説明

水性下塗り材組成物

【課題】仕上げ用塗り壁材を塗りつけた際に、下地に付着したアクやヤニによる影響で色ムラが生じる恐れを効果的に防止できる下塗り材組成物を提供する。
【解決手段】ドロマイトプラスターと、カチオン系アクリルエマルジョンと、吸水性及び吸油性を有する無機質材料と、骨材とを含む水性下塗り材組成物。カチオン系アクリルエマルジョンはTgが5℃以下である。ドロマイトプラスターと、骨材との重量割合が1:1乃至6である。ドロマイトプラスターと、カチオン系アクリルエマルジョンとの重量割合が1:0.1乃至1である。ドロマイトプラスターと、吸水性及び吸油性を有する無機質材料との重量割合が1:0.01乃至0.1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内装仕上げ用塗り壁材の下塗り材に関する。
【背景技術】
【0002】
珪藻土などの室内環境改善を目的とした内装仕上げ用塗り壁材、例えば、内装仕上げ用コテ塗り壁材は、住宅・店舗等で新規・リフォームを問わず頻繁に使用されている。この内装仕上げ用コテ塗り壁材は、ビニールクロスとは異なった、さまざまな意匠性を発揮できる点でも、使用される機会が多くなっている。
【0003】
ところで、塗り壁材は、施工によって色ムラ、割れ、等の不具合が生じる可能性が高いという問題点がある。特に、下地に付着したアクやヤニによる影響で色ムラになることが多く、その根本的な対策が課題となっているところである。
【0004】
下地に付着したアクやヤニによる影響を抑えることを目的とした専用の下塗り材やプライマーなどが市場に提供されているが、完全に効果のあるものはほとんど見当たらないのが現状である。
【0005】
また、下塗り材として用いる下塗り材組成物に関しても種々の提案がされているが(例えば、特許文献1、2、3)、仕上げ用塗り壁材を塗りつけたときに、下地に付着したアクやヤニによる影響で色ムラが生じるおそれを効果的に防止できる提案はされていなかった。
【特許文献1】特開2003−201442号公報
【特許文献2】特開2003−286448号公報
【特許文献3】特開2004−115678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、仕上げ用塗り壁材を塗りつけた際に、下地に付着したアクやヤニによる影響で色ムラが生じるおそれを効果的に防止できる下塗り材組成物を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成する本願発明は次の通りのものである。
【0008】
請求項1記載の発明は、
ドロマイトプラスターと、カチオン系アクリルエマルジョンと、吸水性及び吸油性を有する無機質材料と、骨材とを含む水性下塗り材組成物である。
【0009】
請求項2記載の発明は、
カチオン系アクリルエマルジョンはTgが5℃以下であることを特徴とする請求項1記載の水性下塗り材組成物である。
【0010】
請求項3記載の発明は、
ドロマイトプラスターと、骨材との重量割合が1:1乃至6であることを特徴とする請求項1又は2記載の水性下塗り材組成物である。
【0011】
請求項4記載の発明は、
ドロマイトプラスターと、カチオン系アクリルエマルジョン(固形分)との重量割合が1:0.1乃至1であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の水性下塗り材組成物である。
【0012】
請求項5記載の発明は、
ドロマイトプラスターと、吸水性及び吸油性を有する無機質材料との重量割合が1:0.01乃至0.1であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の水性下塗り材組成物である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、仕上げ用塗り壁材を塗りつけた際に、下地に付着したアクやヤニによる影響で色ムラが生じるおそれを効果的に防止できる下塗り材組成物を提供することができる。
【0014】
この発明によれば、特にアクの出易い木質合板に対して本発明による水性下塗り材組成物からなる下塗り材を塗りつけることにより、溶出してくるアクを固定し、下塗り材の硬化後にはアクが再溶出することを防止できる。これにより、本発明による水性下塗り材組成物からなる下塗り材を木質合板に塗りつけて硬化した後、上塗り材として仕上げ用塗り壁材(仕上げ材)を塗りつけても、本発明による水性下塗り材組成物からなる下塗り材のバリア効果によりアクの影響が上塗り材に及ぶことはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の水性下塗り材組成物は、ドロマイトプラスターと、カチオン系アクリルエマルジョンと、吸水性及び吸油性を有する無機質材料と、骨材とを含むものである。
【0016】
すなわち、本発明は、ドロマイトプラスターを固化材とし、カチオン系アクリルエマルジョンと、吸水性及び吸油性を有する無機質材料と、骨材とを配合することにより水性下塗り材組成物を得たものである。本発明の水性下塗り材組成物を用いた下塗り材を下地に塗りつけることにより、下地が特にアクの出易い木質合板であっても、溶出してくるアクを固着して再溶出を防止し、下塗り材のバリア効果によりアクの影響が上塗り材に及ぶことはなくなる。
【0017】
発明者の実験によれば、固化材としてセメントや石膏、消石灰などを用いた場合、アクの固定が不十分であって、ドロマイトプラスターを固化材として用いるのが最も効果的であった。
【0018】
前記において、カチオン系アクリルエマルジョン以外のエマルジョンではアクの固定が十分ではなく、アクやヤニによる影響防止という本発明の目的を達成することは困難であった。
【0019】
吸水性及び吸油性を有する無機質材料は、アクを固定する機能を発揮させる上で必須の成分であり、セピオライト、珪藻土、ベントナイト、ゼオライト、モンモリロナイトなどを使用することができる。なお、アクを固定する機能を発揮させる上で特に効果的であったのは、セピオライト、又は、珪藻土若しくはこれらの混合物であった。
【0020】
骨材としては、従来から、塗り壁材の下塗り材に使用されていたものを採用することができる。
【0021】
例えば、珪砂、寒水石、炭酸カルシウムなどを使用することができる。
【0022】
本発明において、前記のカチオン系アクリルエマルジョンは、Tgが5℃以下であることが望ましい。
【0023】
Tgが5℃より高い場合、硬化した材料が硬く、下地との追従性が低いため、外的挙動によるひび割れが発生する確率が高くなる。ひび割れが発生した場合には、本発明による水性下塗り材組成物からなる下塗り材のバリア効果が低下し、下地の木質合板などから溶出してくるアクの固定が不十分になり、仕上げ材にアクが溶出するおそれが高くなるので好ましくない。
【0024】
かかる観点から、カチオン系アクリルエマルジョンのより望ましいTgは−20℃以下である。
【0025】
前記本発明の水性下塗り材組成物において、ドロマイトプラスターと、骨材との重量割合が1:1乃至6であることが望ましい。
【0026】
重量割合で、ドロマイトプラスターに対して骨材が6倍を越えるようになると、アクの固定が不十分で、上塗り材にアクが再溶出するおそれが高くなるので好ましくない。一方、1倍を下回る場合には、本発明の水性下塗り材組成物による下塗り材を下地に塗りつけた後にひび割れが発生し、バリア効果が低下して、下地の木質合板などから溶出してくるアクの固定が不十分になり、上塗り材にアクが溶出するおそれが高くなるので好ましくない。
【0027】
なお、かかる観点から、より好ましい重量割合は、ドロマイトプラスターと、骨材との重量割合が1:2乃至4である。
【0028】
ドロマイトプラスターと、カチオン系アクリルエマルジョン(固形分)との重量割合は1:0.1乃至1であることが望ましい。
【0029】
カチオン系アクリルエマルジョン(固形分)の割合がドロマイトプラスター1に対して1を越える場合には、本発明の水性下塗り材組成物による下塗り材が乾燥収縮によりひび割れを生じ、バリア効果が低下して、下地の木質合板などから溶出してくるアクの固定が不十分になり、仕上げ材にアクが溶出するおそれが高くなるので好ましくない。一方、0.1を下回る場合にはアクの固定が不十分で、仕上げ材にアクが再溶出するおそれが高くなるので好ましくない。
【0030】
かかる観点から、より好ましい重量割合は、ドロマイトプラスター1に対してカチオン系アクリルエマルジョン(固形分)0.3乃至0.6である。
【0031】
ドロマイトプラスターと、吸水性及び吸油性を有する無機質材料との重量割合は1:0.01乃至0.1であることが望ましい。
【0032】
吸水性及び吸油性を有する無機質材料の割合がドロマイトプラスター1に対して0.1を越える場合には、本発明の水性下塗り材組成物による下塗り材が硬化した後、ひび割れが発生し、バリア効果が低下して、下地の木質合板などから溶出してくるアクの固定が不十分になり、仕上げ材に溶出するおそれが高くなるので好ましくない。
【0033】
一方、吸水性及び吸油性を有する無機質材料の割合がドロマイトプラスター1に対して0.01を下回る場合には、アクの固定が不十分で、仕上げ材にアクが再溶出するおそれが高くなるので好ましくない。
【0034】
かかる観点から、より好ましい重量割合は、ドロマイトプラスター1に対して吸水性及び吸油性を有する無機質材料0.03乃至0.06である。
【0035】
本発明の水性下塗り材組成物は、施工現場などにおいて水と混合することにより下塗り材を調製できる。例えば、本発明の水性下塗り材組成物1重量部に対して、水0.3〜0.4重量部の割合で混合して、本発明の水性下塗り材組成物による下塗り材を調製することができる。
【0036】
このようにして調製した本発明の水性下塗り材組成物による下塗り材は、コテを用いて、木質合板などの下地に塗りつけて使用することができる。
【0037】
この場合、本発明の水性下塗り材組成物による前述した作用・効果を発揮させる上では、0.4mm厚以上、より好ましくは0.6mm厚以上の塗布厚にすることが望ましい。塗布厚が0.4mmを超えない場合、本発明の水性下塗り材組成物による前述した作用・効果を発揮させることが不十分で好ましくないからである。
【0038】
以下、本発明の好ましい実施例を説明するが、本発明はかかる実施例のみに限られるものではない。
【実施例1】
【0039】
本発明の水性下塗り材組成物を下記の配合で調製した
ドロマイトプラスター:
ドロマイトプラスター(田政礦業社製): 1000g
カチオン系アクリルエマルジョン:
(モビニール7800 日本合成化学社製 Tg:4℃): 固形分で100g
吸水性及び吸油性を有する無機質材料
セピオライト(PANGEL−FF TOLSA社製) : 10g
骨材
珪砂(平均骨材粒径200μm): 1000g
これらをハンドミキサーを用いて攪拌、混合し、本発明の水性下塗り材組成物を調製した。
【実施例2】
【0040】
本発明の水性下塗り材組成物を下記の配合で調製した
ドロマイトプラスター:
ドロマイトプラスター(田政礦業社製): 1000g
カチオン系アクリルエマルジョン:
(ELOTEX−WR8600 ELOTEX社製 Tg:−3℃): 固形分で400g
吸水性及び吸油性を有する無機質材料
セピオライト(PANGEL−FF TOLSA社製): 40g
骨材
珪砂(平均骨材粒径200μm): 3000g
これらをハンドミキサーを用いて攪拌、混合し、本発明の水性下塗り材組成物を調製した。
【実施例3】
【0041】
本発明の水性下塗り材組成物を下記の配合で調製した
ドロマイトプラスター:
ドロマイトプラスター(田政礦業社製): 1000g
カチオン系アクリルエマルジョン:
(ヨドゾールAF960 ヘンケルテクノロジーズジャパン社製 Tg:−20℃): 固形分で1000g
吸水性及び吸油性を有する無機質材料
セピオライト(PANGEL−FF TOLSA社製): 100g
骨材
珪砂(平均骨材粒径200μm): 6000g
これらをハンドミキサーを用いて攪拌、混合し、本発明の水性下塗り材組成物を調製した。
【0042】
(比較例1)
水性下塗り材組成物を下記の配合で調製した
ドロマイトプラスター:
ドロマイトプラスター(田政礦業社製): 1000g
カチオン系アクリルエマルジョン:
(ELOTEX−TITAN8100 ELOTEX社製 Tg:10℃): 固形分で400g
吸水性及び吸油性を有する無機質材料
セピオライト(PANGEL−FF TOLSA社製): 40g
骨材
珪砂(平均骨材粒径200μm): 3000g
これらを攪拌、混合し、比較例1の水性下塗り材組成物を調製した。
【0043】
(比較例2)
水性下塗り材組成物を下記の配合で調製した
ドロマイトプラスター:
ドロマイトプラスター(田政礦業社製): 1000g
ノニオン系アクリルエマルジョン:
(ヨドゾールAF8 ヘンケルテクノロジーズジャパン社製 Tg:0℃): 固形分で400g
吸水性及び吸油性を有する無機質材料
セピオライト(PANGEL−FF TOLSA社製): 40g
骨材
珪砂(平均骨材粒径150μm): 3000g
これらを攪拌、混合し、比較例2の水性下塗り材組成物を調製した。
【0044】
(比較例3)
水性下塗り材組成物を下記の配合で調製した
ドロマイトプラスター:
ドロマイトプラスター(田政礦業社製): 1000g
アニオン系アクリルエマルジョン:
(ヨドゾールGF55 ヘンケルテクノロジーズジャパン社製 Tg:0℃): 固形分で400g
吸水性及び吸油性を有する無機質材料
セピオライト(PANGEL−FF TOLSA社製): 40g
骨材
珪砂(平均骨材粒径150μm): 3000g
これらを攪拌、混合し、比較例3の水性下塗り材組成物を調製した。
【0045】
(比較例4)
水性下塗り材組成物を下記の配合で調製した
ドロマイトプラスター:
ドロマイトプラスター(田政礦業社製): 1000g
カチオン系アクリルエマルジョン:
(ヨドゾールAF960 ヘンケルテクノロジーズジャパン社製 Tg:−20℃): 固形分で90g
吸水性及び吸油性を有する無機質材料
セピオライト(PANGEL−FF TOLSA社製): 40g
骨材
珪砂(平均骨材粒径200μm): 3000g
これらを攪拌、混合し、比較例4の水性下塗り材組成物を調製した。
【0046】
(比較例5)
水性下塗り材組成物を下記の配合で調製した
ドロマイトプラスター:
ドロマイトプラスター(田政礦業社製): 1000g
カチオン系アクリルエマルジョン:
(ヨドゾールAF960 ヘンケルテクノロジーズジャパン社製 Tg:−20℃): 固形分で400g
吸水性及び吸油性を有する無機質材料
セピオライト(PANGEL−FF TOLSA社製): 9g
骨材
珪砂(平均骨材粒径200μm): 3000g
これらを攪拌、混合し、比較例5の水性下塗り材組成物を調製した。
【0047】
(比較例6)
水性下塗り材組成物を下記の配合で調製した
ドロマイトプラスター:
ドロマイトプラスター(田政礦業社製): 1000g
カチオン系アクリルエマルジョン:
(ヨドゾールAF960 ヘンケルテクノロジーズジャパン社製 Tg:−20℃): 固形分で400g
吸水性及び吸油性を有する無機質材料
セピオライト(PANGEL−FF TOLSA社製): 40g
骨材
珪砂(平均骨材粒径200μm): 900g
これらを攪拌、混合し、比較例6の水性下塗り材組成物を調製した。
【0048】
(比較例7)
水性下塗り材組成物を下記の配合で調製した
ドロマイトプラスター:
ドロマイトプラスター(田政礦業社製): 1000g
カチオン系アクリルエマルジョン:
(ヨドゾールAF960 ヘンケルテクノロジーズジャパン社製 Tg:−20℃): 固形分で1100g
吸水性及び吸油性を有する無機質材料
セピオライト(PANGEL−FF TOLSA社製): 40g
骨材
珪砂(平均骨材粒径200μm): 3000g
これらを攪拌、混合し、比較例7の水性下塗り材組成物を調製した。
【0049】
(比較例8)
水性下塗り材組成物を下記の配合で調製した
ドロマイトプラスター:
ドロマイトプラスター(田政礦業社製): 1000g
カチオン系アクリルエマルジョン:
(ヨドゾールAF960 ヘンケルテクノロジーズジャパン社製 Tg:−20℃): 固形分で400g
吸水性及び吸油性を有する無機質材料
セピオライト(PANGEL−FF TOLSA社製): 110g
骨材
珪砂(平均骨材粒径200μm): 3000g
これらを攪拌、混合し、比較例8の水性下塗り材組成物を調製した。
【0050】
(比較例9)
水性下塗り材組成物を下記の配合で調製した
ドロマイトプラスター:
ドロマイトプラスター(田政礦業社製): 1000g
カチオン系アクリルエマルジョン:
(ヨドゾールAF960 ヘンケルテクノロジーズジャパン社製 Tg:−20℃): 固形分で400g
吸水性及び吸油性を有する無機質材料
セピオライト(PANGEL−FF TOLSA社製): 40g
骨材
珪砂(平均骨材粒径200μm): 6600g
これらを攪拌、混合し、比較例9の水性下塗り材組成物を調製した。
【0051】
(比較試験例)
実施例1〜3の本発明の水性下塗り材組成物、比較例1〜9の水性下塗り材組成物に対して、それぞれ水を混合し、ハンドミキサーで攪拌、混合し、下塗り材を準備した。
【0052】
次いで、同一の木質合板に対して、左官コテを用いて、それぞれを塗り付け、硬化させた後の表面の変化(色ムラ、ひび割れの発生)を確認した。
【0053】
更に、実施例1〜3の本発明の水性下塗り材組成物からなる下塗り材の硬化面及び、比較例1〜9の水性下塗り材組成物からなる下塗り材の硬化面に、内装仕上げ用コテ塗り壁材(製品名:マンチュリア 日本スタッコ社製 組成:マグネシア、ニガリ、珪藻土、ゼオライト、パーライト)をコテ塗りにより2mm厚に塗りつけ、硬化させて表面の変化(色ムラの発生)を確認したところ以下の結果を得た。
【0054】
(実施例1 水との配合割合:水/組成物=30重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.3 0.4 0.5 0.6
下塗り材のひび割れ なし なし なし なし
下塗り材の色ムラ あり なし なし なし
仕上げ材表面の色ムラ あり なし なし なし
(実施例1 水との配合割合:水/組成物=40重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.3 0.4 0.5 0.6
下塗り材のひび割れ なし なし なし なし
下塗り材の色ムラ あり なし なし なし
仕上げ材表面の色ムラ あり なし なし なし
(実施例1 水との配合割合:水/組成物=25重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.3 0.4 0.5 0.6
下塗り材のひび割れ なし なし なし なし
下塗り材の色ムラ あり なし なし なし
仕上げ材表面の色ムラ なし なし なし なし
(実施例1 水との配合割合:水/組成物=45重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.3 0.4 0.5 0.6
下塗り材のひび割れ あり あり あり あり
下塗り材の色ムラ あり あり あり あり
仕上げ材表面の色ムラ あり あり あり あり
【0055】
(実施例2 水との配合割合:水/組成物=30重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.3 0.4 0.5 0.6
下塗り材のひび割れ なし なし なし なし
下塗り材の色ムラ あり なし なし なし
仕上げ材表面の色ムラ なし なし なし なし
(実施例2 水との配合割合:水/組成物=40重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.3 0.4 0.5 0.6
下塗り材のひび割れ なし なし なし なし
下塗り材の色ムラ あり なし なし なし
仕上げ材表面の色ムラ あり なし なし なし
(実施例2 水との配合割合:水/組成物=25重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.3 0.4 0.5 0.6
下塗り材のひび割れ なし なし なし なし
下塗り材の色ムラ なし なし なし なし
仕上げ材表面の色ムラ なし なし なし なし
(実施例2 水との配合割合:水/組成物=45重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.3 0.4 0.5 0.6
下塗り材のひび割れ あり あり あり あり
下塗り材の色ムラ あり なし なし なし
仕上げ材表面の色ムラ あり あり あり あり
【0056】
(実施例3 水との配合割合:水/組成物=30重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.3 0.4 0.5 0.6
下塗り材のひび割れ なし なし なし なし
下塗り材の色ムラ あり なし なし なし
仕上げ材表面の色ムラ なし なし なし なし
(実施例3 水との配合割合:水/組成物=40重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.3 0.4 0.5 0.6
下塗り材のひび割れ なし なし なし なし
下塗り材の色ムラ あり なし なし なし
仕上げ材表面の色ムラ なし なし なし なし
(実施例3 水との配合割合:水/組成物=25重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.3 0.4 0.5 0.6
下塗り材のひび割れ なし なし なし なし
下塗り材の色ムラ なし なし なし なし
仕上げ材表面の色ムラ なし なし なし なし
(実施例3 水との配合割合:水/組成物=45重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.3 0.4 0.5 0.6
下塗り材のひび割れ あり あり あり あり
下塗り材の色ムラ なし なし なし なし
仕上げ材表面の色ムラ あり あり あり あり
【0057】
以上の比較試験及び、発明者が行った他の実験より、下塗り材を調製するにあたって、本発明の水性下塗り材組成物と水との混合割合は、本発明の水性下塗り材組成物:水=1:0.3〜0.4であることが望ましかった。
【0058】
0.4を越えると、本発明の水性下塗り材組成物による下塗り材が硬化した後、ひび割れが発生し、バリア効果が低下して、下地の木質合板などから溶出してくるアクの固定が不十分になり、仕上げ材に再溶出したので好ましくない。
【0059】
一方、0.3を下回ると、下塗り材のひび割れや、仕上げ材表面の色ムラは、見られないが、本発明の水性下塗り材が固すぎて、コテ塗りが非常に困難であるため好ましくない。
【0060】
また、下塗り材の塗り厚に関しては、0.3mm以下では、アクが溶出してきて硬化後の下塗り材表面に色ムラが生じ、この上に、仕上げ材を塗りつけて硬化させたときに、アクが再溶出してきて色ムラが生じることがあった。
【0061】
一方、下塗り材の塗り厚が0.4mm以上の場合にはこのような不具合は発生しなかった。
【0062】
(比較例1 水との配合割合:水/組成物=35重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.4 0.6
下塗り材のひび割れ あり あり
下塗り材の色ムラ あり あり
仕上げ材表面の色ムラ あり あり
硬化後の下塗り材表面にはひび割れが発生した。また、アクが溶出してきて硬化後の下塗り材表面に色ムラが生じた。この上に、仕上げ材を塗りつけて硬化させたときには、アクが再溶出してきて色ムラが生じた。
【0063】
(比較例2 水との配合割合:水/組成物=35重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.4 0.6
下塗り材のひび割れ なし なし
下塗り材の色ムラ あり あり
仕上げ材表面の色ムラ あり あり
硬化後の下塗り材表面に、アクが溶出してきて硬化後の下塗り材表面に色ムラが生じた。この上に、仕上げ材を塗りつけて硬化させたときには、アクが再溶出してきて色ムラが生じた。
【0064】
(比較例3 水との配合割合:水/組成物=35重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.4 0.6
下塗り材のひび割れ なし なし
下塗り材の色ムラ あり あり
仕上げ材表面の色ムラ あり あり
硬化後の下塗り材表面に、アクが溶出してきて硬化後の下塗り材表面に色ムラが生じた。この上に、仕上げ材を塗りつけて硬化させたときには、アクが再溶出してきて色ムラが生じた。
【0065】
(比較例4 水との配合割合:水/組成物=35重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.4 0.6
下塗り材のひび割れ なし なし
下塗り材の色ムラ あり あり
仕上げ材表面の色ムラ あり あり
硬化後の下塗り材表面に、アクが溶出してきて硬化後の下塗り材表面に色ムラが生じた。この上に、仕上げ材を塗りつけて硬化させたときには、アクが再溶出してきて色ムラが生じた。
【0066】
(比較例5 水との配合割合:水/組成物=35重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.4 0.6
下塗り材のひび割れ なし なし
下塗り材の色ムラ あり あり
仕上げ材表面の色ムラ あり あり
硬化後の下塗り材表面に、アクが溶出してきて硬化後の下塗り材表面に色ムラが生じた。この上に、仕上げ材を塗りつけて硬化させたときには、アクが再溶出してきて色ムラが生じた。
【0067】
(比較例6 水との配合割合:水/組成物=35重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.4 0.6
下塗り材のひび割れ あり あり
下塗り材の色ムラ なし なし
仕上げ材表面の色ムラ あり あり
硬化後の下塗り材表面にはひび割れが発生した。この上に、仕上げ材を塗りつけて硬化させたときには、アクが溶出してきて色ムラが生じた。
【0068】
(比較例7 水との配合割合:水/組成物=35重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.4 0.6
下塗り材のひび割れ あり あり
下塗り材の色ムラ なし なし
仕上げ材表面の色ムラ あり あり
下塗り材の硬化が異常に遅く、硬化後の下塗り材表面にはひび割れが発生した。この上に、仕上げ材を塗りつけて硬化させたときには、アクが溶出してきて色ムラが生じた。
【0069】
(比較例8 水との配合割合:水/組成物=35重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.4 0.6
下塗り材のひび割れ あり あり
下塗り材の色ムラ あり あり
仕上げ材表面の色ムラ あり あり
硬化後の下塗り材表面にはひび割れが発生した。また、アクが溶出してきて硬化後の下塗り材表面に色ムラが生じた。この上に、仕上げ材を塗りつけて硬化させたときには、アクが再溶出してきて色ムラが生じた。
【0070】
(比較例9 水との配合割合:水/組成物=35重量%)
下塗り材の塗り厚(mm) 0.4 0.6
下塗り材のひび割れ なし なし
下塗り材の色ムラ あり あり
仕上げ材表面の色ムラ あり あり
硬化後の下塗り材表面に、アクが溶出してきて硬化後の下塗り材表面に色ムラが生じた。この上に、仕上げ材を塗りつけて硬化させたときには、アクが再溶出してきて色ムラが生じた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
この発明の水性下塗り材組成物によれば、仕上げ用塗り壁材を塗りつけた際に、下地に付着したアクやヤニによる影響で色ムラが生じるおそれを効果的に防止でき、特にアクの出易い木質合板に対して本発明による水性下塗り材組成物からなる下塗り材を塗りつけることにより、溶出してくるアクを固定し、下塗り材の硬化後にはアクが再溶出することを防止できる。これにより、本発明による水性下塗り材組成物からなる下塗り材を木質合板に塗りつけて硬化した後、仕上げ用塗り壁材を塗りつけても、本発明による水性下塗り材組成物からなる下塗り材のバリア効果によりアクの影響が上塗り材に及ぶことはない。
【0072】
本発明による水性下塗り材組成物からなる下塗り材を塗りつけ硬化させた後に、珪藻土などの室内環境改善を目的とした内装仕上げ用塗り壁材、例えば、内装仕上げ用コテ塗り壁材を塗りつけても下地に付着したアクやヤニによる影響で色ムラが生じるおそれがなくなるので、住宅・店舗等で新規・リフォームを問わず内装仕上げ用コテ塗り壁材を使用する場合に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドロマイトプラスターと、カチオン系アクリルエマルジョンと、吸水性及び吸油性を有する無機質材料と、骨材とを含む水性下塗り材組成物。
【請求項2】
カチオン系アクリルエマルジョンはTgが5℃以下であることを特徴とする請求項1記載の水性下塗り材組成物。
【請求項3】
ドロマイトプラスターと、骨材との重量割合が1:1乃至6であることを特徴とする請求項1又は2記載の水性下塗り材組成物。
【請求項4】
ドロマイトプラスターと、カチオン系アクリルエマルジョン(固形分)との重量割合が1:0.1乃至1であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の水性下塗り材組成物。
【請求項5】
ドロマイトプラスターと、吸水性及び吸油性を有する無機質材料との重量割合が1:0.01乃至0.1であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の水性下塗り材組成物。

【公開番号】特開2010−126543(P2010−126543A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299235(P2008−299235)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(392002480)日本スタッコ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】