説明

水性ボールペン用インク組成物

【課題】水性ボールペンインク、油性ボールペンインクの長所を兼ね備えた新規なボールペンインク組成物を提供するを提供する。
【解決手段】顔料分散体からなる水性相に対して、染料を有機溶剤中に溶解させた油性溶液を含む油性相が、水中油滴型エマルションの状態で含まれる水性ボールペン用インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ボールペン用インク組成物に関し、具体的には水性相が顔料分散体から成り、油性相に溶解した染料が前記水性相に対して水中油滴型エマルションの状態で含まれる水性ボールペン用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ボールペンの特徴として、低粘度でインク流出量が多く、軽い書き味で鮮明な描線が得られることが挙げられるが、反面、書き味にガリツキを感じるという欠点を有する。また着色材として顔料又は染料が用いられるが、顔料は耐候性が高いという利点を有するが、着色力が弱く高い描線濃度が得られにくい。また、濃度を高めるために顔料を多量に添加すると分散安定性が損なわれるという問題が生じる。さらに調色のバリエーションも染料には及ばない。一方、染料は着色力や調色の自由度は高いという利点を有するが、耐候性が低く、また水が付着した場合に描線がブリードしやすいという問題がある。
【0003】
油性ボールペンはインクの粘度が高く、インク流出量が少ないため、筆記時のガリツキ感がなく、描線にじみが少ないという利点を有するが、重い書き味になる場合が多い。また、着色材として使用することができる染料は、水に対して不溶又は難溶な分子構造を有するため耐水性を有しており、水溶性である染料を使用したインクに見られる、水に対するブリードが生じない。
【0004】
近年、油性インクの粘度を低下させて書き味を向上させた油性ボールペンも開発されている。しかし、低粘度の油性インクは筆記流出量が多くなるので、描線乾燥性が悪化し、紙裏面へのインクの裏抜け、ボテの原因となる。
【0005】
特開2004−115611号公報には、有機溶剤に水を含有した、W/O型有機溶剤を用いた低粘度の油性ボールペンインクが記載されている。しかし、このインクは、保存安定性に問題があり、またインク組成の大半は有機溶剤であるため、筆記流出量を増加させると、裏抜けが発生する。
【0006】
特開2007−327003号公報には、あらかじめ顔料を水性成分に含有させ、それを油性成分と混合することで、顔料が分散された水性成分からなる水滴が、油性成分中に分散されたW/O型エマルションインク組成物が記載されている。このインク組成物を用いることで、書き味等を改善させたボールペンインクが開示されているが、長期保存時に、水滴が合一して局在化してしまう等の安定性に欠けている。またインク組成物中の油性成分の量が多いので、水性ボールペンのように筆記流出量を増加させると、裏抜け、描線乾燥性の悪化が顕著であった。
【0007】
また、特開昭55−152768号公報には、ポリマー、前記ポリマーを溶解する溶剤からなるポリマー溶液に顔料を分散させた着色した組成物を、水中に乳化分散して成る、消しゴムで消去できる筆記用インクが記載されている。しかし、このインクは着色材が顔料であり、分散粒子が非常に高粘度のため、ボールペンに用いると筆記性は悪く、また分散粒子が合一し易く、沈降してしまい、保存安定性にも問題があった。
【0008】
特開2004−323618号公報には、水溶性染料を含有する水溶性インクと、油溶性染料を含有する油溶性インクからなるインク組成物を、筆記する際に振とうさせて不安定なエマルジョンを形成し、その筆記線が短く不規則に連続的に変化する筆記具用多色インクが記載されている。このインクは、静置状態では2層に分離する旨記載されており、通常のボールペンインクとしては不適当である。
【0009】
本発明者が考案した特許出願である特願2008−145150号明細書には、水性ボールペンと油性ボールペンの長所を備えた、インク性状が水中油滴のエマルションである水性ボールペン用インク組成物が開示されている。水性相により、高流出量で且つ軽い書き味が実現され、油性相の油膜により、描線にじみや裏抜けが無く、ガリツキ感の無い書き味を提供するものである。特願2008−145150号明細書記載の発明は確かに今までに無い水性ボールペン用インク組成物であり、優れた性能を有するものであるが、一方でこのエマルションは高粘性で且つ、用いる溶剤も安定性の面から、高沸点であることが好ましいとされている。このため、このエマルション自体は揮発性の低いものである。当該インクにおいては、エマルション濃度が高いと描線乾燥性が悪化するという問題があり、また濃度が低い場合は描線濃度が不十分であるという問題があった。別の問題として、着色材として染料液主体のエマルションは耐光性に難があるという問題がある。特願2008−145150号明細書の実施例2にはカーボンブラックを添加した配合が記載されているが、これらの諸問題の解決には十分でなく、さらなる改良が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−115611号公報
【特許文献2】特開2007−327003号公報
【特許文献3】特開昭55−152768号公報
【特許文献4】特開2004−323618号公報
【特許文献5】特願2008−145150号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、水性ボールペン、油性ボールペンは、それぞれ長所と欠点を有している。両者の長所を兼ね備えた新規な水性ボールペン用インク組成物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、顔料分散体からなる水性相に、油性染料溶液を水中油滴型エマルションとして組み合わせることにより、前記課題を解決することができることを見いだし、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)顔料分散体からなる水性相に対して、染料を有機溶剤中に溶解させた油性溶液を含む油性相が、水中油滴型エマルションの状態で含まれる水性ボールペン用インク組成物。
【0014】
(2)前記油性溶液の全溶剤中、分子骨格中に芳香環を一つ以上有する溶剤が質量基準で50%以上を占めており、そして分子骨格中に芳香環を一つ以上有する乳化剤を含むことを特徴とする(1)記載の水性ボールペン用インク組成物。
【0015】
(3)前記乳化剤が、エチレンオキサイド付加モル数が40以上の芳香族系乳化剤を少なくとも含むことを特徴とする(2)記載の水性ボールペン用インク組成物。
【0016】
(4)前記油性溶液の溶剤の沸点が200℃以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の水性ボールペン用インク組成物。
【0017】
(5)25℃における水に対する溶解度が質量基準で1%以下であり、且つ分子骨格中に芳香環を一つ以上有する溶剤が、前記油性溶液の全溶剤中、質量基準で50%以上を占めていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の水性ボールペン用インク組成物。
【0018】
(6)前記水中油滴型エマルションの油滴の平均粒子径が、200nm以下であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の水性ボールペン用インク組成物。
【0019】
(7)インク組成物中に占める油性相成分の割合が、質量基準で1〜20%であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の水性ボールペン用インク組成物。
【0020】
(8)前記顔料分散体に含まれる分散剤がスチレンアクリル樹脂であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の水性ボールペン用インク組成物。
【発明の効果】
【0021】
本発明の水性ボールペン用インク組成物は水性相に顔料分散体を含み、且つ染料液が水中油滴型エマルションの状態で含まれることを特徴とする。これにより従来の顔料タイプの水性ボールペンの長所である軽い書き味、及び顔料の持つ耐水・耐候性を備えることに加えて、水中油滴型エマルションが以下の作用効果を発揮する。すなわち、油性相の油膜によりガリツキ感の無い書き味が提供され、さらに染料を用いることにより色濃度の向上と自由度の高い調色のバリエーションが可能となり同時に、耐水性が提供されることである。本発明は、水性ボールペンインクと油性ボールペンインクの長所を兼ね備え、なお且つ保存安定性のよい水性ボールペンインク組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のインク組成物は、水性相が顔料分散体から成り、且つ前記水性相に油性染料溶液が水中油滴型エマルションの状態で含まれる構成を有する。以下に、本発明のインク組成物の成分を詳細に説明する。
【0023】
本発明のインク組成物の油性相は、有機溶剤中に、少なくとも着色材としての染料を溶解させた油性溶液から成っている。油性溶液の溶剤としては、分子骨格中に芳香環を有する溶剤が、染料を溶解する点から好ましく、芳香環を有する溶剤であればいずれの溶剤も用いることができる。好ましくは、分子骨格中に芳香環を有する溶剤が、油性相溶液の全溶剤に対し質量基準で50%以上となることが好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
【0024】
特に、染料を溶解できることに加え、水と相溶しないこと、形成されたエマルションの保存安定性が良いこと、安全性が高いことを考慮すると、更に好ましい溶剤は、分子内に一つ以上の芳香環を有し、且つ溶剤の水への溶解度が、25℃において1g/l00g以下のものが好ましい。溶解度が1g/l00gを超えると、得られるエマルションが不安定となり経時的に相分離を生じる場合がある。油性溶液において、分子内に一つ以上の芳香環を有し且つ溶剤の水への溶解度が25℃において1g/l00g以下の溶剤が、全溶剤の質量基準で50%以上であることが好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
【0025】
また、本発明の油性溶液に用いることができる溶剤は、比較的低揮発性の溶剤が好ましい。
溶剤は、以下に示す溶剤の例から選ばれる1種類の溶剤からなることができ、又は複数種の溶剤からなることができる。
【0026】
本発明の油性溶液に用いることができる溶剤の例としては、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、フタル酸ブチル、フタル酸エチルヘキシル、フタル酸トリデシル、トリメリット酸エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、キシレン、トルエン等が挙げられる。特にこれらの中で、25℃における水への溶解性が1g/100g以下である、エチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、フタル酸エチルヘキシル、フタル酸トリデシル、トリメリット酸エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、液状のキシレン樹脂、トルエン、キシレン等が好ましい溶剤として挙げられる。最も好ましくは、これらの中で、25℃における水への溶解性が0.1g/100g以下である、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、トリメリット酸エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート等の他、液状のキシレン樹脂、トルエン、キシレン等が好ましい溶剤として挙げられる。
【0027】
また、染料を溶解させる作業上の安全性の観点から、また高温時のエマルションの内圧の上昇による不安定化を抑制する観点から、沸点が200℃以上の溶剤が好ましい。好ましい溶剤の例としては、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、フタル酸ブチル、フタル酸エチルヘキシル、フタル酸トリデシル、トリメリット酸エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート等が挙げられる。
【0028】
また、本発明の油性溶液において、上記の芳香環を有する溶剤のほかに、任意の補助溶剤を含むことができる。例えば、アルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、炭化水素類、エステル類から選ばれる溶剤等を用いることができるが、水と無限に相溶する溶剤は水性相への拡散、油滴の合一を引き起こすため、多量に使用すべきではない。油性溶液中の全溶剤の質量%で10%以内とするのがよい。
【0029】
アルコール類としては、炭素数が2以上の脂肪族アルコールが好ましく、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、ノナノール、n−デカノール、ウンデカノール、n−デカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノールやその他多種多様な高級アルコール等が挙げられる。
【0030】
また、多価アルコール類としては分子内に2個以上の炭素、2個以上の水酸基を有する多価アルコールが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,3ブンタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3プロパンジオール、1,3ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等が挙げられる。
【0031】
グリコールエーテル類としては、例えば、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテルジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0032】
炭化水素類としては、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖炭化水素類やシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状炭化水素類が挙げられる。
【0033】
エステル類の補助溶剤としては例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、トリメチル酢酸プロピル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、カプリル酸トリグリセライド、クエン酸トリブチルアセテート、オキシステアリン酸オクチル、プロピレングリコールモノリシノレート、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、3−メトキシブチルアセテート等、種々のエステルが挙げられる。
【0034】
また、分子内に水酸基を持たない補助溶剤として、ジエーテルやジエステルを用いることができ、具体的には、例えば、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0035】
本発明のインク組成物の油性相中の着色材は染料である。使用する染料が上述した溶剤に溶解するものであれば、一般的な油性インク組成物に使用されているいずれの染料も使用することができる。本発明に係る油溶性染料として、通常の染料インク組成物に用いられる直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染・酸性媒染染料、酒精溶性染料、アゾイック染料、硫化・硫化建染染料、建染染料、分散染料、油溶染料、食用染料、金属錯塩染料、造塩染料、樹脂に染料を染着した染料等の中から任意のものを使用することができる。これらの中で、有機溶剤に溶解しやすい造塩染料等のアルコール可溶染料、油溶染料等が、溶解性、エマルションの安定性の面から好ましい。特に好ましい染料は油溶染料である。
【0036】
染料の下限となる配合量は、インク組成物全量の質量基準で0.3%以上となることが好ましい。0.3%未満であると、着色力が不十分である。また、上限となる配合量は、油性溶液総量の質量基準で70%以下となることが好ましい。70%を超えると染料の溶解が困難となり、ボールペンのインク組成物としては好ましくない。特に好ましくは、インク組成物の質量基準で1〜3%の範囲であり、且つ油性溶液の質量基準で10〜60%の範囲である。
【0037】
油性インク組成物に使用されている造塩染料としては、パリファーストカラー(登録商標、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロン染料、アイゼンSOT染料(登録商標名、保土谷化学工業(株)製)がある。
【0038】
樹脂に染料を染着した染料としては、keiko−Colot MPI−500シリーズ、keiko−Colot MPI−500Cシリーズ、keiko−Colot NKS−1000シリーズ(登録商標、日本蛍光化学(株)製)がある。
【0039】
油性相中の着色材は、エマルションの安定性を維持できるならば、染料と組み合わせて少量の顔料を用いることができる。顔料を用いる場合、顔料の量は、油性溶液の質量基準で10%以下であることが好ましい。10%を超えると、エマルションの安定性に不具合を起こす。
【0040】
油性相中で、染料と組み合わせて用いることができる顔料には、カーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アンスラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、キナクリドン系顔料等各種有機顔料を挙げることができる。
【0041】
本発明のインク組成物を調製するための油性溶液には、粘度を調整するため、樹脂を用いることができる。前記油性溶液の粘度は、乳化剤を含まない状態で、25℃、剪断速度3.83/秒において500〜1,000,000mPa・sが好ましい。粘度が、500mPa・s未満であると、筆記にガリツキ感が生じ、水中油滴型としたことによる油性インクとしての側面の性能を発揮しづらい。さらに、エマルションの安定性にも好ましくない。1,000,000mPa・sを超えると重い筆感となり、ボールペンのインク組成物としては好ましくない。25℃、剪断速度3.83/秒において3,000〜500,000mPa・sの粘度範囲が、特に好ましい。
【0042】
本発明のインク組成物に用いることができる樹脂の具体的な例として、ケトン樹脂、スルホアミド樹脂、マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、エステルガム、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ロジン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、セルロース系樹脂等の天然及び合成樹脂を挙げることができ、それらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0043】
前記油性溶液中の染料及びその他の添加物の量は、固形分濃度として全油性溶液の質量基準で3〜70%であることが好ましい。固形分濃度が、3%未満であると、十分な粘性付与ができなくなる。70%を超えると染料の溶解が困難となり、ボールペンのインク組成物としては好ましくない。固形分濃度が10%〜60%の範囲が特に好ましい。
【0044】
本発明のインク組成物の水性相は顔料分散体から成っている。例えば、この顔料分散体は、イオン交換水、精製水を用いた顔料分散体である。顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アンスラキノン系顔料、ペリレン系顔料、イソインドリノン系顔料、キナクリドン系顔料等の各種有機顔料を使用することができる。
【0045】
例えば、C.I.Pigment Black 1,7、C.I.Pigment Yellow 1,2,3,12,13,14,16,17,20,24,34,35,42,53,55,65,73,74,75,81,83,86,93,94,95,97,98,99,100,101,104,108,109,110,114,117,120,125,128,129,137,138,139,147,148,150,151.153,154,155,166,167,168,173C,174,180,185等、C.I.Pigment Red 1,2,3,5,7,8,9,10,12,16,17,19,22,38,41,43,48,48:2,48:3,49,50:1,52,53,53:1,57,57:1,58:2,60,63:1,63:2,64:1,86,88,90,9,112,122,123,127,146,149,166,168,170,175,176,177,179,180,181,184,185,189,190,192,194,198,202,206,207,209,215,216,217,220,223,224,226,227,228,238,240,245,254,225等、C.I.Pigment Blue 1,2,3,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,17,22,25,60,64,66等、C.I.Pigment Orannge 5,10,13,16,36,40,43,48,49,51,55,59,61,71等、C.I.Pigment Violet 1,3,5:1,16,19,23,29,30,31,33,36,37,38,40,42,50等、C.I.Pigment Green 7,10,36等、C.I.Pigment Brown 23,25,26等が挙げられる。
【0046】
水性相に分散される顔料の色と、油性相に溶解される染料の色とは、同じであっても、異なっていてもよい。顔料の色と同じ色の染料を用いる場合は、染料によりインクの色が鮮やかになると同時に、色濃度が向上する。顔料の色と異なる色の染料を用いる場合は、自由度の高い調色のバリエーションが得られる。
【0047】
顔料分散体を得るための分散剤は各種市販されているものを使用することができ、特に限定されないが、並存する水中油滴型エマルションとの相性、保存安定性の面から、高分子の樹脂系分散剤が好ましく、エマルション形成に用いる乳化剤として使用される材料とは異なる材料が好ましい。例えば、スチレンアクリル樹脂やポリオキシエチレン系分散剤を用いることができる。特に好ましい分散剤は、高分子ポリマーであるスチレンアクリル樹脂である。
【0048】
ここで使用する顔料の量は、インク組成物全質量に対し、3〜15%、好ましくは5〜10%である。顔料の量が3%以下となると、着色材の主成分としては、耐光性が悪くなり、また描線の濃度感にも欠ける。顔料の量が15%以上になると、顔料の分散安定性面から好ましくない。使用する分散剤の量は、顔料分散体の顔料の総質量に対して、20〜100%の範囲となるのが好ましい。
【0049】
水性相への顔料の分散方法には、例えば、混合撹拌機により各成分を均一に混合する方法や、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ホモミキサー、ディスパー、超音波分散機、高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
【0050】
また、水性相は、低温時でのインキ凍結防止や、ペン先でのインキ乾燥防止を目的とする添加剤を含むことができ、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類などが挙げられ、単独又は混合して使用することができる。添加剤の使用量は、水性相の質量基準で、0〜50%、好ましくは0〜30%である。50%以上添加すると、得られるエマルションの安定性に不具合を起こす。
【0051】
水性相は、前述の油性溶液と混合して、安定なエマルションを形成するために乳化剤を含有する。本発明に係る油性溶液の主溶剤と混合して、長期的に安定なエマルションを形成する乳化剤は、分子骨格中に芳香環を1つ以上有する乳化剤である。分子骨格中に芳香環を1つ以上有する乳化剤は、親油基である芳香環が油性相の染料溶液に対して親和性が高いため、長期的に安定なエマルションを形成すると考えられる。
【0052】
本発明のインク組成物に用いることができる芳香族系乳化剤としては、芳香環を1つ以上有しているものであれば、特に限定されない。乳化剤は通常エチレンオキサイド(EO)付加モル数によって、その性質を変えることができる。油性溶液に用いる主溶剤と関連して、エチレンオキサイド付加モル数が40mol以上のものが好ましい。長鎖のエチレンオキサイド鎖により、粒子の合一を抑制するためである。
【0053】
前述のエチレンオキサイド付加モル数が40mol以上の乳化剤と、油性相への配向が強いエチレンオキサイド付加モル数が3〜15molの乳化剤とを組み合わせて用いることができる。油性相へ配向の強いものと水性相へ配向の強い乳化剤を組み合わせることにより、界面のミセル濃度が高まり、エマルションの安定性が増すと考えられるからである。
【0054】
HLB値(親水親油バランス値)については、非イオン性界面活性剤については少なくともHLB値が15以上の乳化剤を1種以上用いることが好ましい。エチレンオキサイド付加モル数が多くても、HLB値が低い場合は、油性相側に乳化剤が取り込まれすぎてしまうからである。
【0055】
エチレンオキサイド40mol以上を有する乳化剤としては、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル等の多環フェニル型非イオン界面活性剤で、エチレンオキサイド鎖40mol以上付加したもの、及びその硫酸塩等のイオン性界面活性剤を挙げることができる。エチレンオキサイド付加モル数については40mol以上、且つ200mol以下が好ましい。200mol以上付加した乳化剤の場合、粘度上昇が著しく、使用に不適当な場合が生じる。
【0056】
また、エチレンオキサイド付加モル数3〜15のものとしては、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル等の多環フェニル型非イオン界面活性剤で、エチレンオキサイド鎖3〜15mol付加したもの、及びその硫酸塩等のイオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のアルキルフェノール型非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0057】
乳化剤は分子内に芳香環を有する界面活性剤以外に、他の構造を有する任意の乳化剤を追加して添加することができる。例えば、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキル(C10〜C18)エステル等の直鎖炭化水素型非イオン性界面活性剤、ソルビタン誘導体等が挙げられる。乳化剤の量は、油性溶液の質量基準で5〜150%であることが好ましく、10〜100%であることが最も好ましい。
【0058】
顔料分散体、乳化剤以外に、水性相は水性ボールペンに通常使用される各種の添加剤、例えば、防錆剤、防腐剤、PH調整剤、潤滑剤、保湿剤、樹脂、天然多糖類等の増粘剤等を含有することができる。
【0059】
本発明の水中油滴型水性ボールペン用インク組成物中に占める油性相成分の割合は、質量基準で1〜20%であり、好ましくは3〜15%、さらに好ましくは5〜10%である。油性相成分の割合が1%より小さいと、色濃度の向上、筆記性で満足な性能が得られず、通常の水性ボールペンとなんら変わらなくなる。また、油性相成分の割合が20%より大きいと、顔料分散体との相互作用でエマルションが不安定化となる場合があり、また油分が増えるため、描線乾燥性に悪影響を及ぼす。
【0060】
エマルションの平均粒子径は好ましくは200nm以下であり、更に好ましくは150nm以下である。平均粒子径を200nm以下とするのは、粒子の沈降や、粒子同士の衝突による合一を抑制するためである。粒子径の調整は、後述する乳化方法による制御することができ、また高圧ホモジナイザー等の乳化機を用いた機械的せん断力によっても微細化することができる。
【0061】
本発明の水中油滴型エマルションの乳化方法は、従来技術において知られている種々の乳化方法、例えば、転相乳化方法、D相乳化方法、PIT乳化方法、機械的な乳化方法を用いることができる。例えば、転相乳化方法においては、本発明の水中油滴型エマルションは以下の工程により製造される:
a)有機溶剤中で、少なくとも着色材としての染料を含む油性溶液成分を攪拌して、固形分を溶解させる工程、
b)水性成分に乳化剤を加えて攪拌して溶解させる工程、
c)工程aで得られた油性溶液を攪拌しながら、工程bで得られた水性成分を徐々に添加して油中水滴型エマルション得る工程、
d)攪拌しながら、さらに水性成分を添加して相転移を経て水中油滴型エマルションを得る工程。
【0062】
顔料分散体を含む水性相を調製する工程は、水性顔料インクとして従来公知の方法を採用することができる。例えば:
a)顔料、分散剤、溶剤及びpH調整剤を攪拌機にて3時間攪拌する工程、
b)サンドミルにて5時間分散する工程、
c)上記顔料分散液の粗大粒子を遠心分離機で除去する工程、
d)上記顔料分散液を希釈し、その他の成分を添加する工程。
【0063】
上述したように調製した、水中油滴型エマルションと顔料分散体を含む水性相とを攪拌混合する。この攪拌混合は、例えば、混合撹拌機により各成分を均一に混合する方法や、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ホモミキサー、ディスパー、超音波分散機、高圧ホモジナイザー等の分散機を用いて各成分を分散混合する方法を用いることができる。このとき、油相成分と水性相成分とを同時に撹拌混合あるいは分散混合してもよく、また各成分を順次撹拌混合あるいは分散混合しても構わない。
【0064】
尚、水中油滴型エマルション製造の際の水性成分として、前もって調製した顔料分散体を用いても良いが、転相乳化等で相転移する際に顔料分散系に悪影響を与えることも考えられるので、水中油滴型エマルション製造工程と顔料分散工程は分けて行うのが好ましい。
【0065】
本発明の水性ボールペン用インク組成物の粘性は好ましくは25℃、せん断速度380/秒の粘度が1〜100mPa・s、更に好ましくは5〜50mPa・sであることが好ましい。100mPa・s以上であると、インクの粘性が高まる結果、インクリフィル内でのインクの追従性が悪化するため、好ましくない。
【実施例】
【0066】
以下、最も代表的な実施例により、本発明の好適態様とその優れた効果を具体的に説明する。尚、以下において、部はすべて質量部であり、%はすべて質量%である。
【0067】
実施例1〜18について、以下の通りインク組成物の調製を行った。
まず、表1に記載の油性溶液成分を攪拌しながら50℃〜60℃の温度に加温して、これらの成分を完全に溶解させた。表中の油性溶液粘度はこの溶液の値である。一方、これとは別個に表2に記載の乳化剤を精製水に攪拌しながら溶解させ乳化剤水溶液を作成した。なお、油性相への配向が強い乳化剤を配合する場合は、当該油性溶液に添加し常温で攪拌することもできる。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
次に、油性溶液中に対して前記乳化剤水溶液を攪拌しながら徐々に添加することによって、w/oからo/wに転相させて水中油滴型のエマルションを得た。その後、実施例1〜4、6〜9、11〜18、比較例4に関しては、市販の高圧ホモジナイザーを用いて所定の平均粒子径に到達するまで、乳化処理を行った。また、実施例5、10については高圧ホモジナイザー処理を行わなかった。
【0071】
平均粒子径の測定は、粒子径測定器N4Plus(COULTER社製)を用いて測定した。測定時には試料がN4Plusの推奨濃度に到達するまで水で希釈して、25℃の温度条件で測定した。なお、本願明細書で用いる平均粒子径の用語はメディアン径をいう。
【0072】
上記の工程にしたがって顔料濃度20%の顔料分散体を別途作成した。
作成した顔料分散体に対し、最終的なインクの成分量が表2となるようにd)工程の希釈およびその他の成分の添加を行った。なお、その際には前記乳化剤水溶液で用いた各成分の量は減じて調整した。
【0073】
上記の水中油滴型エマルションと顔料分散体とをディスパーで混合撹拌を行い、実施例10、11、16及び比較例4については、最後に増粘剤成分を攪拌して溶解させて本発明のインク組成物を得た。
【0074】
インクの粘度測定については、HAAKE社製レオメータ、RheoStress600を用いた。円錐コーンは、直径20mm、傾斜角1度のものを用いた。測定条件は25℃せん断速度380/秒の条件で、30秒間測定して安定した数値を粘度とした。
【0075】
実施例1〜18において生成された各組成物を三菱鉛筆(株)製UMR−07リフィールに軸に組込み後、以下の評価を行った。
【0076】
比較例1〜4として表3に記載するインク組成物を用意した。尚、比較例4は、本件出願人の先願である特願2008−145150号明細書の実施例1のインク組成物である。比較例1については三菱鉛筆(株)製SA−07Nリフィールに、比較例2及び比較例4については三菱鉛筆(株)製UMR−07リフィールに、比較例3については三菱鉛筆(株)製UB157軸にそれぞれインクを充填し、評価を行った。
【0077】
【表3】

【0078】
<評価>
(a)耐沈降性試験
ペン先部が遠心方向に向くようにしたリフィールを、回転半径20cm、回転数2000rpm(約900G)の条件で5時間遠心を行い、その後に筆記用紙に直径約2cmの円を筆記して、遠心処理前の描線濃度と比較した。
◎:初期と濃度差なし。
○:若干描線が濃いが筆記に問題なし。
△:描線が濃いことがはっきり認識できるが、筆記は可能。
◆:描線が濃く、且つ筆記かすれが目立ち使用に耐えない。
×:筆記不能
【0079】
(b)筆感軽さ試験
筆記用紙に5周丸書きし、筆感の軽さを以下のように判定した。
◎:非常に軽い。
○:軽い。
△:普通。
◆:重い。
×:使用に耐えない。
【0080】
(c)ガリツキ感試験
(a)に記載の筆感軽さ試験時の筆記のガリツキ感を以下のように判定した。
◎:全く気にならない。
○:やや感じるが問題ない。
△:やや気になる。
◆:かなり気になる。
×:気になる。
【0081】
(d)耐水性試験
筆記用紙に筆記した描線を水で濡らし、1分後の状態を観察した。
◎:全く描線が変化しない。
○:やや描線にじみが観察されるが問題ない。
△:描線にじみが目立つが判別は可能。
×:判別が困難。
【0082】
(e)耐光性試験
筆記用紙に筆記した描線を日光に12時間暴露し、退色度合いを判定した。
◎:全く退色しない。
○:若干退色するがはっきりと視認可能。
△:残存描線は確認できる。
×:全く視認できない。
【0083】
(f)描線濃度試験
筆記用紙に筆記した筆記描線を比較例の水性インク、ゲルインクの描線と目視で比較を行った。
◎:比較サンプルより濃い。
○:比較サンプルと同等。
△:比較サンプルよりやや劣る。
×:比較サンプルより劣る。
【0084】
(g)描線乾燥性試験
筆記用紙に筆記した描線を10秒後にビニール片で擦過し、描線の伸び度合いと汚れを確認した。
◎:全く伸びず、描線も汚れない。
○:ほとんど伸びず、描線も汚れない。
△:やや描線が伸びる。
×:描線が汚れている。
【0085】
(f)保存安定性試験
ペン体を50℃の条件下で3ヶ月放置し、筆記性を確認した。
◎:初期と変化無し。
○:初期と比較して僅かな変化はあるが、筆記に問題なし。
△:描線の劣化は観察されるが、筆記可能。
◆:描線の劣化が著しい。
×:筆記できない。
【0086】
上記試験の結果を表4〜表6に示す。これらの結果から、本発明のインク組成物が、比較例インク(油性インク、ゲルインク、水性インク、本件出願人の先行発明)に比べて、優れた結果を示すことがわかる。
【0087】
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料分散体からなる水性相に対して、染料を有機溶剤中に溶解させた油性溶液を含む油性相が、水中油滴型エマルションの状態で含まれる水性ボールペン用インク組成物。
【請求項2】
前記油性溶液の全溶剤中、分子骨格中に芳香環を一つ以上有する溶剤が質量基準で50%以上を占めており、そして分子骨格中に芳香環を一つ以上有する乳化剤を含むことを特徴とする請求項1記載の水性ボールペン用インク組成物。
【請求項3】
前記乳化剤が、エチレンオキサイド付加モル数が40以上の芳香族系乳化剤を少なくとも含むことを特徴とする請求項2記載の水性ボールペン用インク組成物。
【請求項4】
前記油性溶液の溶剤の沸点が200℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性ボールペン用インク組成物。
【請求項5】
25℃における水に対する溶解度が質量基準で1%以下であり、且つ分子骨格中に芳香環を一つ以上有する溶剤が、前記油性溶液の全溶剤中、質量基準で50%以上を占めていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性ボールペン用インク組成物。
【請求項6】
前記水中油滴型エマルションの油滴の平均粒子径が、200nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性ボールペン用インク組成物。
【請求項7】
インク組成物中に占める油性相成分の割合が、質量基準で1〜20%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性ボールペン用インク組成物。
【請求項8】
前記顔料分散体に含まれる分散剤がスチレンアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性ボールペン用インク組成物。

【公開番号】特開2010−275391(P2010−275391A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127989(P2009−127989)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】