水分量および塗工量の測定方法
【課題】シート状の基材に塗工層を設けた試料の水分,塗工量を測定する。
【解決手段】マイクロ波共振器を用いて、測定対象試料の水分,塗工量を測定する方法、水分,塗工量が既知の基準試料の、共振周波数と共振ピークレベルを実測し、ΔVw(塗工で増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分量)について下記特性方程式において、Δf=K1〔(ε'w-1)ΔVw+(ε'c-1)ΔVc〕・(1) ΔW=K2(ε''w×ΔVw+ε''c×ΔVc)・(2)式中の係数K1、K2を決定後、水分、塗工量が未知の測定対象試料の共振周波数と共振ピークレベルを測定し、方程式を連立させて測定対象試料のΔVwとΔVcを算出。Δf=fb-fs fb:シート状基材の共振周波数 fs:塗工層を設けた試料の共振周波数
ΔW=Pb-Ps Pb:シート状基材の共振ピークレベル Ps:塗工層を設けた試料の共振ピークレベル ε'w、ε'c:水および塗料固形分の誘電率 ε''w、ε''c:水および塗料固形分の誘電損失率
【解決手段】マイクロ波共振器を用いて、測定対象試料の水分,塗工量を測定する方法、水分,塗工量が既知の基準試料の、共振周波数と共振ピークレベルを実測し、ΔVw(塗工で増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分量)について下記特性方程式において、Δf=K1〔(ε'w-1)ΔVw+(ε'c-1)ΔVc〕・(1) ΔW=K2(ε''w×ΔVw+ε''c×ΔVc)・(2)式中の係数K1、K2を決定後、水分、塗工量が未知の測定対象試料の共振周波数と共振ピークレベルを測定し、方程式を連立させて測定対象試料のΔVwとΔVcを算出。Δf=fb-fs fb:シート状基材の共振周波数 fs:塗工層を設けた試料の共振周波数
ΔW=Pb-Ps Pb:シート状基材の共振ピークレベル Ps:塗工層を設けた試料の共振ピークレベル ε'w、ε'c:水および塗料固形分の誘電率 ε''w、ε''c:水および塗料固形分の誘電損失率
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、不織布、フィルムをはじめとするシート状物質の基材に塗料溶液を塗布して塗工層を設けた試料の水分量および塗工量を、マイクロ波の共振により測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水分量測定と塗工量測定は、いずれも製紙業界のみならず、各製造業において極めて重要であり、その測定精度を品質管理の観点から高いものにしたいというニーズは非常に強いものである。
【0003】
シート状物質の水分量や塗工量を測定する一手段として、マイクロ波共振器を利用した方法が知られている。共振器に入射するマイクロ波の周波数を連続的に変化させ、そのときの透過マイクロ波強度を検出すると図1(A)に示したような共振カーブが得られる。この共振器内部または共振器近傍にサンプルを置くと、共振カーブは図1(B)に示したように変化する。この現象は図2に示したインダクタンスL、キャパシタンスC、抵抗RからなるLCR共振回路理論によって電気回路的に説明することができる。たとえば、マイクロ波空洞共振器では、アイリスがリアクタンス成分およびキャパシタンス成分を作り、これに導波管壁の抵抗分が加わって、LCR共振回路を形成している。試料の誘電率は容量Cに、誘電損失率は抵抗Rに相当し、これらが電磁結合により、共振器のL、C、Rと結合しているのと等価である。したがって、試料が存在すると容量Cは増加し、共振周波数f(f=1/{2π(LC)1/2}が小さくなる。同時に試料の誘電損失率によって抵抗Rも増加し、ピークレベルが減少するとともに、Q値、すなわち共振の鋭さも小さくなる。同じ現象を摂動理論によって説明することもできるが、説明は省略する。
【0004】
特許文献1には、マイクロ波空洞共振器内に試料を挿入し、試料挿入前後の共振ピークレベルの変化量から試料の水分量を測定する方法および装置が記載されている。これは、水が他の物質に比して大きな誘電損失率を有しているので、共振ピークレベルの変化量は水の誘電損失率と水の量の積のみに依存するという考えによるものである。
【0005】
また、特許文献2には、誘電体共振器に一定条件で試料を配置し、試料がある場合とない場合との共振周波数の差から試料の坪量を、共振ピークレベルの差から試料の水分量を測定する方法および装置が記載されている。ここでは、共振周波数のシフト量(試料がない場合の共振周波数とある場合の共振周波数との差)は、試料の誘電率を含む定数と試料の坪量(または厚さ)の積で表されるとし、坪量既知の試料を用いて作成した検量線を基に、試料の坪量を測定している。
【0006】
【特許文献1】WO2005/012887号公報
【特許文献2】特開2006−349425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2では多層の塗工層を設けた場合のその塗工層の水分量に着目し、その影響を考慮した水分量測定方法に言及していた。しかしながら、実際には塗工層中の塗料固形分も誘電損失率を有しているため、共振ピークレベルの変化量は塗料固形分の誘電損失率とその絶対量にも影響を受けることがわかった。また、塗工層に含まれる水についても誘電損失率だけではなく誘電率も大きな値を有しているため、共振周波数シフト量についても、その値は水の誘電率とその絶対量に影響を受けることになる。つまり、より正確に水分量や塗工量を測定するためには、塗工層に含まれる水と塗料固形分のそれぞれの誘電率、誘電損失率の影響を考慮した測定を行うことが重要であることがわかった
【0008】
本発明は、シート状の基材に塗工層を設けた試料の水分量および塗工量を、簡便にかつより正確に測定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる水分量および塗工量の測定方法は、マイクロ波共振器を用いて、シート状の基材に(塗料を塗布して)塗工層を設けた測定対象試料の水分量および塗工量を測定する方法であって、水分量と塗工量が既知である基準試料の、共振周波数と共振ピークレベルを実測し、ΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)について下記(1)(2)式よりなる特性方程式において、
Δf=K1〔(ε'w−1)ΔVw+(ε'c−1)ΔVc〕・・・(1)
ΔW=K2(ε''w×ΔVw+ε''c×ΔVc〕・・・(2)
式中の係数K1、K2を決定した後、水分量と塗工量が未知の測定対象試料の共振周波数と共振ピークレベルを測定し、前記特性方程式を連立させて測定対象試料のΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)を算出することにより、測定対象試料の水分量および塗工量を求める測定方法である。
ここで、
Δf=fb−fs
fb : シート状基材の共振周波数
fs : 塗工層を設けた試料の共振周波数
ΔW=Pb−Ps
Pb : シート状基材の共振ピークレベル
Ps : 塗工層を設けた試料の共振ピークレベル
ε'w、ε'c : 水および塗料固形分の誘電率
ε''w、ε''c : 水および塗料固形分の誘電損失率
【0010】
また、本発明にかかる水分量および塗工量の測定方法は、マイクロ波共振器を用いて、シート状の基材に塗料を塗布して塗工層を設けた測定対象試料の水分量および塗工量を測定する方法であって、水分量と塗工量が既知である基準試料の、共振周波数と共振ピークレベルを実測し、ΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)について下記(1)(2)式よりなる特性方程式に従って検量線を作成し、
Δf=K1〔(ε'w−1)ΔVw+(ε'c−1)ΔVc〕・・・(1)
ΔW=K2(ε''w×ΔVw+ε''c×ΔVc〕・・・(2)
水分量と塗工量が未知の測定対象試料の共振周波数と共振ピークレベルを測定し、前記検量線から測定対象試料のΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)を算出することにより、測定対象試料の水分量および塗工量を求める測定方法であってもよい。
ここで、
Δf=fb−fs
fb : シート状基材の共振周波数
fs : 塗工層を設けた試料の共振周波数
ΔW=Pb−Ps
Pb : シート状基材の共振ピークレベル
Ps : 塗工層を設けた試料の共振ピークレベル
ε'w、ε'c : 水および塗料固形分の誘電率
ε''w、ε''c : 水および塗料固形分の誘電損失率
【発明の効果】
【0011】
本発明の測定方法は、マイクロ波共振器を用い、シート状基材とその基材に塗工層を設けた試料との、共振周波数の差と共振ピークレベルの差とに基づいて、試料の水分量と塗工量を測定するようにしたので、試料の水分量と塗工量とを高精度かつ簡便に測定できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
そこで、本発明者は図3に示したような共振カーブを用いて塗工層に含まれる水と塗料固形分とを分離してその量を測定する方法を案出した。図3はマイクロ波空洞共振器によって3種の状態においてサンプルを測定した際に得られるそれぞれの共振カーブを示す図である。共振カーブAはサンプルの無いブランク時に得られる共振カーブ、共振カーブBは基材のみを測定するときに得られる共振カーブ、共振カーブCは基材に塗工層があるときに得られる共振カーブを示す図である。これらの共振カーブの関係から、塗工層に含まれる水と塗料固形分の寄与分を分離し、それぞれの量と誘電率、誘電損失率が共振周波数シフト量や共振ピークレベル変化量に与える影響を正確に求めようとした。
【0013】
以下本発明における水分量と塗工量の測定原理を説明する。
マイクロ波共振器の内部または近傍に、塗工層を設けていないシート状基材を置いたとき、図3において共振カーブAから共振カーブBのように変化したとする。共振カーブAは基材がない場合の共振カーブである。このときの共振周波数シフト量Δfbおよび共振ピークレベル変化量ΔWbは次のように表すことができる。下記式(1)(2)は特許文献1および2に記載されているので説明を省略する
【0014】
Δfb=f0−fb=K1×(ε'b−1)ΔVb・・・(1)
ΔWb=P0−Pb=K2×ε''bΔVb・・・(2)
ε'b、ε''b: 基材の誘電率および誘電損失率
ΔVb : 基材の量(測定面積当たり)
fo : 基材がない場合(ブランク)の共振周波数
fb : 基材がある場合の共振周波数
Po : 基材がない場合(ブランク)の共振ピークレベル
Pb : 基材がある場合の共振ピークレベル
Δfb : 基材とブランクとの共振周波数シフト量
ΔWb : 基材とブランクとの共振ピークレベル変化量
K1、K2 : 比例定数
【0015】
次に、同じ基材に塗工層を設けた試料を共振器内部または近傍に置いたとき、図3中の共振カーブCのように変化したとする。このとき、塗工層を設けた試料は仮想的に図4に表すように、基材と、塗工により増えた水の層と、塗工により増えた塗料固形分からなる層の多層状構造を取ると仮定すると、このときの共振周波数シフト量Δfsおよび共振ピークレベル変化ΔWs量は次のように表すことができる。図4は基材に塗工層を設けた場合の層構成を仮想的に示した断面図である。
【0016】
Δfs=f0−fs=K1{(ε'b−1)ΔVb+(ε'w−1)ΔVw+(ε'c−1)ΔVc}・・・(3)
ΔWs=P0−Ps=K2×(ε''bΔVb+ε''wΔVw+ε''cΔVc)・・・(4)
ε'w、ε''w: 水の誘電率および誘電損失率
ε'c、ε''c: 塗料固形分の誘電率および誘電損失率
ΔVw : 塗工により増えた水の量
ΔVc : 塗工により増えた塗工層中の塗料固形分の量
fs : 試料がある場合の共振周波数
Ps : 試料がある場合の共振ピークレベル
Δfs : 試料がある場合とブランクとの共振周波数シフト量
ΔWs : 試料がある場合とブランクとの共振ピークレベル変化量
【0017】
(1)式および(3)式より
Δf=Δfs−Δfb=K1{(ε'w−1)ΔVw+(ε'c−1)ΔVc}・・・(5)
Δf:試料と基材との共振周波数の差
(2)式および(4)式より
ΔW=ΔWs−ΔWb=K2×(ε''wΔVw+ε''cΔVc)・・・(6)
ΔW:試料と基材との共振ピークレベルの差
【0018】
(5)式および(6)式における定数K1、K2は共振器などの装置により決まる装置定数である。よってあらかじめこの装置定数を求めておけば、ΔfおよびΔWを測定することにより塗工により増えた水の量ΔVwと塗工層中の塗料固形分の量ΔVcを算出することができ、それらの値から試料の水分量と塗工量を得ることができる。ここで塗工により増えた水の量ΔVwと塗工層中の塗料固形分の量ΔVcはそれぞれ水の体積、塗料固形分の体積を正確には意図しているがそれぞれ既知の比重で補正すれば質量に換算できる。すなわち、この(5)(6)式がΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)についての特性方程式となるわけである。
【0019】
次に具体的にK1、K2を求める手順を説明する。
まず、塗工層を設けていない基材の共振カーブを測定する。次に、同じ基材に塗料溶液をその量を変えて塗工、乾燥した基準試料数点を用意し、それぞれの共振カーブを測定する。基材と各基準試料の水分量および塗工量は、あらかじめ別の方法で測定しておき、その値から各基準試料について、塗工により増えた水の量ΔVwおよび塗料固形分の量ΔVcを求めた。
【0020】
基材の共振周波数と基準試料の共振周波数との差Δfを縦軸に、〔(水の誘電率ε’w−1)×ΔVw+(塗料固形分の誘電率εc’−1)×ΔVc〕を横軸にしてプロットしていくと、図5に示す1次の相関を示すグラフが得られた。このグラフの傾きが(5)式の定数K1を表す。図5は誘電率と共振周波数のシフト量の関係を示す図である。
【0021】
また、基材の共振ピークレベルと各基準試料の共振ピークレベルとの差ΔWを縦軸に、(水の誘電損率ε’’w×ΔVw+塗料固形分の誘電損率ε’’c×ΔVc)を横軸にしてプロットしていくと、図6に示す1次の相関を示すグラフが得られた。このグラフの傾きが(6)式の定数K2を表す。図6は誘電損率と共振ピークレベルの変化量の関係を示す図である。
【0022】
本発明は、これらの相関関係を検量線として保持しておく形態と、これらの相関関係から求められる定数K1およびK2を保持しておく形態の2形態をとることができる。検量線を用いる形態では水分量と塗工量が未知の測定対象試料について測定して得られるΔfおよびΔWを検量線に当てはめてΔVwおよびΔVcを求め、その値から水分量と塗工量を算出する。定数K1およびK2を用いる形態では測定対象試料について測定して得られたΔfを(5)式に、ΔWを(6)式に適用して、計算によりΔVwおよびΔVcを求め、その値から水分量と塗工量を算出する。このようにして、水分量と塗工量が未知の試料をオンライン測定すると、測定して得られるΔfとΔWから、あらかじめ求めておいた検量線または定数K1およびK2を用いて、その未知試料の水分量と塗工量を直ちに得ることができる。
【実施例】
【0023】
本発明における水分量および塗工量を測定する際に用いる測定装置の一実施例の概略構成図を図7に示す。マイクロ波空洞共振器1に試料10を接触または近づけて走行させ、リアルタイムで共振ピークレベルを測定するものである。マイクロ波掃引発振器20からでたマイクロ波はアンテナ14aにより進行波部分6aに導かれ、進行波部分6aで共振が起こり、そのうちの一部が他方のアンテナ14bに伝達され、その共振レベルが検知される。そのアンテナ14bには検波ダイオード22を介して増幅器及びA/D(アナログ/デジタル)変換器からなるマイクロ波強度受信器24が接続されている。マイクロ波強度受信器24は後述のデータ処理装置に接続されている。
【0024】
本発明の一実施例に適用する測定装置のマイクロ波空洞共振器の一例の側面図を図8に示す。マイクロ波空洞共振器1は導波管の途中に管軸に垂直に、穴の開いた2つのアイリスプレート8a,8bを備えている。アイリスプレート8a,8bは導波管の管軸上に1つずつの穴が開けられている。アイリスプレート8a,8b間が共振器部分4a,4bとなり、共振器部分4a,4bを横切るように試料10を配置するスリット12が設けられている。アイリスプレート8a,8bの外側6a,6bが進行波部分となっている。一方の進行波部分6aには励磁用アンテナ14aが設けられ、そのアンテナ14aには1〜25GHzの間での所定の範囲の周波数で発振させるマイクロ波掃引発振器20が接続されている(図7参照)。他方の進行波部分6bにはアンテナ14bが設けられ、そのアンテナ14bには検波ダイオード22を介して増幅器及びA/D(アナログ/デジタル)変換器からなるマイクロ波強度受信器24が接続されている(図7参照)。
【0025】
信号の流れを示すための本測定装置の概略構成のブロック図を図9に示した。図9に示したように増幅器及びA/D変換器から構成されるマイクロ波強度受信器24はデータ処理装置35に接続されている。そのデータ処理装置35はマイクロ波強度受信器24からの信号を受けて共振ピークレベルを検出するピークレベル検出部30と、共振周波数を検出する共振周波数検出部32と、水分量と塗工量を求める演算部34とを含んでいる。
演算部34は、基材と該基材に塗工層を設けた試料との、共振周波数の差と共振ピークレベルの差に基づいて、先に説明した式を用いて試料の水分量と塗工量を求める。
【0026】
マイクロ波掃引発振器20から出たマイクロ波は、アイリスプレート8aの穴を通って共振器部分4a,4bに導かれ、共振器部分4a,4bで共振が起こり、そのうちの一部がアイリスプレート8bの穴を通って他方のアンテナ14bにより伝達され、その共振レベルが検知される(図8参照)。共振器部分4a,4bのスリット12に試料10を置くか、又は近づけると、試料10の誘電率に応じて共振周波数が変化し、誘電損失率に応じてピークレベルが変化する。
【0027】
アンテナ14bにより検知された共振レベルは、検波ダイオード22によって電圧に変化される(図7参照)。その後、マイクロ波強度受信器24を経て、データ処理装置35のピークレベル検出部30に導かれる。ピークレベル検出部では、掃引中に100000個のデータを取り込むと同時に最大値(ピークレベル)と共振周波数を検出する。これを、約50ミリ秒毎に繰り返す。実際の測定では、種々のノイズのためにピークレベルが変動する場合があるので、平均化処理を行うことにより、安定した測定を行うことができる。
【0028】
図9に示したブロック図を実際に構成する測定装置の一例の構成図を図10に示した。図10に示されるように、空洞共振器1とベクトルネットワークアナライザ40を接続し、S21モードにおける共振カーブのピークレベルをGP−IBインターフェースを用いてパーソナルコンピュータ42にデータを送り、リアルタイムで水分量と塗工量を測定することができる。またシート状の試料が搬送系により搬送されているときに搬送中の試料に対して共振器1がある一定の条件で設置されるように構成することによって、共振器1の内部または近傍を連続して試料を搬送しつつ測定することにより、オンライン測定装置とすることもできる。
【0029】
本発明における水分量と塗工量の測定について、図11に示すフローチャートを用いて説明する。図11は一実施例における測定、演算の各ステップからなるフローチャートを示す。
【0030】
ステップ1で塗工層を設けていない基材について共振周波数fbと共振ピークレベルPbを測定しておく。
つぎに、ステップ2で塗工層を設けた測定対象試料の共振周波数fsと共振ピークレベルPsを測定する。
ステップ3では共振周波数シフト量Δf(=fb−fs)と共振ピークレベル変化量ΔW(=Pb−Ps)を計算する。このΔfおよびΔWは、試料の誘電率ε’、誘電損失率ε''、および試料の量ΔVを用いて先に説明した特性方程式をもって、以下のように表すことができる。
【0031】
Δf=fb−fs=K1{((ε'w−1)ΔVw+(ε'c−1)ΔVc)・・・(10)
ΔW=Pb−Ps=K2×(ε''wΔVw+ε''cΔVc)・・・(11)
ε'w、ε''w:水の誘電率および誘電損失率
ε'c、ε''c:塗料固形分の誘電率および誘電損失率
ΔVw:塗工により増えた水の量
ΔVc:塗工層中の塗料固形分の量
【0032】
そこで、(10)式、(11)式で表されるΔVwおよびΔVcと、ΔfおよびΔWとの関係を検量線として求めておくか、あるいは比例定数K1,K2を算出しておけば、ステップ3で求められるΔfとΔWの値から、水分量と塗工量が得られることになる。そこで、同じ基材に量を変えて塗料溶液を塗工した基準試料数点のΔVwとΔVcをあらかじめ求めておいた上で、ΔfおよびΔWの値を測定することで、両者の関係を表わす検量線を作っておく、もしくは、比例定数K1、K2を決定し、特性方程式を作っておく。
【0033】
ステップ4では、ステップ3で求めたΔfとΔWの値を前述の検量線あるいは特性方程式に当てはめてΔVcとΔVwを算出し、それらの値から測定対象試料の水分量と塗工量を求めるものである。オンライン測定の場合は、一定時間ごとにステップ2〜4を繰り返せば良い。
【0034】
[実際の測定例]
(基準試料の作製)
上質紙(坪量66.0g/m2)上に、顔料とバインダーからなる塗料溶液をワイヤーバーにて塗工、乾燥して基準試料とした。ワイヤーバーの番手を変更して塗工することで、塗工量の異なる基準試料3点を作成した。作成した基準試料の塗工量は、基準試料の坪量(1m2当たりの重量)と基材(上質紙)の坪量の差として求めた。基材と基準試料の水分量は、常温常湿下で調湿した場合の重量と乾燥機で十分乾燥させて水分を除去した状態での重量との差から算出した。
【0035】
(塗料固形分の誘電率、誘電損失率の測定)
基準試料および基材について、水分を十分除去した状態での誘電率と誘電損失率を分子配向計(室温23℃、相対湿度50%、測定周波数4GHz)で測定し、以下の関係式から塗料固形分の誘電率および誘電損失率をそれぞれ2.29、0.03と算出した。
【0036】
ε'c(塗料固形分の誘電率)=(基準試料の誘電率)−(基材の誘電率)
ε''c(塗料固形分の誘電損失率)=(基準試料の誘電損失率)−(基材の誘電損失率)
水の誘電率ε'wおよび誘電損失率ε''wは既知の値(室温23℃、相対湿度50%、測定周波数4GHzにおいて順に80、13)を用いた。
【0037】
(ΔVw、ΔVcの算出)
ΔVw(塗工により増えた水の量)は、基準試料の水分量から基材の水分量を引いた値として求めた。
ΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)は、塗工量からΔVwを引いて算出した。
【0038】
(Δf、ΔWの測定)
室温23℃、相対湿度50%環境下で、4GHz帯空洞共振器をネットワークアナサイザに接続し、S21モードで透過強度の減衰比(ネットワークアナライザから出たマイクロ波強度に対するネットワークアナライザへ戻ってきたマイクロ波強度の比のデシベル表示)の周波数掃引を行って、基材および基準試料について、共振カーブを求めた。共振カーブの極大点における周波数(共振周波数)とそのときのピークレベル(共振ピークレベル)を測定し、次の関係式から基準試料のΔf(共振周波数シフト量)およびΔW(共振ピークレベル変化量)を求めた。
【0039】
Δf=(基材の共振周波数)−(基準試料の共振周波数)
ΔW=(基材の共振ピークレベル)−(基準試料の共振ピークレベル)
結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
(検量線の作成)
表1の値を元に、〔(ε’w−1)×ΔVw+(ε'c−1)×ΔVc〕とΔfの関係をプロットして、図12に示す検量線(1)(図12中、実線で示す)を得た。同様に、ε’’w×ΔVw+ε’’c×ΔVcとΔWの関係をプロットして図13に示す検量線(2)(図13中、実線で示す)を得た。
【0042】
(比例定数K1、K2の算出)
検量線(1)を直線近似し、近似式(A)(図12中、破線で示す)を得た。
Δf=0.0027{(80−1)ΔVw+(2.29−1)ΔVc}・・・(A)
この近似式(A)の傾きを比例定数K1とした。
【0043】
同様に、検量線(2)を直線近似し、近似式(B)(図13中、破線で示す)を得た。
ΔW=0.0091(13ΔVw+0.03ΔVc)・・・(B)
この近似式の(B)の傾きを比例定数K2とした。
【0044】
(測定対象試料の水分量と塗工量の測定)
水分量、塗工量ともに未知である測定対象試料について、共振周波数fsおよび共振ピークレベルPsを測定した。あらかじめ求めておいた基材の共振周波数Δfbと共振ピークレベルPbを用い、共振周波数シフト量Δfおよび共振ピークレベル変化量ΔWを求め、その値を近似式(A)および(B)に当てはめることで、測定対象試料のΔVwとΔVcを求め、さらにΔVwとΔVcを測定対象試料の水分量と塗工量に換算した。結果を表2に示した。なお、表中の従来法により、塗工量、水分量を求める際には、それぞれのサンプルについて、塗工量は測定対象の坪量と基材の坪量の差として、水分量は測定対象の常温常湿下における重量と乾燥機で十分乾燥させて水分を除去した状態での重量との差として算出した。その結果も表2に合わせて示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2からも明らかなように、本発明における測定方法および装置では、シート状物質の基材に塗料溶液を塗布して塗工層を設けた試料の水分量および塗工量を、簡便にかつより正確に測定することが可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、紙、不織布、フィルムをはじめとするシート状物質の基材に塗料溶液を塗布して塗工層を設けた試料の水分量および塗工量を測定するのに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】マイクロ波共振器の共振により得られる共振カーブを示す図で、(A)はサンプルなしの状態、(B)はサンプルありとなしの状態を示す図。
【図2】マイクロ波共振器の共振の原理を説明する等価回路図を示す図。
【図3】マイクロ波空洞共振器によって3種の状態においてサンプルを測定した際に得られるそれぞれの共振カーブを示す図。
【図4】基材に塗工層を設けた場合の層構成を仮想的に示した断面図。
【図5】誘電率と共振周波数シフト量の関係の一例を示すグラフ図。
【図6】誘電損失率と共振ピークレベル変化の関係の一例を示す図。
【図7】本発明の測定方法を適用する水分量および塗工量の測定装置の一例の概略構成図。
【図8】本発明で用いるマイクロ波空洞共振器の一例の側面図。
【図9】本測定装置の概略構成のブロック図。
【図10】図9に示したブロック図を実際に構成する測定装置の一例の構成図。
【図11】一実施例における測定、演算の各ステップからなるフローチャート。
【図12】一実施例で得られた誘電率と共振周波数シフト量の関係を示す図。
【図13】一実施例で得られた誘電損失率と共振ピークレベル変化の関係を示す図。
【符号の説明】
【0049】
1 マイクロ波空洞共振器
2A 導波管
4a、4b 導波管の共振器部分
6a、6b 導波管部分の進行波部分
8a、8b アイリスプレート
10 試料
12 スリット
14a、14b アンテナ
20 マイクロ波掃引発振器
22 検波ダイオード
24 増幅器・A/D変換器
30 ピークレベル検出部
32 共振周波数検出部
34 演算部
35 データ処理装置
40 ベクトルネットワークアナライザ
42 パーソナルコンピュータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、不織布、フィルムをはじめとするシート状物質の基材に塗料溶液を塗布して塗工層を設けた試料の水分量および塗工量を、マイクロ波の共振により測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水分量測定と塗工量測定は、いずれも製紙業界のみならず、各製造業において極めて重要であり、その測定精度を品質管理の観点から高いものにしたいというニーズは非常に強いものである。
【0003】
シート状物質の水分量や塗工量を測定する一手段として、マイクロ波共振器を利用した方法が知られている。共振器に入射するマイクロ波の周波数を連続的に変化させ、そのときの透過マイクロ波強度を検出すると図1(A)に示したような共振カーブが得られる。この共振器内部または共振器近傍にサンプルを置くと、共振カーブは図1(B)に示したように変化する。この現象は図2に示したインダクタンスL、キャパシタンスC、抵抗RからなるLCR共振回路理論によって電気回路的に説明することができる。たとえば、マイクロ波空洞共振器では、アイリスがリアクタンス成分およびキャパシタンス成分を作り、これに導波管壁の抵抗分が加わって、LCR共振回路を形成している。試料の誘電率は容量Cに、誘電損失率は抵抗Rに相当し、これらが電磁結合により、共振器のL、C、Rと結合しているのと等価である。したがって、試料が存在すると容量Cは増加し、共振周波数f(f=1/{2π(LC)1/2}が小さくなる。同時に試料の誘電損失率によって抵抗Rも増加し、ピークレベルが減少するとともに、Q値、すなわち共振の鋭さも小さくなる。同じ現象を摂動理論によって説明することもできるが、説明は省略する。
【0004】
特許文献1には、マイクロ波空洞共振器内に試料を挿入し、試料挿入前後の共振ピークレベルの変化量から試料の水分量を測定する方法および装置が記載されている。これは、水が他の物質に比して大きな誘電損失率を有しているので、共振ピークレベルの変化量は水の誘電損失率と水の量の積のみに依存するという考えによるものである。
【0005】
また、特許文献2には、誘電体共振器に一定条件で試料を配置し、試料がある場合とない場合との共振周波数の差から試料の坪量を、共振ピークレベルの差から試料の水分量を測定する方法および装置が記載されている。ここでは、共振周波数のシフト量(試料がない場合の共振周波数とある場合の共振周波数との差)は、試料の誘電率を含む定数と試料の坪量(または厚さ)の積で表されるとし、坪量既知の試料を用いて作成した検量線を基に、試料の坪量を測定している。
【0006】
【特許文献1】WO2005/012887号公報
【特許文献2】特開2006−349425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2では多層の塗工層を設けた場合のその塗工層の水分量に着目し、その影響を考慮した水分量測定方法に言及していた。しかしながら、実際には塗工層中の塗料固形分も誘電損失率を有しているため、共振ピークレベルの変化量は塗料固形分の誘電損失率とその絶対量にも影響を受けることがわかった。また、塗工層に含まれる水についても誘電損失率だけではなく誘電率も大きな値を有しているため、共振周波数シフト量についても、その値は水の誘電率とその絶対量に影響を受けることになる。つまり、より正確に水分量や塗工量を測定するためには、塗工層に含まれる水と塗料固形分のそれぞれの誘電率、誘電損失率の影響を考慮した測定を行うことが重要であることがわかった
【0008】
本発明は、シート状の基材に塗工層を設けた試料の水分量および塗工量を、簡便にかつより正確に測定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる水分量および塗工量の測定方法は、マイクロ波共振器を用いて、シート状の基材に(塗料を塗布して)塗工層を設けた測定対象試料の水分量および塗工量を測定する方法であって、水分量と塗工量が既知である基準試料の、共振周波数と共振ピークレベルを実測し、ΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)について下記(1)(2)式よりなる特性方程式において、
Δf=K1〔(ε'w−1)ΔVw+(ε'c−1)ΔVc〕・・・(1)
ΔW=K2(ε''w×ΔVw+ε''c×ΔVc〕・・・(2)
式中の係数K1、K2を決定した後、水分量と塗工量が未知の測定対象試料の共振周波数と共振ピークレベルを測定し、前記特性方程式を連立させて測定対象試料のΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)を算出することにより、測定対象試料の水分量および塗工量を求める測定方法である。
ここで、
Δf=fb−fs
fb : シート状基材の共振周波数
fs : 塗工層を設けた試料の共振周波数
ΔW=Pb−Ps
Pb : シート状基材の共振ピークレベル
Ps : 塗工層を設けた試料の共振ピークレベル
ε'w、ε'c : 水および塗料固形分の誘電率
ε''w、ε''c : 水および塗料固形分の誘電損失率
【0010】
また、本発明にかかる水分量および塗工量の測定方法は、マイクロ波共振器を用いて、シート状の基材に塗料を塗布して塗工層を設けた測定対象試料の水分量および塗工量を測定する方法であって、水分量と塗工量が既知である基準試料の、共振周波数と共振ピークレベルを実測し、ΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)について下記(1)(2)式よりなる特性方程式に従って検量線を作成し、
Δf=K1〔(ε'w−1)ΔVw+(ε'c−1)ΔVc〕・・・(1)
ΔW=K2(ε''w×ΔVw+ε''c×ΔVc〕・・・(2)
水分量と塗工量が未知の測定対象試料の共振周波数と共振ピークレベルを測定し、前記検量線から測定対象試料のΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)を算出することにより、測定対象試料の水分量および塗工量を求める測定方法であってもよい。
ここで、
Δf=fb−fs
fb : シート状基材の共振周波数
fs : 塗工層を設けた試料の共振周波数
ΔW=Pb−Ps
Pb : シート状基材の共振ピークレベル
Ps : 塗工層を設けた試料の共振ピークレベル
ε'w、ε'c : 水および塗料固形分の誘電率
ε''w、ε''c : 水および塗料固形分の誘電損失率
【発明の効果】
【0011】
本発明の測定方法は、マイクロ波共振器を用い、シート状基材とその基材に塗工層を設けた試料との、共振周波数の差と共振ピークレベルの差とに基づいて、試料の水分量と塗工量を測定するようにしたので、試料の水分量と塗工量とを高精度かつ簡便に測定できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
そこで、本発明者は図3に示したような共振カーブを用いて塗工層に含まれる水と塗料固形分とを分離してその量を測定する方法を案出した。図3はマイクロ波空洞共振器によって3種の状態においてサンプルを測定した際に得られるそれぞれの共振カーブを示す図である。共振カーブAはサンプルの無いブランク時に得られる共振カーブ、共振カーブBは基材のみを測定するときに得られる共振カーブ、共振カーブCは基材に塗工層があるときに得られる共振カーブを示す図である。これらの共振カーブの関係から、塗工層に含まれる水と塗料固形分の寄与分を分離し、それぞれの量と誘電率、誘電損失率が共振周波数シフト量や共振ピークレベル変化量に与える影響を正確に求めようとした。
【0013】
以下本発明における水分量と塗工量の測定原理を説明する。
マイクロ波共振器の内部または近傍に、塗工層を設けていないシート状基材を置いたとき、図3において共振カーブAから共振カーブBのように変化したとする。共振カーブAは基材がない場合の共振カーブである。このときの共振周波数シフト量Δfbおよび共振ピークレベル変化量ΔWbは次のように表すことができる。下記式(1)(2)は特許文献1および2に記載されているので説明を省略する
【0014】
Δfb=f0−fb=K1×(ε'b−1)ΔVb・・・(1)
ΔWb=P0−Pb=K2×ε''bΔVb・・・(2)
ε'b、ε''b: 基材の誘電率および誘電損失率
ΔVb : 基材の量(測定面積当たり)
fo : 基材がない場合(ブランク)の共振周波数
fb : 基材がある場合の共振周波数
Po : 基材がない場合(ブランク)の共振ピークレベル
Pb : 基材がある場合の共振ピークレベル
Δfb : 基材とブランクとの共振周波数シフト量
ΔWb : 基材とブランクとの共振ピークレベル変化量
K1、K2 : 比例定数
【0015】
次に、同じ基材に塗工層を設けた試料を共振器内部または近傍に置いたとき、図3中の共振カーブCのように変化したとする。このとき、塗工層を設けた試料は仮想的に図4に表すように、基材と、塗工により増えた水の層と、塗工により増えた塗料固形分からなる層の多層状構造を取ると仮定すると、このときの共振周波数シフト量Δfsおよび共振ピークレベル変化ΔWs量は次のように表すことができる。図4は基材に塗工層を設けた場合の層構成を仮想的に示した断面図である。
【0016】
Δfs=f0−fs=K1{(ε'b−1)ΔVb+(ε'w−1)ΔVw+(ε'c−1)ΔVc}・・・(3)
ΔWs=P0−Ps=K2×(ε''bΔVb+ε''wΔVw+ε''cΔVc)・・・(4)
ε'w、ε''w: 水の誘電率および誘電損失率
ε'c、ε''c: 塗料固形分の誘電率および誘電損失率
ΔVw : 塗工により増えた水の量
ΔVc : 塗工により増えた塗工層中の塗料固形分の量
fs : 試料がある場合の共振周波数
Ps : 試料がある場合の共振ピークレベル
Δfs : 試料がある場合とブランクとの共振周波数シフト量
ΔWs : 試料がある場合とブランクとの共振ピークレベル変化量
【0017】
(1)式および(3)式より
Δf=Δfs−Δfb=K1{(ε'w−1)ΔVw+(ε'c−1)ΔVc}・・・(5)
Δf:試料と基材との共振周波数の差
(2)式および(4)式より
ΔW=ΔWs−ΔWb=K2×(ε''wΔVw+ε''cΔVc)・・・(6)
ΔW:試料と基材との共振ピークレベルの差
【0018】
(5)式および(6)式における定数K1、K2は共振器などの装置により決まる装置定数である。よってあらかじめこの装置定数を求めておけば、ΔfおよびΔWを測定することにより塗工により増えた水の量ΔVwと塗工層中の塗料固形分の量ΔVcを算出することができ、それらの値から試料の水分量と塗工量を得ることができる。ここで塗工により増えた水の量ΔVwと塗工層中の塗料固形分の量ΔVcはそれぞれ水の体積、塗料固形分の体積を正確には意図しているがそれぞれ既知の比重で補正すれば質量に換算できる。すなわち、この(5)(6)式がΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)についての特性方程式となるわけである。
【0019】
次に具体的にK1、K2を求める手順を説明する。
まず、塗工層を設けていない基材の共振カーブを測定する。次に、同じ基材に塗料溶液をその量を変えて塗工、乾燥した基準試料数点を用意し、それぞれの共振カーブを測定する。基材と各基準試料の水分量および塗工量は、あらかじめ別の方法で測定しておき、その値から各基準試料について、塗工により増えた水の量ΔVwおよび塗料固形分の量ΔVcを求めた。
【0020】
基材の共振周波数と基準試料の共振周波数との差Δfを縦軸に、〔(水の誘電率ε’w−1)×ΔVw+(塗料固形分の誘電率εc’−1)×ΔVc〕を横軸にしてプロットしていくと、図5に示す1次の相関を示すグラフが得られた。このグラフの傾きが(5)式の定数K1を表す。図5は誘電率と共振周波数のシフト量の関係を示す図である。
【0021】
また、基材の共振ピークレベルと各基準試料の共振ピークレベルとの差ΔWを縦軸に、(水の誘電損率ε’’w×ΔVw+塗料固形分の誘電損率ε’’c×ΔVc)を横軸にしてプロットしていくと、図6に示す1次の相関を示すグラフが得られた。このグラフの傾きが(6)式の定数K2を表す。図6は誘電損率と共振ピークレベルの変化量の関係を示す図である。
【0022】
本発明は、これらの相関関係を検量線として保持しておく形態と、これらの相関関係から求められる定数K1およびK2を保持しておく形態の2形態をとることができる。検量線を用いる形態では水分量と塗工量が未知の測定対象試料について測定して得られるΔfおよびΔWを検量線に当てはめてΔVwおよびΔVcを求め、その値から水分量と塗工量を算出する。定数K1およびK2を用いる形態では測定対象試料について測定して得られたΔfを(5)式に、ΔWを(6)式に適用して、計算によりΔVwおよびΔVcを求め、その値から水分量と塗工量を算出する。このようにして、水分量と塗工量が未知の試料をオンライン測定すると、測定して得られるΔfとΔWから、あらかじめ求めておいた検量線または定数K1およびK2を用いて、その未知試料の水分量と塗工量を直ちに得ることができる。
【実施例】
【0023】
本発明における水分量および塗工量を測定する際に用いる測定装置の一実施例の概略構成図を図7に示す。マイクロ波空洞共振器1に試料10を接触または近づけて走行させ、リアルタイムで共振ピークレベルを測定するものである。マイクロ波掃引発振器20からでたマイクロ波はアンテナ14aにより進行波部分6aに導かれ、進行波部分6aで共振が起こり、そのうちの一部が他方のアンテナ14bに伝達され、その共振レベルが検知される。そのアンテナ14bには検波ダイオード22を介して増幅器及びA/D(アナログ/デジタル)変換器からなるマイクロ波強度受信器24が接続されている。マイクロ波強度受信器24は後述のデータ処理装置に接続されている。
【0024】
本発明の一実施例に適用する測定装置のマイクロ波空洞共振器の一例の側面図を図8に示す。マイクロ波空洞共振器1は導波管の途中に管軸に垂直に、穴の開いた2つのアイリスプレート8a,8bを備えている。アイリスプレート8a,8bは導波管の管軸上に1つずつの穴が開けられている。アイリスプレート8a,8b間が共振器部分4a,4bとなり、共振器部分4a,4bを横切るように試料10を配置するスリット12が設けられている。アイリスプレート8a,8bの外側6a,6bが進行波部分となっている。一方の進行波部分6aには励磁用アンテナ14aが設けられ、そのアンテナ14aには1〜25GHzの間での所定の範囲の周波数で発振させるマイクロ波掃引発振器20が接続されている(図7参照)。他方の進行波部分6bにはアンテナ14bが設けられ、そのアンテナ14bには検波ダイオード22を介して増幅器及びA/D(アナログ/デジタル)変換器からなるマイクロ波強度受信器24が接続されている(図7参照)。
【0025】
信号の流れを示すための本測定装置の概略構成のブロック図を図9に示した。図9に示したように増幅器及びA/D変換器から構成されるマイクロ波強度受信器24はデータ処理装置35に接続されている。そのデータ処理装置35はマイクロ波強度受信器24からの信号を受けて共振ピークレベルを検出するピークレベル検出部30と、共振周波数を検出する共振周波数検出部32と、水分量と塗工量を求める演算部34とを含んでいる。
演算部34は、基材と該基材に塗工層を設けた試料との、共振周波数の差と共振ピークレベルの差に基づいて、先に説明した式を用いて試料の水分量と塗工量を求める。
【0026】
マイクロ波掃引発振器20から出たマイクロ波は、アイリスプレート8aの穴を通って共振器部分4a,4bに導かれ、共振器部分4a,4bで共振が起こり、そのうちの一部がアイリスプレート8bの穴を通って他方のアンテナ14bにより伝達され、その共振レベルが検知される(図8参照)。共振器部分4a,4bのスリット12に試料10を置くか、又は近づけると、試料10の誘電率に応じて共振周波数が変化し、誘電損失率に応じてピークレベルが変化する。
【0027】
アンテナ14bにより検知された共振レベルは、検波ダイオード22によって電圧に変化される(図7参照)。その後、マイクロ波強度受信器24を経て、データ処理装置35のピークレベル検出部30に導かれる。ピークレベル検出部では、掃引中に100000個のデータを取り込むと同時に最大値(ピークレベル)と共振周波数を検出する。これを、約50ミリ秒毎に繰り返す。実際の測定では、種々のノイズのためにピークレベルが変動する場合があるので、平均化処理を行うことにより、安定した測定を行うことができる。
【0028】
図9に示したブロック図を実際に構成する測定装置の一例の構成図を図10に示した。図10に示されるように、空洞共振器1とベクトルネットワークアナライザ40を接続し、S21モードにおける共振カーブのピークレベルをGP−IBインターフェースを用いてパーソナルコンピュータ42にデータを送り、リアルタイムで水分量と塗工量を測定することができる。またシート状の試料が搬送系により搬送されているときに搬送中の試料に対して共振器1がある一定の条件で設置されるように構成することによって、共振器1の内部または近傍を連続して試料を搬送しつつ測定することにより、オンライン測定装置とすることもできる。
【0029】
本発明における水分量と塗工量の測定について、図11に示すフローチャートを用いて説明する。図11は一実施例における測定、演算の各ステップからなるフローチャートを示す。
【0030】
ステップ1で塗工層を設けていない基材について共振周波数fbと共振ピークレベルPbを測定しておく。
つぎに、ステップ2で塗工層を設けた測定対象試料の共振周波数fsと共振ピークレベルPsを測定する。
ステップ3では共振周波数シフト量Δf(=fb−fs)と共振ピークレベル変化量ΔW(=Pb−Ps)を計算する。このΔfおよびΔWは、試料の誘電率ε’、誘電損失率ε''、および試料の量ΔVを用いて先に説明した特性方程式をもって、以下のように表すことができる。
【0031】
Δf=fb−fs=K1{((ε'w−1)ΔVw+(ε'c−1)ΔVc)・・・(10)
ΔW=Pb−Ps=K2×(ε''wΔVw+ε''cΔVc)・・・(11)
ε'w、ε''w:水の誘電率および誘電損失率
ε'c、ε''c:塗料固形分の誘電率および誘電損失率
ΔVw:塗工により増えた水の量
ΔVc:塗工層中の塗料固形分の量
【0032】
そこで、(10)式、(11)式で表されるΔVwおよびΔVcと、ΔfおよびΔWとの関係を検量線として求めておくか、あるいは比例定数K1,K2を算出しておけば、ステップ3で求められるΔfとΔWの値から、水分量と塗工量が得られることになる。そこで、同じ基材に量を変えて塗料溶液を塗工した基準試料数点のΔVwとΔVcをあらかじめ求めておいた上で、ΔfおよびΔWの値を測定することで、両者の関係を表わす検量線を作っておく、もしくは、比例定数K1、K2を決定し、特性方程式を作っておく。
【0033】
ステップ4では、ステップ3で求めたΔfとΔWの値を前述の検量線あるいは特性方程式に当てはめてΔVcとΔVwを算出し、それらの値から測定対象試料の水分量と塗工量を求めるものである。オンライン測定の場合は、一定時間ごとにステップ2〜4を繰り返せば良い。
【0034】
[実際の測定例]
(基準試料の作製)
上質紙(坪量66.0g/m2)上に、顔料とバインダーからなる塗料溶液をワイヤーバーにて塗工、乾燥して基準試料とした。ワイヤーバーの番手を変更して塗工することで、塗工量の異なる基準試料3点を作成した。作成した基準試料の塗工量は、基準試料の坪量(1m2当たりの重量)と基材(上質紙)の坪量の差として求めた。基材と基準試料の水分量は、常温常湿下で調湿した場合の重量と乾燥機で十分乾燥させて水分を除去した状態での重量との差から算出した。
【0035】
(塗料固形分の誘電率、誘電損失率の測定)
基準試料および基材について、水分を十分除去した状態での誘電率と誘電損失率を分子配向計(室温23℃、相対湿度50%、測定周波数4GHz)で測定し、以下の関係式から塗料固形分の誘電率および誘電損失率をそれぞれ2.29、0.03と算出した。
【0036】
ε'c(塗料固形分の誘電率)=(基準試料の誘電率)−(基材の誘電率)
ε''c(塗料固形分の誘電損失率)=(基準試料の誘電損失率)−(基材の誘電損失率)
水の誘電率ε'wおよび誘電損失率ε''wは既知の値(室温23℃、相対湿度50%、測定周波数4GHzにおいて順に80、13)を用いた。
【0037】
(ΔVw、ΔVcの算出)
ΔVw(塗工により増えた水の量)は、基準試料の水分量から基材の水分量を引いた値として求めた。
ΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)は、塗工量からΔVwを引いて算出した。
【0038】
(Δf、ΔWの測定)
室温23℃、相対湿度50%環境下で、4GHz帯空洞共振器をネットワークアナサイザに接続し、S21モードで透過強度の減衰比(ネットワークアナライザから出たマイクロ波強度に対するネットワークアナライザへ戻ってきたマイクロ波強度の比のデシベル表示)の周波数掃引を行って、基材および基準試料について、共振カーブを求めた。共振カーブの極大点における周波数(共振周波数)とそのときのピークレベル(共振ピークレベル)を測定し、次の関係式から基準試料のΔf(共振周波数シフト量)およびΔW(共振ピークレベル変化量)を求めた。
【0039】
Δf=(基材の共振周波数)−(基準試料の共振周波数)
ΔW=(基材の共振ピークレベル)−(基準試料の共振ピークレベル)
結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
(検量線の作成)
表1の値を元に、〔(ε’w−1)×ΔVw+(ε'c−1)×ΔVc〕とΔfの関係をプロットして、図12に示す検量線(1)(図12中、実線で示す)を得た。同様に、ε’’w×ΔVw+ε’’c×ΔVcとΔWの関係をプロットして図13に示す検量線(2)(図13中、実線で示す)を得た。
【0042】
(比例定数K1、K2の算出)
検量線(1)を直線近似し、近似式(A)(図12中、破線で示す)を得た。
Δf=0.0027{(80−1)ΔVw+(2.29−1)ΔVc}・・・(A)
この近似式(A)の傾きを比例定数K1とした。
【0043】
同様に、検量線(2)を直線近似し、近似式(B)(図13中、破線で示す)を得た。
ΔW=0.0091(13ΔVw+0.03ΔVc)・・・(B)
この近似式の(B)の傾きを比例定数K2とした。
【0044】
(測定対象試料の水分量と塗工量の測定)
水分量、塗工量ともに未知である測定対象試料について、共振周波数fsおよび共振ピークレベルPsを測定した。あらかじめ求めておいた基材の共振周波数Δfbと共振ピークレベルPbを用い、共振周波数シフト量Δfおよび共振ピークレベル変化量ΔWを求め、その値を近似式(A)および(B)に当てはめることで、測定対象試料のΔVwとΔVcを求め、さらにΔVwとΔVcを測定対象試料の水分量と塗工量に換算した。結果を表2に示した。なお、表中の従来法により、塗工量、水分量を求める際には、それぞれのサンプルについて、塗工量は測定対象の坪量と基材の坪量の差として、水分量は測定対象の常温常湿下における重量と乾燥機で十分乾燥させて水分を除去した状態での重量との差として算出した。その結果も表2に合わせて示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2からも明らかなように、本発明における測定方法および装置では、シート状物質の基材に塗料溶液を塗布して塗工層を設けた試料の水分量および塗工量を、簡便にかつより正確に測定することが可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、紙、不織布、フィルムをはじめとするシート状物質の基材に塗料溶液を塗布して塗工層を設けた試料の水分量および塗工量を測定するのに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】マイクロ波共振器の共振により得られる共振カーブを示す図で、(A)はサンプルなしの状態、(B)はサンプルありとなしの状態を示す図。
【図2】マイクロ波共振器の共振の原理を説明する等価回路図を示す図。
【図3】マイクロ波空洞共振器によって3種の状態においてサンプルを測定した際に得られるそれぞれの共振カーブを示す図。
【図4】基材に塗工層を設けた場合の層構成を仮想的に示した断面図。
【図5】誘電率と共振周波数シフト量の関係の一例を示すグラフ図。
【図6】誘電損失率と共振ピークレベル変化の関係の一例を示す図。
【図7】本発明の測定方法を適用する水分量および塗工量の測定装置の一例の概略構成図。
【図8】本発明で用いるマイクロ波空洞共振器の一例の側面図。
【図9】本測定装置の概略構成のブロック図。
【図10】図9に示したブロック図を実際に構成する測定装置の一例の構成図。
【図11】一実施例における測定、演算の各ステップからなるフローチャート。
【図12】一実施例で得られた誘電率と共振周波数シフト量の関係を示す図。
【図13】一実施例で得られた誘電損失率と共振ピークレベル変化の関係を示す図。
【符号の説明】
【0049】
1 マイクロ波空洞共振器
2A 導波管
4a、4b 導波管の共振器部分
6a、6b 導波管部分の進行波部分
8a、8b アイリスプレート
10 試料
12 スリット
14a、14b アンテナ
20 マイクロ波掃引発振器
22 検波ダイオード
24 増幅器・A/D変換器
30 ピークレベル検出部
32 共振周波数検出部
34 演算部
35 データ処理装置
40 ベクトルネットワークアナライザ
42 パーソナルコンピュータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波共振器を用いて、シート状の基材に(塗料を塗布して)塗工層を設けた測定対象試料の水分量および塗工量を測定する方法であって、水分量と塗工量が既知である基準試料の、共振周波数と共振ピークレベルを実測し、ΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)について下記(1)(2)式よりなる特性方程式において、
Δf=K1〔(ε'w−1)ΔVw+(ε'c−1)ΔVc〕・・・(1)
ΔW=K2(ε''w×ΔVw+ε''c×ΔVc〕・・・(2)
式中の係数K1、K2を決定した後、水分量と塗工量が未知の測定対象試料の共振周波数と共振ピークレベルを測定し、前記特性方程式を連立させて測定対象試料のΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)を算出することにより、測定対象試料の水分量および塗工量を求めることを特徴とする測定方法。
ここで、
Δf=fb−fs
fb : シート状基材の共振周波数
fs : 塗工層を設けた試料の共振周波数
ΔW=Pb−Ps
Pb : シート状基材の共振ピークレベル
Ps : 塗工層を設けた試料の共振ピークレベル
ε'w、ε'c : 水および塗料固形分の誘電率
ε''w、ε''c : 水および塗料固形分の誘電損失率
【請求項2】
マイクロ波共振器を用いて、シート状の基材に塗料を塗布して塗工層を設けた測定対象試料の水分量および塗工量を測定する方法であって、水分量と塗工量が既知である基準試料の、共振周波数と共振ピークレベルを実測し、ΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)について下記(1)(2)式よりなる特性方程式に従って検量線を作成し、
Δf=K1〔(ε'w−1)ΔVw+(ε'c−1)ΔVc〕・・・(1)
ΔW=K2(ε''w×ΔVw+ε''c×ΔVc〕・・・(2)
水分量と塗工量が未知の測定対象試料の共振周波数と共振ピークレベルを測定し、前記検量線から測定対象試料のΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)を算出することにより、測定対象試料の水分量および塗工量を求めることを特徴とする測定方法。
ここで、
Δf=fb−fs
fb : シート状基材の共振周波数
fs : 塗工層を設けた試料の共振周波数
ΔW=Pb−Ps
Pb : シート状基材の共振ピークレベル
Ps : 塗工層を設けた試料の共振ピークレベル
ε'w、ε'c : 水および塗料固形分の誘電率
ε''w、ε''c : 水および塗料固形分の誘電損失率
【請求項1】
マイクロ波共振器を用いて、シート状の基材に(塗料を塗布して)塗工層を設けた測定対象試料の水分量および塗工量を測定する方法であって、水分量と塗工量が既知である基準試料の、共振周波数と共振ピークレベルを実測し、ΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)について下記(1)(2)式よりなる特性方程式において、
Δf=K1〔(ε'w−1)ΔVw+(ε'c−1)ΔVc〕・・・(1)
ΔW=K2(ε''w×ΔVw+ε''c×ΔVc〕・・・(2)
式中の係数K1、K2を決定した後、水分量と塗工量が未知の測定対象試料の共振周波数と共振ピークレベルを測定し、前記特性方程式を連立させて測定対象試料のΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)を算出することにより、測定対象試料の水分量および塗工量を求めることを特徴とする測定方法。
ここで、
Δf=fb−fs
fb : シート状基材の共振周波数
fs : 塗工層を設けた試料の共振周波数
ΔW=Pb−Ps
Pb : シート状基材の共振ピークレベル
Ps : 塗工層を設けた試料の共振ピークレベル
ε'w、ε'c : 水および塗料固形分の誘電率
ε''w、ε''c : 水および塗料固形分の誘電損失率
【請求項2】
マイクロ波共振器を用いて、シート状の基材に塗料を塗布して塗工層を設けた測定対象試料の水分量および塗工量を測定する方法であって、水分量と塗工量が既知である基準試料の、共振周波数と共振ピークレベルを実測し、ΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)について下記(1)(2)式よりなる特性方程式に従って検量線を作成し、
Δf=K1〔(ε'w−1)ΔVw+(ε'c−1)ΔVc〕・・・(1)
ΔW=K2(ε''w×ΔVw+ε''c×ΔVc〕・・・(2)
水分量と塗工量が未知の測定対象試料の共振周波数と共振ピークレベルを測定し、前記検量線から測定対象試料のΔVw(塗工により増えた水の量)およびΔVc(塗工層中の塗料固形分の量)を算出することにより、測定対象試料の水分量および塗工量を求めることを特徴とする測定方法。
ここで、
Δf=fb−fs
fb : シート状基材の共振周波数
fs : 塗工層を設けた試料の共振周波数
ΔW=Pb−Ps
Pb : シート状基材の共振ピークレベル
Ps : 塗工層を設けた試料の共振ピークレベル
ε'w、ε'c : 水および塗料固形分の誘電率
ε''w、ε''c : 水および塗料固形分の誘電損失率
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−58379(P2009−58379A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226011(P2007−226011)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】
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