説明

水性懸濁状農薬組成物

【課題】優れた性能を有する農薬組成物を提供すること。
【解決手段】25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物、ショ糖脂肪酸エステル、アセチレングリコール系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、モンモリロナイト系鉱物質微粉、水溶性高分子分散剤及び水を含有する水性懸濁状農薬組成物は優れた性能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性懸濁状農薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
農業就労者の高年齢化、就労者数の減少等から、より簡便な方法で農薬活性化合物を散布することのできる製剤が求められている。25℃程度で固体の水難溶性除草活性化合物を含有する製剤としては、粉剤や粒剤等の形態の農薬組成物が用いられているが、例えば湛水下の水田に畦畔から直接散布することのできる水性懸濁状農薬組成物も実用化されている。
しかしながら、従来の水性懸濁状農薬組成物は湛水下水田に畦畔より直接散布する等の局所施用を行った場合に、必ずしも十分に水田全体に拡展しないため、農薬活性化合物の効力が発現できない場合もあった。
ある種の農薬活性化合物としては、式(I)

〔式中、Aは置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Aは4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル基又は2,4−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−6−イル基を表し、XはCH、NH、酸素原子又は単結合を表す。〕で示されるスルホニルウレア化合物が挙げられ、より詳しくは、式(II)

〔式中、Rはハロゲン原子を表し、RはC2−C4アルキル基又はシクロプロピル基を表す。〕で示される化合物が除草活性を有することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−123690
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、湛水下水田への畦畔からの直接散布等の局所施用した場合においても、速やかに水田全体に拡散して農薬活性化合物の効力を発現し得る、優れた性能を有する農薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、優れた農薬組成物を提供すべく検討の結果、25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物、ショ糖脂肪酸エステル、アセチレングリコール系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、モンモリロナイト系鉱物質微粉、水溶性高分子分散剤及び水を含有する水性懸濁状農薬組成物が、優れた性能を有することを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、次の〔1〕〜〔8〕の通りである。
〔1〕 25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物、ショ糖脂肪酸エステル、アセチレングリコール系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、モンモリロナイト系鉱物質微粉、水溶性高分子分散剤及び水を含有する水性懸濁状農薬組成物。
〔2〕 水性懸濁状農薬組成物の全量に対して、
25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物が0.5〜10重量%、ショ糖脂肪酸エステルが0.1〜5重量%、アセチレングリコール系界面活性剤が0.02〜1重量%、アニオン系界面活性剤が0.1〜5重量%、モンモリロナイト系鉱物質微粉が0.1〜3重量%、且つ、水溶性高分子分散剤が0.1〜5重量%の含有割合である〔1〕記載の水性懸濁状農薬組成物。
〔3〕 25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物が、下記式(II)

〔式中、Rはハロゲン原子を表し、RはC2−C4アルキル基又はシクロプロピル基を表す。〕
で示される化合物である〔1〕又は〔2〕記載の水性懸濁状農薬組成物。
〔4〕 25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物が、1−(2−クロロ−6−プロピルイミダゾ〔1,2−b〕ピリダジン−3−イルスルホニル)−3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)ウレアである〔1〕又は〔2〕記載の水性懸濁状農薬組成物。
〔5〕 アセチレングリコール系界面活性剤が、0.1%水溶液での表面張力が25〜39mN/mであり、HLB値が4〜9であり、且つ、平均付加モル数が1〜5であるエチレンオキサイド鎖を有するアセチレングリコールエーテルである〔1〕〜〔4〕いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
〔6〕 アニオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル燐酸エステル塩である〔1〕〜〔5〕いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
〔7〕 水溶性高分子分散剤が、ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロース塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である〔1〕〜〔6〕いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
〔8〕 〔1〕〜〔7〕いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物を、湛水下水田に直接散布することを特徴とする水田に発生する雑草の防除方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、湛水下水田への畦畔からの直接散布等の局所施用を行った場合においても、十分に優れた性能を発揮する農薬組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の水性懸濁状農薬組成物とは、25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物、ショ糖脂肪酸エステル、アセチレングリコール系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、モンモリロナイト系鉱物質微粉、水溶性高分子分散剤及び水を含有する水性懸濁状農薬組成物である。
【0008】
本発明に用いられる、25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物としては、例えば下記式(I)
式(I)

〔式中、Aは置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Aは4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル基又は2,4−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−6−イル基を表し、XはCH、NH、酸素原子又は単結合を表す。〕で示されるスルホニルウレア化合物が挙げられる。
【0009】
かかる式(I)で示されるスルホニルウレア化合物として具体的には、例えば、1−(2−クロロイミダゾ〔1,2−a〕ピリジン−3−イルスルホニル)−3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)尿素(イマゾスルフロン)、1−(2−エチルスルホニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イルスルホニル)−3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)尿素(スルホスルフロン)、メチル=α−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−0−トルアート(ベンスルフロンメチル)、1−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)−3−(2−エトキシフェノキシスルホニル)尿素(エトキシスルフロン)、エチル=5−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−1−メチルピラゾール−4−カルボキシラート(ピラゾスルフロンエチル)、1−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)−3−[1−メチル−4−(2−メチル−2H−テトラゾール−5−イル)ピラゾール−5−イルスルホニル]尿素(アジムスルフロン)、メチル=3−クロロ−5−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−1−メチルピラゾール−4−カルボキシラート(ハロスルフロンメチル)、1−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)−3−(3−トリフルオロメチル−2−ピリジンスルホニル)尿素(フラザスルフロン)、3−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−1−〔2−(2−メトキシエトキシ)−フェニルスルホニル〕尿素(シノスルフロン)、1−[2−(シクロプロピルカルボニル)アニリノスルホニル]−3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)尿素(シクロスルファムロン)が挙げられる。
【0010】
そのうち、より詳しくは特開2004−123690に記載の下記式(II)

〔式中、R1aはハロゲン原子を表し、R2aはC2−C4アルキル基又はシクロプロピル基を表す。〕
で示される化合物が挙げられ、前記式(II)で示される化合物としては、具体的には例えば、1−(2−クロロ−6−エチルイミダゾ〔1,2−b〕ピリダジン−3−イルスルホニル)−3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)ウレア、1−(2−クロロ−6−プロピルイミダゾ〔1,2−b〕ピリダジン−3−イルスルホニル)−3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)ウレア、1−(2−クロロ−6−ブチルイミダゾ〔1,2−b〕ピリダジン−3−イルスルホニル)−3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)ウレア、1−(2−クロロ−6−シクロプロピルイミダゾ〔1,2−b〕ピリダジン−3−イルスルホニル)−3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)ウレア及び1−(2−クロロ−6−イソブチルイミダゾ〔1,2−b〕ピリダジン−3−イルスルホニル)−3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)ウレアが挙げられる。
本発明の水性懸濁状農薬組成物には、かかる25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物が、通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜10重量%程度含有される。
【0011】
また本発明の水性懸濁状農薬組成物には、25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物とともに、他の農薬活性化合物を含有させることもできる。かかる他の農薬活性化合物としては、例えば、シメトリン、ダイムロン、プロパニル、メフェナセット、フェントラザミド、エトベンザニド、スエップ、オキサジクロメフォン、オキサジアゾロン、ピラゾレート、プロジアミン、カフェンストロール、ペントキサゾン、クロメプロップ、ピリフタリド、ベンゾビシクロン、ブロモブチド及びピラクロニルが挙げられる。
【0012】
かかる他の農薬活性化合物を含有する場合、本発明の水性懸濁状農薬組成物における含有量は、25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物及び他の農薬活性化合物の合計量で、通常0.5〜20重量%、好ましくは1〜20重量%程度である。
【0013】
本発明の水性懸濁状農薬組成物に含有されるショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖ステアリン酸メチル、ショ糖パルミチン酸メチル及びショ糖オレイン酸メチルが挙げられ、具体例としては、ニューカルゲンFS−100(竹本油脂製)、DKエステルS−160(第一工業製薬製)が挙げられる。かかるショ糖脂肪酸エステルは単独で又は2種以上を混合して本発明の水性懸濁状農薬組成物に含有することができるが、その本発明の水性懸濁状農薬組成物における含有量は、通常0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜5重量%程度である。
【0014】
本発明の水性懸濁状農薬組成物に含有されるアセチレングリコール系界面活性剤とは、3重結合を中央に有し、且つ、その両側に水酸基を含む左右対称な構造を有するアセチレングリコール構造を有する物質、及び、そのエチレンオキサイド付加物である。かかるアセチレングリコール系界面活性剤としては、好ましくは、その0.1%水溶液での表面張力が25〜39mN/mであり、HLB値が4〜9であり、且つ、平均付加モル数1〜5であるエチレンオキサイド鎖を有するアセチレングリコールエーテルが挙げられ、具体的には、例えばオルフィンE−1004(日信化学工業商品名、0.1%水溶液の表面張力:mN/m、エチレンオキサイド鎖の平均付加モル数:4、HLB値:7〜9)が挙げられる。
【0015】
本発明の水性懸濁状農薬組成物には、かかるアセチレングリコール系界面活性剤が、通常0.02〜1重量%、好ましくは0.05〜1重量%程度含有される。
【0016】
本発明の水性懸濁状農薬組成物に含有されるアニオン性界面活性剤としては、例えば、
ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル燐酸塩(例えば、ニューカルゲンFS−3PG:竹本油脂製)、アルキル硫酸塩(例えば、モノゲンY−500:第一工業製薬製)、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸塩(例えば、アグリゾールFL−2017:花王製)、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル硫酸塩(例えば、ニューカルゲンFS−7:竹本油脂製)、及び、ジオクチルスルホコハク酸塩(例えば、ネオコールYSK:第一工業製薬製、サンモリンOT−70:三洋化成工業製)が挙げられる。本発明の水性懸濁状農薬組成物には、かかるアニオン性界面活性剤が、通常0.1〜5重量%、好ましくは0.3〜5重量%程度含有される。
【0017】
本発明の水性懸濁状農薬組成物に含有されるモンモリロナイト系鉱物質微粉とは、ナトリウム(Na)モンモリロナイトやカルシウム(Ca)モンモリロナイト等を主成分とする水膨潤性粘土鉱物質の粉状物であり、通常40μmの目開きの篩通過分が75重量%以上のものである。本発明にておいて、モンモリロナイト系鉱物質微粉は、通常ACC法による膨潤力が5〜70ml/2gである鉱物質微粉である。モンモリロナイト系鉱物質微粉としては、一般にベントナイトあるいは高純度モンモリロナイトとして市販されているものを使用することができる。ベントナイトの市販品として、スーパークレイ(ホージュン製)、クニゲルVA、クニゲルV1(いずれも、クニミネ工業製)が挙げられ、高純度モンモリロナイトの市販品として、クニピアF、クニピアK(いずれも、クニミネ工業製)、ベンゲル、ベンゲルHVP(いずれも、ホージュン製)が挙げられる。
【0018】
本発明の水性懸濁状農薬組成物には、かかるモンモリロナイト系鉱物質微粉は通常0.1〜3重量%、好ましくは0.2〜2重量%程度含有される。
【0019】
本発明の水性懸濁状農薬組成物に含有される水溶性高分子分散剤としては、例えば、水溶性天然高分子系分散剤、水溶性半合成高分子系分散剤及び水溶性合成高分子系分散剤が挙げられ、具体的には、水溶性天然高分子系分散剤としては、例えばアルギン酸ナトリウム、アラビアガム、グアガム及びキサンタンガム等が挙げられ、水溶性半合成高分子系分散剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース塩のセルロース系分散剤が挙げられ、水溶性合成高分子系分散剤としては、例えばポリビニルアルコール及びポリビニルビリドンが挙げられる。
かかる水溶性高分子分散剤としては、市販されているものを使用することができ、ポリビニルアルコールとしては例えば、ゴーセノールGL−03(日本合成化学工業製)、ゴーセノールKL−05(日本合成化学工業製)及びクラレポバールPVA−224(クラレ製)が挙げられ、
カルボキシメチルセルロース塩としては例えば、セロゲン6A(第一工業製薬製)、セロゲン7A(第一工業製薬製)、CMCダイセル1110(ダイセル化学工業製)及びCMCダイセル1210(ダイセル化学工業製)が挙げられ、
キサンタンガムとして、ケルザン(三洋化成工業製)、ロードポール23(ローヌプーラン製)が挙げられ、
ポリオール誘導体としては例えば、アグリゾールFL−104FA(花王製)が挙げられる。
【0020】
本発明において、水溶性高分子分散剤としては水に溶解した際の粘度が比較的小さいものが好ましく使用することができ、ポリビニルアルコールとしては4重量%水溶液における粘度が1〜25mPa・s(ヘプラー粘度計、20℃)であるポリビニルアルコールが好ましく、カルボキシメチルセルロース塩としては2重量%水溶液における粘度が1〜100mPa・s(B型粘度計、60rpm、25℃)であるカルボキシメチルセルロース塩が好ましい。
4重量%水溶液における粘度が1〜25mPa・s(ヘプラー粘度計、20℃)であるポリビニルアルコールとしては、鹸化度が70〜95モル%の範囲にあるポリビニルアルコールが挙げられ、市販品においてはゴーセノールGL−03、ゴーセノールKL−05(いずれも、日本合成化学工業製)が挙げられる。
2重量%水溶液における粘度が1〜100mPa・s(B型粘度計、60rpm、25℃)であるカルボキシメチルセルロース塩としては、エーテル化度が0.4〜1.0の範囲にあるカルボキシメチルセルロース塩が挙げられ、市販品においてはセロゲン7A(第一工業製薬製)が挙げられる。
【0021】
本発明の水性懸濁状農薬組成物には、かかる水溶性高分子分散剤は通常0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%程度含有される。
【0022】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物、ショ糖脂肪酸エステル、アセチレングリコール系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、モンモリロナイト系鉱物質微粉及び水溶性高分子分散剤とともに、通常の水性懸濁状農薬組成物において用いられる製剤助剤を必要に応じて含有させることができる。かかる製剤助剤としては、例えば、凍結防止剤、pH調整剤、消泡剤及び防腐剤が挙げられる。これらの製剤助剤は、25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物の種類や含有量等に応じて適宜選択することができる。
【0023】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物、ショ糖脂肪酸エステル、アセチレングリコール系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、モンモリロナイト系鉱物質微粉及び水溶性高分子分散剤、並びに、必要に応じて用いられる製剤助剤が、水媒体に分散若しくは溶解されてなる組成物である。本発明の水性懸濁状農薬組成物が含有する水は特に制限されることなく、水道水、井水及びイオン交換水等の通常の水性農薬組成物に用いることのできる水を用いることができる。本発明の水性懸濁状農薬組成物には、水が通常30〜90重量%、好ましくは50〜80重量%程度含有される。
【0024】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、例えば以下に示す方法により、製造することができる。
25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物、ショ糖脂肪酸エステル、アセチレングリコール系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、モンモリロナイト系鉱物質微粉及び水溶性高分子分散剤、並びに、必要に応じて用いられる製剤助剤を水に添加し、該混合物を、例えば、高速攪拌機により十分に撹拌、混合した後に、ダイノミル、マイクロフルイダイザー等の湿式粉砕機で微粉砕および分散する方法(製法1)か、
25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物の原末をジェットマイザー等の乾式粉砕機によって微粉砕した後、これを他の成分をともに、水に添加し、該混合物を高速攪拌機で約30〜90分間程度攪拌、混合して、分散させる方法(製法2)が挙げられる。
本発明の水性懸濁状農薬組成物において25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物は、水中に微粒子の形で分散させられており、該微粒子の平均粒径は10μm以下、好ましくは0.2〜5μmである。
【0025】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、公知の方法に従ってそのまま或いは所望により水で希釈して散布することにより使用することができるが、例えば湛水下水田等へ畦畔より直接散布することもできる。本発明の水性懸濁状農薬組成物を水田等へそのまま散布する場合は、本発明の水性懸濁状農薬組成物が入った容器を使用前に軽く振り混ぜた後、畦畔に沿って少量ずつ散布することにより使用する。本発明の水性懸濁状農薬組成物を水で希釈して散布する場合は、水田、畑地、果樹園、芝地、非農耕地等に、公知の散布器等を用いて土壌表面散布、茎葉散布等により使用する。また、該水希釈液を用いて、種子処理、育苗箱処理等に使用することもできる
【実施例】
【0026】
次に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0027】
製造例1
1−(2−クロロ−6−プロピルイミダゾ〔1,2−b〕ピリダジン−3−イルスルホニル)−3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)ウレア(以下、本化合物Aと記す。) 1.8重量部、ピラクロニル 4.0重量部、ソルビン酸 0.1重量部、シリコン系消泡剤(アンチホームE-20、花王製) 0.3重量部、プロピレングリコール 6.6重量部、ショ糖脂肪酸エステル(ニューカルゲンFS−100、竹本油脂) 1.0重量部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル燐酸塩(ニューカルゲンFS−3PG:竹本油脂製) 0.8重量部、リグニンスルホン酸ナトリウム(ニューカルゲンRX−B、竹本油脂製) 0.1重量部、アセチレングリコール系界面活性剤(オルフィンE−1004、日信化学製) 0.1重量部、及び、ナトリウムモンモリロナイト(クニピアF、クニミネ工業) 1.0重量部に、イオン交換水 34.2重量部を加え、混合・分散させた後、ダイノミルKDL(シンマルエンタープライゼス製)を用いて湿式粉砕して、本化合物Aを含む懸濁液(1)を得た。
一方、カルボキシメチルセルロースナトリウム(セロゲン7A、第一工業製薬製) 1.0重量部、及び、キサンタンガム(ロードポール23、ローディア日華製) 0.05重量部を、イオン交換水 48.95重量部に加え、溶解させて、水溶液(1)を得た。
本化合物Aを含む懸濁液(1) 50重量部に、水溶液(1) 50重量部を加えて全量を100重量部とし、攪拌・混合し、本化合物Aを1.8重量%、ピラクロニルを4.0重量%含有する水性懸濁状農薬組成物(以下、本発明組成物Aと記す。)を得た。
【0028】
参考製造例1
本化合物A 1.8重量部、ピラクロニル 4.0重量部、ソルビン酸 0.1重量部、シリコン系消泡剤(アンチホームE-20、花王製) 0.3重量部、プロピレングリコール 6.6重量部、ショ糖脂肪酸エステル(ニューカルゲンFS-100、竹本油脂) 1.0重量部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル燐酸塩(ニューカルゲンFS−3PG:竹本油脂製) 0.8重量部、リグニンスルホン酸ナトリウム(ニューカルゲンRX−B、竹本油脂製) 0.1重量部、アセチレングリコール系界面活性剤(オルフィンE−1004、日信化学製) 0.1重量部、及び、ナトリウムモンモリロナイト(クニピアF、クニミネ工業) 1.0重量部に、イオン交換水 34.2重量部を加え、混合・分散させた後、ダイノミルKDL(シンマルエンタープライゼス製)を用いて湿式粉砕して、本化合物Aを含む懸濁液(2)を得た。
本化合物を含む懸濁液(2) 50重量部に、製造例1の水溶液(1) 50重量部を加えて全量を100重量部とし、攪拌・混合し、本化合物Aを1.8重量%、ピラクロニルを4.0重量%含有する水性懸濁状農薬組成物(以下、対照組成物Aと記す。)を得た。
【0029】
試験例1(室内拡展性試験)
長さ 200cm、幅 12.5cmのコンテナに12.5Lの水を入れ、供試農薬組成物 2mlを水面から約5cmの高さより、コンテナの一端から5cmの地点に滴下した。8時間静置後に、滴下地点、滴下地点から95cm離れた地点A、及び、滴下地点から190cm離れた地点Bより、水を各10ml採取し、水中の本化合物Aの濃度を測定した。
また、供試農薬組成物がコンテナの水中に均一に拡散した場合の本化合物Aの濃度(理想濃度:2.7ppm)との比(対理想濃度比)を求めた。
その結果を〔表1〕に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
試験例2(圃場試験)
長さ15m、幅2mの試験区(30m)において、自然発生したノビエ及びイヌホタルイが、それぞれ、2.0〜3.0葉期及び2.5〜4.0葉期に達したときに、湛水を5cmとした後、供試農薬組成物を1ヘクタール当たり所定薬量となるように試験区の一端(処理地点)にバンド処理した。
薬剤処理から6時間後に、処理地点、処理地点から5m離れた地点C及び処理地点から10m離れた地点Dより水を100ml採取し、水中の本化合物Aの濃度を測定し、供試農薬組成物が試験区の水中に均一に拡散した場合の本化合物Aの濃度(理想濃度)との比(対理想濃度比)を求めた。その結果を〔表2〕に示す。
また、薬剤処理45日後に、地点C、地点D及び処理地点から15m離れた地点Eにおけるノビエ及びイヌホタルイに対する殺草効果を観察評価(0:無作用〜100:完全枯死)により評価した。その結果を〔表3〕に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物、ショ糖脂肪酸エステル、アセチレングリコール系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、モンモリロナイト系鉱物質微粉、水溶性高分子分散剤及び水を含有する水性懸濁状農薬組成物。
【請求項2】
水性懸濁状農薬組成物の全量に対して、
25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物が0.5〜10重量%、ショ糖脂肪酸エステルが0.1〜5重量%、アセチレングリコール系界面活性剤が0.02〜1重量%、アニオン系界面活性剤が0.1〜5重量%、モンモリロナイト系鉱物質微粉が0.1〜3重量%、且つ、水溶性高分子分散剤が0.1〜5重量%の含有割合である請求項1記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項3】
25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物が、下記式(II)

〔式中、Rはハロゲン原子を表し、RはC2−C4アルキル基又はシクロプロピル基を表す。〕
で示される化合物である請求項1又は2記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項4】
25℃で固体のスルホニルウレア系除草活性化合物が、1−(2−クロロ−6−プロピルイミダゾ〔1,2−b〕ピリダジン−3−イルスルホニル)−3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)ウレアである請求項1又は2記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項5】
アセチレングリコール系界面活性剤が、0.1%水溶液での表面張力が25〜39mN/mであり、HLB値が4〜9であり、且つ、平均付加モル数が1〜5であるエチレンオキサイド鎖を有するアセチレングリコールエーテルである請求項1〜4いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項6】
アニオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル燐酸エステル塩である請求項1〜5いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項7】
水溶性高分子分散剤が、ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロース塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか一項記載の水性懸濁状農薬組成物を、湛水下水田に直接散布することを特徴とする水田に発生する雑草の防除方法。

【公開番号】特開2011−79740(P2011−79740A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220391(P2009−220391)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】