説明

水性ウレタン樹脂

【課題】芳香族および/または芳香脂肪族ポリイソシアネートが用いられる、水性ポリウレタン樹脂を提供すること。
【解決手段】芳香族および/または芳香脂肪族ポリイソシアネート、ポリオール、および、親水性基および活性水素基を併有する化合物を、少なくとも反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを得る。次いで、イソシアネート基末端プレポリマーと活性水素基を有する環状カーボネートとを反応させて環状カーボネート末端プレポリマーを得る。その後、環状カーボネート末端プレポリマーとポリアミンとを水中で反応させて水性ポリウレタン樹脂を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ウレタン樹脂、詳しくは、各種分野に使用される水性ウレタン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
環境負荷低減および作業環境改善の観点から、有機溶剤の使用を低減するために、有機溶剤に溶解して使用する有機溶剤系ウレタン樹脂に代替して、水に分散または溶解して使用する水性ウレタン樹脂が各種分野で開発されている。
このような水性ウレタン樹脂は、まず、ポリイソシアネートおよび親水性ポリオールからイソシアネート基末端プレポリマーを調製し、次いで、イソシアネート基末端プレポリマーを水中でジアミンと鎖伸長反応させることにより、得ることができる。
【0003】
例えば、揮発性の極性溶媒中、触媒の存在下で、ジイソシアネート、ポリカーボネートジオール、カルボン酸ジオールおよび第三級アミンを反応させることによりポリウレタンプレポリマー溶液を調製し、そのポリウレタンプレポリマー溶液を水に分散させ、続いてジアミンで鎖延長させ、揮発性の極性溶媒を除去して水性ポリウレタン分散液を得る水性ポリウレタン分散液の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−41990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、水性ポリウレタン樹脂の製造では、上記したように、イソシアネート基末端プレポリマーを水中でジアミンと鎖伸長反応させるので、イソシアネート基末端プレポリマーの調製に使用されるポリイソシアネートは、水と反応しにくい低活性なイソシアネート基末端を有することが前提となる。
そのため、活性の高い、芳香族および芳香脂肪族ポリイソシアネートは、使用することができず、使用できるポリイソシアネートは、活性の低い、脂肪族および脂環族ポリイソシアネートに限定される。
【0005】
しかし、脂肪族および脂環族ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートと比較して、高価であり、水性ポリウレタン樹脂の製造コストの低減化を図るには限界がある。
また、芳香族ポリイソシアネートや芳香脂肪族ポリイソシアネートの特性を活かした水性ポリウレタン樹脂を調製できれば、それらの用途展開を拡大することができる。
本発明の目的は、芳香族および/または芳香脂肪族ポリイソシアネートが用いられる、水性ポリウレタン樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、芳香族および/または芳香脂肪族ポリイソシアネート、ポリオール、および、親水性基および活性水素基を併有する化合物を、少なくとも反応させることにより得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素基を有する環状カーボネートとの反応により得られる環状カーボネート末端プレポリマーと、ポリアミンとを反応させることにより得られることを特徴としている。
【0007】
本発明の水性ポリウレタン樹脂では、前記芳香族および/または芳香脂肪族ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートおよびキシリレンジイソシアネートから選択される少なくとも1種であることが好適である。
本発明の水性ポリウレタン樹脂では、前記活性水素基を有する環状カーボネートが、モノヒドロキシエチレンカーボネートであることが好適である。
【0008】
本発明の水性ポリウレタン樹脂では、前記親水性基および活性水素基を併有する化合物が、アニオン性基を有するジオール、または、下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン鎖を有するジオールであることが好適である。
一般式(1)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R1およびR2は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキレン基を示す。R3は、炭素数6〜13の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香脂肪族炭化水素基を示す。R4は、炭素数1〜4のアルキル基を示す。nは8〜50の整数を示す。)
本発明の水性ポリウレタン樹脂では、前記ポリアミンが、ジアミンであることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物によれば、芳香族および/または芳香脂肪族ポリイソシアネートが使用されているので、それらの特性を活かした水性ポリウレタン樹脂を提供することができる。また、芳香族ポリイソシアネートが使用される場合には、水性ポリウレタン樹脂を安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の水性ウレタン樹脂は、環状カーボネート末端プレポリマーと、ポリアミンとを反応させることにより得ることができる。
環状カーボネート末端プレポリマーは、イソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素基を有する環状カーボネートとの反応により得ることができる。
イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と活性水素成分との反応により得ることができる。
【0013】
ポリイソシアネート成分は、芳香族ポリイソシアネートおよび芳香脂肪族ポリイソシアネートから1種または2種以上選択される。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TDI)、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、m−またはp−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0014】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)、ω,ω′−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
また、ポリイソシアネート成分には、例えば、上記した芳香族および/または芳香脂肪族ポリイソシアネートの多量体(例えば、二量体、三量体など)や、例えば、上記した芳香族および/または芳香脂肪族ポリイソシアネートあるいは多量体と、水との反応により生成するビウレット変性体、アルコールまたは下記の低分子量ポリオールとの反応により生成するアロファネート変性体、炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオン変性体、または、下記の低分子量ポリオールとの反応により生成するポリオール変性体などが含まれる。
【0015】
これら芳香族および/または芳香脂肪族ポリイソシアネートは、単独または2種以上を併用してもよく、好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートおよびキシリレンジイソシアネートが挙げられる。ジフェニルメタンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネートを使用すれば、水性ポリウレタン樹脂を安価に提供することができる。また、キシリレンジイソシアネートを使用すれば、その特性を活かした水性ポリウレタン樹脂を提供することができる。
【0016】
活性水素成分には、ポリオール、および、親水性基および活性水素基を併有する化合物(以下、親水性基含有活性水素化合物とする。)が含まれる。
ポリオールは、2つ以上の水酸基を有する化合物であって、低分子量ポリオールおよび高分子量ポリオール(以下、マクロポリオールとする。)が挙げられる。
低分子量ポリオールは、例えば、数平均分子量60〜400の化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,18−オクタデカンジオールなどのC2−22アルカンジオール、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオールなどのアルケンジオールなどの脂肪族ジオール:例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAまたはそのC2−4アルキレンオキサイド付加体などの脂環族ジオール:例えば、レゾルシン、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、これらビスフェノール類のC2−4アルキレンオキサイド付加体などの芳香族ジオール:例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテルジオールなどの低分子量ジオール;例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)ペンタン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールおよびその他の脂肪族トリオール(炭素数8〜24)などの低分子量トリオール;例えば、テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニットなどの水酸基を4つ以上有する低分子量ポリオールなどが挙げられる。
【0017】
また、マクロポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、天然油ポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ポリオレフィンポリオールなどが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリアルキレンオキサイド、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって得られる、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)が挙げられる。また、例えば、テトラヒドロフランの開環重合などによって得られるポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0018】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールの1種または2種以上と、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜13)、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などのカルボン酸、および、これらのカルボン酸などから誘導される酸無水物、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−アルキル(炭素数12〜18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、さらには、これらのカルボン酸などから誘導される酸ハライド、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバチン酸ジクロライドなどとの反応によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。また、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどのラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0019】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、触媒の存在下または不在下に、ホスゲン、ジアルキルカーボネート、ジアリルカーボネート、アルキレンカーボネートなどを反応させて得られるポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
アクリルポリオールとしては、例えば、1つ以上の水酸基を有する重合性単量体と、これに共重合可能な別の単量体とを共重合させることによって得られる共重合体が挙げられる。水酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。また、これらと共重合可能な別の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜12)、マレイン酸、マレイン酸アルキル、フマル酸、フマル酸アルキル、イタコン酸、イタコン酸アルキル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、3−(2−イソシアネート−2−プロピル)−α−メチルスチレン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。そして、アクリルポリオールは、これら単量体を適当な溶剤および重合開始剤の存在下において共重合させることによって得ることができる。
【0020】
エポキシポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと、例えば、エピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリンなどの多官能ハロヒドリンとを反応させることよって得られるエポキシポリオールが挙げられる。
天然油ポリオールとしては、例えば、ひまし油、やし油などの水酸基含有天然油などが挙げられる。
【0021】
シリコーンポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体として、ビニル基含有のシリコーン化合物、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが用いられる共重合体、および、末端アルコール変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
フッ素ポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体としてビニル基含有のフッ素化合物、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンなどが用いられる共重合体などが挙げられる。
【0022】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ボリブタジエンポリオール、部分ケン価エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
これらマクロポリオールは、数平均分子量が、例えば、300〜10000、好ましくは500〜5000であり、水酸基当量が、例えば、100〜5000、好ましくは、160〜2500である。
【0023】
これらポリオールは、単独または2種以上を併用してもよく、好ましくは、低分子量ポリオールとして、脂肪族ジオールが挙げられ、マクロポリオールとして、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
また、ポリオールは、活性水素成分100重量部に対して、例えば、5〜95重量部、好ましくは、10〜95重量部の割合で配合される。具体的には、低分子量ポリオールが配合される場合には、その配合割合は、活性水素成分100重量部に対して、例えば、5〜50重量部、好ましくは、10〜40重量部である。また、マクロポリオールが配合される場合には、その配合割合は、活性水素成分100重量部に対して、例えば、40〜95重量部、好ましくは、50〜90重量部である。さらに、低分子量ポリオールおよびマクロポリオールの両方が配合される場合には、マクロポリオール100重量部に対する低分子量ポリオールの配合割合が、例えば、0.5〜30重量部、好ましくは、1〜25重量部である。
【0024】
親水性基含有活性水素化合物は、例えば、ポリオキシエチレン基などのノニオン性基や、アニオン性基またはカチオン性基などのイオン性基などの親水性基と、活性水素基とを併有する化合物である。親水性基含有活性水素化合物は、例えば、1つの親水性基を有しかつ2以上の活性水素基を有する化合物、好ましくは、1つの親水性基を有しかつ2つの活性水素基を有する化合物、さらに好ましくは、1つの親水性基を有しかつ2つの水酸基を有する化合物などが挙げられる。
【0025】
なお、親水性基含有活性水素化合物において、アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホニル基、リン酸基、スルホベタインなどのべタイン構造含有基が挙げられる。また、ノニオン性基としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール残基、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体残基などが挙げられる。
より具体的には、カルボキシル基を有する親水性基含有活性水素化合物として、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸、例えば、リジン、アルギニンなどのジアミノカルボン酸などが挙げられる。
【0026】
また、スルホニル基を有する親水性基含有活性水素化合物として、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,4−ジアミノ−5−トルエンスルホン酸などが挙げられる。
また、リン酸基を有する親水性基含有活性水素化合物として、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピルフェニルホスフェートなどが挙げられる。
【0027】
また、ベタイン構造含有基を有する親水性基含有活性水素化合物として、例えば、N−メチルジエタノールアミンなどの3級アミンと1,3−プロパンスルトンとの反応によって得られるスルホベタイン基含有化合物などが挙げられる。
また、親水性基含有活性水素化合物として、親水性基含有活性水素化合物に、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドが付加されているアルキレンオキサイド変性体を挙げることもできる。
【0028】
また、ポリオキシエチレングリコール残基を有する親水性基含有活性水素化合物として、例えば、2つの水酸基を含み、側鎖にポリオキシエチレン基を有しているポリオキシエチレン側鎖含有ジオールが挙げられる。ポリオキシエチレン側鎖含有ジオールは、例えば、まず、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(C1〜4のアルキル基で片末端封止したアルコキシエチレングリコール)とジイソシアネート(上記したジイソシアネート)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対してジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させた後、必要により未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートを得て、次いで、得られたポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(C1〜4のジアルカノールアミン)とをウレア化反応させることにより、得ることができる。
【0029】
このようなポリオキシエチレン側鎖含有ジオールは、例えば、下記一般式(1)で表される。
一般式(1)
【0030】
【化3】

【0031】
(式中、R1およびR2は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキレン基を示す。R3は、炭素数6〜13の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香脂肪族炭化水素基を示す。R4は、炭素数1〜4のアルキル基を示す。nは8〜50の整数を示す。)
上記式(1)中、R1およびR2は、ジアルカノールアミンのアルキレン基であり、R3は、ジイソシアネート残基であり、R4は、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールのアルコキシ基であり、nは、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールのポリオキシエチレンの重合度である。
【0032】
ポリオキシエチレン側鎖含有ジオールにおいて、ポリオキシエチレン基は、好ましくは、50重量%以上、さらに好ましくは、60〜90重量%含有されており、ポリオキシエチレン基の数平均分子量が、好ましくは、600〜6000、さらに好ましくは、700〜3000である。
これら親水性基含有活性水素化合物は、単独または2種以上を併用してもよく、好ましくは、1つのアニオン性基を有しかつ2つの水酸基を有する化合物(アニオン性基を有するジオール)や、ポリオキシエチレン側鎖含有ジオールが挙げられる。
【0033】
また、親水性基含有活性水素化合物は、活性水素成分100重量部に対して、例えば、5〜35重量部、好ましくは、10〜30重量部の割合で配合される。
また、親水性基含有活性水素化合物は、水性ポリウレタン樹脂の酸価が、5〜45mgKOH/g、好ましくは、10〜40mgKOH/gとなるように、配合される。酸価が、上記の範囲より小さいと、水分散性や水溶性が低下する場合がある。また、上記の範囲より大きいと、水分散液または水溶液の粘度が高くなる場合や、水性ポリウレタン樹脂の耐水性が低下する場合がある。
【0034】
また、親水性基含有活性水素化合物は、水性ポリウレタン樹脂のエチレンオキサイド鎖の含有量(EO%)が、例えば、3〜25重量%、好ましくは、5〜20重量%となるように配合される。EO%が上記の範囲より小さいと、水分散性や水溶性が低下する場合がある。また、上記の範囲より大きいと、水分散液または水溶液の粘度が高くなる場合や、水性ポリウレタン樹脂の耐水性が低下する場合がある。
【0035】
そして、ポリイソシアネート成分(芳香族および/または芳香脂肪族ポリイソシアネート)と、活性水素成分(ポリオールおよび親水性基含有活性水素化合物)とを反応させるには、公知の方法でよく、例えば、活性水素成分の活性水素基(水酸基)に対するポリイソシアネート成分のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、1以上の割合、好ましくは、1.1〜2.5となる割合で、ポリイソシアネート成分および活性水素成分を配合して、反応させる。
【0036】
この反応は、常圧下、また必要により窒素雰囲気下、その反応温度が、例えば、40〜100℃、好ましくは、50〜80℃に設定され、その反応時間が、例えば、1〜24時間、好ましくは、2〜12時間に設定される。また、この反応では、必要により、反応溶媒を使用し、反応触媒を添加することができる。
反応溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、除去が容易な低沸点溶媒である、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、例えば、テトラヒドロフランなどのエーテル類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。反応溶媒の使用量は、適宜決定される。
【0037】
反応触媒としては、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの公知のウレタン化触媒が挙げられる。反応溶媒の添加量は、適宜決定される。
この反応により、ポリイソシアネート成分と活性水素成分とが、ウレタン化反応して、分子末端にイソシアネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーを得ることができる。得られたイソシアネート基末端プレポリマーの遊離イソシアネート基含量(アミン滴定法による求められる。)は、例えば、0.5〜12%、好ましくは、1〜10%である。
【0038】
次いで、イソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素基を有する環状カーボネートとを反応させて、環状カーボネート末端プレポリマーを得る。
活性水素基を有する環状カーボネートは、1つ以上の活性水素基を有する環状カーボネート、好ましくは、1つ以上の水酸基を有する環状カーボネート、さらに好ましくは、1つの水酸基を有する環状カーボネートが挙げられる。1つの水酸基を有する環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの炭素数2〜5の環状カーボネートにおいて、それらのエチレン基のうちの1つの水素原子が1つの水酸基で置換された環状カーボネートが挙げられる。好ましくは、モノヒドロキシエチレンカーボネート(モノヒドロキシ5員環カーボネート)、モノヒドロキシプロピレンカーボネート(モノヒドロキシ6員環カーボネート)が挙げられる。さらに好ましくは、モノヒドロキシエチレンカーボネートが挙げられる。このモノヒドロキシエチレンカーボネートには、グリセリンと炭酸ジメチルから誘導されるグリセリンカーボネートが含まれる。活性水素基を有する環状カーボネートは、単独または2種以上を併用することができる。
【0039】
イソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素基を有する環状カーボネートとを反応させるには、例えば、活性水素基を有する環状カーボネートの活性水素基(水酸基)に対するイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、1以下の割合、好ましくは、0.99〜0.9となる割合で、イソシアネート基末端プレポリマーおよび活性水素基を有する環状カーボネートを配合して、反応させる。
【0040】
この反応は、常圧下、また必要により窒素雰囲気下、その反応温度が、例えば、40〜100℃、好ましくは、50〜80℃に設定され、その反応時間が、例えば、2〜12時間、好ましくは、3〜10時間に設定される。また、この反応では、必要により、上記と同様の反応溶媒を使用し、上記と同様の反応触媒を添加することができる。
具体的には、例えば、上記で得られたイソシアネート基末端プレポリマーの反応溶液に対して、活性水素基を有する環状カーボネートを、イソシアネート基が消費されるまで配合する。
【0041】
この反応により、イソシアネート基末端プレポリマーと活性水素基を有する環状カーボネートとが、ウレタン化反応して、分子末端に環状カーボネート骨格を有する環状カーボネート末端プレポリマーを得ることができる。
また、得られた環状カーボネート末端プレポリマーにおいて、親水性基含有活性水素化合物の親水性基がアニオン性基である場合には、得られた環状カーボネート末端プレポリマーに中和剤を添加して、アニオン性基を中和する。
【0042】
中和剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アミノエチルプロパンジオール、トリハイドロキシメチルアミノメタン、モノエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの有機アミン類、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの無機アルカリ塩、さらには、アンモニアなどが挙げられる。これら中和剤は、単独または2種以上を併用してもよく、好ましくは、有機アミン類が挙げられる。中和剤の添加量は、アニオン性基1当量あたり、例えば、0.4〜1.2当量、好ましくは、0.6〜1.0当量である。
【0043】
この中和によって、環状カーボネート末端プレポリマーのアニオン性基は、塩を形成する。
そして、環状カーボネート末端プレポリマーと、ポリアミンとを反応させて、本発明の水性ウレタン樹脂を得る。
ポリアミンとしては、例えば、4,4´−ジフェニルメタンジアミンなどの芳香族ジアミン、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジアミンもしくはその混合物などの芳香脂肪族ジアミン、例えば、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(慣用名:イソホロンジアミン)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジアミンなどの脂環族ジアミン、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、例えば、ヒドラジン(水和物を含む。)などのジドラジン類などのジアミン:例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのアミノ基が3つ以上の脂肪族ポリアミン:例えば、N−(2−アミノエチル)エタノールアミンなどのアミノアルコールなどが挙げられる。

また、ポリアミンとして、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物や、ポリオキシエチレン基含有ポリアミンも挙げられる。より具体的には、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物として、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基含有モノアミン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0044】
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンは、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。 これらポリアミンは、単独または2種以上を併用してもよく、好ましくは、ジアミンや第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物が挙げられる。
環状カーボネート末端プレポリマーと、ポリアミンとは、環状カーボネート末端プレポリマーとポリアミンと水中で反応させて、分散または溶解する。これによって、環状カーボネート末端プレポリマーの環状カーボネートが開環するとともに、ポリアミンのアミノ基とウレタン化反応して、環状カーボネート末端プレポリマーがポリアミンによって鎖伸長される。そして、得られた水性ポリウレタン樹脂は、水中に分散または溶解した水分散液または水溶液として調製される。
【0045】
具体的には、まず、環状カーボネート末端プレポリマーを分散または溶解させる。水分散または溶解させるには、例えば、環状カーボネート末端プレポリマー100重量部に対して、水20〜500重量部の割合において、水中に、攪拌下、環状カーボネート末端プレポリマーを徐々に添加する。
次いで、環状カーボネート末端プレポリマーが分散または溶解された水中に、攪拌下、ポリアミンのアミノ基に対する環状カーボネート末端プレポリマーのカーボネート骨格の当量比(カーボネート骨格/アミノ基)が、例えば、0.8〜1.2、好ましくは、0.9〜1.1の割合となるように、ポリアミンを添加する。添加後、例えば、20〜90℃、好ましくは、30〜80℃で、2〜24時間、好ましくは、5〜20時間、さらに攪拌しつつ、反応を完結させる。
【0046】
なお、上記したウレタン化反応において、反応溶媒が使用されている場合には、そのウレタン化反応終了後、または、分散または溶解後に、反応溶媒を、例えば、減圧下において、適宜の温度で加熱することにより留去する。
このようにして得られる水性ポリウレタン樹脂の水分散液または水溶液は、その固形分が、例えば、10〜60重量%、好ましくは、20〜50重量%となるように調製される。また、水性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、GPC測定による標準ポリスチレン換算値として、例えば、数千〜数百万、好ましくは、数万〜数十万である。また、水性ポリウレタン樹脂の水分散液または水溶液において、水性ポリウレタン樹脂の平均粒子径(動的光散乱により測定)は、例えば、20〜1000nm、好ましくは、50〜500nmである。
【0047】
なお、本発明の水性ポリウレタン樹脂、または、その水分散液または水溶液には、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、例えば、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、防カビ剤、防錆剤、艶消し剤、難燃剤、揺変剤、粘着付与剤、増粘剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、反応遅延剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、耐候安定剤、タック防止剤などの添加剤を、適宜配合することができる。各種の添加剤の配合割合は、その目的および用途により適宜選択される。
【0048】
そして、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、イソシアネート基末端プレポリマーを水中に分散または溶解するのではなく、環状カーボネート末端プレポリマーを水中に分散または溶解して、ポリアミンにより鎖伸長する。
そのため、活性の高い、芳香族および芳香脂肪族ポリイソシアネートを使用することができる。その結果、水性ポリウレタン樹脂でありながら、芳香族および/または芳香脂肪族ポリイソシアネートを使用して、例えば、耐熱性や耐水性など、それらの特性を活かした水性ポリウレタン樹脂を提供することができる。また、芳香族ポリイソシアネートを使用すれば、水性ポリウレタン樹脂を安価に提供することができる。
【0049】
そのため、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、水性ポリウレタン樹脂が使用される産業分野、例えば、塗料、接着剤、プライマー、コーティング材などの分野において、有効に用いられる。
【実施例】
【0050】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。
実施例1
攪拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、数平均分子量2000のポリエステルポリオール(タケラックU−5620:三井化学ポリウレタン社製)148.8g、ネオペンチルグリコール3.9g、ジメチロールプロピオン酸20.0gおよびアセトン126.4gを仕込んだ。次いで、そのフラスコに、ジフェニルメタンジイソシアネート(三井化学ポリウレタン社製)86.7gを添加して、55℃で3時間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得た(遊離イソシアネート基含量1.87%)。
【0051】
次いで、そのフラスコに、グリセリンカーボネート21.3gを添加し、赤外吸収によるイソシアネート基の吸収がなくなるまで反応させ、その後、トリエチルアミン14.3gを添加することにより、環状カーボネート末端プレポリマーを得た。
その後、イオン交換水700gを高速ミキサーにて攪拌し、それに、環状カーボネート末端プレポリマー421.5gを徐々に添加した。次いで、エチレンジアミン4.9gを加えて、40℃で8時間攪拌し、さらにアセトンを留去することにより、固形分30重量%の水性ポリウレタン樹脂Aの水分散液を得た。この水性ポリウレタン樹脂Aの酸価は27.8mgKOH/gで、平均粒子径は80nmであった。
【0052】
実施例2
攪拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTG2000:保土ヶ谷化学社製)163.8g、ネオペンチルグリコール8.5g、ジメチロールプロピオン酸16.5gおよびメチルエチルケトン124.5gを仕込んだ。次いで、トリレンジイソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物:コスモネート80:三井化学ポリウレタン社製)66.4gを添加して、55℃で3時間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得た(遊離イソシアネート基含量2.09%)。
【0053】
次いで、そのフラスコに、グリセリンカーボネート23.5gを添加し、赤外吸収によるイソシアネート基の吸収がなくなるまで反応させ、その後、トリエチルアミン11.8gを添加することにより、環状カーボネート末端プレポリマーを得た。
その後、イオン交換水700gを高速ミキサーにて攪拌し、それに、環状カーボネート末端プレポリマー414.5gを徐々に添加した。次いで、エチレンジアミン4.7gとγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−903:信越化学工業社製)5.0gとを加えて、40℃で8時間攪拌し、さらにメチルエチルケトンを留去することにより、固形分30重量%の水性ポリウレタン樹脂Bの水分散液を得た。この水性ポリウレタン樹脂Bの酸価は22.9mgKOH/gで、平均粒子径は100nmであった。
【0054】
実施例3
攪拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、数平均分子量2000の1,6−ヘキサンポリカーボネートジオール(UH−200:宇部興産社製)144.8g、ネオペンチルグリコール15.1g、ジメチロールプロピオン酸13.6gおよびメチルエチルケトン123.9gを仕込んだ。次いで、そのフラスコに、1,3−キシリレンジイソシアネート(タケネート500:三井化学ポリウレタン社製)79.8gを添加して、70℃で5時間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得た(遊離イソシアネート基含量2.34%)。
【0055】
次いで、そのフラスコに、グリセリンカーボネート26.1gを添加し、赤外吸収によるイソシアネート基の吸収がなくなるまで反応させ、その後、トリエチルアミン9.8gを添加することにより、環状カーボネート末端プレポリマーを得た。
その後、イオン交換水700gを高速ミキサーにて攪拌し、それに、環状カーボネート末端プレポリマー411.7gを徐々に添加した。次いで、ヘキサメチレンジアミン11.6gを加えて、40℃で8時間攪拌し、さらにメチルエチルケトンを留去することにより、固形分30重量%の水性ポリウレタン樹脂Cの水分散液を得た。この水性ポリウレタン樹脂Cの酸価は18.9mgKOH/gで、平均粒子径は120nmであった。
【0056】
実施例4
攪拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、数平均分子量1000のメトキシポリエチレングリコール1000g(東邦化学社製)と、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(三井化学ポリウレタン社製)1682gとを仕込み、窒素雰囲気下90℃で9時間反応させた。得られた反応液を薄膜蒸留して、未反応の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを除去し、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートを得た。
【0057】
次いで、攪拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ジエタノールアミン82.5gを仕込み、窒素雰囲気下、空冷しながら上記ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネート917.5gを、反応温度が70℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後、約1時間、窒素雰囲気下において70℃で攪拌し、イソシアネート基が消失したことを確認し、ポリオキシエチレン側鎖含有ジオールを得た。
【0058】
次いで、攪拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、数平均分子量2000の1,6−ヘキサンポリカーボネートジオール(UH−200:宇部興産社製)151.4g、ネオペンチルグリコール15.8g、上記ポリオキシエチレン側鎖含有ジオール38.5gおよびメチルエチルケトン126.0gを仕込んだ。次いで、そのフラスコに、トリレンジイソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物:コスモネート80:三井化学ポリウレタン社製)62.8gを添加して、70℃で5時間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得た(遊離イソシアネート基含量2.19%)。
【0059】
次いで、そのフラスコに、グリセリンカーボネート25.5gを添加し、赤外吸収によるイソシアネート基の吸収がなくなるまで反応させることにより、環状カーボネート末端プレポリマーを得た。
その後、環状カーボネート末端ウレタンプレポリマー中に、イオン交換水700gを徐々に添加した。次いで、エチレンジアミン5.9gを加えて、40℃で8時間攪拌し、さらにメチルエチルケトンを留去することにより、固形分30重量%の水性ポリウレタン樹脂Dの水分散液を得た。この水性ポリウレタン樹脂Dのポリオキシエチレン含有量は9.8重量%で、平均粒子径は220nmであった。
【0060】
比較例1
攪拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、数平均分子量2000のポリエステル(タケラックU−5620:三井化学ポリウレタン社製)160.3g、ネオペンチルグリコール4.2g、ジメチロールプロピオン酸21.5gおよびアセトン126.3gを仕込んだ。次いで、ジフェニルメタンジイソシアネート(三井化学ポリウレタン社製)93.3gを添加して、55℃で3時間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得た(遊離イソシアネート基含量1.92%)。その後、イソシアネート基末端プレポリマーにトリエチルアミン15.4gを添加した。
【0061】
次いで、イオン交換水700gを高速ミキサーにて攪拌し、それに、イソシアネート基末端プレポリマー420.7gを徐々に添加した。すると、ジフェニルメタンジイソシアネートのイソシアネート基と水との反応により発泡し、水性ウレタン樹脂の水分散液を得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族および/または芳香脂肪族ポリイソシアネート、ポリオール、および、親水性基および活性水素基を併有する化合物を、少なくとも反応させることにより得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素基を有する環状カーボネートとの反応により得られる環状カーボネート末端プレポリマーと、
ポリアミンと
を反応させることにより得られることを特徴とする、水性ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
前記芳香族および/または芳香脂肪族ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートおよびキシリレンジイソシアネートから選択される少なくとも1種であることを特徴とする、水性ポリウレタン樹脂。
【請求項3】
前記活性水素基を有する環状カーボネートが、モノヒドロキシエチレンカーボネートであることを特徴とする、請求項1または2に記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項4】
前記親水性基および活性水素基を併有する化合物が、アニオン性基を有するジオールであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項5】
前記親水性基および活性水素基を併有する化合物が、下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレン鎖を有するジオールであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂。
一般式(1)
【化1】

(式中、R1およびR2は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキレン基を示す。R3は、炭素数6〜13の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香脂肪族炭化水素基を示す。R4は、炭素数1〜4のアルキル基を示す。nは8〜50の整数を示す。)
【請求項6】
前記ポリアミンが、ジアミンであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂。

【公開番号】特開2008−291143(P2008−291143A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139140(P2007−139140)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(501140544)三井化学ポリウレタン株式会社 (115)
【Fターム(参考)】