説明

水分散体

【課題】 低粘度であっても低極性フィルム基材上にはじかれずに塗工できる水分散体を提供する。
【解決手段】 本発明の水分散体は、エマルション系重合体とホウ素系化合物とヒドロキシル基含有アミン系化合物とを含有する。エマルション系重合体としては、アクリルエマルション系重合体が好ましい。ホウ素系化合物として、ホウ酸等を使用できる。ヒドロキシル基含有アミン系化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン等のアルカノールアミンなどを使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散体、より詳しくは、エマルション系重合体とホウ素系化合物とヒドロキシル基含有アミン系化合物とを含有する水分散体、該水分散体の製造方法、該水分散体を含むエマルション系粘着剤組成物、及び該エマルション系粘着剤組成物を乾燥して得られる粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エマルション系重合体を含む水分散液を、例えば表面がシリコーン処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム等の低極性フィルム基材上に塗工する場合には、水分散液の粘度が低いと低極性フィルム基材表面ではじかれて塗工することが困難となることが多い。このような問題を解決するため、水分散液に増粘剤を加えて粘度を高くすることが知られている(例えば、特許文献1、2等)。増粘剤の代表的なものとして水系ポリマーがある。しかしながら、このような水系ポリマーからなる増粘剤を前記水分散液に添加すると、基材上に形成される塗膜の耐水性が低下するという新たな問題が生じる。また、粘度の高い水分散液をフィルム基材上に塗工する場合は、一般にレベリング性が低下し、塗工筋が入りやすいという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−181590号公報
【特許文献2】特開2004−269699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、低粘度であっても低極性フィルム基材上にはじかれずに塗工できる水分散体、及び該水分散体を含むエマルション系粘着剤組成物、該エマルション系粘着剤組成物を乾燥して得られる粘着剤組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記のような優れた特性を有する水分散体を効率よく製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、エマルション系重合体に、ホウ素系化合物とヒドロキシル基含有アミン系化合物とを配合すると、低粘度でありながら低極性フィルム基材にはじかれることなく塗工できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、エマルション系重合体とホウ素系化合物とヒドロキシル基含有アミン系化合物とを含有する水分散体を提供する。
【0007】
前記エマルション系重合体はアクリルエマルション系重合体であってもよい。
【0008】
本発明は、また、前記水分散体を少なくとも含むエマルション系粘着剤組成物を提供する。
【0009】
本発明は、さらに、前記エマルション系粘着剤組成物を乾燥して得られる粘着剤組成物を提供する。
【0010】
本発明は、さらに、エマルション系重合体とホウ素系化合物とヒドロキシル基含有アミン系化合物とを混合することを特徴とする水分散体の製造方法を提供する。
【0011】
この製造方法において、ホウ素系化合物を含む水溶液とエマルション系重合体とを混合する工程を少なくとも具備していてもよい。また、ホウ素系化合物とヒドロキシル基含有アミン系化合物とを含む水溶液と、エマルション系重合体とを混合する工程を少なくとも具備していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水分散体によれば、エマルション系重合体にホウ素系化合物とヒドロキシル基含有アミン系化合物とが配合されているため、低粘度でありながら、表面がシリコーン処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(シリコーン処理PETフィルム)等の低極性基材上にはじかれることなく塗工できる。また、粘度を低くできるため、レベリング性が良好であり、塗工筋が入りにくい。さらに、水系ポリマー等の増粘剤を必要としないので、耐水性の高い塗膜(粘着剤層等)を得ることができる。また、外観の経時安定性に優れ、経時で白化するという問題が生じない。さらに、該水分散体から透明フィルムを作製することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[エマルション系重合体]
エマルション系重合体としては、ポリマーが水に分散した形態のものであれば特に限定されない。該ポリマーとしては、必要に応じて界面活性剤を用いることにより水に分散可能なポリマーであれば特に制限されず、例えば、アクリル系重合体、ゴム系重合体(天然ゴム、合成ゴム)などが挙げられる。該ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。エマルション系重合体としては、有用性や、特に高い効果が得られる点等から、アクリル系重合体が水に分散しているアクリルエマルション系重合体が好ましい。
【0014】
前記アクリル系重合体としては、モノマー主成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられていることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキル(直鎖状又は分岐鎖状のアルキル)エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、目的とする特性(粘着性など)に応じて適宜選択することができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
アクリル系重合体としては、モノマー主成分としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、必要に応じて、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマー(共重合性モノマー)がモノマー成分として用いられていてもよい。例えば、エマルション粒子の安定化、形成される塗膜の支持体(基材)への密着性の向上、また被着体への初期接着性の向上(粘着剤のベースポリマーとして用いる場合)などを目的として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、共重合性モノマーを併用することができる。この共重合性モノマーの割合は、特に制限されない。
【0016】
共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸等の酸無水物基含有モノマー;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン等のスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等の窒素原子含有系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどのアルコキシ基含有モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;塩化ビニルなどのハロゲン原子含有モノマーの他、N−ビニルピロリドン、N−(1−メチルビニル)ピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン等のビニル基含有複素環化合物や、N−ビニルカルボン酸アミド類などが挙げられる。
【0017】
また、共重合性モノマーとして、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクルロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルや、フッ素(メタ)アクリレートなどの複素環やハロゲン原子を含有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーなども用いることができる。
【0018】
さらにまた、共重合性モノマーとして、シリコーン系モノマーも用いることができる。シリコーン系モノマーには、シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーや、シリコーン系ビニルモノマーなどが含まれる。シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリブトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル−トリアルコキシシラン;(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル−アルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(メタ)アクリロイルオキシアルキル−ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0019】
また、シリコーン系ビニルモノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン等のビニルトリアルコキシシランの他、これらに対応するビニルアルキルジアルコキシシランや、ビニルジアルキルアルコキシシラン;ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリメトキシシラン、β−ビニルエチルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリブトキシシラン等のビニルアルキルトリアルコキシシランの他、これらに対応する(ビニルアルキル)アルキルジアルコキシシランや、(ビニルアルキル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0020】
さらに、共重合性モノマーとしては、基材上に形成される塗膜(粘着剤層等)のゲル分率や水分散体の粘度の調整等のために、多官能性モノマーを用いることができる。多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(モノ又はポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(モノ又はポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノ又はポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの他、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。また、多官能性モノマーとして、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなども用いることができる。
【0021】
なお、前記アクリル系重合体において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、モノマー成分の主成分として用いられているので、モノマー成分全量に対して50重量%以上の割合であり、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合の上限は、特に制限されず、例えば、モノマー成分全量に対して100重量%(好ましくは99重量%、さらに好ましくは98重量%)であってもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合がモノマー成分全量に対して50重量%未満であると、例えば粘着剤として用いる場合、良好な剥離力および凝集力を発揮する粘着剤が得られない場合がある。
【0022】
一方、共重合性モノマーとしては、モノマー成分全量に対し50重量%未満(好ましくは40重量%未満)の範囲で、各モノマー成分の種類に応じて、その使用量を適宜選択できる。
【0023】
なお、本発明では、アクリル系重合体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー主成分としていれば、単量体の組成やその使用量又は配合割合を適宜選択することができるが、粘着剤として用いる場合には、室温での良好な粘着性を発現させるために、得られるアクリル系重合体(アクリル系ポリマー)のガラス転移点が通常−20℃以下となるように、組成及びその配合割合を適宜決めるのが望ましい。
【0024】
アクリルエマルション系重合体としては、アクリル系重合体を重合して調製する際に、必要に応じて乳化剤を用いることによりエマルション化して調製されたものでもよく、各種重合方法により調製されたアクリル系重合体を、必要に応じて乳化剤を用いることによりエマルション化して調製されたものであってもよい。従って、アクリル系重合体は、前記モノマー成分[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、必要に応じて用いられる共重合性モノマーなど]を用いて、公知乃至慣用の重合方法を利用して調製することができる。このような各種の重合方法では、例えば、一般的な一括仕込み方法(一括重合方法)、モノマーエマルション滴下方法などを利用することができる。モノマーエマルションなどを滴下する場合は、連続的に滴下してもよく、分割して滴下してもよい。なお、重合温度は、重合開始剤の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば、5〜100℃の範囲から選択することができる。
【0025】
アクリル系重合体の調製方法としては、特に、エマルション重合方法(乳化重合方法)が好適である。前記エマルション重合方法としては、公知乃至慣用のエマルション重合方法を採用することができる。
【0026】
乳化剤としては、特に制限されず、公知乃至慣用の乳化剤を用いることができる。具体的には、乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などが挙げられる。また、これら(ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などの乳化剤)にプロペニル基やアリルエーテル基等のラジカル重合性官能基(ラジカル反応性基)が導入された形態を有する(又は該形態に相当する)ラジカル重合性の乳化剤を用いることもできる。乳化剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
乳化剤の使用量は、例えば、全モノマー成分100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.4〜3重量部の範囲で用いることができる。乳化剤の使用量を前記範囲とすることにより、耐水性、接着特性の他、重合安定性や機械的安定性等を良好にすることができる。
【0028】
なお、乳化剤は、前述のように、アクリル系重合体をエマルション重合する際や、他の各種重合方法により予め調製されたアクリル系重合体を水に分させてエマルション化する際に用いることができ、また、一部をエマルション重合の際に用い、残部を重合後に添加して用いることもできる。
【0029】
アクリル系重合体を調製する際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、特に制限されず、公知乃至慣用の重合開始剤(例えば、アゾ系開始剤、過硫酸塩系開始剤、過硫酸物系開始剤、レドックス系開始剤など)を用いることができる。具体的には、重合開始剤としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなどのアゾ系開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤;過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせ等の過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。なお、重合開始剤は、水溶性の開始剤であってもよく、油溶性の開始剤であってもよい。重合開始剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
重合開始剤の使用量は、その種類やモノマー成分の種類などに応じて適宜選択できるが、例えば、全モノマー成分100重量部に対して、0.02〜0.5重量部、好ましくは0.08〜0.3重量部の範囲で用いることができる。重合開始剤の使用量が、全モノマー成分100重量部に対して0.02重量部未満であると、重合開始剤としての効果が低下し、一方、0.5重量部を超えると、アクリル系重合体の分子量が低下し、粘着特性が低下する。
【0031】
また、重合には連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤を用いることによりアクリル系重合体の分子量を調整することができる。連鎖移動剤としては、公知乃至慣用の連鎖移動剤、例えば、1−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどが例示できる。連鎖移動剤は、その目的や用途などに応じて適宜選択して用いることができ、また、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の使用量は、通常、全モノマー成分100重量部に対して0.001〜0.5重量部程度である。
【0032】
前記ゴム系重合体としては、天然ゴム、合成ゴムを用いることができる。ポリマーがゴム系重合体であるエマルション系重合体も、従来公知の方法により調製することができる。
【0033】
エマルション系重合体におけるポリマーのエマルション粒子としては、機械的安定性や塗布性などが良好であれば、その平均粒子径は特に制限されない。前記ポリマーのエマルション粒子の平均粒子径としては、例えば、0.1〜3μm、好ましくは0.2〜1μm程度であることが望ましい。なお、ポリマーのエマルション粒子の平均粒子径が、0.1μmより小さい場合は、水分散体の粘度が上昇しやすくなり、一方、3μmより大きい場合は、粒子が融着しやすくなるため安定性が低下する場合がある。
【0034】
エマルション系重合体には、pHを調整するための塩基(アンモニア水など)や酸、pH緩衝剤等が含まれていてもよい。
【0035】
本発明の水分散体におけるエマルション系重合体の含有量(ポリマー換算)は、例えば、5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%、さらに好ましくは15〜40重量%である。この含有量が少なすぎると、塗工後の乾燥時間が長くなり、生産性が低下しやすくなる。また、この含有量が多すぎると、塗工液の粘度が高くなり、塗工作業性が低下しやすくなる。
【0036】
[ホウ素系化合物]
ホウ素系化合物としては、ホウ素原子を含む化合物であれば特に限定されず、広範なホウ素原子含有化合物を使用できる。その代表的な例として、例えば、酸化ホウ素、ホウ酸(オルトホウ酸)、メタホウ酸、四ホウ酸、ホウ砂(無水物、10水物、5水物等)などが挙げられる。ホウ素系化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。上記ホウ素系化合物の中でも、取扱性、入手容易性等の点で、ホウ酸が好ましい。
【0037】
本発明の水分散体におけるホウ素系化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、前記エマルション系重合体100重量部(ポリマー換算)に対して、0.2〜100重量部、好ましくは1〜70重量部、さらに好ましくは5〜50重量部である。ホウ素系化合物の含有量が少なすぎると、本発明の効果が小さくなり、逆に多すぎると、塗膜(粘着剤層等)を形成した際の塗膜の透明性が低下しやすくなる。
【0038】
[ヒドロキシル基含有アミン系化合物]
ヒドロキシル基含有アミン系化合物としては、分子内に1又は2以上のヒドロキシル基を有するアミン化合物であれば特に限定されず、広範な化合物を使用できる。ヒドロキシル基はアルコール性のヒドロキシル基、フェノール性のヒドロキシル基の何れであってもよいが、アルコール性のヒドロキシル基が特に好ましい。また、ヒドロキシル基含有アミン系化合物は、アミンの分類としては、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンの何れであってもよく、また、モノアミン、ジアミン、ポリアミン(トリアミン等)の何れであってもよい。ヒドロキシル基含有アミン系化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0039】
ヒドロキシル基含有アミン系化合物の代表的な例として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン等のアルカノールアミン(アミノ基の水素原子がアルキル基等の置換基で置換されていてもよいモノアルカノールアミン、アミノ基の水素原子がアルキル基等の置換基で置換されていてもよいジアルカノールアミン、トリアルカノールアミン)などのヒドロキシル基含有炭化水素系アミン化合物が挙げられる。
【0040】
本発明の水分散体におけるヒドロキシル基含有アミン系化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、前記エマルション系重合体100重量部(ポリマー換算)に対して、0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。ヒドロキシル基含有アミン系化合物の含有量が少なすぎると、本発明の効果が小さくなる。また、ヒドロキシル基含有アミン系化合物はホウ素系化合物の溶解性を高める作用があるが、ヒドロキシル基含有アミン系化合物の量が少ないと、その作用も小さくなる。ヒドロキシル基含有アミン系化合物の含有量が多すぎると、フィルム基材上に塗膜(粘着剤層等)を形成した場合、フィルム基材の耐水性が低下しやすくなる。
【0041】
また、ヒドロキシル基含有アミン系化合物の使用量としては、前記ホウ素系化合物100重量部に対して、例えば、1〜100重量部、好ましくは3〜50重量部、さらに好ましくは5〜25重量部である。
【0042】
[他の成分]
本発明の水分散体は、エマルション系重合体、ホウ素系化合物、ヒドロキシル基含有アミン系化合物及び前記した成分に加え、用途等に応じて他の成分を含んでいてもよい。そのような成分として、例えば、増粘剤、粘着付与剤、架橋剤、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、着色剤(顔料や染料など)、老化防止剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0043】
増粘剤としては、公知乃至慣用の増粘剤を用いることができる。増粘剤としては、例えば、アクリル系増粘剤、ウレタン系増粘剤、ポリエーテル系増粘剤などが挙げられる。なお、本発明は、低粘度であっても低極性フィルムにはじかれることなく塗工できるので、増粘剤を特に必要としない。
【0044】
粘着付与剤としては、公知乃至慣用の粘着付与剤を用いることができる。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂(脂肪族炭化水素系石油樹脂、芳香族炭化水素系石油樹脂、脂環式炭化水素系石油樹脂など)、フェノール系樹脂、ケトン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂の他、エラストマー類などが挙げられる。
【0045】
本発明の水分散体は、上記のように、エマルション系重合体とともに、ホウ素系化合物とヒドロキシル基含有アミン系化合物とを含んでいるため、低粘度であっても、シリコーン処理PETフィルム等の低極性基材上にはじかれることなく塗工できる。また、粘度を低くできるので、レベリング性が良好であり、塗工筋が入りにくいという利点も得られる。さらに、水溶性ポリマー等の増粘剤を添加する必要がないので、耐水性の高い塗膜(粘着剤層等)を得ることができる。しかも、外観の経時安定性に優れ、経時で白化するという問題が生じにくい。また、本発明の水分散体から、透明フィルムを作製することもできる。
【0046】
本発明の水分散体の粘度としては、広い範囲で調整でき、例えば、0.001〜20Pa・s、好ましくは0.005〜5Pa・s、さらに好ましくは0.01〜1Pa・s、特に好ましくは0.02〜0.5Pa・sである。
【0047】
本発明の水分散体は、上記のような特性を有するため、そのままで、又は必要に応じて適宜な成分を加えることにより、エマルション系粘着剤組成物として利用できる。このエマルション系粘着剤組成物を基材又は剥離ライナー上に塗布し、乾燥、固化することにより粘着剤組成物(粘着剤層)が得られる。そして、基材上に前記粘着剤組成物を形成したものは基材付き粘着シートとして使用できる。また、剥離ライナー上に前記粘着剤組成物を形成したものは、基材レスの粘着シートとして使用できるとともに、該粘着剤組成物を適宜な基材上に転写することにより基材付き粘着シートとすることができる。
【0048】
本発明の水分散体によれば、低粘度であっても低極性基材表面上に塗工可能となるのは、ホウ素系化合物とヒドロキシル基含有アミン系化合物とが特殊なコンプレックス体を形成し、このコンプレックス体がレベリング剤として作用するためであると推測される。ホウ素系化合物とヒドロキシル基含有アミン系化合物のうち、ホウ素系化合物のみを用いた場合には所望の効果が得られず、また、ヒドロキシル基含有アミン系化合物のみを用いた場合にはアルカリ増粘して、やはり所望の効果が得られない。
【0049】
[水分散体の製造]
上記本発明の水分散体は、エマルション系重合体とホウ素系化合物とヒドロキシル基含有アミン系化合物とを混合することにより製造できる。
【0050】
この製造方法において、エマルション系重合体、ホウ素系化合物、及びヒドロキシル基含有アミン系化合物は、どのような順序で混合してもよい。しかしながら、ホウ素系化合物は、そのまま用いると溶解しにくいため、予め、ホウ素系化合物を含む水溶液を調製しておき、これとエマルション系重合体とを混合する工程を設けるのが好ましい。この場合、ヒドロキシル基含有アミン系化合物は、ホウ素系化合物を含む水溶液と混合する前のエマルション系重合体に添加しておいてもよく、また、ホウ素系化合物を含む水溶液とエマルション系重合体とを混合した後、この混合液に添加して混合してもよい。
【0051】
前記ホウ素系化合物を含む水溶液中のホウ素系化合物の濃度は、ホウ素系化合物の種類によっても異なるが、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%である。なお、ホウ素系化合物がホウ酸の場合は、前記水溶液中のホウ酸の濃度は、例えば0.1〜4.9重量%である。
【0052】
また、上記製造法において、予め、ホウ素系化合物とヒドロキシル基含有アミン系化合物とを含む水溶液を調製しておき、これとエマルション系重合体とを混合する工程を設けるのも好ましい。この場合、ホウ素系化合物とヒドロキシル基含有アミン系化合物とを含む水溶液中のホウ素系化合物の濃度は、1〜60重量%、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%である。ホウ素系化合物をヒドロキシル基含有アミン系化合物と共に水に溶解させる場合には、ホウ素系化合物の溶解性(溶解度、溶解速度)が著しく向上する。
【0053】
本発明の製造方法において、各成分の混合方法、混合手段は特に限定されず、公知乃至慣用の混合方法、混合手段を用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0055】
調製例1
容器に、水90重量部、及び、アクリル酸ブチル95重量部、アクリル酸5重量部の原料モノマー、並びに、乳化剤(商品名「HS−10」、第一工業製薬社製)3重量部を入れ、ホモミキサーにより撹拌混合し、モノマーエマルションを調製した。
次いで、冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌機を備えた反応容器に、水50重量部、重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.01重量部、及び、上記で調製したモノマーエマルションのうち10重量%に当たる量を添加し、撹拌しながら、65℃で1時間乳化重合した。その後、さらに重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.05重量部を添加し、次いで、撹拌しながら、残りのモノマーエマルションのすべて(90重量%に当たる量)を3時間かけて添加し、その後、75℃で3時間反応させた。次いで、これを30℃に冷却して、濃度10重量%のアンモニア水、及び水を加えて、pH8、固形分35重量%のアクリルエマルション系重合体を得た。
【0056】
実施例1
ホウ酸30重量部に水66重量部を加えた後、モノエタノールアミン4重量部を加え、室温で撹拌して、ホウ酸−モノエタノールアミン水溶液を作製した。
調製例1で得られたアクリルエマルション系重合体100重量部(固形分換算)に、上記のホウ酸−モノエタノールアミン水溶液100重量部を加え、撹拌混合して、塗工液(水分散体)を調製した。
この塗工液(水分散液)を、シリコーン処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)(商品名「MRF38」、三菱樹脂社製、厚さ38μm)のシリコーン処理された面上に、テスター産業社製のアプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布し、その後、熱風循環式オーブンで120℃で2分間乾燥させ、粘着剤組成物(粘着剤層)を得た。
【0057】
比較例1
調製例1で得られたアクリルエマルション系重合体100重量部(固形分換算)に、ホウ酸30重量部を加え、撹拌混合して、塗工液(水分散体)を調製した。
この塗工液を用いる以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物(粘着剤層)を得た。
【0058】
比較例2
調製例1で得られたアクリルエマルション系重合体をそのまま塗工液とした。
この塗工液を用いる以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物(粘着剤層)を得た。
【0059】
比較例3
調製例1で得られたアクリルエマルション系重合体100重量部(固形分換算)に、増粘剤(カルボン酸系共重合体増粘剤、商品名「B−500」、東亞合成社製)1重量部(固形分換算)を加え、撹拌混合して、塗工液を調製した。
この塗工液を用いる以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物(粘着剤層)を得た。
【0060】
比較例4
調製例1で得られたアクリルエマルション系重合体100重量部(固形分換算)に、モノエタノールアミン4重量部、水66重量部を加え、撹拌混合して、塗工液を調製した。
この塗工液を用いる以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物(粘着剤層)を得た。
【0061】
評価
実施例及び比較例で得られた塗工液(水分散液)、粘着剤組成物(粘着剤層)について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。なお、表中の数値(粘度を除く)は重量部である。
【0062】
<粘度>
粘度計(商品名「レオストレス1」、ハーケ社製)を用いて、各塗工液の30℃における粘度(剪断速度:1sec-1)を測定した。なお、比較例1では、塗工液中に凝集物が存在していたため、粘度測定は行わなかった。
【0063】
<塗工性>
塗工液をPETフィルム上に塗布した際のハジキの程度を目視観察し、下記の基準で評価した。
○:ハジキ無し
△:所々にハジキが見られる(全体の1割程度)
×:全体的にはじき、塗工面をなさない
【0064】
<塗工面の状態>
PETフィルム上に形成された粘着剤組成物(粘着剤層)の表面の状態(様子)を目視観察し、下記の基準で評価した。なお、比較例1では全面に凹凸及びハジキがみられ、比較例2では全面にハジキがみられ、比較例3ではわずかにスジがみられた。
○:スジ、凹凸、ハジキがみられない。
△:わずかにスジ、凹凸、ハジキがみられる
×:全面にスジ、凹凸、ハジキがみられる
【0065】
<耐水性>
PETフィルム上に形成された粘着剤組成物(粘着剤層)を、PETフィルムごと水中に1分間浸漬した後の該粘着剤組成物(粘着剤層)の表面の変色の度合いを目視観察し、以下の基準で評価した。
○:変色は見られなかった
△:わずかに白濁が見られた
×:著しく白濁していた
【0066】
<外観の安定性>
PETフィルム上に形成された粘着剤組成物(粘着剤層)を室温で2週間放置した場合の外観の変化の様子を目視観察し、以下の基準で評価した。また、試験前後の粘着剤組成物(粘着剤層)のヘイズをヘーズメーター(村上色彩技術研究所製、HM−150型)にて測定し、ヘイズの変化(増加率)を求めた。
○:変化無し(ヘイズの変化は5%以下である)
△:わずかに白濁した(ヘイズの変化は5〜10%である)
×:著しく白濁した(ヘイズの変化は10%を超える)
【0067】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルション系重合体とホウ素系化合物とヒドロキシル基含有アミン系化合物とを含有する水分散体。
【請求項2】
エマルション系重合体がアクリルエマルション系重合体である請求項1記載の水分散体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水分散体を少なくとも含むエマルション系粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項3記載のエマルション系粘着剤組成物を乾燥して得られる粘着剤組成物。
【請求項5】
エマルション系重合体とホウ素系化合物とヒドロキシル基含有アミン系化合物とを混合することを特徴とする水分散体の製造方法。
【請求項6】
ホウ素系化合物を含む水溶液とエマルション系重合体とを混合する工程を少なくとも具備する請求項5記載の水分散体の製造方法。
【請求項7】
ホウ素系化合物とヒドロキシル基含有アミン系化合物とを含む水溶液と、エマルション系重合体とを混合する工程を少なくとも具備する請求項5記載の水分散体の製造方法。

【公開番号】特開2012−255095(P2012−255095A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129049(P2011−129049)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】