説明

水性塗料用樹脂組成物の製造方法

【課題】顔料分散性、耐食性および耐水性に優れ、有機溶剤の含有量がゼロ又は極めて少量であっても、水分散性に優れた水性塗料用樹脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)、下記一般式(I)


(nは1〜10、Rは炭素数2〜18のアルキレン基を示す。)
で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)およびその他のビニル単量体(a2)を塊状重合させて得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)と、塩基性化合物と、水を用い、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)に含有されているカルボキシル基の一部又は全部の塩基性化合物による中和と、この中和で得られるビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)の水への分散を行う水性塗料用樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料用樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗料は、各種製品の基材の保護や美感の向上等を目的として使用されるものである。なかでも、基材の保護は、塗料の重要な役割であることから、塗料には、各種用途に応じた様々な物性を有する塗膜を形成できることが求められている。例えば、自動車部品等の金属製品に塗装する塗料には、水等により、金属基材が腐食するのを防止する為に、耐水性及び耐食性に優れた塗膜を形成できることが求められている。
【0003】
また、自然環境保護の観点から、有機溶剤を媒体とする塗料用樹脂から、環境負荷のない水を媒体とする水性塗料用樹脂への変換が進んでいる。この水性塗料用樹脂の中でも、シックハウス、シックスクール等の問題から、有機溶剤量の少ない、有機溶剤の使用量が0〜3重量%の低有機溶剤量型水性塗料用樹脂が求められている。
【0004】
耐食性に優れた塗膜を形成できる水性塗料用樹脂としては、水性ビニル変性エポキシエステル樹脂が、塗料中の溶剤量を低減し、且つ金属基材との密着性に優れ、金属基材の腐食を防止できることが知られている(例えば、参考文献1参照。)。
【0005】
しかし、従来の水性ビニル変性エポキシエステル樹脂は、エポキシ樹脂と不飽和脂肪酸を反応後、有機溶剤に溶解し、親水性官能基を有するビニル単量体と溶液重合させ、水に分散させているため、有機溶剤を5〜50重量%含有し、求められている有機溶剤含有量0〜3重量%に達していない。
【0006】
この水性ビニル変性エポキシエステル樹脂の低溶剤化として、得られたエポキシエステルを常圧下、沸点150℃以下の有機溶剤に溶解後、親水性官能基を含むビニル単量体を重合し、水添加後に減圧除去する方法がある。
【0007】
この方法によれば、水性塗料用樹脂の有機溶剤含有量を低減できるが、沸点90℃以下の有機溶剤を使用した場合、水分散後の減圧除去は容易であるものの、ビニル単量体のエポキシエステルへのグラフト重合が不十分であることが起因して、中和、水添加後に得られる水分散粒子が粗大化し、塗料化した場合の顔料分散性が悪く、塗膜の耐水性、耐食性不良などが起こりやすい。沸点110〜150℃の有機溶剤を使用した場合は、水分散後の水分散後の減圧除去に長時間を要し、生産効率が悪い。また、完全に除去できない場合は、有機溶剤臭による悪臭という問題を有していた。
【0008】
また、有機溶剤含有量の低い水性塗料用樹脂としては、乳化重合より得られるアクリルエマルジョンが挙げられるが、乳化剤が水分散粒子表面に局在化しているため、その塗膜は透湿しやすいこと、高分子量化し易く基材への付着が劣ること、機械的安定性が劣るため、樹脂による顔料分散でなく、耐食性に負因子である顔料分散剤を用いたミルベースを使用しなければならないこと等から低溶剤型ではあるものの、良好な耐食性を示す塗膜が得られていない。
【0009】
以上のように、顔料分散性、耐食性および耐水性に優れた塗膜を形成でき、且つ、有機溶剤等の使用量が0〜3重量%と極めて少なくても水分散安定性に優れた樹脂組成物が各種検討されているものの、産業界から求められているレベルの水性塗料用樹脂組成物や水性塗料は、未だ見出されていない。
【0010】
【特許文献1】特開2003−119245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、顔料分散性、耐食性および耐水性に優れ、有機溶剤の含有量がゼロ又は極めて少量であっても、水分散性に優れた水性塗料用樹脂組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)の有する不飽和結合に、下記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)およびその他のビニル単量体(a2)を塊状重合させて得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)と、塩基性化合物と、水を用い、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)に含有されているカルボキシル基の一部又は全部の塩基性化合物による中和と、この中和で得られるビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)の水への分散を行うことにより、顔料分散性、耐食性および耐水性に優れ、有機溶剤の含有量がゼロ又は極めて少量であっても、水分散性に優れた水性塗料用樹脂組成物を容易に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)、下記一般式(I)
【0014】
【化1】

(nは1〜10、Rは炭素数2〜18のアルキレン基を示す。)
で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)およびその他のビニル単量体(a2)を塊状重合させて得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)と、塩基性化合物と、水を用い、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)に含有されているカルボキシル基の一部又は全部の塩基性化合物による中和と、この中和で得られるビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)の水への分散を行うことを特徴とする水性塗料用樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水性塗料用樹脂組成物の製造方法で得られる水性塗料用樹脂組成物は、水性塗料とした場合に、有機溶剤の含有量がゼロ又は極めて少量であっても顔料およびビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散安定性に優れ、耐水性および耐食性に優れた塗膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず第一に、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)について説明する。
【0017】
前記不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)としては、例えば、エポキシ樹脂の有するエポキシ基、又はエポキシ基および水酸基と、不飽和脂肪酸の有するカルボキシル基とを反応させて得られる不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂が挙げられる。
【0018】
不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂の調製に用いる前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ポリエチレングリコール系エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン樹脂などが挙げられ、これらを単独又は2種以上併用できる。前記エポキシ樹脂のなかでも、ビスフェノール型エポキシ樹脂を使用することが、耐食性に優れる塗膜を形成できる水性塗料が得られることから好ましい。
【0019】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂が挙げられ、なかでもビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用することが、耐食性に優れる塗膜を形成できる水性塗料が得られることから好ましい。
【0020】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロン850、1050、3050、4050、7050、HM−091、HM−101(以上、何れも大日本インキ化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0021】
前記ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロン830(大日本インキ化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0022】
前記脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、ユノックス201、289(以上、何れも米国ユニオンカーバイド社製)等が挙げられる。
【0023】
前記フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンN−740、775(以上、何れも大日本インキ化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0024】
前記ポリエチレングリコール系エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート812(オランダ国シェル社製)、エポライト40E、200E、400E(以上、何れも株式会社共栄社製)等が挙げられる。
【0025】
前記エポキシ化ポリブタジエン樹脂としては、例えば、BF−1000(アデカアーガス社製)等が挙げられる。
【0026】
前記エポキシ樹脂としては、常温での造膜性に優れる水性塗料が得られることから、400〜1,000(g/当量)の範囲のエポキシ当量を有するものを使用することが好ましく、400〜600の範囲のエポキシ当量を有するものを使用することがより好ましい。
【0027】
前記エポキシ樹脂由来の構造は、本発明で使用するビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)中に15〜75重量%の範囲内で含まれることが好ましく、なかでも25〜60重量%の範囲内で含まれることがより好ましい。かかる範囲に調整することで、造膜性に優れ、耐食性に優れた塗膜を形成できる。
【0028】
前記エポキシ樹脂の有するエポキシ基や水酸基と反応する不飽和脂肪酸について説明する。
【0029】
前記エポキシ樹脂と反応する不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、リシノール酸等や、桐油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、トール油脂肪酸、綿実油脂肪酸、大豆油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、米糠油脂肪酸等の脂肪酸などが挙げられる。なかでも、ヨウ素価120〜200の大豆油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸などの半乾性油、乾性油を使用することが、後述するビニル単量体を、不飽和脂肪酸の有する不飽和結合に効率よくグラフト重合させることができるため好ましい。
【0030】
前記不飽和脂肪酸に由来する構造は、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)中に15〜50重量%の範囲内で含まれていることが好ましく、なかでも15〜40重量%の範囲内で含まれていることがより好ましく、20〜35重量%の範囲内で含まれることが更に好ましい。かかる範囲に調整することで、常温における塗膜の乾燥性、顔料分散性および得られる塗膜の耐食性を向上させることができる。
【0031】
前記不飽和脂肪酸の使用の際には、本発明の目的を達成する範囲内でその他のカルボン酸を併用することができる。
【0032】
前記その他のカルボン酸としては、例えば、オクチル酸、ウラリル酸、ステアリン酸等や、水添ヤシ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の飽和脂肪酸や、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、テトラクロル(無水)フタル酸、1,1−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、(無水)ヘット酸、(無水)ハイミック酸〔日立化成化学工業(株)の登録商標〕、水添(無水)トリメリット酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オクテン酸、イソノナン酸、安息香酸、p−tert−安息香酸、イソオクタン酸、イソデカン酸、シクロヘキサン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0033】
前記不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)は、例えば、前記エポキシ樹脂と前記不飽和脂肪酸とを、必要に応じてエステル化触媒の存在下で、150〜250℃に加熱して脱水し、前記エポキシ樹脂の有するエポキシ基や2級の水酸基と前記不飽和脂肪酸の有するカルボキシル基とをエステル化反応させることで製造できる。
【0034】
前記不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)を製造する際に、エーテル化反応などの副反応を抑制したい場合は、例えば、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミンなどを用いることが好ましい。
【0035】
なお、前記エポキシ樹脂と前記不飽和脂肪酸とを反応させる際には、多価アルコールを併用することができる。
【0036】
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0037】
前記多価アルコールを使用する場合は、前記エポキシ樹脂と前記不飽和脂肪酸と前記多価アルコールとを混合しエステル化反応させることで、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂を製造することができる。
【0038】
得られた不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)の重量平均分子量としては、塊状重合時のゲル化を抑制でき、かつ、水分散安定性に優れる水性塗料用樹脂組成物が得られることから、3,000〜15,000であることが好ましい。
【0039】
また、前記不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)の油長は、塊状重合時に高粘度化、水分散樹脂粒子の粗大化、起泡性の高まり等の問題が発生しにくいことから、15〜60重量%であることが好ましい。
【0040】
第二に、前記不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)およびその他のビニル単量体(a2)を塊状重合させて得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)について説明する。
【0041】
前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)としては、例えば、2−メタクリロキシエチルサクシニクアシッド、2−メタクリロキシエチルヘキサハイドロフタレート、2−メタクリロキシエチルグルタレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンメタクリレート等が挙げられる。
【0042】
前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)は、例えば、(a)ヒドロキシカルボン酸とカルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とを反応させる方法、(b)カルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とε−カプロラクトンとを酸触媒の存在下で反応させる方法等により製造できるが、副生成物を抑制できる等の観点から(b)の方法で製造することが好ましい。
【0043】
前記(b)の方法は、例えば、カルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とε−カプロラクトンとを、酸触媒の存在下で混合、撹拌し、40〜150℃で反応させる方法が挙げられる。
【0044】
前記(b)の方法で使用できるカルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられる。酸触媒としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、塩化アルミニウム、塩化第二錫等が挙げられる。酸性触媒は、前記カルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物100重量部に対して、1〜20重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0045】
前記方法で得られる、一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)は、得られる塗膜の乾燥性が良好なことから、1分子中にε−カプロラクトン由来の構造単位を平均1〜10個の範囲で有することが好ましく、平均1〜5個の範囲で有することがより好ましい。具体的には、1分子中のε−カプロラクトン単位の平均数が2である、商品名アロニクスM−5300〔東亜合成化学工業(株)〕が挙げられる。
【0046】
前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)中における前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造の重量割合は、0.5〜30重量%であることが好ましく、2〜17重量%であることがより好ましい。この範囲であれば、ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)と顔料の分散安定性に優れ、良好な耐食性を有する水性塗料用樹脂組成物を得ることができことと共に、塊状重合時のゲル化を抑制することができる。
【0047】
前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)は、前記ビニル単量体(a1)および(a2)からなるビニル重合体部分に、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造であって、一部又は全部が塩基性化合物で中和されている構造の他に、下記一般式(II)
【0048】
【化2】

(mは3〜90、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基である。)
で示されるポリアルキレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
【0049】
前記一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造は、前記不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)の有する不飽和結合の一部又は全部に、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)およびその他のビニル単量体(a2)を重合させる際に、前記その他のビニル単量体(a2)の一部又は全部として一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造を有するビニル単量体(a21)を用いることで、前記ビニル重合体部分に導入することができる。
【0050】
前記一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造を有するビニル単量体(a21)としては、例えば、水酸基含有ビニル単量体にエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるものが挙げられ、具体的には、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
前記一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造は、ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)と顔料の分散安定性に優れ、耐食性の良好な塗膜が得られることから、前記一般式(II)中のmが10〜100の範囲内であることが好ましく、10〜30の範囲内であることがより好ましい。
【0052】
前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)中における前記一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造の重量割合は、0.5〜10重量%の範囲内が好ましく、2〜5重量%がより好ましい。かかる範囲内に調整することで、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A)と顔料の分散安定性に優れ、耐食性の良好な塗膜を形成できる水性塗料用樹脂組成物を得ることができるとともに、塊状重合時のゲル化を抑制することができる。
【0053】
前記その他のビニル単量体(a2)としては、前記一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造を有するビニル単量体(a21)以外に、例えば、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、クロトン酸、ビニル酢酸、アジピン酸モノビニル、セバシン酸モノビニル、イタコン酸モノメチル、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、フタル酸モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、ヘキサヒドロフタル酸モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、ソルビン酸等の不飽和二重結合を有するモノカルボン酸類;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和二重結合を有するジカルボン酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ドコサニル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;
【0054】
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のω−アルコキシアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の3級アミド基含有ビニル系単量体類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を含有する(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の二級アミノ基含有ビニル系単量体;ビニルアセトアセテート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等の活性メチレン基を有するビニル単量体;ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニル系単量体;トリメチルシリル(メタ)アクリレート等等のシリルエステル基を含有するビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を含有するビニル系単量体;2−イソシアナートプロペン、2−イソシアナートエチルビニルエーテル、2−イソシアナートエチルメタアクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアネート基を含有するビニル系単量体等が挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0055】
また、前記その他のビニル単量体(a2)としては、例えば、前記水酸基を有するビニル単量体とε−カプロラクトンとを付加反応させたものも使用することができる。
【0056】
前記塊状重合による前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)の合成は、通常、ラジカル重合開始剤の存在下、合成原料である不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)と、合成により得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)がいずれも溶融して攪拌可能となる温度で行う。前記ラジカル重合開始剤としては、各種のラジカル重合開始剤が使用できるが、なかでも未反応のビニル単量体(a1)や(a2)が残存しにくいことから、1時間半減期が100℃以上のラジカル重合開始剤が好ましい。
【0057】
さらに、前記ラジカル重合開始剤としては、なかでも未反応のビニル単量体(a1)や(a2)が残存しにくく、得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)の中和、水分散後の樹脂粒子のが粗大化して水分散安定性が低下するのを防止できることから、架橋効率ε〔n−ペンタデカン中でラジカル重合開始剤を15分半減期温度で分解させた時に生成するn−ペンタデカンダイマーのモル数を測定し、ラジカル重合開始剤1モルに対する生成割合を算出したもの(モル%)〕が30モル%以上の水素引き抜き性の強いラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0058】
1時間半減期100℃以上、架橋効率30モル%以上のラジカル重合開始剤としては、例えば、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−アミルパーオキシベンゾエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等が挙げられ、これらを単独又は2種以上併用できる。前記ラジカル重合開始剤は、前記ビニル単量体(a1)とその他のビニル単量体(a2)の合計量100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0059】
前記塊状重合の際には、必要に応じて連鎖移動剤を使用することができ、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタン等の芳香族メルカプタン;チオリンゴ酸等のチオカルボン酸又はそれらの塩、アルキルエステル類が挙げられる。
【0060】
前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)の合成の際の塊状重合温度は、塊状重合時の攪拌制御が比較的容易で、前記不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)と、前記ビニル単量体(a1)およびビニル単量体(a2)との反応が進行しやすいことから、100〜200℃であることが好ましく、100〜150℃であることがより好ましい。
【0061】
前記塊状重合は、常圧においても重合可能であるが、密閉容器内で加圧重合を行うことが好ましい。常圧下での塊状重合は、重合温度が100〜140℃では重合時に高粘度化し易く、重合温度が140〜200℃では前記ビニル単量体(a1)およぶ(a2)が揮発し易い。
【0062】
前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)としては、8,000〜100,000の重量平均分子量を有するものが好ましい。かかる範囲内の重量平均分子量を有するビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)は、水中に安定して分散でき、且つ、耐水性および耐食性に優れた塗膜を形成できる。
【0063】
さらに、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)としては、例えば、5〜100(mgKOH/g)の酸価を有するものが挙げられるが、なかでも15〜40の酸価を有するものが好ましく、20〜35の酸価を有するものがより好ましい。これにより、顔料分散性、耐食性および耐水性に優れた塗膜を形成できる。
【0064】
第三に、得られたビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)に含有されているカルボキシル基の一部又は全部の塩基性化合物での中和と、水との混合による分散について説明する。
【0065】
前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)の中和に用いる前記塩基性化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−アミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイドなどが挙げられる。これら塩基性化合物は、アンモニア水等のように水溶液として使用することもできる。また、前記塩基性化合物としては、ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)を含有する水性塗料が塗膜を形成した際に揮発して塗膜中に残留せず、耐水性および耐食性に優れた塗膜を形成ができることから、揮発性の塩基性化合物やその水溶液、例えばアンモニア水、トリエチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール等が好ましい。
【0066】
前記ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)を水中への分散させる方法としては、例えば、1)前記不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)と、前記ビニル単量体(a1)およびビニル単量体(a2)を塊状重合して得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)の溶融物を、塩基性化合物と混合して、好ましくは80〜125℃で混合してビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)の溶融物とした後、水と混合して、好ましくは90℃以下、より好ましくは50〜90℃で混合してビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)を水に分散させる方法、2)前記と同様に中和して得られるビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)を、沸点90℃以下の有機溶剤、好ましくは沸点50〜90℃の有機溶剤に溶解した後、好ましくは90℃以下、より好ましくは50〜90℃で溶解した後、水と混合して、好ましくは90℃以下、より好ましくは50〜90℃で水と混合してビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)を水に分散させた後、有機溶剤の一部又は全部を減圧除去する方法等が挙げられる。
【0067】
前記1)の分散方法では、ハレルホモジナイザー、スタティックミキサー、ソノレーター、ディスパー、ミクサー等により常圧で機械的剪断力をかける分散方法や、マイクロフルイダイザーや、キャビトロンでの加圧化で機械的剪断力をかける分散方法が好ましい。
【0068】
前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)は、中和される前では、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造中のカルボキシル基等の酸基を有するものであり、その結果、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)の酸価が、15〜40(mgKOH/g)程度と低い場合でも、有機溶剤の含有量が極めて少ない、又は、全く含まない水性媒体中に安定して分散することができるし、顔料も安定して分散させることができる。また、このような低酸価のビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)の中和物(A3)を含有する水性塗料を用いて得られる塗膜は、耐水性および耐食性のより優れた塗膜を形成できる。なお、中和前の前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)の酸価は必要に応じて選択できる。場合によっては15〜40以外の酸価であっても良い。好ましい酸価は10〜60、より好ましい酸価は10〜40、最も好ましい酸価は20〜30である。
【0069】
また、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)の水中への分散に際しては、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)や顔料の分散安定性を向上させる為に、本発明の目的を達成する範囲内で乳化剤を使用することができる。
【0070】
前記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体などのノニオン系乳化剤、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩などのアニオン系乳化剤、4級アンモニウム塩等のカチオン系乳化剤などが挙げられる。乳化剤は、得られる塗膜の耐水性および耐食性を低下させないためにも、できるだけ使用しないことが好ましい。
【0071】
本発明の製造方法により得られる水性塗料用樹脂組成物は、水性媒体中に前記ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)の粒子が分散したものであり、かかる粒子の粒子径は40〜300nmであることが好ましく、80〜200nmであることがより好ましい。なお、本発明でいう粒子径は、マイクロトラック粒度分析計(マイクロトラック9340−UPA、日機装株式会社製)で求めた値である。
【0072】
本発明の製造方法により得られる水性塗料用樹脂組成物は、金属基材用塗料として有用であり、なかでも優れた耐水性および耐食性が求められている金属基材の防錆用塗料として有用である。
【0073】
第四に本発明の製造方法により得られる水性塗料用樹脂組成物を用いてなる水性塗料について説明する。
【0074】
前記水性塗料は、前記した本発明の水性塗料用樹脂組成物と顔料を含有してなる水性塗料であれば良く、例えば、本発明の製造方法で得られる水性塗料用樹脂組成物に、顔料を添加し、ボールミル、サンドミル、高速インペラー、3本ロール等の練肉装置で練肉させ、必要に応じて金属ドライヤー、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤や、その他の樹脂類等を添加、混合してなる水性塗料が挙げられる。
【0075】
前記した顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物や、アルミフレーク、雲母、ケイ酸塩類、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの無機顔料や、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ベンズイシダゾロン、スレン、ペリレンなどの有機顔料等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を任意に組み合わせて使用するこができる。
【0076】
また、本発明の水性塗料を防錆用塗料として使用する場合には、防錆顔料を使用することが好ましい。防錆顔料としては、例えば、塩基性クロム酸鉛、クロム酸亜鉛、クロム酸ストロンチウム、クロム酸バリウム等のクロム酸塩化合物;鉛酸カルシウム、鉛丹、鉛シアナミド等の鉛系化合物;リン酸亜鉛、トリポリ燐酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛等の燐酸塩系化合物;塩基性モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム等のモリブデン酸塩系化合物;メタホウ酸バリウム、メタホウ酸カルシウム、カルシウムボロシリケート等のホウ酸塩系化合物;雲母状酸化鉄、一般式MeO・Fe(但し、式中のMeは、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛又はマンガンなる2価の金属原子を表す。)で示される鉄酸化物系化合物;タングステン酸亜鉛、タングステン酸カルシウム等の塩基性タングステン酸塩系化合物などが挙げられる。
【0077】
前記顔料は、顔料重量濃度(PWC)65重量%以下で使用することが好ましく、1〜40重量%で使用することがより好ましい。これにより、得られる塗膜の耐食性の低下を抑制できる。
【0078】
なお、前記防錆顔料を使用する場合は、PWCが40重量%以下であることが好ましく、0.1〜30重量%で使用することがより好ましい。これにより得られる塗膜の耐水性の低下を抑制できる。
【0079】
前記紫外線吸収剤として使用できるものは、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、シュウ酸アニリド系、ヒドロキシベンゾフェノン系等が挙げられる。前記酸化防止剤として使用できるものは、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、燐系化合物等が挙げられる。前記紫外線吸収剤や酸化防止剤は、本発明の水性塗料の不揮発分100重量部に対して、0.5〜5重量部使用することが好ましい。
【0080】
前記その他の樹脂類として使用できるものは、例えば、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリル系樹脂、フルオロオレフィン系樹脂、シリコン変性ビニル系重合体、ポリビニルアルコール、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコン系樹脂、動物性たんぱく質、でんぷん、セルロース誘導体、デキストリン、アラビアゴム等が挙げられる。
【0081】
前記水性塗料において、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)が不飽和で二重結合を有している場合は、硬化触媒として金属ドライヤーを使用することができる。これにより、更に耐水性および耐食性に優れた塗膜を形成することができる。
【0082】
前記金属ドライヤーとしては、例えば、テトライソプロピルチタネート、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫ジオクテート、ナフテン酸コバルト等の金属化合物類等が挙げられる。
【0083】
前記金属ドライヤーの使用量は、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)100重量部に対して、0.1〜10重量部となる範囲内が好ましく、1〜10重量部となる範囲がより好ましい。これにより、耐食性および耐水性に優れた塗膜を形成することができる。
【0084】
前記水性塗料の粘度は、フォードカップNo.4を使用して測定した場合、温度条件25℃で20〜200秒であることが好ましく、50〜150秒であることがより好ましい。
【0085】
前記水性塗料は、例えば、基材に本発明の水性塗料を塗装し、次いで乾燥させることで塗膜を形成することができる。
【0086】
前記水性塗料を基材に塗装する方法としては、例えば、スプレー法、静電法、電着法等の方法を適用することができ、所望の乾燥硬化膜厚が得られるように、適宜、塗装し硬化させればよい。
【0087】
塗装後の乾燥方法としては、常温で1〜10日間乾燥させる方法や、40〜250℃で30秒〜3時間加熱乾燥する方法が挙げられる。
【0088】
前記水性塗料を塗装できる基材としては、例えば、金属基材、無機質基材、プラスチック基材などが挙げられ、これらの表面に、めっき等の表面処理が施されていても良い。
【0089】
前記金属基材として使用できるものは、例えば、鉄、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、クロム、亜鉛、錫、ステンレススチール、真鍮等が挙げられ、これらの表面が、めっきなどの表面処理がなされていても良い。
【0090】
前記無機質基材として使用できるものは、例えば、コンクリート、モルタル、石綿スレート、軽量気泡コンクリート(ALC)、ドロマイトプラスター、石膏プラスター、けい酸カルシウム板、アルミナ、シリカ、ジルコニア等の金属酸化物を焼結して得られるセラミック、ガラス等が挙げられる。
【0091】
前記プラスチック基材として使用できるものは、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなるものや;不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、架橋型ポリウレタン、架橋型のアクリル樹脂、架橋型の飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂からなるものが挙げられる。
【0092】
前記基材は、例えば、板状、球状、フィルム状等の各種の形状であってもよい
【0093】
前記水性塗料を塗装して得られる塗装物は、耐食性等に優れた塗膜を有するものである。かかる塗装物としては、例えば、自動車、自動二輪車、電車、自転車、船舶、飛行機やテレビ、ラジオ、冷蔵庫、洗濯機、クーラー、クーラー室外機、コンピュータ等およびそれらに使用できる金属やプラスチックからなる部品、瓦、屋根材、壁材、窓枠、ドア、道路、道路標識、ガードレール、橋梁、タンク、煙突、ビルディング等が挙げられる。
【実施例】
【0094】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、例中の重量部はすべて重量部である。
【0095】
実施例1
攪拌機、温度計、温度調節装置及び窒素導入管を装備した4つ口のフラスコに、脱水ひまし油脂肪酸13部、大豆油脂肪酸91部、エピクロン1050(大日本インキ化学工業株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量475g/当量)156部およびトリエチルアミン0.13部を仕込み、攪拌しながら180℃まで昇温した。次いで、脱水状態を見ながら230℃まで昇温させてエステル化させた。樹脂の酸価が1(mgKOH/g)以下になったところで125℃まで冷却し、重量平均分子量7,000の不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1−1)の溶融物を得た。
【0096】
次に、内温を125℃に維持し、反応容器中にスチレン72部、アロニクスM5300〔東亜合成株式会社製、前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造のうちn=2で、Rが炭素数5のアルキレン基であるアクリル単量体〕68部およびt−ブチルパーオキシベンゾネート〔1時間半減期温度122℃、架橋効率49〕6部を3時間かけて添加し、更に同温度で5時間重合させて、酸価32(mgKOH/g)のビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−1)の溶融物を得た。次に、110℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミン20.3部を加えてビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−1)の溶融物を中和し、ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3−1)の溶融物とした後、攪拌しながら80℃に加温したイオン交換水581.1部を少量ずつ添加して、ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3−1)を水中に分散させた。200メッシュで濾過し、水性塗料用樹脂組成物(p−1)〔不揮発分40重量%、中和前のビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−1)の酸価32(mgKOH/g)、pH8.8〕を得た。
【0097】
得られた不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1−1)の重量平均分子量を測定と、水性塗料用樹脂組成物(p−1)の水分散性、揮発性有機化合物含有量および臭気の評価を以下のように行った。
【0098】
(重量平均分子量の測定方法)
高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製、HLC−8220GPC)を用い、温度40℃、流速1ml/minの条件下で、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1−1)の重量平均分子量を測定した。結果を第1表に示す。
【0099】
(水分散性の評価方法)
マイクロトラック粒度分析計(マイクロトラック9340−UPA、日機装株式会社製)による水性塗料用樹脂組成物中の粒子径測定結果から、以下の基準で評価した。
◎:粒子径50nm以上、100nm未満
○:粒子径100nm以上、150nm未満
△:粒子径150nm以上、200nm未満
×:粒子系200nm以上
【0100】
(揮発性有機化合物含有量の評価方法)
水性塗料用樹脂組成物中に含まれる揮発性有機化合物を、ガスクロマトグラム(島津製作所製のQP−5050A)で測定し、以下の基準で評価した。
○:1.0重量%以上、3.0重量%未満
△:3.0重量%以上、10重量%未満
×:10重量%以上
【0101】
(臭気の評価方法)
水性塗料用樹脂組成物を100ccガラス瓶に50cc仕込み、10名が臭いを確認し、以下の基準で評価した。
○:10名中10名が顕著な悪臭がないと評価した。
△:10名中1〜5名が顕著な悪臭があると指摘した。
×:10名中1〜5名が顕著な悪臭があると指摘した。
【0102】
実施例2
使用する原料を下記第1表に記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−2)、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−2)およびビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3−2)の溶融物を得、水中に分散させた後、200メッシュで濾過して、水性塗料用樹脂組成物(p−2)〔不揮発分40重量%、中和前のビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−2)の酸価26(mgKOH/g)、pH8.8〕を得た。なお、本実施例2で用いたM−230Gは、新中村化学工業株式会社製のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド構造の平均繰返し数:23)である。
【0103】
得られた不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−2)と水性塗料用樹脂組成物(p−2)を用いた以外は実施例1と同様にして、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−2)の重量平均分子量の測定と、水分散性、揮発性有機化合物含有量および臭気の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0104】
実施例3
使用する原料を下記第1表に記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−3)、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−3)およびビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3−3)の溶融物を得、水中に分散させた後、200メッシュで濾過して、水性塗料用樹脂組成物(p−3)〔不揮発分37重量%、中和前のビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−3)の酸価25(mgKOH/g)、pH8.8〕を得た。
【0105】
得られた不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−3)と水性塗料用樹脂組成物(p−3)を用いた以外は実施例1と同様にして、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−3)の重量平均分子量の測定と、水分散性、揮発性有機化合物含有量および臭気の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0106】
実施例4
使用する原料を下記第1表に記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−4)、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−4)およびビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3−4)の溶融物を得た。中和後、80℃まで冷却し、メチルエチルケトン71.1重量部を加え、80℃で1時間攪拌してビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3−4)を溶解させた後、イオン交換水656.7部を少量ずつ添加して、転相乳化させた。転相乳化後、142.2部を減圧除去後、200メッシュで濾過して、水性塗料用樹脂組成物(p−4)〔不揮発分40重量%、中和前のビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−4)の酸価25(mgKOH/g)、pH8.8〕を得た。
【0107】
得られた不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−4)と水性塗料用樹脂組成物(p−4)を用いた以外は実施例1と同様にして、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−4)の重量平均分子量の測定と、水分散性、揮発性有機化合物含有量および臭気の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0108】
実施例5
使用する原料を下記第1表に記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−5)、ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−5)およびビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3−5)の溶融物を得た。中和後、水を585.6部仕込んだアンカーミクサー、ホモディスパー、ホモミクサーを備えた3軸攪拌の釜へビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3−5)を移送し、1時間攪拌後、200メッシュで濾過して、水性塗料用樹脂組成物(p−5)〔不揮発分40重量%、中和前のビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−5)の酸価25(mgKOH/g)、pH8.8〕を得た。
【0109】
得られた不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−5)と水性塗料用樹脂組成物(p−5)を用いた以外は実施例1と同様にして、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−5)の重量平均分子量の測定と、水分散性、揮発性有機化合物含有量および臭気の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0110】
実施例6
実施例1と同様にして不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1−6)の溶融物を得た。得られた不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1−6)の溶融物を攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、ビニル単量体を定量的に供給する定量ポンプおよびラジカル重合開始剤を定量的に供給する定量ポンプを有する耐圧密閉釜へ移送後、攪拌を開始し、アロニクスM−5300 20部と、M−230G〔新中村化学工業株式会社製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド構造の平均繰返し数:23)〕20部を加え、170℃まで加温、保持した。スチレン80部、2−エチルヘキシルアクリレート12部およびアクリル酸8部からなるビニル単量体混合物と、ジ−t−ブチルパーオキサイド(1時間半減期141℃、架橋効率49)6部を3時間かけて定量ポンプにより連続供給し、更に同温度で2時間塊状重合させて、酸価25(mgKOH/g)のビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−6)の溶融物を得た。次に、80℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミン16部を加えてビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−6)の溶融物を中和し、ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3−6)の溶融物とした後、攪拌しながら80℃に加温したイオン交換水585.6部を少量ずつ添加して、ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3−1)を水中に分散させた。200メッシュで濾過し、水性塗料用樹脂組成物(p−6)〔不揮発分40重量%、中和前のビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−6)の酸価25(mgKOH/g)、pH8.8〕を得た。
【0111】
得られた不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−6)と水性塗料用樹脂組成物(p−6)を用いた以外は実施例1と同様にして、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−6)の重量平均分子量の測定と、水分散性、揮発性有機化合物含有量および臭気の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0112】
比較例1
使用する原料を下記第2表に記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1−7)の溶融物を得た。得られた不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1−7)をブチルセロソルブ169.7部に溶解させ、125℃に保持し、下記第2表に記載のビニル単量体、ラジカル重合開始剤を3時間かけて滴下し、滴下終了後5時間保持し、固型分酸価37(mgKOH/g)のビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−7)の有機溶剤溶液を得た。次に、80℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミン24部を加えて中和し、ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3−7)の有機溶剤溶液とした後、攪拌しながらイオン交換水460.9部を少量ずつ添加して、転相乳化させた。200メッシュで濾過し、比較対照用の水性塗料用樹脂組成物(p−7)〔不揮発分37重量%、中和前のビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−7)の酸価37(mgKOH/g)、pH8.8〕を得た。
【0113】
得られた不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−7)と比較対照用の水性塗料用樹脂組成物(p−7)を用いた以外は実施例1と同様にして、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−7)の重量平均分子量の測定と、水分散性、揮発性有機化合物含有量および臭気の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0114】
比較例2
使用する原料を下記第2表に記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1−8)の溶融物を得た。得られた不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1−8)をノルマルブタノール71.7部に溶解させ、118℃に保持し、下記第2表に記載のビニル単量体、ラジカル開始剤を3時間かけて滴下し、滴下終了後5時間保持し、固型分酸価60(mgKOH/g)のビニル変性エポキシエステル樹脂(A2−8)有機溶剤溶液を得た。次に、80℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミン24部を加えて中和し、ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3−8)の有機溶剤溶液とした後、攪拌しながらイオン交換水460.9部を少量ずつ添加して、転相乳化させた。転相乳化後、142.6部を減圧除去した後、200メッシュで濾過し、比較対照用の水性塗料用樹脂組成物(p−8)〔不揮発分30重量%、中和前のビニル変性エポキシエステル樹脂(A1−8)の酸価60(mgKOH/g)、pH8.8〕を得た。
【0115】
得られた不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−8)と比較対照用の水性塗料用樹脂組成物(p−8)を用いた以外は実施例1と同様にして、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル(A1−8)の重量平均分子量の測定と、水分散性、揮発性有機化合物含有量および臭気の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
実施例7
実施例1で得られた水性塗料用樹脂組成物(p−1)87.5部に、酸化チタン(石原産業株式会社製、タイペークR930)20部、炭酸カルシウム(白石産業株式会社製、ホモカルD)45部、消泡剤(サンノプコ株式会社製、SNデフォーマー777)0.2部およびイオン交換水19部を混合し、サンドミルで30分間練肉して練肉ベースを得た。次いで、この練肉ベースに、レベリング剤(BYK社製、BYK−348)0.5部およびドライヤー(大日本インキ化学工業株式会社製、ディックネート3111)0.6部を配合し、ホモディスパーで混合して、水性塗料(P−1)を調製した。
【0119】
次いで、得られた水性塗料(P−1)の顔料分散性と、この水性塗料(P−1)からなる塗膜の耐水性および耐食性を下記のように評価した。結果を第3表に示す。
【0120】
(顔料分散性の評価方法)
水性塗料を25℃で7日間放置した後の水性塗料の顔料沈降状態を観察すると共に、顔料再分散性の有無を調べ、以下の基準で評価した。
◎:顔料の沈降なし。
○:塗料の最上部にクリヤー層発生。
△:顔料の下部に顔料の沈降があるものの、手攪拌により顔料再分散可能。
×:顔料の下部に顔料の沈降があり、手攪拌では顔料再分散不能。
【0121】
(塗膜の耐水性の評価方法)
水性塗料を、脱脂した鉄板(日本テストパネル製、SPCC−SD板)上に、乾燥塗膜の膜厚が30μmとなるようにバーコーターで塗装し、常温で7日乾燥して、試験用の塗板を得、得られた塗板を、常温の水中に3日間浸漬した後の外観を観察し、以下の基準で評価した。
◎:塗膜に異常が認められない。
○:塗膜に極僅かに膨れが認められる。
△:塗膜に膨れが認められる。
×:塗膜に膨れ、ハガレが認められる。
【0122】
(耐食性の評価方法)
前記塗板を、カッターナイフの刃先で、塗膜の上から基材に達するように、交差する2本の切れ目を入れた。35℃における濃度が5重量%の塩化ナトリウム水溶液を、JIS Z2371に規定する噴霧装置を用いて、前記方法で切れ目を入れた塗板に125時間噴霧した。噴霧後、塗板を水洗いし、2時間乾燥させた後、セロハン粘着テープを塗膜に貼付し、セロハン粘着テープを剥がしたときの、塗膜の剥離の程度を下記の基準で評価した。なお、下記評価における剥離幅とは、カッターナイフで入れた切れ目を中心としたときの、塗膜が剥離した幅を示す。
◎:剥離試験の剥離幅が、1mm未満。
○:剥離試験の剥離幅が、1mm以上〜2mm未満。
△:剥離試験の剥離幅が、2mm以上〜4mm未満。
×:剥離試験の剥離幅が、4mm以上。
【0123】
実施例8〜12および比較例3〜4
水性塗料用樹脂組成物(p−1)の代わりに水性塗料用樹脂組成物(p−2)〜(p−8)をそれぞれ使用した以外は実施例7と同様にしてで水性塗料(P−2)〜(P−8)を調製した。
【0124】
次いで、得られた水性塗料(P−2)〜(P−8)をそれぞれ用いた以外は実施例7と同様にして、水性塗料(P−2)〜(P−8)の顔料分散性と、これらの水性塗料(P−2)〜(P−8)からなる塗膜の耐水性および耐食性を評価した。結果を第3表と第4表に示す。
【0125】
【表3】

【0126】
【表4】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)、下記一般式(I)
【化1】

(nは1〜10、Rは炭素数2〜18のアルキレン基を示す。)
で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体(a1)およびその他のビニル単量体(a2)を塊状重合させて得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)と、塩基性化合物と、水を用い、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)に含有されているカルボキシル基の一部又は全部の塩基性化合物による中和と、この中和で得られるビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)の水への分散を行うことを特徴とする水性塗料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)の重量平均分子量が3,000〜15,000である請求項1に記載の水性塗料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)の油長が15〜60重量%である請求項1に記載の水性塗料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)の塊状重合温度が100〜200℃であり、かつ、1時間半減期が100℃以上のラジカル重合開始剤の存在下で塊状重合する請求項1に記載の水性塗料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記ラジカル重合開始剤が、架橋効率ε〔n−ペンタデカン中でラジカル重合開始剤を15分半減期温度で分解させた時に生成するn−ペンタデカンダイマーのモル数を測定し、ラジカル重合開始剤1モルに対する生成割合を算出したもの(モル%)〕が30モル%以上のラジカル重合開始剤である請求項4に記載の水性塗料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造が、n=2でRが炭素原子数5のアルキレン基である請求項1に記載の水性塗料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記その他のビニル単量体(a2)が下記一般式(II)
【化2】

(mは3〜90、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
で示されるポリアルキレンオキサイド構造を有するビニル単量体を含有するものである請求項1〜6に記載の水性塗料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)が、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(A1)、末端カルボキシル基含有ビニル単量体(a1)およびその他のビニル単量体(a2)を加圧下で塊状重合させて得られるビニル変性エポキシエステル樹脂である請求項1〜6に記載の水性塗料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(A2)の溶融物を、塩基性化合物と混合してビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)の溶融物とした後、水と混合してビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)を水に分散させる請求項1〜8のいずれか1項に記載の水性塗料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(A3)を、沸点90℃以下の有機溶剤に溶解し、水と混合して水に分散させた後、有機溶剤の一部又は全部を減圧除去する請求項1〜8のいずれか1項に記載の水性塗料用樹脂組成物の製造方法。


【公開番号】特開2007−262132(P2007−262132A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85408(P2006−85408)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】