説明

水性インクジェット記録用インクを用いた軟包装用の積層体中への画像形成方法、及び軟包装用積層体

【課題】軟包装材料である非吸収基材上にインクジェット記録用インクを用いた印刷プロセスを用いて、軟包装材料の柔軟性を損なうことなく、かつ画像品質の高い印刷を行うための画像形成方法を提供すること。
【解決手段】軟包装材料表面に形成されたインクジェット受理層上に、顔料、及び樹脂を含有する水性インクジェット記録用インクを用いて印刷層を形成し、該印刷層上に接着剤層を形成し、次いで溶融もしくはフィルム状のポリマーを積層させるラミネート加工により、シーラントフィルム層を形成し、前記軟包装材料の膜厚、及び前記受理層の膜厚を特定範囲に規定した画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録用インクを用い、ラミネート加工法を伴った軟包装材料への画像形成方法、該画像形成方法によって印刷層の形成された軟包装用積層体、及び該軟包装用積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、食品パッケージ等の軟包装袋に用いられる軟包装用の積層体中への印刷は軟包装材料へのグラビア印刷もしくはフレキソ印刷で行われている。どちらも画像を形成する際、印刷するための版を予め用意し、それにインクを接触させて印刷する方式であり、高速印刷、大量生産に適した印刷方式である。
一方、近年、軟包装材フィルム等の軟包装材料の市場では、消費者ニーズの変化や多様化に伴い、商品の多品種化、商品サイクルの短期化が進んでいる。既存の印刷方式は、印刷インクの水性化による環境問題、労働安全性等の配慮も行われているが(特許文献1参照)、印刷するための版が必要なため、少量生産の場合、採算が合わないことが多い。また、版の作成にも時間を必要とするため短い納期に対応するのは難しいというのが現状であった。
印刷業界ではこれに対応するために、版を必要としないオンデマンド印刷が可能な印刷方式が望まれており、その一つがインクジェット印刷である。インクジェット印刷は、版を必要としないため、少量の印刷に適している。製版工程を必要としていた分の時間も短縮でき、納期の短縮が可能となる。また、オンデマンド印刷により在庫の低減が可能となる。
【0003】
インクジェット記録方式は簡便に画像作製ができるため、家庭やオフィスで使用されている普通紙などの吸収基材への画像作製だけでなく光沢紙への写真調の画像作製、広告、ポスター等の非吸収基材への画像作製へと利用範囲が拡大している。
しかしながら、軟包装材料等の非吸収基材へ水性インクジェットインクで印刷する場合は、インクが浸透しないため、インク同士の混ざりやにじみを回避するためにインクを定着させる必要がある。このため受理層を用いたインクの定着方法が検討されているが(特許文献2参照)、特許文献2に記載されたインクジェット記録用シートにおけるインク定着方法では、基材が厚く、受理層の塗工厚も厚いために軟包装材としての質感を損なうものである。また、シリカやクレー等の無機フィラーを有しており、透明性が悪く、軟包装材用途として適していない。このように、非吸収基材への水性インクジェットインクの印刷は行われているものの、軟包装向けに適した印刷方法、印刷物は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−171091(特許第3255953号)
【特許文献2】特開2007−160746
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、軟包装材料である非吸収基材上にインクジェット記録用インクを用いた印刷プロセスを用いて画像を形成することができ、しかも軟包装材料の柔軟性を損なうことなく画像品質の高い印刷が可能な画像形成方法、及び該画像形成方法による軟包装用の積層体とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは従来グラビア印刷、フレキソ印刷等で行われていた軟包装材料等の非吸収基材上への画像形成方法を、インクジェット記録による印刷を用いた画像形成方法に置き換えるために、種々の条件の検討、最適化を行い本発明に到達した。
すなわち、本発明は軟包装材料への画像形成方法であって、(a)軟包装材料表面に形成された(b)インクジェット受理層上に、顔料、及び樹脂を含有する水性インクジェット記録用インクを用いて(c)印刷層を形成し、該印刷層上に接着剤層(d)を形成し、次いで溶融もしくはフィルム状のポリマーを積層させるラミネート加工により(e)シーラントフィルム層を形成し、前記(a)軟包装材料の膜厚が10〜100μm、前記受理層の膜厚が2〜20μmであることを特徴とする画像形成方法を提供 する。
さらに本発明は軟包装用の積層体であって、上記に記載の画像形成方法によって形成された印刷層とシーラントフィルム層を該積層体中に有することを特徴とする軟包装用の積層体を提供する。
さらに本発明は軟包装用の積層体の製造方法であって、前記積層体の構成材料の一つである(a)軟包装材料表面に形成された(b)インクジェット受理層上に、顔料、及び樹脂を含有する水性インクジェット記録用インクを用いて(c)印刷層を形成し、該印刷層上に接着剤層(d)を形成し、次いで軟包装用の溶融もしくはフィルム状のポリマーを積層させるラミネート加工により(e)シーラントフィルム層を形成する工程を有し、前記軟包装材の膜厚が10〜100μm、前記受理層の膜厚が2〜20μmであることを特徴とする軟包装用の積層体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の印刷方法は軟包装材料である非吸収性基材上に形成された、特定の薄い膜厚範囲を有する受理層上にインクジェット記録法で印刷して印刷層を形成し、該印刷層上に接着剤層を介して軟包装用の溶融もしくはフィルム状のポリマーをラミネート加工する。このため、印刷層を保護して形成された画像の耐久性を向上させるとともに、インクジェット記録による高画質の画像を、軟包装材料上に該軟包装材料の柔軟性を損なうことなく形成することができる。
さらに該印刷方法はインクジェット記録法による印刷を用いているので、従来のグラビア印刷法やフレキソ印刷法に比較すると、製版工程の必要がなく、少量多種の印刷に極めて迅速に対応することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明のインクジェット印刷を用いた画像形成方法に使用する原材料や、それを用いて形成される軟包装用の積層体の各部分について詳細に説明する。さらに加えて、それら原材料を用いて軟包装材料に画像を形成する方法、画像を形成された印刷層を有する軟包装用の積層体、及び該積層体を製造する方法について詳細を説明する。
【0009】
本発明で使用する軟包装材料である非吸収性の基材としては、基材フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ナイロン等のポリアミド系フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリ乳酸フィルム等の生分解性フィルム等が挙げられる。特にポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミド系フィルムが好ましく、さらにポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロンが好ましい。バリア性を付与するためのポリ塩化ビニリデン等のコーティングをした上記フィルムでもよい。
軟包装材料である基材フィルムは、未延伸フィルムであってもよいが、1軸もしくは2軸方向に延伸されたものが好ましい。さらにフィルムの表面は、未処理であってもよいが、コロナ放電処理、オゾン処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、グロー放電処理等、接着性を向上させるための各種処理を施したものが好ましい。基材の膜厚は、軟包装用途に適する柔軟性と耐久性、耐カール性を有しているものとして、10μm〜100μmであり、さらに10μm〜30μmが好ましい。
【0010】
本発明で軟包装材料上に形成される受理層は、非吸収性の基材に対してインクジェット記録による画像を、滲みなくかつ高い、乾燥性と定着性を満たす様に行うために使用される。受理層としては非吸収性基材上に形成されるインクジェット記録用受理層が特に制限なく使用され、例えば以下のような種類のものを使用することができる。
インクジェット受理層としては、シリカやアルミナ化合物等の多孔質無機微粒子を含有し、無数の微細な空隙にインク中の溶媒を吸収することを特徴とするマイクロポーラスタイプと、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーを含有し、水溶性ポリマーが膨潤によりインク中の溶媒を吸収することを特徴とする膨潤タイプが主に挙げられる。
【0011】
上記のような受理層のなかで、本発明では両者共に制限なく使用できるが、特に薄膜でもインクジェット記録用インクの受理性能が良好で、かつ皮膜の透明性に優れ、基材との接着性やラミネート適性が良く、軟包装材自体の柔軟性を損なわないものとして、上記後者の膨潤タイプの受理層、中でも受理層中に水性ポリウレタン樹脂を含有するものが好ましく、そのウレタン樹脂がカチオン性であることが好ましく、さらに好ましくは実質的にシリカ、クレーなどの白色無機顔料を有さないものが透明性が高く好ましい。
【0012】
受理層の膜厚は2〜20μmであり、好ましくは4〜15μmであり、より好ましくは5〜12μmである。受理層の膜厚が小さすぎると十分な量のインクを保持することができず、画像品質が低下する傾向がある。受理層の膜厚が大きすぎると、薄い基材を使用時にカールの発生が見られることや印刷物自体の柔軟性が失われ、軟包装材としての性能を満たせない傾向にある。すなわち受理層の膜厚に関しては、画像品質とカール特性及び柔軟性とが共に良好となるように調整する必要がある。特に薄い基材を使用したときの画像品質とカール特性についてはトレードオフの関係が顕著である。
【0013】
軟包装材料である非吸収性基材上に上記受理層を形成するには公知の印刷又は塗工方式を用いることができる。具体的にはグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷およびインクジェット印刷等の印刷方式やグラビアコーター、グラビアリバースコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、ナイフコーター、キスコーター及びコンマコーター等の塗工方式を用いることができる。
【0014】
本発明の画像形成方法で受理層上に形成される印刷層は、顔料と樹脂を含有する水性インクジェット記録用インクを用いて作製される。印刷層の形成に使用される水性インクジェット記録用インクの色相はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックが主に用いられるが、ホワイト、グリーン、オレンジを含んでいても良い。軟包装用の印刷層としては、少なくともホワイトインクを含んだインクセットであることが好ましく、ホワイトインクの顔料が酸化チタンであることがさらに好ましい。
【0015】
該水性インクジェット記録用インクに使用される顔料としては、水と水溶性有機溶剤に分散可能であれば特に限定されず、公知の無機及び有機顔料が使用できる。具体的には、無機顔料としては、酸化チタン、酸化鉄の他、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラック等がある。
有機顔料の具体例としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタノン顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等がある。
【0016】
顔料の具体例としては、カーボンブラックとして、三菱化学社製のNo.2300、No.2200B、No.900、No.980、No.33、No.40、No,45、No.45L、No.52、HCF88、MA7、MA8、MA100、等が、コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、Raven700等が、キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Mogul 700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400等が、デグサ社製のColor Black FW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、Printex 35、同U、同V、同1400U、Special Black 6、同5、同4、同4A、NIPEX150、NIPEX160、NIPEX170、NIPEX180等が挙げられる。
【0017】
イエローインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、174、180、185等が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、168、176、184、185、202、209、等が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、 15:4、16、22、60、63、66等が挙げられる。
【0018】
本発明の画像形成方法においては、インクの発色を良好とするために印刷層の最下層に白色インクによって形成された層を有することが好ましい。
特に白色用の顔料については、無機顔料として、酸化亜鉛(C.I.ピグメントホワイト 4)、リトボン(C.I.ピグメントホワイト 5)、酸化チタン(C.I.ピグメントホワイト 6)、硫化亜鉛(C.I.ピグメントホワイト 7)、酸化ジルコニウム(C.I.ピグメントホワイト 12)、炭酸カルシウム(C.I.ピグメントホワイト 18)、含水珪酸アルミニウム(C.I.ピグメントホワイト 19)、硫酸バリウム(C.I.ピグメントホワイト 21、22)、アルミナホワイト(C.I.ピグメントホワイト 24)、タルク(C.I.ピグメントホワイト 26)、無水・含水珪酸(ピグメントホワイト 27)、含水珪酸カルシウム(ピグメントホワイト 28)等が挙げられる。有機顔料としては、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、スチレン樹脂系、尿素樹脂系、ベンゾグアナミン系や特開平2−140271、特開平1−1704に開示されている中空粒子の白色顔料などが挙げられる。他にも上記無機顔料と有機樹脂を複合した有機-無機白色顔料などもある。
本発明においては、上記顔料の中で特に制限なく使用できるが、高い隠蔽性と水系インク中における分散安定性を有する顔料として、酸化チタンを使用することが好ましい。
【0019】
酸化チタンとしては、公知のルチル型・アナターゼ型の二酸化チタンが使用できるが、好ましくはルチル型二酸化チタンを使用する。本発明で使用する酸化チタンの平均粒径としては、100〜500nmのものを使用することが好ましく、150〜400nmのものを使用することがより好ましい。平均粒径が100nm以下であると水性媒体中の非沈降性や分散安定性はより実現し易くなるものの、白色度や隠蔽性が劣ってしまい本来の白色インキとしての実用性が低下する、平均粒径が500nm以上になると白色度や隠蔽性の点では問題ないが、非常に沈降しやすくなり、水性媒体中で安定した分散を得難くなる。またその大きさ重さがインク吐出性に悪影響を及ぼすため、インクジェット記録用インクとして使用することが極めて困難となる。これら理由から、粒径について実用的には200〜300nmが更により好ましい。
【0020】
酸化チタンの表面処理方法としては、水系処理、気相処理等が行われるが、上記理由のため表面処理剤としては、一般的にアルミナ、シリカが使用され、この結果、通常塗料用酸化チタンとしては、未処理、アルミナ処理、アルミナ・シリカ処理のものがある。また、アルミナ・シリカ処理の顔料については、アルミナ処理量に比較してシリカ処理量の多い品種、シリカ処理量に比較してアルミナ処理量の多い品種が市販されている。
本発明で使用する酸化チタンの表面処理は、前記アルミナ及びシリカによる表面処理量の総和のうち、アルミナ処理量の比率が35質量%以上、80質量%以下のものが好ましい。酸化チタンを処理するこれら無機物の量は必ずしも限定されないが、一般的には酸化チタン100部に対して30部以下である。また、特定処理量のアルミナ及びシリカによる表面処理を行われた酸化チタンに、シランカップリング剤によってさらに表面処理を行っても良い。
【0021】
本発明において、顔料はその表面に水分散性付与基を有し、分散剤が無くとも安定に分散状態が維持できる、いわゆる自己分散型顔料(表面処理顔料)でも良いし、顔料表面の全体をポリマーで被覆し、これにより分散剤が無くとも安定に分散状態が維持できる、いわゆるカプセル顔料(水分散性ポリマー包含顔料)でも良いし、分散剤により分散された顔料でも良い。
【0022】
本発明で使用する水性インクジェット記録用インクに用いられる樹脂には分散樹脂、バインダー樹脂があるが、アクリル系、スチレン−アクリル系、スチレン−マレイン酸系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、酢酸ビニル系、ポリアミド系、シリコン系等が挙げられる。分散樹脂としては、樹脂の分散安定性、顔料分散安定性に優れるものとして、アクリル系、スチレン−アクリル系、スチレン−マレイン酸系、ポリウレタン系が好ましい。
バインダー樹脂としては、インクジェット吐出安定性良好かつ軟包装用基材への接着性、ラミネート適性に優れるものとして、アクリル系、スチレン−アクリル系、ポリウレタン系樹脂が好ましく、中でもウレタン系樹脂が好ましい。さらに樹脂が酸価を有し、乳化剤を含まないディスパージョンタイプであることが好ましく、該樹脂のTgが0℃以下であることがさらに好ましい。
分散樹脂とバインダー樹脂は、必ずしもそれぞれが分離して機能するわけではなく、一つあるいは複数の樹脂が両方の機能を果たすこともある。そしていずれの機能を果たにしてもインク中には水性ポリウレタン樹脂が含有されることが好ましい。
【0023】
本発明で使用する水性インクジェット記録用インクに用いられる水溶性有機溶剤としては水との混和性がありインクジェットプリンターのヘッドの目詰まり防止効果が得られるものとして以下のものが例示されるが、これらに限定されるものではない。例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、等が挙げられる。
前記の中でも、プロピレングリコール、1,3−ブチルグリコールを含むことが安全性を有し、かつインク乾燥性、吐出性能に優れた効果が見られる。
【0024】
本発明で使用する水性インクジェット記録用インクに用いられる界面活性剤としてはノニオン系、カチオン系、又はアニオン系など公知の各種界面活性剤が使用できるが、アセチレン系界面活性剤が主に挙げられ、好ましくは2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールの他、市販品としては、サーフィノール104、82、440、465、485、またはTG(以上Air Products and Chemicals.Incより入手可)、オルフィンSTG、オルフィンE1004、オルフィンE1010(以上日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0025】
上記各成分を用いて本発明の画像形成方法で使用する水性インクジェット用インクを製造する方法は、まず、顔料、分散樹脂を含有する水性樹脂ワニス(水混和性溶剤、塩基性化合物等を含む)、水性媒体を含有する混合物を、各種分散・攪拌機、例えば、ビースミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、パールミル等を利用して分散・混合し顔料分散液を作製し、さらに、バインダー樹脂の他、必要に応じて界面活性剤、顔料分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、等を含む残りの材料を添加混合し、濾過する方法等が挙げられる。
【0026】
このように作製した水性インクジェット用インクジェット印刷方式としては、ヘッドを印刷基材の幅方向に走査させながら印刷を行なうシャトル方式(マルチパス型)と、印刷基材の幅と同じ寸法に印字ヘッドが配列されたライン方式(シングルパス型)が知られているが、本発明の印刷層を形成するための印刷方式はどちらかに限定されるものではない。高生産性が望まれる軟包装用の印刷方式としては、高速での印刷が可能なライン方式(シングルパス型)が好ましい。
【0027】
本発明で使用する積層体における接着剤層は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、天然ゴム、SBR、NBR、シリコーンゴム等の合成ゴム等の接着剤が挙げられる。特にドライラミネート用の接着剤として好ましくは一液もしくは二液硬化型のポリエーテル−ポリウレタン系接着剤、ポリエステル−ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤があげられる。また押し出しラミネート用の接着剤として好ましくは、ポリエチレンイミン、アルキルチタネート、ポリウレタン系樹脂、ウレタン系接着剤等があげられる。
【0028】
本発明の画像形成方法においては、軟包装材料である非吸収性基材と受理層との間に接着性を向上させるためアンカーコート層を形成することができる。本発明で使用する積層体におけるアンカーコート層は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、天然ゴム、SBR、NBR、シリコーンゴム等の合成ゴム等の接着剤が挙げられるが、好ましくはポリエチレンイミン、アルキルチタネート、ポリウレタン系樹脂、二液硬化型ポリウレタン接着剤等が良い。より好ましくは、ポリエステルフィルムに対しては二液硬化型ポリウレタン接着剤、ポリオレフィンフィルムに対してはポリウレタン系樹脂があげられる。
これらアンカー層を形成するには、公知の印刷又は塗工方式を用いることができる。具体的にはグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷およびインクジェット印刷等の印刷方式やグラビアコーター、グラビアリバースコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、ナイフコーター、キスコーター及びコンマコーター等の塗工方式を用いることができる。
【0029】
本発明の画像形成方法においては、受理層上に形成した印刷層表面に軟包装材用の溶融もしくはフィルム状のポリマーを積層させて(e)シーラントフィルム層を形成する。シーラントフィルム層としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ナイロン等のポリアミド系フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリ乳酸フィルム等の生分解性フィルム等が挙げられる。シーラントフィルムとしては、ヒートシール適性の優れるフィルムが良く、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
【0030】
本願発明の画像形成方法における上記シーラントフィルム層は、上記接着剤層(d)を介して、ラミネート加工により(e)形成される。ラミネート加工方法としては、特に制限はないが、接着剤を介してフィルムとフィルムを圧着し貼り合わせるドライラミネート法、ノンソルベントドライラミネート法、溶融状態の樹脂を押し出し、フィルム状にする押し出しラミネート法、ポリサンドラミネート法、加熱により溶融状態となった接着剤を塗布するホットメルトラミネート法、ワックスラミネート法、水性接着剤を使用するウェットラミネート法、フィルム自体に熱をかけることによるサーマルラミネート法などが挙げられる。好ましくは、ドライラミネート法、ノンソルベントドライラミネート法、押し出しラミネート法、ポリサンドラミネート法が良い。
【0031】
本発明の画像形成方法を用いて軟包装材料に印刷層が形成され、ラミネート加工された積層体は、そのままでも軟包装用の積層体として使用することができるが、各層の間にさらに耐久性、耐熱性、耐水性、耐湿性、耐光性、耐突き刺し性、ガスバリア性などの機能性を有する積層体を形成してもよい。具体的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ナイロン等のポリアミド系フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリ乳酸フィルム等の生分解性フィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン、アルミ蒸着層、アルミナおよびシリカ蒸着層、アルミ箔などが用いられる。これらの機能性を有する積層体は、印刷層が形成、ラミネート加工された上記軟包装材料を有する積層体とともに積層されて、食品用の軟包装袋等に使用される。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の効果を実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の記載において部は重量部を示す。
【0033】
(樹脂製造例1)
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG−1000、分子量=1000、三菱化学社製)の1000部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、酢酸エチル1000部を加え十分に攪拌し溶解させ、2,2’−ジメチロールプロピオン酸100部を加え、次いでトリレンジイソシアネート400部を加えて75℃で5時間反応させ、プレポリマー化工程を実施した。
イソシアネート値が1.80〜1.90%になったのを確認した後、40℃まで冷却し、トリエチルアミン75部加えて中和した後、水7000部を加えて水溶化した。次いで、鎖伸長剤として80%水加ヒドラジン36部を加えることにより鎖伸長反応を実施した。
得られた半透明な反応生成物を減圧下、30〜60℃にて酢酸エチルを除去した後、水を加えて濃度調節を行い不揮発分20%の安定な半透明のポリウレタン系樹脂の水分散液を得た。
【0034】
(顔料分散液製造例)
(シアン顔料分散液)
シアン顔料(DIC株式会社製 FANTOGEN BLUE FSJ−SD) 20部、顔料分散樹脂(ビックケミー・ジャパン株式会社製 Disperbyk−190) 30部、イソプロピルアルコール 5部、純水 45部を攪拌混合し、ビーズミルを用いて練肉分散した後に練肉分散液を遠心分離機にかけて粗大粒子を取り除き、純水を加えて固形分15%に調整したシアン顔料分散液を得た。
【0035】
(マゼンタ顔料分散液)
マゼンタ顔料(DIC株式会社製 Fastogen Super Magenta RTS) 20部、顔料分散樹脂(ビックケミー・ジャパン株式会社製 Disperbyk−190) 30部、イソプロピルアルコール 5部、純水 45部を攪拌混合し、ビーズミルを用いて練肉分散した後に練肉分散液を遠心分離機にかけて粗大粒子を取り除き、純水を加えて固形分15%に調整したマゼンタ料分散液を得た。
【0036】
(イエロー顔料分散液)
イエロー顔料(山陽色素株式会社製 Fast Yellow 7413) 20部、顔料分散樹脂(ビックケミー・ジャパン株式会社製 Disperbyk−190) 30部、イソプロピルアルコール 5部、純水 45部を攪拌混合し、ビーズミルを用いて練肉分散した後に練肉分散液を遠心分離機にかけて粗大粒子を取り除き、純水を加えて固形分15%に調整したイエロー顔料分散液を得た。
【0037】
(ブラック顔料分散液)
ブラック顔料(三菱化学株式会社製 カーボンブラック#960) 20部、顔料分散樹脂(ビックケミー・ジャパン株式会社製 Disperbyk−190) 30部、イソプロピルアルコール 5部、純水 45部を攪拌混合し、ビーズミルを用いて練肉分散した後に練肉分散液を遠心分離機にかけて粗大粒子を取り除き、純水を加えて固形分15%に調整したブラック顔料分散液を得た。
【0038】
(ホワイト顔料分散液)
ホワイト顔料(テイカ株式会社製 JR−804) 40部、顔料分散樹脂(ビックケミー・ジャパン株式会社製 Disperbyk−190) 10部、イソプロピルアルコール 5部、純水 46部を攪拌混合し、ビーズミルを用いて練肉分散した後に純水を加えて顔料濃度38%に調整したホワイト顔料分散液を得た。
【0039】
(顔料分散液の固形分測定方法)
蒸発皿の重量(A)、顔料分散液を蒸発皿に滴下した後の総重量(B)、顔料分散液を滴下させた蒸発皿を100℃に加温した乾燥機に2時間放置して水分を蒸発させて固体化した顔料分散物と蒸発皿の総量(C)を測定し、下記式にて固形分を求める。
固形分(%) = ((C)−(A))/((B)−(A)) × 100
【0040】
(インクジェットインク製造例)
(シアンインク)
シアン顔料分散液 26.7部、製造例1の樹脂組成物 8.6部、プロピレングリコール 10部、1,3−ブチレングリコール 10部、界面活性剤(サーフィノール440) 0.5部、純水 44.2部を加え、この液を0.5μmのグラスフィルターで濾過して、シアンインクを調整した。
【0041】
(マゼンタインク)
マゼンタ顔料分散液 46.7部、製造例1の樹脂組成物 8.6部、プロピレングリコール 10部、1,3−ブチレングリコール 10部、界面活性剤(サーフィノール440) 0.5部、純水 24.2部を加え、この液を0.5μmのグラスフィルターで濾過して、マゼンタインクを調整した。
【0042】
(イエローインク)
イエロー顔料分散液 33.3部、製造例1の樹脂組成物 8.6部、プロピレングリコール 10部、1,3−ブチレングリコール 10部、界面活性剤(サーフィノール440) 0.5部、純水 37.6部を加え、この液を0.5μmのグラスフィルターで濾過してイエローインクを調整した。
【0043】
(ブラックインク)
ブラック顔料分散液 33.3部、製造例1の樹脂組成物 8.6部、プロピレングリコール 10部、1,3−ブチレングリコール 10部、界面活性剤(サーフィノール440) 0.5部、純水 37.6部を加え、この液を0.5μmのグラスフィルターで濾過してブラックインクを調整した。
【0044】
(ホワイトインク)
ホワイト顔料分散液 39.5部、製造例1の樹脂組成物 14.2部、プロピレングリコール 10部、1,3−ブチレングリコール 10部、界面活性剤(サーフィノール440) 0.5部、純水 25.8部を混合した後、この液を1μmのグラスフィルターで濾過してホワイトインクを調整した。
【0045】
以下表1に各インクの組成をまとめる。
【0046】
【表1】

【0047】
(インクジェット層用塗料製造例)
(受理層用塗料組成物1)
塩化マグネシウムを10部、ボンディック2250[大日本インキ化学工業(株)製 ポリカーボネート鎖を有するポリウレタンの水性分散液、平均粒子径0.2ミクロン]50部とWS535[日本PMC(株)製 エピクロルヒドリンポリアミド樹脂]50部、Z200[日本合成化学(株)製 アセトアセチル化ポリビニルアルコール]を固形分として50部配合した膨潤タイプの受理層用塗料組成物1を得た。
【0048】
受理層用塗料組成物2
カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(DIC社製ハイドランCP-7020)と、PVA145H(クラレ株式会社製、ケン化度99.5%、重合度4500のポリビニルアルコール)の8質量%水溶液と、塩化マグネシウムの6水和物の53.5質量%水溶液を、質量割合が、28.6:66.7:4.7となるように配合し、膨潤タイプのインクジェット受理層用塗料組成物2を得た。
【0049】
受理層用塗料組成物3
ポリビニルアルコール(PVAR1130、クラレ社製)4.4部、シリカ(ミズカシルP−78F、水澤化学工業社製)7.7部、焼成カオリン(アルトホワイトTE、昭和化学工業社製)1.9部、インク定着剤(ホリフィックス700、昭和高分子社製)4.1部、アルミナゾル(アルミナゾル200、固形分10%、日産化学工業社製)8.6部、蛍光増白剤 (ブランゴファーUWリキッド、固形分50%、バイエル社製) 0.3部、非イオン界面活性剤(SNデフォーマー480、固形分100%、サンノプコ社製)0.2部、水72.3部を配合したマイクロポーラスタイプの受理層用塗料組成物3を得た。
【0050】
(接着剤の調整)
ディックドライ LX−401(DICグラフィックス社製) 10部、 硬化剤 SP−60(DICグラフィックス社製) 10部、酢酸エチル 60部、を混合攪拌して調整した。
【0051】
(アンカーコート層用塗料の製造例)
(アンカーコート層用塗料1)
製造例1の樹脂組成物に純水を加え、固形分10%にし、アンカーコート層用塗料1(AC剤1)を得た。
(アンカーコート層用塗料2)
ディックドライ LX−500(DICグラフィックス社製) 15部、 硬化剤 KR−90S(DICグラフィックス社製) 1部、酢酸エチル 164部を混合、攪拌し、アンカーコート層用塗料2(AC剤2)を得た。
【0052】
(実施例1)
食品パッケージ用として使用されるPETフィルム(膜厚12μm 東洋紡績株式会社製 エステルE−5100)に、アンカーコート層用塗料(AC剤1)を塗布し、アンカーコート層を得た。さらにバーコーターで受理層用塗料組成物1を塗布、乾燥し、膜厚10μmのインクジェット受理層を得た。次いで最大駆動周波数7.6KHz、解像度360DPI(25.4mm当たり360ドット)のピエゾヘッドを有するインクジェットプリンターでシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクジェットインクを吐出し、次いでホワイトインクを吐出した後、100℃に加温した乾燥機に3分間放置して、インク塗膜である印刷層を得た。インク塗膜の上にバーコーターNo.10を用いて上記で調整した接着剤を塗布し、ドライヤーの温風で全体を10秒間当てて接着剤を乾燥させ、シーラントフィルムとしてCPPフィルム(東洋紡績社製 パイレンP−1128)を被せてロール温度を40℃に設定したラミネーターで貼り合わせた。ラミネート加工物を40℃の恒温槽に48時間放置し、実施例1の積層体を得た。
【0053】
(実施例2)
実施例1の受理層用塗料として受理層用塗料組成物2を使用したこと以外は上記実施例1と同様にし、実施例2の積層体を得た。
(実施例3)
実施例1の受理層用塗料として受理層用塗料組成物3を使用したこと以外は上記実施例1と同様にし、実施例3の積層体を得た。
(実施例4)
実施例2の基材フィルムとしてPETフィルム(膜厚25μm 東洋紡績株式会社製 エステルE−5100)を使用したこと以外は上記実施例2と同様にし、実施例4の積層体を得た。
【0054】
(実施例5)
実施例2の受理層用塗料の膜厚を5μmにしたこと以外は上記実施例2と同様にし、実施例5の積層体を得た。
(実施例6)
実施例2の基材フィルムと受理層の間に、アンカーコート層用塗料1をバーコーター#4で塗布、乾燥して得られたアンカーコート層を設けたこと以外は上記実施例2と同様にし、実施例6の積層体を得た。
(実施例7)
実施例6のアンカーコート層用塗料としてアンカーコート層用塗料2を使用したこと以外は上記実施例6と同様にし、実施例7の積層体を得た。
【0055】
(実施例8)
実施例2の基材フィルムとしてOPPフィルム(膜厚20μm フタムラ化学株式会社製 FOR#20)を使用したこと以外は上記実施例2と同様にし、実施例8の積層体を得た。
(実施例9)
実施例8の基材フィルムと受理層の間に、アンカーコート層用塗料1をバーコーター#4で塗布、乾燥して得られたアンカーコート層を設けたこと以外は上記実施例8と同様にし、実施例9の積層体を得た。
(実施例10)
実施例9のアンカーコート層用塗料としてアンカーコート層用塗料2を使用したこと以外は上記実施例9と同様にし、実施例10の積層体を得た。
【0056】
(比較例1)
実施例3の受理層用塗料を使用しないこと以外は上記実施例1と同様にし、比較例1の積層体を得た。
(比較例2)
実施例1のインクジェット受理層組成物3の膜厚を35μmにしたこと以外は上記実施例3と同様にし、比較例2の積層体を得た。
(比較例3)
比較例2の基材フィルムとして、PETフィルム(膜厚125μm 東洋紡績株式会社製 エステルE−5100)をにしたこと以外は上記比較例2と同様にし、比較例3の積層体を得た。
【0057】
実施例1〜10、比較例1〜3で作製した積層体を用いて以下の評価項目を測定した。結果を表2に示す。
【0058】
(物性評価)
(ラミネート強度試験)
接着剤を十分に硬化させた(2)のラミネート加工物を長さ200mm、幅15mm幅に切り、貼り合わせた部分を30mm程度剥離する。剥離した部分を引っ張り試験機にかけてラミネート接着の強度を測定する。
◎:ラミネートした物を剥離した時の強度が2N/15mm以上
○:ラミネートした物を剥離した時の強度が1N/15mm以上〜2N/15mm未満
△:ラミネートした物を剥離した時の強度が0.5N/15mm以上〜1N/15mm未満
×:ラミネートした物を剥離した時の強度が0.5N/15mm未満
(インクジェット印字性)
インクジェットプリンターで印字後、インクのはじき、にじみを目視で評価。
○:インクのはじき、にじみなし
△:インクのはじき若しくはにじみが見られる
×:インクのはじき、にじみが著しい
【0059】
(密着性)
上記方法により得られたインク塗膜にセロハンテープ(ニチバン社製粘着テープ)を貼り付け、垂直方向に急速に引き剥がした時のインク塗膜の状態を目視で観察、評価した。
○:インクの剥離面積 10%未満
△:インクの剥離面積 10%以上50%以下
×:インクの剥離面積 50%以上
(柔軟性)
上記方法により得られた印刷物積層体を180°に2つ折りにし、積層体の柔軟性を評価。
○:二つ折りにより積層体の破損、変形がない
△:二つ折りにより積層体の僅かな変形が発生する。
×:二つ折りにより明かな積層体の破損、変形がある
【0060】
(耐カール性)
上記方法により得られたインク塗膜を室温で24時間放置後、印刷物のカール性を目視にて評価した。
○:カールが見られない
△:僅かなカールが見られる
×:明かなカールが見られる
(透明性)
上記方法により得られた印刷物積層体の透明性を目視で評価した。
○:透明
△:やや不透明
×:不透明
【0061】
【表2】

【0062】
上表の結果から、本発明の印刷方法は、非吸収性基材上に形成された、特定の薄い膜厚範囲を有する受理層上においてもインクジェット記録法で印刷して高品質の印刷層を形成することができ、これらの層を含有する積層体を、特定の薄い膜厚範囲を有する軟包装材用フィルムに対してラミネート加工が可能で、インクジェット記録による高画質の画像を、軟包装材上に該軟包装材の柔軟性を損なうことなく形成することができる。
実施例1〜実施例10から明らかな様に、本発明の画像形成方法によれば、膜厚100μm以下の軟包装用の基材フィルムに対して、良好な画像を形成し軟包装材用途に適した積層体を作製することができる。またアンカーコート層の採用でPET、OPP両フィルム基材を用いた場合のラミネート適性をさらに向上させることが可能である。受理層用塗料1、及び2は共に受理層用塗料3よりさらに良好なラミネート適性やインクジェット印字特性を有しているが、インクジェット印字特性の点で受理層用塗料2を用いた場合の方がさらにより鮮明な画像を形成することができた。
比較例3に示す様にインク受理能力の高い膜厚の大きい受理層を用いると、インクジェット印字特性は良好で、さらに基材フィルムの膜厚を厚くすれば耐カール性も良好であるが、柔軟性や透明性の点で軟包装材用途には適さないものとなる。仮に基材フィルムの膜厚のみを減少させても、それだけでは柔軟性は改良されても、受理層の影響の大きい透明性は改良されず、一方で耐カール性が大きく低下する。したがって実施例3に示した様に、基材フィルムと受理層の膜厚を共に本発明で規定する数値範囲内にまで減少させて、インクジェット印字特性を維持しつつ柔軟性、透明性、耐カール性を向上させることが必要である。
このように本発明による画像形成方法で画像を形成された積層体は、軟包装用途としての柔軟性、耐久性に優れた性能を示している。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の画像形成方法により軟包装材料上に画像を印刷され、ラミネート加工を経て作製された軟包装用積層体は、食品用の軟包装袋等をはじめとして各種軟包装袋に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟包装材料への画像形成方法であって、(a)軟包装材料表面に形成された(b)インクジェット受理層上に、顔料、及び樹脂を含有する水性インクジェット記録用インクを用いて(c)印刷層を形成し、該印刷層上に(d)接着剤層を形成し、次いで溶融もしくはフィルム状のポリマーを積層させるラミネート加工により(e)シーラントフィルム層を形成し、前記(a)軟包装材料の膜厚が10〜100μm、前記インクジェット受理層の膜厚が2〜20μmであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記(b)インクジェット受理層は水性ポリウレタン樹脂を含有する請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記(b)インクジェット受理層が白色無機顔料を実質的に含まないことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法
【請求項4】
前記(c)印刷層の形成に使用される水性インクジェット記録用インクは、インク中に水性ポリウレタン樹脂を少なくとも含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記(a)軟包装材料表面と(b)インクジェット受理層の間に(f)アンカーコート層を形成する請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記水性インクジェット記録用インクとして、酸化チタンを着色剤とする白色インクを使用する請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
軟包装用の積層体であって、請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成方法によって形成された印刷層とシーラントフィルム層を該積層体中に有することを特徴とする軟包装用の積層体。
【請求項8】
軟包装用の積層体の製造方法であって、前記積層体の構成材料の一つである(a)軟包装材料表面に形成された(b)インクジェット受理層上に、顔料、及び樹脂を含有する水性インクジェット記録用インクを用いて(c)印刷層を形成し、該印刷層上に接着剤層(d)を形成し、次いで軟包装用の溶融もしくはフィルム状のポリマーを積層させるラミネート加工により(e)シーラントフィルム層を形成する工程を有し、前記軟包装材料の膜厚が10〜100μm、前記受理層の膜厚が2〜20μmであることを特徴とする軟包装用の積層体の製造方法。

【公開番号】特開2012−250416(P2012−250416A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124192(P2011−124192)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【出願人】(310000244)DICグラフィックス株式会社 (27)
【Fターム(参考)】