説明

水性ゲル体製造装置、及び、水性ゲル体製造方法

【課題】生産性良く、紐状ないし帯状の水性ゲル体を製造することができる水性ゲル体製造装置、及び、生産性良く、紐状ないし帯状の水性ゲル体を製造する水性ゲル体製造方法を提供する。
【解決手段】ゲル形成性水溶液を、該ゲル形成性水溶液を凝固させて水性ゲルを形成させる凝固液中に連続的に導入させるゲル形成性水溶液供給部、該凝固液を容れるための凝固液槽、及び、該凝固液槽内で形成された連続形状の水性ゲル体を該凝固液槽外へ連続的に取り出す水性ゲル体取り出し手段を有する水性ゲル体製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物等の栽培用培地やゲル被覆種子、延いてはインテリアや、児童の科学玩具に応用できる、長尺の水性ゲル体を製造するための水性ゲル体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物等の栽培用培地としては水性ゲル体からなるものが知られ、形状としてはブロック状のもの、円筒状のもの、あるいは、粒状のものが用いられてきた(特許文献1、2)。
【0003】
ここで、本発明者等は最近、新規な水性ゲル体からなる培地として、紐状ないし帯状の培地を提案した(特願2006−30928)。この培地は、ブロック状や円筒形の培地に比べ植物の根が成長しやすく、灌水による水分補給が容易であると共に、粒状の培地の欠点である、植物が倒れやすいと云う欠点が改善され、インテリア性も高く、また、互いに絡まり合うので切り花を自由に生けることもできる。
【0004】
このような、紐状あるいは帯状の培地は、例えば大きいブロック状の水性ゲル体から切り出して得ることができるが、そのときの生産性が低く、手間がかかると云う問題点があり、より高い生産性が得られる製造方法と製造装置が求められていた。
【0005】
また、この製造装置は同時に、従来のゲル被覆種子(特許文献3)の欠点を改良し、特別な播種機なしで容易に播種することができると云う長所を有する、本発明者等により提案された、特願2006−13785にかかる紐状ないし帯状のゲル被覆種子の製造に応用可能な製造装置が求められていた。
【特許文献1】特開平9−74919号公報
【特許文献2】特開平6−276873号公報
【特許文献3】特開平9−15号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記した従来の問題点を改善する、すなわち、生産性良く、紐状ないし帯状の水性ゲル体を製造することができる水性ゲル体製造装置、及び、生産性良く、紐状ないし帯状の水性ゲル体を製造する水性ゲル体製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水性ゲル体製造装置は前記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、ゲル形成性水溶液を、該ゲル形成性水溶液を凝固させて水性ゲルを形成させる凝固液中に連続的に導入させるゲル形成性水溶液供給部、該凝固液を容れるための凝固液槽、及び、該凝固液槽内で形成された連続形状の水性ゲル体を該凝固液槽外へ連続的に取り出す水性ゲル体取り出し手段を有する水性ゲル体製造装置である。
【0008】
また、本発明の水性ゲル体製造装置は請求項2に記載の通り、請求項1に記載の水性ゲル体製造装置において、前記水性ゲル体取り出し手段によって前記凝固液槽から取り出された水性ゲル体を水洗する水洗槽を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の水性ゲル体製造装置は請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載の水性ゲル体製造装置において、前記連続形状の水性ゲル体を切断する切断手段を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の水性ゲル体製造装置は請求項4に記載の通り、請求項1ないし請求項3の何れかに記載の水性ゲル体製造装置において、前記ゲル形成性水溶液内に粒状物を供給するための粒状物供給手段を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の水性ゲル体製造装置は請求項5に記載の通り、請求項4に記載の水性ゲル体製造装置において、前記ゲル形成性水溶液供給部が、ゲル形成性水溶液を内管と該内管を取り巻く外管とからなるノズル部を有するとともに、該ノズル部の外管と内管との間に前記ゲル形成性水溶液を供給するノズル部給液部と、該ノズル部の外管と内管との間に供給された該ゲル形成性水溶液を前記凝固液に向けて吐出するためのノズル先端部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の水性ゲル体製造装置は請求項6に記載の通り、請求項5に記載の水性ゲル体製造装置において、上記粒状物供給手段が、上記ノズル部の内管内へ粒状物を供給するものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の水性ゲル体製造装置は請求項7に記載の通り、請求項2ないし請求項6のいずれかに記載の水性ゲル体製造装置において、上記水洗槽が、流水により水性ゲル体の水洗を行うものであり、かつ、該流水の排水のための排水口が該水洗槽底部に設けられている。
【0014】
本発明の水性ゲル体製造方法は請求項8に記載の通り、請求項1ないし請求項7の何れかに記載の水性ゲル体製造装置を用いて紐状ないし帯状の水性ゲル体を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水性ゲル体製造装置により、生産性が良く、紐状ないし帯状の水性ゲル体を製造することができ、また、そのまま、あるいはわずかな改造で、従来のゲル被覆種子同様、収量と品質の大幅な向上が可能でありながら、特別な点播機も不要で、かつ、播種における省力化が可能となる紐状ないし帯状のゲル被覆種子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のゲル被覆種子におけるゲルは、ゲル被覆種子に用いられる一般的な水性ゲルのうち、ゲル形成性水溶液と、これのゲル形成性水溶液を凝固させて水性ゲルを形成させる凝固液とによって形成されるものを用いることができる。
【0017】
そのようなゲル形成性水溶液の成分としてはアルギン酸ナトリウム、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、ゼラチン、カラギーナン、ポリアクリル酸ナトリウム、及び、寒天などから選ばれる天然・合成ゲル形成性高分子が挙げられる。
【0018】
凝固液の成分は、これらゲル形成性水溶液の成分に適合するものを用いる。すなわちゲル形成性水溶液の成分がアルギン酸ナトリウムの場合には水中でカルシウム、バリウム等の2価金属やアルミニウムをイオンとして解離する塩類(通常、植物体への悪影響を防止するため、塩化物塩が用いられる)の水溶液を、また、水性ゲル形成性水溶液としてカルボキシメチルセルロース水溶液を用いる場合には、凝固液として硫酸カリウムアルミニウム(カリウムみょうばん)水溶液を、それぞれ組み合わせる組合せが挙げられる。
【0019】
なお、これら以外に、第三成分として各種防腐剤、肥料成分、成長促進剤、あるいは、染料や顔料などの着色成分、あるいは、例えばインテリア用途の培地として用いる場合など、香料成分等もゲル形成性水溶液中に適宜追加することができる。
【0020】
本発明における水性ゲル体の水分率は90重量%以上となるようにゲル形成性水溶液を調整することが望ましい。水分率が90重量%未満であると、培地として用いた場合に保水力が少なくなり、また、ゲル被覆種子の被覆ゲル層の場合は、被覆ゲル体が固くなり植物の突出(芽や根が被覆ゲル体の外に出てくること)を妨げ、最終的に枯死し、あるいは変形して成長して商品作物として適さなくなる場合がある。
【0021】
本発明の水性ゲル体製造装置は、上記のようなゲル形成性水溶液と凝固液を用い、ゲル形成性水溶液を凝固液中に連続的に導入させるゲル形成性水溶液供給部、凝固液を容れるための凝固液槽、及び、凝固液槽内で形成された連続形状の水性ゲル体を凝固液槽外へ連続的に取り出す水性ゲル体取り出し手段を有する。
【0022】
ゲル形成性水溶液供給部としては、ゲル形成性水溶液を連続的に凝固液中に導入させるものであればどのようなものでも良いが、大きな斑なく定量的に導入できるもので有ることが望ましく、そのようなゲル形成性水溶液供給部としてはポンプや圧縮空気の圧力を用いるものが挙げられる。
【0023】
ゲル形成性水溶液供給部のゲル形成性水溶液を凝固液へ導入する先端は、配管のままでも、あるいは、液流を細径化するためにノズルを設けても良く、また分岐して、あるいは、ノズル先端をシャワーヘッド形状として、同時に複数本ないし多数本の水性ゲル体が得られるようにしても良い。
【0024】
なお、ノズル先端の形状の変更により、断面が円形や帯状などの水性ゲル体を得ることができる。帯状の水性ゲル体の場合、断面形状は長方形以外に、必要に応じて長円、あるいは、角部が丸まった長方形、複数の円が連なった形状(フラット電線状)等のものが得られるように先端の形状を変更しても良い。
【0025】
得られる水性ゲル体に粒状物を封入する場合(粒状物として種子が入った水性ゲル体はゲル被覆種子となる)、予め粒状物を添加したゲル形成性水溶液を凝固液に導入して、これら粒状物が封入された水性ゲル体としても良い。このとき、粒状物を添加されたゲル形成性水溶液を凝固液中に連続的に導入させるゲル形成性水溶液供給部の送液手段としては粒状物を傷つけたり、あるいは、これら粒状物により送液ができなかったりするので、ギアポンプやプランジャーポンプなどのポンプ類ではなく、圧縮ガスの圧力を用いる圧力送液手段を用いることが望ましい。
【0026】
また、2重管式のノズルを用いて凝固液に導入する直前のゲル形成性水溶液に固形物を添加しても良い。後者の場合、得られる水性ゲル体への添加する固形物の長さ方向の分布を制御することが容易であり、また、このとき、粒状物の傷つきが防止され、送液も容易となる。
【0027】
2重管式のノズルとは、ゲル形成性水溶液を内管と内管を取り巻く外管とからなるノズルであって、外管と内管との間にゲル形成性水溶液を供給し、このゲル形成性水溶液を凝固液に向けて吐出するためのノズル先端部を備えるものであって、その内管に固形物を供給することで粒状物が封入された水性ゲル体連続体を容易に得ることができ、このとき粒状物の供給を制御することで水性ゲル体への添加する固形物の長さ方向の分布を制御することができる。
【0028】
本発明の水性ゲル体製造装置によって得られる紐状ないし帯状の水性ゲル体に封入される粒状物としては植物の種子や、生育能力のある胚あるいは不定胚などの種子類似物(切片や塊茎などの組織を含む。)や、これらを微細な珪藻土等で球形に成形したペレット種子(本発明では、これらを併せて「種子」と云う)などのほか、水性ゲル体は一般に透明となり、内部に配されたものが視認できるため、アメニティやインテリア用途として、種子以外のもの、例えば色ビーズなどを封入してもよく、あるいは児童の科学玩具等の用途では生物の卵等を封入しても良い。なお、これら粒状物は複数種を組み合わせて用いても良い。
【0029】
本発明において、粒状物として種子を用いる場合、すなわち、ゲル被覆種子を製造する場合、紐状ないし帯状の被覆ゲル体内に間隔をあけて、1つずつあるいは複数の種子が配されていると、紐状の被覆ゲルを畝や、直線あるいは、曲線にそって展開して圃場に播種するだけで、発芽後の植物が生長するに必要なスペースが確保でき、間引き等の手間を不要とすることができる。ここで、前記間隔は一定間隔であることがより好ましい。
【0030】
なお、ゲル被覆種子を製造する場合、その紐状ないし帯状の水性ゲル体(被覆ゲル層)内には一種類の種子のみを配しても良く、あるいは、色が異なる花の種子を配するなど、必要に応じて、異なる種類の種子を1つの紐状や帯状の被覆ゲル体内に配することもできる。
【0031】
ゲル被覆種子では種子は被覆ゲル体長手方向に一定間隔で、特にその植物体の成長が阻害されないよう、必要な空間が確保される間隔として配すると、圃場への播種後の間引も不要となり、また、成長の阻害も生じないので好ましい。また、種子はその植物体の性質、あるいは、種子の出芽率に応じて適宜、1つずつ単独で、あるいは、複数ずつ配する。
【0032】
上記のような、必要に応じて粒状物が添加されたゲル形成性水溶液の液流は、凝固液槽内の凝固液に導入される。
【0033】
このとき、凝固液の中で形成される紐状ないし帯状の水性ゲル体の堅さは凝固液との接触時間で変化する。このため、凝固液を容れる凝固液槽は、水性ゲル体が形成後に適切な接触時間後に連続的に取り出されるような形状とする。このとき水性ゲル体を凝固液中で曲げることにより凝固液槽の大きさを小さくすることも可能であるが、このとき、水性ゲル体が凝固液槽内で切れる可能性があるので、凝固液槽は水性ゲル体を曲げずに必要な凝固時間が得られるような長尺な形状とすることが望ましい。
【0034】
また、凝固液中の凝固成分は水性ゲル体形成により徐々に失われていくため、部分的な濃度差が生じないように、凝固槽内の凝固液を攪拌するか、あるいは、循環する凝固液均一化手段を凝固液槽に設けることが望ましい。なお、凝固液槽の形状が上記のような長尺形状であるため、凝固液均一化手段としては循環式であることがより望ましい。
【0035】
凝固液槽内で形成された連続形状(紐状ないし帯状)の水性ゲル体は凝固液槽外へ連続的に取り出すことにより、長さ方向に亘って堅さ斑のない水性ゲル体を得ることができ、かつ、機構も簡単なものとなる。このような連続的な取り出しが可能な水性ゲル体取り出し手段としては、ローラやネットコンベア、ベルトコンベアなどが挙げられる。
【0036】
このようにして凝固液槽外に取り出された紐状ないし帯状の水性ゲル体は、そのまま放置すると付着する凝固液により、硬化が進行するので、必要に応じて水洗を行う。水洗方法としては水性ゲル体に対して水をシャワー状に供給して行っても良いが、水洗槽を設けて凝固液槽から取り出した水性ゲル体を入れ、この水洗槽に対して水(流水)を供給することにより、効率的に水洗を行うことができる。
【0037】
ここで、凝固液は比重が水より大きいので、水洗槽底部に溜まりやすく、そのため、水洗槽の排水口を水洗槽底部に設けることにより、効率のより良い洗浄が可能となる。
【0038】
このようにして得られた紐状ないし帯状の水性ゲル体(ゲル被覆種子)は例えば長い形状のままリールに巻き取る、容器やポリ袋内に堆積する等の荷姿にすることもできるが、取り扱い上、運搬上の必要や、需要者の要望により、適当な長さで切断しても良い。このとき、切断は上記水洗の前でも良く、後でも良い。
【0039】
また、紐状ないし帯状の水性ゲル体(ゲル被覆種子)は製造された状態のまま用いてもよいが、運搬、あるいは保存等のため、従来の粒状のゲル被覆種子同様にして、必要に応じ乾燥させても良く、その場合には、使用前に水に浸漬するなどの手段により、容易に復元して用いることができる。
【0040】
本発明の水性ゲル体製造装置によって得られる紐状の水性ゲル体の場合、培地用途やゲル被覆種子用途では、その太さは、内部に配する粒状物を封入する場合にはその粒状物の大きさにもよるが、通常、1mm以上15mm以下となることが好ましい。太さが1mm未満であると取り扱い上求められる強度が得られず、また、15mm超であると、ゲル被覆種子とした場合には発芽後の芽や根がゲル体外部に突出することができず、成長障害などの不都合が生じるおそれがある。
【0041】
なお、このように製造される紐状ないし帯状の水性ゲル体は、水性ゲルからなるため強度的には比較的弱い。このため長手方向の強度を上げて操作性を向上させるために、内部に糸(ストランド、ヤーン)、紐など、あるいは、短繊維等の補強繊維体を配しても良い。ここで、このような糸、紐などの補強繊維体としては培地やゲル被覆種子用途の場合、圃場で自然分解される天然繊維や合成繊維からなることが、回収や廃棄などの手間が不要であるので好ましい。なお、短繊維による補強の場合には例えばゲル形成性水溶液にこれら短繊維を混合することで実現でき、また、糸や紐による補強の場合には凝固液に導入される前のゲル形成性水溶液の液流にこれら繊維体を供給しても良い。なお、紐あるいは糸は1本だけでなく、複数本によって補強を行っても良い。
【0042】
なお、本発明の水性ゲル体製造装置において、凝固液槽と水洗槽とを連続して設け、水洗槽下流側に水性ゲル体取り出し手段を設けて、紐状ないし帯状の水性ゲル体を連続的に取り出しても良く、この場合も本発明に含まれる。
【0043】
以下、本発明の水性ゲル体製造装置の一例Aについて図面を用いて説明する。
【0044】
図1にはゲル形成性水溶液を、そのゲル形成性水溶液を凝固させて水性ゲルを形成させる凝固液中に連続的に導入させるゲル形成性水溶液供給部、凝固液を容れるための凝固液槽、及び、その凝固液槽内で形成された連続形状の水性ゲル体を該凝固液槽外へ連続的に取り出す水性ゲル体取り出し手段を有し、この水性ゲル体取り出し手段によって前記凝固液槽から取り出された水性ゲル体を水洗する水洗槽を有する水性ゲル体製造装置Aを示す。
【0045】
図1に示される水性ゲル形成性水溶液タンク1内部の水性ゲル形成性水溶液2は空気導入口1aから導入される空気の圧力により、水性ゲル形成性水溶液タンク1底部から配管3によりノズル部4に供給される。
【0046】
水性ゲル形成性水溶液2はノズル部4の下部の開口4aから液流となってノズル部4下方の凝固液槽5に向かって流れ落ち、凝固液5cへ導入される。
【0047】
上記装置において、ノズル部4下端はこの例では凝固液槽5の凝固液5cの液面上方に位置しているが、ノズル部4下端が凝固液5cの中に位置するようにさせても良い。ただし、ノズル部4下端が凝固液槽5の凝固液5cの液面上方に位置させた場合には、ノズル部4の内部での詰まりが発生するおそれがない。
【0048】
凝固液槽5の凝固液5cは凝固液槽5に付属する管路5a及びポンプ5bによって循環されているため、水性ゲル形成性水溶液の凝固斑が発生しないようになっている。凝固液内に滞在する時間により、凝固液との接触時間が決定されるので、凝固液槽5の長さの調整や、後述するローラ6による凝固液槽5からの取り出し速度の調整などにより、適切な凝固状態が得られるように調整する。
【0049】
この装置の凝固液槽5の川下側端部には板5dが斜めに置かれており、その先に、ローラ6が設けられ、図示しないモータにより回転されている。得られる水性ゲル体の紐状の被覆ゲル体の太さは、ノズル部4の径、及び、ノズル部4に供給される水性ゲル形成性水溶液2の量、及び、ローラ6の回転数によって決定される。なお、凝固液槽5の川下側端部に置かれた板5dにより紐状の水性ゲル体は傷つくことなくローラ6に供給されるが、板5dの代わりに、凝固液槽5の川下側端部を斜めにしてもよい。
【0050】
ローラ6の下方には、受けざる9と水洗槽8とがあり、水洗槽8にはこの例ではその一方の側面の底部から流水が供給されて、他の側面の底部に設けられた排水口8aから排水されるようになっていて、受けざる9に入った紐状の水性ゲル体はこの水によって水洗されるとともに、過剰の凝固成分を含んだは水洗槽8底部へ沈み、排水口8aから排出されるので、洗浄効率が高い。
【0051】
ローラ6と水洗槽8との間には図中左右に往復動する振り分け板7があって、受けざる9へ供給される紐状の水性ゲル体が受けざる9内で偏在しないようになっているため、効率的に水洗が行われる。
【0052】
振り分け板7の上部には図中左右に刃が付いた諸刃のカッター7aが設けられ、振り分け板7の左右往復運動時に、紐状の水性ゲル体を適切な長さ(例えば2m)に切断するようになっている(図2参照)。なお、このカッター7aは必須なものではなく、受けざる9内で水洗された紐状の水性ゲル体は長尺のまま、例えばリールで巻き取っても良い。
【0053】
上記のような水性ゲル体製造装置Aにおいて、ゲル形成性水溶液中に種子を入れれば紐状のゲル被覆種子を製造することができるが、このとき、得られる紐状のゲル被覆種子中の長さ方向の種子の分布を均一なものとすることは困難である。
【0054】
ここで、水性ゲル体内に封入する粒状物の長さ方向の分布の制御が容易な二重管式のノズルを用いる水性ゲル体製造装置Bについて説明する。
【0055】
図3(a)には本発明に係る水性ゲル体製造装置Bの全体をモデル側面図で、図3(b)にはそのノズル部の上面をモデル的に示した。
【0056】
この水性ゲル体製造装置Bは、水性ゲル体製造装置Aとノズル部のみが異なり、水性ゲル体製造装置Aと同じ部分は同じ符号を付してある。以下、水性ゲル体製造装置Bのノズル部4’について説明する。
【0057】
ノズル部4’はゲル形成性水溶液供給部に設けられた、ゲル形成性水溶液を内管と該内管を取り巻く外管とからなるノズル部であり、ノズル部4’の外管と内管との間にゲル形成性水溶液を供給するノズル部給液部4c’(水性ゲル形成性水溶液タンク1底部から配管3に接続している)と、ノズル部4’の外管と内管との間に供給されたゲル形成性水溶液2を凝固液5cに向けて吐出するためのノズル先端部4b’とを備えている。
【0058】
このようなノズル部4’のノズル部給液部4c’の外管と内管との間にゲル形成性水溶液2が供給されると、図4にノズル部4’付近のモデル拡大図を示すように、ノズル先端部4b’からゲル形成性水溶液2がその流れ方向に垂直な断面が「O」字状になった液流として吐出されるが、ノズル先端部4b’下方で通常の液流となる。ここでノズル部4’の内管内側に粒状物(この例では種子)を定期的に供給すれば、得られる紐状の水性ゲル体内に封入される粒状物の長さ方向の分布が均一とすることができる。
【0059】
粒状物の供給は、人間が手で行っても良いが、マニピュレータか、各種播種装置をそのまま、あるいは改造して行うことができる。
【0060】
このような播種装置としては、切り欠き部を有する回転円盤を用いるロール式播種装置、真空(減圧)を利用して種子を吸引・保持する種子吸引式播種装置(主として、中空針状の吸引部を利用する方法と、円盤に設けた孔により種子を吸引・保持する方法との2つの方法が一般的である)、パーツフィーダ式播種装置(種子搬送経路を振動させて搬送するもの)、あるいは、目皿式播種装置等が挙げられる。
【0061】
図5には、ロール式の播種装置を改造して作製した粒状物(種子)供給部のモデル図を示した。この例では回転円盤に設けられた切り欠き部に、ホッパから切り欠き部の大きさに適合する数(この例では2つ)の種子(粒状物)が供給され、回転円盤の回転(一定速度で回転)により、粒状物供給部の下方に所定の数の種子(粒状物)が定期的に供給される。このような粒状物供給部を併用することでノズル部4’の内管内側4a’に粒状物を供給することができる。
【0062】
図6(a)には上記水性ゲル体製造装置Aを用いて作成した紐状の水性ゲル体(培地)を、図6(b)にはこのような水性ゲル体を蓄積し種子を播種した状態を、図6(c)には上記水性ゲル体製造装置Bを用いて作成した、内部に種子を封入した紐状の水性ゲル体(紐状のゲル被覆種子)を、それぞれモデル的に示した。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る水性ゲル体製造装置Aのモデル図である。
【図2】水性ゲル体製造装置Aの凝固液槽5の川下側端部付近のモデル拡大図である。
【図3】本発明に係る水性ゲル体製造装置Bのモデル図である。(a)装置全体のモデル図である。(b)ノズル部4’付近の拡大上面図である。
【図4】水性ゲル形成性水溶液の液流内に種子を添加する状態を示すノズル部4’のモデル断面図である。
【図5】種子供給部の一例のモデル図である。
【図6】(a)本発明に係る水性ゲル体製造装置によって製造される紐状の水性ゲル体を示すモデル図である。(b)(a)の水性ゲル体を堆積し、培地として内部に種子を播種した状態をモデル的に示した図である。(c)本発明に係る水性ゲル体製造装置によって製造される、内部に種子が配された紐状の水性ゲル体(紐状のゲル被覆種子)を示すモデル図である。
【符号の説明】
【0064】
A,B 本発明に係る水性ゲル体製造装置
1 水性ゲル形成性水溶液タンク
2 水性ゲル形成性水溶液
3 配管
4 ノズル部
4a ノズル部4の下部の開口
5 凝固液槽
5c 凝固液
6 ローラ
7 振り分け板
7a カッター
8 水洗槽
9 受けざる
4’ ノズル
4a’ ノズル部4’の内管内側4a’
4b’ ノズル先端部4b’

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル形成性水溶液を、該ゲル形成性水溶液を凝固させて水性ゲルを形成させる凝固液中に連続的に導入させるゲル形成性水溶液供給部、該凝固液を容れるための凝固液槽、及び、該凝固液槽内で形成された連続形状の水性ゲル体を該凝固液槽外へ連続的に取り出す水性ゲル体取り出し手段を有することを特徴とする水性ゲル体製造装置。
【請求項2】
前記水性ゲル体取り出し手段によって前記凝固液槽から取り出された水性ゲル体を水洗する水洗槽を有することを特徴とする請求項1に記載の水性ゲル体製造装置。
【請求項3】
前記連続形状の水性ゲル体を切断する切断手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水性ゲル体製造装置。
【請求項4】
前記ゲル形成性水溶液内に粒状物を供給するための粒状物供給手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の水性ゲル体製造装置。
【請求項5】
前記ゲル形成性水溶液供給部が、ゲル形成性水溶液を内管と該内管を取り巻く外管とからなるノズル部を有するとともに、
該ノズル部の外管と内管との間に前記ゲル形成性水溶液を供給するノズル部給液部と、
該ノズル部の外管と内管との間に供給された該ゲル形成性水溶液を前記凝固液に向けて吐出するためのノズル先端部とを備えたことを特徴とする請求項4に記載の水性ゲル体製造装置。
【請求項6】
上記粒状物供給手段が、上記ノズル部の内管内へ粒状物を供給するものであることを特徴とする請求項5に記載の水性ゲル体製造装置。
【請求項7】
上記水洗槽が、流水により水性ゲル体の水洗を行うものであり、かつ、該流水の排水のための排水口が該水洗槽底部に設けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれかに記載の水性ゲル体製造装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れかに記載の水性ゲル体製造装置を用いて紐状ないし帯状の水性ゲル体を得ることを特徴とする水性ゲル体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−282545(P2007−282545A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112149(P2006−112149)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(597041747)アグリテクノ矢崎株式会社 (56)
【Fターム(参考)】