説明

水力駆動装置

【課題】水路から放出された水流で効率よく駆動力を得ることができる水力駆動装置を提供する。
【解決手段】
蓄水部26の開口部25は、回転方向側が蓋部27により閉蓋され、非回転方向側が開放された状態となっている。鍔部28は、周方向内方側の一端が軸支され、周方向外方の他端が可動して蓋部27の非回転方向側の端部に対して離接自在であり、最下位置に近づいた際に鍔部28が蓋部27から離反して、蓄水部26に蓄積された水が開放される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路と、該水路から放出された水流により一方向に回転する水車とを備えた水力駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の水力駆動装置としては、下記特許文献1に示すように、隣接する羽根板の間の内部空間に形成された蓄水室を備え、蓄水室の周方向外方に開放された開口部を、回転自在に軸支され、内側に浮子を取り付けた蓋部で閉蓋可能な水車が知られている。
【0003】
かかる水車では、水車の上部に位置する蓄水室では、蓋部が開いてその内部に水が流入し、蓄水室内に水が蓄えられると蓋部に取り付けられた浮子の浮力で蓋部が閉じる。そして、蓄水室内に蓄えられた水の重力で水車が回転して、蓄水室が下向きになると、浮子の浮力で蓋部が開いて蓄水室内の水を流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59−188979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる水車では、水流や水量が変化して、閉じた蓋部に水流が当ると蓋部が開いてしまい、蓄水室内に蓄えられた水が漏れ出してしまう。そのため、蓄水室内に蓄えられた水の重力による推進力を得ることができないという不都合が生じる。
【0006】
そこで本発明は、水路から放出された水流で効率よく駆動力を得ることができる水力駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の水力駆動装置は、
水路と、該水路から放出された水流により一方向に回転する水車とを備えた水力駆動装置であって、
前記水車の回転軸に対して放射状に延びる複数の羽根板と、
隣接する羽根板により仕切られた内部空間を底板と側板とで囲み、周方向外方に開放した開口部から流入した水を蓄積する蓄水部と
を備え、
前記蓄水部は、前記開口部の回転方向側を閉蓋する蓋部と、該蓋部の非回転方向側の端部から周方向内方に延びた可動式の鍔部とを有し、該鍔部は、前記水車が回転して該鍔部が最下位置に近づいた際に前記蓋部から離反して該蓄水部に蓄積された水を開放することを特徴とする。
【0008】
第1発明の水力駆動装置によれば、蓄水部は、回転方向側が蓋部により閉蓋されているため、一度、蓄水室内に蓄えられた水が、蓋部が開放して漏れ出すことがない。さらに、蓋部の非回転方向側の端部から周方向内方に延びた可動式の鍔部により、水車が回転して蓄水部が下側に移動して来ても、蓄水部に蓄えられた水が流れ出ることを抑制することができる。
【0009】
このように第1発明の水力駆動装置によれば、水流が蓋部に当ってもこれが開いて、蓄水部に蓄えられた水が漏れ出してしまうこともないばかりでなく、鍔部により、一度、蓄水部に蓄えられた水を最下位置近くまで保持することができ、水路から放出された水流で効率よく駆動力を得ることができる。
【0010】
第2発明の水力駆動装置は、第1発明において、
前記鍔部は、周方向内方側の一端が軸支され、周方向外方の他端が可動して前記蓋部の非回転方向側の端部に対して離接自在であることを特徴とする。
【0011】
第2発明の水力駆動装置によれば、鍔部を周方向内方側の一端を支点に、蓋部に当接する他端側を可動させることで、一度、蓄水部に蓄えられた水を最下位置近くまで保持することができ、水路から放出された水流で効率よく駆動力を得ることができる。
【0012】
第3発明の水力駆動装置は、第2発明において、
前記鍔部は、該鍔部の他端を前記蓋部側に付勢する付勢手段と、前記水車が回転して該鍔部が最下位置に近づいた際に、該付勢手段の付勢力に反して該鍔部の他端を該蓋部から離反させる離反手段とを有することを特徴とする。
【0013】
第3発明の水力駆動装置によれば、鍔部を付勢手段により蓋部側に付勢することで、一度、蓄水部に蓄えられた水を離反手段による開放まで、すなわち、鍔部が最下位置となるまで保持することができ、水路から放出された水流で効率よく駆動力を得ることができる。
【0014】
第4発明の水力駆動装置は、第1〜第3発明のいずれかにおいて、
前記水路の放出部に設けられ、前記水車に対する該水路の高さに応じて、該水路から放出される水流の向きが前記蓄水部に流入する向きとなるように、水流の向きを調整する水流偏向部を備えることを特徴とする。
【0015】
第4発明の水力駆動装置によれば、水路の高さが低くこれを水車の直上に配置することができない場合にも、水路の放出部に水流偏向部を設けることで、水路から放出された水の向きを偏向して積極的に蓄水部に流入させることができ、水路から放出された水流で効率よく駆動力を得ることができる。
【0016】
第5発明の水力駆動装置は、第4発明において、
前記羽根板は、前記水路から放出された水流および前記水車の直下を流れる水流を受けると共に、その先端部に非回転方向に所定の圧力以上で屈曲する屈曲部を備えることを特徴とする。
【0017】
第5発明の水力駆動装置によれば、蓄水部に蓄えられた水の重力に加えて、羽根板が水路から放出された水流を受けると共に、水車の直下を流れる水流を受けて水車が駆動されるため、水路から放出された水流で効率よく駆動力を得ることができる。
【0018】
さらに、水車の直下を流れる水流を受けて水車を駆動する際には、流木や石などの障害物が羽根板の先端と流れの川底との間に挟まることがある。そこで、羽根板の先端部を非回転方向に屈曲するようにすることで、障害物により回転が妨げられることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】水力駆動装置の全体的な構成を示す斜視図。
【図2】図1の水力駆動装置を側方からみたスケルトン図。
【図3】水路の高さと水車との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1および図2に示すように、本実施形態の水力駆動装置は、水路1と、水路1から放出された水流により一方向に回転する水車2とを備え、水車2の回転により、図示しない発電機を駆動するものである。
【0021】
水路1は、樋状に形成された流路の先端に、水車2に向けて放出する水流の向きを調整する水流偏向部材10が着脱自在に取り付けられている。例えば、水流偏向部材10は、水車2に向けて放出する水流の向きを、(1)水路の水流の向きに対して垂直方向に偏向する第1水流偏向部材11、(2)水路の水流の向きに対して下方斜め約45度に偏向する第2水流偏向部材12、(3)水路の水流の向きに対してそのまま水平に放出させるための第3水流偏向部材13のうちから、いずれか1つが選択される。
【0022】
具体的に、第1水流偏向部材11は、水路の先端部が塞がれ、下方に向かって開放された放出口から垂直方向に水流が放出される。第2水流偏向部材12は、水路1と同様に樋状の形状であって、その底面が下方斜め45度となっている。第3水流偏向部材13は、水路1と同様に樋状の形状であって、重力による水の落下を考慮して、その底面が若干上方に傾斜している。
【0023】
水車2は、その回転軸20に対して放射状に延びる複数の羽根板21,21,・・と、隣接する羽根板21,21により仕切られた内部空間22を底板23と側板24a,24bとで囲み、周方向外方に開放した開口部25から流入した水を蓄積する蓄水部26とを備える。
【0024】
回転軸20は、支持部材20a,20bに、図示しないベアリング等を介して軸着され、抵抗を低減した状態で回転する。さらに、回転軸20に、図示しない発電装置が連結され、回転軸20の回転数に応じた発電電力が得られる。
【0025】
複数の羽根板21,21,・・は、回転軸20から直接放射状に延設されてもよいが、本実施形態では、一端が回転軸20に連結されて回転軸20から放射状に延びた支持フレーム21a,21a,・・・・および21b,21b,・・・・に挟持される。
【0026】
なお、正確には、支持フレーム21a,21a,・・・・および21b,21b,・・・・は、回転軸と共に回転する回転板21cおよび21dを介してそれぞれ回転軸20に連結されている。
【0027】
羽根板21は、その先端部が、水車2の非回転方向に所定の圧力が印加される屈曲する屈曲部21eを備える。屈曲部21eは、ヒンジ部21fとヒンジ部に設けられたねじりバネ等の付勢手段(図示省略)により構成され、付勢手段により起立状態に付勢されると共に、付勢手段の付勢力に反して、非回転方向に所定の圧力が印加されると非回転方向側へ屈曲する。
【0028】
底板23は、回転板21cおよび21dの外周上に載置された状態で、端縁を隣接する羽根板21,21により挟持され、さらに、側板24a,24bは、底板に起立した状態で両端縁を羽根板21,21により挟持されている。
【0029】
開口部25は、回転方向側が蓋部27により閉蓋され、非回転方向側が開放された状態となっている。そして、蓋部27の非回転方向側の端部には、ここから周方向内方に延びた可動式の鍔部28が設けられている。
【0030】
鍔部28は、周方向内方側の一端が軸支され、周方向外方の他端が可動して蓋部27の非回転方向側の端部に対して離接自在となっている。
【0031】
鍔部28は、図示しないねじりバネ等の付勢手段より、他端が蓋部27に当接するように付勢される。さらに、鍔部28は、その他端に、側板24aおよび24bに突出した突出部28a,28bを有し、突出部28a,28bは、支持部材20a,20bに設けられた係合部20c,20cと係合することにより、鍔部28が最下位置に近づいた際に付勢手段の付勢力に逆らって鍔部28を蓋部27から離反させ、蓄水部26に蓄積された水が開放される。
【0032】
なお、鍔部28をねじりバネ等の付勢手段により付勢することに加えてまたは代えて、蓋部27と鍔部28との当接位置にマグネット等を設けて、鍔部28の他端が蓋部27に当接した状態で維持されるようにしてもよい。
【0033】
次に、図3を参照して、本実施形態の水力駆動装置の使用方法について説明する。
【0034】
まず、図3(a)に示すように、水路1が水車2に対して高い場合には、第1水流偏向部材11を水路1の先端部に取り付けると共に、その水流の放出方向が水車2の直上(正確には直上のやや水路側)に近い位置とする。
【0035】
なお、通常の水車と本実施形態の水車2では、回転の方向が逆になっている。すなわち、図3において、通常、水路1を左方から右方に向かって流れる水流は、水車2の右側の羽根板に当るように水路1および水車2が配置されるが、本実施形態では、水車2の左側の羽根板に当るように水路1および水車2が配置される。
【0036】
そのため、水流や水量が変化して、水車2や水車2の蓄水部26から水が溢れてもその水は、水車の左方に落下して右方に向かって流れる。すなわち、水車の直下を流れる水の流れは、基本的に水路1を流れる水流と同じ向きとなっている。
【0037】
図3(a)においては、第1水流偏向部材11からほぼ真下に放出された水流は、そのまま開口部25から蓄水部26に導入されると共に、その水流により水車2が反時計回りに回転する。
【0038】
そして、水車2が反時計回りに回転して、鍔部28が最下位置へ近づくと、鍔部28の突出部28a,28bが、係合部20c,20cと一時的に係合して、蓄水部26に蓄積された水が開放される。
【0039】
さらに、前述のように水路1と水車2との配置を通常の配置と変えることで、水車2の直下に水流がある場合には、羽根板21の先端部が直下の水の流れを受けるように水車を設置して、この流れを水車の回転方向(反時計回り)の推進力とすることができる。
【0040】
このように、図3(a)の水路1および水車2の配置によれば、水路1からの水流の流れを、水車2の上方および下方で羽根板21で受けて回転の推進力とすることができると共に、水を蓄水部26に蓄えてその重力により回転の推進力を得ることができる。
【0041】
さらに、蓄水部26に蓄えられた水は、蓋部27により水路1からの水流により漏れ出すことがないだけでなく、鍔部28により水車2の最下位置近くまで保持することができ、水路から放出された水流で効率よく駆動力を得ることができる。
【0042】
これは、図3(b)および図3(c)についても同様である。
【0043】
すなわち、図3(b)では、水路1が水車2の直上に近い位置に配置することができない場合には、第2水流偏向部材12を水路1の先端部に取り付けると共に、その水流の放出方向が水車2の上方(正確には上方斜め約45度)に配置する。
【0044】
これにより、第2水流偏向部材12から下方斜め約45度に放出された水流は、そのまま開口部25から蓄水部26に導入されると共に、その水流により水車2が反時計回りに回転する。
【0045】
この場合にも、図3(a)の場合と同様、水路1からの水流の流れを、水車2の上方および下方で羽根板21で受けて回転の推進力とすることができると共に、水を蓄水部26に蓄えてその重力により回転の推進力を得ることができる。
【0046】
さらに、蓄水部26に蓄えられた水は、蓋部27により水路1からの水流により漏れ出すことがないだけでなく、鍔部28により水車2の最下位置近くまで保持することができ、水路から放出された水流で効率よく駆動力を得ることができる。
【0047】
さらに、図3(c)では、水路1を水車2の上側に配置することができない場合には、第3水流偏向部材13を水路1の先端部に取り付けると共に、その水流の放出方向が水車2の真横または下側となるように配置する。
【0048】
これにより、第3水流偏向部材13からほぼ水平乃至下降気味に放出された水流は、そのまま開口部25から蓄水部26に導入されると共に、その水流により水車2が反時計回りに回転する。
【0049】
この場合にも、図3(a)および(b)の場合と同様、水路1からの水流の流れを、水車2の側方および下方(直下)で羽根板21で受けて回転の推進力とすることができると共に、水を蓄水部26に蓄えてその重力により回転の推進力を得ることができる。
【0050】
さらに、蓄水部26に蓄えられた水は、蓋部27により水路1からの水流により漏れ出すことがないだけでなく、鍔部28により水車2の最下位置近くまで保持することができるため、水車2に対して落差が小さい図3(c)の場合にも、水路から放出された水流で効率よく駆動力を得ることができる。
【0051】
なお、補足すると、水車2の直下を流れる水流を受けて水車2を駆動する際には、流木や石などの障害物が羽根板21の先端と流れの川底との間に挟まることがあるが、羽根板21の屈曲部21eが非回転方向に屈曲するようにすることで、障害物により回転が妨げられることもない。
【0052】
以上詳しく説明したように、本実施形態の水力駆動装置によれば、水路1から放出された水流で効率よく駆動力を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1…水路、2…水車、10…水流偏向部材(水流偏向部)、11…第1水流偏向部材、12…第2水流偏向部材、13…第3水流偏向部材、20…回転軸、21…羽根板、21e…屈曲部、22…内部空間、23…底板、24a,24b…側板、25…開口部、26…蓄水部、27…蓋部、28…鍔部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路と、該水路から放出された水流により一方向に回転する水車とを備えた水力駆動装置であって、
前記水車の回転軸に対して放射状に延びる複数の羽根板と、
隣接する羽根板により仕切られた内部空間を底板と側板とで囲み、周方向外方に開放した開口部から流入した水を蓄積する蓄水部と
を備え、
前記蓄水部は、前記開口部の回転方向側を閉蓋する蓋部と、該蓋部の非回転方向側の端部から周方向内方に延びた可動式の鍔部とを有し、該鍔部は、前記水車が回転して該鍔部が最下位置に近づいた際に前記蓋部から離反して該蓄水部に蓄積された水を開放することを特徴とする水力駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の水力駆動装置において、
前記鍔部は、周方向内方側の一端が軸支され、周方向外方の他端が可動して前記蓋部の非回転方向側の端部に対して離接自在であることを特徴とする水力駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の水力駆動装置において、
前記鍔部は、該鍔部の他端を前記蓋部側に付勢する付勢手段と、前記水車が回転して該鍔部が最下位置に近づいた際に、該付勢手段の付勢力に反して該鍔部の他端を該蓋部から離反させる離反手段とを有することを特徴とする水力駆動装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の水力駆動装置において、
前記水路の放出部に設けられ、前記水車に対する該水路の高さに応じて、該水路から放出される水流の向きが前記蓄水部に流入する向きとなるように、水流の向きを調整する水流偏向部を備えることを特徴とする水力駆動装置。
【請求項5】
請求項4記載の水力駆動装置において、
前記羽根板は、前記水路から放出された水流および前記水車の直下を流れる水流を受けると共に、その先端部に非回転方向に所定の圧力以上で屈曲する屈曲部を備えることを特徴とする水力駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−2150(P2012−2150A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138648(P2010−138648)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【特許番号】特許第4566287号(P4566287)
【特許公報発行日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(509293589)
【Fターム(参考)】