説明

水性塗料組成物

【課題】塗装作業性が良好であり、仕上がり性、付着性、耐水性に優れた塗膜を形成するのに適する水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】ベース塗料(A)および希釈剤(B)を含んでなる水性塗料組成物であって、ベース塗料(A)が、リン酸基含有重合性不飽和モノマー0.1〜10質量%含む重合性不飽和モノマー成分を共重合してなる水性アクリル樹脂(A1)を含有し、希釈剤(B)が、増粘剤(B1)および水を含有するものであることを特徴とする水性塗料組成物、水性アクリル樹脂(A1)および水性ウレタン樹脂(A2)の配合割合が、水性アクリル樹脂(A1)/水性ウレタン樹脂(A2)固形分質量比で1/99〜90/10の範囲内であることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温乾燥または強制乾燥の条件でも塗装作業性が良好で仕上がり性、付着性に優れた塗膜を形成でき、ベースコート塗料として有用な水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディ等における上塗り塗膜の形成方法として例えば、ベースコート塗料を塗装し次いでクリヤーコート塗料を塗装する仕上げ塗装が行われている。近年、環境保全の点からベースコート塗料として水系の塗料が採用されつつあり、常温乾燥や強制乾燥により塗膜形成を行うことのある自動車補修塗装の分野においても水系化の検討がなされてきた。
【0003】
例えば特許文献1において本出願人は、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂、および顔料を主成分とし、中和剤として、沸点が150℃以下で1分子中に水酸基を1つ以上有するアミンを用いることを特徴とする水性塗料組成物を提案した。
【0004】
該水性塗料組成物においては、常温乾燥や強制乾燥の条件でも耐水性に優れる塗膜を形成することができるが、該水性塗料組成物をベースコートとし、該ベースコート塗膜上に有機溶剤希釈型のクリヤーコートを塗装することにより形成された複層塗膜は、屋外での経年の暴露で、特にベースコート塗膜とクリヤーコート塗膜との間で層間ハガレが生じる場合があり、さらに塗膜を水中に浸漬した後の付着性(耐水付着性ということがある)に劣るという問題があった。
【0005】
こうした問題点に対し、本出願人は特許文献2において、水酸基を有する水性ウレタン樹脂および特定の水溶性アクリル樹脂を特定割合で含む水性塗料組成物を提案した。該組成物によれば、耐水付着性、耐候性に優れ、しかも仕上がり性に優れた塗膜を形成しうるものであるが、該ベースコートの膜厚が厚く、トップクリヤーの膜厚が薄い場合において、塗装される素材によっては付着性、特に耐水付着性が十分とはいえない問題点があった。また、自動車補修塗装などの塗装現場では、湿度や温度などの塗装環境が各現場によって大きく異なり、塗装作業性や形成塗膜の仕上がり性の格差が塗装現場によって生じるという問題も有していた。
【0006】
【特許文献1】特開平11−124545号公報
【特許文献2】特開2005−89613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、塗装作業性が良好であり、仕上がり性、付着性、耐水性に優れた塗膜を形成するのに適する水性塗料組成物およびそれを用いた塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、特定の水性アクリル樹脂を含有するベース塗料と、増粘剤および水を含む希釈剤とからなる水性塗料組成物が、塗装作業性、付着性、耐水性等の物性に優れた塗膜を形成することができることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
即ち本発明は
1. ベース塗料(A)および希釈剤(B)を含んでなる水性塗料組成物であって、ベース塗料(A)が、リン酸基含有重合性不飽和モノマーを0.1〜10質量%含む重合性不飽和モノマー成分を共重合してなる水性アクリル樹脂(A1)を含有し、希釈剤(B)が、増粘剤(B1)および水を含有するものであることを特徴とする水性塗料組成物、
2. リン酸基含有重合性不飽和モノマーが、式(1)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表す)
で表される化合物である1項に記載の水性塗料組成物、
3. ベース塗料(A)が、さらに水性ウレタン樹脂(A2)を含有する1項または2項に記載の水性塗料組成物、
4. 水性アクリル樹脂(A1)および水性ウレタン樹脂(A2)の配合割合が、水性アクリル樹脂(A1)/水性ウレタン樹脂(A2)固形分質量比で1/99〜90/10の範囲内である3項に記載の水性塗料組成物、
5. ベース塗料(A)が、さらにアクリル乳化重合体(A3)を含有する1項ないし4項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物、
6. ベース塗料(A)が、さらに増粘剤(A4)を含有する1項ないし5項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物、
7. 希釈剤(B)中における増粘剤(B1)の含有量が、0.01〜10質量%の範囲内である1項ないし6項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物、
8. 希釈剤(B)が、親水性有機溶剤を含有する1項ないし7項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物、
9. 親水性有機溶剤が、ジエチレングリコールエーテル系有機溶剤および/またはジプロピレングリコールエーテル系有機溶剤を含む8項に記載の水性塗料組成物、
10. 親水性有機溶剤が、アルコール系有機溶剤、エチレングリコールエーテル系有機溶剤、プロピレングリコールエーテル系有機溶剤およびエステル系有機溶剤から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤を含む8項に記載の水性塗料組成物、
11. 希釈剤(B)の使用量が、ベース塗料(A)の質量に対して30〜200質量%の範囲内にある1項ないし10項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物、
12. 増粘剤(A4)および増粘剤(B1)が、無機系増粘剤とポリアクリル酸系増粘剤、ウレタン会合型増粘剤とポリアクリル酸系増粘剤、ウレタン会合型増粘剤と無機系増粘剤の組み合わせから選ばれるものであることを特徴とする6項ないし11項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に用いられるベース塗料と希釈剤はそれぞれの貯蔵安定性が良好であり、使用直前に両者を混合することにより得られる本発明の水性塗料組成物は、塗装作業性が良好で、常温乾燥または強制乾燥の条件でも乾燥性に優れ、仕上がり性、付着性、耐水性、耐水付着性等に優れる塗膜を形成することができる。また、水性塗料組成物を上記構成とすることで塗装環境の変化に伴い生じる仕上がり性、塗膜物性の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ベース塗料(A):
本発明に使用されるベース塗料(A)に含有される水性アクリル樹脂(A1)の共重合成分であるリン酸基含有重合性不飽和モノマーは、分子中にリン酸基および重合性不飽和基を有する化合物が挙げられる。本発明において重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基等を挙げることができ、(メタ)アクリロイル基が特に好適である。
【0014】
上記リン酸基含有重合性不飽和モノマーの一例としては、例えば下式(1)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表す)
で表される化合物を挙げることができる。その具体例としては例えば、(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2−アクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート、(2−メタクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート等を挙げることができ、これらは1種で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
また、本発明においては、上記リン酸基含有重合性不飽和モノマーが、ポリオキシアルキレン単位を分子中に有するものであってもよい。
【0018】
かかるリン酸基およびポリオキシアルキレン単位を有する重合性不飽和モノマーとしては例えば下記式(2)で表されるモノマーを挙げることができる。

【0019】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜30の整数を表す。)。
【0020】
上記式(2)で表されるモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸にアルキレンオキサイドを溶媒中で触媒を用いて付加させポリアルキレングリコールモノエステルとし、このものをオキシ塩化リンと反応させることでリン酸をモノエステル化し、その後、生成物を加水分解することにより製造することができる。なお、オキシ塩化リンの代わりに、正リン酸、メタリン酸、無水リン酸、3塩化リン、5塩化リン等を用いて、常法により製造することもできる。
【0021】
上記付加反応において、使用するアルキレンオキサイドは、炭素数2〜4のものが好適である。具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、およびブチレンオキサイド、これらのブロック体等が挙げられ、単独でまたは2種以上組み合わせることも可能である。
【0022】
上記モノマー(2)として例えば、アシッドホスホオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシヘキサプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシドデカエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシドデカプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
また、上記リン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、モノアルキル(ブチル、デシル、ラウリル、ステアリルなど)リン酸にグリシジルメタクリレートを付加させて得た重合性不飽和モノマー、ベンジルリン酸にグリシジルメタクリレートを付加させて得た重合性不飽和モノマーも包含することができる。
【0024】
本発明において、上記水性アクリル樹脂(A1)に該モノマーを共重合することにより、本発明の水性塗料組成物から形成される塗膜の被塗面に対する付着性、耐水性、耐水付着性を向上させることができるものであり、その共重合量としては、水性アクリル樹脂(A1)の製造に使用される全モノマー中に0.1〜10質量%であり、好ましくは0.1〜7質量%、さらに好ましくは0.3〜3質量%の範囲内であることが望ましい。
【0025】
上記水性アクリル樹脂(A1)において、上記リン酸基含有重合性不飽和モノマーに共重合されるその他の重合性不飽和モノマーとしては、上記モノマーと共重合可能な重合性不飽和基を含有する化合物が挙げられ、その具体例としては例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学社製)等の直鎖状または分岐状の炭化水素基含有重合性不飽和モノマー;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基含有重合性不飽和モノマー;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニルモノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体などの水酸基を有する(メタ)アクリレート;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート等;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレートおよびそのナトリウム塩やアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
本発明において上記水性アクリル樹脂(A1)は、本発明の水性塗料組成物から形成される塗膜の付着性、耐水付着性の点から、水性アクリル樹脂(A1)を構成する重合性不飽和モノマーからなる共重合体のガラス転移温度が、−50〜60℃、好ましくは−20〜35℃の範囲内であることが望ましい。
【0027】
本明細書において、ガラス転移温度(絶対温度)は、下記式により算出される値である。
【0028】
1/Tg=W/T+W/T+・・・W/T
式中、W、W・・・Wは各モノマーの質量%〔=(各モノマーの配合量/モノマー全質量)×100〕であり、T、T・・・Tは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)である。なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、Polymer Hand Book (4th Edition)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が5万程度になるようにして合成し、そのガラス転移温度を示差走査型熱分析により測定したときの値を使用する。
【0029】
上記水性アクリル樹脂(A1)において、その他の重合性不飽和モノマーは、例えば炭素数が6以上の炭化水素基含有重合性不飽和モノマーを含有することが望ましい。
【0030】
該炭素数が6以上の炭化水素基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学社製)等を挙げることができ、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0031】
該モノマーにより、本発明の水性塗料組成物から形成される塗膜の付着性、耐水性を向上させ、架橋剤成分を含むクリヤー塗料を上塗りした際における架橋剤の染み込み性を向上させることができる。
【0032】
該炭素数が6以上の直鎖状または分岐状の炭化水素基含有重合性不飽和モノマーは、水性アクリル樹脂(A1)の製造に使用される全重合性不飽和モノマー中に1〜50質量%、好ましくは15〜35質量%の範囲内で使用することができる。
【0033】
また、上記その他の重合性不飽和モノマーは、水酸基含有重合性不飽和モノマーを含有することが本発明の水性塗料組成物から形成される塗膜の耐水付着性の点から望ましい。
【0034】
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体などの水酸基を有する(メタ)アクリレート;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。該モノマーにより、水性アクリル樹脂(A1)の水に対する溶解性を向上させることができ、また、本発明の水性塗料組成物から形成される塗膜の付着性を向上させることができる。
【0035】
かかる水酸基含有重合性不飽和モノマーは、水性アクリル樹脂(A1)の製造に使用される全重合性不飽和モノマー中に1〜40質量%、好ましくは5〜30質量%の範囲内で使用することができる。
【0036】
また、上記その他の重合性不飽和モノマーは、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有することが望ましい。
【0037】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーにより、本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性を向上させることができる。
【0039】
かかるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーは、水性アクリル樹脂(A1)の製造に使用される全重合性不飽和モノマー中0.1〜15質量%、好ましくは0.1〜10質量%の範囲内で使用することができる。
【0040】
本発明において上記水性アクリル樹脂(A1)は、例えば、上記重合性不飽和モノマーを親水性有機溶剤の存在下、重合開始剤を用いて重合することにより製造することができる。
【0041】
親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系有機溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノtert−ブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル系有機溶剤;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノtert−ブチルエーテル等のジエチレングリコールエーテル系有機溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のプロピレングリコールエーテル系有機溶剤;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のジプロピレングリコールエーテル系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3−メトキシブチルアセテート等のエステル系有機溶剤等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0042】
重合に用いられる重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4,4'−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0043】
また、上記水性アクリル樹脂(A1)は、該樹脂(A1)の水溶解性を向上させ、本発明の水性塗料組成物の仕上がり性を向上させる目的で、樹脂(A1)にカルボキシル基を有する場合はカルボキシル基を中和剤により中和することが望ましい。かかる中和剤としては、カルボキシル基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えばアンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルプロパノールアミンなどのアミン化合物が挙げられ、特にジメチルエタノールアミンが好適である。
【0044】
上記水性アクリル樹脂(A1)の重量平均分子量としては、1000〜100,000好ましくは8,000〜70,000の範囲内であることができる。
【0045】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0046】
本発明において、上記ベース塗料(A)は、本発明の水性塗料組成物の塗装作業性、形成塗膜の塗面平滑性、耐水付着性の点から水性ウレタン樹脂(A2)を含むことが望ましい。
【0047】
本発明において水性ウレタン樹脂(A2)としては、従来公知のものを制限なく使用でき、平均粒子径が0.01〜1.0μm、特に0.01〜0.5μmの範囲内の粒子形態のエマルションを使用することが望ましい。
【0048】
本明細書において、平均粒子径とは、「ナノマイザーN−4」(商品名、コールター社社製、粒度分布測定装置)にて、試料を脱イオン水で希釈して、20℃にして測定した値とする。
【0049】
本発明において上記水性ウレタン樹脂(A2)は、貯蔵安定性および形成塗膜の耐水性の点から、酸価が5〜100mgKOH/g、好ましくは10〜70mgKOH/gの範囲内のものであることが望ましい。
【0050】
本発明において上記水性ウレタン樹脂(A2)は、例えば、ポリイソシアネート、ポリオールおよびカルボキシル基含有ジオールを反応させてなるウレタンプレポリマーを必要に応じて鎖延長剤の存在下、水中に分散することにより得られる樹脂を挙げることができる。
【0051】
ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(または2,6−)ジイソシアネート、1,3−(または1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4´−トルイジンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルエーテルイソシアネート、(m−もしくはp−)フェニレンジイソシアネート、4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン−4,4´,4´´−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4´−ジメチルジフェニルメタン−2,2´,5,5´−テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;これらのウレタン化付加物のビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物等を挙げることができる。
【0052】
上記ポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−プロピレン(ブロックまたはランダム)グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、ポリオクタメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール;ジカルボン酸(アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等)とグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等)との縮重合させたポリオール、例えばポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリ−3−メチルペンチルアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペート等のポリエステルポリオール;ポリカプロラクトンポリオール、ポリ−3−メチルバレロラクトンポリオール;ポリカーボネートポリオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、オクタンジオール、トリシクロデカンジメチロール、水添ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、1,6ヘキサンジオール等の低分子量グリコール類;等が挙げられ、単独でまたは2種以上併用して使用することができる。
【0053】
上記カルボキシル基含有ジオールとしては、例えばジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸等を挙げることができる。
【0054】
本発明において上記水性ウレタン樹脂(A2)は、中和剤により中和することができる。中和剤としては、特に制限はなく、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルプロパノールアミンなどのアミン化合物が挙げられる。中和剤はカルボキシル基1当量に対して、通常0.5〜2.0当量、好ましくは0.7〜1.3当量となる割合で、使用することができる。
【0055】
上記水性アクリル樹脂(A1)および水性ウレタン樹脂(A2)の配合割合としては、水性アクリル樹脂(A1)/水性ウレタン樹脂(A2)固形分質量比で、1/99〜90/10好ましくは、1/99〜70/30、さらに好ましくは5/95〜50/50の範囲内にあることが、本発明の水性塗料組成物から形成される塗膜の耐水付着性、研磨作業性の点から望ましい。
【0056】
また、上記ベース塗料(A)は、形成塗膜の耐水付着性の点からアクリル乳化重合体(A3)を含有することが望ましい。
【0057】
本発明におけるアクリル乳化重合体(A3)は、アクリル共重合体が水性媒体中に均一に分散してなるものであり、例えば重合性不飽和モノマーを水および界面活性剤のような分散安定剤の存在下で、1段または多段で乳化重合せしめることによって得ることができる。
【0058】
乳化重合せしめる重合性不飽和モノマーとしては、前記水性アクリル樹脂(A1)で例示した重合性不飽和モノマー類から適宜選ばれたものであることができる。
【0059】
本発明において上記アクリル乳化重合体(A3)は、形成塗膜の付着性、耐水付着性および研磨作業性の点から、アクリル乳化重合体(A3)を構成する重合性不飽和モノマーからなる共重合体のガラス転移温度が、−100〜50℃、好ましくは−70〜25℃の範囲内であることが望ましい。
【0060】
上記アクリル乳化重合体(A3)における好適な共重合成分としては、例えば上記炭素数が6以上の直鎖状または分岐状の炭化水素基含有重合性不飽和モノマーを挙げることができ、該モノマーを使用する場合その使用量としては、アクリル乳化重合体(A3)の製造に使用される全モノマー中10〜80質量%、好ましくは15〜70質量%、さらに好ましくは20〜60質量%の範囲内であることができる。
【0061】
また、アクリル乳化重合体(A3)の水中における安定性と本発明の水性塗料組成物から形成される塗膜の耐水付着性の点から、該アクリル乳化重合体(A3)は、共重合成分として、上記水酸基含有重合性不飽和モノマーおよび/またはカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含んでなることが望ましい。
【0062】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用量としては、アクリル乳化重合体(A3)の製造に使用される全モノマー中1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%の範囲内であることができ、また、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの使用量としては、アクリル乳化重合体(A3)の製造に使用される全モノマー中0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の範囲内であることができる。
【0063】
本発明において、アクリル乳化重合体(A3)は、上記リン酸基含有重合性不飽和モノマーを共重合成分として含有するものであってもよい。かかるリン酸基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合その使用量としては、アクリル乳化重合体(A3)の製造に使用される全モノマー中、0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の範囲内であることができる。
【0064】
上記の通り得られるアクリル乳化重合体(A3)の平均粒子径としては、0.01〜1.0μm、好ましくは0.05〜0.5μmの範囲内とすることができる。
【0065】
本発明において上記ベース塗料(A)が上記アクリル乳化重合体(A3)を含有する場合その配合量としては、形成塗膜の耐水付着性、研磨作業性のバランスから、上記水性アクリル樹脂(A1)固形分100質量部を基準にして、1〜200質量部、好ましくは5〜180質量部の範囲内にあることが望ましい。
【0066】
本発明において、ベース塗料(A)は貯蔵安定性の点から、増粘剤(A4)を含有することができる。かかる増粘剤(A4)としては、従来公知のものを制限なく使用することができ、具体的には例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、有機モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリアクリル酸系増粘剤;「UH−814N」、「UH−462」、「UH−420」、「UH−472」、「UH−540」(以上、旭電化社製)、「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」(以上、サンノプコ社製)等のウレタン会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等を挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0067】
本発明において上記増粘剤(A4)は、ベース塗料(A)中に含まれる樹脂固形分を基準にして一般に0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜10質量%の範囲内で含まれることが望ましい。
【0068】
本発明において、上記ベース塗料(A)は、後述の希釈剤(B)との混和性を良好にせしめ、本発明の水性塗料組成物中の増粘剤によるレオロジーコントロール効果を向上させ、また形成される塗膜の乾燥性または造膜性を向上させることができることから親水性有機溶剤を含有することが望ましい。かかる親水性有機溶剤としては、上記水性アクリル樹脂(A1)の説明で列記したごとき化合物の中から単独でまたは2種以上を適宜選択して使用することができる。
【0069】
上記親水性有機溶剤は、上述の通り樹脂成分の反応溶媒として配合されてもよいが、そのまま配合してもよい。
【0070】
本発明において上記ベース塗料(A)中における親水性有機溶剤の含有量としては、水性アクリル樹脂(A1)の樹脂固形分100質量部を基準として50〜400質量部、好ましくは100〜300質量部の範囲内にあることがベース塗料(A)の貯蔵安定性、水性塗料組成物の塗装作業性、仕上がり性の点から望ましい。
【0071】
また、被塗物に対する濡れ性または造膜性を向上させることができることから、上記ベース塗料(A)は疎水性有機溶剤を含有してもよい。本発明でいうところの疎水性有機溶剤は、HLB値が7未満、且つ分子中に水酸基を有する化合物を挙げることができ、例えば、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル等のエチレングリコールエーテル系溶剤;プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル系溶剤等を挙げることができ、これらは単独で或いは2種以上を選択して使用することができる。これらの中でもn−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル等が好適であり、特にエチレングリコールモノヘキシルエーテルおよびエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルが好適である。
【0072】
尚、本明細書においてHLB値は、デーヴィス計算法により得られる値を採用している。デーヴィス計算法によるHLB値の算出方法は、Proc.2nd Intern.Congress of Surface Activity,vol.1(1957),P426に記載がされている。
【0073】
上記ベース塗料(A)中における疎水性有機溶剤の含有量としては、水性アクリル樹脂(A1)の樹脂固形分100質量部を基準として10〜400質量部、好ましくは25〜300質量部の範囲内であることがベース塗料(A)の貯蔵安定性の点から望ましい。
【0074】
本発明の水性塗料組成物は、顔料を実質的に含有しないクリヤー塗料であっても顔料を含有するエナメル塗料であってもよく、エナメル塗料である場合において、顔料はベース塗料(A)に包含されることが望ましい。用いられる顔料としては、通常塗料分野で用いられる光輝性顔料、着色顔料、体質顔料等の顔料が特に制限なく使用できる。光輝性顔料として例えば、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、鉛粉、亜鉛末、リン化鉄等のメタリック顔料;パール状金属コーティング雲母粉、マイカ状酸化鉄等のパール顔料を挙げることができ、着色顔料としては、酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料;等をあげることができ、体質顔料としては、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、マイカ粉などを挙げることができる。
【0075】
本発明において顔料としてメタリック顔料を使用する場合、その形状としては特に限定されないが燐片状であることが好適であり、また、リン酸基あるいはスルホン酸基を含有する処理剤で分散処理され被覆されていることが水素ガス発生抑制の点から好適である。 リン酸基あるいはスルホン酸基含有処理剤には従来公知の低分子化合物や共重合体が特に制限なく適用できる。
【0076】
上記顔料の配合量としては、顔料の種類等によって調整することができるが一般にはベース塗料(A)中に含まれる樹脂成分の固形分100質量部に対して0.1〜300質量部、好ましくは0.5〜200質量部、さらに好ましくは1〜150質量部の範囲内であることができる。
【0077】
上記ベース塗料(A)においては、通常水性塗料の膜形成成分として使用される他の水溶性および/または水分散性樹脂を適宜選択し併用してもよい。かかる他の水溶性および/または水分散性樹脂としては、例えばアルキド系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂などを水溶性または水分散化したものが挙げられる。
【0078】
上記ベース塗料(A)には、さらに必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、ポリマー微粒子、分散助剤、塩基性中和剤、防腐剤、シランカップリング剤、消泡剤、硬化触媒などの水性塗料調整の際に通常用いられる他の成分を配合してもよい。
【0079】
本発明において、上記ベース塗料(A)の粘度としては、特に制限されるものではないが、貯蔵安定性の点から、100〜2000mPa・sec、好ましくは600〜2000mPa・sec、さらに好ましくは700〜1600mPa・secの範囲内にあることができる。本明細書において、粘度は、試料を25℃に調製し、「デジタル式ビスメトロン粘度計VDA型」(商品名、芝浦システム株式会社製)を用いて回転速度60rpmにて測定した値とする。
【0080】
また、上記ベース塗料(A)は、pHが6.0〜10.0、好ましくは7.0〜9.0の範囲内に調整されることが望ましい。ベース塗料(A)のpHがこの範囲であることにより、後述の希釈剤(B)との混和性が良好であり、また混合した時点におけるベース塗料(A)/希釈剤(B)混合塗料の粘度を適正な粘度とすることができ、塗装作業性をより一層向上させることができる。pHの調整には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水等のアミン化合物等の塩基性化合物を用いることもできる。
【0081】
本明細書においてpHは、試料の温度を25℃に調整し、「HM−40V」(商品名、東亜電波工業株式会社製、pHメータ)にて測定した値とする。
【0082】
希釈剤(B):
本発明において、希釈剤(B)は、増粘剤(B1)および水を含有するものである。
【0083】
かかる増粘剤(B1)としては、従来公知のものを制限なく使用することができ、その具体例としては例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、有機モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリアクリル酸系増粘剤;「UH−814N」、「UH−462」、「UH−420」、「UH−472」、「UH−540」(以上、旭電化社製)、「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」(以上、サンノプコ社製)等のウレタン会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等を挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0084】
上記増粘剤(B1)の希釈剤(B)中における含有量としては、希釈剤(B)の粘度および貯蔵安定性の点から、希釈剤(B)中に0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%の範囲内であることができる。
【0085】
また、上記希釈剤(B)は、ベース塗料(A)との混和性、塗装作業性、仕上がり性の点から親水性有機溶剤を含むことが望ましい。
【0086】
上記親水性有機溶剤としては、上記水性アクリル樹脂(A1)の説明で列記した化合物の中から単独でまたは2種以上を適宜選択して使用することができる。
【0087】
本発明において、希釈剤(B)に含まれる親水性有機溶剤としては、塗装作業性、仕上がり性、塗り重ね時の塗面平滑性等の点から、その成分の一部としてジチレングリコールエーテル系有機溶剤および/またはジプロピレングリコールエーテル系有機溶剤を使用することが好適である。その使用量としては、塗装環境等によって適宜調整することができ、例えば、希釈剤(B)中に、0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%の範囲内であることができる。
【0088】
また、塗装作業性、塗膜の乾燥性、上記ベース塗料(A)と希釈剤(B)との混和性の点から、希釈剤(B)に含まれる親水性有機溶剤としては、アルコール系有機溶剤、エチレングリコールエーテル系有機溶剤、プロピレングリコールエーテル系有機溶剤およびエステル系有機溶剤から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤であることが好適である。その使用量としては、塗装環境等によって適宜調整することができ、希釈剤(B)中に、0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%の範囲内であることができる。
【0089】
本発明において上記希釈剤(B)はさらに必要に応じて、顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、塩基性中和剤、防腐剤、シランカップリング剤、消泡剤、表面調整剤、硬化触媒、上記親水性有機溶剤以外の有機溶剤など、水性塗料調整の際に通常用いられる塗料用添加剤など他の成分を含んでいてもよい。
【0090】
上記のようにして得られる希釈剤(B)のpHとしては、例えば3.0〜11.0、特に4.0〜10.0の範囲内に調整されることが好適である。
【0091】
希釈剤(B)のpHがこの範囲であることにより、上記ベース塗料(A)との混和性が良好であり、また混合した時点におけるベース塗料(A)/希釈剤(B)混合塗料の粘度を適正な粘度とすることができ、塗装作業性をより一層向上させることができる。pHの調整には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水等のアミン化合物等の塩基性化合物を用いることもできる。
【0092】
水性塗料組成物:
本発明の水性塗料組成物は、塗装直前にベース塗料(A)と希釈剤(B)とを攪拌混合することにより容易に調整することができる。尚、本明細書において塗装直前とは、例えば、塗装を行う3時間前までの間を挙げることができる。
【0093】
上記水性塗料組成物におけるベース塗料(A)および希釈剤(B)の配合割合としては、塗装環境等により適宜調整できるが、例えば、塗装作業性、形成塗膜の仕上がり外観、隠蔽性の点から、粘度が、100〜400mPa・sec、好ましくは120〜300mPa・secの範囲内となるように調整することができる。
【0094】
このような粘度となるベース塗料(A)に対する希釈剤(B)の量としては、例えば、希釈剤(B)の量が、ベース塗料(A)の質量に対して一般に、30〜200質量%、好ましくは40〜160質量%の範囲内であることができる。
【0095】
本発明において、ベース塗料(A)が増粘剤(A4)を含有する場合において、該増粘剤(A4)および上記希釈剤中(B)の増粘剤(B1)が、無機系増粘剤とポリアクリル酸系増粘剤、ウレタン会合型増粘剤とポリアクリル酸系増粘剤、ウレタン会合型増粘剤と無機系増粘剤の組み合わせから選ばれるものであることが本発明の水性塗料組成物の塗装作業性の点から好適である。
【0096】
上記本発明の水性塗料組成物の塗料形態としてはベース塗料(A)および希釈剤(B)とからなる2液型の組成物であることが望ましい。
【0097】
また、本発明の水性塗料組成物は必要に応じて、ポリイソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤、メラミン硬化剤、オキサゾリン硬化剤、カルボジイミド硬化剤等の硬化剤をさらに含んでいてもよい。
【0098】
水性塗料組成物が上記硬化剤を含んでなる場合においては、硬化剤の種類に応じて該水性塗料組成物の塗料形態を、ベース塗料(A)と希釈剤(B)と硬化剤との3液型とするか、ベース塗料(A)および硬化剤を混合したものを一液とし、このものと希釈剤(B)とを組み合わせる2液型とするか、希釈剤(B)と硬化剤を混合したものを一液とし、このものとベース塗料(A)とを組み合わせる2液型とするか等を適宜選択することができる。
【0099】
上記本発明の水性塗料組成物の塗装に適用される被塗面としては、鉄、アルミニウム、真鍮、銅板、ステンレス鋼板、ブリキ板、亜鉛メッキ鋼板、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Feなど)メッキ鋼板などの金属;これらの金属表面にりん酸亜鉛処理、クロメート処理などの化成処理を施した表面処理金属;プラスチック、木材、コンクリート、モルタル等の被塗物素材面、またはこれら被塗物素材面にプライマー等の下塗りおよび/または中塗りおよび/または上塗り塗料を塗装した塗膜面などが挙げられる。
【0100】
また、塗装手段としては、スプレー塗装、静電塗装、ハケ塗装、ローラー塗装等特に制限はなく、乾燥方法としては、加熱乾燥、強制乾燥、常温乾燥のいずれであってもよい。
【0101】
また、被塗面に上記水性塗料組成物を塗装した後、該塗膜上にトップクリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成させてもよい。
【0102】
この場合において上記水性塗料組成物による塗膜はトップクリヤー塗料を塗装する前に硬化乾燥させてもよいし、未硬化の該塗膜上にトップクリヤー塗料を塗装し、両塗膜を乾燥させることもできる。
【0103】
上記トップクリヤー塗料としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、例えば水酸基などの架橋性官能基を含有するアクリル樹脂やフッ素樹脂を主剤とし、ブロックポリイソシアネート、ポリイソシアネートやメラミン樹脂などを硬化剤として含有する硬化型塗料、あるいはセルロースアセテートブチレート変性のアクリル樹脂を主成分とするラッカー塗料などが好適に使用でき、さらに必要に応じて顔料類、繊維素誘導体類、添加樹脂、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、硬化触媒などの塗料用添加剤を含有することができる。このうちポリイソシアネート硬化剤を含有する塗料を用いた場合、トップクリヤー塗膜から水性塗料組成物による塗膜中にポリイソシアネート硬化剤が一部しみ込んでくるので、水性塗料組成物による塗膜中の水酸基と反応することができ、水性塗料組成物中に硬化剤成分を用いない或いは減量できる上、水性塗料組成物による塗膜とトップクリヤー塗膜間の付着性、耐水付着性を向上させることができ、好適である。
【実施例】
【0104】
次に実施例をあげて、本発明をより具体的に説明する。ここで「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0105】
アクリル樹脂溶液の製造:
製造例1
4リットルのフラスコにプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル550部を加え、窒素気流中で115℃に昇温した。115℃に達した後、メチルメタクリレート350部、n−ブチルアクリレート200部、2−エチルヘキシルメタクリレート250部、4−ヒドロキシブチルアクリレート130部、アクリル酸60部、「ライトエステルPM」(注1)10部にアゾビスイソブチロニトリル10部を溶解したモノマー混合物を3時間かけて加え、2時間熟成を行った。反応終了後、ジメチルエタノールアミンで当量中和し、さらにプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル450部を加えて、ジメチルエタノールアミンでpH7.5に調整し、ガラス転移温度が5℃、重量平均分子量45,000、固形分55%の黄色液状のアクリル樹脂溶液(A−1)を得た。
(注1)「ライトエステルPM」:商品名、共栄社化学株式会社製、(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート。
【0106】
製造例2〜5
製造例1において、モノマー混合物の配合を表1に示す通りとする以外は製造例1と同様にして各アクリル樹脂溶液(A−2)〜(A−5)を得た。
【0107】
【表1】

【0108】
(注2)「NFバイソマーS20W」:商品名、第一工業製薬社製、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(分子末端がメトキシ基であり、分子内にCO基の45量体を含有するメタクリレート)。
【0109】
ウレタン樹脂エマルションの製造:
製造例6
4リットルのフラスコに、数平均分子量2000のポリブチレンアジペート115.5部、数平均分子量2000のポリカプロラクトンジオール115.5部、ジメチロールプロピオン酸23.2部、1,4−ブタンジオール6.5部およびイソホロンジイソシアネート120.1部を重合容器に仕込み、撹拌下に窒素気流中、85℃で7時間反応せしめてNCO含有量4.0%のプレポリマーを得た。次いで該プレポリマーを50℃まで冷却し、アセトン165部を加え均一に溶解した後、撹拌下にトリエチルアミン15.7部を加え、50℃以下に保ちながら脱イオン水600部を加え、得られた水分散体を50℃で2時間保持し水伸長反応を完結させた後、減圧下70℃以下でアセトンを留去し、トリエチルアミンと脱イオン水でpHを8.0に調整し、酸価が26mgKOH/g、固形分30%、平均粒子径が0.15μmのウレタン樹脂エマルション(B−1)を得た。
【0110】
アクリル樹脂エマルションの製造:
製造例7
反応容器に脱イオン水100部、「Newcol707SF」(日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤、固形分30%)2.5部およびモノマー混合物(スチレン9部、n−ブチルアクリレート40部、2−エチルヘキシルアクリレート40部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部、メタクリル酸1部)のうちの1部を加え、窒素気流で攪拌混合し、60℃で3%過硫酸アンモニウム水溶液3部を加えた。次いで、80℃に昇温して前記モノマー混合物の残りの99部、「Newcol707SF」2.5部、3%過硫酸アンモニウム4部および脱イオン水100部からなるプレエマルションを4時間かけて定量ポンプを用いて反応容器に加え、添加終了後1時間熟成を行った。その後、脱イオン水33部を加え、ジメチルエタノールアミンでpH7.5に調整し、ガラス転移温度が−44℃、平均粒子径が0.1μm、固形分30%のアクリル樹脂エマルション(C−1)を得た。
【0111】
製造例8
製造例7において、モノマー混合物の配合を表2に示す通りとする以外は製造例7と同様にしてアクリル樹脂エマルション(C−2)を得た。
【0112】
【表2】

【0113】
アルミニウム顔料ペーストの製造:
製造例9
攪拌混合容器にアルミニウム顔料ペースト「WJE7640」(東洋アルミ社製、金属含有量52%)45.5部、エチレングリコールモノブチルエーテル35部、リン酸基含有樹脂溶液(注3)3部を添加し、攪拌混合してアルミニウム顔料ペースト(D−1)を得た。
(注3)リン酸基含有樹脂溶液:攪拌器、温度調節器および冷熱器を備えた4リットルのフラスコにメトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学社製)20部、ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、リン酸基含有重合性モノマー(注4)15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部、t−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間で上記の混合溶剤に加え、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間で滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。
(注4)リン酸基含有重合性モノマー:4リットルのフラスコにモノブチルリン酸57.5部、イソブタノール41.1部を入れ、空気通気下でグリシジルメタクリレート42.5部を2時間で滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ−ル5.9部を加えて、固形分50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。
【0114】
製造例10
攪拌混合容器に、アルミニウム顔料ペースト「WJE7640」(商品名、東洋アルミ社製、金属含有量52%)45.5部、エチレングリコールモノヘキシルエーテル35部、リン酸基含有樹脂溶液(注3)3部を添加し、攪拌混合してアルミニウム顔料ペースト(D−2)を得た。
【0115】
ベース塗料の製造:
製造例11
製造例9で得たアルミニウム顔料ペースト(D−1)83.5部と製造例1で得たアクリル樹脂溶液(A−1)40部を攪拌混合容器中に加え、1時間攪拌した後、製造例6で得たウレタン樹脂エマルション(B−1)200部とさらに製造例7で得たアクリル樹脂エマルション(C−1)66.7部を混合し、「プライマルASE60」(注5)17.8部を添加し、さらに1時間攪拌を続け、ジメチルエタノールアミンでpHを調整した後脱イオン水を添加し、固形分20%のベース塗料(I−1)を得た。このベース塗料(I−1)の粘度、pHを明細書記載の方法に従って測定したところ、それぞれ1000mPa・sec、8.0であった。
(注5)「プライマルASE60」:商品名、ロームアンドハース社製、ポリアクリル酸系増粘剤、酸価270mgKOH/g、有効成分28%。
【0116】
製造例12〜20
製造例11において、配合組成を表3に示す通りとする以外は製造例11と同様にしてベース塗料(I−2)〜(I−10)を得た。
【0117】
【表3】

【0118】
(注6)「Laponite RD」:商品名、(Rochwood Additives Limited社製、無機系増粘剤、合成ヘクトライト、
[Si(Mg5.34Li0.66)O20(OH)]Na0.66
(注7)「SNシックナー612」:商品名、サンノプコ社製、ポリウレタンポリエーテル系増粘剤、有効成分40%。
【0119】
希釈剤の製造:
製造例21〜23
攪拌混合容器に下記表4の配合組成物を攪拌混合し、希釈剤(II−1)〜(II−3)を得た。
【0120】
【表4】

【0121】
水性塗料の製造:
実施例1
ベース塗料(I−1)100部と希釈剤(II−1)100部を手攪拌によって十分に混合し、水性塗料(E−1)を得た。
【0122】
実施例2〜10および比較例1〜4
配合組成を下記表5に示す通りとする以外は実施例1と同様にしてベース塗料と希釈剤を混合してなる水性塗料(E−2)〜(E−14)を得た。また、表5には各水性塗料の粘度を併記した。粘度の測定は、明細書記載の方法に準じて行い、ベース塗料と希釈剤を混合した後、5分経過後に行った。
【0123】
【表5】

【0124】
塗装および塗膜の乾燥:
実施例11〜20および比較例5〜8
自動車車体用クリヤー塗料を塗装した工程板を、#800耐水ペーパーで研磨、脱脂し、被塗板とした。該被塗板に上記で作成した各水性塗料(E−1)〜(E−14)をベースコート塗料として表6中に記載の各温度、各湿度でエアスプレーにより4段階(ステージ)にて塗装し、タレ性の評価をした。各ステージ間は熱風発生装置により50℃、10m/secの温風を発生させて、各試験塗板に送風し、表面が指触によりベトツキのない状態になるまで乾燥させ、乾燥膜厚が30μmの塗膜を得た。(このように被塗板に対してベース塗膜を設けた塗板を試験塗板Aとする)。さらにトップクリヤー仕上げとして、「レタンPGマルチクリヤーHX(Q)」(商品名、関西ペイント社製、水酸基含有アクリル樹脂を含むクリヤー塗料)100部に「レタンPGマルチクリヤースタンダード硬化剤」(商品名、関西ペイント社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート硬化剤)50部を塗装直前に混合したトップクリヤー塗料を、ベース塗膜上に乾燥膜厚が40μmとなるようにエアスプレー塗装し、乾燥機を用いて塗板の温度を60℃に保った状態で20分間強制乾燥し、試験塗板を得た。(このように被塗板に対してベース塗膜およびトップクリヤー塗膜からなる複層塗膜を設けた塗板を試験塗板Bとする)。
【0125】
評価試験:
上記の通り作成した試験塗板AまたはBに関し、以下の各項目について評価試験を行った。結果を表6に示す。
【0126】
【表6】

【0127】
(1)タレ性:各水性塗料を2ステージスプレー塗装した段階での被塗板上での各水性塗料のタレ性を目視で評価した。
○:良好、
△:スプレー塗装時のタレがわずかに見られる、
×:不良(著しいタレが見られる)。
【0128】
(2)塗膜外観:各試験塗板Aの塗膜面を目視で評価した。
◎:塗面が平滑である、
○:塗面にわずかに凹凸がある、
△:塗面に凹凸がある、
×:塗面に大きな凹凸がある。
【0129】
(3)仕上り性:各試験塗板Bの塗膜面を目視で評価した。
◎:アルミ顔料が塗面に対して平行かつ均一に配向し、メタリックムラの発生が全く認められない、
○:メタリックムラの発生が少し認められた、
△:メタリックムラの発生が多く認められた、
×:メタリックムラの発生が多くみられ、且つワレ、チヂミ等の塗膜欠陥が多く認められた。
【0130】
(4)初期付着性:各試験塗板Bに素地に達するようにカッターで切り込みを入れ、大きさ1mm×1mmのゴバン目を100個作り、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存数を調べた。
◎:100個残存、
○:99〜90個残存、
△:89〜41個残存、
×:40個以下残存。
また、ゴバン目が剥離した場合における剥離位置を表中に併記した。
(イ):被塗板表面と各ベース塗膜との界面、
(ロ):各ベース塗膜とトップクリヤー塗膜との界面。
【0131】
(5)耐水性:各試験塗板Bを40℃の温水に10日間浸漬し、引き上げてから各塗膜表面を観察した。
◎:非常に良好、
○:良好、
△:わずかに白化がみられる、
×:フクレ、白化などの異常が見られる。
【0132】
(6)耐水付着性:各試験塗板Bを40℃の温水に10日間浸漬し、引き上げ、室温で12時間乾燥してから、上記(4)の初期付着性と同様の方法でゴバン目試験を行い評価した。
【0133】
(7)促進耐候性:各試験塗板Bを、Qパネル(株)製促進耐候性試験機(QUV)を用いた促進耐候性試験に供した。試験条件は、(紫外線照射:70℃で8時間〜湿潤:4時間)の繰り返しを100時間行った後、試験後の塗板を40℃の温水に2日間浸漬するのを1サイクルとした。このサイクルを2回繰り返した塗板を上記(4)の初期付着性と同様の方法でゴバン目試験を行い評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース塗料(A)および希釈剤(B)を含んでなる水性塗料組成物であって、ベース塗料(A)が、リン酸基含有重合性不飽和モノマーを0.1〜10質量%含む重合性不飽和モノマー成分を共重合してなる水性アクリル樹脂(A1)を含有し、希釈剤(B)が、増粘剤(B1)および水を含有するものであることを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
リン酸基含有重合性不飽和モノマーが、式(1)
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表す)
で表される化合物である請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
ベース塗料(A)が、さらに水性ウレタン樹脂(A2)を含有する請求項1または2に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
水性アクリル樹脂(A1)および水性ウレタン樹脂(A2)の配合割合が、水性アクリル樹脂(A1)/水性ウレタン樹脂(A2)固形分質量比で1/99〜90/10の範囲内である請求項3に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
ベース塗料(A)が、さらにアクリル乳化重合体(A3)を含有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
ベース塗料(A)が、さらに増粘剤(A4)を含有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
希釈剤(B)中における増粘剤(B1)の含有量が、0.01〜10質量%の範囲内である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項8】
希釈剤(B)が、親水性有機溶剤を含有する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項9】
親水性有機溶剤が、ジエチレングリコールエーテル系有機溶剤および/またはジプロピレングリコールエーテル系有機溶剤を含む請求項8に記載の水性塗料組成物。
【請求項10】
親水性有機溶剤が、アルコール系有機溶剤、エチレングリコールエーテル系有機溶剤、プロピレングリコールエーテル系有機溶剤およびエステル系有機溶剤から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤を含む請求項8に記載の水性塗料組成物。
【請求項11】
希釈剤(B)の使用量が、ベース塗料(A)の質量に対して30〜200質量%の範囲内にある請求項1ないし10のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項12】
増粘剤(A4)および増粘剤(B1)が、無機系増粘剤とポリアクリル酸系増粘剤、ウレタン会合型増粘剤とポリアクリル酸系増粘剤、ウレタン会合型増粘剤と無機系増粘剤の組み合わせから選ばれるものであることを特徴とする請求項6ないし11のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。

【公開番号】特開2007−191686(P2007−191686A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282857(P2006−282857)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】