説明

水圧システム及び食品加工装置

【課題】加圧作動水によって洗浄することができる水圧システム。
【解決手段】
加圧作動水を水圧アクチュエータ(33、43)に導く作動水供給回路(60、70)と、加圧作動水を作動水供給回路(60、70)を経由して水圧アクチュエータ(33、43)に供給する水圧ユニット(10)、とを備える水圧システムにおいて、作動水供給回路(60、70)から分岐して設けられる開閉弁(31、41)と、開閉弁(31、41)が開放されたときに、加圧作動水を水圧アクチュエータ(33、43)付近に噴射するノズル(32、42)と、開閉弁(31、41)の開閉を制御する制御装置(100)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水圧で駆動する水圧システム及び被加工食品を加工する食品加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の搬送や加工を行う食品加工装置において、その使用環境から清浄性や衛生性への要求により、従来から存在する駆動源である電動、空気圧又は油圧に代えて、水圧を駆動源とする水圧アクチュエータを用いて食品を加工するものが知られている。
【0003】
引用文献1は、水圧モータと水圧シリンダとによって昇降割出テーブルを昇降させる水圧駆動式昇降割出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−344477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
食品を加工する装置は高い衛生性が要求されるため、加工工程とは別に洗浄作業が必要となる。洗浄作業は、一般的に手作業で行われるため、洗浄における工程が増え、コストが上昇する。また、刃物等の加工部を手作業で洗浄することによる危険度も増加する。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、コストを上昇することなく、また人手による危険な作業を省略することができる水圧システムを提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、加圧作動水を水圧アクチュエータに導く作動水供給回路と、加圧作動水を作動水供給回路を経由して水圧アクチュエータに供給する水圧ユニット、とを備える水圧システムにおいて、作動水供給回路から分岐して設けられる開閉弁と、開閉弁が開放されたときに、加圧作動水を水圧アクチュエータ付近に噴射するノズルと、開閉弁の開閉を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水圧アクチュエータの駆動に用いられる加圧作動水をノズルから噴射して水圧アクチュエータの洗浄を行うので、水圧システムの洗浄のための装置を別に設ける必要がなく、また、人手による作業を省略でき、コストを上昇させることなく、また危険を伴うことなく、水圧システムを洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態の食品加工装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態の食品加工装置1の説明図である。
【0012】
食品加工装置(水圧システム)1は、被加工食品(ワーク)を搭載したステージ(図示せず)を昇降する昇降部20、ワークを搭載したステージを搬送する搬送部30、ワークを切削加工する加工部40を備える。
【0013】
昇降部20、搬送部30及び加工部40は、以降に説明するように、タンク11に貯留された水(上水道水、清水)を加圧して供給する水圧ユニット10によって供給された加圧作動水によって動作する。
【0014】
昇降部20は、二つの水圧シリンダ21及び22を備える。水圧シリンダ21及び22は、水圧ユニット10から水の供給を受けて伸縮する。これにより、ステージが昇降し、ワークを目的の高さ位置に移動にさせる。
【0015】
搬送部30は、水圧シリンダ33を備える。水圧シリンダ33は、水圧ユニット10から水の供給を受けて伸縮する。これにより、ステージを所定の位置に搬送する。なお水圧シリンダ33の周辺には位置センサ34、35が備えられており、水圧シリンダ33の伸縮を検出して、ステージの搬送位置を特定する。
【0016】
搬送部30は、電磁開閉弁31及び洗浄ノズル32を備える。洗浄ノズル32は、水圧シリンダ33に水圧ユニットから供給される水を噴射して、水圧シリンダ33の周辺を洗浄する。
【0017】
加工部40は、水圧モータ43を備える。水圧モータ43は、水圧ユニット10から水の供給を受けて回転する。水圧モータ43の回転軸にはカッター44が取付けられている。カッター44は、水圧モータ43の回転によって回転し、ステージに搭載されたワークを切削する。
【0018】
加工部40は、電磁開閉弁41及び洗浄ノズル42を備える。洗浄ノズル42は、水圧モータ43及びカッター44に水圧ユニット10から供給される水を噴射して、水圧モータ43及びカッター44を洗浄する。
【0019】
水圧ユニット10は、昇降部20、搬送部30及び加工部40に、加圧した水を供給する。水圧ユニット10の動作は、コントローラ100によって制御される。
【0020】
水圧ユニット10は、昇降部制御回路50、搬送部制御回路60、加工部制御回路70、冷却水回路80、給水回路90を備える。
【0021】
昇降部制御回路50は、タンク11の水を加圧して昇降部制御回路50に供給するか、昇降部制御回路50の加圧された水によって回転される水圧ポンプモータ52と、水圧ポンプモータ52を正逆方向に回転駆動するサーボモータ51と、昇降部制御回路50が所定圧力以上になった場合に回路をドレン側にバイパスして圧力を減衰させるリリーフバルブ53と、昇降部制御回路50の圧力を計測する圧力計54と、昇降部制御回路50に流通する水を一方向のみに流通させる逆止弁55と、昇降部20の水圧シリンダ21、22に水を供給するか、水の流通を停止して水圧シリンダ21、22を停止するかを制御する2−2方向切換弁57と、チェックバルブ56と、を備える。
【0022】
搬送部制御回路60は、タンク11の水を加圧して搬送部制御回路60に供給する水圧ポンプ62と、水圧ポンプ62を回転駆動させるインバータモータ61と、チェックバルブ63と、搬送部制御回路60が所定圧力以上になった場合に回路をドレン側にバイパスして圧力を減衰させるリリーフバルブ64と、搬送部制御回路60の圧力を計測する圧力計65と、搬送部30の水圧シリンダ33の伸張側に水を供給するか、縮退側に水を供給するか、水の流通を停止して水圧シリンダ33を停止するかを制御する4−3方向切換弁66と、を備える。
【0023】
加工部制御回路70は、タンク11の水を加圧して加工部制御回路70に供給する水圧ポンプ72と、水圧ポンプ72を回転駆動させるインバータモータ71と、チェックバルブ73と、加工部制御回路70が所定圧力以上になった場合に回路をドレン側にバイパスして圧力を減衰させるリリーフバルブ74と、加工部制御回路70の圧力を計測する圧力計75と、加工部40の水圧モータ43に水を供給するか、水の流通を停止して水圧モータ43を停止するかを制御する2−2方向切換弁76と、を備える。
【0024】
冷却水回路80は、加工部制御回路70のドレン側の回路に備えられる熱交換器81と、熱交換器81に冷却水を供給するか冷却水の供給を停止するかを制御する電磁弁82と、フィルタ83とを備える。
【0025】
給水回路90は、加工部制御回路70のドレン側の回路に備えられる圧力スイッチと、タンク11に水を給水するか給水を停止するかを制御するバルブ92と、フィルタ84とを備える。
【0026】
また、タンク11には、液面計93、温度スイッチ94、レベルスイッチ95、エアブリーザ96と、タンク11内の水を排出可能なストップバルブ97と、オーバーフロー98とが備えられている。
【0027】
コントローラ100は、水圧ユニット10の動作を制御することによって、昇降部20、搬送部30及び加工部40の動作を制御する。
【0028】
昇降部制御回路50において、コントローラ100は、圧力計54の計測値を入力して、入力された値に基づいてサーボモータ51及び2−2方向切換弁57を制御して、予め設定された制御シーケンスに従って昇降部20の動作を制御する。
【0029】
また、搬送部制御回路60において、コントローラ100は、圧力計65の計測値を入力して、入力された値に基づいてインバータモータ61及び4−3方向切換弁66を制御して、予め設定された制御シーケンスに従って搬送部30の動作を制御する。
【0030】
また、加工部制御回路70において、コントローラ100は、圧力計75の計測値を入力して、入力された値に基づいてインバータモータ71及び2−2方向切換弁76を制御して、予め設定された制御シーケンスに従って加工部40の動作を制御する。
【0031】
また、冷却水回路80において、コントローラ100は、温度スイッチ94の計測値を入力して、入力された値に基づいて電磁弁82を開閉して冷却水の流入を制御する。なお、温度スイッチ94の動作に応動して電磁弁82が開閉するようにしてもよい。
【0032】
液面計93は、タンク11内の水の量を検出する。レベルスイッチ95は、タンク11内の水の液面に応じて接点をオン、オフする。エアブリーザ96は、タンク11から空気を排出する。ストップバルブ97は、人手によって開放されることによってタンク11内の水を強制的に排出する。オーバーフロー98は、タンク11の水の量が所定量を超えた場合に、水を排出する。
【0033】
次に、コントローラ100による、食品加工装置1の洗浄について説明する。
【0034】
前述のように、コントローラ100は、水圧ユニット10を制御して、昇降部20、搬送部30及び加工部40の動作を制御する。
【0035】
また、コントローラ100は、搬送部30及び加工部40に設けられている洗浄ノズル32、42から水を噴射して、搬送部30及び加工部40の付近を洗浄する。
【0036】
具体的には、搬送部30を洗浄する場合は、コントローラ100は、電磁開閉弁31を開側に制御する。これにより洗浄ノズル32に加圧された水が供給される。洗浄ノズル32によって水が噴射され、搬送部30付近を洗浄する。
【0037】
また、加工部40を洗浄する場合は、コントローラ100は、電磁開閉弁41を開側に制御する。これにより洗浄ノズル42に加圧された水が供給される。洗浄ノズル42によって水が噴射され、加工部40付近を洗浄する。
【0038】
洗浄ノズル32、42から噴射される水は、水圧ユニット10の水圧ポンプ62、72によって加圧されているので、搬送部30及び加工部40の付着物を容易に洗浄することができる。また、コントローラ100がこれら水圧ポンプ62、72による圧力を制御することにより、洗浄ノズル32、42から噴射される水勢を制御することができ、洗浄力を制御することができる。
【0039】
以上のように本発明の実施形態は、食品加工装置1において、昇降部20、搬送部30及び加工部40を動作させるそれぞれの駆動部を、水圧アクチュエータである水圧シリンダ21、22、33及び水圧モータ43によって構成した。そして、昇降部20、搬送部30及び加工部40を動作させる水圧アクチュエータに加圧作動水を導く作動水供給回路である昇降部制御回路50、搬送部制御回路60及び加工部制御回路70に加圧作動水を供給する水圧ユニット10を備えた。
【0040】
このように、従来採用されていた電動、空気圧又は油圧による駆動方式を、水圧に置き換えることによって、従来の駆動方式での問題点を解消することができる。
【0041】
例えば、電力を駆動源とするモータ等の電動アクチュエータでは、水滴が発生する場所では防水カバー等が必要となり装置が大型化する。また、大きな駆動力を得るためにはモータや制御装置等を大型化する必要という問題がある。空気圧を駆動源とする空気圧アクチュエータは、大きな駆動力を得ることが難しく、エネルギー効率という観点からは問題がある。油圧を駆動源とする油圧アクチュエータは、食品という衛生環境上では作動油の漏れや供給、廃棄等にコストがかかるという問題がある。
【0042】
さらに、これら複数の駆動方式を組み合わせて利用する場合は、それぞれの駆動を制御する制御装置が個別に必要となり、装置が大型化したり、保守の管理の煩雑さが増加する。
【0043】
これに対して、本発明の実施形態では、加圧作動水を駆動源とする水圧アクチュエータである水圧シリンダ21、22、33及び水圧モータ43を用いたので、駆動源の管理の一元化、装置の省スペース化、装置の衛生対策が容易となる。
【0044】
そしてさらに、本発明の実施形態では、これら水圧アクチュエータである水圧シリンダ21、22、33及び水圧モータ43を駆動するための加圧作動水を用いて、水圧アクチュエータ付近を洗浄するように構成した。洗浄時に、コントローラ100が電磁開閉弁31、41を開成して洗浄ノズル32、42から加圧駆動水を噴射することによって、水圧アクチュエータ付近を洗浄することができる。
【0045】
このように構成することによって、食品加工装置1における食品加工工程と平行して又は同時に、洗浄工程を実行することができる。洗浄工程はコントローラ100の制御によって任意に行うことができる。また、加圧駆動水は上水道等の清浄な水を用いるので、食品加工装置1の衛生性を保つことができる。
【0046】
また、このように構成することによって、人手による洗浄作業の代わりを自動的に実行することができるので、ライフサイクルアセスメントの観点から、食品加工装置1を維持するためのコストを削減することができる。
【0047】
また、洗浄ノズル32、42によって被洗浄される水圧シリンダ33、水圧モータ43等は、作動水と同一の水によって洗浄されるため、洗浄による不具合を考慮する必要がない。
【0048】
なお、本実施形態では、搬送部30及び加工部40に、それぞれ洗浄ノズル32、42を設けたが、このような構成に限られず、洗浄が要求される場所に個別に洗浄ノズルを設けてもよい、また、洗浄ノズル32、42の先端を可動として、さらに広範囲を洗浄するように構成してもよい。
【0049】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1 食品加工装置(水圧システム)
10 水圧ユニット
11 タンク
20 昇降部
30 搬送部
31 電磁開閉弁
32 洗浄ノズル
40 加工部
41 電磁開閉弁
42 洗浄ノズル
100 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧作動水を水圧アクチュエータに導く作動水供給回路と、加圧作動水を前記作動水供給回路を経由して前記水圧アクチュエータに供給する水圧ユニット、とを備える水圧システムにおいて、
前記作動水供給回路から分岐して設けられる開閉弁と、
前記開閉弁が開放されたときに、加圧作動水を前記水圧アクチュエータ付近に噴射するノズルと、
前記開閉弁の開閉を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする水圧システム。
【請求項2】
加圧作動水は、上水道水を用いることを特徴とする請求項1に記載の水圧システム。
【請求項3】
加圧作動水を水圧アクチュエータに導く作動水供給回路と、加圧作動水を前記作動水供給回路を経由して前記水圧アクチュエータに供給する水圧ユニットと、を備え、前記水圧アクチュエータによって食品を加工する食品加工装置において、
前記作動水供給回路から分岐して設けられる開閉弁と、
前記開閉弁が開放されたときに、加圧作動水を前記水圧アクチュエータ付近に噴射するノズルと、
前記開閉弁の開閉を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする食品加工装置。

【図1】
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