説明

水性又は水希釈性ブロックトポリイソシアネート及び熱黄変の実質的に少ないポリウレタン透明塗膜を形成するためのその使用

【課題】水性ポリオール成分と組み合わせたときに、比較的低温で焼付可能であり且つ熱黄変の実質的に少ない1成分ポリウレタン塗料組成物を製造することが可能な水性又は水希釈性ブロックトポリイソシアネート架橋剤を提供すること。
【解決手段】新規水性又は水希釈性ブロックトポリイソシアネートと、130〜150℃の比較的低温で焼付可能であり且つ熱黄変の実質的に少ない透明塗膜を提供する1成分ポリウレタン塗料組成物の製造におけるその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規水性又は水希釈性ブロックトポリイソシアネートと、130〜150℃の比較的低温で焼付可能であり、熱黄変の実質的に少ない透明塗膜を提供する1成分ポリウレタン塗料組成物の製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンをベースとする光沢のある透明トップコートを含む多層塗膜はその優れた性質により、特に自動車ラッカー塗膜で益々重要になっている。
構造の最上層の役割を果たす透明ラッカーは非常に厳しい要件を満たさなければならない。硬度、耐引掻性並びに溶剤及び薬剤耐性等の性質に加え、低い焼付温度と十分な耐過焼付性も必要である。
しかし、ブロックトポリイソシアネート(BNCO)架橋剤をベースとする架橋成分を含む1成分ポリウレタン焼付ラッカーは、焼付温度が高いときや、焼付作業時間が長い場合に顕著な黄変傾向がある。これは溶液型塗料系と水性塗料系のどちらにも言えることであり、この水性塗料系は、ラッカー塗布中の溶剤の放出に関する放出指針が益々厳しくなっているため、一層重要になっている。
DE−A 2,456,469、EP−A 12,348及びDE−A 3,234,590はビウレット化1,6−ジイソシアナトヘキサンをベースとする水性BNCO架橋剤について記載している。これらの架橋剤から製造した塗料の熱黄変安定性については記載されていない。しかし、試験の結果、このようなBNCO架橋剤は比較例6)で立証するように相手先商標製品製造業者(OEM)用透明塗料の熱黄変に関して非常に不十分な性能しか得られないことが判明した。また、ε−カプロラクタムをブロッキング剤として使用する場合には、160℃を越える非常に高い焼付温度が必要である。
EP−A 576,952及びEP−A 566,953は4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(HMDI)(Desmodur W,Bayer AG)をベースとする水性ブタノンオキシムブロックトポリイソシアネート及び該ブロックトポリイソシアネートと三量化1,6−ジイソシアナトヘキサンの混合物を記載しており、比較的低い架橋温度を利用できるが、この場合も熱黄変が許容できないほど高い1成分透明塗料をもたらす(比較例4及び5参照)。
溶液型系で黄変を阻止する安定化手段も知られている。EP−A 581,040及びEP−A 615,991は所定のヒドラジド化合物の添加及び配合を提案している。しかし、これらのヒドラジド化合物が水相にも有効であるか否かについては述べられていない。
【特許文献1】DE−A 2,456,469
【特許文献2】EP−A 12,348
【特許文献3】DE−A 3,234,590
【特許文献4】EP−A 576,952
【特許文献5】EP−A 566,953
【特許文献6】EP−A 581,040
【特許文献7】EP−A 615,991
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、水性ポリオール成分と組み合わせたときに、比較的低温で焼付可能であり且つ熱黄変の実質的に少ない1成分ポリウレタン塗料組成物を製造することが可能な水性又は水希釈性BNCO架橋剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、優れた耐過焼付性と130〜150℃の比較的低い焼付温度を特徴とする本発明の水性又は水希釈性ブロックトポリイソシアネートにより達せられる。
【0005】
本発明は、
a)2〜30重量%のイソシアヌレート基含量(C333 、分子量=126として計算)をもち、分子量140〜350の1種以上のジイソシアネートから製造したポリイソシアネート40〜80重量%と、
b)イソシアネート付加反応の目的のために単官能性である1種以上の可逆性イソシアネート基ブロッキング剤5〜30重量%、
c)イソシアネート付加反応の目的のために単官能性又は2官能性であり、1〜2個のヒドラジド基と70〜300の分子量をもつ1種以上の安定化成分0.5〜15重量%、
d)イソシアネート付加反応の目的のために単官能性又は2官能性であり、少なくとも1個の側鎖又は末端親水性ポリエーテル鎖を含む少なくとも1種の化合物を含む非イオン/親水性構造成分5〜30重量%、
e)少なくとも1個のイソシアネート反応性基と少なくとも1個の塩形成可能基をもつ1種以上の化合物を含み、場合により少なくとも部分中和形態で存在し得るアニオン又は潜在アニオン構造成分0〜15重量%、
f)2〜3個のアミノ基と60〜300の分子量をもつ1種以上の(シクロ)脂肪族ポリアミン0〜15重量%、及び
g)2〜4個のヒドロキシル基と62〜250の分子量をもつ1種以上の多価アルコール0〜15重量%
との反応生成物をベースとする水性又は水希釈性ブロックトポリイソシアネートに関し、a)〜g)の百分率の合計は成分a〜g)の重量を基にして100であり、これらの成分の量は、
i)イソシアヌレート基の含量(C333 、分子量=126として計算)が少なくとも2重量%となり、
ii)ブロックトイソシアネート基の含量(NCO、分子量=42として計算)が5〜11重量%となり、
iii)化学結合ヒドラジド基の含量(NH−NH、分子量=30として計算)が0.1〜3.0重量%となるように選択される。
【0006】
本発明は、水性焼付ラッカーの製造のための、水性又は水希釈性ブロックトポリイソシアネートと水溶性又は水分散性ポリヒドロキシル化合物の併用にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明による水性又は水希釈性ブロックトポリイソシアネートは、
A)イソシアヌレート基を含む(シクロ)脂肪族ポリイソシアネート成分100当量%を、
B)1種以上の可逆性単官能性イソシアネート基ブロッキング剤60〜85当量%、
C)ヒドラジド基を含む1種以上の安定化成分1〜20当量%、
D)エチレンオキシド単位を含む非イオン/親水性構造成分1〜25当量%、
E)カルボキシル基を含むアニオン又は潜在アニオン構造成分0〜25当量%、
F)1種以上の(シクロ)脂肪族ポリアミン0〜15当量%、及び
G)1種以上の多価アルコール0〜15当量%
と反応させることにより製造され、反応体の量は、成分A)のイソシアネート基と成分B)、C)、D)、E)、F)及びG)のイソシアネート反応性基の当量比が1:0.8〜1:1.2となるように選択される。
【0008】
出発成分A)は140〜350の分子量をもつジイソシアネートから製造され、2〜30重量%のイソシアヌレート基含量(C333 、分子量=126として計算)をもつ有機ポリイソシアネートから選択される。適切なジイソシアネートとしては、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(Desmodur W,Bayer AG)、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)又はこれらのポリイソシアネートの混合物が挙げられる。ポリイソシアネート成分A)は、例えばJ.prakt.Chem.336(1994)並びにEP−A 3 765及びEP−A 649 866に記載されているような公知方法を使用してこれらのジイソシアネートから製造される。
可逆性単官能性ブロッキング剤B)としてはオキシム及び/又はピラゾール類が使用される。ブタノンオキシム及び/又は3,5−ジメチルピラゾールが好適ブロッキング剤である。
【0009】
成分C)は70〜300の分子量をもつ単官能性及び/又は2官能性カルボン酸ヒドラジドから選択され、例えばアジピン酸ジヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、異性テレフタル酸ヒドラジド、N−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−N−アミノオキサミド(Luchem HA−R 100,Elf Atochem)、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル酢酸ヒドラジド又はこれらの化合物の混合物が挙げられる。他の有効なヒドラジドはEP−A 654,490及びEP−A 682,051に記載されているような環状炭酸塩及びヒドラジンから製造される付加物である。例えば、ヒドラジン1モルと炭酸プロピレン1モル及びヒドラジン1モルと炭酸プロピレン2モルの付加物が挙げられる。好適安定剤はアジピン酸ジヒドラジドとN−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−N−アミノオキサミドである。
【0010】
成分D)は1又は2個のイソシアネート反応性基、特にヒドロキシル基を含む1種以上の非イオン/親水性化合物から選択される。これらの化合物のポリエーテル鎖の少なくとも80重量%、好ましくは100重量%はエチレンオキシド単位を含む。他のアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシドが挙げられる。利用可能な非イオン/親水性構造化合物としては、350〜3000の分子量をもつ単官能性ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類(例えばBreox 350、550、750,BP Chemicals)が挙げられる。好適分子量は600〜900である。
成分E)は、アニオン又は潜在アニオン基を含み、少なくとも1個のイソシアネート反応性基をもつ1種以上の化合物から選択される。これらの化合物は少なくとも1個、好ましくは1もしくは2個のヒドロキシル基を含むカルボン酸、又はこれらのヒドロキシカルボン酸の塩が好ましい。利用可能な酸としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)アルカンカルボン酸、例えばジメチロール酢酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシ琥珀酸、ヒドロキシピバル酸及びこれらの酸の混合物が挙げられる。ジメチロールプロピオン酸及び/又はヒドロキシピバル酸を成分E)として使用するのが好ましい。
遊離酸基、特にカルボキシル基は潜在アニオン基とみなされ、これらの酸を塩基で中和することにより得られる塩の基、特にカルボン酸塩基はアニオン基とみなされる。
【0011】
成分F)は60〜300の分子量をもち、アミノ基を含む2、3及び/又は4官能性物質から選択される。例えば、エチレンジアミン、1,2−及び1,3−ジアミノプロパン、1,3−、1,4−及び1,6−ジアミノヘキサン、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチロールプロパン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4−及び2,6−ジアミノ−1−メチルシクロヘキサン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、1,4−ビス−(2−アミノプロプ−2−イル)シクロヘキサン並びにこれらの化合物の混合物が挙げられる。
成分G)は62〜250の分子量をもち、ヒドロキシル基を含む2、3及び/又は4官能性物質を含み、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、異性ヘキサントリオール類、ペンタエリトリトール及びこれらの化合物の混合物が挙げられる。
【0012】
本発明によるブロックトポリイソシアネートは、出発成分A)〜G)から多段階で製造され、反応体の量は成分A)のイソシアネート基と成分B)、C)、D)、E)、F)及びG)のイソシアネート反応性基の当量比が1:0.8〜1:1.2、好ましくは1:0.9〜1:1となるように選択される。
成分E)のカルボキシル基、ポリウレタンの溶液又は分散液を調製するために使用される水又は溶剤、及びカルボキシル基を中和させるために使用される中和剤はこの当量比の計算に含まれない。
成分C)は、ブロックトポリイソシアネートが0.1〜3.0重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%の化学結合ヒドラジド基(NH−NH、分子量=30として計算)を含むような量で使用される。
成分D)は、ブロックトポリイソシアネートが末端又は側鎖ポリエーテル鎖に組み込まれた0.1〜5.0重量%、好ましくは0.5〜3.0重量%のエチレンオキシド単位(C24 O、分子量=44として計算)を含むような量で使用される。
成分E)の量は、ブロックトポリイソシアネートが0.1〜1.5重量%、好ましくは0.5〜0.7重量%の化学的に組み込まれたカルボキシル基(COOH、分子量=45として計算)を含み、エチレンオキシド単位とカルボキシル基の合計量がブロックトポリイソシアネートの水中溶解性又は分散性を確保するために十分となるように計算される。
【0013】
本発明によるブロックトポリイソシアネートは2種類の好適態様があり、一方は、ブロックトポリイソシアネートが65〜85重量%有機溶剤溶液として存在し、塗料組成物の製造時まで水に分散しない高固形分態様であり、他方は、ブロックトポリイソシアネートが20〜50重量%の樹脂固形分で水に溶解又は分散した水性態様である。
どちらの態様でも、まず第1処理段階で親水性成分D)及びE)を導入し、80〜100℃、好ましくは90℃の温度でポリイソシアネート成分A)と反応させて親水性物質をポリイソシアネートに化学的に組み込む。次いで反応混合物を70℃まで冷却し、理論計算NCO含量に達するまでブロッキング剤B)を加える。反応中の温度は80℃を越えるべきでない。
安定化成分C)と連鎖延長剤F)及びG)は溶解又は分散工程の前に加えてもよいし、その間に加えてもよい。
高固形分態様では、成分C)、F)及びG)は有機溶剤に溶解して反応混合物に加えるのが好ましい。有機溶剤の量は、65〜85重量%溶液が得られるように計算される。利用可能な溶剤としては、N−メチルピロリドン、メトキシプロピルアセテート及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0014】
水性態様では、成分C)、F)及びG)を水に溶解し、十分に撹拌しながらこの溶液に反応混合物を加えるのが好ましい。分散媒体として使用する水の量は、20〜50重量%、好ましくは30〜40重量%の樹脂固形分をもつ分散液が得られるように計算される。
カルボキシル基を少なくとも部分的に中和させるために必要な塩基は、分散段階前、その間、又はその後のいずれに加えてもよい。利用可能な塩基としては、アンモニア、N−メチルモルホリン、ジメチルイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリプロピルアミン、エタノール、トリイソプロパノールアミン、2−ジエチルアミノ−2−メチル−1−プロパノールと、前記及び/又は他の中和剤の混合物が挙げられる。水酸化ナトリウム、水酸化リチウム及び水酸化カリウムも利用できるが、中和剤としてはあまり好ましくない。ジメチルエタノールアミンが好適中和剤である。
【0015】
本発明による水性又は水希釈性ブロックトポリイソシアネートは、焼付ラッカーの製造で有機ポリヒドロキシル化合物に有用な架橋樹脂である。これらのポリイソシアネートは、この目的で従来使用されているブロックトポリイソシアネートに代用することができ、130〜150℃の比較的低い焼付温度で熱黄変の実質的に少ないポリウレタン塗料を提供することを特徴とする。
利用可能なポリヒドロキシル化合物と、このような焼付ラッカーの製造及び使用に関する他の詳細については関連文献を参照されたい。本発明の生成物の特に好適な用途は、特に自動車の多層塗膜のトップコートとして使用される焼付透明ポリウレタン塗料組成物の架橋剤としての使用である。本発明のブロックトポリイソシアネートの共反応体として使用されるこれらのポリヒドロキシル化合物は、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール及びその混合物をベースとする公知水性又は水希釈性結合剤である。
【実施例】
【0016】
下記実施例に記載する全ての部及び百分率は、特に指定しない限り重量に基づき、全性質は分散液又は溶液の重量に基づく。
下記実施例では、DE−A 4,427,227(カナダ出願公開第2,154,980号)に記載の方法に従って調製したポリエステル/ポリアクリレート分散液を使用した。ポリエステル/ポリアクリレート分散液の調製については、DE−A 4,427,227と同一手順に従う。
撹拌機、温度計、加熱手段及び蒸留ヘッドを備える装置にトリメチロールプロパン1710g、ネオペンチルグリコール5310g、無水フタル酸5524g、無水マレイン酸332g及びイソフタル酸2121gを配量し、混合物を1時間かけて140℃まで加熱する。次いで6時間かけて200℃まで加熱し、23℃でのMPA中55%固形分における流出粘度(DIN4カップ中)が52〜55sまで増加するまで、水を除去しながら200℃で濃縮する。得られる生成物(DE−A 4,427,227のポリエステルII)は(DIN4カップ中)52.5sの流出粘度、6.7mgKOH/g物質の酸価、及び140mgKOH/g物質のOH価をもつ。
【0017】
撹拌機、温度計、加熱手段及び冷却器を備える装置に上記ポリエステルII500gとブチルグリコール108gを配量し、混合物を120℃まで加熱する。次いでアクリル酸ブチル430g、メタクリル酸メチル240g、メタクリル酸ヒドロキシエチル300g及びn−ドデシルメルカプタン10gの混合物を2時間かけて加えた後、アクリル酸ブチル215g、メタクリル酸メチル120g、メタクリル酸ヒドロキシエチル150g、アクリル酸45g及びn−ドデシルメルカプタン5gの混合物を1時間かけて加える。モノマー混合物と同時にペル−2−エチルヘキサン酸第3ブチル(炭化水素混合物中70%固形分)53.6gを4時間かけて加える。次いで過酸化物の添加が完了したら混合物を120℃で2時間撹拌し、次いで100℃まで冷却する。ジメチルエタノールアミン48.9gを加え、混合物を均質化する。次いで水2829.9gに分散すると、固形分40.6%、粘度2,400mPas(23℃)、OH価153.2mgKOH/g固体樹脂、酸価21.1mgKOH/g固体樹脂、OH含量1.9%(分散液に基づく)、当量894.70gの特性データをもつ生成物が得られる。
【0018】
実施例1(本発明による)
本発明による水性ブロックトポリイソシアネートの製造
組成
アロファネート基とイソシアヌレート基を含み、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(Desmodur W,Bayer AG)をベースとし、EP−A 649 866に記載の方法に従って製造され、70%メトキシプロピルアセテート/キシレン(1:1)溶液として存在するラッカーポリイソシアネート486.67g(1.00当量)。Desmodur W−アロファネート/三量体の製造については、EP−A 649 866の記載と同一の手順に従う。使用した触媒は水酸化N,N,N−トリメチル−N−ベンジルアンモニウムの4.4重量%n−ブタノール溶液(EP−A 649 866の実施例1の触媒溶液)である。1167gのDesmodur Wにn−ブタノール33gを加え、混合物を90℃で1時間撹拌する。ウレタン化が完了したら、触媒溶液約4gを90℃で加える。反応混合物のNCO含量が25.6%に達したら、リン酸ジブチルの25%Desmodur W溶液0.3gを加えて反応を停止する。過剰のモノマーDesmodur Wが存在する場合には薄層蒸留により除去する。単離した固体樹脂をMPA/キシレン(1:1)に濃度70%まで溶解すると、固形分70%、NCO含量8.63%、粘度300mPas(23℃)、モノマーDesmodur W 0.20%の特性データをもつ生成物が得られる。
平均分子量750をもつ単官能性ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(モノヒドロキシポリエーテル)(Carbowax 750,Union Carbide)75.00g(0.10当量)。
ブタノンオキシム69.70g(0.80当量)。
イソホロンジアミン(IPDA)2.55g(0.03当量)。
アジピン酸ジヒドラジド(ASDH)2.61g(0.03当量)。
脱イオン水764.80g。
【0019】
方法
モノヒドロキシポリエーテル75.00gを標準撹拌装置に導入し、90℃まで加熱した。ラッカーポリイソシアネート486.67gを加えて迅速に撹拌した。約30分以内に6.28%のNCO含量に達した(理論NCO含量6.73%)。次に反応混合物を70℃まで冷却し、発熱反応により温度が80℃を越えないように約30分以内にブタノンオキシム69.70gを加えた。NCO含量が0.25%に達したら(理論NCO含量0.66%)、反応混合物を70℃まで冷却し、約30分以内に脱イオン水(約23℃)764.80g中のIPDA2.55gとASDH2.61gの溶液に十分撹拌しながら分散した。固形分35%とドレン時間14秒(DIN 4/23℃)をもつ乳状分散液が得られた。(ブロックトイソシアネート基に基づく)分散液のNCO当量は1750.00gであった。ブロックトポリイソシアネートは、イソシアヌレート基含量4.86%(C333 、分子量=126として計算)、ブロックトイソシアネート基含量6.85%(NCO、分子量=42として計算)、ヒドラジド基含量0.18%(NH−NH、分子量=30として計算)の性質を有していた。
【0020】
実施例2(本発明による)
本発明による水性ブロックトポリイソシアネートの製造
組成
イソシアヌレート基を含み、IPDIをベースとし、EP−A 3 765(参考資料として本明細書の一部とする米国特許第4,288,586号)に記載の方法に従って製造され、70%ソルベントナフサ100溶液として存在するラッカーポリイソシアネート355.93g(100当量)。IPDI三量体の製造については、EP−A 3 765の記載と同一の手順に従う。使用した触媒は水酸化2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムの6重量%2−エチルヘキサノール/メタノール溶液(EP−A 3 765の触媒溶液I−a)である。NCO含量が30%に達するまで三量化しながらIPDI 4000gを60〜80℃で触媒溶液約25gと反応させる。次いで混合物を約100℃で30分間撹拌した後、170℃/0.1mbarで薄層蒸留する。単離した固体樹脂を濃度70%までSN100に溶解すると、固形分70%、NCO含量11.80%、粘度2,200mPas(23℃)、モノマーIPDI 0.15%の特性データをもつ生成物が得られる。
実施例1からのモノヒドロキシポリエーテル75.00g(0.10当量)。
ブタノンオキシム69.70g(0.80当量)。
IPDA2.55g(0.03当量)。
ASDH2.61g(0.03当量)。
脱イオン水622.38g。
【0021】
方法
モノヒドロキシポリエーテル75.00gを標準撹拌装置に導入し、90℃まで加熱した。ラッカーポリイソシアネート355.93gを加えて迅速に撹拌した。約30分以内に8.61%のNCO含量に達した(理論NCO含量8.77%)。次に反応混合物を70℃まで冷却し、発熱反応により温度が80℃を越えないように約30分以内にブタノンオキシム69.70gを加えた。NCO含量が0.54%に達したら(理論NCO含量0.84%)、反応混合物を70℃まで冷却し、約30分以内に脱イオン水(約23℃)622.38g中のIPDA2.55gとASDH2.61gの溶液に十分撹拌しながら分散した。固形分35%とドレン時間17秒(DIN 4/23℃)をもつ乳状分散液が得られた。(ブロックトイソシアネート基に基づく)分散液のNCO当量は1409.40gであった。ブロックトポリイソシアネートは、イソシアヌレート基含量13.36%(C333 、分子量=126として計算)、ブロックトイソシアネート基含量8.42%(NCO、分子量=42として計算)、ヒドラジド基含量0.23%(NH−NH、分子量=30として計算)の性質を有していた。
【0022】
実施例3(本発明による)
本発明による水希釈性ブロックトポリイソシアネートの製造
組成
実施例2のラッカーポリイソシアネート355.93g(1.00当量)。
実施例1のモノヒドロキシポリエーテル75.00g(0.10当量)。
3,5−ジメチルピラゾール76.90g(0.80当量)。
IPDA5.11g(0.06当量)。
N−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−N−アミノオキサミド(Luchem HA−R 100(登録商標),Elf Atochem)4.84g(0.04当量)。
N−メチルピロリドン(NMP)63.96g。
【0023】
方法
モノヒドロキシポリエーテル75.00gを標準撹拌装置に導入し、90℃まで加熱した。ラッカーポリイソシアネート355.93gを加えて迅速に撹拌した。約30分以内に8.61%のNCO含量に達した(理論NCO含量8.77%)。次に反応混合物を70℃まで冷却し、発熱反応により温度が80℃を越えないように約30分以内にジメチルピラゾール76.90gを加えた。NCO含量が0.54%に達したら(理論NCO含量0.83%)、NMP69.36g中のIPDI 5.11gとアミド安定剤4.84gの溶液を一度に加え、反応混合物を70℃で約30分間撹拌した。この時間後、IR分光分析で溶液中にNCO基は検出されなかったので、バッチを室温まで冷却した。固形分70%と粘度31,000mPas(23℃)をもつほぼ無色の溶液が得られた。(ブロックトイソシアネート基に基づく)溶液のNCO当量は734.27gであった。ブロックトポリイソシアネートは、イソシアヌレート基含量12.97%(C333 、分子量=126として計算)、ブロックトイソシアネート基含量8.18%(NCO、分子量=42として計算)、ヒドラジド基含量0.29%(NH−NH、分子量=30として計算)の性質を有していた。
【0024】
実施例4(比較例)
HMDIをベースとし、EP−A 576,952(参考資料として本明細書の一部とする米国特許第5,294,665号)の実施例2に従って製造し、固形分35%と粘度5000mPas(23℃)をもつ水性ブロックトポリイソシアネートを比較として使用した。(ブロックトイソシアネート基に基づく)NCO当量は2625.00gであった。ブロックトポリイソシアネートは、イソシアヌレート基含量0%(C333 、分子量=126として計算)、ブロックトイソシアネート基含量4.57%(NCO、分子量=42として計算)、ヒドラジド基含量0%(NH−NH、分子量=30として計算)の性質を有していた。
【0025】
実施例5(比較例)
三量化HDI及びHMDIの混合物をベースとし、EP−A 566,953(参考資料として本明細書の一部とする米国特許第5,455,297号)の実施例2に従って製造し、固形分40%と粘度25,000mPas(23℃)をもつ水性ブロックトポリイソシアネートを比較として使用した。(ブロックトイソシアネート基に基づく)NCO当量は954.55gであった。ブロックトポリイソシアネートは、イソシアヌレート基含量11.25%(C333 、分子量=126として計算)、ブロックトイソシアネート基含量11.00%(NCO、分子量=42として計算)、ヒドラジド基含量0%(NH−NH、分子量=30として計算)の性質を有していた。
【0026】
実施例6(比較例)
実施例1に従って製造し、ヒドラジド基で安定化させるがイソシアヌレート基を含まない水性ブロックトポリイソシアネート(ビウレット化HDI)を比較として使用した。
組成
EP−A 150 769(参考資料として本明細書の一部とする米国特許第4,613,686号)に記載の方法に従って製造し、NCO含量22.95%と粘度2750mPas(23℃)をもつラッカーポリイソシアネート183.00g(1.00当量)。
実施例1のモノヒドロキシポリエーテル75.00g(0.10当量)。
ブタノンオキシム69.70g(0.80当量)。
IPDA2.55g(0.03当量)。
ASDH2.61g(0.03当量)。
脱イオン水618.00g。
【0027】
方法
モノヒドロキシポリエーテル75.00gを標準撹拌装置に導入し、90℃まで加熱した。ラッカーポリイソシアネート183.00gを加えて迅速に撹拌した。約30分以内に14.48%のNCO含量に達した(理論NCO含量14.65%)。次に反応混合物を70℃まで冷却し、発熱反応により温度が80℃を越えないように約30分以内にブタノンオキシム69.70gを加えた。NCO含量が0.93%に達したら(理論NCO含量1.28%)、反応混合物を70℃まで冷却し、約30分以内に脱イオン水(約23℃)618.00g中のIPDA2.55gとASDH2.61gの溶液に十分撹拌しながら分散した。固形分35%とドレン時間14秒(DIN 4/23℃)をもつ乳状分散液が得られた。(ブロックトイソシアネート基に基づく)分散液のNCO当量は1189.80gであった。ブロックトポリイソシアネートは、イソシアヌレート基含量0%(C333 、分子量=126として計算)、ブロックトイソシアネート基含量10.09%(NCO、分子量=42として計算)、ヒドラジド基含量0.27%(NH−NH、分子量=30として計算)の性質を有していた。
【0028】
実施例7
上記ポリエステル/ポリアクリレート分散液(ポリオール成分)と実施例1〜6のブロックト架橋剤から透明塗料組成物を調製した。次にこれらの組成物から塗膜を形成し、熱黄変を試験した。
1.透明塗料組成物の調製
実施例1〜6のブロックトポリイソシアネートを1:1のBNCO:OH当量比でポリオール成分と混合し、下記触媒を添加することにより透明塗料組成物を調製した。
【0029】
【表1】

【0030】
2.塗布及び熱黄変
慣用市販白色ベースラッカー(Spies & Hecker,Cologne)を塗布した金属試験シートに約120〜150μmの湿潤膜厚で透明塗料組成物を塗布した。金属試験シートを乾燥室で140℃で30分間焼付した。所謂CIE−LAB法を使用して第1回目の測色を実施した。こうして測定した正のb値が大きければ大きいほど、透明塗料の黄変度は高い。次に160℃で30分間過焼付を行った。次にCIE−LAB色系(DIN 6174)を使用して黄変増加即ちΔb値を測定した。この値は非黄変透明ラッカーではできるだけ0に近いことが望ましい。
透明ラッカーA〜Fの結果を下表に要約する。
【0031】
【表2】

【0032】
表に示す結果から下記の点が明らかである。
1)従来技術のブロックトポリイソシアネートから調製し、イソシアヌレート基もヒドラジド基も含まない透明塗料Dは、最大の黄変を示した。黄色度値の合計b+Δbは12.3であった。
2)従来技術のブロックトポリイソシアネートから調製し、イソシアヌレート基を含むがヒドラジド基は含まない透明塗料Eは、黄変の僅かな改善を示した。黄色度値の合計b+Δbは9.1であった。
3)ブロックトポリイソシアネートから調製し、ヒドラジド基を含むがイソシアヌレート基は含まない透明塗料Fは、透明塗料D及びEより黄変度が低かったが、透明塗料A〜Cのレベルにははるかに及ばなかった。黄色度値の合計は3.1であった。
4)これに対して、ブロックトポリイソシアネートから調製し、イソシアヌレート基とヒドラジド基の両者を含む透明塗料A、B及びCは黄変の有意改善を示した。黄色度値の合計b+Δbは、透明塗料Aでは1.5、透明塗料Bでは1.0、最大量のイソシアヌレート基とヒドラジド基を含むブロックトポリイソシアネートから調製した透明塗料Cでは0.8であった。
【0033】
以上、例示の目的で本発明を詳細に説明したが、これらの説明は単に例示の目的に過ぎず、発明の精神及び範囲から逸脱せずに当業者には種々の変形が可能であり、本発明は特許請求の範囲のみに制限されるものと理解すべきである。
【0034】
以下、本発明の実施態様を要約すれば次の通りである:
1. a)2〜30重量%のイソシアヌレート基含量(C333 、分子量=126として計算)をもち、分子量140〜350の1種以上のジイソシアネートから製造したポリイソシアネート40〜80重量%と、
b)イソシアネート付加反応の目的のために単官能性である1種以上の可逆性イソシアネート基ブロッキング剤5〜30重量%、
c)イソシアネート付加反応の目的のために単官能性又は2官能性であり、1〜2個のヒドラジド基と70〜300の分子量をもつ1種以上の安定化成分0.5〜15重量%、
d)イソシアネート付加反応の目的のために単官能性又は2官能性であり、少なくとも1個の側鎖又は末端親水性ポリエーテル鎖を含む少なくとも1種の化合物を含む非イオン/親水性構造成分5〜30重量%、
e)少なくとも1個のイソシアネート反応性基と少なくとも1個の塩形成可能基をもつ1種以上の化合物を含み、場合により少なくとも部分中和形態で存在し得るアニオン又は潜在アニオン構造成分0〜15重量%、
f)2〜3個のアミノ基と60〜300の分子量をもつ1種以上の(シクロ)脂肪族ポリアミン0〜15重量%、及び
g)2〜4個のヒドロキシル基と62〜250の分子量をもつ1種以上の多価アルコール0〜15重量%
との反応生成物をベースとする水性又は水希釈性ブロックトポリイソシアネートであって、a)〜g)の百分率の合計が成分a〜g)の重量を基にして100であり、これらの成分の量が、
i)イソシアヌレート基の含量(C333 、分子量=126として計算)が少なくとも2重量%となり、
ii)ブロックトイソシアネート基の含量(NCO、分子量=42として計算)が5〜11重量%となり、
iii)化学結合ヒドラジド基の含量(NH−NH、分子量=30として計算)が0.1〜3.0重量%となるように選択される水性又は水希釈性ブロックトポリイソシアネート。
【0035】
2. 上記第1項に記載の水性又は水希釈性ブロックトポリイソシアネートと、水溶性又は水分散性ポリヒドロキシル化合物を含む水性焼付組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)イソシアヌレート基を含む(シクロ)脂肪族ポリイソシアネート成分100当量%を、
B)1種以上の可逆性単官能性イソシアネート基ブロッキング剤60〜85当量%、
C)ヒドラジド基を含む1種以上の安定化成分1〜20当量%、
D)エチレンオキシド単位を含む非イオン/親水性構造成分1〜25当量%、
E)カルボキシル基を含むアニオン又は潜在アニオン構造成分0〜25当量%、
F)1種以上の(シクロ)脂肪族ポリアミン0〜15当量%、及び
G)1種以上の多価アルコール0〜15当量%
と反応させることにより製造され、反応体の量は、成分A)のイソシアネート基と成分B)、C)、D)、E)、F)及びG)のイソシアネート反応性基の当量比が1:0.8〜1:1.2となるように選択される水性又は水希釈性ブロックトポリイソシアネート。
【請求項2】
請求項1に記載の水性又は水希釈性ブロックトポリイソシアネートと、水溶性又は水分散性ポリヒドロキシル化合物を含む水性焼付組成物。

【公開番号】特開2008−101220(P2008−101220A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292764(P2007−292764)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【分割の表示】特願平9−111823の分割
【原出願日】平成9年4月15日(1997.4.15)
【出願人】(591063187)バイエル アクチェンゲゼルシャフト (67)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen,Germany
【Fターム(参考)】