説明

水切り装置

【課題】バレルなどの容器を高温下に置くことなく、滅菌のための水蒸気の水切りを行う水切り装置を提供する。
【解決手段】
充填された薬液を、先端に装着されたトップチップと、さらに後方内側に装着されたガスケットとにより封入した予充填バレルを滅菌した水を水切りする装置は、バレルの後方内側に装着可能なベース部と、バレルをトップチップ側から挿入可能な空洞を有する本体部とを有する。ベース部は、その外周に軸線方向にそって形成された溝およびその中央に軸線方向にそって形成された貫通孔を有し、該貫通孔は空気源と連結可能であり。本体部の空洞は、挿入されるバレルの外周との間にクリアランスが形成できる大きさをもち、さらに、空気源と連結可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の周囲を水蒸気により滅菌した際に容器の周囲に付着した水を水切りする装置に関する。また、本発明は、充填された薬液を、先端に装着されたトップチップと、さらに後方内側に装着されたガスケットにより封入した予充填ドバレルを滅菌した際に周囲に付着した水を水切りする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
予充填ドバレルは、図1に示されているように、充填された薬液Lを、先端に装着されたトップチップ1と、さらに後方内側に装着されたガスケット2により封入したバレル3で、これを包装して、医師等に提供される。医師は、包装を破き、ガスケット2にピストンロッド部をネジ込み、さらにトップチップ1を外して注射針を装着して使用する。
【0003】
このようなバレル3は、包装される前に滅菌処理されなければならないが、従来は、オートクレーブで処理されている(たとえば、特許文献1および2を参照)。薬剤が封入され容器をオートクレーブ内に配置し、その中に水蒸気を導入し、その後高温に維持しながら乾燥させている。
【特許文献1】特開平5-253296号公報
【特許文献2】米国特許第4,718,463号明細書
【0004】
オートクレーブから取り出したバレルに、空気を吹き付けることによる乾燥も行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オートクレーブ内に蒸気を導入し、高温に維持して乾燥を行うことは一連の操作で殺菌乾燥を行える利点があるものの、高温下では、たとえばプラスチック製のバレルは、その内外圧力差によりプラスチック側壁の変形、反りが生じる虞がある(変形等は、高温のバレルが冷却されるときにも生じる)。
【0006】
また、充填された薬剤には、高温下にされされることに適しないものもある。
【0007】
オートクレーブから取り出したバレルに、空気を吹き付けることによる乾燥は、上記問題はないものの、空気を吹き付けた側の反対側に水分が残る。バレルを回転させることにより、水分の残りについては改善されるが、しかし、空気を吹き付けた側の反対側には、多少とも水分が依然として残り、かかる問題は解決できない。
【0008】
そこで、本発明は、バレルなどの容器を高温下に置くことなく、滅菌のための水蒸気の水切りを行う水切り装置の提供を目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、滅菌のための水蒸気がバレル等に残ることのない上記水切り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、充填された薬液を、先端に装着されたトップチップと、さらに後方内側に装着されたガスケットとにより封入した予充填バレルを滅菌した水を水切りする装置であって、バレルの後方内側に装着可能なベース部と、バレルをトップチップから挿入可能な空洞を有する本体部とを有する。ここで、ベース部は、その外周に軸線方向にそって形成された溝およびその中央に軸線方向にそって形成された貫通孔を有し、該貫通孔は空気源と連結可能であり、本体部の空洞は、挿入されるバレルの外周との間にクリアランスが形成できる大きさをもち、さらに、空気源と連結可能である。空気源からの空気は、ベース部の貫通孔からバレルの内部に流入して、ベース部の溝にそって外部に流出し、また空気源からの空気は空洞内に流入し、クリアランスを通過して外部に流出する。
【0011】
ここで、ベース部は、バレルの内側側壁と接する周囲をもつことが望ましい、また、本体部の空洞は、バレルの外形と同じ外形をもつことが望ましい。
【0012】
本体部は、空洞と空気源とを連結するための通路を有し、該通路と空洞との間に、螺旋状突起部が設けられことが望ましい。この螺旋状突起部により、前記空洞内への空気流が空洞内で旋回する。
【0013】
本発明の水切り装置は、開口部に装着されたトップチップにより封止した容器を滅菌した水の水切りに適用することができる。ここで、水切り装置は、容器の底部分を収納可能な凹部を有するベース部と、容器をトップチップ側から挿入できる空洞を有する本体部とを有し、ベース部は、その中央に軸線方向にそって形成された貫通孔およびその貫通孔から放射方向に凹部に形成されて溝を有し、該貫通孔は空気源と連結可能であり、本体部の空洞は、挿入される容器の外周との間にクリアランスが形成できる大きさをもち、さらに、空気源と連結可能である。空気源からの空気は、ベース部の貫通孔からベース部の溝にそって外部に流出し、また、空気源からの空気は、空洞内に流入し、クリアランスを通過して外部に流出する。
【0014】
本体部は、空洞と空気源とを連結するための通路を有し、該通路と空洞との間に、螺旋状突起部が設けられことが望ましい。この螺旋状突起部により、前記空洞内への空気流が空洞内で旋回する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水切り装置により、バレル、容器の周囲に付着した滅菌のための水蒸気の水分が水切りされるため、バレル等が高温にさらされることがなくなり、バレル等の熱(加熱、冷却)による変形、充填薬剤の変質が防止される。また、本水切り装置による空気は、バレル等の表面全体について流れるため、水分が残ることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図2は、本発明の水切り装置の断面図を示す。この装置10は、二つのバレルを同時に水切り処理できるものであるが、これに限定されず、ひとつのバレルとすることや、三つ以上のバレルとすることも可能である。
【0017】
水切り装置10は、基本的に二つの部品、すなわちベース20と本体30とからなる。二つの部品は連結具(図示せず)により連結されている。以下で説明するように、連結具は、バレル3がベース20に装着された後、バレル3を中に収容するように本体30を移動し、水切り後にバレル3が取り出せるように本体30を移動するものである。
【0018】
ベース20は、内部に空洞21が形成を有し、さらに空気源と連結される通路21’を有する基部22を有し、この基部22は上記の連結具にボルト23により固定されている。
【0019】
基部22には、中央に軸線方向にそって貫通孔24をそれぞれ有する二つの挿入筒25が取り付けられ、貫通孔24は空洞21に連通している(各挿入筒は、同じ構造をもち、しがって一方の挿入筒のみを説明する)。したがって、空気源(図示せず)からの空気は、矢印で示されているように、空洞21からから貫通孔24へと流れる。
【0020】
挿入筒25は外周が、バレル3の後部内壁と密接する外周囲26を有する。したがって、バレル3が挿入筒25へと装着され、挿入筒25がバレル3の後方内側に位置すると、挿入筒25はバレル3を支持することができる。挿入筒25には、図2Aで示されているように、外周に軸線方向にそって複数の溝27が形成されている。貫通孔24を通過した空気は、バレル3の後方内側へと流れ、そして溝27を通過して外部へと流出することができる。
【0021】
溝27の数を増やすことで、より空気はバレルの後部内壁にそって流れることができ、より実質的な水切りができる。挿入筒25は、上記のようにバレルを支持するためのものであるから、バレルの太さにより、すなわち、バレルの種々の内径に対応する外径をもつ挿入筒を用意して、種々のバレルに対応することができる。
【0022】
本体30は、バレル3を収納しかつ、バレル3の外周との間でクリアランスRを形成することができる二つの空洞を有する。空洞31(同じ構造であるため、一方の空洞にのみを説明する)は通路32と連通している。したがって、空気源(図示せず)から空気は、通路32から空洞31へと流れることができる。ここで、通路32と空洞31との間に、螺旋状の突起(図示せず)が設けられてもよい。この突起により、空洞31へと流入する空気は空洞内で旋回し、バレル3の外周全体に空気が効果的に流れる。
【0023】
ベース20の挿入筒25に装着されたバレル3を空洞31内に収納するように、本体30が連結部(図示せず)により配置されると、通路32を通過した空気は、空洞31へ、そして、バレル3の外周と、空洞31の内壁との間のクリアランスRを流れて、外部へと流出することができる。
【0024】
挿入筒と同様に、バレルの太さ、大きさに応じた空洞をもつ本体部を用意し、種々の太さ、大きさのバレルに対応するように、交換できることが望ましい。
【0025】
図2の水切り装置の使用はつぎのとおりである。まず、薬剤が充填されたバレルを用意する。このバレル3は、滅菌のための水蒸気により、水分が付着した状態で、挿入筒25に装着され、挿入筒25がバレル3の後方内側に位置する。そして、バレル3が空洞31へと収納されるように、連結具により本体30が配置される。そして、空気源からの空気は、通路21’から空洞21へ、そして貫通孔24へと流入する。貫通孔24を通過した空気は、バレル3の後部から中に入り、ガスケット2、バレルの内壁に沿うように流れ、そして、溝27を通過して外部に流出する。付着した水分は、この空気の流れにより外へと排出される。同様に、空気源から空気は通路32へ、そして空洞31へと流れる。空洞31に流入した空気は、バレルの外周と、空洞31の内壁との間のクリアランスRを通過して、外部に流出する。バレル3は、空洞21からの空気流により上方に押し上げられようとするが、空洞31からの空気流により下方に押し付けられるため、浮遊することはない。バレル3の外周に付着した水分は、この空気の流れにより、外へと排出される。かくして、バレルの外周および内周に付着した滅菌のための水蒸気の水分が水切りされる。
【0026】
図3は、本発明の水切り装置の他の実施例の断面図を示す。この実施例では、薬剤などが充填されたバイアル、容器等の水切り装置40であって、基本的には、図2の水切り装置と同じで(ただし、容器がひとつ用のものである)、二つの部品、すなわちベース50と本体60とを有する。ベース50は、内部に空気源と連結される通路51を有する基部52を有し、この基部52は上記の連結具(図示せず)にボルト53により固定されている。
【0027】
基部52には、中央上部に凹所53が形成され、さらに中央に軸線方向にそって貫通孔54を有する収納筒55が取り付けられ、貫通孔54は通路51に連通している。したがって、空気源(図示せず)からの空気は、矢印で示されているように、通路51からから貫通孔54へと流れる。
【0028】
収納部55の凹所53の表面は、容器41の底部と面接触できる形状を有する。したがって、容器41の底部が収納筒55の凹所53に挿入されると、収納筒55は容器41を支持することができる。収納筒55には、図3Aで示されているように、貫通孔54からその表面にそって複数の溝57が形成されている。貫通孔54を通過した空気は、挿入された容器41の底部にそって流れ、そして溝57を通過して外部へと流出することができる。
【0029】
溝57の数を増やすことで、空気は容器3の底部の多くの部分にそって流れることができ、より実質的な水切りができる。収納筒55は、上記のように容器41を支持するためのものであるから、容器の底部に対応する凹所をもつ収納筒を用意することで、種々の容器に対応できる。
【0030】
本体60は、容器を収納しかつ、容器の外周との間でクリアランスRを形成することができる空洞61を有する。空洞61は通路62と連通している。したがって、空気源(図示せず)から空気は、通路62から空洞61へと流れることができる。
【0031】
ベース50の収納筒55の凹所53に底部が挿入された容器41が空洞51内に収納されるように、本体60が連結部(図示せず)により配置されると、通路62を通過した空気は、空洞61へ、そして、容器41の外周と、空洞61の内壁との間のクリアランスRを流れて、外部へと流出することができる。ここで、通路62と空洞61との間に、螺旋状の突起(図示せず)が設けられてもよい。この突起により、空洞61へと流入する空気は空洞内で旋回し、バレル3の外周全体に空気が効果的に流れる。
【0032】
収納筒と同様に、容器の大きさに応じた空洞をもつ本体部を用意し、種々の太さ、大きさのバレルに対応するように、交換できることが望ましい。
【0033】
図3の水切り装置の使用はつぎのとおりである。容器41が、水蒸気により滅菌後、水分が付着した状態で、収納筒55の凹所53に挿入される。つぎに、容器41が空洞61へと収納されるように、連結具により本体60が配置される。そして、空気源からの空気は、通路51から貫通孔54へと流入する。貫通孔54を通過した空気は、容器41の底部に沿うように流れ、そして、溝57を通過して外部に流出する。付着した水分は、この空気の流れにより外へと排出される。同様に、空気源から空気は通路62へ、そして空洞61へと流れる。空洞61に流入した空気は、容器の外周と、空洞61の内壁との間のクリアランスRを通過して、外部に流出する。容器41の外周に付着した水分は、この空気の流れにより、外へと排出される。かくして、容器の外周に付着した滅菌のための水蒸気の水分が水切りされる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、薬剤が封入されたバレルの一部切り欠きされたバレルの側面図である。
【図2】図2は、本発明の水切り装置の、中央縦断面図である。 図2Aは、挿入筒の平面図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施例の水切り装置の、中央縦断面図である。 図3Aは、収納筒の平面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 トップチップ
2 ガスケット
3 バレル
L 液体
10 水切り装置
20 ベース
21 空洞
21’ 通路
22 ベース
23 ボルト
24 貫通孔
25 挿入筒
26 外周囲
27 溝
30 本体
31 空洞
32 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填された薬液を、先端に装着されたトップチップと、さらに後方内側に装着されたガスケットとにより封入した予充填バレルを滅菌した水を水切りする装置であって、
前記バレルの後方内側に装着可能なベース部と、
前記バレルを前記トップチップ側から挿入可能な空洞を有する本体部と、
を有し、
前記ベース部は、その外周に軸線方向にそって形成された溝およびその中央に軸線方向にそって形成された貫通孔を有し、該貫通孔は空気源と連結可能であり、
前記本体部の前記空洞は、挿入される前記バレルの外周との間にクリアランスが形成できる大きさをもち、さらに、空気源と連結可能であり、
空気源からの空気は、前記ベース部の貫通孔から前記バレルの内部に流入して、前記ベース部の溝にそって外部に流出し、
空気源からの空気は、前記本体部の前記空洞内に流入し、前記クリアランスを通過して外部に流出する、
ことを特徴とする水切り装置。
【請求項2】
前記ベース部の前記外周は、前記バレルの内側側壁と接する、請求項1に記載の水切り装置。
【請求項3】
前記本体部の前記空洞が、前記バレルの外形と同じ外形をもつ、請求項1に記載の水切り装置。
【請求項4】
前記本体部は、前記空洞と空気源とを連結するための通路を有し、
該通路と前記空洞との間に、螺旋状突起部が設けられ、この螺旋状突起部により、前記空洞内への空気流が旋回することを特徴とする請求項1に記載の水切り装置。
【請求項5】
開口部に装着されたトップチップにより封止した容器を滅菌した水を水切りする装置であって、
前記容器の底部分を収納可能な凹部を有するベース部と、
前記容器を前記トップチップ側から挿入可能な空洞を有する本体部と、
を有し、
前記ベース部は、その中央に軸線方向にそって形成された貫通孔およびその貫通孔から放射方向に前記凹部にそって形成された溝を有し、該貫通孔は空気源と連結可能であり、
前記本体部の前記空洞は、挿入される前記容器の外周との間にクリアランスが形成できる大きさをもち、さらに、空気源と連結可能であり、
空気源からの空気は、前記ベース部の貫通孔から前記ベース部の溝にそって外部に流出し、
空気源からの空気は、前記本体部の前記空洞内に流入し、前記クリアランスを通過して外部に流出する、
ことを特徴とする水切り装置。
【請求項6】
前記本体部は、前記空洞と空気源とを連結するための通路を有し、
該通路と前記空洞との間に、螺旋状突起部が設けられ、この螺旋状突起部により、前記空洞内への空気流が旋回することを特徴とする請求項5に記載の水切り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−95053(P2006−95053A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284282(P2004−284282)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(594063407)株式会社鈴木製作所 (2)
【Fターム(参考)】