説明

水性塗料組成物

【課題】本発明は、ポットライフに優れ、かつ、塗装時の初期硬化性にも優れる2液反応硬化型の水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】本発明の水性塗料組成物は、エポキシ当量が250g/eq以上1000g/eq以下の水性エポキシ樹脂を含み、電気伝導度が1.0mS/cm以下である主剤、活性水素当量が100g/eq以上1000g/eq以下の水性アミン化合物を含む硬化剤を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合時の安定性、塗装時の初期硬化性に優れており、床塗料として好適な2液反応硬化型の水性塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅、工場、倉庫、スポーツ施設等の建築物の床面や屋上、あるいは、道路、歩道、歩道橋、プラットホーム、公園、広場、庭等の屋外床面に対し、塗料による塗装を施し、美観性等を付与することが行われている。
このような床面の塗装には、一般に、塗膜強度を考慮し、エポキシ塗料等の反応硬化型塗料が用いられている。
このような塗料においては、従来、溶剤系のものが主流であったが、近年、健康被害の低減や安全性の向上、大気環境汚染を低減する目的で、溶剤系から水性系への転換が図られつつある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、水性のエポキシ塗料として、特許文献1では、骨材と、自己乳化型常温硬化性エポキシ樹脂と親水性ポリアミンからなる舗装化粧材組成物が記載されている。特許文献1のような舗装化粧材組成物を施工した場合、エポキシ−アミンの反応により、初期の諸性能を保持することができる(段落0018記載。)。
しかしながら、特許文献1のような舗装化粧材組成物は、エポキシとアミンを混合し、施工を行うものであり、ポットライフの時間内に施工する必要がある(段落0019記載。)が、ポットライフについては、何の考慮もされていない。即ち、特許文献1では、エポキシとアミンを混合した時のポットライフが短い場合があり、塗装作業性に支障をきたす場合があった。
【0004】
【特許文献1】特開平8−48856号公報
【課題を解決するための手段】
【0005】
このように、反応硬化型塗料においては、初期の諸性能(例えば、初期硬化性等)を向上させるために、反応性(例えば、エポキシ−アミンの反応性)の向上を図らなければならないが、一方では、混合時の安定性(ポットライフ)を高めるため、反応性の抑制を図らなければならない。
本発明では、このような、2つの相反する性能(ポットライフと初期硬化性)を両立させる水性の反応硬化型塗料の提供を目的とするものである。
【0006】
このような問題を解決するため、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定エポキシ当量の水性エポキシ樹脂を含む特定電気伝導度以下の主剤と、特定活性水素当量の水性アミン化合物を含む硬化剤を含有する2液反応硬化型水性塗料組成物が、主剤と硬化剤のポットライフに優れ、かつ、初期硬化性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下の特徴を含むものである。
1.エポキシ当量が250g/eq以上1000g/eq以下の水性エポキシ樹脂を含み、電気伝導度が1.0mS/cm以下である主剤、
活性水素当量が100g/eq以上1000g/eq以下の水性アミン化合物を含む硬化剤、
を含有する水性塗料組成物。
2.水性エポキシ樹脂の分子量が500以上2000以下であり、水性アミン化合物の分子量が200以上4000以下であることを特徴とする1.に記載の水性塗料組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポットライフに優れ、かつ、塗装時の初期硬化性にも優れる2液反応硬化型の水性塗料組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0010】
本発明の水性塗料組成物は、エポキシ当量が250g/eq以上1000g/eq以下の水性エポキシ樹脂を含み、電気伝導度が1.0mS/cm以下である主剤と、活性水素当量が100g/eq以上1000g/eq以下の水性アミン化合物を含む硬化剤を含有する、2液反応硬化型の水性塗料組成物である。
【0011】
一般的に、エポキシ−アミン系の2液反応硬化型の塗料においては、初期硬化性等の初期の諸物性が向上するといわれているが、その反面、混合時の塗料のポットライフが確保され難くなる。本発明では、水性エポキシ樹脂のエポキシ当量と電気伝導度、水性アミン化合物の活性水素当量を特定の範囲内に調整することにより、ポットライフと初期硬化性の両立を実現することができる。
したがって、本発明の塗料は、混合後直ちに反応が進行することがなく、塗装作業性に優れ、また、塗装作業後数時間で硬化し、初期硬化性に優れており、翌日には歩行可能な状態となるため、特に床面に対して好適である。
なお、電気伝導度は、「Model SC82パーソナルSCメータ SC8221−J」(横河電機社製)を用いて、25℃で測定した値である。
【0012】
本発明の主剤は、エポキシ当量が250g/eq以上1000g/eq以下(好ましくは300g/eq以上800g/eq以下、さらに好ましくは350g/eq以上700g/eq以下)の水性エポキシ樹脂を含み、電気伝導度が1.0mS/cm以下(好ましくは0.8mS/cm以下、さらに好ましくは0.4mS/cm以下)であることを特徴とする。このような範囲であることにより、ポットライフと初期硬化性の両立が実現可能となる。
【0013】
本発明の主剤は、エポキシ当量が250g/eq以上1000g/eq以下の水性エポキシ樹脂を含むものであるが、主剤の樹脂全量(固形分)に対し、該水性エポキシ樹脂を50重量%以上(さらに好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、最も好ましくは100重量%)含むものであればよい。
本発明の主剤においては、エポキシ当量が250g/eq未満の水性エポキシ樹脂を、主剤の樹脂全量(固形分)に対し50重量%未満(さらに好ましくは30重量%未満、より好ましくは10重量%未満、最も好ましくは0重量%)の割合で含んでいてもよい。
特に、エポキシ当量が250g/eq以上1000g/eq以下の水性エポキシ樹脂が主剤の樹脂全量(固形分)に対し、90重量%以上100重量%以下、エポキシ当量が250g/eq未満の水性エポキシ樹脂が主剤の樹脂全量(固形分)に対し、0重量%以上10重量%未満の場合は、ポットライフと初期硬化性に加えて、形成塗膜の光沢性にも優れた水性塗料組成物を得ることができる。よって、このような水性エポキシ樹脂を含む水性塗料組成物は、上塗材として好適に用いることができる。
【0014】
また、エポキシ当量が250g/eq以上1000g/eq以下の水性エポキシ樹脂が主剤の樹脂全量(固形分)に対し、50重量%以上90重量%未満、エポキシ当量が250g/eq未満の水性エポキシ樹脂が主剤の樹脂全量(固形分)に対し、10重量%以上50重量%未満の場合は、ポットライフと初期硬化性に加えて、密着性にも優れた水性塗料組成物を得ることができる。よって、このような水性エポキシ樹脂を含む水性塗料組成物は、下塗材として好適に用いることができる。
エポキシ当量が250g/eq未満の水性エポキシ樹脂を、50重量%以上含む場合は、ポットライフが短くなり、初期硬化性に劣る。
【0015】
また、本発明の主剤は、電気伝導度が1.0mS/cm以下(好ましくは、0.8mS/cm以下、さらに好ましくは、0.4mS/cm以下)のものを使用する。電気伝導度が1.0mS/cm以下であることにより、ポットライフと初期硬化性の両立が実現可能となり、特に優れたポットライフが実現可能となる。電気伝導度が1.0mS/cmより大きいと、ポットライフが短くなり、塗装作業性に劣る。
【0016】
さらに水性エポキシ樹脂は、分子量が、300以上2000以下(好ましくは400以上1800以下、さらに好ましくは500以上1500以下)であることが好ましい。このような範囲であることにより、後述する硬化剤と適度な反応性を示すため、より優れたポットライフと初期硬化性を示すことができる。
特に、エポキシ当量が250g/eq以上1000g/eq以下の水性エポキシ樹脂は、分子量が、500以上2000以下(好ましくは700以上1800以下、さらに好ましくは800以上1500以下)であることが好ましい。また、エポキシ当量が250g/eq未満の水性エポキシ樹脂は、分子量が、300以上1500以下(好ましくは400以上1000以下)であることが好ましい。
【0017】
水性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂等、あるいはこれらをポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等で変性したもの等が挙げられ、これらのうち水溶型、水分散型等を用いることができる。本発明では、特に、水分散型のエポキシ樹脂が好ましく用いられる。水分散型のエポキシ樹脂を用いることにより、より優れた塗装作業性と初期硬化性を示すことができる。
【0018】
本発明の硬化剤は、活性水素当量が100g/eq以上1000g/eq以下(好ましくは130g/eq以上800g/eq以下、150g/eq以上600g/eq以下)の水性アミン化合物を含むことを特徴とする。このような水性アミン化合物を使用することにより、ポットライフと初期硬化性の両立が実現可能となる。
【0019】
水性アミン化合物として、特に、活性水素当量が300g/eq以上1000g/eq以下の水性アミン化合物を含む場合は、ポットライフと初期硬化性に加えて、形成塗膜の光沢性にも優れた水性塗料組成物を得ることができる。特に、活性水素当量が300g/eq以上1000g/eq以下の水性アミン化合物が硬化剤の樹脂全量(固形分)に対し、50重量%以上(さらに好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、最も好ましくは100重量%)である場合は、ポットライフと初期硬化性に加えて、形成塗膜の光沢性にも優れた水性塗料組成物を得ることができる。よって、このような水性アミン化合物を含む水性塗料組成物は、上塗材として好適に用いることができる。
さらに、このような水性アミン化合物を含む場合、硬化剤の電気伝導度は1.0mS/cm未満(好ましくは0.9mS/cm以下)であることが好ましく、ポットライフと初期硬化性の両立とともに、形成塗膜の光沢性にもいっそう優れた水性塗料組成物を得ることができる。
【0020】
また、水性アミン化合物として、特に、活性水素当量が100g/eq以上300g/eq未満の水性アミン化合物を含む場合は、ポットライフと初期硬化性に加えて、密着性にも優れた水性塗料組成物を得ることができる。特に、活性水素当量が100g/eq以上300g/eq未満の水性アミン化合物が硬化剤の樹脂全量(固形分)に対し、50重量%以上(さらに好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、最も好ましくは100重量%)である場合は、ポットライフと初期硬化性に加えて、密着性にも優れた水性塗料組成物を得ることができる。よって、このような水性アミン化合物を含む水性塗料組成物は、下塗材として好適に用いることができる。
さらに、このような水性アミン化合物を含む場合、硬化剤の電気伝導度は9.0mS/cm以下(好ましくは8mS/cm以下、さらに好ましくは1.0mS/cm以上7mS/cm以下)であることが好ましく、ポットライフと初期硬化性の両立とともに、密着性にもいっそう優れた水性塗料組成物を得ることができる。
【0021】
活性水素当量が100g/eq未満の水性アミン化合物を含む場合は、ポットライフが短くなり、初期硬化性に劣る。また、硬化剤の電気伝導度が9.0mS/cmを超える場合は、ポットライフが短くなるおそれがある。
【0022】
さらに水性アミン化合物は、分子量が、200以上4000以下(好ましくは400以上3000以下)であることが好ましい。このような範囲であることにより、ポットライフと初期硬化性の両立が実現可能となる。
【0023】
水性アミン化合物としては、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、ポリアミドアミン、複素環状アミンなど、またはこれらの変性物等が挙げられ、これらのうち水溶型、水分散型等を用いることができる。本発明では、特に、水分散型のアミン化合物が好ましく用いられる。水分散型のアミン化合物を用いることにより、より優れた塗装作業性と初期硬化性を示すことができる。
【0024】
硬化剤には、さらに、酸化合物を混合して用いることが好ましい。酸化合物を混合することにより、より優れたポットライフと初期硬化性の両立が可能である。
酸化合物としては、例えば、リン酸、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノデシルホスフェート、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジドデシルホスフェート等のリン酸化合物またはリン酸エステル化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸化合物、マレイン酸、フマル酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、オクチル酸、2−エチルヘキサン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノ−ル酸、パルミチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、ピリメリット酸等の有機カルボン酸化合物等が挙げられる。
このような酸化合物は、水性アミン化合物を適度に中和し、水性アミン化合物の反応性を適度に抑制するため、水性塗料組成物のポットライフと初期硬化性の両立が可能になるものと思われる。
【0025】
本発明では、特に、水分散型のエポキシ樹脂を含む主剤と、水分散型のアミン化合物を含む硬化剤を用いることにより、ポットライフと初期硬化性によりいっそう優れた水性塗料組成物を得ることができる。また、耐久性に優れた水性塗料組成物を得ることができる。
【0026】
本発明は、水性エポキシ樹脂を含む主剤と水性アミン化合物を含む硬化剤からなるものであるが、主剤、硬化剤には、それぞれ、本発明の効果を阻害しない程度に、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール等の樹脂を含有していてもよい。
【0027】
さらに主剤、硬化剤には、本発明の効果を阻害しない程度に、顔料、骨材、分散剤、粘性調整剤、溶剤、造膜助剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、pH調整剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、乾燥調整剤、カップリング剤、脱水剤、光安定剤、酸化防止剤、水等の添加剤を含有することもできる。
【0028】
顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、クロム酸鉛(モリブデートオレンジ)、黄鉛、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等の無機系着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機系着色顔料、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土等の体積顔料が挙げられる。
【0029】
骨材としては、花崗岩、安山岩、玄武岩等の火山岩、石灰岩、砂岩等の堆積岩、片麻岩等の変成岩等、砕石、砂、木材、陶磁器粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、合成樹脂ビーズ、ゴム状弾性体等が挙げられる。また、表面に着色コーティングを施した骨材を使用することもできる
【0030】
分散剤としては、エポキシ樹脂、アミン化合物の分散安定性や、顔料や骨材の分散安定性を向上させるものであれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
本発明では、アニオン基及び/またはノニオン基を有する分散剤が好ましく、さらには、アニオン基及びノニオン基を有する分散剤が好ましい。具体的には、アニオン基を有するセグメント、ノニオン基を有するセグメントを有するものである。本発明では、特に、アニオン基を有するセグメント、ノニオン基を有するセグメントのどちらか一方または両方が主鎖、また、どちらか一方または両方が側鎖である、グラフトポリマーからなる分散剤が好ましい。
本発明では、特に、分散剤の10重量%の濃度における電気伝導度が5mS/cm以下、さらには4mS/cm以下であることが好ましい。このような値であることにより、優れたポットライフを示すことができる。
【0031】
増粘剤としては、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸アンモニウム、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシルプロポキシルエチルセルロース、メチルセルロース、ヘキサエチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド等の有機系増粘剤、ベントナイト等の無機系増粘剤等が挙げられる。本発明では、特に、メチルセルロース、ヘキサエチルセルロース等が好ましい。
【0032】
溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピルプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルプロピレングリコール、ブチルプロピレンジグリコール、フェニルプロピレンジグリコール、ヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、2−エチルヘキシルグリコール、2−エチルヘキシルジグリコール等のグリコール類、n−メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、イソパラフィン、シクロヘキサノン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル等のエステル類、またはそれらの混合物等が挙げられる。
本発明では、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、2−エチルヘキシルグリコール、2−エチルヘキシルジグリコール、ブチルプロピレングリコール、ブチルプロピレンジグリコール、プロピルプロピレングリコール等が、特に造膜性、ポットライフ、硬化性をより向上させることができるため、好ましい。
また、このような溶剤は、主剤、硬化剤のうちどちらに添加してもよいが、本発明では、主剤に添加することが好ましい。
【0033】
本発明塗料組成物は、主剤と硬化剤からなる2液型であり、上述のような添加剤は、主剤および/または硬化剤に混合して用いることができる。
本発明では、特に、顔料、骨材、分散剤、粘性調整剤等の添加剤は主剤に混合することが好ましい。主剤、つまり、水性エポキシ樹脂側に添加剤を混合することは、水性アミン化合物に比べ、顔料等の添加剤との相性が良く、均一に分散できるため、好ましい。
なお、主剤、硬化剤の電気伝導度は、混合直前に測定するものであり、添加剤が含まれる場合もある。
【0034】
本発明塗料組成物は、塗装直前に主剤、硬化剤を混合し、塗装することが好ましい。この時、主剤、硬化剤混合時の電気伝導度が2.0mS/cm以下(好ましくは電気伝導度が1.5mS/cm以下、より好ましくは1.0mS/cm以下、さらに好ましくは0.6mS/cm以下)であることが好ましい。主剤、硬化剤混合時の電気伝導度が2.0mS/cm以下であることにより、よりいっそう優れたポットライフを示すことができる。
特に、主剤、硬化剤混合時の電気伝導度が1.0mS/cm以下の場合は、形成塗膜の光沢性にも優れた水性塗料組成物を得ることができる。
【0035】
主剤と硬化剤の混合比率は、水性エポキシ樹脂の固形分100重量部に対し、水性アミン化合物の固形分が1〜100重量部、さらには、2〜80重量部となるように混合することが好ましい。このような範囲であることにより、初期硬化性に優れ、さらに耐黄変性にも優れた塗膜を得ることができる。
【0036】
主剤に各種添加剤を混合する場合、顔料の混合比率は、主剤の樹脂固形分100重量部に対し、顔料1〜200重量部(好ましくは5〜150重量部)程度であればよい。また、骨材の混合比率は、主剤の樹脂固形分100重量部に対し、骨材0〜200重量部(好ましくは1〜150重量部)程度であればよい。また、溶剤の混合比率は、主剤の樹脂固形分100重量部に対し、溶剤0.1〜50重量部(好ましくは0.3〜30重量部)程度であればよい。また、分散剤の混合比率は、主剤の樹脂固形分100重量部に対し、分散剤0.1〜30重量部(好ましくは0.3〜20重量部)程度であればよい。また、増粘剤の混合比率は、主剤の樹脂固形分100重量部に対し、増粘剤0.1〜50重量部(好ましくは0.3〜40重量部)程度であればよい。また、酸化合物の混合比率は、硬化剤の樹脂固形分100重量部に対し、酸化合物0.1〜50重量部(好ましくは0.3〜30重量部)程度であればよい。
【0037】
本発明の2液反応硬化型の水性塗料組成物は、床面に対し、好適に適用されるもので、刷毛、ローラー等の塗装器具を用いて塗装すればよい。また、現場にて直接塗装することもできるし、工場等のラインで塗装することもできる。例えば、住宅、工場、倉庫、スポーツ施設等の建築物の床面や屋上、あるいは、道路、歩道、歩道橋、プラットホーム、公園、広場、庭等の屋外床面に適用することができる。具体的な材質としては、例えば、硬質の土面や石面、コンクリート、モルタル、アスファルト等が挙げられる。また、インターロッキング、ポーラスコンクリート等の床面を改修、改装する目的で用いることもできる。
本発明組成物は、優れたポットライフを有するため塗装作業性に優れ、初期硬化性に優れているため、通常常温(0℃から40℃程度(好ましくは5℃から35℃程度))において、約5〜12時間程度で硬化し、翌日には歩行可能な状態となる。
【実施例】
【0038】
(実験例1)
表1に示す原料、原料配合にて、各成分を常法にて均一に攪拌混合し、主剤1、硬化剤1をそれぞれ作製した。さらに、表1に示す配合量にて、主剤1と硬化剤1を100:25(重量比率)の割合で混合し、塗料を得た。主剤1と硬化剤1を混合後5分後にこの塗料を標準状態(温度23℃、相対湿度50%)で、スレート板(150mm×300mm×3mm)の上に、ローラーにて、塗付量150g/mで塗付し、試験体を得た。この際、塗料は適度な粘性を保ち、スムーズに塗付することができた。なお、この塗料について、電気伝導度とポットライフを下記の方法にて測定した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
(電気伝導度評価)
製造した主剤1、硬化剤1、及び主剤1と硬化剤1を混合後5分後の塗料の電気伝導度を、Model SC82パーソナルSCメータ SC8221−J(横河電機社製)を用いて、25℃にてそれぞれ測定した。結果は表1、表2に示す。
【0042】
(ポットライフ評価)
JIS K5600−2−6:1999「ポットライフ」に基づいて、試験を行った。評価は下記に示す。結果は表2に示す。
5:6時間以上
4:1時間以上6時間未満
3:40分以上1時間未満
2:20分以上40分未満
1:20分未満
【0043】
次に、得られた試験体について、下記の評価を行った。
(表面硬度評価)
JIS K5600−5−4:1999「引っかき硬度(鉛筆法)」に基づいて、試験を行った。試験は、塗付後24時間と塗付後7日間の2回実施した。結果は表2に示す。
【0044】
(耐水性評価)
塗付後24時間後及び7日後の試験体をそれぞれ20度に水に24時間浸漬させた後、塗膜の状態を目視にて評価した。評価は次の通りである。結果は表2に示す。
○:異常なし(膨れ、剥れ、艶引け等)
×:一部異常がみられた(膨れ、剥れ、艶引け等)
【0045】
(密着性評価)
下記に示す基材に対して、製造した塗料を塗付量0.15kg/mで塗付し、温度23℃・相対湿度50%下で72時間放置した後、JIS K 5600−5−6:1999に準じて碁盤目密着性を評価した。なお、密着性評価においては、カッターガイドのすきま間隔が2mmのものを使用した。密着性の評価は以下のとおりである。結果は表2に示す。
0:欠損部なし
1:欠損部面積が5%以内
2:欠損部面積が5〜15%
3:欠損部面積が15〜35%
4:欠損部面積が35〜65%
5:欠損部面積が65%以上
・基材A:モルタル(300mm×300mm)
・基材B:スレート板(300mm×300mm)に、ウレタン系塗床材を塗付量0.2kg/mで塗付し、50℃で1週間乾燥させたもの
【0046】
(光沢度測定)
得られた試験体の光沢度を、光沢度計(日本電色工業(株)社製)を用いて測定した。測定時の入射角は60度とした。結果は表2に示す。
【0047】
(実験例2)
硬化剤1を硬化剤2に替えた以外は、実験例1と同様の方法で試験体の作製を行った。この際、塗料は適度な粘性を保ち、スムーズに塗付することができた。
この塗料及び試験体について、実験例1と同様の評価を行った。結果は表1、表2に示す。
【0048】
(実験例3)
主剤1を主剤2に、硬化剤1を硬化剤2に替えた以外は、実験例1と同様の方法で試験体の作製を行った。この際、塗料は適度な粘性を保ち、スムーズに塗付することができた。
この塗料及び試験体について、実験例1と同様の評価を行った。結果は表1、表2に示す。
【0049】
(実験例4)
硬化剤1を硬化剤3に替えた以外は、実験例1と同様の方法で試験体の作製を行った。この際、塗料は適度な粘性を保ち、スムーズに塗付することができた。
この塗料及び試験体について、実験例1と同様の評価を行った。結果は表1、2に示す。
【0050】
(実験例5)
硬化剤1を硬化剤4に替えた以外は、実験例1と同様の方法で試験体の作製を行った。この際、塗料は適度な粘性を保ち、スムーズに塗付することができた。
この塗料及び試験体について、実験例1と同様の評価を行った。結果は表1、2に示す。
【0051】
(実験例6)
主剤1を主剤3、硬化剤1を硬化剤2に替えた以外は、実験例1と同様の方法で試験体の作製を行った。この際、塗料は適度な粘性を保ち、スムーズに塗付することができた。
この塗料及び試験体について、実験例1と同様の評価を行った。結果は表1、2に示す。
【0052】
(実験例7)
主剤1を主剤3、硬化剤1を硬化剤5に替えた以外は、実験例1と同様の方法で試験体の作製を行った。この際、塗料は適度な粘性を保ち、スムーズに塗付することができた。
この塗料及び試験体について、実験例1と同様の評価を行った。結果は表1、2に示す。
【0053】
(実験例8)
主剤1を主剤4、硬化剤1を硬化剤2に替えた以外は、実験例1と同様の方法で試験体の作製を行った。
この塗料及び試験体について、実験例1と同様の評価を行った。結果は表1、2に示す。
【0054】
(実験例9)
硬化剤1を硬化剤6に替えた以外は、実験例1と同様の方法で試験体の作製を行った。
この塗料及び試験体について、実験例1と同様の評価を行った。結果は表1、2に示す。
【0055】
(実験例10)
実験例7で得られた塗料を、標準状態(温度23℃、相対湿度50%)で、スレート板(150mm×300mm×3mm)の上に、ローラーにて、塗付量150g/mで塗付し、24時間養生した。さらにその上に実験例3で得られた塗料をローラーにて、塗付量150g/mで塗付し、試験体を得た。この際、塗料は適度な粘性を保ち、スムーズに塗付することができた。
この試験体について、実験例1と同様の評価を行った。結果は表2に示す。
【0056】
(実験例11)
実験例6で得られた塗料を、標準状態(温度23℃、相対湿度50%)で、スレート板(150mm×300mm×3mm)の上に、ローラーにて、塗付量150g/mで塗付し、24時間養生した。さらにその上に実験例1で得られた塗料をローラーにて、塗付量150g/mで塗付し、試験体を得た。この際、塗料は適度な粘性を保ち、スムーズに塗付することができた。
この試験体について、実験例1と同様の評価を行った。結果は表2に示す。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の2液反応硬化型水性塗料組成物は、住宅、工場、倉庫、スポーツ施設等の建築物の床面や屋上、あるいは、道路、歩道、歩道橋、プラットホーム、公園、広場、庭等の屋外床面に対し、好適に用いられるものである。また、建築物の内外壁面、車輌、船舶等にも用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ当量が250g/eq以上1000g/eq以下の水性エポキシ樹脂を含み、電気伝導度が1.0mS/cm以下である主剤、
活性水素当量が100g/eq以上1000g/eq以下の水性アミン化合物を含む硬化剤、
を含有する水性塗料組成物。
【請求項2】
水性エポキシ樹脂の分子量が500以上2000以下であり、水性アミン化合物の分子量が200以上4000以下であることを特徴とする請求項1に記載の水性塗料組成物。



【公開番号】特開2006−124632(P2006−124632A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61411(P2005−61411)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】