説明

水性ベースコート及び溶媒性ベースコートの両方と適合性のあるクリアコート組成物

水性ベースコートおよび溶媒性ベースコート上での適合性が改善された硬化性フィルム形成コーティング組成物、典型的にクリアコート。この組成物は、カルバメート材料と、硬化剤、典型的にモノマー性メラミン硬化剤と、ヒドロキシ官能性シラン成分とを含んでなるフィルム形成バインダーを含む。標準的な着色ベースコート上でクリアコートとして使用する場合、得られるコーティングは、水性ベースコートおよび溶媒性ベースコートの両方に対して実質的にシワのない外観および優れた接着性をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性コーティング組成物、特に水性ベースコート組成物および溶媒性ベースコート組成物の両方と適合性のある自動車用クリアコートコーティング組成物に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第119条に基づき、2004年8月30日出願の米国特許出願第10/929,239号からの優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
自動車およびトラックボディのような輸送車両は、車両の外観を向上させ、また腐食、スクラッチ、チッピング、紫外線、酸性雨および他の環境条件からの保護をもたらす複数のコーティング層によって処理されている。過去20年間にわたって、一般的に自動車およびトラック用のベースコート/クリアコート仕上げは「ウェット−オン−ウェット(wet−on−wet)適用」で使用されている。すなわち、着色ベースコートが完全に硬化する前にベースコートに透明クリアコートが適用される。
【0004】
これらのベースコート/クリアコート仕上げに関する最低限の性能要件としては、高レベルの酸エッチング抵抗、コート間接着、修復接着、基材接着、フロントガラス付着接着剤への接着、スクラッチおよび損傷抵抗、チップ抵抗、湿度抵抗、耐候性等が挙げられる。またベースコート/クリアコートコーティングおよび/またはそれらの個々の成分は、高度の光沢、像の明瞭さ(DOI)および平滑さを特徴とする優れた視覚外観を提供可能でなければならない。クリアコート組成物に関して、後者の要件は特に重要である。
【0005】
スクラッチおよび損傷抵抗は、他の要求される性能および外観特性の釣り合いに関連して、達成が特に困難な性能特性であることがわかっている。スクラッチおよび損傷抵抗は、典型的に洗車場の茂み、木の枝、キー、指の爪等によって引き起こされる機械的摩耗からのスクラッチに抵抗するコーティングの能力を指す。ベースコート/クリアコート系においてクリアコートが最も外側のコーティングであるため、スクラッチおよび損傷抵抗はクリアコートに関して特に重要な特性である。
【0006】
上記性能および外観パラメーターを提供することに加えて、製造環境において様々なコーティング成分が容易に適用されなければならない。
【0007】
最終的に、複合ベースコート/クリアコート系における使用が意図されるコーティング組成物はいずれも、多種多様な他のコーティング組成物と適合性がなければならない。例えばコーティング製造業者は、1つの特定のプライマーまたはクリアコート組成物による単独での使用のためのベースコート組成物を配合しない。さらに、多くの自動車塗料店において、クリアコート供給者は使用されるベースコート配合物における制御を有さない。また、ますます所望のツートーン塗装操作において、現在クリアコートの下で二種の異なるベースコート、すなわち、主要ボディパネルに対する水性ベースコートおよびより低いアクセントエリアに対する溶媒性ベースコートが使用されている。クリアコート供給者がベースコート配合物において制御を有さない場合、水性ベースコートおよび溶媒性ベースコートの両方を含む広範囲の種類のベースコートと適合性を有することは特に望ましい。
【0008】
従って、複合ベースコート/クリアコートコーティング系の個々の成分に対して、多くの市販品として入手可能なコーティング組成物との適合性および使用の容易さが必要である。上首尾のクリアコート組成物は、水性ベースコート組成物および溶媒性ベースコート組成物の両方、ならびにその中間および高固体型と適合性がある。フィルム形成技術における差異に関係なく、この適合性は存在しなければならない。「適合性がある」とは、本明細書で使用される場合、上述した複合ベースコート/クリアコート系の性能、外観および適用要件の許容可能なレベルを提供する二種以上の個々のコーティング成分の組み合わせを指す。
【0009】
しかしながら、特定のベースコート配合物は、特定の適合性の課題をクリアコートコーティング製造業者に与える。例えば、遊離アミンを含有する水性ベースコート組成物が基材に適用され、続いて架橋樹脂としてモノマー性メラミンを含んでなる従来の溶媒性クリアコート組成物が適用される場合、両方の層の同時硬化時に得られる硬化フィルムは「シワになって」現れるということがわかっている。この外観は望ましくなく、また商業的価値に欠ける。ポリマー性メラミンを含有するクリアコート組成物、特に高イミノポリマー性メラミンを含有するものは、アミン含有水性ベースコートにおいて良好な外観およびシワ抵抗を提供し得るということがわかっている。その結果、現在の市販品として入手可能なクリアコートは、架橋実体としてポリマー性メラミンを利用する。しかしながら、プライマースプレーブースにおいて湿式プライマー上で、ツートーン塗装作業のようにベースコートがスプレーされ、そして前記プライマーがオーブン中で焼成される車両組立工場で現在より一般に実行される焼成された溶媒または水性ベースコート上で、ポリマー性高イミノアミノプラスト樹脂は乏しいスクラッチおよび損傷抵抗、ならびに容認できない接着を導き得るということがわかっている。
【0010】
従って、コーティング製造業者の課題は、上述した全ての必要性能、外観および適用特性を提供するが、さらには広範囲の市販品として入手可能なコーティング組成物と適合性があるコーティング組成物、特にクリアコート組成物を提供することである。特に、上述したベースコート適合性の問題がなく、従来技術のクリアコートの性能、外観および適用パラメーターを維持または向上させることは有利である。
【0011】
前記にもかかわらず、従来技術は、性能、外観および適用要件の間の必要な釣り合いを有するが、多種多様なベースコート配合物、特に最も課題となるベースコート配合物と適合性があるクリアコートコーティング組成物を提供することができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、実質的にシワのない外観、良好なコート間接着、優れたスクラッチおよび損傷抵抗を有し、そして所望のレベルの耐久性およびエッチング抵抗を提供する多層コーティング物品を提供するために、遊離アミンを含有する水性ベースコートを含む水性ベースコートおよび溶媒性ベースコートの両方を含む広範囲のベースコート配合物においてクリアコートとして使用可能なコーティング組成物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらおよび他の目的は、バインダー成分の特定の組み合わせによって予想外に達成される。特に本発明は、フィルム形成バインダーと有機液体キャリアとを含んでなる様々なベースコート配合物上でクリアコートとして使用可能なコーティング組成物であって、フィルム形成バインダーが、
(A)複数のカルバメート基を有する硬化性フィルム形成成分と、
(B)少なくとも一種のモノマー性アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂を含んでなり、そして好ましくは本質的にポリマー性メラミンを含まない成分(A)に対する一種以上の硬化剤または架橋剤と、
(C)少なくとも1個の加水分解性シラン基を含有し、かつ約45以上のヒドロキシル価を有するヒドロキシ官能性シラン成分と
を含有する組成物を提供する。
【0014】
任意にバインダーは、
(D)加水分解性シラン基を含有し、かつ約44以下、好ましくは40以下の(成分(C)と比較して)低いヒドロキシル価を有する第2のヒドロキシ官能性シラン成分
を含んでもよい。
【0015】
また本発明は、実質的にシワのない外観、改善されたスクラッチおよび損傷抵抗、ならびに改善された水性および溶媒性ベースコートおよびクリアコートに対するクリアコート接着力を有する多層コーティングされた車両ボディまたはその一部のような多層コーティングされた基材の製造方法も提供する。この方法は、事前にプライマー処理されたか、またはシールされていてもよい基材に、少なくとも一層のベースコート層と、その上に前記組成物を含んでなるクリアコート層とを適用する工程を含んでなる。次いで多層複合コーティングを実質的または完全に硬化し、前記所望の特徴を有する多層コーティング基材を提供する。最終的に、本発明は、上記多層コーティングによってコーティングされた自動車またはトラックボディのような基材を含む。
【0016】
意外なことに、特定のカルバメート−メラミンバインダー系中への特定のシラン官能性化合物の組み入れは、様々なベースコート上で改善された適合性ならびに改善されたスクラッチおよび損傷抵抗を有するクリアコートとして有用なコーティングを提供することがわかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書で使用される場合、特記される場合を除き、「複数」とは平均2以上を意味する。
【0018】
また用語「実質的に硬化される」または「部分的に硬化される」とは、少なくともいくらかの硬化が生じたが、時間の経過とともにさらなる硬化が生じ得ることを意味する。
【0019】
また本発明で使用される場合、用語「加水分解性シラン基」とは、以下の構造:
【0020】
【化1】

【0021】
(この基はケイ素−炭素結合によってシリル含有材料に結合されており、そして式中、nは0、1または2であり;Rはオキシシリル、または未置換ヒドロカルビル、もしくは群O、N、S、P、Siから選択されるメンバーを含有する置換基の少なくとも1個によって置換されたヒドロカルビルであり;そしてXは、群C1〜C4アルコキシ、C6〜C20アリールオキシ、C1〜C6アシルオキシ、水素、ハロゲン、アミン、アミド、イミダゾール、オキサゾリジノン、尿素、カルバメートおよびヒドロキシルアミンから選択される加水分解性部分である)を有するシリル基を意味する。
【0022】
本発明の硬化性フィルム形成コーティング組成物は、自動車およびトラックボディの外部およびそれらの一部の仕上げ用に有用である。特に本発明は、固体着色顔料または金属またはパールフレーク顔料またはその混合物を含有する着色ベースコート上に、顔料を含有しないか、または少量の透明顔料を含有する透明クリアコートを形成するために典型的に使用されるカルバメート基含有コーティングを提供する。適用および少なくとも部分的硬化の後、ベースコートが事前に硬化された場合でさえも、この組成物が水性ベースコートおよび溶媒性ベースコートの両方上でシワのない外観および良好なコート間接着をもたらすことが示される。
【0023】
硬化性コーティング組成物は、好ましくは、約45〜90重量%のバインダーの比較的高い固形分と、それに相当する約10〜55重量%の有機キャリアを有する。有機キャリアはバインダーの溶媒または溶媒の混合物であり得る。また本発明のコーティングは、好ましくは低VOC(揮発性有機含量)コーティング組成物であり、すなわち、ASTM D3960で提供される手順の下で決定されるように、1リットルの組成物あたり0.6キログラム未満の有機溶媒(1ガロンあたり5ポンド)を含むコーティングを意味する。
【0024】
ポリマー性、オリゴマー性および他のフィルム形成成分を含んでなる本コーティング組成物のフィルム形成部分は「バインダー」または「バインダー固体」として示され、そして有機溶媒または液体キャリア中に溶解、乳化または他の形態で分散される。バインダー固体は、一般的に、硬化組成物の固体有機部分に寄与する全てのフィルム形成成分を含む。一般的に、触媒、顔料または安定剤のような化学添加剤はバインダーの一部とは考えられない。顔料以外の非バインダー固体は、通常、組成物の約5〜10重量%より多い量にはならない。この開示において、用語「バインダー」または「バインダー固体」としては、硬化性フィルム形成、カルバメート材料、硬化剤、反応性シラン成分および他の全ての任意のフィルム形成成分が挙げられる。
【0025】
本発明のコーティング組成物は、組成物を広範囲のコーティング成分に対して適合性があるようにさせるバインダー成分の新規組み合わせを含有する。
【0026】
コーティングのフィルム形成バインダー部分中の第1の材料は、硬化性フィルム形成カルバメート基含有成分(A)である。硬化性フィルム形成成分(A)は、バインダーの重量を基準にして、約5〜60重量%、好ましくは10〜55重量%の量でコーティング組成物中に存在し得る。
【0027】
硬化性フィルム形成カルバメート基含有成分(A)は一般的にポリマー性またはオリゴマー性であってよく、そして一般的に1分子あたり平均少なくとも2個の反応性カルバメート基を含んでなる。カルバメート基は第一級であっても第二級であってもよいが、本発明は特に第二級カルバメート基を有するカルバメート材料に関する。また本発明においては、オリゴマーのような低分子量材料が一般的に好まれる。
【0028】
かかるオリゴマー性カルバメート官能性化合物は、一般的に約75〜2,000、好ましくは約75〜1,500の範囲の重量平均分子量を有する。本明細書で開示される全分子量は、ポリスチレン標準を使用するGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)によって決定される。これらの低分子量材料は、当該分野で周知の様々な方法で調製可能である。
【0029】
好ましい実施形態において、国際公開第00/55229号パンフレットに記載の通り、ポリイソシアネート、好ましくは脂肪族ポリイソシアネートと単官能性アルコールとを反応させ、複数の第二級カルバメート基を有するオリゴマー性化合物を形成することによって、これらの低分子量材料を調製可能である。上記特許の開示は本明細書に援用される。この反応は加熱下で、好ましくは当該分野で既知の触媒の存在下で実行される。
【0030】
これらの第二級カルバメート化合物の調製において、様々なポリイソシアネート化合物を使用することができる。好ましいポリイソシアネート化合物は、1分子あたり2個〜3個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物である。ポリイソシアネート化合物の代表例は、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、テトラメチルキシリデンジイソシアネート等である。ジイソシアネートのトリマーも使用可能であり、例えば、商品名Desmodur(登録商標)N−3390で販売されているヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアヌレート)のトリマー、商品名Desmodur(登録商標)Z−4470で販売されているイソホロンジイソシアネート(イソシアヌレート)のトリマー等である。
【0031】
いずれかの前記有機ポリイソシアネートおよびポリオールから形成されるポリイソシアネート官能性付加物も使用可能である。トリメチロールプロパンまたはエタンのようなトリメチロールアルカンのようなポリオールを使用することができる。1つの有用な付加物はテトラメチルキシリデンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応生成物であって、商品名Cythane(登録商標)3160で販売されている。本発明の硬化性カルバメート官能性樹脂が外部のコーティングにおいて使用される場合、耐候性および黄変抵抗の視点から、芳香族イソシアネートの使用よりも脂肪族または脂環族イソシアネートの使用が好ましい。
【0032】
上記ポリイソシアネートを第二級カルバメート基へと変換するために、いずれの一価アルコールも使用可能である。いくつかの適切な一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、ヘキサノール、2−エチルヘキサノールおよびシクロヘキサノールが挙げられる。
【0033】
もう1つの実施形態において、当業者によって認識されるように、単官能性イソシアネート、好ましくは脂肪族単官能性イソシアネートと、ポリオールとを反応させることによって、低分子量の第二級カルバメート材料を形成可能である。
【0034】
かかる上記の低分子量の第二級カルバメート材料の代表は、以下の構造式I−III:
【0035】
【化2】

【0036】
(式中、Rは多官能性オリゴマー性またはポリマー性材料であり;R1は、一価アルキルまたはシクロアルキル基、好ましくは一価C1〜C12アルキル基またはC3〜C6シクロアルキル基、あるいはアルキル基とシクロアルキル基との組み合わせであり;R2は、二価アルキルまたはシクロアルキル基、好ましくは二価C1〜C12アルキル基またはC3〜C6シクロアルキル基、あるいは二価アルキル基とシクロアルキル基との組み合わせであり;そしてR3は、前記で定義されたRまたはR1のいずれかである)を有するものである。
【0037】
本発明の実施において、カルバメート官能性ポリマー、特に第二級カルバメート基を有するものも使用されてよい。かかるポリマーは当該分野で周知である。かかるポリマーは様々な方法で調製可能であり、そして典型的にペンダントおよび/または末端カルバメート基を有するアクリル、ポリエステルまたはポリウレタン含有材料である。アクリルポリマーは一般的に、自動車トップコートにおいて好ましい。
【0038】
本発明のコーティング組成物で、ポリマー性およびオリゴマー性カルバメート官能性化合物の混合物も利用されてもよい。
【0039】
コーティング組成物は、フィルム形成バインダーの一部として、一種以上の硬化剤または架橋剤(B)も含む。これらの材料は、好ましくは、成分(A)上のカルバメート基に対して反応性である平均2個以上の官能基を有する。一般的に、架橋剤(B)は、バインダーの重量を基準にして、約15〜45重量%、好ましくは20〜40重量%の量でコーティング組成物中に存在してもよい。
【0040】
硬化されたコーティングにおいてカルバメート基と反応して、ウレタン連鎖を形成する多くの架橋材料は既知である。この連鎖は、それらの耐久性、酸性雨および他の環境汚染因子による攻撃に対する抵抗ならびにスクラッチおよび損傷抵抗のため望ましい。これらとしては、メラミンホルムアルデヒド樹脂(モノマー性またはポリマー性メラミン樹脂および部分的または完全にアルキル化されたメラミン樹脂を含む)のようなアミノプラスト樹脂、尿素樹脂(例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂のようなメチロール尿素、ブチル化尿素ホルムアルデヒド樹脂のようなアルコキシ尿素)、およびフェノール/ホルムアルデヒド付加物のようなフェノプラスト樹脂、ならびにイソシアネート基を有する硬化剤、特にブロック化イソシアネート硬化剤(例えば、TDI、MDI、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、これらのイソシアヌレートであり、これらはアルコールまたはオキシムによってロックされていてもよい)等、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
しかしながら、少なくとも一種以上の硬化剤(B)が、完全または部分的にアルキル化されていてよいモノマー性アルキル化アミノプラスト樹脂、特にモノマー性アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂であることは本発明の態様である。モノマー性アルキル化メラミンが他のバインダー成分と一緒に使用される場合、水性ベースコート上のシワ抵抗を犠牲にすることなく、焼成された溶媒性ベースコート上の強力なコート間接着が達成可能であるように、本発明のコーティングの硬化速度は有効に高められ得る。
【0042】
これらのモノマー性アミノプラスト架橋剤は当該分野において周知であり、そして複数の官能基、例えばアルキル化メチロール基を含有し、これはフィルム形成ポリマー中に存在するペンダントまたは末端カルバメート基と反応性であり、従ってカルバメート官能性ポリマーと所望のウレタン連鎖を形成可能である。最も好ましくは、架橋剤は、部分的または完全にアルキル化されたモノマー性メラミン−ホルムアルデヒド縮合物であり、すなわち、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物はアルコール、好ましくは1個〜6個の炭素原子を含有するアルコールによってさらにエーテル化されているメチロール基を含有する。この目的のためにいずれの一価アルコールも使用可能であり、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノールおよびシクロヘキサノールが挙げられる。最も好ましくは、メタノール、n−ブタノールまたはイソブタノールおよびそれらのブレンドが使用される。かかる架橋剤は、標準としてポリスチレンを使用するGPCによって決定されるように、典型的に約500〜1,500の重量平均分子量を有する。
【0043】
モノマー性メラミンが低イミノアミノプラスト樹脂であることが特に好ましい。全官能性の20%未満のイミノ含量またはトリアジン環あたり1.2モルのNHを有し、そして重合度が4未満(すなわち、4個のトリアジン環が一緒に連結する)であるモノマー性メラミンが特に好ましい。より好ましくは、トリアジン環あたり0(イミノ基が含まれない)〜0.8モルのNHを有するアミノプラスト樹脂である。残部は、好ましくは、メタノール、ブタノールまたは他の種類のアルコールによってアルキル化される。
【0044】
前記種類のアミノプラスト樹脂架橋剤は、Cytec Industries,Inc.から商標名Cymel(登録商標)で、またSurface Specialties UCBから商品名Resimene(登録商標)で市販品として入手可能である。ブロック化およびアンロック化イソシアネートのような他の適切な架橋剤は、Bayer Corporationから商標名Desmodur(登録商標)で市販品として入手可能である。
【0045】
もちろん、架橋剤は前記の組み合わせであってもよく、特にモノマー性アルキル化メラミン架橋剤とブロック化イソシアネート架橋剤とを含む組み合わせであってもよい。
【0046】
硬化性カルバメート官能性材料(A)および架橋成分(B)に加えて、コーティング組成物は、フィルム形成バインダーの一部として、ヒドロキシル官能性シラン化合物(C)も含有する。
【0047】
これは縮合型反応を通して追加的な架橋を提供するため、本発明の組成物の重要な成分である。ヒドロキシル官能性シラン成分は、ポリマー性メラミンの不在下での溶媒性ベースコートおよび水性ベースコートの両方における改善された外観、ならびに焼成された溶媒性ベースコートおよびクリアコートにおける改善されたコート間接着を達成するために十分な量でコーティングのフィルム形成部分に組み入れられ得る。典型的に、ヒドロキシル官能性シラン成分(C)は、バインダーの重量を基準にして、約10〜50重量%、好ましくは約15〜45重量%の範囲の量で使用される。
【0048】
本明細書で利用されるヒドロキシル官能性シラン材料(C)は、平均1個以上の加水分解性シリル基を含有し、そして約45以上、好ましくは60〜150のヒドロキシル価を有する化合物である。この材料は、ポリシロキサンをベースとする材料を含むオリゴマー性またはポリマー性材料であり得る。本発明において、ポリマー材料、特に以下に記載されるエチレン性不飽和モノマーから調製されるものが一般的に好ましい。
【0049】
好ましくは本発明の実施において使用されてもよいヒドロキシ官能性シランポリマーは、様々な方法で調製可能であり、そして典型的にアクリル、ポリエステルまたはエポキシ含有材料である。アクリルポリマーは、自動車トップコートにおいて一般的に好ましい。かかるポリマーは、一般的に、標準としてポリスチレンを使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定されるように、1,000〜30,000、そして好ましくは2,000と10,000との間の重量平均分子量を有する。
【0050】
好ましい実施形態において、ヒドロキシ官能性シランポリマー(C)は、以下に記載されるようなエチレン性不飽和モノマーの重合生成物であり、ポリマーの重量を基準にして、その約5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%、そしてより好ましくは15〜40重量%は加水分解性シラン官能性を含有するエチレン性不飽和モノマーである。ポリマーのヒドロキシル基の平均数は変動可能である。しかしながら、所望のフィルム特性を達成するために、かかる材料は45より高い、好ましくは約60〜150、より好ましくは約80〜100の範囲のヒドロキシル価(mg KOH/g 樹脂固体)を有するべきである。
【0051】
これらのポリマーを調製するための1つの方法は、エチレン性不飽和モノマーから調製されるポリマー中にシラン官能性を有するエチレン性不飽和モノマーを共重合することである。例えば、エチレン性不飽和シラン官能性モノマーと、ヒドロキシ官能性非シラン含有エチレン性不飽和モノマー、例えばヒドロキシ官能性アルキル・アクリレートまたはメタクリレートと、そして任意に他の重合性非シラン含有エチレン性不飽和モノマーとを共重合することによってエチレン性不飽和モノマーから調製されるポリマー中にシラン官能基を組み入れることができる。
【0052】
第一級または第二級ヒドロキシル基のいずれかを含有する適切なヒドロキシ官能性エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アルキル基中に1個〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレートを意味するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。ヒドロキシ官能性モノマーの存在によって、ヒドロキシ基とシランポリマー上のシラン部分との間および/またはヒドロキシ基とトップコート組成物中に存在し得る他の架橋基(例えばメラミン基)との間での追加的な架橋が生じ得、最終トップコート中のケイ素層化が最小化され、そして最適なリコート接着がもたらされる。
【0053】
他の適切な非シラン含有モノマーとしては、アルキル基が1個〜12個の炭素原子、好ましくは2個〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリレート、アルキルメタクリレートおよびそれらのいずれかの混合物が挙げられる。適切なアルキルメタクリレートモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等である。同様に適切なアルキルアクリレートモノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート等が挙げられる。例えば、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレートまたはt−ブチルシクロヘキシルメタクリレートのような脂環式メタクリレートおよびアクリレートも使用可能である。例えば、ベンジルアクリレートおよびベンジルメタクリレートのようなアリールアクリレートおよびアリールメタクリレートも使用可能である。もちろん、上記モノマーの二種以上の混合物も適切である。
【0054】
非シラン含有アルキルアクリレートまたはメタクリレートに加えて、硬度、外観等のような所望の特性を達成するために、ポリマーの約50重量%までの他の重合性モノマーもヒドロキシ官能性シランポリマー中で使用可能である。かかる他のモノマーの例は、スチレン、メチルスチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等である。
【0055】
ヒドロキシシラン材料の形成において利用されてよいシラン含有モノマーとしては、次の構造式:
【0056】
【化3】

【0057】
(式中、RはCH3、CH3CH2、CH3OまたはCH3CH2Oのいずれかであり;R1およびR2は、独立して、CH3またはCH3CH2であり;そしてR3はH、CH3またはCH3CH2のいずれかであり;そしてnは0または1〜10の正の整数である)を有するアルコキシシランが挙げられる。好ましくは、RはCH3OまたはCH3CH2Oであり、そしてnは1である。かかるアルコキシシランの代表例は、ガンマ−アクリルオキシプロピルトリメトキシシランのようなアクリラトアルコキシシラン、ならびにガンマ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(CromptonからSilquest(登録商標)A−174)およびガンマ−メタクリルオキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シランのようなメタクリラトアルコキシシランである。
【0058】
他の適切なアルコキシシランモノマーは次の構造式:
【0059】
【化4】

【0060】
(式中、R、R1およびR2は上記で定義された通りであり、そしてnは0または1〜10の正の整数である)を有する。かかるアルコキシシランの例は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランのようなビニルアルコキシシランである。
【0061】
他の適切なシラン含有モノマーは、エチレン性不飽和アクリルオキシシラン、例えば、アクリラトキシシラン、メタクリラトキシシランおよびビニルアセトキシシラン、例えば、ビニルメチルジアセトキシシラン、アクリラトプロピルトリアセトキシシランおよびメタクリラトプロピルトリアセトキシシランである。もちろん、上記シラン含有モノマーの混合物も適切である。
【0062】
ヒドロキシ官能性シランポリマーの形成において、シラン官能性マクロモノマーも使用可能である。例えば、一種のかかるマクロモノマーは、エポキシドまたはイソシアネートのような反応基を有するシラン含有化合物と、シランモノマーと共反応性である反応基、典型的にヒドロキシル基またはエポキシド基を有するエチレン性不飽和非シラン含有モノマーとの反応生成物である。有用なマクロモノマーの例は、アルキル基中に1個〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレートのようなヒドロキシ官能性エチレン性不飽和モノマーと、イソシアナトプロピルトリエトキシシランのようなイソシアナトアルキルアルコキシシランとの反応生成物である。
【0063】
上記シラン官能性マクロモノマーの代表は、次の構造式:
【0064】
【化5】

【0065】
(式中、R、R1およびR2は上記で定義された通りであり;R4はHまたはCH3であり、R5は1個〜8個の炭素原子を有するアルキレン基であり、そしてnは1〜8の正の整数である)を有するものである。
【0066】
上記成分と適合させて、本発明の実施において有用なヒドロキシ官能性アクリルシランポリマーの例は、スチレンの重合モノマー、アクリレート、メタクリレートもしくはビニルアルコキシシランモノマーまたはこれらのモノマーの混合物のいずれかであるエチレン性不飽和アルコキシシランモノマー、非官能性アクリレートもしくはメタクリレートまたはこれらのモノマーの混合物、およびアルキル基中に1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレート、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等ならびにこれらのモノマーの混合物からなる。
【0067】
好ましくは、シランアクリルポリマー(C)は以下の構成成分を含有する:約1〜30重量%のスチレン、約5〜80重量%のガンマ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ならびに約1〜30重量%のイソブチルメタクリレート、1〜30重量%のブチルアクリレートおよび10重量%より多くの、より好ましくは約13〜34重量%のヒドロキシプロピルアクリレート。ポリマー中のモノマーの全パーセントは100%に等しい。このポリマーは、好ましくは約1,000〜20,000の範囲の重量平均分子量を有する。
【0068】
1つの特に好ましいシランアクリルポリマーは、約25重量%のスチレン、約30重量%のガンマ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、約25重量%の非官能性アクリレートまたはメタクリレート、例えば、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ブチルアクリレートおよびイソブチルメタクリレートおよびそれらのいずれかの混合物、ならびに約20重量%のヒドロキシプロピルアクリレートを含有する。
【0069】
エチレン性不飽和モノマーから調製されるポリマーは、当業者に周知である標準溶液重合技術によって調製可能である。ここでは、モノマー、溶媒および重合開始剤が、1〜24時間かけて、好ましくは2〜8時間で、従来の重合反応器中に充填され、ここで構成成分は約60〜175℃、好ましくは約110〜170℃まで加熱される。反応物の比率および反応条件は、所望のヒドロキシ官能性を有するシランポリマーが得られるように選択される。
【0070】
ヒドロキシ官能性シラン材料は本質的にオリゴマー性でもあり得る。これらの材料は当該分野において周知である。
【0071】
本発明において、ポリマー性およびオリゴマー性ヒドロキシ官能性シラン化合物の混合物も利用可能である。
【0072】
上記ヒドロキシ官能性シラン成分に加えて、コーティング組成物は任意であるが、好ましくは、バインダーの一部として(C)とは異なるもう一種のヒドロキシ官能性シラン成分(D)をさらに含む。この成分は、成分(C)と比較して低いヒドロキシル価(すなわち、より少ないヒドロキシル基)を有する。
【0073】
低ヒドロキシル官能性シラン成分(D)は、クリアコートの上部において適用されたフロントガラス付着接着剤へのプライマーレス接着を達成するために十分な量で組成物のフィルム形成部分に組み入れられてもよい。典型的に、低ヒドロキシ官能性シラン成分は、バインダーの重量を基準として、0〜約15重量%、好ましくは約5〜10重量%の範囲の量で使用される。
【0074】
低ヒドロキシ官能性シラン材料(D)は、存在する場合、平均1個以上の加水分解性シリル基を含有し、そして45未満、好ましくは約4〜44の範囲のヒドロキシル価を有する。約4〜40の範囲のヒドロキシル価が特に好ましい。この材料は、ポリシロキサンをベースとする材料を含むオリゴマー性またはポリマー性材料であり得る。本発明において、ポリマー材料、特に以下に記載されるエチレン性不飽和モノマーから調製されるものが一般的に好ましい。この成分は、成分(C)に関して上記されたモノマーのいずれかを使用して、シラン成分(C)に関して記載された方法と同様に調製され得、そして同様の分子量範囲を有し得るが、重合間、減少された量のヒドロキシ官能性モノマーがこのポリマー中に組み入れられることを除く。
【0075】
好ましい実施形態において、低ヒドロキシル官能性シランポリマー(D)は、ポリマーの重量を基準として、約10〜97重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは50〜75重量%が、加水分解性シラン官能性を含有するエチレン性不飽和モノマーである上記されたようなエチレン性不飽和モノマーの重合性生物である。ポリマー上のヒドロキシル基の平均数は変動可能であるが;所望のフィルム特性を達成するために、かかる材料は45未満、好ましくは約44〜5、より好ましくは約40〜20の範囲(mg KOH/g 樹脂固体)のヒドロキシル価を有するべきである。
【0076】
上記成分と適合させて、本発明の実施において有用な高ヒドロキシ官能性アクリルシランポリマーの例は、スチレンの重合モノマー、アクリレート、メタクリレートもしくはビニルアルコキシシランモノマーまたはこれらのモノマーの混合物のいずれかであるエチレン性不飽和アルコキシシランモノマー、非官能性アクリレートもしくはメタクリレートまたはこれらのモノマーの混合物、およびアルキル基中に1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレート、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等ならびにこれらのモノマーの混合物よりなる。
【0077】
1つの好ましいシランアクリルポリマー(D)は以下の構成成分を含有する:約1〜30重量%のスチレン、約1〜96重量%のガンマ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ならびに約1〜30重量%のイソブチルメタクリレート、1〜30重量%のブチルアクリレートおよび10重量%未満の、より好ましくは約1〜9重量%のヒドロキシプロピルアクリレート。ポリマー中のモノマーの全パーセントは100%に等しい。このポリマーは、好ましくは約1,000〜20,000の範囲の重量平均分子量を有する。
【0078】
1つの特に好ましいシランアクリルポリマーは、約10重量%のスチレン、約65重量%のガンマ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、約20重量%の非官能性アクリレートまたはメタクリレート、例えば、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ブチルアクリレートおよびイソブチルメタクリレートおよびそれらのいずれかの混合物、ならびに約5重量%のヒドロキシプロピルアクリレートを含有する。
【0079】
これらのヒドロキシ官能性シラン材料は本質的にオリゴマー性でもあり得る。これらの材料は当該分野において周知である。
【0080】
本発明において、ポリマー性およびオリゴマー性ヒドロキシ官能性シラン化合物の混合物も利用可能である。
【0081】
コーティング組成物中、上記成分に加えて、他のフィルム形成および/または架橋溶液ポリマーも本願に含まれ得る。例としては、従来から既知のアクリル樹脂、セルロース誘導体、イソシアネート、ブロック化イソシアネート、ウレタン、ポリエステル、エポキシまたはそれらの混合物が挙げられる。1つの好ましい任意のフィルム形成ポリマーは、ポリオール、例えば重合モノマーのアクリルポリオール溶液ポリマーである。かかるモノマーは、前記のアルキルアクリレートおよび/またはメタクリレート、加えてヒドロキシアルキルアクリレートおよび/またはメタクリレートのいずれかを含み得る。適切なアルキルアクリレートおよびメタクリレートは、アルキル基中に1個〜12個の炭素原子を有する。ポリオールポリマーは、好ましくは約50〜200のヒドロキシル価および約1,000〜200,000、そして好ましくは約1,000〜20,000の重量平均分子量を有する。
【0082】
ポリオールにヒドロキシ官能性を提供するために、約90%まで、好ましくは20〜50重量%のポリオールはヒドロキシ官能性重合モノマーを含んでなる。適切なモノマーとしては、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレート、例えば前記のヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレートならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0083】
他の重合性非ヒドロキシ含有モノマーが、約90重量%まで、好ましくは50〜80重量%の量でポリオールポリマー成分中に含まれてもよい。かかる重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、メチロールアクリルアミド等およびその混合物が挙げられる。
【0084】
アクリルポリオールポリマーの1つの例は、約10〜20重量%のスチレン、アルキル基中に1個〜6個の炭素原子を有する40〜60重量%のアルキルメタクリレートまたはアクリレート、ならびにアルキル基中に1個〜4個の炭素原子を有する10〜50重量%のヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレートを含んでなる。1つのかかるポリマーは、約15重量%のスチレン、約29重量%のイソブチルメタクリレート、約20重量%の2−エチルヘキシルアクリレートおよび約36重量%のヒドロキシプロピルアクリレートを含有する。
【0085】
上記成分に加えて、コーティング組成物中に分散ポリマーが任意に含まれてもよい。有機(実質的に非水性)媒体中に分散されたポリマーは、当該分野において、非水性分散(NAD)ポリマー、非水性微小粒子分散系、非水性ラテックスまたはポリマーコロイドとして示される。一般的に、Barrett,DISPERSION POLYMERIZATION IN ORGANIC MEDIA(John Wiley 1975)を参照のこと。また、本明細書に援用される米国特許第4,147,688号明細書;同第4,180,489号明細書;同第4,075,141号明細書;同第4,415,681号明細書;同第4,591,533号明細書;および同第5,747,590号明細書を参照のこと。一般的に、非水性分散ポリマーは、有機媒体において分散されたポリマー粒子を特徴とし、この粒子は立体安定化として既知であるものによって安定化される。従来技術によると、粒子−媒体境界面における溶媒和ポリマー性またはオリゴマー性層の結合によって立体安定化は達成される。
【0086】
分散ポリマーは、トップコーティング、特にシラン化合物を含有するコーティングと典型的に関連するクラッキングの課題を解決することが知られており、そして組成物中の樹脂固体の総重量の約0〜30重量%、好ましくは約10〜25%の範囲の量で使用される。シラン化合物と組成物の分散ポリマー成分との比率は、適切に5:1〜1:3、好ましくは、2:1〜1:2の範囲である。分散ポリマーのこれらの比較的高い濃度を調節するために、分散ポリマーの溶媒和部分の上に反応基(例えば、ヒドロキシ基)を有することが望ましい。このような反応基によって、ポリマーは系の連続相と適合性となる。
【0087】
ヒドロキシ官能性を有する分散ポリマーの好ましい組成物は、架橋されたコアを提供するために約25重量%のヒドロキシエチルアクリレート、約4重量%のメタクリル酸、約46.5重量%のメチルメタクリレート、約18重量%のメチルアクリレート、約1.5重量%のグリシジルメタクリレートおよび約5%のスチレンからなるコアを含んでなる。コアに結合される溶媒和されたアームは、97.3重量%のプレポリマーおよび約2.7重量%のグリシジルメタクリレートを含有し、後者はアームの架橋または固着のためである。好ましいプレポリマーは、約28重量%のブチルメタクリレート、約15重量%のエチルメタクリレート、約30重量%のブチルアクリレート、約10重量%のヒドロキシエチルアクリレート、約2重量%のアクリル酸および約15重量%のスチレンを含有する。
【0088】
分散ポリマーは、粒子のための立体安定剤の存在下における有機溶媒中のモノマーの周知の分散重合によって製造可能である。この手順は、溶解された両性安定剤の存在下、モノマーは可溶性であるが得られるポリマーは不溶性である不活性溶媒におけるモノマーの重合の1つとして記載されている。
【0089】
組成物中に存在する反応性成分間の硬化(すなわち、架橋)反応を引き起こすために、典型的に硬化触媒を添加する。ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオキシド、ジブチルスズジオクトエート、スズオクトエート、アルミニウムチタネート、アルミニウムキレート、ジルコニウムキレート等のような多種多様な触媒を使用することができる。ブロック化または非ブロック化のいずれかのスルホン酸、例えばドデシルベンゼンスルホン酸は有効な触媒である。ブロック化または非ブロック化のいずれかのアルキル酸ホスフェート、例えばフェニル酸ホスフェートが使用されてもよい。同様に、前記触媒のいずれかの混合物も有用であり得る。当業者は、他の有用な触媒も容易に思いつくだろう。好ましくは、触媒はバインダーの総重量を基準にして、約0.1〜5.0%の量において使用される。
【0090】
特に本コーティング組成物によって製造されるクリア仕上げの耐候性を改善するため、バインダーの総重量を基準にして、約0.1〜10重量%の量で紫外線光安定剤または紫外線光安定剤の組み合わせをトップコート組成物に添加することができる。かかる安定剤としては、紫外線光吸収剤、スクリーン剤、失活剤および特定のヒンダードアミン光安定剤が挙げられる。また、バインダーの総重量を基準にして、約0.1〜5重量%の酸化防止剤を添加することもできる。有用な典型的な紫外線光安定剤としては、ベンゾフェノン、トリアゾール、トリアジン、ベンゾエート、ヒンダードアミンおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0091】
そのポットライフを延長するために、典型的に、適切な量の水分掃去剤、例えばトリメチルオルトアセテート、トリエチルオルトホルメート、テトラシリケー等(好ましくはバインダーの2〜6重量%)をトップコート組成物に添加する。水分によって誘発されるシランの加水分解および縮合のため、老化ペイントは、プライマーレスのフロントガラスシーラント接着適合性のため、そのシラン活性を失い得る。トリメチルオルトアセテートのような水分掃去剤の存在は、水と反応し、そしてメタノールおよびブチルアセテートを形成することによってかかるプロセスを抑制することができると考えられる。かかる反応生成物は、シラン活性を損なわない。実際に、その場で発生するメタノールのようなアルコールは、シラン基がコーティング組成物中に典型的に存在するアクリルポリオールとのアルコール交換反応に対して作用することの補助もし得る。アルコール交換反応は、続行が許容される場合、コーティングフィルムの架橋密度に対して負の影響を与える傾向がある。
【0092】
レオロジー制御のため、約3%のミクロゲル(好ましくは、アクリル)および1%の疎水性シリカが使用されてもよい。この組成物は、例えば、Resiflow(登録商標)S(ポリブチルアクリレート)、BYK(登録商標)320および325(高分子量ポリアクリレート)のようなフロー制御剤のような他の従来の配合物添加剤を含んでもよい。
【0093】
本組成物が着色カラーコート(ベースコート)上のクリアコート(トップコート)として使用される場合、黄変のような仕上げにおける望ましくない着色をなくすために、少量の顔料をクリアコートに添加することができる。
【0094】
また本組成物は高度に着色可能であり、そしてモノコートまたはベースコート/クリアコート仕上げのベースコートとして使用可能である。本コーティング組成物がモノコートまたはベースコートとして使用される場合、組成物に添加可能な典型的な顔料としては以下が挙げられる:金属酸化物、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、様々な色の酸化鉄、炭素ブラック、フィラー顔料、例えば、タルク、カオリン、バライト、カーボネート、シリケート、ならびに多種多様な有機系着色顔料、例えば、キナクリドン、銅フタロシアニン、ペリレン、アゾ顔料、インダンスロンブルー、カルバゾール、例えば、カルボゾールバイオレット、イソインドリン、イソインドロン、チオインジゴレッド、ベンズイミダゾリノン、金属フレーク顔料、例えば、アルミニウムフレーク、ならびに他の有効な顔料、例えば、真珠光沢、すなわち、マイカ、フレーク等である。
【0095】
高速混合、サンドグラインディング、ボールミリング、摩擦グラインディングまたは2本ロールミリングのような従来技術によって、コーティング組成物中に使用される前記ポリマーのいずれかで、またはもう一種の適合性があるポリマーまたは分散剤でミルベースまたは顔料分散系を最初に形成することによって、顔料をコーティング組成物中に導入することができる。次いで、ミルベースは、コーティング組成物中に使用される他の構成成分とブレンドされる。
【0096】
従来の溶媒および希釈剤は、上記ポリマーを分散および/または希釈して本コーティング組成物を得るための液体キャリアとして使用される。典型的な溶媒および希釈剤としては、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサン、アセトン、エチレングリコール、モノエチルエーテル、VMおよびPナフサ、ミネラルスピリット、ヘプタンならびに他の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素、エステル、エーテルおよびケトン等が挙げられる。
【0097】
スプレー、静電スプレー、浸漬、ブラッシング、フローコーティング等を含む従来の手段によってコーティング組成物を適用することができる。好ましい技術は、スプレーおよび静電スプレーである。適用後、組成物を典型的に約15〜30分間100〜150℃で焼成し、厚さ約0.1〜3.0ミルのコーティングを形成する。
【0098】
本発明のコーティング組成物は、典型的に1パッケージ系として配合されるが、当業者は2パッケージ系も可能であることを思いつくであろう。1パッケージ系は長期の貯蔵寿命を有することがわかっている。
【0099】
組成物がベースコート/クリアコート仕上げのクリアコートとして使用される場合、それは着色ベースコート上に適用され、そしてクリアコートが適用される前にこれを粘着性のない状態に乾燥させて硬化することができるか、または好ましくは短期間でフラッシュ乾燥させることができる。「ウェット−オン−ウェット」適用によって溶媒性ベースコート上にクリアトップコートを適用することが通例であり、すなわち、ベースコートを完全に乾燥させることなくトップコートをベースコートに適用させる。次いで、所定の時間でコーティングされた基材を加熱して、ベースおよびクリアコートを同時硬化させる。水性ベースコート上への適用は、通常、クリアコートの適用前にベースコートの乾燥時間をいくらか必要とする。クリアコートの適用後、基材を典型的に再フラッシュし、そして最終的にフィルムが硬化されるか、または少なくとも部分的に硬化されるまで約15〜30分間100〜150℃で焼成し、コーティングされた物品を製造する。ベースコートおよびクリアコートを、好ましくは、それぞれ約0.1〜2.5ミルおよび1.0〜3.0ミルの厚さを有するように付着させる。
【0100】
適用および少なくとも部分的な硬化後、本発明のクリアコート組成物は、水性および溶媒性ベースコートの両方への良好な接着だけではなく、フロントガラスシーラントへの優れたコート間接着および優れたシワのない外観の提供において特に有用である。
【実施例】
【0101】
以下の実施例において本発明をさらに記載する。これらの実施例はあくまで例示であり、記載および特許請求される通りに本発明の範囲をいずれかの形式で限定するものではない。実施例中の全ての部およびパーセントは、特記されない限り、重量基準である。
【0102】
以下の樹脂を、クリアコート実施例1〜2および比較例3および4で示されるように調製および使用した。
【0103】
樹脂実施例1
クリアコート実施例における使用のためのカルバメート官能性オリゴマーの調製
加熱マントル、撹拌機、温度計、窒素インレットおよび還流冷却器を備えた反応フラスコ中に以下の成分を充填することによって、カルバメート官能性オリゴマーを調製した。
【0104】

【0105】
部分Iを予混合し、そして反応フラスコ中に充填し、そして撹拌および窒素ブランケット下で100℃まで加熱した。次いで発熱温度を103〜107℃以下に保つように、120分間かけて部分IIを添加した。次いでイソシアネートの本質的に全てが反応したことが赤外線走査によって示されるまで、混合しながら反応混合物を100℃に保持した。IR吸光度プロットにおいてNCOが検出されなくなったら、反応混合物を100℃未満まで冷却し、次いで部分IIIを添加し、得られる溶液の固形分を70重量%固形分まで調節した。
【0106】
得られる溶液は、65/32/3の重量比で構成成分HDIトリマー/シクロヘキサノール/2−エチルヘキサノールを含有した。
【0107】
樹脂実施例2
クリアコート実施例でにおける使用のためのヒドロキシ官能性シランポリマー1〜2の調製
8重量部のVazo(登録商標)67の存在下で、2/1 Solvesso 100 Aromatic Solvent/ブタノール混合物、スチレンのモノマー混合物(S)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MAPTS)(CromptonからのSilquest(登録商標)A−174)、ブチルアクリレート(BA)およびイソブチルメタクリレート(IBMA)の存在下、共重合によってアクリロシランポリマー溶液を調製した。得られるポリマー溶液は、71%固形分および25℃で測定されるGardner Holdtスケール上でF−Rの粘度を有する。ポリマー組成物を表1に記載するが、それらは全て約4,500グラム/モルの重量平均分子量を有する。
【0108】
表1

【0109】
樹脂実施例3
クリアコート実施例における使用のためのアクリルミクロゲルの調製
下記のアクリルミクロゲル樹脂の合成において使用される中間安定化ポリマーとして、メチルメタクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマーを調製した。上記の通り装備された窒素ブランケット付きフラスコに以下を充填することによって、この安定化ポリマーを調製した。
【0110】

【0111】
部分Iを反応器に充填し、そして96〜100℃の温度まで上昇させた。部分IIおよびIIIを別々に予混合し、次いで96〜100℃の反応温度を維持しながら、180分間かけて同時に添加した。次いで溶液を90分間保持した。続いて部分IV、VおよびVIを別々に予混合し、そして反応器に添加した。次いで反応溶液を還流まで加熱し、そして酸価が0.5以下となるまで保持した。得られるポリマー溶液は40%固形分を有する。
【0112】
次いで、上記の通り装備された窒素ブランケット付きフラスコに以下を充填することによってアクリルミクロゲル樹脂を調製した。
【0113】

【0114】
部分Iを反応容器に充填し、その還流温度まで加熱し、そして60分間保持した。部分IIおよびIIIを別々に予混合し、次いで還流温度で反応混合物を維持しながら、混合される反応容器に180分間かけて同時に添加した。次いで部分IVを添加した。次いで反応溶液を120分間還流に保持し、次いで246.3ポンドの溶媒を除去した。次いで樹脂を60℃まで冷却し、そして部分Vと混合した。混合を30分間継続した。
【0115】
得られるポリマー溶液は、70%の重量固形分および50センチポアズの粘度を有する(Brookfield Model RVT、Spindle #2によって、25℃において)。
【0116】
クリアコート実施例1〜2および比較例3〜4
クリアコート組成物の調製
所与の順序で以下の成分を混合することによって、四種のクリアコート組成物を調製した。
【0117】
表2

【0118】
表脚注
*fw.と記載されるものを除き、本表中の全ての数は不揮発性%によるものである。fw.は式量%によるものである。
1.樹脂実施例3
2.Surface Specialties UCB, St. Louis, MOから提供されたResimene(登録商標)4514 中間メラミン
3.Cytec Industries Inc., West Patterson, New Jerseyから提供されたCymel(登録商標)1161 モノマー性メラミン
4.Cytec Industries Inc., West Patterson, New Jerseyから提供されたCymel(登録商標)1168 モノマー性メラミン
5.Surface Specialtiesから提供されたResimene(登録商標)717 ポリマー性メラミン
6.Ciba Specialty Chemicals, Tarrytown, New Yorkから提供されたTinuvin(登録商標)123
7.Ciba Specialty Chemicals, Tarrytown, New Yorkから提供されたTinuvin(登録商標)928
8.本明細書に援用される米国特許第5,747,590号、第8欄、第46-68行および第9欄、第1-25行に記載の手順に従って調製された非水性分散樹脂(NAD)
9.King Industries, Norwalk, Connecticutから提供された2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールのドデシルベンゼンスルホン酸塩
10.Disparlon LC-955, King Industries, Norwalk, CT.
11.Aersil R-805 Grind (Degussa, Parsipany, New Jerseyから)
12.Chem Central, Bedford Park, ILから提供されたトリメチルオルトアセテート
13.樹脂実施例1
14.Chem Central, Bedford Park, ILから提供されたブタノール
【0119】
クリアコート実施例1〜2のコーティング組成物ならびに比較例3および4は、エチル3−エトキシプロピオネート(EEP)によって#4Fordカップ上で38秒まで減少された。これらの減少されたクリアコート試料を、エレクトロコートおよびプライマーサーフェイサーの各層で既にコーティングされたスチール基材上の水性ブラックベースコートまたは溶媒性銀金属ベースコートのいずれかにベルスプレーした。水性Ebonyベースコートは686S40343のDuPont CodeでDuPontから市販品として入手可能であり、そして溶媒性銀も647A01147のDuPont CodeでDuPontから市販品として入手可能である。使用されるプライマーサーフェイサーは554−DN082のDuPont CodeでDuPontから市販品として入手可能である。使用されるエレクトロコートはED5050の名称でDuPontから市販品として入手可能である。
【0120】
ベースコートは、一般的に、75°Fおよび湿度55%のブース条件下で、プライマー処理されてエレクトロコーティングされたスチール基材上間で60秒フラッシュのベルによる二回コーティングで適用された。
【0121】
実施例で使用される試験手順
スクラッチ抵抗およびフロントガラス接着剤への接着のような物理特性試験に関して、室温で5分間のベースコートフラッシュ後、Ebonyベースコーティングされたパネルにクリア組成物を適用した。焼成前の約10分間、適用されたクリアコートを空気中でフラッシュさせた。全てのクリアコート実施例1〜2および比較例3〜4を20分間140℃で焼成した。最終乾燥フィルム厚は、ベースコートに関して15〜20ミクロンであり、そしてクリアコートに関して40〜50ミクロンであった。
【0122】
スクラッチ抵抗試験に関して、全ての焼成試料を少なくとも24時間老化させた。Ford Motor Co.(PA−0171)から出版されたナノスクラッチ試験方法で、破壊エネルギーおよび塑性変形を測定した。
【0123】
プライマーレスMVSSフロントガラスシーラント接着試験に関して、12時間以内の焼成で、フロントガラス接着剤のビーズをプライマーレスにクリアコート表面に適用した(General Motors Corporationから出版されるGM4352MおよびGM9522P仕様書によるクイックナイフ接着試験)。使用されるフロントガラス接着剤はDow Essex Specialty Products Companyから市販品として入手可能であり、そしてBetaseal(商標)15626として認識される。
【0124】
フロントガラス接着剤ビーズを73°F(23℃)および湿度50%で72時間硬化させた。接着剤ビーズの大きさは約6×6×250mmであり、そして硬化されたビーズをカミソリ刃で切断した。切断の間隔は少なくとも12mm離れていた。所望の結果は、接着剤とクリアコートとの間またはクリアコートもしくは下層内の接着力損失による破壊よりも、接着剤ビーズの100%凝集破壊(CF)である。実施例1〜2ならびに比較例3および4の結果を以下の表3に報告する。
【0125】
水性ベースコート上の外観評価に関して、実施例1および3のクリア組成物をEbonyベースコーティングされたパネルに適用した。ここではそれらは湿度50%でスプレーされ、続いて3分室温フラッシュ、80℃での3分加熱フラッシュおよび30分のさらなる室温でのフラッシュが行なわれた。適用されたベースコートおよびクリアコートを30分間140℃で焼成した。最終乾燥フィルム厚は、ベースコートに関して10〜13ミクロンでり、そしてクリアコートに関して45〜50ミクロンであった。パネルの外観をQMS(Autospec AmericaからのQuality Measurement Systems)で測定した。これは光沢、像の明瞭性およびオレンジピールの組み合わせ測定値を提供する。自動車仕上げに関する典型的QMS数は45〜80であり、数が高いほど、より良好な外観を意味する。
【0126】
溶媒性ベースコート上の外観評価に関して、室温で5分ベースコートフラッシュ後、銀金属ベースコーティングされたパネルに実施例2および4のクリアな組成物を適用した。湿式ベースコートおよびクリアコートの最終複合物を30分間140℃で焼成した。最終乾燥フィルム厚は、ベースコートに関して15〜20ミクロンでり、そしてクリアコートに関して45〜50ミクロンであった。パネルの外観をQMS(Autospec AmericaからのQuality Measurement Systems)で測定した。これは光沢、像の明瞭性およびオレンジピールの組み合わせ測定値を提供する。自動車仕上げに関する典型的QMS数は40〜75であり、数が高いほど、より良好な外観を意味する。
【0127】
焼成されたウェット−オン−ウェット基材上のクリアコート実施例の接着試験に関して、エレクトロコート層で既にコーティングされたスチール基材上に、溶媒性プライマー(1143A01239としてコード化され、DuPontから市販品として入手可能)を手でスプレーした。プライマーの2分のフラッシュ後、溶媒性Arizona Beige層(647S40330としてコード化され、DuPontから市販品として入手可能)を湿式プライマー表面上で手によってウェット−オン−ウェットによって適用した。さらに5分のフラッシュ後、ウェット−オン−ウェット(WOW)パネルを30分間165℃で焼成した。WOWパネルを室温まで冷却した後、クリアコート組成物を40〜50ミクロンの乾燥フィルムビルドに手でスプレーした。10分のクリアコートフラッシュ後、いくつかの焼成条件:125℃、130℃および135℃でパネルを10分間焼成した。次いで、これらのパネルを切断し、そして接着試験の前にCleveland湿度暴露およびキセノンに暴露した。
【0128】
Ford(BQ104−02)によって記載される試験方法に従って、Cleveland湿度試験を実行した。確実な比較のため、Cleveland湿度チャンバーを60℃に設定し、そして予め焼成されたwow基材上のクリアコート接着に関する試験の前に、チャンバーに16時間、パネルを暴露する。試験手順はFord Motor Companyによって出版されるFLTM BI 106−01の方法「B」に従った。
【0129】
SAEJ1960として出版されたFord仕様書に従ってキセノン暴露を実行した。キセノン暴露パネルを16時間、32±1℃の水浴に浸漬させ(FLTM BI 104−01)、続いてFord Motor Companyによって出版されるFLTM BI 106−01の方法「B」に従って接着試験を実行した。
【0130】
ペイント結果
外観、ナノスクラッチ、プライマーレスMVSS適合性およびWOW基材へのクリアコート接着の結果を表3にまとめる。
【0131】
表3

【0132】
表3続き

表脚注
* 1-100のスケール、QMS数が高いほど、外観は良好である
** Jacksonville, Floridaにおいて2004年の夏に14週間、酸性雨に暴露された10パネルの平均。暴露されたパネルを0-10の深刻度で評価し、ここでは0はエッチングがゼロであることを意味し、そして10は非常に深刻なエッチングスポットが形成されたことを意味する。
【0133】
表3に示されるように、クリア実施例1および2は、それぞれ水性および溶媒性ベースコートに対して配合された各対照例(3および4)と同等の外観を示した。またクリアコート実施例1および2は、両方とも強力なプライマーレスMVSS適合性と、対照と等しいかまたはより良好なエッチング抵抗を示した。対照例2および4より優れたクリアコート実施例1および2の主な利点は、スクラッチおよび損傷抵抗に関してのそれらの非常に改善された破壊エネルギーおよび塑性変形である。また、対照例がそうでない一方、実施例1および2は両方とも焼成されたウェット−オン−ウェット適用された基材上での接着に関して容認できる。
【0134】
上記の実施例は、カルバメート系における高ヒドロキシ二重(シリル/OH)官能性シランの使用によって、シラン濃縮物を用いたメラミンとのカルバメートおよびヒドロキシ架橋のハイブリッド硬化、優れた外観および物理特性を有するクリアコートが水性および溶媒性ベースコートの両方によって達成可能であることを実証した。かかる特性としては、エッチングおよび損傷抵抗、プライマーレスMVSS適合性および焼成されたベースコートとプライマー ウェット−オン−ウェット基材上の接着が挙げられる。ウェット−オン−ウェット ツートーンの適用を実行している自動車工場が溶媒性ベースコート、水性ベースコートまたは両方を使用可能であるため、これは重要である。一方、対照例の両方、特に高イミノポリマー性メラミンを使用した対照例3(Resimene(登録商標)717:トリアジン環あたり2.3モルのNH、Polym.Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem)44(1),259(2003)を参照のこと) は、水性ベースコートに対して、ウェット−オン−ウェット接着およびスクラッチおよび損傷抵抗に関して劣った性能を示した。
【0135】
さらに、実施例1における低イミノアミノプラスチック樹脂(Resimene(登録商標)4514:トリアジン環あたり0.5モルのNH)の使用は、外観ならびにウェット−オン−ウェット接着およびスクラッチおよび損傷抵抗の性能を損なわなかった。またウェット−オン−ウェット接着およびスクラッチおよび損傷抵抗に関するカルバメートの重要性は実施例2において明白であった。実施例4は高イミノポリマー性アミノプラスト樹脂を使用しなかったが、それは対照例4よりも良好なスクラッチおよび損傷抵抗およびウェット−オン−ウェット接着を示すため、溶媒性ベースコート上での良好な外観のために適切である。
【0136】
組成物の成分および本発明の方法の様々な他の変更、改変、追加または置き換えは、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者にとって明白である。本発明は、本明細書で明らかにされる実例となる実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によって規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム形成バインダーと有機液体キャリアとを含んでなる硬化性コーティング組成物であって、前記バインダーが、
(A)複数のカルバメート基を有する硬化性フィルム形成材料と、
(B)少なくとも一種のモノマー性アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂を含んでなる、成分(A)に対する一種以上の硬化剤と、
(C)少なくとも1個の加水分解性シラン基を含有し、かつ約45以上のヒドロキシル価を有するヒドロキシ官能性シラン成分と
を含んでなる組成物。
【請求項2】
前記バインダーが、
(D)少なくとも1個の加水分解性シラン基を含有し、かつ約44以下のヒドロキシル価を有する第2のヒドロキシ官能性シラン成分
をさらに含有する請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記シラン成分上のヒドロキシル基が第一級ヒドロキシル基である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
成分(a)が、第二級カルバメート基を有するカルバメート官能性オリゴマーである請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記硬化剤成分(b)が本質的にポリマー性メラミンを含有しない請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
成分(c)が、45より高いヒドロキシル価を有するヒドロキシ官能性アクリロシランポリマーである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
成分(d)が、44より低いヒドロキシル価を有するヒドロキシ官能性アクリロシランポリマーである請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記一種以上の硬化剤(b)が、トリアジン環あたり0〜1.2モルのNHを有する少なくとも一種のモノマー性アルキル化メラミン硬化剤よりなる請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記バインダーの重量を基準として、60重量%までの成分(a)を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記バインダーの重量を基準として、10重量%より多い成分(c)を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
約45〜90重量%のフィルム形成バインダーと、約10〜55重量%の有機液体キャリアとを含んでなる硬化性コーティング組成物であって、前記バインダーが、
a)複数の第二級カルバメート基を有する硬化性フィルム形成オリゴマーまたはポリマーと、
b)トリアジン環あたり0〜1.2モル以下のNHを有する少なくとも一種のモノマー性アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂を含んでなる一種以上の硬化剤と、
c)約45〜150のヒドロキシル価を有し、かつ約5〜80重量%が加水分解性シリル官能性を含有する重合エチレン性不飽和モノマーを含んでなる硬化性フィルム形成ヒドロキシ官能性シランオリゴマーまたはポリマーと、
d)約4〜44のヒドロキシル価を有し、かつ約10〜97重量%が加水分解性シリル官能性を含有する重合エチレン性不飽和モノマーを含んでなる硬化性フィルム形成ヒドロキシ官能性シランオリゴマーまたはポリマーと、
e)任意の非水性分散ポリマーと
を含有し、前記バインダー中の成分(c)の含量が、前記バインダーの総重量を基準として約10〜約50重量%の範囲である組成物。
【請求項12】
前記硬化剤成分(b)が本質的にポリマー性メラミンを含有しない請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
成分(c)および(d)が、スチレンの重合モノマー、アクリレート、メタクリレートもしくはビニルモノマーまたはそれらのいずれかの混合物よりなる群から選択されるエチレン性不飽和アルコキシシラン含有モノマー、非官能性アクリレートまたはメタクリレートおよびアルキル基中に1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレートより本質的になり、約1,000〜20,000の重量平均分子量を有するアクリルポリマーである請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、トリメチルオルトアセテート、トリエチルオルトホルメート、テトラシリケート等およびそれらのいずれかの混合物よりなる群から選択される水分掃去剤をさらに含有する請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
ベースコート/クリアコート仕上げ用クリアコートである請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
ベースコート/クリアコート仕上げ用クリアコートである請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項18】
乾燥および硬化された請求項1に記載の組成物によってコーティングされた基材。
【請求項19】
乾燥および硬化された請求項1に記載の組成物によってコーティングされた自動車またはトラック外部ボディ。
【請求項20】
(A)基材に着色ベースコーティングの層を適用して、その上にベースコートを形成する工程と、
(B)前記ベースコート上に請求項1に記載の組成物から構成されるクリアコート層を適用する工程と、
(C)前記ベースコートおよびクリアコートを硬化して、前記基材上に多層トップコートを形成する工程と、
を含んでなる基材のコーティング方法。

【公表番号】特表2008−511739(P2008−511739A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530315(P2007−530315)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/030985
【国際公開番号】WO2006/026669
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】