説明

水性形接着剤組成物

【課題】初期接着強さや常態接着強さに優れ、さらに、例えばロールコーター、刷毛塗り、コテ塗りの様な、接着剤に連続的な負荷のかかる塗布具を用いる場合でも、長時間連続使用が可能である水性形接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】(a)アニオン型界面活性剤の存在下で重合して得られるクロロプレンゴムラテックス、(b)ポリマーエマルジョン、(c)水溶性高分子、(d)pHを7〜9に調整するための弱酸性物質を含有してなり、23℃でBM型粘度計を用いた12rpmでの粘度が500〜10,000mPa・sであることを特徴とする水性形接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境を害せず、引火等の危険性もなく、湿潤状態で高い初期接着強さを示すことを特徴とする、水性形接着剤組成物に関する。
さらに詳しくは、被着体の少なくとも一方が多孔質または水分を透過する基材に好適に用いられ、被着体の一方又は両方にロールコーター等にて塗布し貼り合わせて使用する水性形接着剤組成物に関する。詳細には、座椅子、ソファー、ベッド等の家具・寝具、座席シート等の自動車内装部品に使用される各種フォーム材の接着に特に好適に使用される一液型の水性形接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からクロロプレンゴム系溶剤形接着剤は、様々な被着体への接着性、初期接着性、耐熱性等に優れる事から広く使用されてきた。しかし、クロロプレンゴムの溶解に用いている有機溶剤は引火性が高く、さらには人体に有害な物質であるため、安全性や環境汚染の問題から、脱溶剤化への要求が強まってきている。
そこで、脱溶剤化の手段として、クロロプレンゴムラテックスを主成分とする水性形接着剤の開発が盛んに行われている。例えば特許文献1や特許文献2、特許文献3では、高pHで安定なアニオン型クロロプレンゴムラテックスに、アミノ酸等の両性化合物やホウ酸等の弱酸性物質を添加する事によりラテックス粒子を不安定化し、外部から受けるシェアによりゲル化させて溶剤形接着剤に劣らない初期接着強さを得る方法が開示されている。
【0003】
これらのクロロプレンゴムラテックス系接着剤は瞬間的なシェアでゲル化するため、主にスプレー塗布用として使用されている。スプレー塗布では、多くの場合において、接着剤は高所に設置された貯蔵タンクから自重によりスプレーガンに供給され、エア圧でノズル先端から押し出される。この過程において、接着剤はノズル先端から押し出される瞬間にのみ外部から強いシェアを受ける。この時、接着剤内部では小規模の凝集が起こるが、エア圧により外部に押し出されるために、スプレーガンには次々と新しい接着剤が供給されるので該ノズル部で接着剤が凝集する(ノズルづまり)ことはない。また、スプレー塗布では、作業中に接着剤が外気に長時間さらされる事は少なく、乾燥による凝集物の発生(皮膜化)も起こり難い状況にある。このために、作業を継続して行う事ができる。
【0004】
しかし、上記のようなクロロプレンゴムラテックス系接着剤をスプレー塗布する場合、噴霧された接着剤の微粒子がミストとなって周囲に飛散するため、作業環境を悪化させたり、被着体を汚染したりする問題がある。また、ミストが周囲に飛散するために、スプレーされた接着剤の被着体への塗着率が低く、経済的でないという問題がある。さらに、ベッドやマットレスの様に広範な面積に接着剤を塗布する場合、均一に塗布するのは難しく、作業時間もかかる。
広範な面積を短時間で均一に塗布するには、ロール塗工の方が遥かに生産効率に優れる。さらに、ロール塗工の場合にはミストの飛散がないため、周辺を汚染せず、塗着率も高い。この様な理由から、ロールコーター等の塗布具での使用が望まれている。
【0005】
しかし、同接着剤を連続的なシェアのかかる塗布具、例えば刷毛、コテ、ローラーによる塗布、代表的にはロールコーターで塗工しようとした場合、接着剤が1対のロール上の接着剤溜まりに溜められるために外気に長時間さらされる状況にあり、さらにロール間の狭い隙間を繰り返し通ることで連続的に強いシェアを受ける。このため、塗布作業開始後間も無く接着剤のゲル化が始まり、作業が困難となるという問題があった。さらに、ロールコーターで塗工する場合、従来の粘度ではロール上から接着剤が垂れる、塗布量の調節が困難である等の問題があった。
【0006】
ロールコーター用途に特化した技術としては、特許文献4の様に、水に可溶なグリコール類及び/または尿素類の保湿剤と、保水性を有するアクリル系共重合体またはポリアクリル酸系の増粘剤を併用する方法がある。しかし、この技術では、保水剤の効果により空気接触による接着剤の乾燥は防げるが、接着剤自体の機械的安定性には乏しく、根本的な解決にはなっていない。また、特許文献5では、アクリル酸アルキル共重合体を添加して粘度を上げる方法が報告されているが、機械的安定性に乏しく、ロールコーター上でゲル化し凝集物が発生する問題は解決されていない。
【0007】
【特許文献1】Canadian Patent 2162955
【特許文献2】特開2000−219859号公報
【特許文献3】特表2002−514255号公報
【特許文献4】特開2004−197028号公報
【特許文献5】特開2006−083302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、このような従来技術の問題を解決し、初期接着強さや常態接着強さに優れ、さらに、例えばロールコーター、刷毛塗り、コテ塗りの様な、接着剤に連続的な負荷のかかる塗布具を用いる場合でも、長時間連続使用が可能である水性形接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アニオン型界面活性剤の存在下で重合して得られるクロロプレンゴムラテックスにポリマーエマルジョン及び水溶性高分子を添加し、弱酸性物質にてpH調整を行うことで、初期接着強さ及び常態接着強さに優れ、かつ連続的な機械的負荷に耐える安定性を有する水性形接着剤組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
1.(a)アニオン型界面活性剤の存在下で重合して得られるクロロプレンゴムラテックス、(b)ポリマーエマルジョン、(c)水溶性高分子、(d)pHを7〜9に調整するための弱酸性物質を含有してなり、23℃でBM型粘度計を用いた12rpmでの粘度が500〜10,000mPa・sであることを特徴とする水性形接着剤組成物、
2.(c)水溶性高分子が、セルロース系高分子であることを特徴とする、上記1.記載の水性形接着剤組成物、
3.該セルロース系高分子が、ヒドロキシエチルセルロースであることを特徴とする、上記2.記載の水性形接着剤組成物、
4.該ヒドロキシエチルセルロースの分子量が、10,000〜2,000,000であることを特徴とする、上記3.記載の水性形接着剤組成物、
【0011】
5.(a)アニオン型クロロプレンゴムラテックスの固形分100質量部に対して、(b)ポリマーエマルジョンの固形分を1〜100質量部、(c)水溶性高分子を0.03〜2質量部含有してなることを特徴とする、上記1.〜4.のいずれか1項に記載の水性形接着剤組成物、
6.(d)弱酸性物質が、ホウ酸であることを特徴とする、上記1.〜5.のいずれか1項に記載の水性形接着剤組成物、
7.さらに(e)粘着付与樹脂エマルジョンを配合することを特徴とする、上記1.〜6.のいずれか1項に記載の水性形接着剤組成物、
8.さらに(f)可塑剤を配合することを特徴とする、上記1.〜7.のいずれか1項
に記載の水性形接着剤組成物、
である。
【発明の効果】
【0012】
初期接着強さや常態接着強さに優れ、さらに、例えばロールコーター、刷毛塗り、コテ塗りの様な、接着剤に連続的な負荷のかかる塗布具を用いる場合でも、長時間連続使用が可能である水性形接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(a)アニオン型界面活性剤の存在下で重合して得られるクロロプレンゴムラテックス
アニオン型界面活性剤の存在下で重合して得られるクロロプレンゴムラテックスとしては、アニオン型乳化剤、例えば、ロジン酸塩を使用し重合して得られるエマルジョンで、固形分濃度は通常40〜70質量%のものが使用される。このアニオン型クロロプレンゴムラテックスとしては各種のものが上市されており、適宜それらを使用することができる。例えば、市販品としては、バイエル株式会社製 ディスパコールC−84(固形分55%、pH13.0)、東ソー株式会社製 LA−660(固形分55%、pH13.0)等がある。
【0014】
(b)ポリマーエマルジョン
ポリマーエマルジョンの具体例としては、アクリル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、スチレン/ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル/ブタジエンゴムラテックス、天然ゴムラテックス等が挙げられる。これらの中でもアクリル樹脂エマルジョンが好ましい。
アクリル樹脂エマルジョンとしては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として、要求される用途・性能に応じて、官能基モノマー、架橋基モノマー等を共重合して得られる樹脂エマルジョンである。アクリル樹脂エマルジョンの主成分となる(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステルは1種類以上を適宜混合して用いる事ができるが、接着性の面から(メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルを主成分とするアクリル樹脂エマルジョンが好ましい。例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル/メタクリル酸メチル=40/60(質量比)、不揮発分52%、pH2.6、粘度200mPa・sのアクリル樹脂エマルジョンを使用する事ができる。なお、アクリル樹脂エマルジョンは、上記モノマーを用いて公知の乳化重合法により製造する事ができる。
【0015】
ウレタン樹脂エマルジョンとしては、ポリエーテル系ウレタン、ポリエステル系ウレタン等のエマルジョンが挙げられる。各種のものが上市されており、適宜それらを使用することができる。例えば、市販品としては、大日本インキ化学工業株式会社製 ユープレンUXA−3005(固形分40%、pH8.0、粘度50mPa・s)等が挙げられる。
スチレン/ブタジエンゴムラテックスとしては、スチレン/ブタジエン共重合体、カルボキシル化スチレン/ブタジエン共重合体のラテックスが挙げられる。各種のものが上市されており、適宜それらを使用することができる。例えば、市販品としては、旭化成株式会社製 L−2301(ブタジエン含有量40%以下、固形分50%、pH8.3、粘度55cps)等が挙げられる。
【0016】
アクリロニトリル/ブタジエンゴムラテックスとしては、各種のものが上市されており、適宜それらを使用することができる。例えば、日本ゼオン株式会社製 NipolLX550(固形分45%、pH8.5、粘度130mPa・s)等が挙げられる。
ポリマーエマルジョンを添加することにより、本発明の水性形接着剤組成物の被着体の
適用範囲を広げ、さらに機械的安定性を付与することが出来る。ポリマーエマルジョンの配合量は、固形分換算で(a)アニオン型クロロプレンゴムラテックスの固形分100質量部に対して、その固形分換算で1〜100質量部、好ましくは10〜60質量部である。ポリマーエマルジョンの配合量(固形分換算)が1質量部未満では、連続的な機械的負荷に耐える安定性が十分に得られないため好ましくなく、また、100質量部を超えるとクロロプレンゴムラテックスのゲル性を阻害して初期接着強さが得られにくくなる可能性があるために、やはり好ましくない。
【0017】
(c)水溶性高分子
水溶性高分子としては、でんぷんやゼラチン等の天然高分子、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等の合成高分子、セルロース誘導体(セルロース系高分子)等の半合成高分子等が挙げられる。これらの中でもセルロース誘導体が好ましい。
また、セルロース誘導体の中でも、ヒドロキシエチル基を導入したヒドロキシエチルセルロースがさらに好ましい。また、接着性能及び保存安定性の面から、分子量10,000〜2,000,000(1%水溶液粘度が1,000〜10,000mPa・s)であるヒドロキシエチルセルロースが最も好ましい。
また、(c)水溶性高分子の配合量は、(a)アニオン型クロロプレンゴムラテックスの固形分100質量部に対して、0.03〜2質量部、好ましくは0.1〜1質量部である。水溶性高分子の配合量が0.03質量部未満もしくは2質量部を超える場合、ロールコーターでの塗布に適した粘度が得られないために好ましくない。
【0018】
(d)弱酸性物質
弱酸性物質は、高い初期接着強さを得るために、高pHで安定化されているクロロプレンゴムラテックスのpHを7〜9、好ましくは8〜9に低下させ、ラテックス粒子をゲル化する直前の状態まで不安定化する目的で添加する。
弱酸性物質としては、無機酸、有機酸、それらの塩類、及びアミノ酸類等の両性化合物を使用することが出来る。
無機酸としてはホウ酸やリン酸、有機酸としては酢酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等が挙げられる。塩類としては、特に強酸弱塩基性塩が好ましく、例えば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸2水素アンモニウム、リン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸2水素カルシウムが挙げられる。アミノ酸類としてはグリシン、アラニン、フェニルアラニン、グルタミン酸などが挙げられる。しかし、接着性能の面からホウ酸が好ましい。
ホウ酸を用いる場合、その配合量は、(a)アニオン型クロロプレンゴムラテックスの固形分100質量部に対して0.6〜5質量部、好ましくは1〜3質量部である。ホウ酸の配合量が0.6質量部未満ではpH調整が不十分であり初期接着強さが得られ難いために好ましくなく、また、3質量部を超えると配合安定性が損なわれるために好ましくない。
【0019】
(e)粘着付与樹脂エマルジョン
粘着付与樹脂エマルジョンの具体例としては、ロジンフェノール樹脂、ロジン酸エステル樹脂、水添ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂等のエマルジョンが挙げられる。これらの中でもロジンフェノール樹脂、ロジン酸エステル樹脂のエマルジョンが好ましい。
粘着付与樹脂エマルジョンを添加することにより、本発明の水性形接着剤組成物の被着体の適用範囲を広げることができる。粘着付与樹脂エマルジョンは、要求される用途・性能に応じて、適宜配合できるものであり、本発明の必須構成要素ではない。
粘着付与樹脂エマルジョンの配合量は、(a)アニオン型クロロプレンゴムラテックスの固形分100質量部当たり、その固形分換算で1〜100質量部、好ましくは10〜60質量部である。粘着付与樹脂エマルジョンの配合量(固形分換算)が1質量部未満では、種々の被着体に対する十分な効果が得られない可能性があるために好ましくなく、
また、100質量部を超えると樹脂エマルジョン自体が有する余剰乳化剤が初期接着強さに悪影響を与える可能性があり、さらにクロロプレンゴムラテックスのゲル性を阻害して初期接着強さが得られにくくなる可能性があるために、やはり好ましくない。
【0020】
(f)可塑剤
可塑剤の具体例としては、二塩基酸エステル系可塑剤(例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジブチル等)、トリメリット酸オクチルのような三塩基酸エステル系、アロマオイルのような石油系炭化水素可塑剤、ナフテン系オイル等が挙げられる。これらの中でも、二塩基酸エステル系可塑剤が好ましい。
可塑剤を添加することにより、本発明の水性形接着剤組成物の被着体の適用範囲を広げ、さらに接着剤皮膜の柔軟化を図ることができる。可塑剤は、要求される用途・性能に応じて、適宜配合できるものであり、本発明の必須構成要素ではない。
可塑剤の配合量は、(a)アニオン型クロロプレンゴムラテックスの固形分100質量部当たり、0.1〜30質量部、好ましくは5〜20質量部である。可塑剤の配合量が0.1質量部未満では、配合接着剤に対する可塑効果が十分でなく、目的とする効果が得られない可能性があるために好ましくなく、また、30質量部を超えるとクロロプレンゴムラテックスが必要以上に可塑化されてしまい、接着皮膜の耐熱性が損なわれる可能性があるためやはり好ましくない。
【実施例】
【0021】
[粘度]
BM型粘度計を使用し、23℃に調整した試験接着剤をローターNo.3、12rpmで測定した。
[pH]
pHメーターを使用し、23℃に調整した試験接着剤のpHを測定した。
[初期接着性評価方法]
ロールコーターを用いて60g/mの塗布量で試験接着剤をウレタンフォーム(厚さ:18mm、比重:26kg/m)に塗布し、室温下にて1分放置した後に接着剤塗布面同士を貼り合わせ、ハンドローラーを用いて圧着した。その後直ちに180度はく離を行い、ハンディータイプのデジタルフォースゲージを用いて初期接着強さを測定し、次の様に評価した。
○:60N/m以上の接着強さを示す。抵抗感強く、接着性良好である。
△:40N/m以上60N/m未満の接着強さを示す。抵抗感はやや弱いが、実用上問題ない接着強さを有する。
×:40N/m未満の接着強さを示す。接着面が容易にはく離し、接着強さが得られない。
【0022】
[ロール適性評価方法]
回転速度10m/min、ウレタンフォームへの塗布量60g/mとなるように調整したロールコーターに試験接着剤を投入し、連続2時間空運転し状態変化を確認し、次の様に評価した。
○:凝集物等は発生せず、状態変化なし。ロール塗布に適した粘度で、液だれなし。
△:凝集物等は発生せず、状態変化なし。しかし、ロール塗布に適さない粘度、例えば、粘度が低くロール上から垂れる、または高すぎて塗布量の調節が難しい。
×:ロール上で凝集物が発生。
[長期保存安定性評価方法]
試験接着剤をポリエチレン製100mL容器に充填し、40℃の温蔵庫に二週間保管し、接着剤の状態変化を確認し、次の様に評価した。
○:保存前と状態変化なし。
×:分離水が発生。
【0023】
<使用原料について>
(a)アニオン型クロロプレンゴムラテックス
ディスパコールC−84 (バイエル株式会社製) 固形分:55% pH:13.0
(c)水溶性高分子
(i)ヒドロキシエチルセルロース
ナトロゾール250LR (ハーキュレス社製) 分子量:90,000
ナトロゾール250GR (ハーキュレス社製) 分子量:300,000
ナトロゾール250MR (ハーキュレス社製) 分子量:720,000
ナトロゾール250HR (ハーキュレス社製) 分子量:1,000,000
HECダイセルSP200 (ダイセル化学工業株式会社製)分子量:120,000
HECダイセルSP600 (ダイセル化学工業株式会社製)分子量:1,020,000
HECダイセルSP900 (ダイセル化学工業株式会社製)分子量:1,560,000(ii)カルボキシメチルセルロース
CMCダイセル1150 (ダイセル化学工業株式会社製)
1%水溶液粘度:200〜300 mPa・s
CMCダイセル2260 (ダイセル化学工業株式会社製)
1%水溶液粘度:4000〜6000 mPa・s(e)ロジン酸エステル樹脂エマルジョン
スーパーエステルE−720(荒川化学工業株式会社製) 不揮発分:50% pH:8.0
(f)可塑剤
セバシン酸ジブチル(DBS)
【0024】
[実施例1]
アクリル樹脂エマルジョン[アクリル酸2−エチルヘキシル/メタクリル酸メチル=40/60(質量比)、不揮発分52%、pH2.6、粘度200mPa・s](以下、「アクリル樹脂エマルジョン」と略する。)20質量部、アニオン型クロロプレンゴムラテックス[バイエル株式会社製 商品名:ディスパコールC−84(以下、「C−84」と略する。)固形分55%、pH13.0]100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250LR(ハーキュレス社製)]0.2質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.9、不揮発分54%、粘度1340mPa・sの水性形接着剤を得た。
[実施例2]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250GR(ハーキュレス社製)]0.2質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.9、不揮発分54%、粘度2500mPa・sの水性形接着剤を得た。
【0025】
[実施例3]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250MR(ハーキュレス社製)]0.2質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH9.0、不揮発分54%、粘度3700mPa・sの水性形接着剤を得た。
[実施例4]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250HR(ハーキュレス社製)]0.2質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.9、不揮発分54%、粘度4200mPa・sの水性形接着剤を得た。
【0026】
[実施例5]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[HECダイセルSP200(ダイセル化学工業株式会社製)]0.2質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.8、不揮発分54%、粘度1600mPa・sの水性形接着剤を得た。
[実施例6]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[HECダイセルSP600(ダイセル化学工業株式会社製)]0.2質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.8、不揮発分54%、粘度4450mPa・sの水性形接着剤を得た。
【0027】
[実施例7]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[HECダイセルSP900(ダイセル化学工業株式会社製)]0.2質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.8、不揮発分54%、粘度6200mPa・sの水性形接着剤を得た。
[実施例8]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、カルボキシメチルセルロース[CMCダイセル1150(ダイセル化学工業株式会社製)]0.2質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.7、不揮発分54%、粘度4000mPa・sの水性形接着剤を得た。
【0028】
[実施例9]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、カルボキシメチルセルロース[CMCダイセル2260(ダイセル化学工業株式会社製)]0.2質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.7、不揮発分54%、粘度7500mPa・sの水性形接着剤を得た。
[実施例10]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、ロジン酸エステル樹脂エマルジョン[荒川化学工業株式会社製 商品名:スーパーエステルE−720(以下、E−720と略する。)不揮発分50%、pH8.0]20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250MR(ハーキュレス社製)]0.2質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.9、不揮発分54%、粘度3700mPa・sの水性形接着剤を得た。
【0029】
[実施例11]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250MR(ハーキュレス社製)]0.2質量部、セバシン酸ジブチル(DBS)5質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.8、不揮発分54%、粘度4200mPa・sの水性形接着剤を得た。
[実施例12]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、ロジン酸エステル樹脂エマルジョン(E−720)20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250MR(ハーキュレス社製)]0.2質量部、セバシン酸ジブチル(DBS)5質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.8、不揮発分54%、粘度4200mPa・sの水性形接着剤を得た。
【0030】
[実施例13]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250MR(ハーキュレス社製)]0.1質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.7、不揮発分53%、粘度1575mPa・sの水性形接着剤を得た。
[実施例14]
アクリル樹脂エマルジョン10質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250MR(ハーキュレス社製)]0.2質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH9.0、不揮発分54%、粘度4400mPa・sの水性形接着剤を得た。
【0031】
[実施例15]
アクリル樹脂エマルジョン50質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250MR(ハーキュレス社製)]0.2質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.9、不揮発分54%、粘度2800mPa・sの水性形接着剤を得た。
[実施例16]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250LR(ハーキュレス社製)]0.3質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH9.0、不揮発分54%、粘度3300mPa・sの水性形接着剤を得た。
【0032】
[実施例17]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250LR(ハーキュレス社製)]0.5質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH9.0、不揮発分54%、粘度5800mPa・sの水性形接着剤を得た。
[実施例18]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250LR(ハーキュレス社製)]0.7質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH9.0、不揮発分54%、粘度8200mPa・sの水性形接着剤を得た。
【0033】
[実施例19]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[HECダイセルSP900(ダイセル化学工業株式会社製)]0.05質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH9.0、不揮発分54%、粘度1125mPa・sの水性形接着剤を得た。
[実施例20]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[HECダイセルSP900(ダイセル化学工業株式会社製)]0.03質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH9.0、不揮発分54%、粘度500mPa・sの水性形接着剤を得た。
【0034】
[比較例1]
「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250MR(ハーキュレス社製)]0.2質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.9、不揮発分55%、粘度4500mPa・sの水性形接着剤を得た。
[比較例2]
アクリル樹脂エマルジョン150質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロ
キシエチルセルロース[ナトロゾール250MR(ハーキュレス社製)]0.2質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.7、不揮発分53%、粘度2200mPa・sの水性形接着剤を得た。
【0035】
[比較例3]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250MR(ハーキュレス社製)]0.2質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH10.0、不揮発分54%、粘度8000mPa・sの水性形接着剤を得た。
[比較例4]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250MR(ハーキュレス社製)]0.2質量部、ホウ酸0.3質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH9.4、不揮発分54%、粘度4000mPa・sの水性形接着剤を得た。
【0036】
[比較例5]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250MR(ハーキュレス社製)]0.2質量部、ホウ酸5質量部を添加し室温にて撹拌を試みたが、ポリクロロプレンゴムラテックスが凝集し製造不可能であった。
[比較例6]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.8、不揮発分54%、粘度335mPa・sの水性形接着剤を得た。
【0037】
[比較例7]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[HECダイセルSP900(ダイセル化学工業株式会社製)]0.01質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH9.0、不揮発分54%、粘度175mPa・sの水性形接着剤を得た。
[比較例8]
アクリル樹脂エマルジョン20質量部、「C−84」100質量部を仕込み、ヒドロキシエチルセルロース[ナトロゾール250LR(ハーキュレス社製)]1.5質量部、ホウ酸1質量部を添加し室温にて2時間撹拌して、pH8.8、不揮発分54%、粘度20500mPa・sの水性形接着剤を得た。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
【表5】

【0043】
実施例1〜20、比較例1〜7の各接着剤組成物を調製し、粘度、pH、初期接着性、ロール適性、長期保存安定性について評価した結果を表1〜5に示す。表1の実施例1〜12、表2の実施例13〜20では、本発明の目的とする性能が得られている。
表3では、(b)ポリマーエマルジョン(アクリル樹脂エマルジョン)の配合量による比較を行った。ポリマーエマルジョンを配合しない比較例1はロール適性に劣り、配合範囲を外れている比較例2は初期接着強さに劣る。
表4では、(d)弱酸性物質(ホウ酸)の添加量による比較を行った。弱酸性物質を配合しない比較例3はpH調整が不十分であるため初期接着強さに劣る。また、pH範囲を
外れている比較例4(pH:9.4)は初期接着強さに劣り、比較例5(pH:<7)はクロロプレンゴムラテックスが凝集し、製造不可能であった。
表5では、(c)水溶性高分子の添加量による比較を行った。水溶性高分子を添加しない比較例6、配合範囲を外れている比較例7は十分な粘度が得られず、比較例8は粘度が高すぎるためにロール適性に劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アニオン型界面活性剤の存在下で重合して得られるクロロプレンゴムラテックス、(b)ポリマーエマルジョン、(c)水溶性高分子、(d)pHを7〜9に調整するための弱酸性物質を含有してなり、23℃でBM型粘度計を用いた12rpmでの粘度が500〜10,000mPa・sであることを特徴とする水性形接着剤組成物。
【請求項2】
(c)水溶性高分子が、セルロース系高分子であることを特徴とする、請求項1記載の水性形接着剤組成物。
【請求項3】
該セルロース系高分子が、ヒドロキシエチルセルロースであることを特徴とする、請求項2記載の水性形接着剤組成物。
【請求項4】
該ヒドロキシエチルセルロースの分子量が、10,000〜2,000,000であることを特徴とする、請求項3記載の水性形接着剤組成物。
【請求項5】
(a)アニオン型クロロプレンゴムラテックスの固形分100質量部に対して、(b)ポリマーエマルジョンの固形分を1〜100質量部、(c)水溶性高分子を0.03〜2質量部含有してなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性形接着剤組成物。
【請求項6】
(d)弱酸性物質が、ホウ酸であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性形接着剤組成物。
【請求項7】
さらに(e)粘着付与樹脂エマルジョンを配合することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性形接着剤組成物。
【請求項8】
さらに(f)可塑剤を配合することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性形接着剤組成物。

【公開番号】特開2008−156540(P2008−156540A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348872(P2006−348872)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】