説明

水封トラップ装置

【課題】燃焼ガス通路に設けられた潜熱回収型熱交換器で発生するドレン水を排水するドレン通路8に、燃焼ガスがドレン通路に流れないように介設される水封トラップ装置であって、排気閉塞を生じても燃焼ガスがドレン通路に流れることを確実に防止できるようにしたものを提供する。
【解決手段】ドレン通路8の上流側部分8aに連通する流入口91を有する貯留容器90と、流入口91よりも所定高さ上方に位置する貯留容器90内の部分に開口する、ドレン通路8の下流側部分8bに連通する排水口92と、貯留容器90に装着され、排水口92を閉塞する閉じ側と排水口92を開放する開き側とに変位自在な弁蓋93と、弁蓋93の排水口92に対向する面とは反対側の面に対面する背圧室94と、背圧室94に燃焼ガス通路内のガス圧を導入して弁蓋93を閉じ側に押圧する背圧通路95とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナからの燃焼ガスが流れる燃焼ガス通路に設けられた潜熱回収型熱交換器で発生するドレン水を排水するドレン通路に、燃焼ガスがドレン通路に流れないように介設される水封トラップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の水封トラップ装置として、ドレン通路の上流側部分に連通する流入口を有するドレン水の貯留容器内に、流入口よりも上方にのびる仕切壁を立設し、流入口から流入したドレン水が仕切壁の上端からオバーフローして、貯留容器の仕切壁の外側の底面部分に開設した排水口からドレン通路の下流側部分に排水されるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。これによれば、貯留容器内のドレン水の液面が流入口より高い仕切壁の上端に一致し、流入口が水封されて、燃焼ガスが流入口から侵入しなくなる。
【0003】
ところで、排気閉塞(燃焼ガス通路に連なる排気筒の閉塞)を生ずると、燃焼ガス通路内のガス圧が上昇する。そして、上記従来例のものでは、排気閉塞によって燃焼ガス通路内のガス圧が仕切壁の上端と流入口との間のヘッド圧差以上に上昇すると、燃焼ガスが流入口から侵入してしまい、燃焼ガスがドレン通路に流れることを防止できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−141309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、排気閉塞を生じても燃焼ガスがドレン通路に流れることを確実に防止できるようにした水封トラップ装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、バーナからの燃焼ガスが流れる燃焼ガス通路に設けられた潜熱回収型熱交換器で発生するドレン水を排水するドレン通路に、燃焼ガスがドレン通路に流れないように介設される水封トラップ装置であって、ドレン通路の上流側部分に連通する流入口を有するドレン水の貯留容器と、流入口よりも所定高さ上方に位置する貯留容器内の部分に開口する、ドレン通路の下流側部分に連通する排水口と、貯留容器に装着され、排水口を閉塞する閉じ側と排水口を開放する開き側とに変位自在な弁蓋と、弁蓋の排水口に対向する面とは反対側の面に対面する背圧室と、背圧室に燃焼ガス通路内のガス圧を導入する背圧通路とを備え、背圧室に導入されるガス圧により弁蓋が閉じ側に押圧されるようにしたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、燃焼ガス通路内のガス圧により、ドレン通路の上流側部分から貯留容器内のドレン水を介して弁蓋が開き側に押圧されるが、背圧通路を介して背圧室に導入される燃焼ガス通路内のガス圧により、弁蓋が閉じ側にも押圧される。そのため、排気閉塞で燃焼ガス通路内のガス圧が上昇して、弁蓋に作用する開き側への押圧力が増加しても、その分だけ弁蓋に作用する閉じ側への押圧力が増加して、排水口は閉塞状態に維持され、貯留容器内にドレン水が封じ込められる。従って、排気閉塞を生じても燃焼ガスがドレン通路に流れることを確実に防止できる。
【0008】
尚、背圧通路は、潜熱回収型熱交換器を配置した燃焼ガス通路の部分から分岐させてもよいが、これでは、潜熱回収型熱交換器の配置部とドレン水封装置との間の距離が長くなった場合、背圧通路の配管長さも長くなってしまう。これに対し、背圧通路をドレン通路の上流側部分から分岐すれば、背圧通路の分岐箇所を水封トラップ装置の近傍にすることで、背圧通路の配管長さを可及的に短くでき、コストダウンを図る上で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】水封トラップ装置を具備する熱源機の一例を示す概略図。
【図2】本発明の実施形態の水封トラップ装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照して、1は給湯用の熱源機を示している。熱源機1は缶体2を備えており、この缶体2内の下部にはバーナ3が設置されている。缶体2の下面には、バーナ3の燃焼用空気を供給する燃焼ファン4が接続されている。また、缶体2内の上下方向中間部には、バーナ3からの燃焼ガスの顕熱を回収する主熱交換器5が設置されている。更に、主熱交換器5を通過した燃焼ガスが流れる缶体2内の上部の燃焼ガス通路2aには、燃焼ガスの潜熱を回収する潜熱回収型の副熱交換器6が設置されている。そして、副熱交換器6の上流側の給水管6aからの水を副熱交換器6で加熱した後、主熱交換器5で更に加熱して、主熱交換器5の下流側の出湯管5aに所定の設定温度の湯が出湯されるようにしている。
【0011】
缶体2の上端には、燃焼ガス通路2aに連通する排気口2bが開設されている。そして、排気口2bに図示省略した排気筒を接続し、燃焼ガスを排気筒を介して屋外に排出するようにしている。
【0012】
副熱交換器6の下側には、副熱交換器6での燃焼ガス中の水蒸気の凝縮で発生するドレン水を受け止めるドレン受け7が設けられており、このドレン受け7に、ドレン水を排水するドレン通路8が接続されている。ドレン通路8には、燃焼ガスがドレン通路8に流れることを防止する水封トラップ装置9が介設されている。
【0013】
この水封トラップ装置9は、図2に示す如く、ドレン通路8の上流側部分8aに連通する側面下部の流入口91を有するドレン水の貯留容器90を備えている。この貯留容器90内には、その底面から上方にのび、流入口91よりも所定高さ上方に位置する貯留容器90内の部分に開口する上端の排水口92を有する筒部90aが立設されている。そして、筒部90aの下端にドレン通路8の下流側部分8bを接続し、排水口92が筒部90aを介してドレン通路8の下流側部分8bに連通するようにしている。これによれば、貯留容器90内のドレン水の液面が排水口92と同じ高さになり、排水口92より低い流入口91が水封されて、流入口91からの燃焼ガスの侵入が阻止される。
【0014】
然し、このままでは、排気閉塞(排気筒の閉塞)により燃焼ファン4からの送風圧で燃焼ガス通路2a内のガス圧が上昇すると、ドレン通路8の上流側部分8aに溜ったドレン水が押し下げられ、ガス圧が排水口92と流入口91との間のヘッド圧差以上になると、流入口91から燃焼ガスが侵入してしまう。
【0015】
そこで、本実施形態の水封トラップ装置9は、更に、貯留容器90に装着され、排水口92を閉塞する閉じ側と排水口92を開放する開き側とに変位自在な弁蓋93と、弁蓋93の排水口92に対向する面(下面)とは反対側の面(上面)に対面する背圧室94と、背圧室94に燃焼ガス通路2a内のガス圧を導入する背圧通路95とを備えている。
【0016】
尚、本実施形態では、弁蓋93を、背圧室94を画成するカバー94aの下端のフランジ部94bと貯留容器90の上端のフランジ部90bとの間に周縁部を挟み込んだダイヤフラムで構成している。また、背圧通路95を、ドレン通路8の上流側部分8aから分岐している。
【0017】
ここで、弁蓋93の下面には、ドレン通路8の上流側部分8aと貯留容器90内のドレン水とを介して燃焼ガス通路2a内のガス圧が作用し、このガス圧によって弁蓋93が上方の開き側に押圧される。また、弁蓋93の上面には、背圧通路95と背圧室94とを介して燃焼ガス通路2a内のガス圧が作用し、このガス圧で弁蓋93が下方の閉じ側に押圧される。そのため、排気閉塞で燃焼ガス通路2a内のガス圧が上昇して、弁蓋93に作用する開き側への押圧力が増加しても、その分だけ弁蓋93に作用する閉じ側への押圧力が増加し、排水口92は閉塞状態に維持されて、貯留容器90内にドレン水が封じ込められる。従って、排気閉塞で燃焼ガス通路2a内のガス圧がどれだけ上昇しても、燃焼ガスがドレン通路8に流れることを確実に防止できる。
【0018】
尚、排水口92が弁蓋93で閉塞される状態では、弁蓋93の下面の受圧面積が上面の受圧面積よりも排水口92の開口面積分だけ小さくなり、この開口面積にガス圧を乗じた分だけ弁蓋93に作用する閉じ側への押圧力が開き側への押圧力を上回る。そのため、ドレン通路8の上流側部分8aに溜るドレン水の液面の排水口92からの高さが、弁蓋93の閉じ側への押圧力と開き側への押圧力との差以上のヘッド圧差を生ずる所定高さhに達するまでは、排水口92が閉塞状態に維持される。そして、上流側部分8aのドレン水の液面が所定高さhに上昇したところで、弁蓋93が開き側に変位して、排水口92からドレン水が排水され、上流側部分8aのドレン水の液面が排水口92と同じ高さに低下したところで、弁蓋93が閉じ側に変位して、排水口92が閉塞される。
【0019】
ところで、背圧通路95を、副熱交換器6を配置した燃焼ガス通路2aの部分、即ち、缶体2の上部から分岐させることも可能である。然し、これでは、熱源機1内の部品レイアウトの関係で、水封トラップ装置9を缶体2上部からかなり離れた位置に配置する場合、背圧通路95の配管長さもかなり長くなってしまう。
【0020】
これに対し、本実施形態の如く、背圧通路95をドレン通路8の上流側部分8aから分岐する場合は、背圧通路95の分岐箇所を水封トラップ装置9の近傍にすることで、背圧通路95の配管長さを可及的に短くでき、コストダウンを図る上で有利である。
【0021】
また、ドレン水は、燃焼ガス中の窒素酸化物等の溶け込みで酸性になる。そのため、図示しないが、貯留容器90に中和剤を充填し、或いは、ドレン通路8の下流側部分8bに中和器を介設し、ドレン水を中和して排水することが望ましい。
【0022】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、弁蓋93をダイヤフラムで構成しているが、貯留容器90を排水口92よりも上方にのびる筒状のシリンダ部を有するものとし、このシリンダ部内に摺動自在に装着するピストンで弁蓋を構成し、弁蓋の上側のシリンダ部内の空間で背圧室を構成してもよい。また、上記実施形態は、給湯用熱源機1の水封トラップ装置9に本発明を適用したものであるが、潜熱回収型熱交換器を備える給湯用以外の燃焼装置の水封トラップ装置にも本発明は広く適用できる。
【符号の説明】
【0023】
2a…燃焼ガス通路、3…バーナ、6…副熱交換器(潜熱回収型熱交換器)、8…ドレン通路、8a…ドレン通路の上流側部分、8b…ドレン通路の下流側部分、9…水封トラップ装置、90…貯留容器、91…流入口、92…排水口、93…弁蓋、94…背圧室、95…背圧通路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナからの燃焼ガスが流れる燃焼ガス通路に設けられた潜熱回収型熱交換器で発生するドレン水を排水するドレン通路に、燃焼ガスがドレン通路に流れないように介設される水封トラップ装置であって、
ドレン通路の上流側部分に連通する流入口を有するドレン水の貯留容器と、流入口よりも所定高さ上方に位置する貯留容器内の部分に開口する、ドレン通路の下流側部分に連通する排水口と、貯留容器に装着され、排水口を閉塞する閉じ側と排水口を開放する開き側とに変位自在な弁蓋と、弁蓋の排水口に対向する面とは反対側の面に対面する背圧室と、背圧室に燃焼ガス通路内のガス圧を導入する背圧通路とを備え、背圧室に導入されるガス圧により弁蓋が閉じ側に押圧されるようにしたことを特徴とする水封トラップ装置。
【請求項2】
前記背圧通路は、前記ドレン通路の上流側部分から分岐されることを特徴とする請求項1記載の水封トラップ装置。

【図1】
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【図2】
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