芳香族アルコールと必要によりビニルモノマーとからなる付加反応物もしくはそのアルキレンオキサイド付加物の残基を、Gは有機ジイソシアネートの残基を、Jは、ポリオキシエチレン鎖を有するジオール及び/又はジアミンの残基を、Yはブロック化剤の残基を、Zはポリエポキシ化合物の残基を表す。複数のG、複数のJは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。mは好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。
【0070】
水溶性ポリマー(T)としては、セルロース系化合物(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびそれらのケン化物など)、ゼラチン、デンプン、デキストリン、アラビアゴム、キチン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、アクリル酸(塩)含有ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸の水酸化ナトリウム部分中和物、アクリル酸ナトリウム−アクリル酸エステル共重合体)、スチレン−無水マレイン酸共重合体の水酸化ナトリウム(部分)中和物、水溶性ポリウレタン(ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール等とポリイソシアネートの反応生成物等)などが挙げられる。
【0071】
水性分散液(G)に用いる溶剤(U)は、乳化分散の際に必要に応じて水性媒体中に加えるが、後述するように、被乳化分散体中[樹脂(b)を含む油相中]に溶剤(y)又はその一部として加えても良い。溶剤(U)の具体例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶剤;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素系溶剤;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレンなどのハロゲン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系またはエステルエーテル系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶剤、N−メチルピロリドンなどの複素環式化合物系溶剤、ならびにこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
【0072】
水性媒体(F)としては、水、または水混和性溶媒と水との混合溶媒をいう。水混和性溶媒とは、例えばアルコール系溶剤やケトン系溶剤などが挙げられる。具体的には、アルコール系溶剤:メタノール、イソプロパノール、エタノール、n−プロパノールなど、ケトン系溶剤:アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。上記水と水混和性溶媒との混合比率は、好ましくは100/0〜100/20であり、さらに好ましくは100/0〜100/5である。
【0073】
第2工程:樹脂(b)、又は、溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させた溶液(c)に、粒子(A)が分散されてなる水性分散液(G)を加え、混合する。
【0074】
樹脂(b)を水性分散液(G)に分散する方法としては、(1)0〜90℃の範囲において流動性を有する樹脂(b)に(G)を加えて混合する方法、(2)溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させた溶液(c)に(G)を加えて混合する方法がある。これらのなかで粒径コントロール及びハンドリング性の観点から(2)が好ましい。
【0075】
上記(1)の方法:樹脂(b)に(G)を加えて混合する。
樹脂(b)を溶融させる温度としては生産性の観点から通常、0〜90℃、好ましくは5〜80℃である。
【0076】
上記(1)の方法を用いる場合、樹脂(b)は、樹脂(b)に水性分散液(G)を加え混合させる時に流動性を有し、水性媒体(F)中に樹脂(b)の微細粒子が形成可能なものである。(b)としては(a1)と同様のものが使用でき、その具体例としては、用途・目的に応じて適宜好ましいもの選択することができる。
【0077】
上記(1)の方法を用いる場合の(b)のMnは、通常500〜3000、好ましくは600〜2500である。(b)の融点(DSCにて測定、以下融点はDSCでの測定値)は、通常−50℃〜40℃、好ましくは、−40℃〜35℃である。(b)のSP値は、通常7〜18、好ましくは8〜14である。
【0078】
上記(2)の方法:溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させた溶液(c)に水性分散液(G)を加えて混合する。
溶剤(y)としては、具体的には、溶剤(U)と同様のものが例示され、好ましいものは(b)とのSP値差が3以下であるものである。
溶剤(y)は、貯蔵安定性の観点から樹脂(b)を溶解させるが、樹脂(a1)からなる粒子(A)を溶解・膨潤させにくい溶剤が好ましい。
溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させる時の溶剤(y)の重量に対する樹脂(b)の重量は生産性の観点から5〜90重量%、好ましくは10〜85重量%、最も好ましくは20〜80重量%である。
【0079】
上記(2)の方法に用いられる樹脂(b)は、樹脂(a1)と同様に、水性分散体を形成し得る樹脂であればいかなる樹脂であっても使用でき、反応性官能基を有するものであることが好ましく、その具体例についても、(a1)と同様のものが使用できる。(b)は、用途・目的に応じて適宜好ましいもの選択することができる。
【0080】
上記(2)の方法に用いられる樹脂(b)のMnは、通常500〜5万、好ましくは1000〜4万である。(b)の融点(DSCにて測定、以下融点はDSCでの測定値)は、通常0℃〜200℃、好ましくは、35℃〜150℃である。(b)のTgは通常−60℃〜100℃、好ましくは、−50℃〜60℃である。(b)のSP値は、通常7〜18、好ましくは8〜14である。
【0081】
樹脂(b)、又は、溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させた溶液(c)に、粒子(A)の水性媒液(G)を混合させる際の温度としては、通常、0〜90℃、好ましくは5〜85℃である。圧力は通常0〜1Mpa、好ましくは0〜0.8MPaである。
【0082】
水性分散液(G)に対する(b)の重量としては、貯蔵安定性の観点から、好ましくは5〜80重量%、さらに好ましくは10〜70重量%である。水性分散液(G)に対する溶液(c)の重量としては生産性の観点から好ましくは5〜80重量%、さらに好ましくは10〜70重量%である。
【0083】
樹脂(b)又は溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させた溶液(c)に(G)を加える速度としては粒度分布の均一性と生産性の観点から水分散液(G)全量に対して1分間に1〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは3〜30重量%である。
【0084】
樹脂(b)として好ましいものは、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル系樹脂、およびポリエステル樹脂が挙げられる。
【0085】
樹脂(b)又は溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させた溶液(c)に(G)を加える際、攪拌下に加えることが好ましい。攪拌周速としては1〜20m/分が好ましく、より好ましくは2〜15m/分である。攪拌方法としては特に限定はないが、一般的な攪拌翼及び分散装置を用いることができる。また、本発明の他の工程における分散操作も本工程と同様の分散装置を用いることができる。該分散装置は、一般に乳化機、分散機として市販されているものであれば特に限定されず、例えば、ホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー、TKディスパーサー(特殊機化工業社製)等のバッチ式乳化機が挙げられ、この中でTKオートホモミキサー、TKディスパーサーが好ましい。
【0086】
樹脂(a)、樹脂(b)と溶剤(y)の好ましい組み合わせとしては、例えば 樹脂(a1)、無機物(a2)と樹脂(b)及び溶剤(y)の好ましい組み合わせとしては、例えば(1)樹脂(a1)がビニル系樹脂、樹脂(b)がエポキシ樹脂、溶剤(y)が酢酸エチル、(2)樹脂(a1)がビニル樹脂架橋物、樹脂(b)がビニル系樹脂、溶剤(y)がトルエン、(3)樹脂(a1)がポリプロピレン、樹脂(b)がポリウレタン、溶剤(y)がメチルエチルケトン、(4)樹脂(a1)がポリエチレン、樹脂(b)がポリエステル、溶剤(y)がアセトン(5)無機物(a2)がシリカ、樹脂(b)がポリエステル樹脂、溶剤(y)が酢酸エチル、(6)無機物(a2)が炭酸カルシウム、樹脂(b)がポリエステル樹脂、溶剤(y)がメチルエチルケトン、(7)樹脂(a1)がポリエステル、無機物(a2)がカーボンブラック、樹脂(b)がビニル系樹脂、溶剤(y)がTHF、(8)樹脂(a1)がポリウレタン、無機物(a2)が酸化鉄、樹脂(b)がエポキシ樹脂、溶剤(y)がトルエンなどが上げられる。この中で、塗膜物性の観点から(1)、(2)が好ましい。
【0087】
工程3:溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させた場合はさらに溶剤(y)を除去し、粒子(A)より体積平均粒径が大きく樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)が分散してなる水性分散体(X)を得る。
溶剤(y)を除去する方法は特に限定されず、公知の方法が適用でき、例えば以下の〔1〕〜〔3〕及びこれらを組合せた方法等が適用できる。
〔1〕一般的な攪拌脱溶剤槽やフィルムエバポレータ等において、加熱及び/又は減圧により脱溶剤する方法。
〔2〕液面、あるいは液中においてエアーブローして脱溶剤する方法。
〔3〕該(G)と該(b)のスラリーを水で希釈し、(y)を水連続相中に抽出する方法。
〔1〕の方法で、加熱する際の温度は、樹脂(a1)が結晶性であれば融点(Tm)以下、また樹脂(a1)が非晶性であればガラス転移温度(Tg)以下であることが好ましく、通常TmあるいはTgの5℃以下が好ましく、より好ましくは10℃以下、特に好ましくは20℃以下である。減圧する際の減圧度(ゲージ圧)は、−0.03MPa以下が好ましく、より好ましくは−0.05MPa以下である。
〔3〕の方法は、溶剤(y)が水に対する溶解性を有する場合に、好ましい方法である。一般的には、〔1〕の方法が好ましい。
【0088】
溶剤(y)を除去する時間としては、生産性の観点から48時間以内が好ましく、より好ましくは36時間以内、最も好ましくは30時間以内である。
【0089】
溶剤(y)の残存量としては水分散体(G)に対して、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、最も好ましくは5重量%以下である。
【0090】
本発明においては水性媒体(F)を追加または除去することにより固形分調製を行ってもよい。水性媒体(F)を除去する方法としては特に限定されず、上記の方法が適用できる。固形分濃度としては塗料としての塗工性の観点から、通常5〜80重量%が好ましく、より好ましくは8〜75重量%、最も好ましくは10〜70重量%である。
【0091】
本発明においては、樹脂粒子(B)は硬化剤(E)を含有していることが好ましい。硬化剤(E)はどの工程で添加しても良いが、樹脂(b)に溶融混練する、若しくは溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させた溶液に配合するのが好ましい。
【0092】
本発明における硬化剤(E)は樹脂(a1)及び/又は樹脂(b)中の反応性官能基と反応する反応性官能基を有するものが好ましい。
硬化剤(E)としては、カルボキシル基を1分子中に2個以上有するもの(E1)、エポキシ基を1分子中に2個以上有するもの(E2)、アミノ基を1分子中に2個以上有するもの(E3)、水酸基を1分子中に2個以上有するもの(E4)、イソシアネート基を1分子中に2個以上有するもの(E5)、加水分解性シリル基を1分子中に2個以上有するもの(E6)、ブロック化アミノ基を1分子中に2個以上有するもの(E7)、ブロック化イソシアネート基を1分子中に2個以上有するもの(E8)およびこれらの混合物などが挙げられる。具体例としては次のものが挙げられる。
【0093】
(E1):前記ポリエステル樹脂において述べたポリカルボン酸など
(E2):前記エポキシ樹脂など
(E3):前記ポリウレタン樹脂において述べた2価のアミンおよび2価を超える多価アミン
(E7):(E3)のブロック化物
[ブロック化剤としてはケトン(炭素数3〜8、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、酸無水物(炭素数4〜10、例えば無水フタル酸)などが挙げられる。]
(E4):前記多価アルコール、水酸基を両末端に持つポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオールなど
(E5):前記2官能以上のポリイソシアネート、およびその反応物
(E8):(E5)のブロック化物
[ブロック化剤としては、前記のもの、および2級アミン(炭素数4〜20、例えばジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン)、塩基性窒素含有化合物(炭素数4〜20、例えば、N,N−ジエチルヒドロキシアミン、2−ヒドロキシピリジン、ピリジンN−オキシド、2−メルカプトピリジン)、活性メチレン基含有化合物(炭素数5〜15、例えばマロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン)等が挙げられる。
なお、ブロック化物にはイソシアネート基が上記ブロック化剤でブロックされたものの他に、ジイソシアネートが多量化したオリゴマー(ウレトジオン型ブロック化イソシアネート基含有化合物)、例えばHDIまたはTDIのオリゴマー(重合度2〜15)およびこれらのオリゴマーの末端イソシアネート基と前記のブロック化剤などを反応させた構造を有する化合物なども含まれる。]
(E6):炭素数1〜8のアルコキシ基を有するジ−、トリ−およびテトラアルコキシシラン並びにそれらの縮合物。
【0094】
上記硬化剤(E)のうち反応性の観点から好ましいのは(E1)、(E5)、(E6)および(E8)、さらに好ましいのはドデカン二酸、トリメトキシシランおよびε−カプロラクタムブロック化イソホロンジイソシアネートである。
【0095】
樹脂(a1)及び/又は樹脂(b)の反応性官能基/硬化剤(E)の反応性官能基の組み合わせのうち、得られる樹脂強度の観点から好ましいのは、エポキシ基/カルボキシル基、水酸基/ブロック化イソシアネート基、およびこれらの逆の組み合わせ、さらに好ましいのはグリシジル基/カルボキシル基、水酸基/ウレトジオン型ブロック化イソシアネート基、およびこれらの逆の組み合わせである。
【0096】
樹脂(a1)及び/又は樹脂(b)の反応性官能基と硬化剤(E)の反応性官能基の当量比は樹脂の経時安定性の観点から、好ましくは(1/0)〜(1/1.4)、さらに好ましくは(1/0.5)〜(1/1.2)、特に好ましくは(1/0.9)〜(1/1.1)である。
【0097】
樹脂(a1)及び/又は樹脂(b)と硬化剤(E)の反応においては硬化触媒を用いてもよく、該硬化触媒としては、(a1)及び/又は(b)と(E)の各反応性官能基の組み合わせが、例えば、水酸基/(ブロック化)イソシアネート基およびその逆の場合は、ウレタン化反応に通常用いられる触媒〔金属触媒[スズ系(ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエートなど)、鉛系(オレイン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛など)など]、アミン系触媒[トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミンなど]など〕、カルボキシル基/エポキシ基およびその逆の場合は、酸(三フッ化ホウ素など)、塩基(アミン、アルカリ土類金属水酸化物など)、塩(第4級オニウム塩など)、有機金属触媒(塩化第一スズ、テトラブチルジルコネートなど)など、水酸基/アミノ基およびその逆の場合は、有機酸(パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸など)、無機酸(リン酸など)、などが挙げられる。
硬化触媒を使用する場合、その使用量は、塗膜の硬化性の観点から好ましくは、スラリー塗料の全重量に基づいて1重量%以下、さらに好ましくは0.005〜0.8重量%、特に好ましくは0.01〜0.5重量%である。
硬化触媒を使用する場合、硬化触媒は樹脂粒子(A1)、樹脂粒子(B)および水性分散体(X)の何れか1つ、もしくは何れか2つ、もしくは全てに含有せしめ、本発明のスラリー塗料を構成してもよい。
【0098】
本発明の水分散スラリー塗料中における粒子(A)の体積平均粒径DAは、好ましくは0.005μm〜0.5μmであり、貯蔵安定性の観点からより好ましくは0.008μm以上、さらに好ましくは0.01μm以上であり、塗膜平滑性の観点からより好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である。
水分散スラリー塗料中の粒子(A)の体積平均粒径DAは、動的光散乱法による粒度分布測定によって測定することができる。粒度分布測定器としては、例えばDLS−7000(大塚電子社製)が挙げられる。測定試料は例えば、分散液、又は水分散スラリー塗料を高速冷却遠心機GRX−220(TOMY社製)ローターNo.4IIを用いて10000rpmで5分間遠心分離し、上澄み液をイオン交換水で400倍に希釈して測定する。
【0099】
本発明の乳化方法で製造した、樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)は、水性分散液を樹脂(b)又は溶液(c)に、好ましくは撹拌しながら、混合することで、水性媒体中でエマルション粒子を形成し、その体積平均粒径DBは概ね0.5〜5μm程度である。塗膜強度の観点からより好ましくは0.6μm以上、さらに好ましくは0.7μm以上であり、塗膜平滑性の観点からより好ましくは4.5μm以下である。
樹脂粒子(B)の体積平均粒径をフロー式粒子画像解析装置[シスメックス社製:FPIA−2100、試料は水分散スラリー塗料をイオン交換水で400倍に希釈して調製した。]で測定することができる。
ここでの樹脂粒子(B)の体積平均粒径DBは樹脂粒子(B)の態様に関係なく、水分散スラリー塗料を試料として測定される樹脂(b)を主成分とする樹脂粒子の粒径を樹脂粒子(B)の体積平均粒径DBとして扱う。以下同様である。
【0100】
本発明の水分散スラリー塗料の製造方法により製造される水分散スラリー塗料は、粒径比[粒子(A)の体積平均粒径DA]/[樹脂粒子(B)の体積平均粒径DB]の値が0.003〜0.3の範囲であることがこのましい。DA/DBが0.003以上の場合は十分な貯蔵安定性が発現し、DA/DBが0.3以下であれば塗膜の平滑性が良好となる。DA/DBは、より好ましくは0.002〜0.2の範囲であり、さらに好ましくは0.005〜0.1である。DA及びDBは以下の測定方法で測定される。
【0101】
樹脂粒子(B)としては樹脂(b)以外にレベリング剤、着色剤、顔料、酸化防止剤及び/又は造膜助剤など、塗料の分野において通常用いられるその他の添加剤を加えることができる。樹脂粒子(B)の重量に対して樹脂(b)が30重量%以上が好ましく、さらに好ましくは40重量%以上である。これらの添加剤は、第2工程で樹脂(b)又は溶液(c)に加えることができる。
【0102】
レベリング剤としては、オレフィン系重合体(Mw500〜5,000、例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン)、オレフィン系共重合体[Mw500〜20,000、例えばエチレン−アクリル(アクリロニトリルなど)共重合体、エチレン−メタクリル共重合体]、(メタ)アクリル共重合体〔Mw1,000〜20,000、例えば商品名:モダフロー[ソルーシア(株)製]〕、ポリビニルピロリドン(Mw1,000〜20,000)、シリコーン系レベリング剤[Mw1,000〜20,000、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルシロキサン、有機(カルボキシル、エーテル、エポキシ等)変性ポリジメチルシロキサン、フッ素化シリコーン]、低分子化合物(ベンゾインなど)およびこれらの混合物などが挙げられる。
レベリング剤の使用量は、スラリー塗料の全重量に基づいて通常5重量%以下、好ましくは0.3〜3重量%である。
【0103】
着色剤としては、無機顔料、有機顔料、染料などが挙げられる。
無機顔料としては、白色顔料(酸化チタン、リトポン、鉛白、亜鉛華など);コバルト化合物(オーレオリン、コバルトグリーン、セルリアンブルー、コバルトブルー、コバルトバイオレットなど);鉄化合物(酸化鉄、紺青など);クロム化合物(酸化クロム、クロム酸鉛、クロム酸バリウムなど);硫化物(硫化カドミウム、カドミウムイエロー、ウルトラマリンなど)およびこれらの混合物などが挙げられる。
有機顔料としてはアゾレーキ系、モノアゾ系、ジスアゾ系、キレートアゾ系等のアゾ顔料;ベンジイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、チオインジゴ系、ペリレン系、キノフタロン系、アンスラキノン系等の多環式顔料;およびこれらの混合物が挙げられる。
染料としてはアゾ系、アントラキノン系、インジゴイド系、硫化系、トリフェニルメタン系、ピラゾロン系、スチルベン系、ジフェニルメタン系、キサンテン系、アリザリン系、アクリジン系、キノンイミン系、チアゾール系、メチン系、ニトロ系、ニトロソ系、アニリン系およびこれらの混合物などが挙げられる。
着色剤の使用量は種類によって異なるが、スラリー塗料の全重量に基づいて通常30重量%以下、好ましくは5〜25重量%である。
【0104】
酸化防止剤としては、フェノール系〔2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタン[商品名:イルガノックス1010、チバガイギー(株)製]など〕、硫黄系[ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート(DLTDP)、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート(DSTDP)など]、リン系[トリフェニルホスファイト(TPP)、トリイソデシルホスファイト(TDP)など]、アミン系[オクチル化ジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノール、N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミンなど]およびこれらの混合物などが挙げられる。
酸化防止剤の使用量はスラリー塗料の全重量に基づいて通常5重量%以下、好ましくは0.1〜2重量%である。
【0105】
レオロジーコントロール剤としては、たとえば無機系粘度調整剤(ケイ酸ソーダやベントナイトなど)、セルロース系粘度調整剤(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなど、Mwは通常20,000以上)、タンパク質系(カゼイン、カゼインソーダ、カゼインアンモニウムなど)、アクリル系(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウムなど、Mwは通常20,000以上)、およびビニル系(ポリビニルアルコールなど、Mwは通常20,000以上)などが挙げられる。
レオロジーコントロール剤の使用量はスラリー塗料の全重量に基づいて通常10重量%以下、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0106】
造膜助剤としてはたとえば親水性の高沸点のアルコールやエステル系の溶剤等が実用上好ましく、具体的にはエチレングリコール、テキサノール、ジエチルアジペート、エチレングリコールヘキシルエーテル、プロピレングリコールペンチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、テキサノールイソブチルエーテル等が挙げられる。
造膜助剤の使用量はスラリー塗料の全重量に基づいて通常15重量%以下、好ましくは1〜10重量%である。
【0107】
本発明のスラリー塗料は、従来の水性塗料用塗装設備、または溶剤塗料用塗装設備である、スプレー塗装機を使用して塗装することができ、新規の設備を必要としない。
塗膜形成方法は、例えば、被塗装物に対して、該スラリー塗料を、ウェット膜厚10μm以上200μm以下、好ましくは10μm以上50μm以下となるようにスプレー塗布し、これを100℃以上200℃以下、好ましくは120℃以上180℃以下の温度で、5分以上60分以下、好ましくは5分以上30分以下、さらに好ましくは5分以上20分以下の時間加熱することで塗膜を形成することができる。
本発明の塗料を塗布し、焼き付けることによって得られる塗膜の被塗装物における膜厚は10μm以上150μm以下、好ましくは15μm以上50μm以下である。
【0108】
本発明におけるスラリー塗料の塗付量は、特に限定はないが、塗膜の平滑性の観点から0.05〜0.5kg/m2、好ましくは0.08〜0.3kg/m2であることが望ましい。
【0109】
実施例
以下実施例により本発明を更に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。以下、部は重量部を示す。
【0110】
<製造例1>
攪拌機、滴下ロート、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた反応容器に4−α−クミルフェノール53部およびルイス酸触媒(水澤化学工業社製、GalleonEarth)23部を仕込み、攪拌下、系内を窒素ガスで置換し、90℃に昇温した。同温度にてスチレン181部を3時間かけて滴下し、さらに同温度にて5時間反応させた。これを30℃に冷却後、触媒を濾別することにより、スチレン7モルを4−α−クミルフェノール1モルに付加したもの(Mw900)220部を得た。これにエチレンオキサイド(以下EOと略記)を付加したもの(EO含量45%;Mw1800)22.1部、ポリエチレングリコール(Mw6,000)73.7部、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDIと略記)4.1部、メチルエチルケトンオキシム(以下MEKオキシムと略記)0.4部を80℃で3時間反応させ、ポリオキシエチレン鎖の平均Mw5,500、オキシエチレン単位含量87重量%、Mw30,000、疎水部の炭化水素基の炭素数71、HLB16.6のブロックイソシアネート基を含有する反応性界面活性剤(D−1)100部を得た。
【0111】
<製造例2>
製造例1と同様のフリーデルクラフツ反応にて得られた、ヒドロキシル基含有炭化水素[スチレン2モルを4−α−クミルフェノール1モルに付加したものにEOを付加したもの(EO含量20%);Mw800]5.9部、ポリエチレングリコール(Mw4,000)88.2部、HDI3.7部、ビスフェノールAジグリシジルエーテル2.2部を80℃で3時間反応させ、ポリオキシエチレン鎖の平均Mw5,500、オキシエチレン単位含量80重量%、Mw30,000、疎水部の炭化水素基の炭素数31、HLB18.0のエポキシ基を含有する反応性界面活性剤(D−2)100部を得た。
【0112】
<製造例3>
製造例1と同様のフリーデルクラフツ反応にて得られた、ヒドロキシル基含有炭化水素[スチレン7モルをフェノール1モルに付加したものにEOを付加したもの(EO含量45%);Mw1700]16.9部、ポリエチレングリコール(Mw4000)79.7部、HDI3.4部を80℃で3時間反応させ、ポリオキシエチレン鎖の平均Mw3,600、オキシエチレン単位含量87重量%、Mw24,000、疎水部の炭化水素基の炭素数62、HLB17.2の水酸基を含有する反応性界面活性剤(D−3)100部を得た。
【0113】
<製造例4〜6>
耐圧反応容器に、イオン交換水、界面活性剤(D)、過硫酸アンモニウム、を仕込み、反応容器内の空気を窒素で置換した後、反応容器を密閉として攪拌を開始し、80℃まで昇温した。ついで、表1に示す比率(重量比)で混合したモノマー200部を2時間かけて滴下した。さらに、同温度で2時間熟成し、樹脂粒子分散液(AL−4〜6)を得た。表1に組成比(重量比)と体積平均粒径を示す。ここでの樹脂粒子水分散液(AL−4〜6)中の樹脂粒子(A1)の体積平均粒径は必要により、動的光散乱粒径測定法[測定器は大塚電子社製:DLS−7000、試料は樹脂粒子水分散液をイオン交換水で400倍に希釈して調製した。]で測定することが出来る。
【0114】
【表1】

【0115】
<製造例7>
イオン交換水790部にドデシル硫酸ナトリウムを10部加え、均一化したのち、アエロジル50[日本アエロジル社製]を200部加え均一化した。この分散液をダイノミル[シンマルエンタープライゼス社製]で12時間分散することにより無機粒子水分散液(AL−7)を得た。無機粒子水分散液(AL−7)の体積平均粒径は必要により、動的光散乱粒径測定法[測定器は大塚電子社製:DLS−7000、試料は樹脂粒子水分散液をイオン交換水で400倍に希釈して調製した。]で測定することが出来、無機粒子水分散液(AL−7)の体積平均粒径は必要により、動的光散乱粒径測定法[測定器は大塚電子社製:DLS−7000、試料は樹脂粒子水分散液をイオン交換水で400倍に希釈して調製した。]で測定することが出来、0.04μmであった。
【0116】
<実施例1〜4、比較例1、2>
表2に示す配合比に従い、イオン交換水、製造例4〜7で製造した粒子(A)分散液、製造例1〜3で製造した界面活性剤(D)を配合し、良く撹拌し水性分散液(G)を得た。樹脂(b)、硬化剤(E)、実施例2以外には酢酸エチルを加え、良く撹拌し溶液(c)を得た。溶液(c)をTKディスパーサー[特殊機化工業(株)製]で、温度25℃で攪拌を行い、この中に温度25℃の水性分散液(G)を50部/分の速度で全量滴下した。混合溶液を加えた後、得られた混合溶液をTKホモミキサーを用いて、実施例1、実施例3、比較例1では2000rpm、実施例2、実施例4では3500rpm、比較例2では1400rpmで撹拌した。その後、耐圧反応容器に移し、40℃まで昇温しながら減圧で脱溶剤した。得られた樹脂粒子分散液にレオロジー調整剤を加えよく攪拌し、中和剤(ジメチルアミノエタノール)を加え、均一化することにより、樹脂粒子(A1)及び樹脂粒子(B)を含有する水分散スラリー塗料(IL−1〜4)(実施例1〜4)、及び(HL−1、2)(比較例1、2)を得た。
得られた水分散スラリー塗料(IL−1)〜(IL−4)、(HL−1)〜(HL−2)の固形分濃度は約35%であった。
樹脂(b)としてはデスモフェンA575X(水酸基含有アクリル系ポリマー、25℃で液状)[住友バイエルウレタン株式会社製]、アルフォンUH−2900(水酸基含有アクリル系ポリマー)[東亞合成株式会社製]、アルフォンUG−4010(エポキシ基含有アクリル系ポリマー)[東亞合成株式会社製]、硬化剤としてはデュラネートTPA−B80E(硬化剤:HDIイソシアヌレート型ブロック化物)[旭化成工業株式会社製]、アルフォンUC−3910(カルボン酸含有アクリル系ポリマー)[東亞合成株式会社製]、硬化触媒としてはジブチル錫ラウレート、レオロジー調整剤としてはボンコート3750−E(カルボキシル基含有アクリルポリマーエマルション)[大日本インキ社製]、中和剤としてN,N−ジメチルアミノエタノール[和光純薬社製]を使用した。表2中の数字は単位を明示したもの以外、重量部を表す。
【0117】
【表2】

【0118】
<水分散スラリー塗料による塗装板の作製>
リン酸亜鉛処理を施した厚さ0.8mmの冷延鋼板にエポキシ樹脂系カチオン電着塗料を塗装し(20μm)、170℃で30分加熱硬化させた後、自動車用黒色中塗り塗料をエアースプレー塗装し(30μm)、140℃で30分加熱硬化して試験板を得た。実施例1〜4及び、比較例1〜2の水分散スラリー塗料それぞれを市販のエアスプレーガンを用いて塗布時の膜厚が40〜60μmになるように上記の試験板に塗装し、190℃で20分間焼き付けを行って塗装板を得た。
【0119】
上記水分散スラリー塗料及び塗装板について後述の評価方法(1)、(2)及び(3)に従って性能評価を行った。その結果を表3に示す。
【0120】
【表3】

【0121】
[評価方法]
(1)体積平均粒径比(水分散スラリー塗料の評価)
水分散スラリー塗料(IL−1〜IL−4)及び(HL−1〜HL−2)中の樹脂粒子(A)の体積平均粒径を動的光散乱粒径測定法[測定器は大塚電子社製:DLS−7000、試料は水分散スラリー塗料を高速冷却遠心機GRX−220(TOMY社製)ローターNo.4IIを用いて10000rpmで5分間遠心分離し、上澄みをイオン交換水で400倍に希釈して調製した。]で測定し、水分散スラリー塗料(IL−1〜IL−4)及び(HL−1〜HL−2)中の樹脂粒子(B)の体積平均粒径をフロー式粒子画像解析装置[シスメックス社製:FPIA−2100、試料は水分散スラリー塗料をイオン交換水で400倍に希釈して調製した。]で測定することにより、[樹脂粒子(A)の体積平均粒径(表中では(A)値という。)/水分散スラリー塗料中の樹脂粒子(B)の体積平均粒径(表中では(B)値という。)]を算出した。
【0122】
(2)貯蔵安定性(水分散スラリー塗料の評価)
水分散スラリー塗料の調製後、室温で1ヶ月保管した時点で、粒ゲージ[TP技研社製、双溝グラインドメーター(0〜100μm]を用いて凝集粒子(≧10μm)の最大径を求め、下記の基準にて評価した。
○ 凝集粒子(≧10μm)が全くない。
× 凝集粒子(≧10μm)が1つ以上認められる。
【0123】
(3)表面平滑性(塗膜の評価)
塗膜をWAVE SCAN PLUS[BYK Gardner社製]で測定し、中心線平均粗さLwを表面平滑性の指標とした。Lwは小さいほど塗膜の平滑性が良好であることを示す。
○ 表面平滑性が良好である。
× 表面平滑性が不良である。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の水分散スラリー塗料の製造方法により製造される水分散スラリー塗料は、車両〔自動車(ボディ、バンパー、ワイパー、ホイール、サンルーフ、ドアー把手、ルーフラック、クレーン外装、フォークリフト外装など)、二輪車(ブレーキレバー、バスケットなど)、鉄道(新幹線排水器具、レール継手、ボルト、地下鉄スプリングワッシャなど)など〕;土木建築資材〔エクステリア(フェンス、門扉、バルコニー、手摺、物置、テラス、カーテンウォールなど)、構造物(プレハブ鉄骨、シャッター、内外装パネル、ドアなど)、その他(雨樋受金具、瓦など)など〕;道路資材〔防護柵(ガードレール、ガードパイプ、ガードフェンス、橋梁手摺、ネットフェンスなど)、道路標識、ポール(標識用、カーブミラー用、信号用、広告用など)、トンネル内装板など〕;電気・通信機器〔家電用品[電子レンジ、ポット、エアコン(室内機部品および室外機外装など)、除湿器、冷蔵庫、洗濯機、風呂釜、乾燥機、冷凍ショーケース、レンジフード、システムキッチンなど]、重電機器(分電盤、配電盤、モーター、発電器、電装部品など)、その他(電球、アンテナ、水銀灯、電話機、照明器具、自動販売機外装など)など〕;水道・ガス資材(鋼管、ガス湯沸器、太陽温水器、パネルタンクなど);金属製品〔容器類(ボンベ、ドラム缶、コンテナ、醸造タンクなど)、スチール家具(机、机天板、ロッカーなど)、その他(インテリア部品など)など〕;計測器(電力計、流量計、ガスメーターなど);保安器具(消火器、消火設備など);農業資材(トラクター、農耕具、育苗器など);船舶(スクリュー、レーダー、船外機など);スポーツ・レジャー用品(スキー板、ヘルメットなど)、などの塗装用途に幅広く用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(b)、又は、溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させた溶液(c)に、粒子(A)が水性媒体(F)に分散されてなる水性分散液(G)を加え混合させることにより、樹脂(b)又は溶液(c)の粒子を形成させ、溶剤(y)に樹脂(b)を溶解させた場合はさらに溶剤(y)を除去し、粒子(A)の体積平均粒径より大きい体積平均粒径を有し樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)が水性媒体(F)中に分散してなる水性分散体(X)を得ることを特徴とする水分散スラリー塗料の製造方法。
【請求項2】
樹脂粒子(B)が、硬化剤(E)を含有している請求項1に記載の水分散スラリー塗料の製造方法。
【請求項3】
水性分散液(G)、樹脂(b)、及び溶液(c)からなる群より選ばれる少なくとも1種が、界面活性剤(D)を含有している請求項1又は2に記載の水分散スラリー塗料の製造方法。
【請求項4】
粒子(A)が樹脂(a1)からなる樹脂粒子(A1)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の水分散スラリー塗料の製造方法。
【請求項5】
樹脂(a1)及び樹脂(b)の少なくとも一方の樹脂が、反応性官能基を有する樹脂である請求項4に記載の水分散スラリー塗料の製造方法。
【請求項6】
樹脂(a1)が架橋樹脂である請求項4又は5に記載の水分散スラリー塗料の製造方法。
【請求項7】
[粒子(A)の体積平均粒径]/[樹脂粒子(B)の体積平均粒径]の値が0.003〜0.3である請求項1〜6のいずれか1項に記載の水分散スラリー塗料の製造方法。

【公開番号】特開2007−246847(P2007−246847A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75520(P2006−75520)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】