説明

水性エマルジョンの製造方法及び水性エマルジョン

【課題】制振性、ガスバリヤー性等のブチルゴム本来の優れた特性を有し、貯蔵安定性が良好で、タックが少なく、透明性に優れたゴム塗膜を形成することができる水性エマルジョンを提供する。
【解決手段】ブチルゴム粒子を含有する水性ブチルゴムエマルジョン(I)に対し、(メタ)アクリル単量体を添加し、撹拌・混合した後、乳化重合を行うことにより水性エマルジョン(II)を得る、水性エマルジョンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブチルゴム粒子由来のポリマー粒子を含む水性エマルジョンの製造方法及び水性エマルジョンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブチルゴムは、イソブチレン(イソブテン)由来の繰り返し単位を有する重合体からなるゴムである。このゴムは、制振性やガスバリヤー性に優れるという特徴があり、例えば、制振材、接着剤、粘着剤、塗料、コーティング材等、様々な用途で用いられている。そして、ブチルゴムを用いる際には、ブチルゴム粒子を水等の水性媒体に分散させた水性エマルジョンとし、これを塗工することによって、ブチルゴムを含むゴム塗膜を形成することが行われている。
【0003】
このような水性エマルジョンを得るための方法としては、例えば、(1)ブチルゴムの有機溶剤溶液をゴムエキステンダー油及びリン酸エステルの存在下で乳化する方法(特許文献1参照)、(2)ブチルゴムとポリブテン等をニーダーで素練りし、トルエンを添加して混練した後、水を少量ずつ添加してエマルジョンを得る方法(特許文献2参照)、(3)ステアリン酸とポリイソブチレンと水とを混合して高せん断をかけることによりポリイソブチレンエマルジョンを得る方法(特許文献3参照)、(4)ケイ素含有基末端イソブチレン重合体のヘプタン溶液を、ラウリル硫酸ナトリウムを乳化剤として水とせん断混合し、乳化する方法(特許文献4参照)等、様々な方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平2−70725号公報
【特許文献2】特公平5−63423号公報
【特許文献3】特開平9−221610号公報
【特許文献4】特開平11−140250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記(1)の方法は、添加したゴムエキステンダー油やリン酸エステルがブチルゴム中に残留し、制振性やガスバリヤー性の著しい低下を招くという点で、上記(2)及び(3)の方法は、得られるエマルジョン中のゴム分が速やかに分離してしまい、貯蔵安定性の高いエマルジョンが得られないという点で、上記(4)の方法は、乳化液が経時的に不安定化するという点で、未だ課題を残すものであった。
【0006】
また、近年においては、建装材、フラットパネルディスプレー用部材、表示材、機能性フィルム、自動車用部材、電気電子部品等の用途において、スプレーガン、ロールコーター等の装置で容易に塗工することができ、タックが少なく、透明性に優れた水性エマルジョンが求められているが、そのような水性エマルジョンは見当たらないというのが現状である。
【0007】
以上説明したように、現在のところ、制振性、ガスバリヤー性等のブチルゴム本来の優れた特性を有し、スプレーガン、ロールコーター等の装置で容易に塗工することができ、貯蔵安定性が良好で、タックが少なく、透明性に優れたゴム塗膜を形成することができる水性エマルジョンは未だ開示されていない。従って、そのような優れた特性を有する水性エマルジョンを創出することが切望されている。
【0008】
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、制振性、ガスバリヤー性等のブチルゴム本来の優れた特性を有するのは勿論のこと、スプレーガン、ロールコーター等の装置で容易に塗工することができ、貯蔵安定性が良好で、タックが少なく、透明性に優れたゴム塗膜を形成することができる水性エマルジョンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上述のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、ブチルゴム粒子を含有する水性ブチルゴムエマルジョンに対し、(メタ)アクリル単量体を添加し、これを乳化重合させることによって、上記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の水性エマルジョンの製造方法及び水性エマルジョンが提供される。
【0010】
[1] ブチルゴム粒子を含有する水性ブチルゴムエマルジョン(I)に対し、(メタ)アクリル単量体を添加し、撹拌・混合した後、乳化重合を行うことにより水性エマルジョン(II)を得る、水性エマルジョンの製造方法。
【0011】
[2] 前記(メタ)アクリル単量体として、メタクリル酸メチル及び他の(メタ)アクリル単量体を用い、予め、前記水性ブチルゴムエマルジョン(I)に対し、メタクリル酸メチルを添加し、これらを撹拌・混合し、次いで、前記他の(メタ)アクリル単量体を添加し、更にこれらを撹拌・混合した後、乳化重合を行う前記[1]に記載の製造方法。
【0012】
[3] 前記水性ブチルゴムエマルジョン(I)として、ブチルゴムと、ロジン石鹸と、炭素数6〜30のアルキル基を有するアニオン系乳化剤とを含有する、アニオン系水性ブチルゴムエマルジョン(I−a)を用いる前記[1]又は[2]に記載の製造方法。
【0013】
[4] 前記水性ブチルゴムエマルジョン(I)として、ブチルゴムと、ノニオン系乳化剤とを含有する、ノニオン系水性ブチルゴムエマルジョン(I−b)を用いる前記[1]又は[2]に記載の製造方法。
【0014】
[5] 水溶性樹脂の存在下で、乳化重合を行う前記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
【0015】
[6] 重合開始剤として、中性のラジカル重合開始剤を用いる前記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
【0016】
[7] 重合開始剤として、還元剤と油溶性の有機過酸化物とからなるレドックス系開始剤を用いる前記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
【0017】
[8] 前記[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法により得られた水性エマルジョン。
【発明の効果】
【0018】
本発明の水性エマルジョンの製造方法によれば、制振性、ガスバリヤー性等のブチルゴム本来の優れた特性を有することに加え、スプレーガン、ロールコーター等の装置で容易に塗工することができ、貯蔵安定性が良好で、タックが少なく、透明性に優れたゴム塗膜を形成することができる水性エマルジョンを得ることができる。
【0019】
また、本発明の水性エマルジョンは、水分散液状で比較的高濃度でも粘度が低いため、溶剤系のブチルゴム組成物で課題となっていた、粘度が高く、塗工時の取り扱いが困難であるという問題を解決することができる。また、無溶剤系のブチルゴム組成物のように、塗工時に高温で加熱(ホットメルト)する必要もないため、スプレーガン、ロールコーター等の装置で容易に塗工することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の水性エマルジョンの製造方法及び水性エマルジョンを実施するための最良の形態について具体的に説明する。但し、本発明は、その発明特定事項を備える全ての実施形態を包含するものであり、以下に示す実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書中において「(メタ)アクリル」と記すときは、「アクリル」及び「メタクリル」のいずれもが含まれることを意味するものとする。また、本明細書においては、単量体Xに由来する繰り返し単位を「X単位」と記す場合がある。
【0021】
[1]水性エマルジョンの製造方法:
本発明の水性エマルジョンの製造方法は、ブチルゴム粒子を含有する水性ブチルゴムエマルジョン(I)に対し、(メタ)アクリル単量体を添加し、撹拌・混合した後、乳化重合を行うことにより水性エマルジョン(II)を得る方法である。
【0022】
[1−1]水性ブチルゴムエマルジョン(I):
本発明の製造方法においては、その原料として、ブチルゴム粒子を含有するエマルジョン(水性ブチルゴムエマルジョン(I))を用い、この「水性ブチルゴムエマルジョン(I)」に対し、(メタ)アクリル単量体を添加し、乳化重合を行う方法を採る。
【0023】
ブチルゴムは、イソブチレン(イソブテン)由来の繰り返し単位を有する重合体からなるゴム、より具体的には、イソブチレンと少量のイソプレンとの共重合体からなるゴム(IIR:isobutylene−isoprene rubber)である。ブチルゴムは、主鎖の立体構造の特徴から空隙が小さく、ガスバリヤー性(気体不透過性)が高いという特徴がある。また、主鎖の運動性が低く内部摩擦が大きいため、エネルギー吸収性、制振性に優れており、振動吸収材や防音材として用いられる。更には、主鎖の二重結合含量が低いことから、耐候性、耐熱性に優れ、電気絶縁性や耐コロナ性といった電気特性にも優れている。
【0024】
イソプレン単位の含量については特に限定されないが、0.0〜5.0モル%であることが好ましく、0.1〜3.0モル%であることが更に好ましい。イソプレン単位の含量を0.0〜5.0モル%の範囲とすることによって、(メタ)アクリル単量体との部分的な共重合体を形成することにより、耐久性の向上や、相溶性工場による透明性向上という好ましい効果が期待できる。一方、5.0モル%を超えると、イソブチレン単位に由来するガスバリヤー性や制振性が低下するおそれがある。
【0025】
本明細書に言う「ブチルゴム」には、レギュラーブチルゴムの他、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム等のハロゲン化ブチルゴムやポリイソブチレンも含まれる。ブチルゴムにハロゲンを導入したハロゲン化ブチルゴムは、ガスバリヤー性、エネルギー吸収性、耐候性、耐熱性、電気特性等においてレギュラーブチルゴムと同等の特性を示し、接着性の面ではレギュラーブチルゴムより優れている。また、ポリイソブチレンは、分子量が約50,000以上であると常温で固体であり、ある程度のゴム状弾性を有するが、コールドフロー性を有するため、接着剤、粘着剤、シーリング材やライニング材等に用いられている。
【0026】
「水性ブチルゴムエマルジョン(I)」としては、ブチルゴム粒子を含有するエマルジョンである限り、特に制限なく用いることができる。但し、ブチルゴムと、ロジン石鹸と、炭素数6〜30のアルキル基を有するアニオン系乳化剤とを含有する水性ブチルゴムエマルジョン(アニオン系水性ブチルゴムエマルジョン(I−a))、より具体的には、ブチルゴムが、ロジン石鹸と、炭素数6〜30のアルキル基を有するアニオン系乳化剤とによって乳化された水性ブチルゴムエマルジョンを用いることが好ましい。
【0027】
ロジンは、松ヤニ等の含油樹脂を水蒸気蒸留し、テレピン油を除去した残留物であり、アビエチン酸を主成分とするものである。ロジン石鹸とは、このロジンを水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水溶液、又は、アンモニア、アミン化合物等で中和して得られる塩である。
【0028】
本明細書にいう「炭素数6〜30のアルキル基を有するアニオン系乳化剤」は、その長鎖アルキル基(又はアルキルベンゼン基)を疎水基とし、その長鎖アルキル基が乳化剤分子の端部に位置するものを意味するものとする。即ち、長鎖アルキル基の一端がフリーの状態になっていることが必要であり、長鎖アルキル基の両側に親水性基が結合したようなものは含まれない。
【0029】
炭素数を6〜30としたのは、炭素数が6未満であると、ゴム粒子同士の融着を防止する長鎖アルキル鎖の効果が低くなり、炭素数が30を超えると、常温でロウ状になり、取り扱いが不便となることに加え、疎水性が強くなり過ぎて、界面活性効果が著しく低くなるため、乳化力が低下し、乳化分散を阻害するようになることによる。炭素数は8〜22であることがより好ましく、8〜18であることが特に好ましい。
【0030】
乳化剤の構造は炭素数6〜30のアルキル基を有する限り特に限定されないが、そのような長鎖アルキル基を有するアルコール、アルキルフェノール類、アミン、脂肪酸の塩又はエステルを挙げることができ、そのような長鎖アルキル基を有するカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル、又はリン酸エステル塩であることが好ましい。また、このようなアニオン系親水基の対イオンとなる陽イオンとしては、例えば、Na、K等のアルカリ金属イオン;アルカノールアミン・H、アミン・H等を挙げることができる。
【0031】
「アルコール」としては、例えば、1,2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、オクタデカノール等の1級又は2級のアルコールを挙げることができる。また、高級アルコール製品として、各種オキソアルコール製品(2−エチルヘキサノール、オクタノール、イソノナノール)、以下全て商品名で、アルフォール(Vista Chemical社製、炭素数6〜10,8〜10,10〜12,10〜14,12〜14,12〜16,12〜18,14〜16,及び14〜18の各製品がある)、ネオドール23(炭素数12〜13)、ネオドール25(炭素数12〜15)、ネオドール45(炭素数14〜15)等のネオドールシリーズ(シェルケミカルズ社製、高級1級アルコール)、タジトールS(ユニオンカーバイド社製、炭素数11〜15の直鎖状第2級アルコールに酸化エチレンを付加した第2高級アルコールエトキシレート)、ソフタノールM(日本触媒社製、炭素数12〜14の直鎖型第2級アルコールに酸化エチレンを付加した第2高級アルコールエトキシレート)等を挙げることができる。
【0032】
上記のようなアルコールのカルボン酸塩等を、ロジン石鹸とともに適当な配合比で用いることにより、ブチルゴムエマルジョンの貯蔵中にゴム分が2次凝集することを効果的に防止することができる。
【0033】
「アルキルフェノール類」としては、末端に炭素数6以上、好ましくは炭素数が8〜22、特に好ましくは8〜18のアルキル基を有するフェノール類である。例えば、オクチルフェノール、ノニルフェノール、又はドデシルフェノール等を挙げることができる。これらアルキルフェノールを用いた場合、上記のアルコールを用いた場合とほぼ同程度の効果を期待することができる。
【0034】
「アミン」としては、炭素数6〜30、好ましくは8〜22、特に好ましくは8〜18のアルキル基を有する1級又は2級のアミン化合物を挙げることができる。具体的には、ラウリルアミン、ラウリルメチルアミン又はジオレイルアミン等が好ましい。また、「カルボン酸」としては、例えば、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等を挙げることができる。
【0035】
「炭素数6〜30のアルキル基を有するアニオン系乳化剤」としては、各種の市販品を用いることができる。例えば、ネオゲンSシリーズ、モノゲンYシリーズ(いずれも第一工業製薬社製)等の市販品をそのまま用いることができる。
【0036】
「ロジン石鹸」と「炭素数6〜30のアルキル基を有するアニオン系乳化剤」の総配合量は、ブチルゴム100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましく、3〜10質量部であることがより好ましい。配合量が1質量部未満であると、製造工程において乳化不良が発生したり、乳化安定性が不良となったりするおそれがある。一方、配合量が20質量部を超えると、アニオン系水性ブチルゴムエマルジョン(I−a)の保管中に乳化剤が分離し、ブリードアウトする等の問題を生ずるおそれがある。
【0037】
「ロジン石鹸」と「炭素数6〜30のアルキル基を有するアニオン系乳化剤」の配合比率(質量比)は、90:10〜70:30とすることが好ましく、90:10〜80:20とすることが更に好ましい。90:10より「ロジン石鹸」の比率が大きくなると、得られる水系分散体の貯蔵安定性が二次凝集により低下し易くなり、70:30より「ロジン石鹸」の比率が小さくなると、自着性を損なうおそれがある。
【0038】
また、「水性ブチルゴムエマルジョン(I)」として、ブチルゴムと、ノニオン系乳化剤とを含有する水性ブチルゴムエマルジョン(ノニオン系水性ブチルゴムエマルジョン(I−b))、より具体的には、ブチルゴムが、ノニオン系乳化剤とによって乳化された水性ブチルゴムエマルジョンを用いることが好ましい。
【0039】
ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を挙げることができる。中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類等が好ましい。
【0040】
ノニオン系水性ブチルゴムエマルジョン(I−b)において、上記ノニオン系乳化剤の配合量は、ブチルゴム100質量部に対して、1〜20質量部とすることが好ましく、3〜10質量部とすることが更に好ましい。1質量部未満であると、エマルジョンの製造工程において乳化不良を生じたり、乳化後の保存安定性に問題を生じるおそれがある。一方、20質量部を超えると、乾燥塗膜を形成した際に、制振性やガスバリヤー性等のブチルゴムに由来する特性が損なわれ、ブリードアウトを起こす等の不具合を生ずる場合がある。
【0041】
水性ブチルゴムエマルジョン(I)は、次のようにして製造することができる。まず、ブチルゴムの有機溶剤溶液に、(a)ロジン石鹸及び上記の長鎖アルキル基含有アニオン系乳化剤の水溶液、或いは、(b)ノニオン系乳化剤の水溶液を添加し、撹拌羽根(角度付平羽根、ヘリカルスクリュー等)、ホモディスパー、ホモミキサー等で撹拌混合するか、又はラインミキサー等の外部乳化機で混合する方法により乳化を行い、更に、乳化機を用いて希釈水を混合する等の方法により乳化・分散を行う。この後、有機溶剤を、例えば60℃、720〜640mmHg(96.0〜85.3kPa)の条件で除去する。この際、残存する有機溶剤の含有量は、1質量%以下とすることが好ましく、0.5質量%以下とすることが更に好ましく、0.2質量%以下とすることが特に好ましい。
【0042】
「有機溶剤」は、ブチルゴムを溶解させることができ、かつ、乳化後に留去可能な溶剤を好適に用いることができる。例えば、ヘキサン、イソヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の飽和脂肪族系溶剤や、キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族有機溶剤を挙げることができる。これらの中では、安全性や使い易さの面からヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、キシレン、トルエン等が好ましい。また、これらの炭化水素系溶剤に代えて、超臨界状態にある二酸化炭素を溶媒として使用することもできる。即ち、上記「有機溶剤」には、超臨界二酸化炭素も含まれるものとする。
【0043】
上記のようにして得られた水性ブチルゴムエマルジョン(I)のブチルゴム粒子の平均粒径は、乳化方法、乳化剤の量、固形分濃度等によっても異なるが、通常、5μm以下であり、0.5〜3μmであることが好ましく、0.7〜2μmであることが更に好ましい。粒径が5μmを超えると、エマルジョンの安定性が不十分となる傾向がある。一方、粒径が0.5μm未満であると、製造し難くなることに加え、粘度が上昇し、ポンプ輸送上の問題が生じ易くなる傾向にある。なお、ここでの平均粒径は、粒度分布測定装置(商品名:SALD2000、島津製作所社製)を用いたレーザー回折散乱法によって測定・算出した値を意味するものとする。
【0044】
このようにして得られる水性ブチルゴムエマルジョン(I)は、(a)ロジン石鹸と長鎖アルキル基含有アニオン系乳化剤とにより、或いは、(b)ノニオン系乳化剤により、優れた保護コロイド性が得られるため、経時安定性及び機械的安定性が良好である。
【0045】
水性ブチルゴムエマルジョン(I)は、固形分濃度を40〜65質量%とすることが好ましく、45〜60質量%とすることがより好ましい。その場合の粘度は、増粘剤を添加しない場合であれば、100〜700mPa・sとすることが好ましく、150〜500mPa・sとすることが更に好ましい。増粘剤を添加した場合には、200〜6000mPa・sとすることが好ましく、350〜4000mPa・sとすることが更に好ましい。なお、粘度はいずれも25℃の条件下、B型粘度計により測定した値である。
【0046】
[1−2](メタ)アクリル単量体の添加・混合:
本発明の製造方法では、水性ブチルゴムエマルジョン(I)に対し、(メタ)アクリル単量体を添加し、撹拌・混合した後、乳化重合を行う。
【0047】
「(メタ)アクリル単量体」としては、(メタ)アクリル酸及びその誘導体を用いることができる。
【0048】
具体的には、アクリル酸等の(メタ)アクリル酸類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;
【0049】
その他、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、
【0050】
ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ホスフェート、モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ジフェニルホスフェート、モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル〕ホスフェート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシC1−C6アルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル等を挙げることができる。
【0051】
市販品としては、以下全て商品名で、アロニックスM101、M102、M110、M111、M113、M114、M117、M120、M152、M154、M5300、M5400、M5500、M5600(以上、東亞合成社製)、KAYARAD TC−110S、R−128H、R629、R644(以上、日本化薬社製)、IPAA、AIB、SBAA、TBA、IAAA、HEXA、CHA、NOAA、IOAA、INAA、LA、TDA、MSAA、CAA、HDAA、LTA、STA、ISAA−1、ODAA、NDAA、IBXA、ADAA、TCDA、2−MTA、DMA、ビスコート#150、#150D、#155、#158、#160、#190、#190D、#192、#193、#220、#320、#2311HP、#2000、#2100、#2150、#2180、MTG、HEA、HPA、4HBA(以上、大阪有機化学工業社製)、
【0052】
NKエステルM−20G、M−40G、M−90G、M−230G、CB−1、SA、S、AMP−10G、AMP−20G、AMP−60G、AMP−90G、A−SA、NLA(以上、新中村化学工業社製)、ACMO、DEAA、DMAA、HEAA、DMAPAA、NIPAM(以上、興人社製)、ライトアクリレートIA−A、L−A、S−A、BO−A、EC−A、MTG−A、DPM−A、PO−A、P−200A、THF−A、IB−XA、HOA−MS、HOA−MPL、HOA−MPE、HOA−HH、IO−A、BZ−A、NP−EA、NP−10EA、HOB−A、FA−108、P−1A、エポキシエステルM−600A、ライトエステルHOA、ライトエステルHOP−A、ライトエステルHOP、ライトエステルHOB、ライトエステルP−1M、(以上、共栄社化学社製)、FA−511、FA−512A、FA−513A(以上、日立化成工業社製)、AR−100、MR−100、MR−200、MR−60(以上、大八化学工業社製)、JAMP−100、JAMP−514、JPA−514(以上、城北化学社製)等を挙げることができる。
【0053】
これらの(メタ)アクリル単量体の中では、水性ブチルゴムエマルジョン(I)に分散させ易いという理由から、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の極性基を有しない単量体、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類が好ましい。特にメチルメタクリレート(MMA)は、水性ブチルゴムエマルジョン(I)への均一分散性が優れるため、好適に用いることができる。
【0054】
一方、極性基のカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸は、使用量や添加方法によっては、水性ブチルゴムエマルジョン(I)が不安定化する傾向があり、ポリマー粒子を凝集させてしまうおそれがある。
【0055】
なお、「(メタ)アクリル単量体」としては、1種の(メタ)アクリル単量体のみを単独で用いてもよいし、2種以上の(メタ)アクリル単量体を併用してもよい。
【0056】
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、(メタ)アクリル単量体以外の(メタ)アクリル単量体と共重合可能な単量体(他の単量体)を併用してもよい。例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル類、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸類;等の重合性不飽和結合を有する単量体を併用することができる。
【0057】
「他の単量体」の使用量については特に限定されないが、(メタ)アクリル単量体の効果を十分に発揮させるため、「(メタ)アクリル単量体」と「他の単量体」の合計量に対し、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることが更に好ましい。
【0058】
「混合」は、水性ブチルゴムエマルジョン(I)に対し、(メタ)アクリル単量体を添加し、撹拌等、従来公知の混合方法により混合すればよい。なお、この際、両者が均一化されていることが好ましい。本明細書にいう「均一化」とは、撹拌等の混合操作を停止しても、(メタ)アクリル単量体が水性ブチルゴムエマルジョン(I)から分離浮上しなくなった状態を意味するものとする。
【0059】
また、本発明の製造方法においては、(メタ)アクリル単量体として、メタクリル酸メチル及び他の(メタ)アクリル単量体を用い、予め、水性ブチルゴムエマルジョン(I)に対し、メタクリル酸メチルを添加し、これらを撹拌・混合し、次いで、他の(メタ)アクリル単量体を添加し、更にこれらを撹拌・混合した後、乳化重合を行うことが好ましい。このように、ブチルゴムエマルジョンへの均一分散性に優れるメチルメタクリレートを予め混合させた後に、他の(メタ)アクリル単量体を混合させることで、重合様態が良好となる。
【0060】
ブチルゴムと(メタ)アクリル単量体の量比は、ブチルゴムと(メタ)アクリル単量体の総量を100質量部とした場合に、ブチルゴムが10〜95質量部、(メタ)アクリル単量体が5〜90質量部であることが好ましく、ブチルゴムが20〜85質量部、(メタ)アクリル単量体が15〜80質量部であることが更に好ましい。ブチルゴムが10〜95質量部、(メタ)アクリル単量体が5〜90質量部という組成比とすることによって、制振性、ガスバリヤー性というブチルゴムが本来的に有する優れた特性を発揮できるとともに、ベタツキ低減、極性基材への密着性向上、透明性向上、或いはエマルジョンの分散安定性向上といった、(メタ)アクリル重合体が有する特性をも発揮させることが可能となる。一方、ブチルゴムが10質量部未満であると、制振性、ガスバリヤー性の効果が得られないという不具合を生ずる傾向がある。また、(メタ)アクリル単量体が5質量部未満であると、ベタツキ低減、極性基材への密着性向上、透明性向上、或いはエマルジョンの分散安定性向上といった、(メタ)アクリル重合体が有する特性を発揮できないという不具合を生ずる傾向がある。
【0061】
[1−3]乳化剤の添加:
本発明の製造方法では、上記のように、水性ブチルゴムエマルジョン(I)に対し、(メタ)アクリル単量体を添加・混合し、乳化剤の存在下、乳化重合を行う。この乳化剤は、通常、(メタ)アクリル単量体を添加・混合した後に添加するが、予め、乳化剤を添加し、その後、(メタ)アクリル単量体を添加・混合してもよい。
【0062】
この「乳化剤」としては、通常、乳化重合に用いられる界面活性剤を適宜選択して用いることができる。例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、脂肪酸塩等のアニオン系界面活性剤;アルキルアミン塩、アルキル四級アミン塩等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ブロック型ポリエーテル等のノニオン系界面活性剤;カルボン酸型(例えば、アミノ酸型、ベタイン酸型等)、スルホン酸型等の両性界面活性剤;以下全て商品名で、ラテムルS−180A、ラテムルPD−420(花王社製)(花王社製)、エレミノールJS−2(三洋化成社製)、アクアロンKH−10、アクアロンKH−1025(第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE−10N、アデカリアソープSR−10(旭電化工業社製)、Antox MS−60(日本乳化剤社製)、サーフマーFP−120(東邦化学工業社製)等の反応性乳化剤;等の乳化剤を用いることができる。これらの乳化剤の中では、アニオン系界面活性剤や反応性乳化剤が好ましく、中でも、イオン性反応性乳化剤(例えば、商品名:アクアロンKH−10(第一工業製薬社製)等)は、耐候性や耐水性を向上させる上で特に好ましい。なお、これらの乳化剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0063】
「乳化剤」の使用量は、ブチルゴムとアクリル単量体の合計量100質量部に対し、0.1〜5.0質量部とすることが好ましく、0.3〜3.0質量部とすることが更に好ましい。「乳化剤」の使用量を0.1〜5.0質量部とすることにより、十分な乳化力を発揮させることができ、重合安定性を向上させることが可能となる。
【0064】
本発明の製造方法においては、水溶性樹脂を更に添加し、乳化重合を行うことも好ましい。「水溶性樹脂」を含有させることによって、ポリマー粒子に保護コロイドが形成され、重合安定性や貯蔵安定性を向上させることが可能となる。
【0065】
「水溶性樹脂」としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、マレイン酸系ポリマー等を挙げることができる。中でも、分散性能が高く、非イオン性のため水性ブチルゴムエマルジョンが凝集し難いという理由から、ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。
【0066】
「水溶性樹脂」の使用量は、ブチルゴムとアクリル単量体の合計量100質量部に対し、1〜30質量部とすることが好ましく、3〜25質量部とすることが更に好ましい。「水溶性樹脂」を1〜30質量部使用することにより、重合安定性や貯蔵安定性を向上させることができる。一方、1質量部未満であると、「水溶性樹脂」の添加効果が認められない場合がある。また、30質量部を超えると、乾燥塗膜を形成した際に、その耐水性が低下するおそれがある。
【0067】
「水溶性樹脂」は重合系に添加されていればその効果を発揮するため、添加のタイミング(順序)について特に制限はない。但し、アクリル単量体を添加し、次いで乳化剤を添加し、最後に水溶性樹脂を添加することが好ましい。
【0068】
[1−4]乳化重合:
本発明の製造方法では、上記のように、乳化剤及び重合開始剤の存在下、乳化重合を行う。こうすることにより、ブチルゴム粒子に由来し、(メタ)アクリル重合体を含有するポリマー粒子を含有する水性エマルジョン(II)を得ることができる。
【0069】
「重合開始剤」としては、通常、ラジカル重合開始剤が用いられる。具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキサイド、2,2’−アゾビス〔2−N−ベンジルアミジノ〕プロパン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の水溶性開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性開始剤;過酸化水素等の過酸化物と、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等の還元剤と、を併用したレドックス系開始剤;等を好適に用いることができる。
【0070】
但し、本発明の製造方法においては、重合開始剤として、中性のラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。中性のラジカル重合開始剤を用いることにより、重合中に凝集物が発生する事態を防止することができる。「中性のラジカル重合開始剤」としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(商品名:AIBN、大塚化学社製等)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(商品名:AMBN、大塚化学社製等)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(商品名:ADVN、大塚化学社製等)等を挙げることができる。一方、イオン強度が高い重合開始剤や、重合中にpHが変化する重合開始剤、例えば、過硫酸塩、t−ブチルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキサイド等は、重合中に凝集物が発生するおそれがある。
【0071】
「重合開始剤」の使用量は、(メタ)アクリル単量体の合計量100質量部に対し、0.001〜5.0質量部であることが好ましく、0.01〜3.0質量部であることが更に好ましい。「重合開始剤」の使用量を0.001〜5.0質量部とすることにより、重合安定性を向上させることができ、凝集物の発生や未反応モノマーの残存を有効に防止することが可能となる。
【0072】
また、乳化重合では、有機過酸化物と還元剤からなるレドックス系開始剤を用いることもできる。乳化重合においては、レドックス系開始剤の有機過酸化物として、媒体の水との親和性が高い水溶性の有機化酸化物を用いることが多いが、本発明の製造方法においては、還元剤と油溶性の有機過酸化物とからなるレドックス系開始剤を用いることが好ましい。油溶性の有機過酸化物を用いることによって、重合反応を速やかに進行させることが可能となる。
【0073】
「有機過酸化物」としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が知られているが、「油溶性の有機過酸化物」としては、例えば、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クメンハイドロパーオキサイド等を挙げることができる。一方、水溶性の有機過酸化物、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド等は、重合速度が上がり難く、十分な重合速度を得られないおそれがある。
【0074】
なお、レドックス系開始剤の「還元剤」としては、レドックス系で通常用いられる還元剤であれば特に限定されない。例えば、2価の鉄塩、1価の銅塩等、還元状態にある金属塩、L−アスコルビン酸、イソアスコルビン酸又はそれらのアルカリ金属塩、二亜硫酸塩、アミン系還元剤等の還元剤が用いられる。これらの還元剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
「有機過酸化物」の量としては、(メタ)アクリル単量体の合計量100質量部に対し、0.001〜5.0質量部であることが好ましく、0.01〜3.0質量部であることが更に好ましい。「有機過酸化物」の使用量を0.001〜5.0質量部とすることにより、重合安定性を向上させることができ、凝集物の発生や未反応モノマーの残存を有効に防止することが可能となる。一方、「有機過酸化物」の使用量が0.001質量部未満であると、重合反応が進行しないおそれがある。また、「有機過酸化物」の使用量が5.0質量部を超えると、過剰の過酸化物が水性ブチルゴムエマルジョン中に残留し、その保管中に不要な酸化反応が進行するおそれがある。
【0076】
「還元剤」の量としては、(メタ)アクリル単量体の合計量100質量部に対し、0.001〜2.0質量部であることが好ましく、0.005〜1.5質量部であることが更に好ましい。「還元剤」の使用量を0.001〜2.0質量部とすることにより、安定的、かつ、速やかに重合度を上昇させることが可能となる。一方、「還元剤」の使用量が0.001質量部未満であると、反応時間が長くなったり、或いは反応が進行しなくなったりするおそれがある。また、「還元剤」の使用量が2.0質量部を超えると、エマルジョン及び乾燥塗膜が着色する等の品質不良を生ずるおそれがある。
【0077】
乳化重合の媒体となる水性媒体としては、通常は、水が用いられるが、アルコール等の水溶性の有機溶媒が含まれていてもよい。水の使用量は、得られる水性ブチルゴムエマルジョン(II)の固形分濃度が10〜80質量%となるような量であることが好ましく、20〜70質量%となるような量であることが更に好ましい。固形分濃度が10質量%未満となる量では、塗工等の二次加工が困難となるおそれがある。また、固形分濃度が80質量%を超える量では、エマルジョンが高粘度化するため、安定なエマルジョンが得られない傾向にある。
【0078】
乳化重合の反応温度は、5〜100℃とすることが好ましく、10〜90℃とすることが更に好ましく、15〜80℃とすることが特に好ましい。乳化重合の反応時間は、生産性の観点から、1〜10時間とすることが好ましく、2〜8時間とすることが更に好ましい。
【0079】
[2]水性エマルジョン:
以上説明した本発明の製造方法により、本発明の水性エマルジョンが得られる。本発明の水性エマルジョンに含まれるブチルゴム粒子由来のポリマー粒子は、ブチルゴム及び(メタ)アクリル重合体を含むものであればよいが、ブチルゴム及び(メタ)アクリル重合体のいずれか一方がコア、他方がシェルを構成するコア/シェル型粒子であることが好ましく、ブチルゴムがコア、(メタ)アクリル重合体がシェルを構成するコア/シェル型粒子であることが更に好ましい。ブチルゴムがコア、(メタ)アクリル重合体がシェルを構成するコア/シェル型粒子である場合には、ブチルゴムに起因するベタツキが低減され、極性基材への密着性が向上し、極性の高い乳化剤との親和性向上に伴って塗膜の透明性が向上し、或いはポリマー粒子の分散安定性が向上するという効果を発揮するため好ましい。
【0080】
上記ポリマー粒子の平均粒子径は、通常、50nm〜5μmであり、100nm〜4μmであることが好ましい。平均粒径を50nm〜5μmの範囲内とすることにより、エマルジョンの貯蔵安定性や取り扱い易さが向上するという効果が発揮される。一方、平均粒径が50nm未満であると、粘度が上昇するために固形分濃度を上げることかできないという不具合を生ずる傾向がある。また、平均粒径が5μmを超えると、粒子が沈降しやすくなり、貯蔵安定性が低下するという不具合を生ずる傾向がある。
【0081】
なお、本明細書において、ポリマー粒子について「平均粒径」というときは、動的光散乱法により測定された平均粒径を意味するものとする。より具体的には、同一の測定サンプルについて動的光散乱法により3回以上粒径の測定を行い、それらの平均値をポリマー粒子の「平均粒径」とした。
【0082】
また、本発明の水性エマルジョンの固形分濃度は、そのエマルジョンの全質量に対して、通常、10〜80質量%であり、20〜70質量%とすることが好ましい。固形分濃度は、例えば、水性媒体(水等)の量によって調整することができる。
【0083】
本発明の水性エマルジョンは、各種添加剤を含有していてもよい。そのような添加剤としては、例えば、増粘剤、他のゴムラテックスや樹脂エマルジョン、無機フィラー、ポリマー粉体、磁性粉、金属粉、導電性カーボン、オイル、可塑剤、粘着付与剤、難燃剤、分散安定剤、顔料、防腐防黴剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、コロイド硫黄、加硫促進剤、加硫剤等を挙げることができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明の水性エマルジョンの製造方法及び水性エマルジョンについて実施例を用いて更に具体的に説明する。但し、これらの実施例は本発明の一部の実施形態を示すものである。従って、本発明がこれらの実施例に限定して解釈されるべきではない。なお、以下の記載において、「質量部」、「質量%」は、固形分ないし樹脂分(有効成分)の質量を示すものとする。
【0085】
なお、水性ブチルゴムエマルジョン(I)としては、以下のものを用いた。
(1)アニオン系水性ブチルゴムエマルジョン(I−a):
イソブチレン−イソプレン共重合物のエマルジョン(イソブチレン:イソプレン質量比=99:1)、ロジン石鹸、炭素数6〜30のアルキル基を有するアニオン系乳化剤含有、固形分50質量%、ブチルゴム樹脂分43質量%、pH9.9(商品名:BE201、第一工業製薬社製)
(2)ノニオン系水性ブチルゴムエマルジョン(I−b):
イソブチレン−イソプレン共重合物のエマルジョン(イソブチレン:イソプレン質量比=99:1)、ノニオン系乳化剤含有、固形分50質量%、ブチルゴム樹脂分40質量%、pH5.3(商品名:BE251、第一工業製薬社製)
【0086】
また、アクリルエマルジョンとしては、以下のものを用いた。
(3)アクリルエマルジョン:
アクリル酸/2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート=2/31/37/30、Tg25℃、粒径120nm
【0087】
更に、他の成分としては、以下のものを用いた。
(4)アニオン系乳化剤:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(10質量%水溶液)
(5)反応性乳化剤:ポリオキシエチレンン−1−(アリルオキシメチル)アルキル硫酸エステルアンモニウム塩(商品名:アクアロンKH1025、第一工業製薬社製、15質量%水溶液)
(6)水溶性樹脂:ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセノールGL−03、日本合成化学社製、10質量%水溶液)
(7)中性ラジカル重合開始剤:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製、粉体)
(8)油溶性有機過酸化物:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製、40質量%エチルベンゼン溶液)
(9)還元剤(I):メタ重亜硫酸ナトリウム(和光純薬社製、1質量%水溶液)
(10)還元剤(II):硫酸鉄(II)七水和物(和光純薬社製、1質量%水溶液)
【0088】
(合成例1)
アニオン系水性ブチルゴムエマルジョン(I−a)26.79質量部に対し、(メタ)アクリル単量体として、アクリル酸2−エチルヘキシル20.83質量部、メタクリル酸シクロヘキシル48.24質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3.10質量部及び1,4−ジメタクリル酸ブタンジオール1.04質量部を一括添加し、撹拌操作を停止しても、これらの単量体がエマルジョンから分離浮上しなくなるまで撹拌混合した。
【0089】
その後、アニオン系乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1.04質量部、反応性乳化剤としてアクアロンKH1025を0.52質量部添加し、15分間撹拌混合した。更に、有効成分濃度(計算値)が20質量%になるように水を添加し、均一になるまで混合した。
【0090】
上記の混合液に、中性ラジカル重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.21質量部添加し、窒素気流下、70℃の条件で、2時間乳化重合を行った後、更に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.52質量部添加し、窒素気流下、80℃の条件で、2時間乳化重合を行った。この重合液を室温まで冷却することにより、合成例1の水性エマルジョンを得た。
【0091】
(合成例2)
合成例1と同様の処方において、アニオン系水性ブチルゴムエマルジョン(I−a)に代えて、ノニオン系水性ブチルゴムエマルジョン(I−b)を用い、また、乳化剤を添加した後、更に水溶性樹脂を添加して乳化重合を行うことによって、合成例2の水性エマルジョンを得た。具体的には、表1に記載のように原料の種類及び量を変更し、乳化剤を添加し撹拌混合した後、更に、水溶性樹脂としてポリビニルアルコールを16.47質量部添加し、15分間撹拌混合し、中性ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.44質量部添加し、窒素気流下、70℃の条件で、4.5時間乳化重合を行った後、更に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.32質量部添加し、窒素気流下、70℃の条件で、3時間乳化重合を行った。
【0092】
【表1】

【0093】
(合成例3)
合成例2と同様の処方において、予め、ノニオン系水性ブチルゴムエマルジョン(I−b)に、メタクリル酸メチルを添加し、これらが均一化されるまで混合し、次いで、他の(メタ)アクリル単量体を添加し、更にこれらが均一化されるまで混合した後、乳化剤を添加し、更に水溶性樹脂を添加して乳化重合を行うことによって、合成例3の水性エマルジョンを得た。
【0094】
(合成例4)
合成例3と同様の処方において、中性ラジカル重合開始剤に代え、レドックス系重合開始剤を用いて乳化重合を行い、合成例4の水性エマルジョンを得た。具体的には、ノニオン系水性ブチルゴムエマルジョン(I−b)に、メタクリル酸メチルを添加し、これらが均一化されるまで混合し、次いで、他の(メタ)アクリル単量体を添加し、更にこれらが均一化されるまで混合した後、乳化剤を添加し、更に、水溶性樹脂を添加し、撹拌混合した後、油溶性有機過酸化物であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを撹拌混合し、更に還元剤であるメタ重亜硫酸ナトリウム及び硫酸鉄(II)七水和物を撹拌混合し、70℃の条件で、7.5時間乳化重合を行った。
【0095】
合成例1〜4においては、その重合様態を目視評価した。凝集物が少ない場合、極めて良好(表中「◎」)、凝集物がやや多い場合、良好(表中「○」)、凝集物が多い場合、やや不良(表中「△」)、凝集してゲル化した場合、不良(表中「×」)として評価した。その結果を表1に示す。
【0096】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
実施例及び比較例の水性エマルジョンについては、以下に示す方法により、固形分濃度、重合度、pH、平均粒径、透明性、タック、貯蔵安定性を評価した。
【0097】
[固形分濃度]
乳化重合後の水性エマルジョンを、予め200℃で前乾燥したアルミ皿に秤り取り、その質量を小数点4桁まで読み取る(エマルジョン質量)。その水性エマルジョンを、200℃のホットプレートで15分乾燥した後、常温まで降温し、再度その質量を小数点4桁まで読み取る(固形分質量)。前記固形分質量を前記エマルジョン質量で除した値に100を乗じた値を固形分濃度とした。その結果を表2に示す。
【0098】
[重合度]
乳化重合後の固形分濃度値から、乳化重合前の単量体以外の成分の固形分濃度値(計算値)を減じた値を、単量体の重合度が100%であったときの単量体のみの固形分濃度値(計算値)で除した値に100を乗じた数値を重合度とした。
【0099】
【表2】

【0100】
[pH]
pHメーター(商品名:pH METER HM−26S(東亜電波工業社製))で測定した。その結果を表2に示す。
【0101】
[平均粒径]
粒度分布測定装置(商品名:NanotracTM UPA−ST150、Microtrac Inc.社製)で測定した。その結果を表2に示す。
【0102】
[透明性]
水性エマルジョンの固形分100質量部に対して、2−ブトキシエタノールを10質量部添加し、そのエマルジョンの固形分を17質量%に調整したものをアルミ皿の上に流し込み、50℃で20時間乾燥し、膜厚約100μmの塗膜を作製した。この塗膜を目視評価し、透明である場合、極めて良好(表中「◎」)、微白透明である場合、良好(表中「○」)、やや不透明である場合、やや不良(表中「△」)、白濁している場合、不良(表中「×」)として評価した。その結果を表2に示す。
【0103】
[タック]
水性エマルジョンの固形分100質量部に対して、2−ブトキシエタノールを10質量部添加し、そのエマルジョンの固形分を17質量%に調整したものをアルミ皿の上に流し込み、50℃で20時間乾燥することにより、膜厚約100μmの塗膜を作製した。この塗膜を指触した際の粘着感の強弱によってタックを評価した。粘着感がない場合、良好(表中「○」)、やや粘着感がある場合、やや不良(表中「△」)、粘着感が強い場合、不良(表中「×」)として評価した。その結果を表2に示す。
【0104】
[貯蔵安定性]
合成例1〜4、並びに比較例1〜3のエマルジョンを各々TSC17質量%に水で調整し、40℃で1週間後の様態を目視評価した。浮遊凝集物や沈降凝集物がない場合、貯蔵安定性良好(表中「○」)、浮遊凝集物や沈降凝集物がある場合、貯蔵安定性不良(表中「×」)として評価した。その結果を表2に示す。
【0105】
[評価結果]
実施例1〜4の水性エマルジョンは、重合様態、透明性、タック及び貯蔵安定性の全ての評価項目において良好な結果を示した。特に、実施例2〜4の水性エマルジョンは、pH変化の影響を受け難い、ノニオン系水性ブチルゴムエマルジョン(I−b)を用いたこと、及び保護コロイド形成能のある水溶性樹脂(ポリビニルアルコール)を添加したことに起因して、重合様態が良好であった。更に、実施例3の水性エマルジョンは、(メタ)アクリル単量体の添加方法(順序)に工夫を加えたことによって、(メタ)アクリル単量体の分散性が向上し、実施例2、4と比較して重合様態が更に良好であった。
【0106】
一方、比較例1及び2の水性エマルジョンは、(メタ)アクリル重合体を全く含まないため、比較例1の透明性がやや不良であった他は、全ての評価項目で不良という結果であった。また、比較例3の水性エマルジョンは、(メタ)アクリルエマルジョンを含むものの、ブチルゴムと(メタ)アクリル重合体を構成成分とするポリマー粒子を含まないため、透明性及び貯蔵安定性が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の水性エマルジョンは、制振性、ガスバリヤー性等の特性に優れるゴム塗膜を形成することが可能であるため、例えば、制振材、接着剤、粘着剤、塗料、コーティング材等として好適に用いることができる。更に、本発明の水性エマルジョンは、タックが少なく、透明性に優れたゴム塗膜を形成することが可能であるため、例えば、フラットパネルディスプレー用部材、表示材、自動車用部材、電気電子部品の用途等の、低タック、高い透明性が要求される用途において、特に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチルゴム粒子を含有する水性ブチルゴムエマルジョン(I)に対し、(メタ)アクリル単量体を添加し、撹拌・混合した後、乳化重合を行うことにより水性エマルジョン(II)を得る、水性エマルジョンの製造方法。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル単量体として、メタクリル酸メチル及び他の(メタ)アクリル単量体を用い、
予め、前記水性ブチルゴムエマルジョン(I)に対し、メタクリル酸メチルを添加し、これらを撹拌・混合し、次いで、前記他の(メタ)アクリル単量体を添加し、更にこれらを撹拌・混合した後、乳化重合を行う請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記水性ブチルゴムエマルジョン(I)として、ブチルゴムと、ロジン石鹸と、炭素数6〜30のアルキル基を有するアニオン系乳化剤とを含有する、アニオン系水性ブチルゴムエマルジョン(I−a)を用いる請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記水性ブチルゴムエマルジョン(I)として、ブチルゴムと、ノニオン系乳化剤とを含有する、ノニオン系水性ブチルゴムエマルジョン(I−b)を用いる請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
水溶性樹脂の存在下で、乳化重合を行う請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
重合開始剤として、中性のラジカル重合開始剤を用いる請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
重合開始剤として、還元剤と油溶性の有機過酸化物とからなるレドックス系開始剤を用いる請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法により得られた水性エマルジョン。

【公開番号】特開2008−163130(P2008−163130A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352658(P2006−352658)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】