説明

水周り製品の汚れ防止及び意匠性向上方法

【課題】 汚れの付着を防ぎ、水又は温水を流すだけで顕著に汚れを除去することが可能な水周り製品の汚れ防止及び意匠性向上方法を提供すること。前記水周り製品の汚れ防止及び意匠性向上方法に使用する水周り製品用被覆材、及び該水周り製品用被覆材が貼付されてなる水周り製品を提供すること。
【解決手段】
ステンレス鋼、タイル、合成樹脂、陶器又は琺瑯製の水周り製品において、水周り製品の水、温水又は排泄物が接する表面に合成繊維布を貼付して凸模様を施し、水周り製品の汚れを防止するとともに当該製品の意匠性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水周り製品の汚れを防止するとともに当該製品の意匠性を向上させる方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、浴槽、洗い場、壁面、腰掛、洗い桶、風呂蓋、洗面台、便器などにおける水汚れの防止及び意匠性向上方法、該方法に用いる水周り製品用被覆材、及び該被覆材が貼付された水周り製品に関する。
【背景技術】
【0002】
水周り製品では、人の体を清潔に保つため、人体に付着した汚れや人体から排出された汚物を水又は温水で洗い流す場所として人間生活に欠かせない。そのため水周り製品は、様々な汚れで汚染され易い。例えば、浴槽、洗い場、壁面、腰掛、洗い桶、風呂蓋、洗面台等では、土壌、油、食品等の人の活動に応じて付着した汚れに加えて、垢、唾液、鼻汁、便等の汚れで汚染される。また、便器は、糞尿や尿石も発生し易い。
【0003】
これらの水周り製品では、付着した汚れを水や温水で落としやすくするために、表面が滑らかにされているのが一般的である。しかしながら、水周り製品は、日常的に頻繁に汚れが付着され易いため、清潔さを保つために様々な手法が検討されている。例えば、浴室用ぬめり防止装置を設けたり(特許文献1)、便器では、水溶性の紙からなる洗い流し可能な洋式便器の汚れ防止シートもある(特許文献2)。
【0004】
これらの手法はいずれも水周り製品の表面に汚れが付着することをある程度防ぐことは可能であるものの、洗浄することは必要である。浴槽や便器用の洗浄剤としては、多くの商品が市販されている。しかしながら、これらの洗浄剤を用いた場合でも、たわし、スポンジ等により水周り製品の表面をこすれば、表面に傷が発生して、その傷に汚れが付着し易くなるという問題もある。
【0005】
また、従来の水周り製品では、単一色で統一されたものがほとんどである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−237403号公報
【特許文献2】特開2002−233477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑みて、汚れの付着を防ぎ、水又は温水を流すだけで顕著に汚れを除去することが可能な水周り製品の汚れを防止するとともに当該製品の意匠性を向上させる方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記水周り製品の汚れを防止するとともに当該製品の意匠性を向上させる方法に使用する水周り製品用被覆材、及び該水周り製品用被覆材が貼付されてなる水周り製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、水周り製品において、使用することによって付着する様々な汚れを洗浄することなく、清潔に保つ方法を種々検討したところ、滑らかな状態に保たれている水周り製品の表面に凸模様を設けるという、従来とは逆の手法を採用することで、驚くべきことに、汚れの付着を長期間防ぐことが可能になること、さらには凸模様を設けることで、従来平滑な表面が多かった水周り製品の表面に様々なデザインを付すことができ、意匠性を顕著に向上させることが可能になることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、ステンレス鋼、タイル、合成樹脂、陶器又は琺瑯製の水周り製品において、水、温水又は排泄物が接する表面に凸模様を施すことを特徴とする、水周り製品の汚れを防止するとともに当該製品の意匠性を向上させる方法(以下、本発明の方法と略す)に関する。
【0010】
前記凸模様を施す方法としては、水周り製品の前記表面に合成繊維布を貼付する方法が挙げられる。
【0011】
また、本発明の方法では、前記合成繊維布が平織品又はその表面に起毛又は植毛された布製品であることが好ましい。
【0012】
また、前記合成繊維布としては、撥水処理又は防水処理が施されたものであることが好ましい。
【0013】
また、前記合成繊維布としては、ポリエステル、ナイロン、アクリル製から選ばれたものであることが好ましい。また、前記合成繊維布としては、PET製であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の方法では、水周り製品における前記表面以外の部分に合成繊維布を貼付することが好ましい。
【0015】
また、本発明の方法では、前記水周り製品が、浴槽、洗い場、壁面、腰掛、洗い桶、風呂蓋、洗面台、又は便器であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、合成繊維布からなることを特徴とする、水周り製品用被覆材に関する。
【0017】
前記水周り製品用被覆材では、前記合成繊維布が、平織品又はその表面に起毛又は植毛された布製品であることが好ましい。
【0018】
また、前記水周り製品用被覆材では、前記合成繊維布がポリエステル、ナイロン、アクリル製から選ばれたものであることが好ましい。また、前記水周り製品用被覆材では、前記合成繊維布がPET製であることが好ましい。
【0019】
また、前記水周り製品用被覆材の対象とする前記水周り製品は、浴槽、洗い場、壁面、腰掛、洗い桶、風呂蓋、洗面台、又は便器であり、前記水周り製品における、水、温水又は排泄物と接する部分を被覆するためのものであることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、前記水周り製品用被覆材が、水、温水又は排泄物と接する部分の表面に貼付されてなる水周り製品に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の方法により、水周り製品を、頻繁に洗浄剤等で清掃をせずとも水又は温水で洗うだけで、汚れを落として、長期間清潔に保つことが可能になるため、清掃の手間を顕著に軽減することが可能になる。また、本発明の方法により、従来単一色で平滑な水周り製品の表面に凸模様を付することで、水周り製品の意匠性を顕著に向上させることが可能になる。
【0022】
また、本発明の水周り製品用被覆材を水周り製品の表面に貼付すること、特に浴槽内側の底、洗い場の底面、便器の内側等の水周り製品でも汚れがひどい部分に凸模様が表面に施された合成繊維布を貼付したり、又は水回り製品の表面に直接凸模様を付けることで、水周り製品への汚れの付着を防止し、かつ、水又は温水で洗うだけで、前記被覆材表面に付着した汚れを洗い流すことができるため、水周り製品を洗浄剤等で頻繁に清掃をしなくとも、長期間清潔に保つことが可能になる。
【0023】
また、前記水周り製品用被覆材が、水、温水又は排泄物と接する部分の表面に貼付された水周り製品は、排泄物等の汚れに汚染された場合でも、水又は温水で流し洗いをすることで、簡便に汚れを除去することが可能な清潔性に優れたものとなる。さらに凸模様の異なる複数の前記水周り製品用被覆材を組み合わせることで、水周り製品に様々なデザインを施すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】凸模様を施したNo.1〜6の合成樹脂成型プレートの概略説明図。 図中、(a)〜(f)がそれぞれNo.1〜6に対応する。
【図2】浴槽及び風呂蓋における合成繊維布の貼付例。
【図3】浴室の壁面と洗い場における合成繊維布の貼付例。
【図4】腰掛における合成繊維布の貼付例。
【図5】洗い桶における合成繊維布の貼付例。
【図6】洗面台における合成繊維布の貼付例。
【図7】便器における合成繊維布の貼付例。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の方法は、ステンレス鋼、タイル、合成樹脂、陶器又は琺瑯製の水周り製品において、水、温水又は排泄物が接する表面に凸模様を施すことを特徴とする。
【0026】
本発明において、水周り製品とは、日常生活において水を使う場所に設置される製品をいい、例えば、浴槽、洗い場、壁面、腰掛、洗い桶、風呂蓋、洗面台、便器等が挙げられる。
前記水周り製品の素材としては、ステンレス鋼、タイル、合成樹脂、陶器又は琺瑯であればよく、特に限定はない。
【0027】
一般に、水周り製品の表面には、尿、垢、油等の種々の汚れが付着し易い。また、これらの汚れを栄養にしてカビが繁殖して黒ずみを発生したり、細菌が繁殖して赤いしみやヌメリを発生したりする。
本発明では、前記水周り製品の水、温水又は排泄物が接する表面に凸模様を施すことで前記の汚れの付着を防ぎ、また水又は温水で流すだけでも顕著に取り除くことができる。また、上記のようにカビ、細菌等の栄養分となる汚れの付着を防ぐことができるため、黒ずみ、赤いしみ、ヌメリの発生を顕著に予防することができる。
【0028】
本発明において、水又は温水としては、水周り製品で通常使用され得るものであればよく、温度条件としては特に限定はない。
また、本発明において、排泄物とは、糞、尿等に加えて、汗、垢、血液、体液等のヒト由来の汚れ、さらにはヒトの日常生活において付着し得る土、油等、さらにはこれらを洗浄するために使用される洗浄剤成分も含まれる。
【0029】
前記水周り製品の表面に凸模様を施す手段としては、細かな凸模様が施された成型品としたり、又は水周り製品の前記表面に合成繊維布を貼付することが好ましい。
【0030】
また、前記成型品に施された凸部の高さとしては平均5mm以下であることが好ましく、平均2mm以下であることがより好ましい。
前記高さは、目視により測定することができる。
【0031】
凸模様には、前記のような高さを有するものであれば特に限定はない。例えば、平面上に、前記のような高さを有する細かな凸模様を施したものであればよい。
【0032】
前記成型品としては、ステンレス鋼、タイル、合成樹脂、陶器又は琺瑯からなるものであればよい。中でも、成形性に優れるという観点から、塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及び不飽和ポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の合成樹脂からなることが好ましい。特に、前記成型品としては、繊維強化プラスチック(FRP)製であることが好ましい。前記FRPとしては、ガラス繊維、炭素繊維、ケプラーなどの繊維をプラスチックの中に入れて強度を向上したものであればよく、特に限定はない。
【0033】
なお、前記成型品は、表面に凸部を施す以外は、ステンレス鋼、タイル、合成樹脂、陶器、琺瑯等を公知の方法で成型すればよい。例えば、熱可塑性樹脂等の合成樹脂を使い、射出成形により製品を作る場合は、いわゆるインモールド成形法を使用することができる。合成樹脂のかわりにタイル、陶器、琺瑯をインモールド成形することもできる。また、ステンレス鋼の板を所望の凹模様が表面に付された型を用いることで、成型品の表面に凸模様を施すことができる。
【0034】
また、水周り製品の表面に貼付する前記合成繊維布としては、平織品又はその表面に起毛又は植毛された布製品であることが好ましい。平織品としては、合成繊維の縦糸と横糸とを交互に浮き沈みさせて折られた製品をいう。また、起毛した布製品とは、前記合成繊維、綿等で織られた生地の平織品や皮等の表面に、金属やその他の材質のブラシをかけて毛羽立たせた布製品をいう。また、植毛した布製品とは、合成繊維、綿、皮革等から作製された基布に合成繊維を埋め込んだ布製品をいう。植毛した布製品では、水周りの環境に悪影響を与えなければ、公知の接着剤が使用されていてもよい。また、前記植毛された布製品の基布としては、合成繊維の編布、織布又はこれらの組み合わせを用いることもできる。
また、前記平織品としては、後述のように水周り製品の表面との接着面に接着剤を塗布した場合に該接着剤が布の目から出にくいように、布の目が詰まっていることが好ましい。
【0035】
前記合成繊維布としては、メリヤス綿、コールテン綿、ベッチン綿、ポリエステル平織品、ポリエステル起毛品、綿起毛品、ナイロン植毛品、レーヨン植毛品、バックスキン、アクリル起毛品、傘地、レインコート地等が挙げられる。中でも、種々の水周り製品の汚れの付着が顕著に少ないことから、前記合成繊維布はPET製であることが好ましい。
【0036】
また、前記合成繊維布は撥水処理又は防水処理が施されたものであることが好ましい。
撥水処理又は防水処理としては、市販の撥水剤又は防水剤を、前記合成繊維布の表面又は裏面に塗布することで行うことができる。撥水剤及び防水剤は、使用する合成繊維布との適性を考慮して適宜選択すればよい。また、合成繊維布の表面又は裏面を撥水性又は防水性のある合成繊維で構成してもよい。
【0037】
前記合成繊維布を水周り製品に貼付するには接着剤を用いる方法が挙げられる。前記接着剤としては、合成繊維布の材質及び水周り製品の材質を考慮して適宜決定すればよい。例えば、合成繊維布として植毛品、テント時、傘地を使用する場合には接着剤の種類には特に限定はなく、反応硬化型接着剤、ゴム系接着剤、熱可塑性接着剤等が使用できる。
反応硬化型接着剤としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等を主成分とするものが挙げられる。
ゴム系接着剤としては、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、IR、NBR等を主成分とするものが挙げられる。
熱可塑性樹脂系接着剤としては、エチレン酢酸ビニル、塩素化ポリプロピレン、共重合ポリアミド、ポリビニルホルマール等を主成分とするものが挙げられる。
一方、平織品を使用する場合には、エマルジョン系、溶剤系、無溶剤系の接着剤、乾燥形及び反応硬化型の接着剤等が好ましい。中でも、接着剤の塗膜が高粘度で柔軟性のある接着剤を使用することが好ましい。具体的には、反応硬化型接着剤としては、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系接着剤が好ましい。
【0038】
前記合成繊維布の貼付は、例えば、水周り製品の表面に前記接着剤を塗布して、ある程度乾燥させて塗膜を形成させておき、その上に前記合成繊維布を圧着することで貼付することができる。また、接着剤を乾燥させずに前記合成繊維布を圧着してもよい。
また、樹脂フィルムを裏打ちした合成繊維布を使用するときは、水周り製品の表面に接着剤を塗布した上へ貼付することで目的を達成できる。
なお、前記裏打ち用のフィルムとしては、使用する接着剤と密着性のあることが必要であり、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ナイロン共重合物、塩化ビニル等からなるものが挙げられる。
【0039】
以上のように、本発明の方法では、水周り製品における水、温水又は排泄物が接する表面以外の部分に凸模様を施すことで、前記の表面以外に飛散した汚れに対しても対応できるだけでなく、平滑な表面を有する従来品に比べて意匠性が向上された水周り製品を得ることができる。
例えば、浴槽、浴室内部の壁面等の水周りは、家庭においては、色が統一されているのが一般的であるが、浴槽の内部、外部や壁面に、様々な模様、色をあらかじめ付した合成繊維布を張ることで、今までとは全く異なる外観を有する浴槽、浴室とすることができる。
【0040】
また、本発明は、前記のような合成繊維布からなることを特徴とする水周り製品用被覆材に関する。
【0041】
前記水周り製品用被覆材では、前記合成繊維布が、平織品又はその表面に起毛又は植毛された布製品であることが好ましい。平織品、起毛又は植毛された布製品は、前記水周り製品の汚れ防止方法で使用されるものと同じであればよい。また、前記水周り製品用被覆材では、前記合成繊維布がPET製であることが好ましい。
【0042】
前記水周り製品用被覆材は、表面が前記のように平織品、起毛又は植毛された布製品であればよく、裏地には別の素材であってもよい。また、前記被覆材の裏地は、水周り製品の表面の素材に応じた接着剤等が付着し易い素材であればよい。また、合成繊維布の裏地として熱可塑性樹脂フィルムを重ねて裏打ちした物でもよい。
【0043】
前記水周り製品用被覆材の対象とする前記水周り製品は、浴槽、洗い場、壁面、腰掛、洗い桶、風呂蓋、洗面台、又は便器であり、中でも、前記水周り製品における、水、温水又は排泄物と接する部分を被覆することに使用される。
【0044】
また、本発明は、前記水周り製品用被覆材が、水、温水又は排泄物と接する部分の表面に貼付されてなる水周り製品に関する。このような水周り製品は、水汚れが付きにくいため、清潔さを保ち易いだけでなく、前記被覆材の貼付する位置を変えたり、着色された被覆材を組み合わせたり、所望の模様等が付された被覆材を用いることで、生活環境において、様々な新しい空間を作り出すことが可能になる。例えば、癒し効果、リラックス効果、高揚効果を得られるような模様や色を選択することができるし、様々な動物、景色、キャラクター等を付すことで意外性のある空間とすることができる。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
涛和化学(株)大阪工場内に設置された、一日平均10人が入浴する内外面タイル貼りの風呂(幅1020mm、長さ1400mm、深さ600mm)の浴槽表面に下記被覆材を両面テープで貼付して垢などの汚れの付着の程度を調べた。
(被覆材)
・硬質塩化ビニル板(黒色、幅50cm、長さ50cm、厚み1.5mm)
・表面に図1に示すような凸模様(凸部の高さは1mm以下)を施したNo.1〜6の合成樹脂成型プレート(ポリプロピレン製)。なお、合成樹脂の材質は全て出光石油化学(株)PP T−6083HPグレードのものを用いた。
また、No.1の合成樹脂成型プレートには、約1mm以下の細かい多角模様が表面に施されている。No.2の合成樹脂成形プレートの表面には、約1mmの略U字型の凸部が直線状に設けられている。No.3の合成樹脂成形プレートの表面には、断面が山形の凸部が直線状に設けられ、該直線の長さは不規則になっている。No.4の合成樹脂成形プレートの表面には、略正方形の格子状の凸部が設けられている。No.5の合成樹脂成形プレートの表面には、略正方形の凸部が設けられ、三角形、正方形、六角形及び大小2つの円形の貫通孔が設けられている。No.6の合成樹脂成形プレートの表面には、不規則な形の凸部が設けられ、三角形、正方形、六角形及び大小2つの円形の貫通孔が設けられている。
【0046】
夕方2時間ほどで入浴後、浴槽内の水は翌朝まで放置した後に捨て、水洗いをしておき、入浴前に温水を入れるようにした。
硬質塩化ビニル板は、1日で薄く垢の付着が見られ、2日目ではっきりと薄黒い汚れを目視で確認できた。
一方、No.1〜6の被覆材には1〜2週間後では垢などの汚れの付着が全く見られず、3週間後でも確認できなかった。
【0047】
(実施例2)
実施例1と同じように風呂の浴槽の表面に、下記被覆材を貼付して、その汚れ具合を調べた。結果を表1に示す。なお、下記被覆剤♯2〜14は、布地専門店((株)とらや商店)から購入した。
(被覆材)
・♯1: 硬質塩化ビニル板(実施例1で用いたのと同じもの)
・♯2: メリヤス綿製品
・♯3: コールテン綿製品
・♯4: ベッチン綿製品
・♯5: ポリエステル平織品
・♯6: 綿起毛品
・♯7: ポリエステル起毛品
・♯8: ナイロン起毛品
・♯9: レーヨン植毛品
・♯10: バックスキン
・♯11: ポリエステル製クッション表地
・♯12: アクリル起毛品
・♯13: ナイロン製傘地
・♯14: レインコート地
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示す結果より、♯2〜♯14に示す合成繊維生地には1週間後では垢の付着はほとんど認められなかった。中でも、♯2メリヤス綿製品、♯4ベッチン綿製品、♯5ポリエステル平織品、♯6綿起毛品、♯7ポリエステル起毛品、♯8ナイロン起毛品、♯11ポリエステル製クッション表地及び♯12アクリル起毛品はいずれも6週間後でも垢の付着が認められず、水洗いをするだけでも十分な清潔さを保っていることがわかる。
【0050】
(実施例3)
実施例2で使用した合成繊維布のうち、♯2メリヤス綿製品、♯5ポリエステル平織品、♯6綿起毛品、♯7ポリエステル起毛品(防水処理済み)、♯9レーヨン植毛品、♯12アクリル起毛品、♯13ナイロン製傘地に加えて、ナイロン植毛品及びポリエステル植毛品(いずれも(株)とらや商店から購入)を被覆材として使用した。
前記被覆材を幅20cm、長さ30cmに裁断したものを市販の洗面台の洗面、流し部分に両面テープを用いて貼付し、蛇口より水を流し、洗面口のすすぎを行い、汚れ具合を調べた。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
表2の結果より、ナイロン植毛品、ポリエステル平織品、ポリエステル植毛品、傘地、アクリル起毛品は、いずれも吸水の程度が顕著に低く、水の流れも良好で、汚物の付着もしなかった。
【0053】
(実施例4)
硬質塩化ビニル板(幅50cm、長さ1mm)の表面に、実施例4と同じ合成繊維布を幅30cm、長さ50cmに裁断したものを貼付した。それを垂直に立てて、男子用小便器の代わりにテストした。その表面に対して、ハンドスプレー機に水を入れ、水鉄砲のようにして水を吐出させた。結果を表3に示す。
【0054】
【表3】

【0055】
表3の結果より、アクリル起毛品、ポリエステル平織品、ポリエステル植毛品は、いずれも吸水なく流れも良好であることがわかる。
【0056】
(実施例5)
エポキシ樹脂を主成分とする接着剤にポリアミド硬化剤(いずれも(株)アデカ製)を100:30の割合で混ぜたものを、実施例1で使用した浴槽表面に塗布し、常温で60分置いて、塗膜の6〜7割程度を乾燥させた。前記塗膜に合成繊維生地♯2〜♯14を手で圧着させて、90分程度で貼付させた。前記合成繊維生地♯2〜♯14はいずれも接着性よく貼付されていた。
【0057】
(実施例6)
水周り製品への合成繊維布の貼付例を 図2〜9に示す。
図2は、浴槽1及び風呂蓋2の概略図であり、浴槽1の内側表面全面と風呂蓋2の表面に合成繊維布3が貼付されている。また、浴槽1の内側表面の合成繊維布3と、風呂蓋2の表面の合成繊維布3とは同一の素材であっても、別の素材のものとすることもできる。また、浴槽1の外側にも合成繊維布は貼付されていてもよい。
図3は、浴槽1が設置された浴室の内部の概略図であり、浴室の壁面4と洗い場5の表面に合成繊維布3が貼付されている。
図4は、浴室で使用される腰掛6の概略図であり、腰掛6の表面に合成繊維布3が貼付されている。
図5は、洗い桶7の概略図であり、内面に合成繊維布3が貼付されている。外面にも合成繊維布3は貼付されていてもよい。また、内面と外面の合成繊維布は同一の素材であっても別の素材のものとしてもよい。
図6は、洗面台8の概略図であり、洗面ボウル9内面とカウンター10の表面全域に合成繊維布3が貼付されている。
図7は便器11の概略図であり、排泄物等で汚染される内面に合成繊維布3が貼付されている。必要であれば便器11の外面や、便器の蓋(図示せず)にも合成繊維布3は貼付してもよい。また、便器11の内面と外面の合成繊維布は同一の素材であっても別の素材のものとしてもよい。
【0058】
図2〜7においては、合成繊維布3を2種以上使用し、さらに所望の形に裁断して組み合わせて貼付することで、従来品のように平滑で単一色に比べると、表面に様々な変化があり、しかもいろいろな色の組み合わせも可能になることから、意匠性を顕著に向上させた水周り製品とすることができる。
【0059】
なお、 図2〜7において、合成繊維布を貼付するかわりに、ステンレス鋼、タイル、合成樹脂、陶器又は琺瑯等の素材からなる各水周り製品の表面に所望の凸模様を付与するような型で成型加工したものでも同様の効果が得られることは明らかである。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、 図1〜7に示すのは本発明の水周り製品の一例であり、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えて、実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
1 浴槽 2 風呂蓋
3 合成繊維布 4 壁面
5 洗い場 6 腰掛
7 洗い桶 8 洗面台
9 洗面ボウル 10 カウンター
11 便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼、タイル、合成樹脂、陶器又は琺瑯製の水周り製品において、水、温水又は排泄物が接する表面に合成繊維布を貼付して、凸模様を施すことを特徴とする水周り製品の汚れを防止するとともに当該製品の意匠性を向上させる方法。
【請求項2】
前記合成繊維布が平織品又はその表面に起毛又は植毛された布製品である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記合成繊維布が撥水処理又は防水処理が施されたものである請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記合成繊維布が、ポリエステル、ナイロン、アクリル製から選ばれたものである請求項1〜3のいずれか記載の方法。
【請求項5】
前記合成繊維布が、PET製である請求項1〜3のいずれか記載の方法。
【請求項6】
水周り製品における前記表面以外の部分に合成繊維布を貼付する請求項1〜5いずれか記載の方法。
【請求項7】
前記水周り製品が、浴槽、洗い場、壁面、腰掛、洗い桶、風呂蓋、洗面台、又は便器である請求項1〜6いずれか記載の方法。
【請求項8】
合成繊維布からなることを特徴とする水周り製品用被覆材。
【請求項9】
前記合成繊維布が、平織品又はその表面に起毛又は植毛された布製品である請求項8記載の水周り製品用被覆材。
【請求項10】
前記合成繊維布が、ポリエステル、ナイロン、アクリル製から選ばれたものである請求項8又は9記載の水周り製品用被覆材。
【請求項11】
前記合成繊維布が、PET製である請求項8又は9記載の水周り製品用被覆材。
【請求項12】
前記水周り製品が、浴槽、洗い場、壁面、腰掛、洗い桶、風呂蓋、洗面台、又は便器であり、前記水周り製品における、水、温水又は排泄物と接する部分を被覆するための請求項8〜11いずれか記載の水周り製品用被覆材。
【請求項13】
請求項8〜12いずれか記載の水周り製品用被覆材が、水、温水又は排泄物と接する部分の表面に貼付されてなる水周り製品。








【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−229955(P2011−229955A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154616(P2011−154616)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【分割の表示】特願2009−20136(P2009−20136)の分割
【原出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000236045)
【Fターム(参考)】