説明

水性樹脂組成物およびガスバリア性組成物

【課題】ガスバリア性の高い水性樹脂組成物、および、その水性樹脂組成物を含むガスバリア性組成物を提供すること。
【解決手段】ポリイソシアネートと、炭素数2〜8のポリオールと、炭素数3〜6のアニオン性基含有ポリオールとを反応させることにより、アニオン性基を有するイソシアネート基末端プレポリマーを調製する。そして、アニオン性基を有するイソシアネート基末端プレポリマー、鎖伸長剤およびヒドラジンまたはその誘導体を反応させて得られる水性樹脂と、平均官能基数が2以上のポリエポキシ化合物とから水性樹脂組成物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性樹脂組成物およびガスバリア性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水性バインダーなどに用いられる水性ポリウレタン樹脂が知られている。
例えば、数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールプロピオン酸およびイソホロンジイソシアネートを反応させた後、これに、トリエチルアミンおよびアセトンヒドラゾンを加え、さらに、水を加えた後、加熱することにより得られる水性ポリウレタン樹脂が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−255751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、各種分野において、水性ポリウレタン樹脂から調製されるフィルムには、高いガスバリア性が要望される。しかし、特許文献1で提案される水性ポリウレタン樹脂からフィルムを得る場合には、得られるフィルムのガスバリア性が不十分であり、上記の要望を満足させることができない。
本発明の目的は、ガスバリア性の高い水性樹脂組成物、および、その水性樹脂組成物を含むガスバリア性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の水性樹脂組成物は、アニオン性基を有するイソシアネート末端プレポリマー、鎖伸長剤およびヒドラジンまたはその誘導体を反応させて得られる水性樹脂と、平均官能基数が2以上のポリエポキシ化合物とから調製されることを特徴としている。
また、本発明の水性樹脂組成物では、前記イソシアネート末端プレポリマーは、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種のポリイソシアネートと、炭素数2〜8のポリオールと、炭素数3〜6のアニオン性基含有ポリオールとを反応させることにより得られることが好適である。
【0005】
また、本発明の水性樹脂組成物では、前記ヒドラジン誘導体は、N−アミノ基(N−NH2)を有しており、前記水性樹脂のN−アミノ基の前記ポリエポキシ化合物のエポキシ基に対する当量比が、1/3を超過し1未満であることが好適である。
また、本発明のガスバリア性組成物は、上記した水性樹脂組成物と、湿潤性無機層状化合物とを含有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水性樹脂組成物およびガスバリア性組成物を、基材フィルムの上に塗布すれば、ガスバリア性に優れるフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の水性樹脂組成物は、水性樹脂とポリエポキシ化合物とから調製される。
水性樹脂は、イソシアネート末端プレポリマー、鎖伸長剤、および、ヒドラジンまたはその誘導体を反応させて得られる。
イソシアネート末端プレポリマーは、例えば、ポリイソシアネートと、ポリオールと、アニオン性基含有ポリオールとを反応させることにより得られる。
【0008】
ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TDI)、4,4′−トルイジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、m−またはp−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0009】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)、ω,ω′−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(H12MDI)、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(H6XDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0010】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−、2,3−または1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0011】
また、ポリイソシアネートとしては、上記したポリイソシアネートの多量体(例えば、二量体、三量体など)や、例えば、上記したポリイソシアネートあるいは多量体と、水との反応により生成するビウレット変性体、多価アルコールとの反応により生成するアロファネート変性体、炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオン変性体、さらには、下記のポリオールとの反応により生成するポリオール変性体などが挙げられる。
【0012】
これらポリイソシアネートは、単独または2種以上併用することができ、ガスバリア性の観点から、好ましくは、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネートが挙げられる。さらに好ましくは、XDI、H6XDIが挙げられる。
ポリオールは、例えば、ヒドロキシル基を2つ以上有する分子量60〜400の低分子量化合物が挙げられ、ガスバリア性の観点から、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルカン(C7〜C22)ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、アルカン−1,2−ジオール(C17〜C20)、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、キシレングリコール、ビスヒドロキシエチレンテレフタレートなどのジオール、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールおよびその他の脂肪族トリオール(C8〜24)などのトリオール、例えば、テトラメチロールメタン、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニットなどのヒドロキシル基を4つ以上有するポリオールなどが挙げられる。
【0013】
これらポリオールは、単独または2種以上併用することができ、好ましくは、炭素数2〜8のポリオール、さらに好ましくは、炭素数2〜8のジオールおよび炭素数2〜8のトリオールが挙げられ、とりわけ好ましくは、これらジオールおよびトリオールの併用が挙げられる。ポリオールの炭素数が上記範囲外であると、ガスバリア性が低下する場合がある。
【0014】
アニオン性基含有ポリオールは、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、スルホベタインなどのべタイン構造含有基などのアニオン性基を有するポリオールであって、好ましくは、カルボキシル基含有ポリオールが挙げられる。
カルボキシル基含有ポリオールとしては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸などの炭素数2〜10のジヒドロキシアルカン−カルボン酸、例えば、ジオキシマレイン酸などの炭素数4〜10のジヒドロキシアルカン−ポリカルボン酸または炭素数4〜10のジヒドロキシアルケン−ポリカルボン酸、例えば、2,6−ジヒドロキシ安息香酸などの炭素数6〜10のジヒドロキシアレーン−カルボン酸などが挙げられる。
【0015】
これらアニオン性基含有ポリオールは、単独または2種以上併用することができ、好ましくは、炭素数が2〜10のジヒドロキシアルカン−カルボン酸が挙げられる。さらに好ましくは、炭素数が3〜6のジヒドロキシアルカン−カルボン酸が挙げられる。
イソシアネート末端プレポリマーを得るには、ポリイソシアネートと、ポリオールおよびアニオン性基含有ポリオールとを、例えば、ポリイソシアネートのイソシアネート基が、ポリオールおよびアニオン性基含有ポリオールのヒドロキシル基の総量に対して過剰となる割合、より具体的には、ヒドロキシル基に対するイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/ヒドロキシル基)が1を越える割合、好ましくは、1.1〜10の割合において配合し、溶液重合やバルク重合などの公知の重合方法によって反応させる。
【0016】
溶液重合では、有機溶媒に、ポリイソシアネート、ポリオールおよびアニオン性基含有ポリオールを加えて、反応温度20〜90℃で、1〜数時間程度反応させる。有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富み、除去が容易な低沸点溶媒である、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、例えば、テトラヒドロフランなどのエーテル類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。
【0017】
バルク重合では、例えば、窒素気流下において、ポリイソシアネートを撹拌しつつ、これに、ポリオールおよびアニオン性基含有ポリオールを加えて、反応温度60〜90℃で、1〜数時間程度反応させる。
本発明においては、反応性および粘度の調節がより容易な溶液重合が好ましく用いられる。
【0018】
また、上記の反応では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの公知のウレタン化触媒を用いてもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーからポリイソシアネートの未反応モノマーを、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段を用いて除去してもよい。
また、この反応において、ポリオールとアニオン性基含有ポリオールとの配合割合は、例えば、アニオン性基含有ポリオールが、ポリオール100重量部に対して、3〜500重量部、好ましくは、10〜120重量部であり、また、アニオン性基含有ポリオールが、後述する水性樹脂100g当たり、アニオン性基が、通常、10〜200ミリ当量、好ましくは、15〜100ミリ当量となるように配合される。アニオン性基の当量が、この範囲にあれば、良好な分散性を確保することができる。
【0019】
このようにして得られるイソシアネート基末端プレポリマーは、分子末端に、遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーであって、そのイソシアネート基含量が、例えば、2〜25重量%、好ましくは、5〜20重量%である。また、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、2〜5、好ましくは、2〜3.5である。
そして、水性樹脂を得るには、次いで、得られたイソシアネート末端プレポリマーを中和、水分散した後、鎖伸長剤およびヒドラジンまたはその誘導体と反応させるか、またはイソシアネート末端プレポリマーを中和した後に鎖伸長剤およびヒドラジンまたはその誘導体と反応させた後、水分散させるようにする。好ましくは、得られたイソシアネート末端プレポリマーを中和、水分散した後、鎖伸長剤およびヒドラジンまたはその誘導体とを反応させる。
【0020】
中和に用いられる中和剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミンなどの3級アミン類や、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、その他、アンモニアなどが挙げられる。
鎖伸長剤としては、例えば、2つ以上のアミノ基を有するポリアミンが挙げられる。このようなポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−シクロヘキシルメタンジアミン、ノルボルナンジアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミンなどのポリアミンが挙げられる。
【0021】
また、ポリアミンとしては、ヒドロキシル基を有していてもよく、そのようなヒドロキシル基を有するポリアミンとしては、例えば、2−[(2’−アミノエチル)アミノ]エタノール(実施例の2−ヒドロキシエチルアミノエチルアミンに相当)、2−アミノエチルアミノプロパノール、2−(3’−アミノプロピル)アミノエタノール、3−(2’−ヒドロキシエチル)アミノプロピルアミンなどのアミノC2−6アルキルアミノC2−3アルキルアルコールなどが挙げられる。
【0022】
ヒドラジン誘導体は、例えば、N−アミノ基(N−NH2)を有する化合物が挙げられ、より具体的には、ヒドラジド基(CONH−NH2)やヒドラゾン基(C=N−NH2)を有する化合物などが挙げられる。
このようなヒドラジン誘導体としては、例えば、下記一般式(1)で示されるモノ置換ヒドラジン類、下記一般式(2)で示されるジヒドラジン類、下記一般式(3)で示されるジヒドラジド類、下記一般式(4)で示されるジセミカルバジド類、下記一般式(5)で示されるヒドラゾノ基(=N−NH2)含有ヒドラゾン類、下記一般式(6)で示されるモノ置換ヒドラゾノ基(=N−NHR1(R1は、アルキル基またはヒドロキシアルキル基を示す。))含有ヒドラゾン類、下記一般式(7)で示されるヒドラジノ基(−NHNH2)含有ヒドラゾン類、下記一般式(8)で示されるヒドラジド基(−CONH−NH2)含有ヒドラゾン類、下記一般式(9)で示されるセミカルバジド基(−NHCO−NHNH2)含有ヒドラゾン類などが挙げられる。
【0023】
1−NHNH2 (1)
(式中、R1は、アルキル基またはヒドロキシアルキル基を示す。)
2NHN−R5−NHNH2 (2)
(式中、R5は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリレン基またはカルボニル基を示す。)
2NHNOC−R2−CONHNH2 (3)
(式中、R2は、アルキレン基、シクロアルキレン基またはアリレン基を示す。)
2NHN−CONH−R2−NHCO−NHNH2 (4)
(式中、R2は、アルキレン基、シクロアルキレン基またはアリレン基を示す。)
【0024】
【化1】

(式中、R3およびR4は、同一または相異なって、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を示す。)
【0025】
【化2】

(式中、R3およびR4は、同一または相異なって、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を示す。R1は、アルキル基またはヒドロキシアルキル基を示す。)
【0026】
【化3】

(式中、R3およびR4は、同一または相異なって、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を示す。R2は、アルキレン基、シクロアルキレン基またはアリレン基を示す。)
【0027】
【化4】

(式中、R3およびR4は、同一または相異なって、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を示す。R2は、アルキレン基、シクロアルキレン基またはアリレン基を示す。)
【0028】
【化5】

(式中、R3およびR4は、同一または相異なって、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を示す。R2は、アルキレン基、シクロアルキレン基またはアリレン基を示す。)
1、R3およびR4で示されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、イソデシルなどの炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0029】
1で示されるヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒトロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、5−ヒドロキシペンチルなどの炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
2およびR5で示されるアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、iso−プロピレン、ブチレン、iso−ブチレン、sec−ブチレン、ペンチレン、iso−ペンチレン、sec−ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、2−エチルヘキシレン、ノニレン、デシレンなどの炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。
【0030】
2およびR5で示されるシクロアルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレンなどの炭素数3〜8のシクロアルキレン基が挙げられる。
2およびR5で示されるアリレン基としては、例えば、フェニレン、トリレン、キシリレン、ナフチレンなどの炭素数6〜10のアリレン基が挙げられる。
【0031】
3およびR4で示されるシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどの炭素数3〜10のシクロアルキル基が挙げられる。
3およびR4で示されるアリール基としては、例えば、フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
【0032】
3およびR4で示されるアラルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチルなどの炭素数7〜16のアラルキル基などが挙げられる。
3およびR4で示される複素環基としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環基(例えば、フラン、オキサゾールなどの5員環基、ピランなどの6員環基、ベンゾフラン、キサンテン、クロマン、イソクロマンなどの縮合環基)、ヘテロ原子として硫黄原子を含む複素環基(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾールなどの5員環基など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環基(例えば、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、ピロール、ピラゾール、イミダゾールなどの5員環基、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンなどの6員環基、インドール、インドレン、イソインドール、インダゾール、インドリン、イソインドリン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、プリン、カルバゾール、アクリジン、フェナントロジン、フェナントロリンなどの縮合環基)などが挙げられる。
【0033】
ヒドラジン誘導体は、より具体的には、モノ置換ヒドラジン類として、例えば、メチルヒドラジン、エチルヒドラジンなどのC1−6アルキルヒドラジン、例えば、2−ヒドロキシエチルヒドラジン、2−ヒドロキシプロピルヒドラジン、3−ヒドロキシプロピルヒドラジンなどのヒドロキシC1−6アルキルヒドラジンなどが挙げられる。
ジヒドラジン類としては、例えば、メチレンジヒドラジン、エチレンジヒドラジン、プロピレンジヒドラジン、ブチレンジヒドラジンなどC1−10アルキレンジヒドラジン類、例えば、カルボヒドラジドなどが挙げられる。
【0034】
ジヒドラジド類としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの脂肪族C2−18ジカルボン酸ジヒドラジド、例えば、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどの不飽和脂肪族ジカルボン酸ジヒドラジド、例えば、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジドなどの芳香族ジカルボン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
【0035】
ジセミカルバジド類としては、例えば、上記したポリイソシアネートとヒドラジンとの反応により生成する化合物が挙げられる。
ヒドラゾノ基含有ヒドラゾン類としては、例えば、アセトンヒドラゾン、メチルエチルケトンヒドラゾン、メチルイソブチルケトンヒドラゾンなどのC3−8脂肪族ケトン−ヒドラゾン、例えば、アセトフェノンヒドラゾン、ベンゾフェノンヒドラゾンなどの芳香族ケトン−ヒドラゾン、例えば、ホルムアルデヒドヒドラゾン、アセトアルデヒドヒドラゾンなどのC2−6脂肪族アルデヒド−ヒドラゾン、例えば、ベンズアルデヒドヒドラゾンなどの芳香族アルデヒド−ヒドラゾンなどが挙げられる。
【0036】
モノ置換ヒドラゾノ基含有ヒドラゾン類としては、例えば、上記一般式(1)で示されるモノ置換ヒドラジン類と、ケトン(C3−8脂肪族ケトン)またはアルデヒド(C2−6脂肪族アルデヒド)との反応により生成するモノヒドラゾン類が挙げられる。
ヒドラジノ基含有ヒドラゾン類としては、例えば、上記一般式(2)で示されるジヒドラジン類と、ケトン(C3−8脂肪族ケトン)またはアルデヒド(C2−6脂肪族アルデヒド)との反応により生成するモノヒドラゾン類が挙げられる。
【0037】
ヒドラジド基含有ヒドラゾン類としては、例えば、上記一般式(3)で示されるジヒドラジド類と、ケトン(C3−8脂肪族ケトン)またはアルデヒド(C2−6脂肪族アルデヒド)との反応により生成するモノヒドラゾン類が挙げられる。
セミカルバジド基含有ヒドラゾン類としては、例えば、上記一般式(4)で示されるジセミカルバジド類と、ケトン(C3−8脂肪族ケトン)またはアルデヒド(C2−6脂肪族アルデヒド)との反応により生成するモノヒドラゾン類などが含まれる。
【0038】
なお、ヒドラジン誘導体がジヒドラジン類、ジヒドラジド類またはジセミカルバジド類であれば、ヒドラジン誘導体は鎖伸長剤として兼用することができる。
また、ヒドラジン誘導体は、好ましくは、水に対する溶解性を有しており、その溶解度が、例えば、1重量%以上、好ましくは、3重量%以上である。
イソシアネート末端プレポリマーを、鎖伸長剤およびヒドラジンまたはその誘導体と反応させるには、好ましくは、まず、得られたイソシアネート末端プレポリマーに、中和剤を添加して、アニオン性基が塩を形成するように中和する。中和剤の添加割合は、例えば、アニオン性基1当量当たり、例えば、0.4〜1.2当量、好ましくは、0.6〜1.00当量である。
【0039】
その後、イソシアネート末端プレポリマーに、水を加えて分散させた後、これに、鎖伸長剤を、イソシアネート基に対する活性水素基の当量比(具体的には、アミノ基/イソシアネート基)が、例えば、0.05〜0.9、好ましくは、0.1〜0.7となる割合において配合する。また、鎖伸長剤の配合と同時にまたは配合の前後に、ヒドラジンまたはその誘導体を、イソシアネート基に対するN−アミノ基の当量比(具体的には、ヒドラゾン基および/またはヒドラジド基/イソシアネート基)が、例えば、0.1〜0.95、好ましくは、0.3〜0.9となる割合において配合する。これらの配合後、例えば、5〜30℃で、0.5〜数時間反応させる。これによって、イソシアネート末端プレポリマーが鎖伸長剤によって鎖伸長され、ヒドラジンまたはその誘導体によって末端イソシアネートが封止された水性樹脂を、水中に分散された水分散液として得ることができる。なお、ヒドラジン誘導体が鎖伸長剤として兼用される場合には、上記した鎖伸長剤に代えてまたは加えて、ヒドラジン誘導体が鎖伸長剤として反応する。
【0040】
なお、反応終了後には、イソシアネート基末端プレポリマーが溶液重合により合成されている場合など、有機溶媒が残存している場合には、その有機溶媒を、例えば、減圧下において、適宜の温度で加熱して除去する。
このようにして得られた水性樹脂は、1分子鎖中に、N−アミノ基とアニオン性基とを有する水分散性(自己乳化型)のポリウレタン樹脂であって、そのN−アミノ基(具体的には、ヒドラゾン基および/またはヒドラジド基)当量が、例えば、500〜10000、好ましくは、1000〜6000であり、その酸価が、例えば、5〜50mgKOH/g、好ましくは、10〜40mgKOH/gである。
【0041】
水性樹脂の酸価が、上記の範囲にあれば、良好な水分散性で安定な水性形態が得られ、製膜性が良好で効果的な架橋反応を生じさせることができる。
また、水性樹脂の水分散液に対する割合、つまり、水分散液の固形分は、例えば、5〜60重量%、好ましくは、10〜50重量%である。なお、水分散液の固形分は、水の添加量にて調整することができる。
【0042】
また、水分散液中における水性樹脂の平均粒子径は、例えば、20〜400nm、好ましくは、40〜200nmである。なお、この平均粒子径は、動的光散乱法により求められる平均粒子径である。
そして、本発明の水性樹脂組成物を得るには、水性樹脂の水分散液に、ポリエポキシ化合物を配合する。
【0043】
ポリエポキシ化合物としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ化合物(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルなど)、グリシジルエステル型エポキシ化合物(ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレートなど)、グリシジルアミン型エポキシ化合物(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタントリグリシジル−p−アミノフェノールなど)、環式脂肪族エポキシ樹脂(アリサイクリックジエポキシアジペートなど)、複素環式エポキシ化合物(トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントイン型エポキシ樹脂など)、エポキシ化大豆油、エポキシ基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
【0044】
また、ポリエポキシ化合物としては、通常、市販品を用いることができ、例えば、デナコールシリーズ(ナガセケムテック社製)が挙げられ、より具体的には、EX−614B(平均官能基数(後述)3.6)、EX−314(平均官能基数2.3)、1410(平均官能基数3〜4)、EX−521(平均官能基数6.3)などの水溶性ポリエポキシ化合物が挙げられる。
【0045】
このようなポリエポキシ化合物は、その平均官能基数(1分子当たりのエポキシ基の数の平均値)が2以上、好ましくは、2.2以上、さらに好ましくは、3以上であり、通常、7以下である。また、ポリエポキシ化合物のエポキシ基当量は、例えば、100〜400、好ましくは、110〜300である。平均官能基数が上記範囲に満たないと、ガスバリア性が低下する。
【0046】
これらポリエポキシ化合物は、水溶性または水分散性であることが好ましく、また、その水溶率(ポリエポキシ化合物の可溶化率)は、例えば、30重量%以上、好ましくは、40重量%以上である。
これらポリエポキシ化合物は、単独使用または2種以上併用することできる。
ポリエポキシ化合物の配合割合は、例えば、水性樹脂(水分散液の固形分)100重量部に対して、例えば、0.1〜70重量部、好ましくは、0.5〜50重量部、さらに好ましくは、1〜30重量部である。
【0047】
このようにして得られる水性樹脂組成物では、水性樹脂のN−アミノ基のポリエポキシ化合物のエポキシ基に対する当量比(N−アミノ基/エポキシ基)が、例えば、1/3を超過し1未満であり、好ましくは、1/2.8〜1/1.1である。当量比が上記範囲外である場合には、ガスバリア性が低下する場合がある。
そして、このようにして得られる水性樹脂組成物は、例えば、基材フィルム上に塗布し、製膜すれば、酸素および水蒸気などに対するガスバリア性に優れるフィルム(塗膜)を得ることができる。例えば、水性樹脂組成物の塗膜(厚み5μm)において、その酸素透過度(単位:ml/m2・atm・Day)は、温度20℃、相対湿度90%で、例えば、10〜300、好ましくは、10〜200であり、温度20℃、相対湿度80%で、例えば、10〜200、好ましくは、10〜150である。そのため、本発明の水性樹脂組成物は、そのようなガスバリア性に優れるフィルムを調製するためのガスバリア性組成物として用いることができる。
【0048】
本発明の水性樹脂組成物を、ガスバリア性組成物として用いる場合には、本発明の水性樹脂組成物のみを、そのままガスバリア性組成物として用いることもできるが、本発明のガスバリア性組成物には、本発明の水性樹脂組成物以外に、例えば、膨潤性無機層状化合物を含有させることもできる。本発明のガスバリア性組成物に、本発明の水性樹脂組成物とともに、膨潤性無機層状化合物を含有させれば、得られた塗膜に、酸素および水蒸気などに対するより一層のガスバリア性を付与することができる。
【0049】
本発明において、膨潤性無機層状化合物は、極薄の単位結晶からなり、単位結晶層間に溶媒が配位または吸収・膨潤する性質を有する粘土鉱物である。膨潤性無機層状化合物としては、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物など)、例えば、カオリナイト族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライトなど)、アンチゴライト族粘土鉱物(アンチゴライト、クリソタイルなど)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなど)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライトなど)、雲母またはマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母などの雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライトなど)、合成マイカなどが挙げられる。
【0050】
膨潤性無機層状化合物の平均粒径は、通常、10μm以下であり、例えば、50nm〜5μm、好ましくは、100nm〜3μmである。また、膨潤性無機層状化合物のアスペクト比は、例えば、50〜5000、好ましくは、100〜3000、さらに好ましくは、200〜2000である。
これら膨潤性無機層状化合物は、天然粘土鉱物であってもよく、また、合成粘土鉱物であってもよい。また、単独または2種以上併用することができ、好ましくは、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイトなど)、マイカ族粘土鉱物(水膨潤性雲母など)、合成マイカなどが挙げられる。
【0051】
膨潤性無機層状化合物の配合割合は、水性樹脂組成物の固形分100重量部に対して、例えば、0.1〜200重量部、好ましくは、1〜100重量部である。
さらに、本発明のガスバリア性組成物には、ガスバリア性を損なわない範囲で、必要に応じて各種の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤などが挙げられる。
【0052】
また、本発明のガスバリア性組成物は、水性樹脂組成物の水分散液に、膨潤性無機層状化合物およびその他必要に応じて添加剤を配合して、例えば、水中に均一に攪拌して分散させることにより、調製することができる。
また、ガスバリア性組成物は、さらに、水を適宜加えて、その固形分を、例えば、0.5〜20重量%、好ましくは、1〜15重量%に調整することができる。なお、膨潤性無機層状化合物は、水分散液において、2次凝集するおそれがあるため、好ましくは、膨潤性無機層状化合物を溶媒に分散または混合した後、せん断力が作用する機械的な強制分散処理、例えば、ホモミキサー、コロイドミル、ジェットミル、ニーダー、サンドミル、ボールミル、3本ロール、超音波分散装置などによる分散処理を利用して、分散させる。
【0053】
そして、このようにして得られたガスバリア性組成物を、基材フィルムの片面または両面に塗布すれば、酸素および水蒸気などに対するガスバリア性に優れるフィルム(ガスバリア性フィルム)を得ることができる。
基材フィルムとしては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体など)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン6、ナイロン66など)、ビニル系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)、セロファンなどの熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルムが挙げられる。
【0054】
なお、基材フィルムは、単層フィルムであってもよく、樹脂フィルムの積層フィルムであってもよい。また、樹脂フィルムと、他の基材フィルム(アルミニウムなどの金属、紙など)との積層基材フィルムであってもよい。
さらに、樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、一軸または二軸延伸配向フィルムであってもよく、表面処理(コロナ放電処理など)やアンカーコートまたはアンダーコート処理した樹脂フィルムであってもよい。さらに、アルミニウムなどの金属、シリカ、アルミナなどの金属酸化物が蒸着された蒸着樹脂フィルムであってもよい。
【0055】
基材フィルムの厚みは、例えば、3〜200μm、好ましくは、5〜120μm、さらに好ましくは、10〜100μmである。
ガスバリア性組成物を基材フィルムに塗布するには、特に制限されず、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ディッピング法などの公知のコーティング方法が用いられ、また、これらを適宜組み合わせてコーティングすることもできる。
【0056】
ガスバリア性組成物を基材フィルムに塗布した後は、乾燥により製膜した後、硬化させることにより、フィルムを形成することがきる。製膜後のガスバリア性組成物からなる塗膜の厚みは、例えば、0.1〜15μm、好ましくは、0.2〜10μm、さらに好ましくは、0.5〜5μm程度である。
また、塗膜を製膜するは、例えば、50〜200℃、好ましくは、80〜150℃で加熱乾燥すればよく、また、塗膜の硬化(架橋)は、例えば、100〜250℃、好ましくは、120〜200℃で加熱硬化する。
【0057】
これによって、ヒドラジン誘導体がヒドラゾン基(C=N−NH2)を有している場合には、塗膜の乾燥、すなわち、水の留去によって、C=N結合が解離して、カルボニル基とアミノ基とを生成し、そのアミノ基が、ポリエポキシ化合物のエポキシ基と硬化反応(架橋反応)して、その結果、ガスバリア性を有する硬い塗膜を形成する。
また、ヒドラジン誘導体がヒドラジド基を有している場合には、塗膜の乾燥において、ヒドラジド基のアミノ基が、そのまま、ポリエポキシ化合物のエポキシ基と硬化反応(架橋反応)して、その結果、ガスバリア性を有する硬い塗膜を形成する。
【0058】
そして、このようにして得られたフィルムは、酸素および水蒸気などに対するガスバリア性に優れ、各種分野において有効に用いられる。
【実施例】
【0059】
実施例1
(水性樹脂Aの調製)
アセトニトリル96.2gに、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)101.4g、1,3−キシリレンジイソシアネート(XDI)65.5g、エチレングリコール28.7g、トリメチロールプロパン2.6gおよびジメチロールプロピオン酸15.2gを混合して、窒素雰囲気下70℃で4時間反応させることにより、カルボキシル基含有イソシアネート末端プレポリマーを合成した。この反応液のイソシアネート基含有量が7.22重量%以下になった後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン11.2gを添加してカルボキシル基を中和した。
【0060】
その後、得られたイソシアネート末端プレポリマーを750gの水にホモディスパーにより分散させ、2−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン14.4gと、7.7重量%アセトンヒドラゾン水溶液109.4g(アセトンヒドラゾン4.7重量%含有)とを添加して、鎖伸長反応させ、末端イソシアネートを封止した後、アセトニトリルを留去し、固形分25重量%に調整することにより、水性樹脂Aの水分散液を得た。この水性樹脂Aの平均粒子径は80nm、酸価は25.3mgKOH/g、ヒドラゾン基当量は3620であった。また、7.7重量%アセトンヒドラゾン水溶液は、ヒドラジン一水和物6.9gをイオン交換水98.5gに溶解させた水溶液に、アセトン4.0gを添加してケチミン化することにより調製した。
【0061】
(ガスバリア性組成物の調製)
水性樹脂Aの水分散液10重量部と、ポリエポキシ化合物(デナコールEX−614B、平均官能基数3.6、エポキシ基当量180、水溶率94重量%、ソルビトール系化合物、ナガセケムテック社製)0.25重量部とを混合し、さらに、水を加えることにより、固形分15重量%のガスバリア性組成物を調製した。このガスバリア性組成物のヒドラゾン基/エポキシ基の当量比は、1/2であった。
【0062】
実施例2および3
実施例1と同様に、表1の処方に従って、ガスバリア性組成物を調製した。
実施例4
(水性樹脂Bの調製)
アセトニトリル101.2gに、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)106.4g、1,3−キシリレンジイソシアネート(XDI)68.8g、エチレングリコール30.3g、トリメチロールプロパン2.7gおよびジメチロールプロピオン酸16.0gを混合して、窒素雰囲気下70℃で4時間反応させることにより、カルボキシル基含有イソシアネート末端プレポリマーを合成した。この反応液のイソシアネート基含有量が7.09重量%以下になった後、40℃まで冷却し、トリエチルアミン11.8gを添加してカルボキシル基を中和した。
【0063】
その後、得られたイソシアネート末端プレポリマーを750gの水にホモディスパーにより分散させ、2−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン9.8gと、7.7重量%アセトンヒドラゾン水溶液164.9g(アセトンヒドラゾン4.7重量%含有)とを添加して、鎖伸長反応させ、末端イソシアネートを封止した後、アセトニトリルを留去し、固形分25重量%に調整することにより、水性樹脂Bの水分散液を得た。この水性樹脂Bの平均粒子径は95nm、酸価は25.5mgKOH/g、ヒドラゾン基当量は2519であった。また、7.7重量%アセトンヒドラゾン水溶液は、ヒドラジン一水和物10.4gをイオン交換水148.4gに溶解させた水溶液に、アセトン6.1gを添加してケチミン化することにより調製した。
【0064】
(ガスバリア性組成物の調製)
水性樹脂Bの水分散液10重量部と、ポリエポキシ化合物(デナコールEX−614B、平均官能基数3.6、エポキシ基当量180、水溶率94重量%、ソルビトール系化合物、ナガセケムテック社製)0.36重量部とを混合し、さらに、水を加えることにより、固形分15重量%のガスバリア性組成物を調製した。このガスバリア性組成物のヒドラゾン基/エポキシ基の当量比は、1/2であった。
【0065】
実施例5
実施例4と同様に、表1の処方に従って、ガスバリア性組成物を調製した。
実施例6
(水性樹脂Cの調製)
アセトニトリル90.4gに、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)95.4g、1,3−キシリレンジイソシアネート(XDI)61.7g、エチレングリコール27.2g、グリセリン1.6gおよびジメチロールプロピオン酸14.4gを混合し、窒素雰囲気下70℃で4時間反応させることにより、カルボキシル基含有イソシアネート末端プレポリマーを合成した。この反応液のイソシアネート基含有量が7.12重量%以下になった後、40℃まで冷却し、トリエチルアミン10.6gを添加してカルボキシル基を中和した。
【0066】
その後、得られたイソシアネート末端プレポリマーを750gの水にホモディスパーにより分散させ、アジピン酸ジヒドラジド51.5gを添加して、鎖伸長反応させた後、アセトニトリルを留去し、固形分25重量%に調整することにより、水性樹脂Cの水分散液を得た。この水性樹脂Cの平均粒子径は105nm、酸価は22.9mgKOH/g、ヒドラジド基当量は2665であった。
【0067】
(ガスバリア性組成物の調製)
水性樹脂Cの水分散液10重量部と、ポリエポキシ化合物(デナコールEX−614B、平均官能基数3.6、エポキシ基当量180、水溶率94重量%、ソルビトール系化合物、ナガセケムテック社製)0.34重量部とを混合し、さらに、水を加えることにより、固形分15重量%のガスバリア性組成物を調製した。このガスバリア性組成物のヒドラゾン基/エポキシ基の当量比は、1/2であった。
【0068】
実施例7
実施例1で得られた水性樹脂Aの水分散液10重量部と、ポリエポキシ化合物(デナコールEX−614B、平均官能基数3.6、エポキシ基当量180、水溶率94重量%、ソルビトール系化合物、ナガセケムテック社製)0.25重量部と、合成マイカ(コープケミカル社製、商品名「ソマシフME−100」)0.275重量部とを混合し、水を加えて固形分15重量%のガスバリア性組成物を調製した。
【0069】
実施例8および9
実施例7と同様にして、表1の処方に従って、固形分15重量%のガスバリア性組成物を調製した。
比較例1
(水性樹脂Dの調製)
メチルエチルケトン101.2gに、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)106.4g、1,3−キシリレンジイソシアネート(XDI)68.8g、エチレングリコール30.3g、トリメチロールプロパン2.7gおよびジメチロールプロピオン酸16.0gを混合して、窒素雰囲気下70℃で4時間反応させることにより、カルボキシル基含有イソシアネート末端プレポリマーを合成した。この反応液のイソシアネート基含有量が7.09重量%以下になった後、40℃まで冷却し、トリエチルアミン11.8gを添加してカルボキシル基を中和した。
【0070】
その後、得られたイソシアネート末端プレポリマーを750gの水にホモディスパーにより分散させ、2−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン26.3gを添加して、鎖伸長反応させた後、メチルエチルケトンを留去し、固形分25重量%に調整することにより、水性樹脂Dの水分散液を得た。この水性樹脂Dの平均粒子径は60nm、酸価は25.5mgKOH/gであり、ヒドラゾン基およびヒドラジド基はいずれも含まれていない。
【0071】
(ガスバリア性組成物の調製)
水性樹脂Dの水分散液に、水を加えることにより、固形分15重量%のガスバリア性組成物を調製した。
比較例2
実施例1のガスバリア性組成物の調製において、ポリエポキシ化合物0.25重量部に代えて、ポリイソシアネート化合物(タケラックWD−725)0.19重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、固形分15重量%のガスバリア性組成物を調製した。
【0072】
比較例3
実施例1と同様にして、表1の処方に従って、固形分15重量%のガスバリア性組成物を調製した。
(評価)
(ガスバリア性試験)
各実施例および各比較例で調製したガスバリア性組成物を、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm、PET)のコロナ放電処理面上に、乾燥後坪量が5g/m2(但し、実施例7〜9については、乾燥後坪量が1g/m2)となるようにマイヤーバーで塗布した後、90℃で30秒間乾燥した後、150℃で10分間加熱処理して、フィルムを得た。なお、乾燥および加熱処理において、実施例1〜5、7、8および比較例2の塗膜では、アセトンが発生した。
【0073】
その後、得られたフィルムの酸素透過度を、酸素透過度測定装置(OXTRAN2/20、MOCON社製)を用いて、温度20℃、相対湿度80%の雰囲気下、および、温度20℃、相対湿度90%の雰囲気下で、それぞれ測定した。その結果を表1に示す。
なお、表1中、酸素透過度の単位は、ml/m2・atm・Dayである。また、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm、PET)のみの酸素透過度は、温度20℃、相対湿度80%の雰囲気下、および、温度20℃、相対湿度90%の雰囲気下ともに、100(ml/m2・atm・Day)であった。
【0074】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性基を有するイソシアネート末端プレポリマー、鎖伸長剤およびヒドラジンまたはその誘導体を反応させて得られる水性樹脂と、
平均官能基数が2以上のポリエポキシ化合物と
から調製されることを特徴とする、水性樹脂組成物。
【請求項2】
前記イソシアネート末端プレポリマーは、
芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種のポリイソシアネートと、
炭素数2〜8のポリオールと、
炭素数3〜6のアニオン性基含有ポリオールと
を反応させることにより得られることを特徴とする、請求項1に記載の水性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ヒドラジン誘導体は、N−アミノ基(N−NH2)を有しており、
前記水性樹脂のN−アミノ基の前記ポリエポキシ化合物のエポキシ基に対する当量比が、1/3を超過し1未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載の水性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の水性樹脂組成物と、湿潤性無機層状化合物とを含有していることを特徴とする、ガスバリア性組成物。

【公開番号】特開2009−35605(P2009−35605A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199731(P2007−199731)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(501140544)三井化学ポリウレタン株式会社 (115)
【Fターム(参考)】