説明

水性塗料組成物

【課題】塗膜形成後における撥水効果の低下を抑制し、優れた撥水性能を安定して発揮することができる水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】合成樹脂エマルション(A)を固形分換算で100重量部、アミノ基含有オルガノシロキサン化合物(B)を1〜100重量部、カルボキシル基含有高分子化合物(C)を1〜100重量部含み、さらに前記(B)成分と前記(C)成分との塗料中での反応を抑制するために有効な揮発性塩基(D)を含む。前記合成樹脂エマルション(A)としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及び環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂が99:1〜30:70の重量比率でエマルション粒子内に混在する合成樹脂エマルション(A−1)が好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な水性塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、土木構造物等の表面に防水性、汚染防止性等を付与するため材料として撥水性塗料が知られている。撥水性塗料の一例としては、フッ素樹脂を含有するもの等が挙げられ、これらから形成される塗膜表面は、水に対する接触角が高く、水との接触面積を小さくすることで水をはじき、防水性、汚染防止性等を付与することができる。例えば、特開平8−92499号公報(特許文献1)には、特定の撥水成分と有機溶剤系樹脂からなる撥水性塗料が記載されている。
しかし、当該公報に記載の撥水性塗料は有機溶剤を媒体とするものである。近年、塗料分野において溶剤系から水性系への要望が高まりつつあるなか、撥水性塗料も例外ではなく水性系の材料が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
水性タイプの撥水性塗料として、例えば特開2003−34586号公報(特許文献2)には、撥水剤を含有させたスチレンアクリル樹脂エマルション塗料が記載されている。また、特開2003−301139号公報(特許文献3)には、樹脂水性液に、特定の水性撥水剤を配合してなる水性塗料が記載されている。しかしながら、特許文献2や特許文献3に記載の塗料では、塗膜形成後、初期段階においてはある程度の撥水効果が発揮されるものの、長期間太陽光や降雨等に曝されると経時的に撥水性能が低下してしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、以上のような問題点に鑑みなされたものであり、塗膜形成後における撥水効果の低下を抑制し、優れた撥水性能を安定して発揮することができる水性塗料組成物を得ることを目的とするものである。
【0005】
【特許文献1】特開平8−92499号公報
【特許文献2】特開2003−34586号公報
【特許文献3】特開2003−301139号公報
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、合成樹脂エマルション、アミノ基含有オルガノシロキサン化合物、カルボキシル基含有高分子化合物、及び揮発性塩基を必須成分とする水性塗料組成物に想到し、本発明を完成させるに到った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.合成樹脂エマルション(A)を固形分換算で100重量部、アミノ基含有オルガノシロキサン化合物(B)を1〜100重量部、カルボキシル基含有高分子化合物(C)を1〜100重量部含み、さらに前記(B)成分と前記(C)成分との塗料中での反応を抑制するために有効な揮発性塩基(D)を含むことを特徴とする水性塗料組成物。
2.前記合成樹脂エマルション(A)として、
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及び環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂が99:1〜30:70の重量比率でエマルション粒子内に混在する合成樹脂エマルション(A−1)
を含むことを特徴とする1.記載の水性塗料組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水性塗料組成物は、その形成塗膜において、初期の撥水効果を保持し続けることができる。したがって、本発明組成物によれば、優れた撥水性能を安定して得ることができ、防水性、汚染防止性等においても有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0010】
本発明の水性塗料組成物は、合成樹脂エマルション(A)、アミノ基含有オルガノシロキサン化合物(B)、カルボキシル基含有高分子化合物(C)、及び揮発性塩基(D)を必須成分として含むものである。本発明組成物では、塗装直後から、揮発性塩基(D)が揮発し、pHの低下が起こる。これにより、アミノ基含有オルガノシロキサン化合物(B)のアミノ基の水素化が促進され、カチオン電荷が大きくなる。本発明では、このアミノ基含有オルガノシロキサン化合物(B)のアミノ基と、カルボキシル基含有高分子化合物(C)のカルボキシル基とのイオン的相互作用により、これら成分が塗膜中に固定化され、撥水性能において持続性を発揮することが可能となる。
【0011】
本発明組成物における合成樹脂エマルション(A)(以下「(A)成分」という)は、結合材として作用するものであり、種々の合成樹脂エマルションを用いることができる。(A)成分としては、例えば、アクリル樹脂エマルション、酢酸ビニル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリルシリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション等が挙げられる。(A)成分の重量平均分子量は、通常100000以上である。
【0012】
本発明組成物における(A)成分としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及び環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂が99:1〜30:70の重量比率でエマルション粒子内に混在する合成樹脂エマルション(A−1)(以下「(A−1)成分」という)が好適である。本発明では、このような(A−1)成分を用いることにより、撥水性、造膜性、ひび割れ防止性等の各物性を高めることができ、塗料貯蔵中における撥水効果の失活を抑制することもできる。さらに(A−1)成分は、塗膜形成後における撥水効果保持にも有効に作用するものである。
(A−1)成分におけるアクリル樹脂とシリコーン樹脂の形態は特に限定されず、均一に混ざり合った形態であってもよいが、海島構造等により相互に分離した形態が好適である。(A−1)成分におけるアクリル樹脂とシリコーン樹脂の重量比率は、通常99:1〜30:70であり、好ましくは97:3〜40:60である。
【0013】
(A−1)成分を構成するアクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする重合体であり、必要に応じその他のモノマーを共重合したものである。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、(A)成分を構成する全モノマーに対し、通常30重量%以上、好ましくは40〜99.9重量%、より好ましくは50〜99.5重量%である。
【0014】
その他のモノマーとしては、例えばカルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ピリジン系モノマー、水酸基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、芳香族モノマー等が挙げられる。これらモノマーの使用量は、(A)成分を構成する全モノマーに対し、通常0.1〜60重量%、好ましくは0.5〜50重量%である。
【0015】
(A−1)成分におけるシリコーン樹脂は、環状シロキサン化合物を重合して得られるものである。環状シロキサン化合物としては、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。このような環状シロキサン化合物を重合する際には、直鎖状シロキサン化合物、分岐状シロキサン化合物、アルコキシシラン化合物等を用いることもできる。このうち、アルコキシシラン化合物としては、分子中に1個以上のアルコキシル基を有するシラン化合物が使用でき、例えばテトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等の他、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が使用できる。シリコーン樹脂の平均分子量は、通常10000以上、好ましくは50000以上である。
【0016】
本発明における(A)成分としては、特に、上述の如きアクリル樹脂とシリコーン樹脂が混在する合成樹脂エマルションであって、アクリル樹脂及びシリコーン樹脂が混在する外層と、アクリル樹脂を含む内層を有し、外層におけるアクリル樹脂のガラス転移温度よりも内層におけるアクリル樹脂のガラス転移温度が低く設定された多層構造型合成樹脂エマルション(A−2)(以下「(A−2)成分」という)が好適である。このような(A−2)成分を使用すれば、撥水性能において一層顕著な効果を得ることができ、さらにひび割れ防止性等の塗膜性能を高めることもできる。外層と内層の重量比率は、通常80:20〜20:80、好ましくは70:30〜30:70である。
【0017】
このような(A−2)成分は、例えば、内層を構成するアクリル樹脂を乳化重合により合成した後、外層を構成するアクリル樹脂及びシリコーン樹脂を乳化重合により合成する方法等によって得ることができる。
(A−2)成分においては、内層を構成する樹脂として上述の如きシリコーン樹脂が含まれていてもよい。内層にシリコーン樹脂が含まれることにより、ひび割れ防止性等を高めることができる。
ここで、内層を構成するアクリル樹脂のガラス転移温度(以下「Tg」という)は、通常−60〜20℃(好ましくは−50〜10℃)に設定すればよい。外層のTgは、通常20〜100℃(好ましくは30〜90℃)である。各層のアクリル樹脂のTgがこのような範囲内であれば、上述の如き効果を安定して得ることができる。なお、本発明におけるTgは、Foxの計算式により求められる値である。
【0018】
本発明組成物における(B)成分は、アミノ基含有オルガノシロキサン化合物(B)(以下「(B)成分」という)である。この(B)成分は、本発明組成物の形成塗膜に撥水性を付与する成分である。さらに(B)成分は、塗膜の耐水性等における物性向上にも寄与するものである。
【0019】
本発明組成物における(B)成分は、通常下記式(1)、(2)で示される単位を有するものである。
【0020】
【化1】

【化2】

(式中、Rは同一または異なって、アルキル基、アリール基、アラルキル基を示し、Rはアルキレン基、オキシアルキレン基を示す。Xはアミノ基示す。m,nは1以上の整数である。)
【0021】
(B)成分のアミノ基としては、例えば−NH、−NHCH、−N(CH、−NH(CHNH、−NH(CHNHCH、−NH(CHN(CH等が挙げられる。
【0022】
(B)成分の形態は、水中に分散した形態であれば特に制限されず、界面活性剤を用いた強制乳化型エマルション、あるいは自己乳化型エマルションのいずれであってもよい。
【0023】
(B)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、固形分換算で通常1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部である。(B)成分が1重量部より少ない場合は、撥水性において十分な効果が得られ難い。(B)成分が100重量部より多い場合は、塗膜の耐汚染性等が低下するおそれがある。
【0024】
本発明組成物における(C)成分は、カルボキシル基含有高分子化合物(C)(以下「(C)成分」という)である。本発明では、このような(C)成分が必須成分として含まれることにより、上述の(B)成分が塗膜中に固定化され、長期にわたり撥水性を発揮することが可能となる。
【0025】
(C)成分としては、カルボキシル基を有する各種樹脂が使用可能である。(C)成分の具体例としては、例えば、アクリル酸系樹脂、スチレン−アクリル酸系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、スチレン−アクリル酸−マレイン酸系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0026】
上記(C)成分のうち、アクリル酸系樹脂とは、アクリル酸系モノマーを必須成分として得られる樹脂であり、スチレン−アクリル酸系樹脂とは、アクリル酸系モノマーとスチレン系モノマーを必須成分として得られる樹脂である。また、スチレン−マレイン酸系樹脂とは、スチレン系モノマーとマレイン酸系モノマーを必須成分として得られる樹脂であり、スチレン−アクリル酸−マレイン酸系樹脂とは、スチレン系モノマーとアクリル酸系モノマーとマレイン酸系モノマーを共重合して得られる樹脂である。ウレタン系樹脂は、ウレタン結合を介して高分子化された骨格にカルボキシル基を有する樹脂である。
【0027】
なお、アクリル酸系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。また、マレイン酸系モノマーとしては、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸アルキルエステル、マレイン酸ヒドロキシアルキルエステル、マレイン酸アルキルアミド等が挙げられる。
【0028】
(C)成分の重量平均分子量は、通常3000以上100000未満(好ましくは5000以上80000以下)程度である。(C)成分の重量平均分子量が小さすぎる場合は、撥水持続性、耐水性等において満足な物性が得られ難くなり、逆に大きすぎる場合は、(C)成分の粘度が高くなり取り扱いが困難となる。
【0029】
(C)成分の混合量は、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、通常、固形分換算で1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部である。このような混合量であれば、形成塗膜の撥水持続性等において十分な効果を得ることができる。(C)成分が1重量部より少ない場合は、経時的に撥水性が低下しやすくなる。(C)成分が100重量部より多い場合は、塗膜の耐汚染性、耐水性等が低下するおそれがある。
【0030】
本発明組成物では、上記(B)成分と(C)成分との塗料中での反応を抑制し、塗料の貯蔵安定性を確保するため、揮発性塩基(D)(以下「(D)成分」という)を必須成分とする。この(D)成分は、塗膜形成時には揮発し、(B)成分と(C)成分の反応を促進させる役割を担うものである。
(D)成分としては、アンモニア、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン等が挙げられる。本発明では、特に、アンモニアが好ましく用いられる。
【0031】
(D)成分の混合量は、(B)成分と(C)成分との塗料中での反応を抑制するために有効な範囲内で適宜設定すればよい。但し、(D)成分の混合量が多すぎる場合は、(D)成分の臭気が強くなり、塗装作業性や周辺環境上あまり好ましいものではない。(D)成分の混合量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、通常0.01重量部〜5重量部(好ましくは0.1〜3重量部)程度である。
【0032】
本発明組成物では、上述の成分に加え、さらに、平均粒子径0.5〜500μmの粉粒体(E)(以下「(E)成分」という)を含むことが望ましい。このような(E)成分を配合することで、塗膜表面に微細な凹凸構造が付与され、塗膜に水滴が接触した際の接触面積を小さくすることができ、撥水効果を高めることができる。
【0033】
(E)成分における好適な平均粒子径の範囲は1〜200μm(さらには3〜100μm)である。なお、(E)成分の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡の観察によるものであり、各粒子の円相当径を直径としたときの粒子径分布(個数基準)を求めることによって得られる値である。
【0034】
(E)成分としては、その材質は特に限定されず各種粉粒体を使用することができる。例えば、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、水酸化アルミニウム等が挙げられる。この他、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、石灰石、珪石、珪砂、砕石、雲母、珪質頁岩、及びこれらの粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、樹脂粉砕物、ゴム粒、プラスチック片、金属粒等や、これらの表面を着色コーティングしたもの等も使用できる。
【0035】
このような(E)成分は、その顔料容積濃度が10〜90%(好ましくは20〜80%)となる範囲内で混合することが望ましい。なお、(E)成分の顔料容積濃度は、乾燥塗膜中に含まれる(E)成分の容積百分率であり、塗料を構成する合成樹脂エマルション及び粉粒体の配合量から計算により求められる値である。
【0036】
本発明組成物では、本発明の効果が著しく損なわれない範囲内であれば、通常塗料に使用可能な各種成分を含むこともできる。このような成分としては、例えば、着色顔料、骨材、繊維、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。本発明組成物は、以上のような成分を常法により均一に混合することで製造することができる。
【0037】
本発明組成物は、主に建築物や土木構造物等の塗装に使用することができるものである。適用可能な基材としては、例えば、石膏ボード、合板、コンクリート、モルタル、磁器タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、ALC板、サイディング板、押出成形板、鋼板、プラスチック板等が挙げられる。これら基材の表面は、何らかの表面処理(例えば、シーラー、サーフェーサー、フィラー、パテ等)が施されたものでもよく、既に塗膜が形成されたもの等であってもよい。
【0038】
本発明組成物の塗装方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り等が可能である。乾式建材を工場内で塗装する場合は、ロールコーター、フローコーター等によって塗装することも可能である。
本発明組成物を塗装する際の塗付量は、塗料の種類や用途により適宜選択すればよいが、通常は0.1〜0.5kg/m程度である。塗付時には、水等で希釈することによって、塗料の粘性を適宜調整することもできる。希釈割合は、通常0〜20重量%程度である。本発明組成物を塗装した後の乾燥は通常、常温で行えばよいが、加熱することも可能である。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0040】
(塗料の製造)
表1に示す配合に従い、各原料を常法により混合・攪拌することによって塗料を製造した。原料としては下記のものを使用した。
【0041】
・樹脂1:アクリル樹脂エマルション(Tg12℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,メタクリル酸;固形分50重量%、重量平均分子量10万以上)
【0042】
・樹脂2:多層構造型合成樹脂エマルション
外層;アクリル樹脂(Tg45℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,メタクリル酸;カルボキシル基含有モノマー5重量%)、
内層;シリコーン樹脂(構成成分;ヘキサメチルシクロトリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン)、
外層と内層の重量比70:30、固形分50重量%、重量平均分子量10万以上
【0043】
・樹脂3:多層構造型合成樹脂エマルション
外層;アクリル樹脂(Tg45℃、構成成分;t−ブチルメタクリレート,n−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,メタクリル酸;カルボキシル基含有モノマー5重量%)、シリコーン樹脂(構成成分;ヘキサメチルシクロトリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン)、外層アクリル樹脂と外層シリコーン樹脂との重量比80:20、
内層;アクリル樹脂(Tg−50℃、構成成分;n−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート)、シリコーン樹脂(構成成分;ヘキサメチルシクロトリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン)、内層アクリル樹脂と内層シリコーン樹脂との重量比80:20、
外層と内層の重量比45:55、固形分50重量%、重量平均分子量10万以上
【0044】
・オルガノシロキサン化合物:アミノ基含有ジメチルシロキサン化合物の乳化分散体(固形分55重量%)
・カルボキシル基含有高分子化合物:アクリル酸系樹脂(構成成分;アクリル酸アルキル‐メタクリル酸共重合体、重量平均分子量20000、固形分50重量%)
・揮発性塩基:25重量%アンモニア水
・粉粒体1:シリカ粉(平均粒子径18μm、比重2.7)
・粉粒体2:酸化チタン(平均粒子径0.2μm、比重4.2)
・造膜助剤:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
・消泡剤:鉱物油系消泡剤
【0045】
(試験方法)
(1)貯蔵安定性
上記方法にて得られた水性塗料を容器内に密封し50℃の恒温槽に7日間貯蔵後、粘度変化を確認した。評価基準は、粘度変化20%未満を「○」、粘度変化20%以上30%未満を「△」、粘度変化30%以上を「×」とした。
【0046】
(2)接触角測定
150×70×0.8mmのアルミニウム板に、エポキシ樹脂系プライマーを塗付量0.1kg/mでスプレー塗装し、温度23℃・相対湿度50%下(以下、標準状態)で8時間乾燥した後、上記方法にて得られた水性塗料を塗付量0.3kg/mでスプレー塗装し、標準状態で14日間乾燥したものを試験体とした。この試験体の塗膜表面に、0.2ccの脱イオン水を滴下し、滴下直後の接触角を協和界面科学株式会社製CA−A型接触角測定装置にて測定した。
【0047】
(3)耐水性試験
150×70×3mmのスレート板に、エポキシ樹脂系プライマーを塗付量0.1kg/mでスプレー塗装し、標準状態で8時間乾燥した後、各水性塗料を塗付量0.3kg/mでスプレー塗装し、14日間養生したものを試験体とした。この試験体を50℃の温水に24時間浸漬した後、JIS K 5600−5−6に準じた碁盤目テープ法にて密着性を評価した。評価基準は、欠損部面積が15%未満のものを「○」、欠損部面積が15%以上35%未満のものを「△」、欠損部面積が35%以上のものを「×」とした。
【0048】
(4)撥水持続性試験
150×70×0.8mmのアルミニウム板に、エポキシ樹脂系プライマーを塗付量0.1kg/mでスプレー塗装し、標準状態で8時間乾燥した後、各水性塗料を塗付量0.3kg/mでスプレー塗装し、標準状態で14日間乾燥したものを試験体とした。この試験体の塗膜表面に、0.2ccの脱イオン水を滴下し、滴下直後の接触角を協和界面科学株式会社製CA−A型接触角測定装置にて測定した。
次いで、試験体を23℃の水中に3時間浸し、標準状態で1時間乾燥後、同様に接触角を測定した。この試験では、水浸漬後の接触角が、初期接触角に対しどの程度低下したかを確認することによって評価した。評価基準は、水浸漬後の接触角の低下が5度未満であったものを「○」、5度以上10度未満であったものを「△」、10度以上であったものを「×」とした。
【0049】
(試験結果)
試験結果を表2に示す。実施例1〜3では、いずれの試験においても優れた結果を得ることができた。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂エマルション(A)を固形分換算で100重量部、アミノ基含有オルガノシロキサン化合物(B)を1〜100重量部、カルボキシル基含有高分子化合物(C)を1〜100重量部含み、さらに前記(B)成分と前記(C)成分との塗料中での反応を抑制するために有効な揮発性塩基(D)を含むことを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
前記合成樹脂エマルション(A)として、
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するアクリル樹脂、及び環状シロキサン化合物に由来するシリコーン樹脂が99:1〜30:70の重量比率でエマルション粒子内に混在する合成樹脂エマルション(A−1)
を含むことを特徴とする請求項1記載の水性塗料組成物。

【公開番号】特開2008−63438(P2008−63438A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242773(P2006−242773)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】