説明

水性接着性分散液

本発明は、ポリウレタンに基づく水性ポリマー分散液、該水性ポリマー分散液の製造法及び該水性ポリマー分散液の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン及びポリクロロプレンに基づく水性ポリマー分散液、該水性ポリマー分散液の製造法、及び該水性ポリマー分散液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンに基づく接着剤は、接着されるべき両方の支持体(substrate)に塗布された後、乾燥される溶剤含有型接着剤が大勢を占めている。次いで、2つの支持体を室温下又は熱活性化後に加圧下で接合させると、該接合操作後、直ちに高い初期強度を有する接着が得られる。
【0003】
生態学的な理由から、対応する水性接着剤配合物へ加工できる適当な水性接着剤分散液に対する要請が高まってきている。この種の系は次のような欠点を有している。即ち、塗布後に接着剤層を乾燥させなければならず、また、支持体は、予め乾燥接着性膜を熱活性化させた後でなければ相互に接合させることができない。又、支持体を室温で接合させる
ことはできない。
【0004】
一方、ポリクロロプレン分散液の場合には、水性二酸化珪素分散液と併用することによって、湿潤状態でも室温で支持体を接着させることができる混合物を調製することが可能である。しかしながら、熱活性化後にポリウレタン分散液接着剤によって問題なく接着できる種々の支持体(例えば、可塑化PVC等)は、水性ポリクロロプレン分散液を用いて室温で満足すべき状態で接着させることはできない
【0005】
ポリウレタンとポリクロロプレンの分散液を用いた水性配合物の調製と使用は現在のところ不可能である。この理由は、ポリクロロプレン分散液が通常は強アルカリ性の水性ポリマー分散液の状態にあるからである。このような状態では、ポリウレタンは加水分解され、ポリマー鎖は分解する。このような配合物のpHを適当な添加剤(例えば、アミノ酢酸等)を用いて低下させたとしても、得られる混合物は不安定である。何故ならば、貯蔵中にポリクロロプレンから少量のHClが分離してポリウレタンのポリマー鎖の分解をもたらすからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、水性のポリウレタン接着剤組成物であって、被接着支持体に塗布後及び接合後において高い初期強度、特に湿潤状態における強度(湿潤強度)を示すと共に、加水分解に対して安定な該接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ポリウレタン分散液、HCl分離に対して安定な水性ポリクロロプレン分散液、及び水性二酸化珪素分散液を適当に組み合わせることによって、高い初期強度、湿潤強度、及び
接着後の熱安定性を発揮する接着剤を製造することが可能であることが判明した。
【0008】
珪酸製品を種々の用途に使用することは従来から知られている。固体状のSiO製品はレオロジー特性を調整するための充填剤又は吸着剤として広範囲に使用されており、又、二酸化珪素分散液(シリカソル)は種々の無機材料のバインダー、半導体用艶出剤若しくはコロイド化学の反応における凝集成分として主に使用されている。例えば、ヨーロッパ特許公報EP−A0332928には、防火要素の製造における含浸層としてのシリカゾルの存在下でポリクロロプレンラテックスを使用することが開示されている。耐燃性発泡体の表面処理剤の製造又はビチューメン被覆のために、熱分解法珪酸をポリクロロプレンラテックスと併用することが仏国特許公報FR−A2341537及びFR−A2210699に開示されており、又、日本国特許公報特開平6−256738には、該珪酸をクロロプレン/アクリル酸コポリマーと併用することが開示されている。
【0009】
固形分含有量の高いポリクロロプレン分散液を調質することは従来から知られている。ヨーロッパ特許公報EP−A0857741には、該分散液を50℃で貯蔵することによって、分散されたポリイソシアネートに対して良好な反応性を示す製品が得られることが記載されている。しかしながら、この方法によれば、分散液のpHが著しく低下すると共に、電解質の含有量が著しく増加するために、貯蔵時と接着剤への配合時の安定性が低下するという顕著な欠点がもたらされる。
【0010】
ゲルを含有する架橋ポリクロロプレン分散液を製造することも知られている。この重合法は米国特許公報US−A5773544に記載されている。高いモノマー転化率を伴う重合によって得られるゲル含有ポリマー分散液は、熱に対する高い安定性の点で接着剤配合物とは区別される。この場合にも、この種の分散液の貯蔵安定性が低いという顕著な欠点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明によれば、下記の成分(a)〜(c)を含有する水性ポリマー分散液が提供される:
(a)60〜350nm(好ましくは、70〜300nm)の平均粒径を有する少なくとも1種のポリウレタン分散液、
(b)60〜300nmの平均粒径を有する少なくとも1種のポリクロロプレン分散液及び
(c)1〜400nm(好ましくは、5〜100nm、特に好ましくは、8〜60nm)の粒径を有するSiO粒子を含有する少なくとも1種の水性二酸化珪素分散液。
【0012】
本発明において使用するポリウレタン分散液(a)は、下記の成分(A1)〜(A3)と共に、(A4)及び/又は(A5)から選択される少なくとも1種の成分を反応させて得られる生成物であるポリウレタン(A)を含有する:
(A1)ポリイソシアネート、
(A2)400〜8000の平均分子量を有するポリマー性ポリオール及び/又はポリアミン、
(A3)所望による分子量が400までのモノアルコール、ポリアルコール、モノアミン、ポリアミン又はアミノアルコール、
(A4)少なくとも1個のイオン性基又は潜在的イオン性基を有する化合物、
(A5)親水性が付与された非イオン性化合物。
本発明の範囲内における潜在的イオン性基とは、イオン性基を生成することができる基である。
【0013】
ポリウレタン(A)は下記の配合処方によって調製するのが好ましい[この場合、成分(A4)と(A5)の合計量は0.1〜27重量%であり、又、反応成分の総量は100重量%にする]:
(A1)7〜45重量%、
(A2)50〜91重量%、
(A3)随意に0〜30重量%、
(A4)[イオン性又は潜在的にイオン性の化合物]0〜12重量%、及び
(A5)0〜15重量%。
【0014】
ポリウレタン(A)は下記の配合処方によって調製するのが特に好ましい[この場合、成分(A4)と(A5)の合計量は0.1〜19重量%であり、又、反応成分の総量は100重量%にする]:
(A1)10〜30重量%、
(A2)65〜90重量%、
(A3)随意に0〜10重量%、
(A4)[イオン性又は潜在的にイオン性の化合物]3〜9重量%、及び
(A5)0〜10重量%。
【0015】
ポリウレタン(A)は下記の配合処方によって調製するのが特に非常に好ましい[この場合、成分(A4)と(A5)の合計量は0.1〜16重量%であり、又、反応成分の総量は100重量%にする]:
(A1)8〜27重量%、
(A2)65〜85重量%、
(A3)随意に0〜8重量%、
(A4)[イオン性又は潜在的にイオン性の化合物]3〜8重量%、及び
(A5)0〜8重量%。
【0016】
適当なポリイソシアネート(A1)は芳香族、芳香族−脂肪族、脂肪族又は脂環式のポリイソシアネートである。この種のポリイソシアネートの混合物を使用してもよい。適当なポリイソシアネートの具体例を以下に示す:ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4−及び/又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンの異性体又は所望の混合割合のこれらの異性体の混合物、イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−トルイレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタン4,4’,4”−トリイソシアネート又はウレタン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、ウレットジオン若しくはイミノオキサジアジンジオン構造を有するこれらの誘導体、並びにこれらの任意の混合物。ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、並びにビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンの異性体及びこれらの混合物が好ましい。
【0017】
好ましくは、ポリイソシアネートは、脂肪族結合及び/又は脂環式結合のみによって結合したイソシアネート基を有するタイプの前記ポリイソシアネート又はこれらの混合物である。特に非常に好ましい出発化合物(A1)はHDI,IPDI及び/又は4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンに基づくポリイソシアネートまたはこれらの混合物である。
【0018】
ポリイソシアネート(A1)として別の適当なポリイソシアネートはウレットジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオン及び/又はオキサジアジントリオン構造を有すると共に少なくとも2種のジイソシアネートから構成されるいずれかの所望のポリイソシアネートであって、簡単な脂肪族、脂環式、芳香族−脂肪族及び/又は芳香族ジイソシアネートの変性によって調製されるポリイソシアネートであり、この種のポリイソシアネートとしては、例えば、次の文献に記載されているものが例示される:J. Prakt. Chem. 、第336巻、1994年、第185頁〜第200頁。
【0019】
適当なポリマー性ポリオール又はポリアミン(A2)は少なくとも1.5〜4のOH官能価を有する。この種の化合物としては、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリラクトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリアセタール、ポリオレフィン及びポリシロキサン等が例示される。600〜2500の分子量及び2〜3のOH官能価を有するポリオールが好ましい。
【0020】
ヒドロキシル基を有する適当なポリカーボネートは、炭酸誘導体(例えば、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート又はホスゲン等)をジオールと反応させることによって得られる。この場合、適当なジオールとしては次の化合物が例示される:エチレングリコール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、1,3−及び1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA,テトラブロモビスフェノールA,並びにラクトン変性ジオール。ジオール成分としては、ヘキサンジオール、好ましくは、1,6−ヘキサンジオール及び/又はヘキサンジオール誘導体を40〜100重量%含有するものが好ましい。この場合、ヘキサンジオール誘導体としては、末端OH基のほかにエーテル基又はエステル基を有するものが好ましい。この種の誘導体としては、ヘキサンジオール1モルに対してカプロラクトンを少なくとも1モル(好ましくは、1〜2モル)反応させて得られる生成物(独国特許公報DE−A1770245参照)、及びヘキサンジオールの自己エーテル化によってジヘキシレングリコール又はトリヘキシレングリコールを形成する反応によって得られる生成物が例示される。このような誘導体の調製法は、例えば、DE−A1570540にも記載されている。又、DE−A3717060に記載されているポリエーテル−ポリカーボネートジオールも使用することができる。
【0021】
ヒドロキシル−ポリカーボネートは、好ましくは線状にすべきである。しかしながら、この種の化合物は、所望により、多官能性成分(特に、低分子量ポリオール)を組み入れることによって分枝状構造を幾分有していてもよい。このような目的のためには、次に例示する化合物を使用することが適当である:グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、キニトール、マンニトール、ソルビトール、メチルグリコシド、及び1,3,4,6−ジアンヒドロヘキシット。
【0022】
適当なポリエーテルポリオールは、ポリウレタン化学の分野において自体既知のポリテトラメチレングリコールポリエーテルであり、該化合物は、例えば、カチオン開環によるテトラヒドロフランの重合によって調製することができる。
【0023】
さらに別の適当なポリエーテル−ポリオールはポリエーテル類、例えば、スターター(starter)分子を使用してスチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド又はエピクロロヒドリン(特に、プロピレンオキシド)から調製されるポリオール類である。
【0024】
適当なポリエステルポリオールとしては、多価アルコール(好ましくは、2価アルコール及び所望による付加的な3価アルコール)を多塩基性カルボン酸(好ましくは2塩基性カルボン酸)と反応させて得られる生成物が例示される。遊離のポリカルボン酸の代わりに、ポリエステル調製用の対応するカルボン酸無水物又は対応する低級アルコールとのポリカルボン酸エステル若しくはその混合物を使用することも可能である。ポリカルボン酸は脂肪族、脂環式、芳香族及び/又は複素環式のポリカルボン酸であってもよく、このようなカルボン酸は所望により、例えば、ハロゲン原子等によって置換されていてもよく、及び/又は不飽和結合を有していてもよい。
【0025】
成分(A3)は、ポリウレタンプレポリマーの停止反応のために適当な成分である。この成分としては、このような目的のための一価アルコール及びモノアミンが適当である。好ましいモノアルコールは、炭素原子数が1〜18の脂肪族モノアルコールであり、このようなアルコールとしては、エタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、1−ドデカノール及び1−ヘキサデカノール等が例示される。好ましいモノアミンは脂肪族モノアミンであり、このようなアミンとしては、ジエチルアミン、ジブチルアミン、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジエタノールアミン、「ジェファミン(Jeffamin)」(登録商標)のMシリーズのアミン[フンツマン・コーポレーション・ユオロープ社(ベルギー)の製品]、並びにアミノ官能性のポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド等が例示される。
【0026】
文献に多数の例が記載されている分子量が400未満のポリオール、アミノポリオール又はポリアミンも成分(A3)としては適当なものである。
【0027】
好ましい成分(A3)としては、下記の化合物が具体的に例示される:
i)アルカンジオール及びアルカントリオール、例えば、エタンジオール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、1,4−及び2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,3−ジメチルプロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、ジエチルオクタンジオールの位置異性体、1,2−及び1,4−シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA[2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン]、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオン酸(2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルエステル)、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、並びにグリセロール。
【0028】
ii)エーテルジオール、例えば、ジエチレンジグリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、及びヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル。
【0029】
iii)下記の一般式(I)及び(II)で表されるエステルジオール、例えば、δ−ヒドロキシブチル−ε−ヒドロキシカプロン酸エステル、ω−ヒドロキシヘキシル−γ−ヒドロキシ酪酸エステル、アジピン酸(β−ヒドロキシエチル)エステル、及びテレフタル酸ビス(β−ヒドロキシエチル)エステル等:
HO−(CH)−CO−O−(CH)−OH (I)
HO−(CH)−O−CO−R−CO−O−(CH)−OH (II)
(式中、Rは炭素原子数が1〜10、好ましくは2〜6のアルキレン基又はアリーレン基を示し、xは2〜6の数を示し、yは3〜5の数を示す)
【0030】
iv)ジアミン及びポリアミン、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,6−ジアミノヘキサン、1,3−及び1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、イソホロンジアミン、2,2,4−及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,3−及び1,4−キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチル−1,3−及び−1,4−キシリレンジアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、アミノ官能性のポリエチレンオキシド又はポリプロピレンオキシド[「ジェファミン」(登録商標)のDシリーズの製品(フンツマン・コーポレーション・ユオロープ社(ベルギー)の製品)として入手可能]、ジエチレントリアミン並びにトリエチレンテトラミン。本発明において使用するのに適当なジアミンは、ヒドラジン、ヒドラジン水和物及び置換ヒドラジン、例えば、N−メチルヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン及びその同族体、酸性ジヒドラジド、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、セバシン酸、ヒドロアクリル酸、テレフタル酸、セミカルバジド−アルキレンヒドラジド、例えば、β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド(例えば、DE−A1770591参照)、セミカルバジドアルキレン−カルバジンエステル、例えば、2−セミカルバジドエチルカルバジンエステル(例えば、DE−A1918504参照)、アミノセミカルバジド化合物、例えば、β−アミノエチルセミカルバジド−カーボネート(例えば、DE−A1902931参照)。
【0031】
成分(A4)は、イオン性基を有しており、該イオン性基はカチオン性であってもよく、あるいはアニオン性であってもよい。カチオン性又はアニオン性分散作用を示す化合物は、例えば、スルホニウム基、アンモニウム基、ホスホニウム基、カルボキシレート基、スルホネート基若しくはホスホネート基、又は造塩(salt formation)によって上記の基へ変換可能な基(潜在性のイオン性基)を有する化合物であって、該化合物中に存在するイソシアネート−反応性基によってポリマー中へ組み込むことができる化合物である。適当で好ましいイソシアネート−反応性基はヒドロキシル基及びアミン基である。
【0032】
適当なイオン性又は潜在的にイオン性の化合物(A4)を以下に例示する。
モノ−及びジヒドロキシカルボン酸、モノ−及びジアミノカルボン酸、モノ−及びジヒドロキシスルホン酸、モノ−及びジアミノスルホン酸、モノ−及びジヒドロキシホスホン酸、モノ−及びジアミノホスホン酸並びにこれらの塩類、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、N−(2−アミノエチル)−β−アラニン、2−(2−アミノ−エチルアミノ)−エタンスルホン酸、1,2−又は1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、エチレンジアミン−プロピル−若しくは−ブチルスルホン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、リシン、3,5−ジアミノ安息香酸、並びにIPDIとアクリル酸との付加物(ヨーロッパ特許公報EP−A0916647,実施例1参照)並びに該付加物のアルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩、亜硫酸水素ナトリウムと2−ブテン−1,4−ジオールとの付加物、ポリエーテルスルホネート、2−ブテンジオールとNaHSOとのプロポキシル化付加物(例えば、DE−A2446440、第5頁〜第9頁、式I〜III参照)、カチオン性基へ変換可能なユニットを有する化合物、例えば、親水性ビルダー成分としてのN−メチル−ジエタノールアミン。好ましいイオン性又は潜在的イオン性の化合物は、カルボキシル基若しくはカルボキシレート基及び/又はスルホネート基及び/又はアンモニウム基を有する化合物である。特に好ましいイオン性化合物は、イオン性基若しくは潜在的イオン性基としてカルボキシル基及び/又はスルホネート基を有する化合物、例えば、N−(2−アミノエチル)−β−アラニンの塩、2−(2−アミノ−エチルアミノ)−エタンスルホン酸の塩、IPDIとアクリル酸との付加物の塩(EP−A0916647、実施例1参照)、及びジメチロールプロピオン酸の塩等である。
【0033】
非イオン性の親水化作用を示す適当な化合物(A5)としては、少なくとも1個のヒドロキシル基又はアミノ基を有するポリオキシアルキレンエーテル等が例示される。この種のポリエーテル類は、エチレンオキシドから誘導されるユニットを30〜100重量%含有する。適当なポリエーテル類は線状構造を有すると共に、1〜3の官能価を有するポリエーテル類であり、又、下記の一般式(III)で表される化合物も適当である:
【化1】

一般式(III)において、R及びRは相互に独立して炭素原子数が1〜18の2価の脂肪族基、脂環式基又は芳香族基を示し(これらの基には酸素原子及び/又は窒素原子が介在していてもよい)、Rはアルコキシ末端基を有するポリエチレンオキシド基を示す。
【0034】
非イオン性の親水化作用を示す化合物としては、1分子あたりのエチレンオキシドユニットの統計的平均値が5〜70(好ましくは7〜55)である一価のポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコール等が例示され、この種の化合物は、例えば、自体既知の方法により、適当なスターター分子のアルコキシル化によって得られる[例えば、ウルマンズ・エンシクロペディ−・デア・テヒニッシェン・ヘミー(第4版)、第19巻、フェアラーク・ヘミー(バインハイム)、第31頁〜第38頁参照]。
【0035】
適当なスターター分子としては次の化合物が例示される:
飽和モノアルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、ペンタノール異性体、ヘキサノール異性体、オクタノール異性体、ノナノール異性体、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノールの異性体、ヒドロキシメチルシクロヘキサンの異性体、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン及びテトラヒドロフルフリルアルコール等、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等、不飽和アルコール、例えば、アリルアルコール、1,1−ジメチルアリルアルコール及びオレインアルコール等、芳香族アルコール、例えば、フェノール、クレゾール異性体及びメトキシフェノール異性体等、芳香族−脂肪族アルコール、例えば、ベンジルアルコール、アニシルアルコール及び桂皮アルコール等、第2モノアミン、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス−(2−エチルヘキシル)−アミン、N−メチル−及びN−エチルシクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等、複素環式第2アミン、例えば、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン及び1H−ピラゾール等。好ましいスターター分子は飽和モノアルコールである。スターター分子としてジエチレングリコールモノブチルエーテルを使用することは特に好ましい。
【0036】
アルコキシル化反応に適したアルキレンオキシドは、特にエチレンオキシドとプロピレンオキシドであり、これらの化合物は、アルコキシル化反応においては所望の順序で使用してもよく、あるいは混合物として使用してもよい。
【0037】
ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは純粋なポリエチレンオキシドポリエーテルであってもよく、あるいは混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルであってもよい(この場合、アルキレンオキシドユニット中のエチレンオキシドユニットの含有量は少なくとも30モル%、好ましくは少なくとも40モル%である)。好ましい非イオン性化合物は、少なくとも40モル%のエチレンオキシドユニットと60モル%未満のプロピレンオキシドユニットから成る単官能性の混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0038】
ポリウレタン(A)を調製するためには、非イオン性親水化剤(A4)とイオン性親水化剤(A5)の併用が好ましく、特に、非イオン性親水化剤とアニオン性親水化剤の併用が好ましい。
【0039】
水性ポリウレタン(A)の調製は、均質相中で一段階又は多段階でおこなってもよく、又、多段階反応の場合には、一部の段階は分散相でおこなってもよい。重付加反応が完全又は部分的におこなわれた後、分散過程、乳化過程又は溶解化過程がおこなわれる。その後、所望により、分散相中においてさらなる重付加又は変性がおこなわれる。
【0040】
ポリウレタン(A)を調製するためには、従来から知られている全ての操作法、例えば、乳化機剪断力法、アセトン法、プレポリマー混合法、溶融乳化法、ケチミンと固体の自然分散法、及びこれらの派生法等を使用することができる。これらの方法の要約は、次の文献に記載されている:H.バートル及びJ.ファルベ編、「メトーデン・デア・オーガニッシェンヘミー」(フーベン−ヴェイル)、第4版の増補と続巻、E20巻、第1671頁〜第1682頁(スツッツガルト、ニューヨーク、ティーメ、1987年)。溶融乳化法、プレポリマー混合法及びアセトン法が好ましく、特にアセトン法が好ましい。
【0041】
通常は、ポリウレタンプレポリマーを調製するためには、最初に、第1アミノ基又は第2アミノ基を含まない成分(A2)〜(A5)及びポリイソシアネート(A1)の全量又は部分量を反応容器内へ導入し(適当な場合には、該混合物を、イソシアネート基に対して不活性な水混和性溶剤で希釈してもよいが、好ましくは、溶剤は使用しない)、該混合物を比較的高い温度(好ましくは、50℃〜120℃)まで加熱する。
【0042】
適当な溶剤としては、アセトン、ブタノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及び1−メチル−2−ピロリドン等が例示される。この種の溶剤は、プレポリマーの調製開始時に添加するだけでなく、所望により、一部はその後で添加してもよい。上記の溶剤の中でも、アセトンとブタノンが好ましい。上記の反応は、常圧下又は加圧下(例えば、常圧よりも高い圧力下)において、溶剤(例えば、アセトン等)の沸点でおこなうことができる。
【0043】
さらに、イソシアネート付加反応の促進用触媒として知られている触媒、例えば、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]−オクタン、ジブチル錫オキシド、錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、錫ビス−(2−エチルヘキサノエート)又はその他の有機金属化合物等を前記成分と同時に導入してもよく、あるいはその後で計量して添加してもよい。触媒としては、ジブチル錫ジラウレートが好ましい。
【0044】
次いで、反応の開始時に添加しなかった成分であって、第1アミノ基又は第2アミノ基を含まない成分(A1)、(A2)、所望による(A3)と(A4)及び/又は(A5)を計量して添加する。ポリウレタンプレポリマーの調製においては、イソシアネート−反応性基に対するイソシアネート基の実質的な量比は0.90〜3,好ましくは0.95〜2.5,特に好ましくは1.05〜2.0である。成分(A1)〜(A5)の反応は、第1アミノ基又は第2アミノ基を含まない成分(A2)〜(A5)の一部に含まれるイソシアネート−反応性基の全量に基づいて部分的又は完全におこなわれるが、好ましくは、該反応は完全におこなわれる。転化率は、通常は、反応混合物中のNCO含有量を追跡することによって確認される。このためには、採取試料について分光学的測定(例えば、赤外スペクトル分析及び近赤外スペクトル等)、屈折率の測定及び化学的分析(例えば、滴定等)等を実施する。遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーは溶剤を含有しない状態又は溶液として得られる。
【0045】
出発分子中において、アニオン性又はカチオン性分散作用を示す基の部分的又は完全な造塩がおこなわれていないときには、成分(A1)及び(A2)〜(A5)からのポリウレタンプレポリマーの製造後又は製造中において、該部分的又は完全な造塩がおこなわれる。アニオン性基の場合には、塩基、例えば、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化カリウム又は炭酸ナトリウム等がこの目的のために使用される。塩基としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン及びジイソプロピレンエチルアミンが好ましい。塩基の量は、アニオン性基の量の50〜100%、好ましくは60〜90%である。カチオン性基の場合には、硫酸ジメチルエステル又はコハク酸が使用される。エーテル基を有する非イオン性の親水化化合物(A5)のみを使用する場合には、中和段階は省略される。中和は、中和剤を既に含有する分散水を用いる分散処理と同時におこなうこともできる。
【0046】
使用可能なアミン成分は、残存するイソシアネート基が反応可能な化合物(A2)〜(A4)である。この鎖長延長は、分散前若しくは分散中に溶剤中でおこなってもよく、又は分散後に水中でおこなってもよい。アミン成分を(A4)として使用する場合には、鎖長延長は分散前におこなうのが好ましい。
【0047】
アミン成分(A2)、(A3)又は(A4)は、有機溶剤及び/又は水で希釈した反応混合物中へ添加することができる。好ましくは、70〜95重量%の有機溶剤及び/又は水が使用される。1種よりも多くのアミン成分を使用する場合には、反応は所望の順序で連続的におこなってもよく、あるいは混合物として添加することによって同時におこなってもよい。
【0048】
ポリウレタン分散液(A)を調製するためには、ポリウレタンプレポリマーを分散水中へ導入してもよく、あるいは分散水を撹拌下でプレポリマー中へ導入してもよい(この場合、所望により、激しい撹拌等による強剪断力を使用してもよい)。上記操作を均質相中でおこなわない場合、存在するイソシアネート基と成分(A2)及び(A3)との反応によって分子量増大がおこなわれる。ポリアミン(A2)と(A3)の使用量は、残存する未反応イソシアネート基によって左右される。好ましくは、該イソシアネート基の50〜100%(特に好ましくは、75〜95%)をポリアミン(A2)及び(A3)と反応させる。
【0049】
所望により、有機溶剤は留去させることができる。分散液中の固形分の含有量は10〜70重量%(好ましくは、25〜65重量%、特に好ましくは、30〜60重量%)である。
【0050】
本発明によるコーティング系は単独で使用してもよく、あるいはコーティング技術の分野において既知のバインダー、助剤及び添加剤と併用してもよい。この種の添加剤等としては、特に次のものが例示される:光安定剤、例えば、UV吸収剤及び立体障害アミン(HALS)、酸化防止剤、フィラー、コーティング助剤、例えば、沈降防止剤、脱泡剤及び/又は湿潤剤、流動助剤(flow agent)、反応性希釈剤、可塑剤、触媒、補助溶剤及び/又は増粘剤並びにその他の添加剤、例えば、分散液、顔料、染料又は艶消剤。特に、他のバインダー、例えば、ポリウレタン分散液又はポリアクリレート分散液(これらの分散液は所望により、ヒドロキシ官能性であってもよい)との併用も問題なく可能である。これらの添加剤は、加工直前の本発明によるコーティング系へ添加することができる。しかしながら、添加剤の少なくとも一部は、バインダー又はバインダー/架橋剤混合物の分散前若しくは分散中に添加することも可能である。個々の成分及び/又は全混合物へ添加することができるこの種の物質の選択と添加量は当業者には既知の事項である。
【0051】
ポリクロロプレンの製造法は古くから知られており、アルカリ性の水性媒体中での乳化重合によっておこなうことができ、このような製造法に関しては次の文献を参照されたい:「ウルマンズ・エンシクロペディー・デア・テヒニッシェンヘミー」、第9巻、第366頁、フェアラーク・ウルバン・アンド・シュバルツェンベルク、ミュンヘン−ベルリン、1957年;「エンサイクロペディア・オブ・ポリマーサイエンス・アンド・テクノロジー」、第3巻、第705頁〜第730頁、ジョン・ウィリー、ニューヨーク、1965年;「メトーデン・デア・オーガニッシェンヘミー」(フーベン−ヴェイル)、XIV/1、第738頁以降、ゲオルク・ティーメ・フェアラーク・スツッツガルト、1961年。
【0052】
乳化剤としては、原則的には、エマルションを十分に安定化させるいずれの化合物及びこれらの混合物を使用することができ、例えば、次の化合物が挙げられる:長鎖脂肪酸の水溶性塩類(特に、ナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩)、ロジン及びロジン誘導体、高分子量アルコールスルフェート、アリールスルホン酸、アリールスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとに基づく非イオン性乳化剤、並びに乳化作用を有するポリマー(例えば、ポリビニルアルコール等)[独国特許公報DE−A2307811,DE−A2426012,DE−A2514666、DE−A2527320、DE−A2755074、DE−A3246748,DE−A1271405、DE−A1301502,米国特許公報US−A2234215,日本国特許公報JP−A60/031510]。
【0053】
従って、長い貯蔵安定性によって特徴づけられる水性ポリクロロプレン分散液(即ち、該分散液のpHは、貯蔵中には著しく変化しない)を提供することが目的であった。
【0054】
この目的は、少量の調節剤を添加するか、若しくは添加しないクロロプレンの水性エマルション中での連続的又は不連続的な重合後、残存モノマーを除去させ、次いで反応物を特別な条件下で貯蔵することによって得られる水性ポリクロロプレン分散液を提供することによって達成された(この場合、所望のポリマー構造は目標とする方法において形成させることが可能となる)。
【0055】
従って、本発明によれば、クロロプレン及びクロロプレンと共重合可能なエチレン性不飽和モノマー0〜20重量部をアルカリ性媒体中で重合させることによって得られるポリクロロプレン分散液が使用される。
【0056】
適当な共重合性モノマーは、例えば、次の文献に記載されている:「メトーデン・デア・オーガニッシェンヘミー」(フーベン−ヴェイル)、XIV/1、第738頁以降、ゲオルク・ティーメ・フェアラーク・スツッツガルト、1961年。1分子あたり3〜12個の炭素原子及び1個若しくは2個の共重合性のC=C二重結合を有する化合物が好ましい。好ましい共重合性モノマーとしては2,3−ジクロロブタジエン及び1−クロロブタジエン等が例示される。
【0057】
本発明に従って使用されるポリクロロプレン分散液は、0〜70℃(好ましくは、5〜45℃)でpH10〜14(好ましくは、11〜13)の条件下での乳化重合によって調製される。活性化は常套の活性剤又は活性剤系を用いておこなわれる。
【0058】
ポリクロロプレン分散液中の粒子の粒径は好ましくは60〜200nm、特に好ましくは60〜150nm、就中60〜120nmである。
【0059】
活性剤及び活性剤系としては、ホルムアミジンフルフィン酸、カリウムペルオキソジスルフェート、及びカリウムペルオキソジスルフェートと所望による銀塩(アントラキノン−β−スルホン酸のナトリウム塩)に基づくレドックス系[この場合、レドックスパートナー(redox partner)として、例えば、ホルムアミジンスルフィン酸、ヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩、ナトリウムスルフィット及びナトリウムジチオナイト等が用いられる]等が例示される。ペルオキシドとヒドロペルオキシドに基づくレドックス系も適当な活性剤系である。本発明に用いるポリクロロプレンは連続的又は不連続的に調製してもよいが、連続的重合法が好ましい。
【0060】
本発明に用いるポリクロロプレンの粘度を調整するために、常套の連鎖移動剤、例えば、メルカプタン類(例えば、DE−A3002711,英国特許公報GB−A1048235及び仏国特許公報FR−A2073106等に記載されている化合物)、及びキサントゲンジスルフィド類(例えば、DE−A1186215、DE−A2156453、DE−A2306610、DE−A3044811、ヨーロッパ特許公報EP−A0053319,GB−A512458、GB−A952156、US−A2321693及びUS−A2567117等に記載されている化合物)等を使用してもよい。
【0061】
特に好ましい連鎖移動剤は、DE−A3044811,DE−A2306610及びDE−A2156453等に記載されているキサントゲンジスルフィド類とn−ドデシルメルカプタンである。
【0062】
重合は、通常はモノマー転化率が50〜95%(好ましくは、60〜80%)に達したときに停止させる。この場合、抑制剤として、例えば、フェノチアジン、t−ブチルピロカテコール又はジエチルヒドロキシルアミンを添加することも可能である。このラジカル乳化重合においては、モノマーは生長するポリマー鎖の異なる位置に組み込まれる。例えば、重合温度が42℃の場合、トランス−1,4−位、シス−1,2−位、1,2−位及び3,4−位にはそれぞれモノマーの92.5%、5.2%、1.2%及び1.1%が組み込まれる[W.オブレヒト、フーベン・ウェイル:メトーデン・デア・オーガニッシェンヘミー、第20巻、第3部、高分子物質、第845頁(1987年)]。この場合、1,2−位に組み込まれるモノマーは不安定で容易に開裂可能な塩素原子を含んでおり、該原子は、金属酸化物との加硫を惹起させる活性種となる。
【0063】
重合後、残存するクロロプレンモノマーは水蒸気蒸留によって除去される。このモノマー除去処理は、例えば、次の文献に記載のようにしておこなわれる:[W.オブレヒト、フーベン・ウェイル:メトーデン・デア・オーガニッシェンヘミー、第20巻、第3部、高分子物質、第852頁(1987年)]。
【0064】
このようにして調製されるモノマー含有量の少ないポリクロロプレン分散液は、比較的高い温度で貯蔵される。貯蔵中、不安定な塩素原子の一部が分離し、有機溶剤に不溶性のポリクロロプレンネットワーク(ゲル)が形成される。
【0065】
次の工程においては、分散液中の固形分の含有量をクリーミング法によって増加させる。このクリーミング法は、例えば、次の文献に記載のようにして、アルギネートの添加によっておこなわれる:「ネオプレンラティシーズ(Neoprene Latices)」、ジョンC.カール、E.I.デュポン、第13頁(1964年)。
【0066】
従って、本発明は、次の工程(1)〜(4)を含む貯蔵安定性ポリクロロプレン分散液の製造方法にも関する:
(1)モノマー100gに基づいて0〜1ミリモル(好ましくは、0〜0.25ミリモル)の調節剤の存在下において、クロロプレンを0℃〜70℃(好ましくは、5℃〜45℃、特に好ましくは、10℃〜25℃)で重合させることによって、有機溶剤に不溶性のフラクションをポリマーに基づいて0.1重量%〜30重量%(好ましくは、0.5〜5重量%)含有する分散液を製造し、
(2)残存する未重合モノマーを水蒸気蒸留によって除去し、
(3)得られた分散液を50℃〜110℃(好ましくは、60℃〜100℃、特に好ましくは、70℃〜90℃)で貯蔵することによって、有機溶剤に不溶性のフラクション(ゲルフラクション)を1重量%〜60重量%まで増加させ[この含有量が得られる貯蔵時間は系によって左右され(3時間〜4日間)、配向(orienting)予試験によって測定する]、
(4)固形分含有量をクリーミング法によって50重量%〜64重量%(好ましくは、52重量%〜59重量%)まで増加させることによって、塩含有量(特に、塩化物イオンの含有量)が非常に少ない(特に好ましくは、500ppm未満)ポリクロロプレン分散液を得る。
【0067】
二酸化珪素の水性分散液は古くから知られており、これらは調製法に応じて種々の形態で存在する。本発明において用いるのに適当な二酸化珪素分散液(b)はシリカゾル、シリカゲル、熱分解法珪酸、沈降珪酸又はこれらの混合物から得ることができる。
【0068】
珪酸ゾルは、無定形二酸化珪素の水性コロイド溶液であり、該溶液は二酸化珪素ゾルとも呼ばれるが、通常はシリカゾルと略称される。この場合、二酸化珪素は、表面がヒドロキシル化された球状の粒子形態で存在する。コロイド粒子の粒径は、通常1〜200nmである。この場合、粒径と関連づけられる比BET表面積は15〜2000m/gである。この比BET表面積は、次の文献に記載された方法によって測定した値である:G.N.シアーズ、アナリティカル・ケミストリー、第28巻、No.12、第1981頁〜第1983頁、1956年12月。SiO粒子の表面は、コロイド溶液の安定化をもたらす対応する対イオンによって補償される荷電を有する。アルカリ性成分によって安定化されたシリカゾルは7〜11.5のpH値を有しており、又、アルカリ化剤として、例えば少量のNaO、KO、LiO、アンモニア、有機窒素含有塩基、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、アルカリ金属アルミネート若しくはアンモニウムアルミネートを含有する。シリカゾルは準安定なコロイド溶液として弱酸性の状態で存在することもできる。さらに、表面をAl(OH)Clで被覆することによってカチオン性に調整されたシリカゾルを調製することも可能である。シリカゾルの固形分濃度は5〜60重量%(SiO)である。
【0069】
シリカゾルの製造プロセスは、実質的には次の製造過程を経ておこなわれる:イオン交換による水ガラスの脱アルカリ化、所望の粒径(粒度分布)を有するSiO粒子の調製と安定化、所望のSiO濃度への調整、および所望によるSiO粒子の、例えばAl(OH)Clを用いる表面改質。これらのいずれかの過程においても、SiO粒子がコロイド溶解状態から離脱することはない。これによって、例えば高い結合効率を有する離散一次粒子の存在が説明される。
【0070】
シリカゲルは、コロイド状態に形成されるか、または形成されない珪酸であって、弾性〜硬質性の稠度および弛緩状〜緻密状の細孔構造を有する珪酸を意味する。この珪酸は、高縮合状ポリ珪酸の形態で存在する。表面上にはシロキサン及び/又はシラノール基が存在する。シリカゲルの調製は、水ガラスと鉱酸との反応によっておこなわれる。
【0071】
さらに、熱分解法珪酸と沈降珪酸は区別される。沈降法の場合には、先ず水を反応容器内へ導入し、次いで水ガラスと酸(例えばHSO)を同時に添加する。この場合、コロイド状の一次粒子が生成し、該一次粒子はさらなる反応に伴って凝集し、次いで凝集塊へ合体する。比表面積(DIN 66131)は30〜800m/gであり、一次粒子の粒径は5〜100nmである。これらの固体状珪酸の一次粒子は強固に架橋して二次凝集塊を形成する。
【0072】
熱分解法シリカは火炎加水分解法又はアーク放電法によって調製することができる。熱分解法シリカの主要な合成法は、酸水素炎中でテトラクロロシランが分解される火炎加水分解法である。この方法で生成する珪酸はX線回折分析によれば無定形である。熱分解法珪酸は、沈降珪酸に比べて、ほとんど細孔がないその表面上に、非常にわずかのOH基を有するに過ぎない。火炎加水分解法によって調製される熱分解法珪酸は、50〜600m/g(DIN 66131)の比表面積と5〜50nmの一次粒子径を有し、また、アーク放電法によって調製される珪酸は、25〜300m/g(DIN 66131)の比表面積と5〜500nmの一次粒子径を有する。
【0073】
固体状態の珪酸の合成と特性に関するその他の情報は、例えば、次の文献に記載されている:K.H.ブュヒェル、H.H.モレット、P.ボディッチュ、「工業無機化学」、ウィリーVCHフェアラーク、1999年、5.8章。
【0074】
本発明によるポリマー分散液に対して、単離された固体として存在するSiO原料(例えば、熱分解法珪酸または沈降珪酸)を用いるときには、該原料は、水に分散させることによって水性SiO分散液に変換される。
【0075】
二酸化珪素分散液を調製するためには、当該技術分野の分散機が使用される。好ましい分散機は、高剪断速度を発生させるのに適したもの、例えば、ウルトラトゥラックス(Ultraturrax)またはディスク状溶解機等である。
【0076】
SiO粒子が1〜400nm(好ましくは5〜100nm、特に好ましくは8〜60nm)の一次粒子径を有する二酸化珪素の水性分散を使用するのが好ましい。沈降珪酸を使用する場合には、粒径を小さくするために、該シリカは粉砕処理に付される。
【0077】
本発明による好ましいポリマー分散液は、該分散液中に、二酸化珪素分散液(b)のSiO粒子が離散状の未架橋一次粒子として存在するものである。
SiO粒子は、その粒子表面上にヒドロキシル基を有していることも好ましい。
【0078】
二酸化珪素の水性分散液としては、水性珪酸ゾルを使用するのが特に好ましい。
【0079】
本発明において使用する珪酸の特性は、ポリウレタンとポリクロロプレンの分散液を調製する際の増粘作用であり、この結果得られる接着剤は、粒子が微細に分割されて沈降に対して安定な分散液を形成し、該分散液は容易に加工することができ、しかも被接着体となる多孔性支持体上においても高い安定性を示す。
【0080】
二酸化珪素分散液の増粘作用は、添加剤、例えば、両性特性を有して部分的に加水分解する酸化亜鉛やその他の金属酸化物等によって高められる。
【0081】
本発明によるポリマー分散液を調製するための各成分の量比は、得られる分散液が30〜60重量%の分散ポリマーを含有するように選定される。この場合、ポリウレタン分散液(a)の含有量は55〜99重量%であり、二酸化珪素分散液(b)の含有量は1〜45重量%である。これらの百分率の値は不揮発性成分の重量に基づく値であり、全体は100重量%である。
【0082】
本発明によるポリマー分散液は、70〜98重量%のポリクロロプレンとポリウレタンとの混合物の分散液(a)及び2〜30重量%のシリカゾル分散液(b)を含有するのが好ましく、特に好ましくは、該ポリマー分散液は、80〜93重量%の分散液(a)及び20〜7重量%の分散液(b)との混合物を含有する。これらの百分率の値は、不揮発性成分の重量に基づく値であり、全体は100重量%である。
【0083】
本発明によるポリウレタン分散液とポリクロロプレン分散液との混合物中における前者の含有量は10%〜80%(好ましくは20%〜50%)である。
【0084】
ポリウレタン分散液は、所望により、他の分散液、例えば、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、ポリクロロプレン又はスチレン/ブタジエンの分散液を30重量%まで含有することができる。
【0085】
本発明によるポリマー分散液は、所望により、別の接着剤用助剤及び添加剤を含有していてもよい。例えば、石英粉末、石英砂、重晶石、炭酸カルシウム、チョーク、ドロマイト又はタルクのようなフィラー並びに所望により、湿潤剤、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウムのようなポリホスフェート、ナフタレンスルホン酸又はポリアクリル酸のアンモニウム塩若しくはナトリウム塩等を添加することができる。フィラーの添加量は10〜60重量%(好ましくは20〜50重量%)であり、湿潤剤の添加量は0.2〜0.6重量%である。これらの添加量の値は不揮発性成分の重量に基づくものである。
【0086】
高透明度を有する接着性フィルムを製造するためには、添加剤として、例えば、次に例示するようなエポキシド類を使用してもよい:「リュタポックス(Ruetapox)(登録商標)0164」[700以上の分子量と8000〜13000mPas の粘度を有するビスフェノールA/エピクロロヒドリン樹脂;ベークライト社(47138 ドゥイスブルグ−マイデリッヒ、バルチンガーストラーセ49)の製品]。
【0087】
添加剤としては、クロロプレンポリマーから放出されることがある少量の塩化水素の受容体としての酸化亜鉛若しくは酸化マグネシウムを使用するのが好ましい。この種の添加剤は、不揮発性成分に基づいて0.1〜10重量%(好ましくは1〜5重量%)の量比で添加され、また、該添加剤は、ポリクロロプレン分散液(a)の存在下において部分的な加水分解を受けてもよく、あるいは加水分解可能な成分を含有していてもよい。このようにして、ポリマー分散液の粘度を増大させて所望のレベルに調整することが可能となる。
ZnOの場合の加水分解は、例えば次の文献に記載されている:「グメリンス・ハンドブーフ・デア・オーガニッシェンヘミー」、第8版、1924年、フェアラーク・ヘミー、ライプツィヒ、第32巻、第134頁〜第135頁;増補巻33、フェアラーク・ヘミー、1956年、第1001頁〜第1003頁。また、MgOの場合の加水分解は、例えば次の文献に記載されている:「グメリンス・ハンドブーフ・デア・オーガニッシェンヘミー」、第8版、1939年、フェアラーク・ヘミー、ベルリン、第27巻、第12頁〜第13頁、第47頁〜第50頁、第62頁〜第64頁。
【0088】
所望により、適当な助剤として、例えば、不揮発性成分に基づいて0.01〜1重量%の有機増粘剤(例えば、セルロース誘導体、アルギネート、デンプン、デンプン誘導体、ポリウレタン増粘剤またはポリアクリル酸等)、又は不揮発性成分に基づいて0.05〜5重量%の無機増粘剤(例えば、ベントナイト等)等を用いてもよい。
【0089】
保存のために、殺真菌剤を本発明による接着剤組成物に添加することも可能である。殺真菌剤は、不揮発性成分に基づいて0.02〜1重量%の量で使用される。適当な殺真菌剤としては、フェノール誘導体、クレゾール誘導体および有機錫化合物が例示される。
【0090】
所望により、粘着性付与樹脂、例えば、未変性若しくは変性天然樹脂(例えば、ロジンエステル、炭化水素樹脂)又は合成樹脂(例えば、フタレート樹脂)を分散形態で本発明によるポリマー分散液に添加することもできる。これらに関しては、例えば、次の文献を参照されたい:「粘着樹脂」、R.ジョーダン、R.ヒンターバルドナー、第75頁〜第115頁、ヒンターバルドナー・フェアラーク、ミュンヘン、1994年。好ましい粘着性付与樹脂の分散液は、70℃よりも高い軟化点(特に好ましくは110℃よりも高い軟化点)を有するアルキル−フェノール樹脂及びテルペンフェノール樹脂の分散液である。
【0091】
又、有機溶剤(例えば、トルエン、アセトン、キシレン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジオキサン又はこれらの任意の混合物)または可塑剤(例えば、アジペート、フタレートまたはホスフェートに基づく可塑剤)を、不揮発性成分に基づいて0.5〜10重量部の量比で使用することも可能である。
【0092】
本発明は、本発明によるポリマー分散液の製造法であって、ポリクロロプレン分散液を二酸化珪素分散液(b)と混合し、次いで、ポリウレタン分散液を添加してポリクロロプレン/二酸化珪素混合物の粘度を低下させることを特徴とする該製造法も提供する。この場合、所望により、常套の接着剤用助剤及び添加剤を添加してもよい。
【0093】
接着剤組成物は既知の方法、例えば、塗布(spread coating)、流し込み、ナイフ塗布、噴霧、ロール塗又は浸漬等によって適用することができる。接着剤フィルムは室温又は220℃までの高温下で乾燥させることができる。
【0094】
接着剤組成物は1成分系として使用してもよく、又は既知の方法によって架橋剤と併用してもよい。接着剤層は、150℃〜180℃の温度で短時間(複数秒間〜数分間)加熱することによって、付加的に加硫させることができる。
【0095】
本発明による接着剤の黄変化傾向は、常套のポリクロロプレン接着剤に比べて著しく低い。本発明による接着剤は、活性化処理に付さなくても可塑化PVCに接着し、又、接着が困難な合成皮革(メッシュ)上においても優れた湿潤接着特性を発揮する。
さらに、接着層は加水分解による損傷を受けないので、該接着層の高品質は保持される。
【0096】
本発明によるポリマー分散液は、例えば、次に例示するような同種もしくは異種のいずれかの所望の支持体を接着させるための接着剤として使用することができる:木材、紙、プラスチック、織物、皮革、ゴム及び無機材料(例えばセラミック、石器、ガラスファイバー、セメント等)。
【実施例】
【0097】
1.1 使用した原料を以下の表1及び表2に示す。
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
ポリクロロプレン分散液の調製
実施例(ディスパーコルCVPLS2325)
A1)重合
7台の同タイプの反応器(50リットル)から成る重合カスケードの第1反応器内へ水性相(W)、モノマー相(M)及び活性剤相(A)を、計量装置と調整装置を経由して、一定の量比で導入した。容器内の平均滞留時間は25分間とした。反応器は独国特許公報DE−A2650714に記載の反応器に相当する(数値は、使用したモノマー100重量部当たりの重量部を示す)
【0100】
(M)=モノマー相
クロロプレン 100.0重量部
n−ドデシルメルカプタン 0.03重量部
フェノチアジン 0.005重量部
【0101】
(W)=水性相
脱イオン水 115.0重量部
不均化アビエチン酸のナトリウム塩 2.6重量部
水酸化カリウム 1.0重量部
【0102】
(A)=活性剤相
ホルムアミジンスルフィン酸の1%水溶液 0.05重量部
過硫酸カリウム 0.05重量部
アントラキノン−2−スルホン酸のNa塩 0.005重量部
【0103】
反応器の内部温度が15℃のときに反応を僅かに開始させた。発生する重合熱を外部冷却により除去することによって、重合温度を10℃に維持した。モノマーの転化率が80%に達したとき、ジエチルヒドロキシアミンの添加によって反応を停止させた。残存モノマーを、水蒸気蒸留によってポリマーから除去した。生成物中の固形分含有量は38重量%であり、ゲル含有量は4重量%であり、又、pHは12.8であった。重合を120時間おこなった後、重合ラインを停止させた。
【0104】
A2)分散液の調質
水蒸気蒸留後、分散液を、断熱貯蔵タンク内において、80℃での調質処理に2日間付した。この場合の処理温度は、付加的な加熱によって随意に調整した。得られたラテックスは、冷却後、クリーミング処理に付した(A3)。
【0105】
A3)クリーミング処理
固体状アルギネート(マニュテックス社製)を脱イオン水に溶解させることによって、2重量%のアルギネート水溶液を調製した。ポリクロロプレン分散液200gを8本のガラス瓶(250ml)の各々へ導入し、次いで、アルギネート水溶液6〜20gを2gずつ撹拌下で該分散液中へ添加した。24時間貯蔵した後、濃厚ラテックス上に形成された漿液(serum)の量を測定した。漿液量が最も多い試料中のアルギネートの量を5倍し、ポリクロロプレン分散液1kgのクリーミングに必要なアルギネートの最適量とした。
【0106】
1.2 測定方法
1.2.1 可塑化PVC上における剥離強さの室温での測定
この実験はEN1392に従っておこなった。2枚の可塑化PVC[ジオクチルフタレート(DOP)30%含有]試験体(100×30mm)の表面を研磨紙で粗面化させ(粗度:80)、その両面上へ分散液を刷毛塗りした後、室温で60分間乾燥させた。次いで、試験体を重ね、プレス内で4barのゲージ圧を10秒間印加した。市販の引張試験器を用いる引裂試験を室温でおこなった。引裂強さは接着直後と3日後に測定した。試験体は、温度が23℃で相対湿度が50%の条件下で貯蔵した。
【0107】
接着剤の塗布
接着剤は、ナイフを用いて単一成分として塗布した(塗布厚:200μm)。
【0108】
1.3 接着剤組成物の調製
接着剤組成物を調製するために、ポリクロロプレン分散液をガラス製ビーカー内へ入れ、次いで、下記の酸化防止剤と分散液形態の酸化亜鉛を順次添加した後、最後にシリカゾルを添加した。反応を30分間おこなった後、シリカゾル[CR(有機)−二酸化珪素/シリカゾル−(無機)−ハイブリッド系]のゲル化によって本来的に粘性なマスが形成された。該ゾルの粘度は、ポリウレタン分散液の添加によって所望の粘度に調整した。
酸化防止剤:「レノフィット(Rhenofit)(登録商標)DDA−50EM」(スチレンで処理したN−フェニルベンゼンアミン;固形分:50%、pH:8〜10)[ライン・ケミー・ラインナウ社製]、
酸化亜鉛分散液:「ボーチャーズ(Borchers)(登録商標)9802」(活性酸化亜鉛に基づく水性ペーストであって、本来的に粘性な白色ペースト;顔料含有量:50重量%、密度:約1.66g/cm、10.3 l/s における粘度:約3500 mPas)[ボルケルス社(アルフレッド・ノーベルシュトラーセ50番、40765,モンハイム)製]
【0109】
可塑剤を30%含有するPVCに接着させた場合の測定結果を以下の表3に示す(接着に際しては、活性化処理はおこなわなかった)。
【表3】

【0110】
接着剤4を用いて合成皮革(MESH)を接着させた場合の測定結果を以下の表4に示す。合成皮革はPUR仕上げ層及びポリエチレンテレフタレートを基材とする繊維層から成る。MESHの繊維層側へ接着剤を塗布した後、以下の接合操作(1)又は(2)をおこない、結果を以下の表4に示す:
(1)通気処理に付すことなく、所定時間(分)経過後、被接着面を接合させて指先で押しつけた[所謂「ウムブッグ(Umbugg)法」による繊維面と繊維面との接合]。
(2)65℃の空気循環室内に90秒間放置した後、所定時間(分)経過後、被接着面を接合させて指先で押しつけた[所謂「ウムブッグ法」による繊維面と繊維面との接合]。
【0111】
【表4】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(a)〜(c)を含有する水性ポリマー分散液:
(a)60〜350nmの平均粒径を有する少なくとも1種のポリウレタン分散液、
(b)60〜300nmの平均粒径を有する少なくとも1種のポリクロロプレン分散液及び
(c)1〜400nmの粒径を有するSiO粒子を含有する少なくとも1種の水性二酸化珪素分散液。
【請求項2】
SiO粒子が5〜100nmの粒径を有する請求項1記載の水性ポリマー分散液。
【請求項3】
SiO粒子が8〜60nmの粒径を有する請求項1記載の水性ポリマー分散液。
【請求項4】
SiO粒子が離散未架橋一次粒子の形態にある請求項1から3いずれかに記載の水性ポリマー分散液。
【請求項5】
SiO粒子が、該粒子の表面上にヒドロキシル基を有する請求項1から4いずれかに記載の水性ポリマー分散液。
【請求項6】
水性二酸化珪素分散液(c)が水性珪酸ゾルである請求項1から5いずれかに記載の水性ポリマー分散液。
【請求項7】
ポリクロロプレン分散液(b)を二酸化珪素分散液(c)並びに添加剤及び所望による常套の接着助剤と混合し、得られた混合物を最後にポリウレタン分散液(a)と混合することを含む、請求項1から6いずれかに記載の水性ポリマー分散液の製造法。
【請求項8】
請求項1から6いずれかに記載の水性ポリマー分散液の接着剤としての使用。
【請求項9】
請求項1から6いずれかに記載の水性ポリマー分散液によって結合された支持体。
【請求項10】
支持体が靴の構造部材又は靴である請求項9記載の支持体。



【公表番号】特表2007−533778(P2007−533778A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526548(P2006−526548)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009932
【国際公開番号】WO2005/035683
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】