説明

水性塗料組成物

【課題】各種要求性能を満たし、貯蔵安定性、塗工適性に優れ、配合する多孔質材料粉末が有する機能性を保持したまま塗膜化できる水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】水性樹脂分散体と、多孔質材料粉末と、界面活性剤とを含む水性塗料組成物であって、水性樹脂分散体の固形分100質量部に対して、多孔質材料粉末を5〜500質量部、界面活性剤を固形分で5〜300質量部含む。水性樹脂分散体は、分散樹脂粒子の平均粒子径が50〜280nmである水性樹脂分散体Aおよび分散樹脂粒子の平均粒子径が330〜1200nmである水性樹脂分散体Bを含み、水性樹脂分散体における水性樹脂分散体Aの固形分換算比率が10〜50質量%、水性樹脂分散体Bの固形分換算比率が50〜90質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質材料を含有し、その機能を低下させることなく塗膜化でき、貯蔵安定性、塗工適性に優れる水性塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題を背景に省エネルギー化が推進されており、住宅分野においても高気密化、高断熱化された鉄骨造、鉄筋コンクリート造などの建築物および一般戸建住宅が増加している。その反面、建築物の高気密化により室内の換気が不十分になると結露やカビの発生、キシレン、トルエン、ホルムアルデヒドのような揮発性有機化合物やアンモニア、メルカプタンのような悪臭物質の滞留によるシックハウス症候群、化学物質過敏症などの健康被害も増加していることから、これらの問題を解決することが急務となっている。
【0003】
このような状況を改善するため、シリカ、ゼオライト、炭、珪藻土等に代表される多孔質材料の持つ吸着機能などを生活環境改善のために幅広く利用することが以前から検討されている。また、このような多孔質材料を粉末化して塗料中に配合し、様々な物品に塗装できる形にすることで更なる活用を目指した検討も行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ゼオライトおよびケイ酸マグネシウムの少なくとも一種と無機質バインダーと分散媒より構成した塗料を用いて室内の臭気成分を吸着脱臭する技術が開示されている。また、特許文献2には、樹脂成分またはビヒクルと炭粉を必須成分として含んでなる着色料を、木材等の室内用壁材に塗装することで吸放湿性と脱臭性を付与できる技術が開示されている。さらに、特許文献3には、植物由来の炭を粉末化し、ポリマーエマルション、セルロース系水溶性ポリマー、有機溶剤を含有させることで分散安定性の優れた炭粉末含有塗料を提供する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−098185号公報
【特許文献2】特許第3841325号公報
【特許文献3】特開2003−268290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に記載された塗料は、分散媒として健康被害の原因物質の一つである揮発性有機化合物を含んでいたり、塗料の貯蔵安定性が充分でなく、貯蔵経時で増粘したり、沈降分離したりするため、使用時に電動ミキサーなどで撹拌均一化して使用しなければならず、撹拌が不十分であるとブツ等の仕上がり不良の原因にもなる。さらに、多孔質材料の特長である吸油量の高さからその塗料組成物はチクソ性が強く発現し、塗装を行う際に安定した粘性を保持できず、カスレや不均一な膜厚分布となる問題や塗装後に期待していた塗膜性能が発揮されないことさえある。特に特許文献3では、セルロース系水溶性ポリマーおよび有機溶剤を使用して、塗料の分散安定性、保存安定性が改良できるとされているが、セルロース系水溶性ポリマーは塗料粘度を高くするため使用量に限界があり、また有機溶剤を多量に使用することは環境問題から好ましくない。
【0007】
本発明の目的は、上記のような塗料の問題点である各種の要求性能を満たし、貯蔵安定性、塗工適性に優れ、配合する多孔質材料粉末が有する機能性を保持したまま塗膜化できる水性塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水性樹脂分散体の樹脂固形分100質量部に対して、多孔質材料粉末5〜500質量部、および界面活性剤の固形分5〜300質量部を必須成分とする水性塗料組成物であって、
水性樹脂分散体が、平均粒子径50〜280nmの樹脂粒子Aと平均粒子径330〜1200nmの樹脂粒子Bとを質量比率でA:B=10:90〜50:50の範囲で含有することを特徴とする、水性塗料組成物である。
【0009】
また本発明は、多孔質材料粉末が、椰子殻活性炭粉、備長炭粉、珪藻土および合成ゼオライトから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、多孔質材料粉末の最大粒子径が100μm以下であることを特徴とする。
また本発明は、水性樹脂分散体の最低成膜温度が30℃以下であることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、水性樹脂分散体の固形分100質量部に対して、界面活性剤の固形分が30〜250質量部であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、界面活性剤が親水性基としてアニオン性基、ノニオン性基およびカチオン性基から選ばれる2種以上の官能基を有する界面活性剤であることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、界面活性剤がノニオン性基としてポリオキシアルキレン基を有するアニオン性の界面活性剤であることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、消泡剤、増粘剤、防腐剤、防カビ剤、防藻剤、抗菌剤および消臭剤から選ばれる少なくとも1種以上の添加剤を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水性樹脂分散体の樹脂固形分100質量部に対して、多孔質材料粉末5〜500質量部、および界面活性剤の固形分5〜300質量部を必須成分とする水性塗料組成物である。水性樹脂分散体が、平均粒子径50〜280nmの樹脂粒子Aと平均粒子径330〜1200nmの樹脂粒子Bとを質量比率でA:B=10:90〜50:50の範囲で含有する。
【0016】
これにより、各種の要求性能、たとえば脱臭、脱色、精製、浄化、調湿性能などの多孔質材料粉末が有する機能性を保持したまま塗膜化でき、かつ塗料の貯蔵安定性、塗工適性を確保することができる。
【0017】
また本発明によれば、多孔質材料粉末として、椰子殻活性炭粉、備長炭粉、珪藻土および合成ゼオライトから選ばれる少なくとも一種を用いることで、脱臭、吸着、調湿などの機能を効率よく付与できる。
【0018】
また本発明によれば、多孔質材料粉末の最大粒子径を100μm以下とすることで、多孔質材料粉末の分散性が向上し、塗膜表面が平滑で比較的均一な外観となり、さらに塗料の貯蔵安定性も向上する傾向にある。
また本発明によれば、水性樹脂分散体の最低成膜温度を30℃以下とすることで、被塗物との付着性がより良好となる。
【0019】
また本発明によれば、水性樹脂分散体の固形分100質量部に対して、界面活性剤の固形分を30〜250質量部とすることで、塗料粘度を適正な範囲とし、塗工適性が確保され、塗料の貯蔵安定性を良好にできる。また脱臭、調湿性能等の多孔質材料粉末が有する機能性を保持したまま塗膜化できる。
【0020】
また本発明によれば、界面活性剤が親水性基としてアニオン性基、ノニオン性基およびカチオン性基から選ばれる2種以上の官能基を有する界面活性剤であり、ノニオン性基としてポリオキシアルキレン基を有するアニオン性の界面活性剤であることが好ましい。
【0021】
これにより、多孔質材料粉末の分散安定性が向上するため、塗料の貯蔵経時での増粘沈降を防止し、さらに有機溶剤を使用せずに塗料の低粘度化、固形分率の上昇が可能となる。
【0022】
また本発明によれば、消泡剤、増粘剤、防腐剤、防カビ剤、防藻剤、抗菌剤および消臭剤から選ばれる少なくとも1種以上の添加剤を含むことで、水性塗料組成物に種々の機能を付加することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、水性樹脂分散体と、多孔質材料粉末と、界面活性剤とを含む水性塗料組成物であって、水性樹脂分散体の固形分100質量部に対して、多孔質材料粉末を5〜500質量部、界面活性剤を固形分で5〜300質量部含む。
【0024】
水性樹脂分散体は、平均粒子径50〜280nmの樹脂粒子Aと平均粒子径330〜1200nmの樹脂粒子Bとを、樹脂粒子Aの質量をAで表わし、樹脂粒子Bの質量をBで表わしたときに、質量比率でA:B=10:90〜50:50の範囲で含有する。
【0025】
以下に、本発明の水性塗料組成物について更に詳細に説明する。
[水性樹脂分散体]
本発明に使用する水性樹脂分散体は、分散樹脂粒子の平均粒子径が50〜280nmの水性樹脂分散体Aと分散樹脂粒子の平均粒子径が330〜1200nmの水性樹脂分散体Bの2種の成分を含む。水性樹脂分散体Aに分散された樹脂粒子Aの平均粒子径が、50nm未満では透気度が低下してしまい、280nmを超えると被塗物への付着性が低下する。また、水性樹脂分散体Bに分散された樹脂粒子Bの平均粒子径が330nm未満では透気度が低下し、1200nmを超えると被塗物への付着性が低下してしまう。さらに好ましくは、水性樹脂分散体Aの分散樹脂粒子の平均粒子径が100〜250nm、水性樹脂分散体Bの分散樹脂粒子の平均粒子径が430〜980nmである。なお、本発明の水性樹脂分散体は、水に樹脂成分が分散したエマルションである。
【0026】
また、水性樹脂分散体は、樹脂粒子Aの質量をAで表わし、樹脂粒子Bの質量をBで表わしたときに、質量比率でA:B=10:90〜50:50の範囲で含有する。すなわち、水性樹脂分散体における水性樹脂分散体Aの固形分換算比率が10〜50質量%、水性樹脂分散体Bの固形分換算比率が50〜90質量%である。水性樹脂分散体Aの固形分換算比率が50質量%より高くなると被塗物への付着性は向上するものの、透気度が低下し、一方水性樹脂分散体Bの固形分換算比率が90質量%より高くなると透気度は向上するものの、被塗物への付着性が低下する。したがって、水性樹脂分散体Aと水性樹脂分散体Bの固形分換算比率を上記の範囲とすることで、透気度と付着性を両立させることができる。さらに好ましい範囲は、水性樹脂分散体Aの固形分換算比率が20〜45質量%、水性樹脂分散体Bの固形分換算比率が80〜55質量%である。
【0027】
また、水性樹脂分散体としては、塗料、接着剤、紙加工剤、繊維加工剤として広く工業的に利用されているもので、水に樹脂が分散したエマルションであれば特に限定されないが、アクリル系エマルション、アクリルスチレン系エマルション、スチレンブタジエン系エマルション、ウレタン系エマルション、エステル系エマルション、エチレン酢酸ビニル系エマルション、酢酸ビニル系エマルション、塩化ビニル系エマルションなどが挙げられ、アクリル系エマルション、アクリルスチレン系エマルション、スチレンブタジエン系エマルションが好ましく、アクリル系エマルション、アクリルスチレン系エマルションがより好ましい。
【0028】
上記の水性樹脂分散体の製造方法としては、公知の乳化重合法や懸濁重合法が採用できる。平均粒子径の異なる水性樹脂分散体Aおよび水性分散体Bが混合された水性樹脂分散体を製造する方法を例示すると、
(i)水中にて乳化剤および重合開始剤などの存在下で、重合性単量体を通常40〜90℃の加温下で乳化重合した後、塩基性物質にて中和し、さらに重合性単量体を加え乳化重合を行う方法、
(ii)水中にて乳化剤および重合開始剤などの存在下で、重合性単量体を通常40〜90℃の加温下で乳化重合を行う。この工程を異なる容器で各1回行い、平均粒子径の異なる水性樹脂分散体を得て混合する方法、
(iii)水中にて粒子径が大きなシード粒子の存在下で、重合性単量体を通常40〜90℃の加温下で乳化重合を行い、その後、粒子径が小さなシード粒子を添加し、さらに重合性単量体を加え乳化重合する方法、
等が挙げられるが、(i)の方法で水性樹脂分散体を製造することが好ましい。
【0029】
本発明で用いられる水性樹脂分散体の固形分率については任意に選定できるが、塗料の塗工適性を確保するため、比較的高い方が好ましく、35〜70質量%が好ましく、より好ましくは50〜68質量%の範囲である。
【0030】
また、本発明で用いられる水性樹脂分散体Aおよび水性樹脂分散体Bは、平均粒子径が異なる2つの粒度分布を有するものであれば、その樹脂組成が同じであっても異なっていても良い。
【0031】
水性樹脂分散体に使用される重合性単量体としては、例えばカルボン酸基を持つ単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸の半エステル、クロトン酸などがあげられる。また、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、ジエン類が挙げられる。(メタ) アクリル酸エステルの例としては、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ) アクリル酸アルキルエステル、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートの例としては、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ) アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ) アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートの例としては、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。また、(メタ)アクリルアミド系単量体、シアン化ビニル類等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド系単量体類としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどがあり、シアン化ビニル類としては、例えば(メタ)アクリロニトリルなどがある。アルド基またはケト基を有する重合性単量体としては、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、ホルミルスチロールなどが挙げられる。芳香族ビニル化合物の例としては、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。ジエン類の例としては、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン等や、それらの併用が挙げられる。
【0032】
本発明で用いられる水性樹脂分散体Aおよび水性樹脂分散体Bは、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシル、スチレン、ブタジエン、アクリル酸、メタクリル酸から選ばれる1種以上の単量体を用いることが好ましく、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸から選ばれる1種以上の単量体を用いることがより好ましい。また、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、ブタジエンから選ばれる1種以上の単量体を99.5〜93質量%、カルボン酸基を持つ単量体を0.5〜7質量%用いることが好ましく、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、ブタジエンから選ばれる1種以上の単量体を99〜96質量%、カルボン酸基を持つ単量体を1〜4質量%用いることがより好ましい。更に、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレンから選ばれる1種以上の単量体を99.5〜93質量%、カルボン酸基を持つ単量体を0.5〜7質量%用いることが好ましく、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレンから選ばれる1種以上の単量体を99〜96質量%、カルボン酸基を持つ単量体を1〜4質量%用いることがより好ましい。また、上記以外の例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、さらに、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピロメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2,3−シクロヘキセンオキサイド、(メタ)アクリル酸アリル等やそれらの併用が挙げられる。
【0033】
本発明で用いられる重合触媒としては、一般に用いられるラジカル重合開始剤であれば特に限定されないが、例えば熱または還元性物質等によってラジカルを生成して重合性単量体の付加重合を起こさせるもので、水溶性または油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物がある。具体的には過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等がある。好ましくは水溶性のものであり、単量体に対して0.1〜1質量%で配合することがより好ましい。なお、重合速度の促進や低温反応を望む場合には、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホオキシレート塩等の還元剤をラジカル重合開始剤と組み合わせて用いることができる。
【0034】
また、必要に応じて分子量調整剤を使用することができる。具体的にはドデシルメルカプタン、ブチルメルカプタン等が挙げられ、使用方法は特に限定されない。また使用量は、全単量体量の2質量%以下が好ましい。
【0035】
本発明で用いられる重合方法としては、単量体を一括して仕込む単量体一括仕込み法や単量体を連続的に滴下する単量体滴下法、単量体と水と乳化剤とを予め混合乳化しておき、これらを滴下するプレエマルション法、あるいは、これらを組み合わせる方法などが挙げられる。
【0036】
また、本発明で用いられる乳化剤としては、特に限定はなく、例えばアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤等を使用することができる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどの高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、スルホコハク酸系界面活性剤、スルホン酸基又は硫酸エステル基と重合性の不飽和二重結合を分子中に有する、いわゆる反応性乳化剤などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルや、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、又は前述の骨格と重合性の不飽和二重結合を分子中に有する反応性ノニオン性界面活性剤などのノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩や、第四級アンモニウム塩などのカチオン性界面活性剤(変性)ポリビニルアルコールなどが挙げられる。これらの乳化剤は単独で用いても良いし、数種類を組み合わせて用いても良い。乳化剤の添加量は、単量体に対して0.2〜4質量%が好ましい。
【0037】
水性樹脂分散体は、エマルションの長期の分散安定性を保つため、塩基性物質、例えばアンモニア、ジメチルアミノエタノールなどのアミン類を始めとする塩基性有機化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩を始めとする塩基性無機化合物等を用いてpH5〜10の範囲に調整することが好ましい。
【0038】
本発明で用いられる水性樹脂分散体の最低成膜温度としては、30℃以下であることが好ましく、最低成膜温度を比較的低くすることで、被塗物との付着性がより良好となる。最低成膜温度は重合性単量体の種類と量を調節することで制御することが出来る。最低成膜温度を高くするには、ホモポリマーTgの高い重合性単量体、例えば、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシルなどを主に使用すればよく、最低成膜温度を低くするには、ホモポリマーTgの低い重合性単量体、例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ブチル、ブタジエンなどを主に使用すればよい。
【0039】
[多孔質材料粉末]
本発明に用いる多孔質材料粉末としては、脱臭、吸着、調湿等に利用されている材料で、多くの細孔を有することで単位体積あたりの表面積が大きく、かつ微粉末化されているものであれば特に限定されないが、例えば炭、シリカゲル、アルミナゲル、合成ゼオライト、珪藻土、焼成炭酸カルシウム等が挙げられる。2種類以上の多孔質材料粉末を併用しても良いが、特に通常の炭よりも多くの細孔と広い表面積を有する活性炭は、脱臭、脱色、精製、浄化、調湿、遠赤効果、電磁波シールド、防ダニ、マイナスイオン発生等の多孔質材料が有する多くの機能性を付与できる点から、全多孔質材料粉末量の50質量%以上配合することが好ましい。
【0040】
本発明で用いられる活性炭粉末としては特に限定されないが、木材、おがくず、木材乾留物、木炭(特に備長炭)、椰子殻及びリグニン等の既知の活性炭原料を好適に用いて製造されており、工業用触媒の担体、脱臭剤、有機溶剤の回収等に利用されている通常の活性炭を塗料、紙加工剤等に利用できるように粉末状に加工したものが好ましく、入手しやすく安価で吸着能力の高い椰子殻を原料に用いることが更に好ましい。
【0041】
多孔質材料粉末の配合量としては、水性樹脂分散体の固形分100質量部に対し5〜500質量部が好ましく、50〜400質量部であることがさらに好ましい。配合量が5質量部より少なくなると多孔質材料粉末の有する機能性が発揮されなくなり、500質量部より多くなると塗膜の耐摩耗性が低下し、チョークマークが発生しやすくなるため適さない。上記の範囲においては、塗料の塗工適性、貯蔵安定性が確保され、また脱臭、調湿性能等の多孔質材料粉末が有する機能性を充分発揮させることができる。
【0042】
また、多孔質材料粉末の最大粒子径としては、100μm以下が好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。最大粒子径が100μm以下の場合、多孔質材料粉末の分散性が向上し、塗膜表面が平滑で比較的均一な外観となり、さらに塗料の貯蔵安定性も向上する傾向にある。多孔質材料粉末の粒子径は、以下のような方法により測定する。まず、多孔質材料粉末に少量の中性洗剤(市販品)および多量の水を加え、超音波装置を用いて水中に多孔質材料粉末を分散させた分散液を調整する。レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−910、株式会社堀場製作所製)を用いて、分散液の粒度分布を測定し、得られたチャートの頻度分布において最大となる粒子径を多孔質材料粉末の最大粒子径とする。
【0043】
[界面活性剤]
本発明に用いる界面活性剤としては、塗料、紙加工剤、繊維加工剤等に利用されている界面活性剤であれば特に限定されず、親水性基としてアニオン性基、ノニオン性基またはカチオン性基を有する界面活性剤等を使用することができる。例えば、ラウリン酸ナトリウムなどの脂肪酸石けん、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルヒドロキシエーテルカルボン酸塩、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、アルカノイルメチルタウライド、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸エステル二塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸エステル二塩、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウムなどの高級アルキル硫酸エステル塩、ロート油などの硫酸化油、硫酸化オレイン酸ブチルなどの硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン、高級アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ジチオリン酸エステル塩などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、脂肪酸アルカノールアミドなどのノニオン性界面活性剤、ラウリルアミン酢酸塩などのアルキルアミン塩、ジヒドロキシエチルステアリルアミンなどのポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミンモノステアリン酸エステルギ酸塩などの脂肪酸エステルアミン塩、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩などの脂肪酸アミドアミン塩、尿素縮合アミン塩、イミダゾリン型、アルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウムなどのアルキルベンジルジメチルアンミニウム塩、第四級アンモニウム有機酸塩、脂肪酸アミド型第四級アンモニウム塩などのカチオン性界面活性剤、アミノ酸型やベタイン型に代表されるカルボン酸塩型両性界面活性剤、硫酸エステル塩型、スルホン酸塩型、リン酸エステル塩型両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテルスルホン酸塩などのノニオン/アニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0044】
さらに、親水性基としてアニオン性基、ノニオン性基およびカチオン性基から選ばれる2種以上の官能基を有した界面活性剤であればより好ましい。界面活性剤の有するアニオン性基としては例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基等、カチオン性基としてはアミノ基、イミダゾリン基等、ノニオン性基としてはポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられ、アニオンまたはカチオン性基は水分散性を付与するために、アニオン性基はナトリウム、アンモニア、アミン等、カチオン性基は塩酸、酢酸等で全部あるいは一部を中和していることが好ましい。さらに、電解質やpHの影響を受けにくく、加水分解安定性にも優れたポリオキシアルキレン基を有するアニオン性界面活性剤を使用すると、併用する多孔質材料粉末の分散安定性が向上するため、塗料の貯蔵経時での増粘沈降を防止し、さらに有機溶剤を使用しない系での塗料の低粘度化、固形分率の上昇が可能となりより好ましい。
【0045】
このような界面活性剤の具体例としてはポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸エステル二塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩等、また市販品としては、共栄社化学株式会社製「フローレンG−700」「フローレンG−700AMP」「フローレンGW−1500」、サンノプコ株式会社製「ノプコスパース6100」、ビックケミージャパン株式会社製の「DISPERBYK−2090」「DISPERBYK−2012」、株式会社日新化学研究所製の「NSD613」「NSD626」「NSD642」等を用いることができる。
【0046】
また、界面活性剤は1種または2種以上を任意に選択して使用することが可能であり、界面活性剤の配合量は水性樹脂分散体の固形分100質量部に対し固形分換算で5〜300質量部が好ましく、30〜250質量部であることがさらに好ましい。配合量が5質量部より少なくなると塗料の粘度が高くなったり、貯蔵経時で凝集沈降したりするため、塗料化が難しく、貯蔵安定性、塗工適性上の問題から塗料固形分率を下げても、結果的に塗工効率が低下するため適さない。また、300質量部より多くなると塗工時の泡残りや乾燥時間の遅延、塗膜の耐水性能低下が見られるため適さない。5〜300質量部の範囲で使用する本発明においては、塗料粘度が適正な範囲にあり、塗工適性が確保され、塗料の貯蔵安定性も良好である。また脱臭、調湿性能等の多孔質材料粉末が有する機能性を保持したまま塗膜化できる。
【0047】
その他、本発明の水性塗料組成物には必要により、添加剤として例えば消泡剤、増粘剤、成膜助剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防カビ剤、防藻剤、抗菌剤、消臭剤等を任意に配合することができる。さらに、得られる塗膜の着色化、厚膜化等のために別途充填材として、例えば非水溶性の有機顔料や無機顔料、顔料以外の粒子状、繊維状または鱗片状のセラミックス、金属または合金、およびこれらの金属の酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物等を添加、分散させることもできる。これらの添加剤及び充填材については、塗料、紙加工剤、繊維加工剤等に利用されているものであれば特に限定されない。
【0048】
本発明の水性塗料組成物は、水性樹脂分散体、多孔質材料粉末、界面活性剤を含み残部を水とすることで、塗料の貯蔵安定性、塗工適性に優れ、配合した多孔質材料粉末の有する機能性を保持したまま塗膜化できることから様々な分野に有用なものである。例えば、一般建築物の内壁、天井、押入、トイレ等の内装用塗料として使用すれば、簡便に塗装可能で居室内の結露やカビの発生防止、揮発性有機化合物や悪臭物質の吸着脱臭、断熱層形成による保温や保冷効果等が期待できる。また、本発明の水性機能性塗料組成物を予め紙、ダンボール、不織布等に塗工したものを成型加工すれば、包装材、フィルター等の様々な製品に、多孔質材料粉末が有する機能性を付与できる。
【実施例】
【0049】
次に実施例および比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例の説明における部および%は特別な記載がない限り、それぞれ質量部および質量%を表す。また、得られた水性塗料組成物の塗料性状および塗膜性能評価については、以下に示す試験評価方法に従って実施した。
【0050】
[試験評価方法]
(1)平均粒子径
水性樹脂分散体の平均粒子径は、リーズ&ノースラップ社製のマイクロトラック粒度分布計(UPA−150)を用いて測定(測定時間:300秒、測定回数:1回、ローディングインデックス:1.5〜3.0)し、得られたチャートの各粒度分布における頻度累積50%の値とした。得られたチャートに2つの粒度分布が存在する場合、小粒子径側の粒度分布を水性樹脂分散体Aの粒度分布とし、大粒子径側の粒度分布を水性樹脂分散体Bの粒度分布とした。また、得られたチャートを体積分布として再計算を行い、その際の各粒度分布の頻度比率を水性樹脂分散体における質量比率とした。
【0051】
(2)固形分率
得られた水性樹脂分散体の固形分率は、予め質量の分かっているアルミニウム製の皿に、測定対象物を約1g正確に秤量し、恒温乾燥機で105℃にて3時間乾燥した後、シリカゲルを入れたデシケーター中で、30分放冷後に精秤する。当該物質の乾燥後質量を乾燥前質量で割ったものを固形分率とした。界面活性剤についても同様の方法で固形分率を算出した。
【0052】
(3)最低成膜温度(MFT)
最低成膜温度測定器(マツキ科学社製)を用い、アルミニウム製の板上に0.1mmのアプリケーターで得られた水性樹脂分散体を塗工、乾燥し、その塗膜にクラックの生じた最高の温度を最低成膜温度(MFT)とした。
【0053】
(4)塗料の状態
JIS K 5600−1−1の4.1.2容器の中の状態「操作及び評価」(液状塗料の場合)に準じて評価した。評価基準は、○:問題なし、△:やや増粘または沈降傾向、×:増粘または沈降激しいとした。
【0054】
(5)塗膜の外観
JIS K 5600−1−1の4.4「塗膜の外観」に準じた。但し、試験片は塗料をクラフト紙(50g/m)に刷毛にて50g/m塗付し、常温乾燥を行ったものを用いた。評価基準は、○:問題なし、△:やや表面が粗い、×:表面が粗いまたは不均一とした。
【0055】
(6)透気度
王研式透気度計(熊谷理機工業社製)を用いて試験片の透気度を測定した。測定数値(秒)が小さいほど透気度が良いことを表す。
【0056】
(7)付着性
試験片を23℃、65%R.H.の恒温恒湿室にて12時間調湿した後、ピック強度RI印刷試験機(明製作所)を用い、中央部に塗工紙(1.5cm×20cm)を並べて貼った台紙(30cm×25.5cm)に、印刷インク(東洋インキ社製、商品名:ハイユニティー)0.4mlを25cm×21cmの印刷面積で台紙ごと塗工紙に重ね刷りした。ゴムロールに現れたピックの発生状態を別の台紙に転写して目視評価した。評価は5点法で行い、ピックの発生が少ないものほど高得点とした。
【0057】
(8)簡易消臭性
試験片の塗装面を内側にして封筒(長型3号定形サイズ)を作成し、封筒内に農薬(住友化学園芸株式会社製のGFオルトラン粒剤)を一定量入れて封をした後、4L容量の密閉缶内に1週間保管後、缶内の臭気を評価した。評価基準は、○:臭気なし、△:ほぼ臭気なし、×:臭気ありとした。
【0058】
(9)吸湿性
試験片の塗装面を内側にして封筒(長型3号定形サイズ)を作成し、封筒内に塩化カルシウムを一定量入れて封をして、23℃、90%R.H.の恒温恒湿室にて24時間静置した後の質量増分を測定し評価した。評価基準は、○:質量増なし、△:やや質量増、×:質量増(塩化カルシウムの溶解有り)とした。
【0059】
(10)貯蔵安定性
JIS K 5600−2−7の6.「常温貯蔵安定性」に準じて評価した。評価基準は、○:貯蔵前と大差なし、△:やや増粘または沈降傾向、×:増粘または沈降傾向とした。
【0060】
(11)塗装作業性
JIS K 5600−1−1の4.2「塗装作業性」に準じて評価した。塗装方法はバーコーターNo.9にてクラフト紙に塗料を無希釈のまま塗装を行い評価した。評価基準は、○:問題なし、△:ややカスレ有り、×:カスレ、ブツ有りとした。
【0061】
[水性樹脂分散体の合成]
[合成例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取り付けた反応容器に水385.6部を投入し、反応容器中の温度を85℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を13部添加した5分後に、スチレン296.4部、アクリル酸2−エチルヘキシル210.6部、メタクリル酸10.4部、アクリルアミド2.6部、アニオン性界面活性剤(製品名:ラテムルD−3−D、花王(株)製)を20部、ノニオン性界面活性剤(製品名:エマルゲン120、花王(株)製)の20%水溶液26部、リン酸水素ニナトリウム十二水の20%水溶液65部、過硫酸アンモニウムの10%の水溶液15.6部、水139.2部からなる乳化混合液を滴下槽より150分かけて流入させる。流入中は反応容器の温度を85℃に保つ。流入が終了してから30分後に、25%アンモニア水溶液を5.2部添加する。次にスチレン444.6部、アクリル酸2−エチルヘキシル319.8部、メタクリル酸15.6部の混合液と過硫酸アンモニウムの10%水溶液23.4部と水33.6部の混合物を別々に、150分かけて流入させる。この流入が完了してから60分後に温度を70℃に冷却した。次に、t−ブチルハイドロパーオキサイド2部を添加し30分後にエルソルビン酸ナトリウムの8%水溶液25部を30分かけて流入した。30分後に室温まで冷却した。
【0062】
室温まで冷却後、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8.5に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥質量は全単量体に対して0.03%とわずかであった。得られた水性樹脂分散体の固形分率は65.2%、MFTは20℃であった。また、粒度分布には、平均粒子径が181nmおよび平均粒子径が626nmの2つの分布がみられ、平均粒子径が181nmである水性樹脂分散体Aの固形分換算比率が35%、平均粒子径が626nmである水性樹脂分散体Bの固形分換算比率が65%であった。
このようにして得られた水性樹脂分散体を水性樹脂組成物(R−1)とした。
【0063】
[合成例2]
撹拌機、滴下槽および温度調節用のジャケットを備える耐圧反応容器に水385.6部を投入し、反応容器中の温度を85℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を13部添加した5分後に、スチレン296.4部、アクリル酸2−エチルヘキシル210.6部、メタクリル酸10.4部、アクリルアミド2.6部、アニオン性界面活性剤(製品名:ラテムルD−3−D、花王(株)製)を20部、ノニオン性界面活性剤(製品名:エマルゲン120、花王(株)製)の20%水溶液26部、リン酸水素ニナトリウム十二水の20%水溶液65部、過硫酸アンモニウムの10%の水溶液15.6部、水139.2部からなる乳化混合液を滴下槽より150分かけて流入させる。流入中は反応容器の温度を85℃に保つ。流入が終了してから30分後に、25%アンモニア水溶液を5.2部添加する。次にスチレン444.1部、ブタジエン319.8部、メタクリル酸15.6部、アクリル酸4.5部、ラウリルメルカプタン1.0部の混合液と過硫酸アンモニウムの10%水溶液23.4部と水33.6部の混合物を別々に、150分かけて流入させる。この流入が完了してから60分後に温度を70℃に冷却した。次に、t−ブチルハイドロパーオキサイド2部を添加し30分後にエルソルビン酸ナトリウムの8%水溶液25部を30分かけて流入した。30分後に室温まで冷却した。
【0064】
室温まで冷却後、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8.5に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥質量は全単量体に対して0.03%とわずかであった。得られた水性樹脂分散体の固形分率は65.1%、MFTは18℃であった。また、粒度分布には、平均粒子径が191nmおよび平均粒子径が596nmの2つの分布がみられ、平均粒子径が191nmである水性樹脂分散体Aの固形分換算比率が38%、平均粒子径が596nmである水性樹脂分散体Bの固形分換算比率が62%であった。
このようにして得られた水性樹脂分散体を水性樹脂組成物(R−2)とした。
【0065】
[合成例3]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取り付けた反応容器に水370.2部を投入し、反応容器中の温度を85℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を13部添加した5分後に、スチレン201.8部、アクリル酸2−エチルヘキシル10.4部、アクリル酸n−ブチル205部、メタクリル酸ブチル15部、メタクリル酸メチル57.4部、アクリル酸10.4部、アニオン性界面活性剤(製品名:ラテムルD−4−D、花王(株)製)を20部、ノニオン性界面活性剤(製品名:エマルゲン147、花王(株)製)の20%水溶液26部、リン酸水素ニナトリウム十二水の20%水溶液55部、過硫酸アンモニウムの10%の水溶液17.5部、水200.7部からなる乳化混合液を滴下槽より150分かけて流入させる。流入中は反応容器の温度を85℃に保つ。流入が終了してから30分後に、25%アンモニア水溶液を4.8部添加する。次にスチレン304.6部、アクリル酸2−エチルヘキシル60.8部、アクリル酸n−ブチル294.5部、メタクリル酸ブチル30部、メタクリル酸メチル80部、メタクリル酸シクロヘキシル10部、メタクリル酸4.5部、アクリル酸15.6部、ラウリルメルカプタン1.0部の混合液と過硫酸アンモニウムの10%水溶液20.4部と水173.6部の混合物を別々に、150分かけて流入させる。この流入が完了してから60分後に温度を70℃に冷却した。次に、t−ブチルハイドロパーオキサイド2部を添加し30分後にエルソルビン酸ナトリウムの8%水溶液25部を30分かけて流入した。30分後に室温まで冷却した。
【0066】
室温まで冷却後、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8.5に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥質量は全単量体に対して0.05%とわずかであった。得られた水性樹脂分散体の固形分率は59.8%、MFTは21℃であった。また、粒度分布には、平均粒子径が130nmおよび平均粒子径が657nmの2つの分布がみられ、平均粒子径が130nmである水性樹脂分散体Aの固形分換算比率が20%、平均粒子径が657nmである水性樹脂分散体Bの固形分換算比率が80%であった。
【0067】
このようにして得られた水性樹脂分散体にエチレングリコールを1部加えたものを水性樹脂組成物(R−3)とした。
【0068】
[合成例4]
撹拌機、滴下槽および温度調節用のジャケットを備える耐圧反応容器に水600部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、あらかじめ調整したシード粒子(Tg=3℃、粒子径0.30μm)0.6部を仕込み、内温を80℃に上昇した。さらにスチレン466.6部、ブタジエン312.8部、メタクリル酸20.6部、t−ドデシルメルカプタン(t−DDM)0.5部からなる単量体混合物を180分かけて一定速度で反応容器内に流入し、添加開始と同時に過硫酸ナトリウムの20%水溶液を6部、反応器内に投入した。流入中は反応容器の温度を80℃に保つ。流入が終了してから60分後に、あらかじめ調整したシード粒子(Tg=3℃、粒子径0.02μm)0.1部を仕込み、直後にスチレン189.5部、ブタジエン195.2部、メタクリル酸メチル100部、イタコン酸15.3部からなる単量体混合物と、t−ドデシルメルカプタン0.5部と水280部を120分かけて一定速度で反応容器内に流入した。流入が完了してから90分後に室温まで冷却して反応生成物を採取した。得られた反応性生物から未反応単量体を除去し、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの1:1混合物でpHを8.5に調製し、固形分率が65質量%になるまで濃縮した。得られた水性樹脂分散体は、MFTが5℃であった。また、粒度分布には、平均粒子径が125nmおよび平均粒子径が453nmの2つの分布がみられ、平均粒子径が125nmである水性樹脂分散体Aの固形分換算比率が22%、平均粒子径が453nmである水性樹脂分散体Bの固形分換算比率が78%であった。
このようにして得られた水性樹脂分散体を水性樹脂組成物(R−4)とした。
【0069】
[合成例5]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取り付けた反応容器に水420.8部を投
入し、反応容器中の温度を85℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を13部添加した5分後に、スチレン226.4部、アクリル酸2−エチルヘキシル213.6部、メタクリル酸メチル71.8部、メタクリル酸10.4部、アクリルアミド2.6部、アニオン性界面活性剤(製品名:ラテムルD−3−D、花王(株)製)を10部、ノニオン性界面活性剤(製品名:エマルゲン147、花王(株)製)の20%水溶液15部、リン酸水素ニナトリウム十二水の20%水溶液75部、過硫酸アンモニウムの10%の水溶液12.8部、水90.7部からなる乳化混合液を滴下槽より150分かけて流入させる。流入中は反応容器の温度を85℃に保つ。流入が終了してから30分後に、25%アンモニア水溶液を6.0部添加する。次にスチレン326.4部、アクリル酸2−エチルヘキシル321.8部、メタクリル酸メチル112.5部、メタクリル酸15.6部、ラウリルメルカプタン0.5部の混合液と過硫酸アンモニウムの10%水溶液21.3部と水84.3部の混合物を別々に、150分かけて流入させる。この流入が完了してから90分後に温度を70℃に冷却した。次に、t−ブチルハイドロパーオキサイド2部を添加し30分後にエルソルビン酸ナトリウムの8%水溶液25部を30分かけて流入した。30分後に室温まで冷却した。
【0070】
室温まで冷却後、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8.6に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥質量は全単量体に対して0.02%とわずかであった。得られた水性樹脂分散体の固形分率は63.8%、MFTは23℃であった。また、粒度分布には、平均粒子径が265nmおよび平均粒子径が1026nmの2つの分布がみられ、平均粒子径が265nmである水性樹脂分散体Aの固形分換算比率が41%、平均粒子径が1026nmである水性樹脂分散体Bの固形分換算比率が59%であった。
【0071】
このようにして得られた水性樹脂分散体にエチレングリコールモノブチルエーテル10部加えたものを水性樹脂組成物(R−5)とした。
【0072】
[合成例6]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取り付けた反応容器に水405.6部を投入し、反応容器中の温度を85℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を15部添加した5分後に、アクリル酸2−エチルヘキシル155.3部、アクリル酸n−ブチル110.3部、メタクリル酸メチル171.4部、メタクリル酸シクロヘキシル75.9部、アクリル酸10.4部、アクリルアミド3.0部、アニオン性界面活性剤(製品名:ラテムルD−3−D、花王(株)製)を22部、ノニオン性界面活性剤(製品名:エマルゲン120、花王(株)製)の20%水溶液20部、リン酸水素ニナトリウム十二水の20%水溶液60部、過硫酸アンモニウムの10%の水溶液18.9部、水150.1部からなる乳化混合液を滴下槽より150分かけて流入させる。流入中は反応容器の温度を85℃に保つ。流入が終了してから30分後に、25%アンモニア水溶液を5.8部添加する。次にアクリル酸2−エチルヘキシル253.3部、アクリル酸n−ブチル198.2部、メタクリル酸メチル222.6部、メタクリル酸シクロヘキシル85.9部、メタクリル酸5.2部、アクリル酸10.4部の混合液と過硫酸アンモニウムの10%水溶液32.2部と水23.6部の混合物を別々に、150分かけて流入させる。この流入が完了してから120分後に室温まで冷却した。
【0073】
室温まで冷却後、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8.5に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥質量は全単量体に対して0.01%とわずかであった。得られた水性樹脂分散体の固形分率は65.0%、MFTは3℃であった。また、粒度分布には、平均粒子径が156nmおよび平均粒子径が638nmの2つの分布がみられ、平均粒子径が156nmである水性樹脂分散体Aの固形分換算比率が35%、平均粒子径が638nmである水性樹脂分散体Bの固形分換算比率が65%であった。
このようにして得られた水性樹脂分散体を水性樹脂組成物(R−6)とした。
【0074】
[合成例7]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取り付けた反応容器に水396.5部を投入し、反応容器中の温度を85℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を18部添加した5分後に、アクリル酸n−ブチル218.8部、メタクリル酸メチル290.4部、メタクリル酸8.2部、アクリルアミド2.6部、アニオン性界面活性剤(製品名:ラテムルD−4−D、花王(株)製)を25部、ノニオン性界面活性剤(製品名:エマルゲン147、花王(株)製)の20%水溶液30部、リン酸水素二ナトリウム十二水の20%水溶液70部、過硫酸アンモニウムの10%の水溶液22.3部、水244.9部からなる乳化混合液を滴下槽より180分かけて流入させる。流入中は反応容器の温度を85℃に保つ。流入が終了してから90分後に、25%アンモニア水溶液を4.7部添加する。次にアクリル酸n−ブチル329.8部、メタクリル酸メチル430.4部、メタクリル酸19.8部の混合液と過硫酸アンモニウムの10%水溶液23.4部と水236.3部の混合物を別々に、150分かけて流入させる。この流入が完了してから150分後に温度を室温まで冷却した。
【0075】
室温まで冷却後、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8.5に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥質量は全単量体に対して0.05%とわずかであった。得られた水性樹脂分散体の固形分率は56.3%、MFTは27℃であった。また、粒度分布には、平均粒子径が99nmおよび平均粒子径が402nmの2つの分布がみられ、平均粒子径が99nmである水性樹脂分散体Aの固形分換算比率が30%、平均粒子径が402nmである水性樹脂分散体Bの固形分換算比率が70%であった。
このようにして得られた水性樹脂分散体を水性樹脂組成物(R−7)とした。
【0076】
[合成例8]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取り付けた反応容器に水385.6部を投入し、反応容器中の温度を85℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を13部添加した5分後に、スチレン356.4部、アクリル酸2−エチルヘキシル150.6部、メタクリル酸13.0部、アニオン性界面活性剤(製品名:ラテムルD−4−D、花王(株)製)を18部、ノニオン性界面活性剤(製品名:エマルゲン120、花王(株)製)の20%水溶液22部、リン酸水素二ナトリウム十二水の20%水溶液70部、過硫酸アンモニウムの10%の水溶液17.5部、水70.7部からなる乳化混合液を滴下槽より150分かけて流入させる。流入中は反応容器の温度を85℃に保つ。流入が終了してから30分後に、25%アンモニア水溶液を5.2部添加する。次にスチレン504.6部、アクリル酸2−エチルヘキシル259.8部、メタクリル酸15.6部の混合液と過硫酸アンモニウムの10%水溶液25.1部と水126.3部の混合物を別々に、150分かけて流入させる。この流入が完了してから60分後に温度を70℃に冷却した。次に、t−ブチルハイドロパーオキサイド2部を添加し30分後にエルソルビン酸ナトリウムの8%水溶液25部を30分かけて流入した。30分後に室温まで冷却した。
【0077】
室温まで冷却後、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8.5に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥質量は全単量体に対して0.10%とわずかであった。得られた水性樹脂分散体の固形分率は64.3%、MFTは38℃であった。また、粒度分布には、平均粒子径が211nmおよび平均粒子径が764nmの2つの分布がみられ、平均粒子径が211nmである水性樹脂分散体Aの固形分換算比率が33%、平均粒子径が764nmである水性樹脂分散体Bの固形分換算比率が65%であった。
【0078】
このようにして得られた水性樹脂分散体にエチレングリコールモノブチルエーテル30部加えたものを水性樹脂組成物(R−8)とした。
【0079】
[合成例9]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取り付けた反応容器に水420.8部を投入し、反応容器中の温度を85℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を10部添加した5分後に、スチレン334.2部、アクリル酸2−エチルヘキシル170.6部、メタクリル酸12.6部、アクリルアミド2.6部、アニオン性界面活性剤(製品名:ラテムルD−3−D、花王(株)製)を8部、ノニオン性界面活性剤(製品名:エマルゲン147、花王(株)製)の20%水溶液10部、リン酸水素二ナトリウム十二水の20%水溶液65部、過硫酸アンモニウムの10%の水溶液10.4部、水100.4部からなる乳化混合液を滴下槽より150分かけて流入させる。流入中は反応容器の温度を85℃に保つ。流入が終了してから30分後に、25%アンモニア水溶液を6.0部添加する。次にスチレン404.6部、アクリル酸2−エチルヘキシル364.8部、メタクリル酸10.6部、ラウリルメルカプタン1.0部の混合液と過硫酸アンモニウムの10%水溶液21.1部と水53.2部の混合物を別々に、150分かけて流入させる。この流入が完了してから90分後に温度を70℃に冷却した。次に、t−ブチルハイドロパーオキサイド2部を添加し30分後にエルソルビン酸ナトリウムの8%水溶液25部を30分かけて流入した。30分後に室温まで冷却した。
【0080】
室温まで冷却後、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8.6に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥質量は全単量体に対して0.02%とわずかであった。得られた水性樹脂分散体の固形分率は64.9%、MFTは18℃であった。また、粒度分布には、平均粒子径が356nmおよび平均粒子径が1344nmの2つの分布がみられ、平均粒子径が356nmである水性樹脂分散体の固形分換算比率が38%、平均粒子径が1344nmである水性樹脂分散体の固形分換算比率が62%であった。
【0081】
このようにして得られた水性樹脂分散体にエチレングリコールモノブチルエーテル10部加えたものを水性樹脂組成物(R−9)とした。
【0082】
[合成例10]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取り付けた反応容器に水530.6部を投入し、反応容器中の温度を85℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を10部添加した5分後に、スチレン740.9部、アクリル酸2−エチルヘキシル530.4部、メタクリル酸26.1部、アクリルアミド2.6部、アニオン性界面活性剤(製品名:ラテムルD−3−D、花王(株)製)を15部、ノニオン性界面活性剤(製品名:エマルゲン120、花王(株)製)の20%水溶液17部、リン酸水素ニナトリウム十二水の20%水溶液35部、過硫酸アンモニウムの10%の水溶液33.6部、水125.7部からなる乳化混合液を滴下槽より300分かけて流入させる。流入中は反応容器の温度を85℃に保つ。この流入が完了してから60分後に温度を70℃に冷却した。次に、t−ブチルハイドロパーオキサイド2部を添加し30分後にエルソルビン酸ナトリウムの8%水溶液25部を30分かけて流入した。30分後に室温まで冷却した。
【0083】
室温まで冷却後、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8.5に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥質量は全単量体に対して0.15%とわずかであった。得られた水性樹脂分散体の固形分率は63.2%、MFTは22℃であった。また、粒度分布には、平均粒子径が670nmの1つの分布がみられた。
【0084】
このようにして得られた水性樹脂分散体を水性樹脂組成物(R−10)とした。なお、実施例に用いる場合、水性樹脂組成物(R−10)は、水性樹脂分散体Bとして使用する。
【0085】
[合成例11]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取り付けた反応容器に水430.6部を投入し、反応容器中の温度を85℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を13部添加した5分後に、スチレン740.9部、アクリル酸2−エチルヘキシル530.4部、メタクリル酸26.1部、アクリルアミド2.6部、アニオン性界面活性剤(製品名:ラテムルD−4−D、花王(株)製)を20部、ノニオン性界面活性剤(製品名:エマルゲン147、花王(株)製)の20%水溶液26部、リン酸水素ニナトリウム十二水の20%水溶液65部、過硫酸アンモニウムの10%の水溶液35.6部、水490.7部からなる乳化混合液を滴下槽より280分かけて流入させる。流入中は反応容器の温度を85℃に保つ。この流入が完了してから60分後に温度を70℃に冷却した。次に、t−ブチルハイドロパーオキサイド2部を添加し30分後にエルソルビン酸ナトリウムの8%水溶液25部を30分かけて流入した。30分後に室温まで冷却した。
【0086】
室温まで冷却後、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8.5に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥質量は全単量体に対して0.04%とわずかであった。得られた水性樹脂分散体の固形分率は55.2%、MFTは20℃であった。また、粒度分布には、平均粒子径が171nmの1つの分布がみられた。
【0087】
このようにして得られた水性樹脂分散体を水性樹脂組成物(R−11)とした。なお、実施例に用いる場合、水性樹脂組成物(R−11)は、水性樹脂分散体Aとして使用する。
【0088】
[合成例12]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取り付けた反応容器に水385.6部を投入し、反応容器中の温度を85℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を13部添加した5分後に、スチレン455.1部、アクリル酸2−エチルヘキシル300.8部、メタクリル酸20.6部、アクリルアミド3.5部、アニオン性界面活性剤(製品名:ラテムルD−3−D、花王(株)製)を20部、ノニオン性界面活性剤(製品名:エマルゲン120、花王(株)製)の20%水溶液26部、リン酸水素二ナトリウム十二水の20%水溶液65部、過硫酸アンモニウムの10%の水溶液23.6部、水149.8部からなる乳化混合液を滴下槽より150分かけて流入させる。流入中は反応容器の温度を85℃に保つ。流入が終了してから30分後に、25%アンモニア水溶液を5.2部添加する。次にスチレン259.1部、アクリル酸2−エチルヘキシル252.2部、メタクリル酸8.7部の混合液と過硫酸アンモニウムの10%水溶液15.4部と水33.6部の混合物を別々に、150分かけて流入させる。この流入が完了してから60分後に温度を70℃に冷却した。次に、t−ブチルハイドロパーオキサイド2部を添加し30分後にエルソルビン酸ナトリウムの8%水溶液25部を30分かけて流入した。30分後に室温まで冷却した。
【0089】
室温まで冷却後、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8.5に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥質量は全単量体に対して0.03%とわずかであった。得られた水性樹脂分散体の固形分率は64.5%、MFTは15℃であった。また、粒度分布には、平均粒子径が176nmおよび平均粒子径748nmの2つの分布がみられ、平均粒子径が176nmである水性樹脂分散体の固形分換算比率が59%、平均粒子径が748nmである水性樹脂分散体の固形分換算比率が41%であった。
このようにして得られた水性樹脂分散体を水性樹脂組成物(R−12)とした。
【0090】
[合成例13]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取り付けた反応容器に水530.6部を投入し、反応容器中の温度を85℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を10部添加した5分後に、スチレン765.9部、アクリル酸2−エチルヘキシル534.1部、アニオン性界面活性剤(製品名:ラテムルD−4−D、花王(株)製)を15部、ノニオン性界面活性剤(製品名:エマルゲン147、花王(株)製)の20%水溶液17部、リン酸水素二ナトリウム十二水の20%水溶液35部、過硫酸アンモニウムの10%の水溶液33.6部、水125.7部からなる乳化混合液を滴下槽より300分かけて流入させる。流入中は反応容器の温度を85℃に保つ。この流入が完了してから60分後に温度を70℃に冷却した。次に、t−ブチルハイドロパーオキサイド2部を添加し30分後にエルソルビン酸ナトリウムの8%水溶液25部を30分かけて流入した。30分後に室温まで冷却した。
【0091】
室温まで冷却後、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8.5に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥質量は全単量体に対して0.35%とわずかであった。得られた水性樹脂分散体の固形分率は63.3%、MFTは22℃であった。また、粒度分布には、平均粒子径が687nmの1つの分布がみられた。
【0092】
このようにして得られた水性樹脂分散体を水性樹脂組成物(R−13)とした。なお、実施例に用いる場合、水性樹脂組成物(R−13)は、水性樹脂分散体Bとして使用する。
【0093】
上記の水性樹脂組成物(R−1)〜(R−13)および市販の水性樹脂組成物を用いて実施例1〜19および比較例1〜13を調製した。なお、以下の説明において、活性炭などの多孔質材料粉末および界面活性剤の配合量における括弧書きは、水性樹脂分散体の固形分100質量部に対するそれぞれの固形分換算配合量を示している。
【0094】
[実施例1]
水性樹脂組成物(R−1)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)150部(230部)、フローレンG−700AMP(共栄社化学株式会社製、アニオン界面活性剤、固形分率45%)70部(48部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物1を得た。
【0095】
[実施例2]
水性樹脂組成物(R−2)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)100部(154部)、フローレンG−700AMP50部(35部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物2を得た。
【0096】
[実施例3]
水性樹脂組成物(R−3)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)250部(418部)、NSD642(株式会社日新化学研究所製、アニオン界面活性剤、固形分率40%)100部(67部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物3を得た。
【0097】
[実施例4]
水性樹脂組成物(R−4)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)50部(77部)、フローレンG−700AMP100部(69部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物4を得た。
【0098】
[実施例5]
水性樹脂組成物(R−5)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)300部(470部)、フローレンG−700AMP200部(141部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物5を得た。
【0099】
[実施例6]
水性樹脂組成物(R−6)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)150部(231部)、フローレンG−700AMP300部(208部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物6を得た。
【0100】
[実施例7]
水性樹脂組成物(R−7)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)200部(355部)、DISPERBYK−2090(ビックケミージャパン株式会社製、アニオン界面活性剤、固形分率81%)40部(58部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物7を得た。
【0101】
[実施例8]
水性樹脂組成物(R−8)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)150部(233部)、フローレンG−700AMP70部(49部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物8を得た。
【0102】
[実施例9]
水性樹脂組成物(R−10)70部、水性樹脂組成物(R−11)30部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)150部(247部)、NSD642 70部(46部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物9を得た。
【0103】
[実施例10]
水性樹脂組成物(R−11)30部、水性樹脂組成物(R−13)70部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)150部(246部)、フローレンG−700AMP70部(46部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物10を得た。
【0104】
[実施例11]
水性樹脂組成物(R−1)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)100部(154部)、ラヂオライトF(昭和化学工業株式会社製、珪藻土粉、平均粒径7μm)70部(107部)、フローレンG−700AMP70部(48部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物11を得た。
【0105】
[実施例12]
水性樹脂組成物(R−1)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)100部(154部)、モレキュラーシーブ4Aパウダー(ユニオン昭和株式会社製、合成ゼオライト粉、粒径10μm以下)50部(76部)、フローレンG−700AMP70部(48部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物12を得た。
【0106】
[実施例13]
水性樹脂組成物(R−1)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)200部(307部)、フローレンG−700AMP100部(69部)、ジンクピリチオン(抗菌剤)2部、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物13を得た。
【0107】
[実施例14]
水性樹脂組成物(R−1)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)100部(153部)、DISPERBYK−2090 50部(62部)、チアベンダゾール(防カビ剤)2部、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物14を得た。
【0108】
[実施例15]
水性樹脂組成物(R−1)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径150μm以下)300部(460部)、DISPERBYK−2090 100部(124部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物15を得た。
【0109】
[実施例16]
水性樹脂組成物(R−1)100部、備長炭粉(最大粒径50μm以下)150部(230部)、NSD642 50部(31部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物16を得た。
【0110】
[実施例17]
水性樹脂組成物(R−1)100部、ラヂオライトF(昭和化学工業株式会社製、珪藻土粉、平均粒径7μm)200部(307部)、フローレンG−700AMP70部(48部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物17を得た。
【0111】
[実施例18]
水性樹脂組成物(R−1)100部、モレキュラーシーブ4Aパウダー(ユニオン昭和株式会社製、合成ゼオライト粉、粒径10μm以下)150部(230部)、フローレンG−700AMP70部(48部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物18を得た。
【0112】
[実施例19]
水性樹脂組成物(R−1)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)150部(230部)、NSD616(株式会社日新化学研究所製、ポリアルキレングリコール成分を含有しないアニオン界面活性剤、固形分率35%)100部(54部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物19を得た。
【0113】
[比較例1]
ポリトロンE316S(旭化成ケミカルズ社製、アクリル系エマルション、固形分率45.1%、MFT20℃、平均粒子径125nm)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)250部(554部)、フローレンG−700AMP200部(200部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物20を得た。
【0114】
[比較例2]
ポリトロンA1500(旭化成ケミカルズ社製、スチレンアクリル系エマルション、固形分率45.5%、MFT3℃、平均粒子径200nm)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)150部(330部)、DISPERBYK−2090 100部(178部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物21を得た。
【0115】
[比較例3]
F−1861(旭化成ケミカルズ社製、スチレンブタジエン系エマルション、固形分率50.0%、MFT5℃、平均粒子径100nm)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)200部(400部)、DISPERBYK−2090 100部(162部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物22を得た。
【0116】
[比較例4]
水性樹脂組成物(R−9)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)200部(308部)、フローレンG−700AMP200部(139部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物23を得た。
【0117】
[比較例5]
スミカフレックス201HQ(住友化学社製、エチレン−酢酸ビニル共重合エマルション、固形分率54.8%、MFT0℃、平均粒子径610nm)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)150部(274部)、フローレンG−700AMP70部(57部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物24を得た。
【0118】
[比較例6]
水性樹脂組成物(R−10)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)100部(158部)、NSD642 50部(32部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物25を得た。
【0119】
[比較例7]
水性樹脂組成物(R−11)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)100部(181部)、フローレンG−700AMP50部(41部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物26を得た。
【0120】
[比較例8]
水性樹脂組成物(R−12)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径150μm以下)100部(155部)、DISPERBYK−2090 50部(63部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物27を得た。
【0121】
[比較例9]
水性樹脂組成物(R−13)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)150部(237部)、フローレンG−700AMP70部(50部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物28を得た。
【0122】
[比較例10]
水性樹脂組成物(R−1)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)400部(613部)、フローレンG−700AMP300部(207部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物29を得た。
【0123】
[比較例11]
水性樹脂組成物(R−1)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)3部(4.6部)、フローレンG−700AMP50部(35部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物30を得た。
【0124】
[比較例12]
水性樹脂組成物(R−1)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)300部(460部)、フローレンG−700AMP1部(0.7部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物31を得た。
【0125】
[比較例13]
水性樹脂組成物(R−1)100部、椰子殻活性炭粉(最大粒径50μm以下)200部(307部)、フローレンG−700AMP450部(311部)、消泡剤0.1部を混合し、全固形分が45%になるように水を適量添加して、水性塗料組成物32を得た。
【0126】
得られた水性塗料組成物1〜32の塗料性状及び塗膜性能評価結果を表1〜4に示す。但し、表中の「−」表示については、塗料の状態で流動性がなかったことから、評価を実施しなかったことを示す。
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【0129】
【表3】

【0130】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の水性塗料組成物を適用することにより、各種の要求性能、例えば脱臭、調湿性能等の多孔質材料粉末が有する機能性を保持したまま塗膜化でき、且つ塗料の貯蔵安定性、塗工適性を確保することができる。また、具体的な用途として、活性炭やゼオライトを用いた消臭脱臭用塗料、VOC吸着用塗料、シリカゲルやアルミナゲル、珪藻土を用いた調湿用塗料、断熱塗料等を挙げることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性樹脂分散体の樹脂固形分100質量部に対して、多孔質材料粉末5〜500質量部、および界面活性剤の固形分5〜300質量部を必須成分とする水性塗料組成物であって、
水性樹脂分散体が、平均粒子径50〜280nmの樹脂粒子Aと平均粒子径330〜1200nmの樹脂粒子Bとを質量比率でA:B=10:90〜50:50の範囲で含有することを特徴とする、水性塗料組成物。
【請求項2】
多孔質材料粉末が、椰子殻活性炭粉、備長炭粉、珪藻土および合成ゼオライトから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
多孔質材料粉末の最大粒子径が100μm以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
水性樹脂分散体の最低成膜温度が30℃以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
水性樹脂分散体の固形分100質量部に対して、界面活性剤の固形分が30〜250質量部であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
界面活性剤が親水性基としてアニオン性基、ノニオン性基およびカチオン性基から選ばれる2種以上の官能基を有する界面活性剤であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
界面活性剤がノニオン性基としてポリオキシアルキレン基を有するアニオン性の界面活性剤であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の水性塗料組成物。
【請求項8】
消泡剤、増粘剤、防腐剤、防カビ剤、防藻剤、抗菌剤および消臭剤から選ばれる少なくとも1種以上の添加剤を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の水性塗料組成物。

【公開番号】特開2012−224747(P2012−224747A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93430(P2011−93430)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000192844)神東塗料株式会社 (48)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】