水平ドレーンを用いた真空圧密工法
【課題】水平ドレーンを用いた真空圧密工法においてドレーンの埋設長が長くなってもドレーンにおけるウエルレジスタンスによる圧密遅れの発生を防止し、ドレーンの効果が低減しないようにした真空圧密工法を提供する。
【解決手段】この水平ドレーンを用いた真空圧密工法は、圧密改良対象の地盤G内に複数のドレーン11〜14を水平方向に埋設し、ドレーンの両端側から真空ポンプ17,18により負圧を作用させることで地盤において真空圧密を行うものである。
【解決手段】この水平ドレーンを用いた真空圧密工法は、圧密改良対象の地盤G内に複数のドレーン11〜14を水平方向に埋設し、ドレーンの両端側から真空ポンプ17,18により負圧を作用させることで地盤において真空圧密を行うものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤内に水平に埋設されたドレーンを用いた真空圧密工法に関する。
【背景技術】
【0002】
航路や泊地の水深確保などを目的に浚渫が行われることが多いが、この場合、大量の浚渫土が発生してしまう問題がある。一方、環境保護の観点から、最近では新たな浚渫土の処分場の確保が困難な場合が多い状況にある。そこで、浚渫土を限られた処分場内にできるだけ多く処分することができれば、非常に好都合となる。
【0003】
上記に関する既往の実績としては、浚渫土を投入した粘土地盤内に、ドレーン埋設船を利用して、ドレーンを地盤内に多段で、かつ水平に、たとえば0.7〜1.5m程度の水平等間隔で埋設し、埋設した水平ドレーンを通じて投入した浚渫土(粘土)に負圧を作用させて真空圧密を行うという、水平ドレーンを用いた真空圧密工法がある(特許文献1,2,非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−147920号公報
【特許文献2】特公平7−86221号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ラテラルドレーン工法 技術資料 1999年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水平ドレーンを用いた真空圧密工法の施工実績によると、処分地の幅が200m以上ある場合には、処分地を二分し、処分地の幅の1/2の長さに相当するドレーンを両側からそれぞれ埋設し、処分地全体の地盤改良を実施するのが通常である。しかしながら、この方法だと、ドレーンをドレーン長手方向の同一断面で、2回埋設する必要があり、処分地の全長を対象とした1回埋設に比べると、コストと工期が多く必要であった。
【0007】
ドレーンの埋設長に関しては、超軟弱粘土からドレーンに流入する水の量での規定があり、たとえば幅100×厚さ10mmの断面を有するドレーン材の場合には、埋設長は100〜250mと定められている。もし、これ以上の埋設長でドレーンを埋設すると、ドレーンへの流入水がすみやかに排水されなくなり、ドレーンでウエルレジスタンスによる圧密遅れが生じ、ドレーンの先端部付近において圧密遅れに伴い地盤沈下の遅れが生じ、地盤が均一に沈下せず、その結果、ドレーンの効果が低減してしまうことになる(非特許文献1参照)。
【0008】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、水平ドレーンを用いた真空圧密工法においてドレーンの埋設長が長くなってもドレーンにおけるウエルレジスタンスによる圧密遅れの発生を防止し、ドレーンの効果が低減しないようにした真空圧密工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による水平ドレーンを用いた真空圧密工法は、圧密改良対象の地盤内に複数のドレーンを水平方向に埋設し、前記ドレーンの両端から負圧を作用させることで前記地盤において真空圧密を行うことを特徴とする。
【0010】
この真空圧密工法によれば、ドレーンの両端から負圧を作用させるので、ドレーンの埋設長が長くなってもドレーンにおけるウエルレジスタンスによる圧密遅れの発生を防止でき、このため、地盤沈下の遅れが生じ難くなり、ドレーンの効果が低減しない。なお、ドレーンの両端側にそれぞれ真空ポンプ等による負圧作用装置を配置することが好ましい。
【0011】
上記真空圧密工法において前記ドレーンの埋設長がその断面寸法に関して所定の埋設長よりも長い場合、前記ドレーンの両端側から負圧を作用させることが好ましい。
【0012】
また、前記ドレーンを地盤内において所定間隔で水平方向に並べかつ鉛直方向に多段に埋設した後に、前記ドレーンの両端側から負圧を作用させることができる。
【0013】
また、前記ドレーンを地盤上に所定間隔で水平方向に並べてから前記地盤を改良対象の浚渫土等の土で覆い、次に、前記ドレーンの両端側から負圧を作用させるようにしてもよい。この場合、ドレーンを地盤上に水平方向に並べてから地盤を改良対象の浚渫土等の土で覆うことを繰り返してドレーンを多段に埋設してからドレーンの両端側から負圧を作用させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水平ドレーンを用いた真空圧密工法によれば、ドレーンの埋設長が長くなってもドレーンにおけるウエルレジスタンスによる圧密遅れの発生を防止することができ、地盤沈下の遅れが生じ難くなり、ドレーンの効果が低減しない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における真空圧密システムを説明するための概略的な平面図である。
【図2】図1の真空圧密システムをII-II線方向に切断して見た概略的な断面図である。
【図3】図1,図2のドレーンに使用可能なドレーン材の概略的な部分斜視図である。
【図4】図1,図2のドレーンと排水ホースとを接続する接続部であるキャップを示す概略的な断面図である。
【図5】図3のドレーン材の寸法や標準埋設長や断面形状等を示す表である。
【図6】本実施形態においてドレーン材を水平方向に埋設するために使用可能なドレーン材の埋設作業船の正面図である。
【図7】図6のドレーン材の埋設作業船の側面図である。
【図8】図6,図7のドレーン材埋設作業船によるドレーン埋設工程を示す図である。
【図9】図6,図7のドレーン材埋設作業船によるドレーン埋設工程を示す図である。
【図10】図6,図7のドレーン材埋設作業船によるドレーン埋設工程を示す図である。
【図11】本実施形態による真空圧密工法を説明するためのフローチャートである。
【図12】本実施形態による真空圧密工法の他の例を説明するための図2と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図1は本実施形態における真空圧密システムを説明するための概略的な平面図である。図2は図1の真空圧密システムをII-II線方向に切断して見た概略的な断面図である。
【0017】
本実施形態による水平ドレーンを用いた真空圧密工法を実施可能な真空圧密システムについて図1,図2を参照して説明する。
【0018】
本実施形態による水平ドレーンを用いた真空圧密工法は、超軟弱粘土地盤の圧密改良を目的として、複数本のドレーンを水平方向に所定間隔で並ぶように埋設し、かつ、鉛直方向に多段に埋設するものである。
【0019】
図1,図2のように、真空圧密システム10は、改良対象の地盤G内に埋設された複数本のドレーン11,12,13,14と、各ドレーン11〜14の両端にキャップ21を介して連結される排水ホース15,16と、排水ホース15,16が連結されて負圧を作用させるための真空ポンプ17,18,19,20と、を備える。
【0020】
図1のように、複数本のドレーン11が水平方向に所定間隔で並べられて埋設され、かつ、図2のように鉛直方向に所定間隔でドレーン11,12,13,14が多段に埋設されている。各ドレーン12,13,14もドレーン11と同様に、複数本が水平方向に所定間隔で並べられている。このように、多数本のドレーン11〜14が地盤G内に水平方向に埋設されて水平ドレーンとして機能するようになっている。
【0021】
真空ポンプ17,19は、各ドレーン11〜14の一端側に配置されキャップ21と排水ホース15とを介して各ドレーン11〜14に一端側から負圧を作用させるようになっている。同様に、真空ポンプ18,20は、各ドレーン11〜14の他端側に配置されキャップ21と排水ホース16とを介して各ドレーン11〜14に他端側から負圧を作用させるようになっている。
【0022】
図1のように複数本のドレーン11を半分ずつに分け、その内のドレーン11aの一端側に真空ポンプ17が位置し、他端側に真空ポンプ18が位置する。また、ドレーン11bの一端側に真空ポンプ19が位置し、他端側に真空ポンプ20が位置する。このようなドレーン11とドレーン11a,11bとの関係は、ドレーン12〜14についても同様である。
【0023】
また、ドレーン11aの一端側から延びた複数本の排水ホース15はまとめられて真空ポンプ17に接続し、他端側から延びた複数本の排水ホース16もまとめられて真空ポンプ18に接続している。他のドレーン11b、12〜14も同様にして真空ポンプに接続されている。なお、複数本の排水ホース15,16をヘッダパイプに連結し、ヘッダパイプに真空ポンプを連結するようにしてもよい。
【0024】
図3は図1,図2のドレーンに使用可能なドレーン材の概略的な部分斜視図である。図4は図1,図2のドレーンと排水ホースとを接続する接続部であるキャップを示す概略的な断面図である。図5は図3のドレーン材の寸法や標準埋設長や断面形状等を示す表である。
【0025】
図3に示すように、ドレーン材25は、可撓性のあるプラスチックボードドレーンであって、プラスチックからなり全体として細長い矩形状の波型断面を有する芯材26と、芯材26の両側面に被着された不織布からなる透水性被覆材27とから細長く構成されている。なお、図3のドレーン材25は、一例であって、他の構成であってもよい。
【0026】
ドレーン材25の具体例は、図5のように、図3の断面幅B×断面厚さt(mm)の各寸法が、例えば、100×6,100×10,150×12である。芯材26の断面形状は、図5のように幅・厚さ寸法ごとに変えているが、いずれか1つとしてもよい。なお、図5の幅・厚さ寸法150×12の例では、透水性被覆材27が被着される芯材平面に孔が格子状に形成されている。
【0027】
図4のように、キャップ21は、ドレーン材25の端部25aと排水ホース15,16とを接続するための接続部を構成する。キャップ21は、一端側に図3のドレーン材25を挿入可能な寸法を有する矩形状孔21aを有し、他端側に排水ホース15,16を差し込み可能な円筒突状部21bを有する。矩形状孔21aは円筒突状部21bの内部空間と連通している。キャップ21は例えば樹脂材料から構成することができる。
【0028】
ドレーン材25の端部25aがキャップ21の矩形状孔21a内に挿入され、排水ホース15,16が円筒突状部21bを覆うように差し込まれる。このとき、キャップ21の矩形状孔21a及び円筒突状部21bの各接続部分は公知の気密手段により気密に接続される。
【0029】
図3のドレーン材25は、工場等で必要な長さに切断されて、排水ホース15,16がキャップ21により接続されロール状に巻回された状態で現場に搬入され、図1,図2のドレーン11〜14として使用可能である。
【0030】
本実施形態の真空圧密システム10によれば、例えば、軟弱な浚渫粘性土を投入した処分地(超軟弱粘性土地盤)について真空圧密改良を行って処分地の減容化を図る際に、図1,図2のように、排水ホース15,16が連結されたドレーン材25を地盤G内に多段で水平に埋設し、ドレーン11〜14の両側の排水ホース15,16に真空ポンプ18〜20を連結して、ドレーン11〜14の両端側から超軟弱粘性土地盤に負圧を作用させて真空圧密改良による処分地の減容化を実現できる。
【0031】
従来、埋設後のドレーンの一端から負圧を作用させていたが、この従来方法によると、例えば、処分地の長さが250〜300mを超える場合、ウエルレジスタンスによる圧密遅れが生じ易かったのに対し、本実施形態のようにドレーン11〜14の両端から真空ポンプ17〜20により超軟弱粘性土地盤に負圧を作用させることで、ドレーン11〜14の埋設長が図5の標準埋設長Lよりも長い場合でもウエルレジスタンスによる圧密遅れの発生を防止することができる。これにより、ドレーンの先端部付近における圧密遅れに伴う地盤沈下の遅れを防止でき、地盤沈下の遅れが生じ難くなり、ドレーンの効果が低減しない。
【0032】
以上のように、本実施形態ではドレーン11〜14の両端側から負圧を作用させるが、かかる方法は、ドレーンの埋設長に関し、ドレーン11〜14の半分の埋設長のドレーンに対しその一端側から負圧を作用させる場合と等価になって、従来のドレーンの一端から負圧を作用させる場合と比べてウエルレジスタンスによる圧密遅れが生じ難くなる。しかも、ドレーンの他端である先端側(ドレーン11〜14の中央付近)では互いに連通するために、ドレーンへの流入水を速やかに排水することができ、ウエルレジスタンスによる圧密遅れがいっそう生じ難くなる。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、水平ドレーンを用いた真空圧密工法の施工を効率化することができ、これにより、コスト減と工期の短縮とを実現できる。例えば、処分地の長さが長く、2回に分けてドレーンを埋設する場合と比べると、ドレーンの埋設が1回で済み、その分、コスト減と工期短縮を実現できる。
【0034】
図5にドレーン材の標準埋設長Lが、ドレーン材の断面寸法に応じて規定されているが、実際のドレーンの埋設長が図5の断面寸法に対応した標準埋設長Lよりも長くなる場合に、本実施形態による真空圧密工法を適用することが好ましい。
【0035】
次に、図1,図2のように多数本のドレーン11〜14を超軟弱地盤内に水平方向に埋設する手段・方法について図6〜図10を参照して説明する。
【0036】
図6は、本実施形態においてドレーン材を水平方向に埋設するために使用可能なドレーン材の埋設作業船の正面図である。図7は図6のドレーン材の埋設作業船の側面図である。図8,図9,図10は図6,図7のドレーン材埋設作業船によるドレーン埋設工程を示す図である。
【0037】
図6,図7のドレーン材の埋設作業船110は、本出願人が上記特許文献1において提案したものと同様に構成され、平双胴型の船体120を有し、船体120には枠体内に発泡スチロール等のフロート130が収容されている。船体120の船底には、スタビライザ120aが前後方向に向けて突出され、軟弱地盤Gにこれを貫入した状態で推進させることにより直進性を維持させる。
【0038】
船体120の上面には複数のリール140がブラケット150を介して回転自在に搭載されている。各リール140には図3のドレーン材25がロール状になった状態で取り付けられる。
【0039】
船体120の底部には、上端を船体中央部分の枢支部190で枢支させたドレーン材埋設ガイド200が船体120の前後方向に回動自在に支持されている。ドレーン材埋設ガイド200は、片面が開口したチャンネル材等よりなるガイド本体210がその開口部を後向きにして枢支部190で支持され、ガイド本体210内を経てガイドされる各ドレーン材25がガイド本体210に上下方向に位置を異にして取り付けられたガイドロール220で向きを変えて水平に繰り出される構造になっている。すなわち、ガイドロール220の位置によりドレーン材25の上下方向の埋設位置が定められるようになっている。
【0040】
船体120の前後部には一対のドレーン材埋設ガイド用の姿勢制御手段230A、230Bが設けられている。各姿勢制御手段230A、230Bはそれぞれドレーン材埋設ガイド200の中央より稍先端側の位置に枢軸240A,240Bによって先端部が枢着された引抜枠250A、250Bを有し、引抜枠250A、250Bの後端側が船体120の前後部に枢支された摺動ガイド筒260A、260Bに活動自在に挿通されている。各貫入引抜枠250A、250Bは図には詳示してないが、それぞれラックピニオン機構を介してモータ270A、270Bの駆動により軸方向に往復動作させるようにしている。
【0041】
姿勢制御手段230A、230Bは前方側の引抜枠250Aを引き上げ、後方側の貫入引抜枠250Bを押し込むことによりドレーン材埋設ガイド200が前方側に回動され、逆に後方側の引抜枠250Bを引上げ、前方側の貫入引抜枠250Aを押し込むことにより、ドレーン材埋設ガイド200が後方側に回動されるようになっている。
【0042】
次に、埋設作業船110によるドレーン材の埋設工程について説明する。まず、埋設始端側において、図8に示すように後方側の引抜枠250Bを引き上げてドレーン材埋設ガイド200を軟弱地盤G上まで引き上げ、各ドレーン材25をガイドロール220に掛け回して導出させ、各ドレーン材25の一端に接続された排水ホース15を引き出し、築堤310a側に固定する。
【0043】
次に、図9に示すように前方側の引抜枠250Aを引上げ、ドレーン材埋設ガイド200を直立もしくはそれに近い状態になるまで貫入させる。このとき、各ドレーン材25が軟弱地盤G中に引き込まれないように固定することにより各ドレーン材25はドレーン材埋設ガイド200の貫入に従って繰り出され、埋設始端部の軟弱地盤中に築堤310aの前面に沿って円弧状に埋設される。
【0044】
上述のようにドレーン材埋設ガイド200を貫入させた状態でドレーン材の埋設作業船110を前方側に進行させる。この進行は、一例として岸上に設置したウインチにより行う。この進行に伴ってドレーン材25は軟弱土の抵抗によって順次引き出され、水平方向に埋設される。
【0045】
次に、図10のように、反対側の築堤310bの前面の埋設終端位置にて埋設作業船110の進行を止め、各ドレーン材25の先端及びその先端に取り付けられた排水ホース16を取り出し、前方側の引抜枠250Aを引上げてドレーン材埋設ガイド200を前方側に回動させ、軟弱地盤G上まで引き上げる。これによって築堤310bに沿って各ドレーン材25の終端側が円弧状に湾曲され、その先端が軟弱地盤表面稍下部位置まで到達した状態に埋設される。
【0046】
上述の操作によって一回の埋設工程が終了し、各ドレーン材25が埋設され、ドレーン材のない部分を残すことなく均一な埋設がなされる。
【0047】
次に、埋設作業船110を元の位置に戻し、1ピッチ分だけ横移動させ、上述と同様に操作し、これを繰り返して軟弱地盤全面に一定間隔毎にドレーン材を埋設する。
【0048】
次に、図1〜図4の真空圧密システム10及び図6〜図10のドレーン材の埋設作業船110を用いて真空圧密による地盤改良を行う工程について図11のフローチャートを用いて説明する。
【0049】
地盤改良対象である地盤Gは軟弱地盤であり、軟弱な浚渫粘性土を投入した処分地で真空圧密による地盤改良を行う。この改良対象である実際の処分地の長さ、すなわち埋設するドレーン長に合わせて、工場で図3のドレーン材25を切断し、図4のように、排水ホース15,16が取り付けられたキャップ21をドレーン材25の両端にそれぞれ取り付ける(S01)。
【0050】
上述のドレーン材25を排水ホース15,16ごとロール状にして現地に搬入する(S02)。
【0051】
次に、図6,図7のドレーン材の埋設作業船110の各リール140にロール状のドレーン材25を取り付ける(S03)。
【0052】
つぎに、図8のようにドレーン材25の一端に取り付けた排水ホース15を陸上側(築堤310a)で固定してから、図9のようにドレーン材25を軟弱地盤内に導くためのドレーン材埋設ガイド200を軟弱地盤G内に貫入させる(S04)。
【0053】
次に、埋設作業船110を前方に移動させて、ドレーン材25を地盤内に埋設する(S05)。
【0054】
次に、ドレーン材の埋設の終了地点に到達すると、埋設作業船110を止め、ドレーン材埋設ガイド200を前方に回転させて、ドレーン材25に連結されている排水ホース16を地盤(築堤310b)上に導く(S06)。
【0055】
以上の工程S03〜S06を繰り返し、すべてのドレーン材の埋設を完了する(S07)。これにより、図1,図2のようにドレーン11〜14を軟弱地盤G内に埋設する。
【0056】
次に、各ドレーン11〜14の両側の排水ホース15,16を、図1のようにそれぞれ真空ポンプ17,19,18,20に連結する(S08)。
【0057】
次に、真空ポンプ17〜20を駆動し、各ドレーン11〜14の両端から真空ポンプ17〜20によりドレーン11〜14に負圧を作用させる(S09)。これにより、軟弱地盤G内の間隙水をドレーン11〜14を通して吸引し外部に排出することで、真空圧密改良を行う。
【0058】
上述のようにして、ドレーン11〜14の両端から負圧を作用させることで、ドレーン11〜14の埋設長がその断面寸法に関して標準埋設長よりも長い場合であっても、ウエルレジスタンスによる圧密遅れの発生を防止でき、地盤沈下の遅れが生じ難くなる。このため、ドレーンの効果が低減せずに真空圧密改良を行うことができ、軟弱地盤Gの体積を減じ、軟弱地盤Gの減容化を図ることができる。
【0059】
次に、本実施形態の真空圧密工法の別の例について図12を参照して説明する。図12は本実施形態の真空圧密工法の別の例を説明するための図2と同様の断面図である。
【0060】
図12のように、凹状に形成された浚渫土の処分場30に、浚渫土31が投入されてから、浚渫土31の地表面に複数本のドレーン29を水平方向に図1と同じように所定間隔で並べて敷設する。各ドレーン29の両端には図4のキャップ21を介して排水ホース15,16が取り付けられている。
【0061】
次に、浚渫土32を浚渫土31の地表面上に投入して、浚渫土32で浚渫土31の地表面をドレーン29ごと覆う。その後、真空ポンプ17,18を駆動しドレーン29の両端側から負圧を作用させて浚渫土31,32内の間隙水を排水し真空圧密改良を行う。このように、ドレーン29の両端から負圧を作用させることで、ドレーン29の埋設長がその断面寸法に関して標準埋設長よりも長い場合であっても、ウエルレジスタンスによる圧密遅れの発生を防止でき、地盤沈下の遅れが生じ難くなる。このため、ドレーンの効果が低減せずに真空圧密改良を行うことができ、浚渫土31,32の体積を減じ処分地に投入された浚渫土の減容化を図ることができる。
【0062】
同様にして、浚渫土32の上に複数本のドレーンを同様に敷設し、その上に次の浚渫土を投入してから、真空ポンプ17,18を駆動して真空圧密を行い、浚渫土の減容化を図る。このように、浚渫土の投入に合わせてドレーンを敷設し、その都度、浚渫土の減容化を図るようにしてもよい。
【0063】
また、上述のドレーン敷設工程と浚渫土投入工程とを繰り返し行うことで、図1,図2のようにドレーン11〜14を埋設するようにしてもよい。この場合、図11の工程S03〜S06の代わりに、ドレーンを水平に敷設する工程と浚渫土を投入する工程とを必要回数だけ繰り返す。
【0064】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図1,図2のドレーンの水平方向に並べる本数及び鉛直方向の段数は、改良対象の地盤の広さや深さ等に応じて適宜変更である。
【0065】
また、図1では、ドレーンの一端側に複数の真空ポンプ17,19を配置し、他端側に複数の真空ポンプ18,20を配置したが、真空ポンプの台数は、ドレーンの断面寸法や埋設長や埋設本数等に応じて適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の水平ドレーンを用いた真空圧密工法によれば、水平ドレーンを用いた真空圧密工法の施工を効率化することができ、これにより、例えば、浚渫土の処分地確保のため浚渫土の減容化を行う際に、コスト減と工期の短縮とを実現できる。
【符号の説明】
【0067】
10 真空圧密システム
11〜14 ドレーン
11a,11b ドレーン
15,16 排水ホース
17〜20 真空ポンプ
21 キャップ、接続部
25 ドレーン材
29 ドレーン
31,32 浚渫土
110 ドレーン材の埋設作業船
G 地盤、軟弱地盤
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤内に水平に埋設されたドレーンを用いた真空圧密工法に関する。
【背景技術】
【0002】
航路や泊地の水深確保などを目的に浚渫が行われることが多いが、この場合、大量の浚渫土が発生してしまう問題がある。一方、環境保護の観点から、最近では新たな浚渫土の処分場の確保が困難な場合が多い状況にある。そこで、浚渫土を限られた処分場内にできるだけ多く処分することができれば、非常に好都合となる。
【0003】
上記に関する既往の実績としては、浚渫土を投入した粘土地盤内に、ドレーン埋設船を利用して、ドレーンを地盤内に多段で、かつ水平に、たとえば0.7〜1.5m程度の水平等間隔で埋設し、埋設した水平ドレーンを通じて投入した浚渫土(粘土)に負圧を作用させて真空圧密を行うという、水平ドレーンを用いた真空圧密工法がある(特許文献1,2,非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−147920号公報
【特許文献2】特公平7−86221号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ラテラルドレーン工法 技術資料 1999年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水平ドレーンを用いた真空圧密工法の施工実績によると、処分地の幅が200m以上ある場合には、処分地を二分し、処分地の幅の1/2の長さに相当するドレーンを両側からそれぞれ埋設し、処分地全体の地盤改良を実施するのが通常である。しかしながら、この方法だと、ドレーンをドレーン長手方向の同一断面で、2回埋設する必要があり、処分地の全長を対象とした1回埋設に比べると、コストと工期が多く必要であった。
【0007】
ドレーンの埋設長に関しては、超軟弱粘土からドレーンに流入する水の量での規定があり、たとえば幅100×厚さ10mmの断面を有するドレーン材の場合には、埋設長は100〜250mと定められている。もし、これ以上の埋設長でドレーンを埋設すると、ドレーンへの流入水がすみやかに排水されなくなり、ドレーンでウエルレジスタンスによる圧密遅れが生じ、ドレーンの先端部付近において圧密遅れに伴い地盤沈下の遅れが生じ、地盤が均一に沈下せず、その結果、ドレーンの効果が低減してしまうことになる(非特許文献1参照)。
【0008】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、水平ドレーンを用いた真空圧密工法においてドレーンの埋設長が長くなってもドレーンにおけるウエルレジスタンスによる圧密遅れの発生を防止し、ドレーンの効果が低減しないようにした真空圧密工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による水平ドレーンを用いた真空圧密工法は、圧密改良対象の地盤内に複数のドレーンを水平方向に埋設し、前記ドレーンの両端から負圧を作用させることで前記地盤において真空圧密を行うことを特徴とする。
【0010】
この真空圧密工法によれば、ドレーンの両端から負圧を作用させるので、ドレーンの埋設長が長くなってもドレーンにおけるウエルレジスタンスによる圧密遅れの発生を防止でき、このため、地盤沈下の遅れが生じ難くなり、ドレーンの効果が低減しない。なお、ドレーンの両端側にそれぞれ真空ポンプ等による負圧作用装置を配置することが好ましい。
【0011】
上記真空圧密工法において前記ドレーンの埋設長がその断面寸法に関して所定の埋設長よりも長い場合、前記ドレーンの両端側から負圧を作用させることが好ましい。
【0012】
また、前記ドレーンを地盤内において所定間隔で水平方向に並べかつ鉛直方向に多段に埋設した後に、前記ドレーンの両端側から負圧を作用させることができる。
【0013】
また、前記ドレーンを地盤上に所定間隔で水平方向に並べてから前記地盤を改良対象の浚渫土等の土で覆い、次に、前記ドレーンの両端側から負圧を作用させるようにしてもよい。この場合、ドレーンを地盤上に水平方向に並べてから地盤を改良対象の浚渫土等の土で覆うことを繰り返してドレーンを多段に埋設してからドレーンの両端側から負圧を作用させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水平ドレーンを用いた真空圧密工法によれば、ドレーンの埋設長が長くなってもドレーンにおけるウエルレジスタンスによる圧密遅れの発生を防止することができ、地盤沈下の遅れが生じ難くなり、ドレーンの効果が低減しない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における真空圧密システムを説明するための概略的な平面図である。
【図2】図1の真空圧密システムをII-II線方向に切断して見た概略的な断面図である。
【図3】図1,図2のドレーンに使用可能なドレーン材の概略的な部分斜視図である。
【図4】図1,図2のドレーンと排水ホースとを接続する接続部であるキャップを示す概略的な断面図である。
【図5】図3のドレーン材の寸法や標準埋設長や断面形状等を示す表である。
【図6】本実施形態においてドレーン材を水平方向に埋設するために使用可能なドレーン材の埋設作業船の正面図である。
【図7】図6のドレーン材の埋設作業船の側面図である。
【図8】図6,図7のドレーン材埋設作業船によるドレーン埋設工程を示す図である。
【図9】図6,図7のドレーン材埋設作業船によるドレーン埋設工程を示す図である。
【図10】図6,図7のドレーン材埋設作業船によるドレーン埋設工程を示す図である。
【図11】本実施形態による真空圧密工法を説明するためのフローチャートである。
【図12】本実施形態による真空圧密工法の他の例を説明するための図2と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図1は本実施形態における真空圧密システムを説明するための概略的な平面図である。図2は図1の真空圧密システムをII-II線方向に切断して見た概略的な断面図である。
【0017】
本実施形態による水平ドレーンを用いた真空圧密工法を実施可能な真空圧密システムについて図1,図2を参照して説明する。
【0018】
本実施形態による水平ドレーンを用いた真空圧密工法は、超軟弱粘土地盤の圧密改良を目的として、複数本のドレーンを水平方向に所定間隔で並ぶように埋設し、かつ、鉛直方向に多段に埋設するものである。
【0019】
図1,図2のように、真空圧密システム10は、改良対象の地盤G内に埋設された複数本のドレーン11,12,13,14と、各ドレーン11〜14の両端にキャップ21を介して連結される排水ホース15,16と、排水ホース15,16が連結されて負圧を作用させるための真空ポンプ17,18,19,20と、を備える。
【0020】
図1のように、複数本のドレーン11が水平方向に所定間隔で並べられて埋設され、かつ、図2のように鉛直方向に所定間隔でドレーン11,12,13,14が多段に埋設されている。各ドレーン12,13,14もドレーン11と同様に、複数本が水平方向に所定間隔で並べられている。このように、多数本のドレーン11〜14が地盤G内に水平方向に埋設されて水平ドレーンとして機能するようになっている。
【0021】
真空ポンプ17,19は、各ドレーン11〜14の一端側に配置されキャップ21と排水ホース15とを介して各ドレーン11〜14に一端側から負圧を作用させるようになっている。同様に、真空ポンプ18,20は、各ドレーン11〜14の他端側に配置されキャップ21と排水ホース16とを介して各ドレーン11〜14に他端側から負圧を作用させるようになっている。
【0022】
図1のように複数本のドレーン11を半分ずつに分け、その内のドレーン11aの一端側に真空ポンプ17が位置し、他端側に真空ポンプ18が位置する。また、ドレーン11bの一端側に真空ポンプ19が位置し、他端側に真空ポンプ20が位置する。このようなドレーン11とドレーン11a,11bとの関係は、ドレーン12〜14についても同様である。
【0023】
また、ドレーン11aの一端側から延びた複数本の排水ホース15はまとめられて真空ポンプ17に接続し、他端側から延びた複数本の排水ホース16もまとめられて真空ポンプ18に接続している。他のドレーン11b、12〜14も同様にして真空ポンプに接続されている。なお、複数本の排水ホース15,16をヘッダパイプに連結し、ヘッダパイプに真空ポンプを連結するようにしてもよい。
【0024】
図3は図1,図2のドレーンに使用可能なドレーン材の概略的な部分斜視図である。図4は図1,図2のドレーンと排水ホースとを接続する接続部であるキャップを示す概略的な断面図である。図5は図3のドレーン材の寸法や標準埋設長や断面形状等を示す表である。
【0025】
図3に示すように、ドレーン材25は、可撓性のあるプラスチックボードドレーンであって、プラスチックからなり全体として細長い矩形状の波型断面を有する芯材26と、芯材26の両側面に被着された不織布からなる透水性被覆材27とから細長く構成されている。なお、図3のドレーン材25は、一例であって、他の構成であってもよい。
【0026】
ドレーン材25の具体例は、図5のように、図3の断面幅B×断面厚さt(mm)の各寸法が、例えば、100×6,100×10,150×12である。芯材26の断面形状は、図5のように幅・厚さ寸法ごとに変えているが、いずれか1つとしてもよい。なお、図5の幅・厚さ寸法150×12の例では、透水性被覆材27が被着される芯材平面に孔が格子状に形成されている。
【0027】
図4のように、キャップ21は、ドレーン材25の端部25aと排水ホース15,16とを接続するための接続部を構成する。キャップ21は、一端側に図3のドレーン材25を挿入可能な寸法を有する矩形状孔21aを有し、他端側に排水ホース15,16を差し込み可能な円筒突状部21bを有する。矩形状孔21aは円筒突状部21bの内部空間と連通している。キャップ21は例えば樹脂材料から構成することができる。
【0028】
ドレーン材25の端部25aがキャップ21の矩形状孔21a内に挿入され、排水ホース15,16が円筒突状部21bを覆うように差し込まれる。このとき、キャップ21の矩形状孔21a及び円筒突状部21bの各接続部分は公知の気密手段により気密に接続される。
【0029】
図3のドレーン材25は、工場等で必要な長さに切断されて、排水ホース15,16がキャップ21により接続されロール状に巻回された状態で現場に搬入され、図1,図2のドレーン11〜14として使用可能である。
【0030】
本実施形態の真空圧密システム10によれば、例えば、軟弱な浚渫粘性土を投入した処分地(超軟弱粘性土地盤)について真空圧密改良を行って処分地の減容化を図る際に、図1,図2のように、排水ホース15,16が連結されたドレーン材25を地盤G内に多段で水平に埋設し、ドレーン11〜14の両側の排水ホース15,16に真空ポンプ18〜20を連結して、ドレーン11〜14の両端側から超軟弱粘性土地盤に負圧を作用させて真空圧密改良による処分地の減容化を実現できる。
【0031】
従来、埋設後のドレーンの一端から負圧を作用させていたが、この従来方法によると、例えば、処分地の長さが250〜300mを超える場合、ウエルレジスタンスによる圧密遅れが生じ易かったのに対し、本実施形態のようにドレーン11〜14の両端から真空ポンプ17〜20により超軟弱粘性土地盤に負圧を作用させることで、ドレーン11〜14の埋設長が図5の標準埋設長Lよりも長い場合でもウエルレジスタンスによる圧密遅れの発生を防止することができる。これにより、ドレーンの先端部付近における圧密遅れに伴う地盤沈下の遅れを防止でき、地盤沈下の遅れが生じ難くなり、ドレーンの効果が低減しない。
【0032】
以上のように、本実施形態ではドレーン11〜14の両端側から負圧を作用させるが、かかる方法は、ドレーンの埋設長に関し、ドレーン11〜14の半分の埋設長のドレーンに対しその一端側から負圧を作用させる場合と等価になって、従来のドレーンの一端から負圧を作用させる場合と比べてウエルレジスタンスによる圧密遅れが生じ難くなる。しかも、ドレーンの他端である先端側(ドレーン11〜14の中央付近)では互いに連通するために、ドレーンへの流入水を速やかに排水することができ、ウエルレジスタンスによる圧密遅れがいっそう生じ難くなる。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、水平ドレーンを用いた真空圧密工法の施工を効率化することができ、これにより、コスト減と工期の短縮とを実現できる。例えば、処分地の長さが長く、2回に分けてドレーンを埋設する場合と比べると、ドレーンの埋設が1回で済み、その分、コスト減と工期短縮を実現できる。
【0034】
図5にドレーン材の標準埋設長Lが、ドレーン材の断面寸法に応じて規定されているが、実際のドレーンの埋設長が図5の断面寸法に対応した標準埋設長Lよりも長くなる場合に、本実施形態による真空圧密工法を適用することが好ましい。
【0035】
次に、図1,図2のように多数本のドレーン11〜14を超軟弱地盤内に水平方向に埋設する手段・方法について図6〜図10を参照して説明する。
【0036】
図6は、本実施形態においてドレーン材を水平方向に埋設するために使用可能なドレーン材の埋設作業船の正面図である。図7は図6のドレーン材の埋設作業船の側面図である。図8,図9,図10は図6,図7のドレーン材埋設作業船によるドレーン埋設工程を示す図である。
【0037】
図6,図7のドレーン材の埋設作業船110は、本出願人が上記特許文献1において提案したものと同様に構成され、平双胴型の船体120を有し、船体120には枠体内に発泡スチロール等のフロート130が収容されている。船体120の船底には、スタビライザ120aが前後方向に向けて突出され、軟弱地盤Gにこれを貫入した状態で推進させることにより直進性を維持させる。
【0038】
船体120の上面には複数のリール140がブラケット150を介して回転自在に搭載されている。各リール140には図3のドレーン材25がロール状になった状態で取り付けられる。
【0039】
船体120の底部には、上端を船体中央部分の枢支部190で枢支させたドレーン材埋設ガイド200が船体120の前後方向に回動自在に支持されている。ドレーン材埋設ガイド200は、片面が開口したチャンネル材等よりなるガイド本体210がその開口部を後向きにして枢支部190で支持され、ガイド本体210内を経てガイドされる各ドレーン材25がガイド本体210に上下方向に位置を異にして取り付けられたガイドロール220で向きを変えて水平に繰り出される構造になっている。すなわち、ガイドロール220の位置によりドレーン材25の上下方向の埋設位置が定められるようになっている。
【0040】
船体120の前後部には一対のドレーン材埋設ガイド用の姿勢制御手段230A、230Bが設けられている。各姿勢制御手段230A、230Bはそれぞれドレーン材埋設ガイド200の中央より稍先端側の位置に枢軸240A,240Bによって先端部が枢着された引抜枠250A、250Bを有し、引抜枠250A、250Bの後端側が船体120の前後部に枢支された摺動ガイド筒260A、260Bに活動自在に挿通されている。各貫入引抜枠250A、250Bは図には詳示してないが、それぞれラックピニオン機構を介してモータ270A、270Bの駆動により軸方向に往復動作させるようにしている。
【0041】
姿勢制御手段230A、230Bは前方側の引抜枠250Aを引き上げ、後方側の貫入引抜枠250Bを押し込むことによりドレーン材埋設ガイド200が前方側に回動され、逆に後方側の引抜枠250Bを引上げ、前方側の貫入引抜枠250Aを押し込むことにより、ドレーン材埋設ガイド200が後方側に回動されるようになっている。
【0042】
次に、埋設作業船110によるドレーン材の埋設工程について説明する。まず、埋設始端側において、図8に示すように後方側の引抜枠250Bを引き上げてドレーン材埋設ガイド200を軟弱地盤G上まで引き上げ、各ドレーン材25をガイドロール220に掛け回して導出させ、各ドレーン材25の一端に接続された排水ホース15を引き出し、築堤310a側に固定する。
【0043】
次に、図9に示すように前方側の引抜枠250Aを引上げ、ドレーン材埋設ガイド200を直立もしくはそれに近い状態になるまで貫入させる。このとき、各ドレーン材25が軟弱地盤G中に引き込まれないように固定することにより各ドレーン材25はドレーン材埋設ガイド200の貫入に従って繰り出され、埋設始端部の軟弱地盤中に築堤310aの前面に沿って円弧状に埋設される。
【0044】
上述のようにドレーン材埋設ガイド200を貫入させた状態でドレーン材の埋設作業船110を前方側に進行させる。この進行は、一例として岸上に設置したウインチにより行う。この進行に伴ってドレーン材25は軟弱土の抵抗によって順次引き出され、水平方向に埋設される。
【0045】
次に、図10のように、反対側の築堤310bの前面の埋設終端位置にて埋設作業船110の進行を止め、各ドレーン材25の先端及びその先端に取り付けられた排水ホース16を取り出し、前方側の引抜枠250Aを引上げてドレーン材埋設ガイド200を前方側に回動させ、軟弱地盤G上まで引き上げる。これによって築堤310bに沿って各ドレーン材25の終端側が円弧状に湾曲され、その先端が軟弱地盤表面稍下部位置まで到達した状態に埋設される。
【0046】
上述の操作によって一回の埋設工程が終了し、各ドレーン材25が埋設され、ドレーン材のない部分を残すことなく均一な埋設がなされる。
【0047】
次に、埋設作業船110を元の位置に戻し、1ピッチ分だけ横移動させ、上述と同様に操作し、これを繰り返して軟弱地盤全面に一定間隔毎にドレーン材を埋設する。
【0048】
次に、図1〜図4の真空圧密システム10及び図6〜図10のドレーン材の埋設作業船110を用いて真空圧密による地盤改良を行う工程について図11のフローチャートを用いて説明する。
【0049】
地盤改良対象である地盤Gは軟弱地盤であり、軟弱な浚渫粘性土を投入した処分地で真空圧密による地盤改良を行う。この改良対象である実際の処分地の長さ、すなわち埋設するドレーン長に合わせて、工場で図3のドレーン材25を切断し、図4のように、排水ホース15,16が取り付けられたキャップ21をドレーン材25の両端にそれぞれ取り付ける(S01)。
【0050】
上述のドレーン材25を排水ホース15,16ごとロール状にして現地に搬入する(S02)。
【0051】
次に、図6,図7のドレーン材の埋設作業船110の各リール140にロール状のドレーン材25を取り付ける(S03)。
【0052】
つぎに、図8のようにドレーン材25の一端に取り付けた排水ホース15を陸上側(築堤310a)で固定してから、図9のようにドレーン材25を軟弱地盤内に導くためのドレーン材埋設ガイド200を軟弱地盤G内に貫入させる(S04)。
【0053】
次に、埋設作業船110を前方に移動させて、ドレーン材25を地盤内に埋設する(S05)。
【0054】
次に、ドレーン材の埋設の終了地点に到達すると、埋設作業船110を止め、ドレーン材埋設ガイド200を前方に回転させて、ドレーン材25に連結されている排水ホース16を地盤(築堤310b)上に導く(S06)。
【0055】
以上の工程S03〜S06を繰り返し、すべてのドレーン材の埋設を完了する(S07)。これにより、図1,図2のようにドレーン11〜14を軟弱地盤G内に埋設する。
【0056】
次に、各ドレーン11〜14の両側の排水ホース15,16を、図1のようにそれぞれ真空ポンプ17,19,18,20に連結する(S08)。
【0057】
次に、真空ポンプ17〜20を駆動し、各ドレーン11〜14の両端から真空ポンプ17〜20によりドレーン11〜14に負圧を作用させる(S09)。これにより、軟弱地盤G内の間隙水をドレーン11〜14を通して吸引し外部に排出することで、真空圧密改良を行う。
【0058】
上述のようにして、ドレーン11〜14の両端から負圧を作用させることで、ドレーン11〜14の埋設長がその断面寸法に関して標準埋設長よりも長い場合であっても、ウエルレジスタンスによる圧密遅れの発生を防止でき、地盤沈下の遅れが生じ難くなる。このため、ドレーンの効果が低減せずに真空圧密改良を行うことができ、軟弱地盤Gの体積を減じ、軟弱地盤Gの減容化を図ることができる。
【0059】
次に、本実施形態の真空圧密工法の別の例について図12を参照して説明する。図12は本実施形態の真空圧密工法の別の例を説明するための図2と同様の断面図である。
【0060】
図12のように、凹状に形成された浚渫土の処分場30に、浚渫土31が投入されてから、浚渫土31の地表面に複数本のドレーン29を水平方向に図1と同じように所定間隔で並べて敷設する。各ドレーン29の両端には図4のキャップ21を介して排水ホース15,16が取り付けられている。
【0061】
次に、浚渫土32を浚渫土31の地表面上に投入して、浚渫土32で浚渫土31の地表面をドレーン29ごと覆う。その後、真空ポンプ17,18を駆動しドレーン29の両端側から負圧を作用させて浚渫土31,32内の間隙水を排水し真空圧密改良を行う。このように、ドレーン29の両端から負圧を作用させることで、ドレーン29の埋設長がその断面寸法に関して標準埋設長よりも長い場合であっても、ウエルレジスタンスによる圧密遅れの発生を防止でき、地盤沈下の遅れが生じ難くなる。このため、ドレーンの効果が低減せずに真空圧密改良を行うことができ、浚渫土31,32の体積を減じ処分地に投入された浚渫土の減容化を図ることができる。
【0062】
同様にして、浚渫土32の上に複数本のドレーンを同様に敷設し、その上に次の浚渫土を投入してから、真空ポンプ17,18を駆動して真空圧密を行い、浚渫土の減容化を図る。このように、浚渫土の投入に合わせてドレーンを敷設し、その都度、浚渫土の減容化を図るようにしてもよい。
【0063】
また、上述のドレーン敷設工程と浚渫土投入工程とを繰り返し行うことで、図1,図2のようにドレーン11〜14を埋設するようにしてもよい。この場合、図11の工程S03〜S06の代わりに、ドレーンを水平に敷設する工程と浚渫土を投入する工程とを必要回数だけ繰り返す。
【0064】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図1,図2のドレーンの水平方向に並べる本数及び鉛直方向の段数は、改良対象の地盤の広さや深さ等に応じて適宜変更である。
【0065】
また、図1では、ドレーンの一端側に複数の真空ポンプ17,19を配置し、他端側に複数の真空ポンプ18,20を配置したが、真空ポンプの台数は、ドレーンの断面寸法や埋設長や埋設本数等に応じて適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の水平ドレーンを用いた真空圧密工法によれば、水平ドレーンを用いた真空圧密工法の施工を効率化することができ、これにより、例えば、浚渫土の処分地確保のため浚渫土の減容化を行う際に、コスト減と工期の短縮とを実現できる。
【符号の説明】
【0067】
10 真空圧密システム
11〜14 ドレーン
11a,11b ドレーン
15,16 排水ホース
17〜20 真空ポンプ
21 キャップ、接続部
25 ドレーン材
29 ドレーン
31,32 浚渫土
110 ドレーン材の埋設作業船
G 地盤、軟弱地盤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧密改良対象の地盤内に複数のドレーンを水平方向に埋設し、
前記ドレーンの両端側から負圧を作用させることで前記地盤において真空圧密を行うことを特徴とする水平ドレーンを用いた真空圧密工法。
【請求項2】
前記ドレーンの埋設長がその断面寸法に関して所定の埋設長よりも長い場合、前記ドレーンの両端側から負圧を作用させる請求項1に記載の真空圧密工法。
【請求項3】
前記ドレーンを地盤内において所定間隔で水平方向に並べかつ鉛直方向に多段に埋設した後に、前記ドレーンの両端側から負圧を作用させる請求項1または2に記載の真空圧密工法。
【請求項4】
前記ドレーンを地盤上に所定間隔で水平方向に並べてから前記地盤を改良対象の土で覆い、次に、前記ドレーンの両端側から負圧を作用させる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の真空圧密工法。
【請求項1】
圧密改良対象の地盤内に複数のドレーンを水平方向に埋設し、
前記ドレーンの両端側から負圧を作用させることで前記地盤において真空圧密を行うことを特徴とする水平ドレーンを用いた真空圧密工法。
【請求項2】
前記ドレーンの埋設長がその断面寸法に関して所定の埋設長よりも長い場合、前記ドレーンの両端側から負圧を作用させる請求項1に記載の真空圧密工法。
【請求項3】
前記ドレーンを地盤内において所定間隔で水平方向に並べかつ鉛直方向に多段に埋設した後に、前記ドレーンの両端側から負圧を作用させる請求項1または2に記載の真空圧密工法。
【請求項4】
前記ドレーンを地盤上に所定間隔で水平方向に並べてから前記地盤を改良対象の土で覆い、次に、前記ドレーンの両端側から負圧を作用させる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の真空圧密工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−229816(P2010−229816A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−164490(P2010−164490)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164490(P2010−164490)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】
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