説明

水分散型感圧接着剤組成物

【課題】フォームシート基材への塗工物を非極性被着体に貼り付けた場合の耐水性に優れた水分散型感圧接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)炭素数2〜14のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(a)、重合性不飽和カルボン酸(b)及びホモポリマーのガラス転移温度20〜110℃のメタクリル酸アルキルエステル(c)を各々特定量含有するモノマー混合物100重量部を、上記(a)〜(c)と共重合可能なエチレン性不飽和基を有する反応性界面活性剤(d)0.1〜10重量部の存在下に、水媒体中で乳化重合して得られるアクリル系ポリマーエマルション、並びに(B)乳化剤の存在下に粘着付与樹脂を乳化して得られる粘着付与樹脂エマルションを、特定割合で含む水分散型感圧接着剤組成物、並びに、フォームシート基材面に、該水分散型感圧接着剤組成物を感圧接着剤層として有する塗工物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散型感圧接着剤組成物及び当該接着剤組成物層をフォームシート基材の少なくとも一方の面に有する感圧接着剤塗工物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感圧接着シート類には、主として、溶剤型のアクリル系ポリマーを主成分とした感圧接着剤が用いられてきた。しかし、溶剤型感圧接着剤は、有機溶媒中で合成されるため、塗工時に溶剤が揮発するので環境的に問題があり、水分散型の感圧接着剤への転換が図られている。また、アクリル系ポリマーを主成分とした感圧接着剤を塗工した感圧シート類は、ステンレス、ポリエチレンテレフタレート等の極性被着体への接着力は高いが、ポリエチレン、ポリプロピレン等の非極性被着体への接着力が低く、又これらの被着体への接着後の末端剥がれ防止性(曲面等に貼り付けた場合の末端部からの浮きや剥がれに対する耐久性)等が劣るという欠点を改良するために、感圧接着剤組成物中に、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂などの粘着付与樹脂を配合することが行われている。
【0003】
ところが、前記粘着付与樹脂は極めて水に分散しにくいため、水に均一に分散させるには多量の乳化剤を必要とする。この多量の乳化剤の影響により、従来のアクリル系ポリマーエマルションを主成分とする水分散型感圧接着剤組成物を塗工した感圧シート類は、湿度の高い場所や水滴のかかる場所においては、感圧接着剤自身が吸水したり、乳化剤がブリードアウトして、被着体に対する接着力が低下するという問題があるため、耐水性の必要な用途には適さなかった。
【0004】
こうした状況下、粘着付与樹脂を水に分散させる際に必要な乳化剤を減らすための方法として、表面に極性基を有するシードポリマーに粘着付与樹脂とアクリル系モノマーを取り込ませて重合する方法が示されている(特許文献1参照)。しかし、この方法において、アクリル系モノマー重合時に使用できる粘着付与樹脂は、結果的にはアクリル系モノマーの重合阻害を起こさないものに限定されるため、これを含む感圧接着剤を塗工した感圧シート類を非極性被着体に貼り付けた場合の耐水性を高めることができる適切な粘着付与剤を選択できない。
【0005】
また、(メタ)アクリル酸アルキル又は脂環式エステルを主単量体成分とし、特定のガラス転移温度及び重量平均分子量を有するアクリル系ポリマーからなるシードエマルションに、ガラス転移温度及び重量平均分子量が特定の範囲となるように単量体混合物を加えて重合させて得られる水分散型感圧接着剤組成物が提案されている(特許文献2参照)。しかし、この感圧接着剤組成物を塗工した感圧シート類は、非極性被着体への接着力は上がるものの、湿度の高い場所や水滴のかかる場所での非極性被着体に貼り付けた場合の耐水性は十分ではなかった。
【特許文献1】特開平10−195407号公報
【特許文献2】特開2003−105298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、環境や安全衛生などに問題のない水分散型の感圧接着剤組成物であって、これをフォームシート基材に塗工した塗工物を非極性被着体に貼り付けた場合の耐水性に優れた水分散型感圧接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討した。その結果、特定のモノマー混合物を、特定の反応性界面活性剤の特定量存在下で乳化重合させることにより得られるアクリル系ポリマーエマルションと、特定の粘着付与樹脂エマルションとを、特定割合で含有する水分散型感圧接着剤組成物によれば、上記課題を達成し得ることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下の水分散型感圧接着剤組成物及び感圧接着剤塗工物を提供するものである。
【0009】
1.(A)炭素数2〜14のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(a)70〜95.9重量%、重合性不飽和カルボン酸(b)0.1〜10重量%、及びホモポリマーのガラス転移温度が20〜110℃のメタクリル酸アルキルエステル(c)4〜20重量%を含有するモノマー混合物100重量部を、上記(a)〜(c)と共重合可能なエチレン性不飽和基を有する反応性界面活性剤(d)0.1〜10重量部の存在下に、水媒体中で乳化重合して得られるアクリル系ポリマーエマルション、並びに
(B)乳化剤の存在下に粘着付与樹脂を乳化して得られる粘着付与樹脂エマルションを、
前記アクリル系ポリマーエマルション(A)中のポリマー成分100重量部に対して、粘着付与樹脂エマルション(B)中の粘着付与樹脂成分を5〜20重量部の割合で含むことを特徴とする水分散型感圧接着剤組成物。
【0010】
2.上記ホモポリマーのガラス転移温度が20〜110℃のメタクリル酸アルキルエステル(c)が、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸iso−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、及びメタクリル酸シクロヘキシルの少なくとも一種である上記項1記載の水分散型感圧接着剤組成物。
【0011】
3.フォームシート基材の少なくとも一方の面に、上記項1又は2記載の水分散型感圧接着剤組成物を、感圧接着剤層として有する感圧接着剤塗工物。
【0012】
水分散型感圧接着剤組成物
本発明の水分散型感圧接着剤組成物は、上記アクリル系ポリマーエマルション(A)と、上記粘着付与樹脂エマルション(B)とを、特定割合で含有する水分散型感圧接着剤組成物である。
【0013】
アクリル系ポリマーエマルション(A)
アクリル系ポリマーエマルション(A)は、炭素数2〜14のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(a)70〜95.9重量%、重合性不飽和カルボン酸(b)0.1〜10重量%、及びホモポリマーのガラス転移温度が20〜110℃のメタクリル酸アルキルエステル(c)4〜20重量%を含有するモノマー混合物100重量部を、上記(a)〜(c)と共重合可能なエチレン性不飽和基を有する反応性界面活性剤(d)0.1〜10重量部の存在下に、水媒体中で乳化重合して得られるものである。
【0014】
アルキル基の炭素数が2〜14のアクリル酸アルキルエステル(a)としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ドデシル等の炭素数2〜14個の直鎖又は分岐脂肪族アルコールのアクリル酸エステルを挙げることができる。これらのうち、炭素数4〜12個の直鎖又は分岐脂肪族アルコールのアクリル酸エステルを用いるのが好ましい。これらのアクリル酸アルキルエステル(a)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0015】
重合性不飽和カルボン酸(b)としては、分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を持つ重合性の単量体であれば差し支えない。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、クロトン酸などを挙げることができる。これらの重合性不飽和カルボン酸(b)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0016】
ホモポリマーのガラス転移温度が20〜110℃のメタクリル酸アルキルエステル(c)としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸iso−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルなどを挙げることができる。これらのメタクリル酸アルキルエステル(c)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記(a)〜(c)を含有するモノマー混合物における各モノマーの割合は、炭素数2〜14のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(a)が70〜95.9重量%程度、重合性不飽和カルボン酸(b)が0.1〜10重量%程度、及びホモポリマーのガラス転移温度が20〜110℃のメタクリル酸アルキルエステル(c)が4〜20重量%程度である。
【0018】
重合性不飽和カルボン酸(b)の混合割合が、0.1重量%未満ではアクリル系ポリマーエマルション(A)の安定性が不十分となり、一方10重量%を超えると均一に共重合することが困難になり、結果的にアクリル系ポリマーエマルション(A)の安定性が不十分となるので、いずれも好ましくない。
【0019】
また、ホモポリマーのガラス転移温度が20〜110℃のメタクリル酸アルキルエステル(c)の混合割合が4重量%未満では非極性被着体に対する接着性が不十分となり、耐水性が低下し、一方20重量%を超えると感圧接着剤層が硬くなり、非極性被着体に対する密着性が不十分となり、耐水性が低下するので、いずれも好ましくない。
【0020】
上記(a)〜(c)と共重合可能なエチレン性不飽和基を有する反応性界面活性剤(d)としては、下記一般式(1)〜(4)で表される化合物を例示することができる。
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
一般式(1)〜(4)で表される化合物としては、市販品を使用することができる。市販品の具体例としては、「ラテムルS−180」(商品名、花王(株)製、有効成分:一般式(1)において、R=炭素数18のアルキル基、M=Naの化合物)、「ラテムルS−180A」(商品名、花王(株)製、有効成分:一般式(1)において、R=炭素数18のアルキル基、M=NHの化合物)、「アクアロンHS−10」(商品名、第一工業製薬(株)製、有効成分:一般式(2)の化合物)、「エレミノールJS−2」(商品名、三洋化成工業(株)製、有効成分:一般式(3)において、R=炭素数12のアルキル基の化合物)、「ラテムルPD−104」(商品名、花王(株)製、有効成分:一般式(4)の化合物)等を挙げることができる。
【0026】
上記(a)〜(c)と共重合可能なエチレン性不飽和基を有する反応性界面活性剤(d)の使用量は、炭素数2〜14のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(a)70〜95.9重量%、重合性不飽和カルボン酸(b)0.1〜10重量%、及びホモポリマーのガラス転移温度が20〜110℃のメタクリル酸アルキルエステル(c)4〜20重量%を含有するモノマー混合物100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。上記反応性界面活性剤の使用量が、0.1重量部未満ではアクリル系ポリマーエマルション(A)の安定性が低下し、一方10重量部を超えると耐水性が低下するので、いずれも好ましくない。
【0027】
上記反応性界面活性剤(d)は、上記(a)〜(c)と共重合可能なエチレン性不飽和基を有するので、上記(a)〜(c)と共に共重合するという反応性を有し、得られる共重合体中に組み込まれることになる。尚、上記反応性界面活性剤(d)以外に、必要に応じて、共重合性の無い乳化剤を併用することもできる。
【0028】
アクリル系ポリマーエマルション(A)は、炭素数2〜14のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(a)、重合性不飽和カルボン酸(b)、及びホモポリマーのガラス転移温度が20〜110℃のメタクリル酸アルキルエステル(c)をそれぞれ特定量含有するモノマー混合物100重量部を、上記(a)〜(c)と共重合可能なエチレン性不飽和基を含有する反応性界面活性剤(d)0.1〜10重量部の存在下に、水媒体中で乳化重合することにより、好適に調製することができる。
【0029】
アクリル系ポリマーエマルション(A)の乳化重合においては、上記乳化剤に加えて、重合開始剤、緩衝剤、連鎖移動剤、その他の添加剤を用いることができる。
【0030】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の無機系開始剤;tert−ブチルベンゾエート、ジラウリルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機系開始剤が挙げられる。また、エルソルビタン酸ナトリウム等の還元剤を併用して、レドックス型で使用してもよい。
【0031】
緩衝剤としては、例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなどが使用できる。
【0032】
また、連鎖移動剤としては、例えば、ステアリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類を使用できる。
【0033】
粘着付与樹脂エマルション(B)
粘着付与樹脂エマルション(B)は、乳化剤の存在下に粘着付与樹脂を乳化することによって、得られる水性エマルションである。
【0034】
乳化される粘着付与樹脂としては、例えば、ロジンエステル、重合ロジンエステル、キシレン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂等を挙げることができる。
【0035】
粘着付与樹脂としては、市販品を使用することができる。市販品の具体例としては、「スーパーエステルA−75」(商品名、荒川化学工業(株)製、粘着付与樹脂:ロジンエステル)、「スーパーエステルA−100」(商品名、荒川化学工業(株)製、粘着付与樹脂:ロジンエステル)、「スーパーエステルA−125」(商品名、荒川化学工業(株)製、粘着付与樹脂:ロジンエステル)、「ペンセルD−125」(商品名、荒川化学工業(株)製、粘着付与樹脂:重合ロジンエステル)、「ペンセルD−135」(商品名、荒川化学工業(株)製、粘着付与樹脂:重合ロジンエステル)、「ペンセルD−160」(商品名、荒川化学工業(株)製、粘着付与樹脂:重合ロジンエステル)、「リカタックPCJ」(商品名、理化ファインテック(株)製、粘着付与樹脂:重合ロジンエステル)、「ニカノールHP−100」(商品名、三菱瓦斯化学(株)製、粘着付与樹脂:キシレン樹脂)、「ニカノールHP−150」(商品名、三菱瓦斯化学(株)製、粘着付与樹脂:キシレン樹脂)、「ニカノールHP−80」(商品名、三菱瓦斯化学(株)製、粘着付与樹脂:キシレン樹脂)、「YSポリスターT−115」(商品名、ヤスハラケミカル(株)製、粘着付与樹脂:テルペンフェノール樹脂)、「マイテックG125」(商品名、ヤスハラケミカル(株)製、粘着付与樹脂:テルペンフェノール樹脂)、「FTR−6120」(商品名、三井化学(株)製、粘着付与樹脂:石油樹脂)、「FTR−6100」(商品名、三井化学(株)製、粘着付与樹脂:石油樹脂)等を挙げることができる。
【0036】
乳化剤としては、例えば、α―オレフィンスルホン化物、アルキルサルフェート、アルキルフェニルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアラルキルフェニルエーテルのスルホコハク酸のハーフエステル塩、ロジン石鹸などのアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン系乳化剤などを挙げることができる。これらの乳化剤は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。乳化剤の使用量は、特に限定されないが、粘着付与樹脂100重量部に対して、固形分換算で、1〜10重量部程度が好ましく、1〜5重量部程度がより好ましい。1重量部未満では乳化時の樹脂エマルションの安定性が悪くなる場合があり、一方10重量部を超える場合には水分散型感圧接着剤組成物の耐水性が低下する傾向がある。
【0037】
また、粘着付与樹脂を乳化する方法としては、例えば、粘着付与樹脂をトルエン等の溶剤に溶解後、前記乳化剤とイオン交換水を添加し、高圧乳化機を用いて乳化した後、減圧下に溶剤を除去する方法;粘着付与樹脂の軟化点が約90℃以下となるよう少量のトルエン等の溶剤を混合し、続いて乳化剤を練り込み、更に熱水を徐々に添加して、転相乳化させてエマルションを得た後、減圧下に溶剤を除去するか又はそのまま使用する方法;オートクレーブ中に粘着付与樹脂の軟化点以上に昇温して乳化剤を練り込み熱水を徐々に添加して、転相乳化させてエマルション化する方法等を挙げることができる。
【0038】
本発明の水分散型感圧接着剤組成物において、粘着付与樹脂エマルション(B)の配合割合は、アクリル系ポリマーエマルション(A)中のポリマー成分100重量部に対して、粘着付与樹脂エマルション(B)中の粘着付与樹脂成分が5〜20重量部程度となる割合である。粘着付与樹脂エマルション(B)の配合割合が、粘着付与樹脂成分として5重量部未満では非極性被着体に対する密着性が不十分となり、耐水性が低下し、一方20重量部を超えると感圧接着剤層が硬くなり、非極性被着体に対する密着性が不十分となり、耐水性が低下するので、いずれも好ましくない。
【0039】
水分散型感圧接着剤組成物の調製方法
本発明の水分散型感圧接着剤組成物は、アクリル系ポリマーエマルション(A)、粘着付与樹脂エマルション(B)及び、必要に応じて、その他の任意成分を混合攪拌することによって、容易に調製することができる。
【0040】
本発明の水分散型感圧接着剤組成物には、必要に応じて、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジニル化合物、メラミン系化合物、オキサゾリン系化合物等の架橋剤を配合することができる。また、本発明の水分散型感圧接着剤組成物には、慣用的に使用されている各種の添加剤、例えば、着色剤(例えば、顔料や染料など)、充填剤、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、可塑剤、防黴剤、老化防止剤、酸化防止剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0041】
感圧接着剤塗工物
本発明の感圧接着剤塗工物は、フォームシート基材の少なくとも一方の面に、本発明水分散型感圧接着剤組成物を、感圧接着剤層として有するものである。
【0042】
当該感圧接着剤塗工物は、例えば、剥離紙、剥離フィルム、剥離シートなどの上に、本発明の水分散型感圧接着剤組成物を、塗布後、加熱などにより乾燥させ、厚さ10〜100μm程度の該組成物による感圧接着剤層の面を、ポリエチレン、ポリウレタン等のフォームシート基材の片面又は両面に貼り合わせることにより、容易に調製することができる。
【0043】
また、当該感圧接着剤塗工物は、上記フォームシート基材の片面又は両面に、本発明の水分散型感圧接着剤組成物を、塗布後、加熱等により乾燥して、厚さ10〜100μm程度の感圧接着剤層を形成することによっても、容易に調製することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の水分散型感圧接着剤組成物及び該組成物を用いた塗工物によれば、下記の如き格別顕著な効果が得られる。
【0045】
(1)本発明の水分散型感圧接着剤組成物をフォームシート基材に塗工してなるフォームシートは、強度、耐水性等の物性に優れているとともに、フォームシート基材との密着性等にも優れている。特に、該フォームシートは、非極性被着体に貼り付けた場合の耐水性にも優れる。したがって、本発明の水分散型感圧接着剤組成物の塗工物であるフォームシートは、自動車用、建材用、家電用等の該フォームシートが使用される幅広い分野において、好適に使用できる。
【0046】
(2)上記フォームシートは、耐水性に優れるので、水滴のかかる場所等の耐水性を必要とする場所での使用においても有効な接着性を保持できる。勿論、かかる場所以外で使用する汎用の感圧接着剤塗工フォームシートとしても有用である。
【0047】
(3)より具体的には、上記フォームシートは、それ自体として又は他の材料と接合して、例えば、自動車用モール、接合材(木質合板用、無機ボード用、木材用、金属用、プラスチック用等)、内装材(床用、天井用、壁用等)、制振材(自動車用、オーディオ用等)、保温・断熱材(自動車用、オーディオ用、家電用、建築用等)、防音材(自動車用、オーディオ用等)、保護材(自動車用、航空機用、家電用、オーディオ用、OA機器用等)等に、好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれらによって限定されるものではない。尚、各例において、部及び%は、原則として、重量基準である。
【0049】
実施例1
(1)アクリル系ポリマーエマルションの調製
還流冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応容器にイオン交換水250部を入れ、攪拌しながら1時間窒素置換させた。これに過硫酸アンモニウム(重合開始剤)を1.5部加え、温度を60℃にし、その後、アクリル酸n−ブチル500部、メタクリル酸iso−ブチル50部、アクリル酸10部、n−ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤)0.5部、及び「ラテムルS−180」(商品名、花王(株)製、有効成分:前記一般式(1)において、R=炭素数18のアルキル基、M=Naの化合物)20部を水120部で乳化したものを、3時間かけて滴下し、乳化重合させてアクリル系ポリマーエマルションを得た。
【0050】
(2)粘着付与樹脂エマルションの調製
「ペンセルD−135」(商品名、荒川化学工業(株)製、粘着付与樹脂:重合ロジンエステル)100部を、トルエン60部に、100℃にて約1時間攪拌溶解した後、80℃まで冷却して、アニオン系乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を固形分換算で3部およびイオン交換水160部を添加し、75℃にて1時間強攪拌して予備乳化を行った。得られた予備乳化物を高圧乳化機(マントンガウリン社製)により、300kg/cmの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物200部を仕込み、50℃、100mmHgの条件下に6時間減圧蒸留を行い、固形分50%の粘着付与樹脂エマルションを得た。
【0051】
(3)水分散型感圧接着剤組成物の調製
上記(1)で得られたアクリル系ポリマーエマルションのポリマー成分100部に対し、上記(2)で得られた粘着付与樹脂エマルションを樹脂成分として10部を混合して、水分散型感圧接着剤組成物を得た。
【0052】
(4)感圧接着剤塗工フォームシートの作製
上記(3)で得た感圧接着剤組成物を厚さ80μmの紙基材剥離紙に塗布し、100℃で3分乾燥し、厚さ70μmの感圧接着剤層を形成させた。この感圧接着剤層をポリエチレンフォームシート(30倍発泡、厚み5mm)の片面に貼り合わせ、感圧接着剤塗工フォームシートを作製した。
【0053】
実施例2
実施例1において、メタクリル酸iso−ブチルを100部とした以外は、実施例1と同様の操作で感圧接着剤塗工フォームシートを作製した。
【0054】
実施例3
実施例1において、メタクリル酸iso−ブチルの代わりに、メタクリル酸n−ブチルを用いた以外は、実施例1と同様の操作で感圧接着剤塗工フォームシートを作製した。
【0055】
比較例1
実施例1において、メタクリル酸iso−ブチルの代わりに、酢酸ビニルを用いた以外は、実施例1と同様の操作で感圧接着剤塗工フォームシートを作製した。
【0056】
比較例2
実施例1においてメタクリル酸iso−ブチルを20部とした以外は、実施例1と同様の操作で感圧接着剤塗工フォームシートを作製した。
【0057】
比較例3
実施例1においてメタクリル酸iso−ブチルの代わりにメタクリル酸tert−ブチル200部を用いた以外は、実施例1と同様の操作で感圧接着剤塗工フォームシートを作製した。
【0058】
評価試験
実施例1〜3及び比較例1〜3で得た各感圧接着剤塗工フォームシートについて、接着力及び耐水性の特性を試験した。試験方法は、下記の通りである。
【0059】
接着力
幅25mmの感圧接着剤塗工フォームシートを被着体(ポリプロピレン(PP)板)に2kgのゴムローラーを1往復して圧着し、30分間放置した後、剥離速度300mm/minで剥離して、被着体に対する接着力(N/25mm幅)を測定した。
【0060】
耐水性
感圧接着剤塗工フォームシートをPP板に2kgのゴムローラーを1往復して圧着し、室温で8時間水に浸し、取り出した直後、剥離速度300mm/minで剥離して、PP板に対する接着力(N/25mm幅)を測定する。
【0061】
表1に、各実施例及び比較例で使用した原料の内、メタクリル酸iso−ブチル(iso−BMA)、その代わりに用いたメタクリル酸n−ブチル(n−BMA)、メタクリル酸tert−ブチル(tert−BMA)及び酢酸ビニル、並びにこれらの使用量を示すと共に、得られた各感圧接着剤塗工フォームシートについての接着力及び耐水性の試験結果を示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1から明らかなように、本発明の感圧接着剤塗工フォームシートは、特に非極性被着体に対する耐水強度に優れている。しかも、そのアクリル系ポリマーエマルションから作製された感圧接着剤塗工フォームシートは、非極性被着体に対する接着力強度も良好である。
【0064】
これに対して、ガラス転移温度が20℃〜110℃のメタクリル酸アルキルエステル以外の酢酸ビニルを使用したアクリル系ポリマーエマルションから得られる感圧接着剤塗工フォームシート(比較例1)では、耐水性が劣り、メタクリル酸アルキルエステルの共重合量が少ないアクリル系ポリマーエマルションから得られる感圧接着剤塗工フォームシート(比較例2)では、耐水性が悪く、また、メタクリル酸アルキルエステルの共重合量が多いアクリル系ポリマーエマルションから得られる感圧接着剤塗工フォームシート(比較例3)では、感圧接着剤層が硬くフォームシート基材に対する密着性が発現しないため、耐水性が悪くなる。
【0065】
このように、ホモポリマーのガラス転移温度が20〜110℃を示すメタクリル酸アルキルエステル系モノマーを適切な範囲で共重合することによって達成される本発明の効果は、これまでのアクリル系ポリマーエマルションから得られる感圧接着剤塗工フォームシートでは、予期できないものである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数2〜14のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(a)70〜95.9重量%、重合性不飽和カルボン酸(b)0.1〜10重量%、及びホモポリマーのガラス転移温度が20〜110℃のメタクリル酸アルキルエステル(c)4〜20重量%を含有するモノマー混合物100重量部を、上記(a)〜(c)と共重合可能なエチレン性不飽和基を有する反応性界面活性剤(d)0.1〜10重量部の存在下に、水媒体中で乳化重合して得られるアクリル系ポリマーエマルション、並びに
(B)乳化剤の存在下に粘着付与樹脂を乳化して得られる粘着付与樹脂エマルションを、
前記アクリル系ポリマーエマルション(A)中のポリマー成分100重量部に対して、粘着付与樹脂エマルション(B)中の粘着付与樹脂成分を5〜20重量部の割合で含むことを特徴とする水分散型感圧接着剤組成物。
【請求項2】
上記ホモポリマーのガラス転移温度が20〜110℃のメタクリル酸アルキルエステル(c)が、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸iso−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、及びメタクリル酸シクロヘキシルの少なくとも一種である請求項1記載の水分散型感圧接着剤組成物。
【請求項3】
フォームシート基材の少なくとも一方の面に、請求項1又は2記載の水分散型感圧接着剤組成物を、感圧接着剤層として有する感圧接着剤塗工物。



【公開番号】特開2009−275168(P2009−275168A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129622(P2008−129622)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(390029458)一方社油脂工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】