説明

水性殺鼠製剤

本発明は新規の水性殺鼠製剤、該製剤で処理した穀物、及びげっ歯類を該製剤に基づいて防除する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規の水性殺鼠製剤、これらの製剤で処理した穀物、及びげっ歯類をこれらの製剤に基づいて防除する方法を含む。
【背景技術】
【0002】
適切な餌(bait)製剤を調製するために穀物を処理することができる水性殺鼠製剤は、その容易な取り扱いから、当業者にとって粉末製剤の使用に代わるものとして魅力的である。このことはそのような製剤で処理した餌を用いると、磨耗又は望ましくない置換の結果として、餌から環境中に活性物質が放出される危険性があるからである。
【0003】
さらに、殺鼠剤含有処理製剤は厳しい要件を満たさなければばらない:例えば、穀物の形態を取りうる餌に適用する場合、それらは、一方では、活性物質の毒性のために、活性物質を餌に可能な限り付着させなければならない;他方では、処理された生成物を使用、又は加工する場合のあらゆる塵埃は可能な限り少なくしなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故、本発明の目的は殺鼠製剤であって、穀物がそれらで処理された場合に活性物質を穀物に可能な限り接着させ、並びに/又は処理された生成物を使用、若しくは加工する場合の塵埃が可能な限り少ない、上記殺鼠製剤を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、
(a)少なくとも1種の殺鼠剤;
(b)少なくとも1種のポリオール;
(c)固着剤(sticker);並びに
(d)単糖類、及び/又は二糖類、及び/又はオリゴ糖;
を含む水性殺鼠製剤を提供することによって達成された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
また、本発明のこれらの製剤の利点は、原則として、これらの製剤を溶媒を用いずに扱うことができ、臭気や安全性の理由で望ましいという事実である。
【0007】
当然ながら、無臭かつ風味のない溶媒もまた選択肢として採用され得る。ブチロラクトン又はカプロラクトンが一例として挙げられるが、これらに限られない。適切な量は0〜10重量%、好ましくは1〜7重量%、特に好ましくは2〜6重量%である。
【0008】
単糖類、及び/又は二糖類、及び/又はオリゴ糖の含有量は10重量%〜50.0重量%、好ましくは10.0重量%〜35.0重量%、特に好ましくは15.0重量%〜25.0重量%である。
【0009】
殺鼠剤の含有量は0.01重量%〜30重量%、好ましくは0.01重量%〜1重量%、特に好ましくは0.02重量%〜0.2重量%である。
【0010】
ポリオールの含有量は1重量%〜50重量%、好ましくは1重量%〜20重量%である。
【0011】
固着剤の含有量は1重量%〜30重量%、好ましくは1重量%〜10重量%、特に好ましくは1重量%〜5重量%である。
【0012】
適切な殺鼠剤は:
植物ベースの殺鼠剤、例えば、シリロシド又はストリキニーネなど;
クマリン系殺鼠剤、例えば、ブロディファコウム、ブロマジオロン、クマクロール、クマフリル、クマテトラリル、ジフェナコン、ジフェチアロン、フロクマフェン、ワルファリンなど;
インダンジオン殺鼠剤、例えば、クロロファシノン、ジファシノン、ピンドンなど;
無機殺鼠剤、例えば、酸化砒素、亜砒酸カリウム、亜砒酸ナトリウム、亜砒酸タリウムなど;
有機リン系殺鼠剤、例えば、ホサセチムなど;
ピリミジンアミン殺鼠剤、例えば、クリミジンなど;
チオウレア殺鼠剤、例えば、アンツーなど;
ウレア殺鼠剤、例えば、ピリニュロンなど;
様々な殺鼠剤、例えば、ブロメタリン、クロラロース、フルオロアセトアミド、フルプロパジン、シアン化水素酸のナトリウム塩又はカリウム塩、ノルボルニド、及びフルオロ酢酸ナトリウムなど;
好ましくは上記のクマリン系殺鼠剤;特に好ましくはフロクマフェン及びジフェナコン;とりわけ好ましくはフロクマフェンである。
【0013】
適切なポリオールはグリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールであり、好ましくはグリセロールである。
【0014】
単糖類及び二糖類を使用することは、本発明の範囲内で好ましい。二糖類を使用することはとりわけ好ましい。
【0015】
適切な単糖類はグルコース、フルクトース、ガラクトースであり、好ましくはフルクトースである。
【0016】
適切な二糖類はスクロース、マルトース、ラクトースであり、好ましくは(例えば、純粋な形態の、又は糖蜜若しくは甜菜糖としての)スクロースである。
【0017】
適切なオリゴ糖はデンプンである。
【0018】
適切な固着剤は、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、ポリビニルアルコール(例えば、Mowiol(登録商標)4-98、Clariant、Rhodoviol(登録商標)60-20、Rhone-Poulenc)、ポリビニルピロリドン(BASF製のSokalan(登録商標)HP 50、BASF製のKollidon(登録商標)25、BASF製のLuvitec(登録商標)K 80、ISP Global Techn製のAgrimer(登録商標))、ポリアクリレート(例えば、BASF製のSokalan(登録商標)PA 110 S)、ポリメチルメタクリレート、水溶性ポリオレフィン誘導体、例えば、ポリブテン誘導体、ポリエチレンオキシド(例えば、ポリエーテル)、又はポリイソブチレン誘導体(例えば、ポリオレフィンと無水マレイン酸誘導体とのコポリマー(例えば、BASF製のDensodrin BA(登録商標))、ポリスチレン誘導体(例えば、スチレンと無水マレイン酸誘導体とのコポリマー、又はスチレンとアクリル酸誘導体とのコポリマー、又はスチレン/ブタジエンをベースとするラテックスコポリマー、例えばUniqema製のSemkote E-125として入手可能)、並びにポリエチレンアミン、ポリエチレンアミド、ポリエチレンイミン(例えば、BASF製のLupasol(登録商標)、BASF製のPolymin(登録商標))、ポリウレタン(Uniqema製のSemkote E-105)、ポリビニルアセテート、チロース、並びにポリエチレンワックス(例えば、BASF製のPoligen(登録商標)WE 7として市販)、
好ましくは、
エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、ポリアクリレート(例えば、BASF製のSokalan(登録商標)PA 110 S)、ポリメチルメタクリレート、水溶性ポリオレフィン誘導体、例えば、ポリブテン誘導体、ポリエチレンオキシド(例えば、ポリエーテル)、又はポリイソブチレン誘導体(例えば、ポリオレフィンと無水マレイン酸誘導体とのコポリマー(例えば、BASF製のDensodrin BA(登録商標))、ポリスチレン誘導体(例えば、スチレンと無水マレイン酸誘導体とのコポリマー、又はスチレンとアクリル酸誘導体とのコポリマー、又はスチレン/ブタジエンをベースとするラテックスコポリマー、例えばUniqema製のSemkote E-125として入手可能)、並びにポリエチレンアミン、ポリエチレンアミド、ポリエチレンイミン(例えば、BASF製のLupasol(登録商標)、BASF製のPolymin(登録商標))、ポリウレタン(Uniqema製のSemkote E-105)、ポリビニルアセテート、並びにポリエチレンワックス(例えば、BASF製のPoligen(登録商標)WE 7として市販)、
より好ましくは、
エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、ポリアクリレート(例えば、BASF製のSokalan(登録商標)PA 110 S)、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン誘導体(例えば、スチレンと無水マレイン酸誘導体とのコポリマー、又はスチレンとアクリル酸誘導体とのコポリマー、又はスチレン/ブタジエンをベースとするラテックスコポリマー、例えばUniqema製のSemkote E-125として入手可能)、並びにポリエチレンワックス(例えば、BASF製のPoligen(登録商標)WE 7として市販)である。
【0019】
さらに、本発明の製剤は、場合により、更なるアジュバント、例えば、界面活性剤(例えば、湿潤剤、固着剤、及び分散剤など)、消泡剤、増粘剤、殺菌剤、及び着色剤などを含むこともできる。
【0020】
界面活性剤の例は、リグノスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアリールスルホネート、アルキルスルファート、アルキルスルホネート、脂肪アルコールスルファート、脂肪酸、並びに硫酸化脂肪アルコールグリコールエーテル、さらにスルホン化ナフタレン及びナフタレン誘導体とホルムアルデヒドとの縮合物、ナフタレン若しくはナフタレンスルホン酸とフェノール及びホルムアルデヒドとの縮合物、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、エトキシル化イソオクチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、トリステリルフェニルポリグリコールエーテル、アルキル‐アリールポリエーテルアルコール、アルコール及び脂肪アルコールエチレンオキシドの縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、エトキシル化ポリオキシプロピレン、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセタール、ソルビトールエステル、リグニン‐スルファイト廃液、並びにメチルセルロースである。
【0021】
増粘剤(すなわち、製剤に擬塑性流動挙動、すなわち静止条件で高粘度及び攪拌状態で低粘度、を与える化合物)の例は、例えば、多糖類又は有機層構成鉱物、例えば、キサンタンガム(Kelco製のKelzan(登録商標))、Rhodopol(登録商標)23(Rhone Poulenc)、Veegum(登録商標)(R.T. Vanderbilt)若しくはAttaclay(登録商標)(Engelhardt)である。
【0022】
消泡剤の例は、シリコーンエマルション(例えば、Wacker製のSilikon(登録商標)SRE、Rhodia製のRhodorsil(登録商標))、長鎖アルコール、脂肪酸、有機フッ素化合物、及びそれらの混合物である。
【0023】
本発明の製剤中に存在でき、且つ適切である殺菌剤は、農芸化学的に活性な物質の製剤に従来から使用される全ての殺菌剤、例えばジクロロフェン及びベンジルアルコールへミホルマールをベースとする殺菌剤である。殺菌剤の例は、ICI製のProx(登録商標)、又はThor Chemie製のActicide(登録商標)RS、及びRohm & Haas製のKathon(登録商標)である。
【0024】
適切な着色剤は、そのような目的に従来から使用される全ての着色剤である。水に難溶性である顔料及び水に溶解性の着色剤は共に使用され得る。挙げることのできる例としては、ローダミンB、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ソルベントレッド1、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー80、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー13、ピグメントレッド112、ピグメントレッド48:2、ピグメントレッド48:1、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド53:1、ピグメントオレンジ43、ピグメントオレンジ34、ピグメントオレンジ5、ピグメントグリーン36、ピグメントグリーン7、ピグメントホワイト6、ピグメントブラウン25、ベーシックバイオレット10、ベーシックバイオレット49、アシッドレッド51、アシッドレッド52、アシッドレッド14、アシッドブルー9、アシッドイエロー23、ベーシックレッド10、ベーシックレッド108の名前で知られる着色剤、及びそれらの染料、例えばDispers Blau 69-0007;BASFから入手可能な化合物がある。
【0025】
さらに、本発明は、本発明の製剤で穀物を処理(粉衣)する、餌製剤を調製する方法も含む。
【0026】
穀物という用語は、無傷の穀物として存在する、すなわち、押し潰されていなく、刻まれていなく、又は分割されていないあらゆる種類の種子を含む。
【0027】
処理/粉衣は当業者に周知の方法(例えば、適宜、適切な装置、例えば、連続式若しくはバッチ式運転の種子粉衣装置内で、噴霧又は本発明の製剤の中への、若しくは製剤を用いた穀物の浸漬/インキュベートによる方法)で行うことができる。製剤は、1kgの穀物当たり、最大で7.5gの水で希釈することができる。
【0028】
適切な穀物は、オオムギ、コムギ、イネ、トウモロコシ、カラスムギ、ライムギ、スペルト、グリューンケルン、アワ/ソルガム、ナタネ、及びヒマワリ、好ましくはコムギである。別の実施形態において、本発明は、上記の餌を上記の動物が頻繁に現れる場所に置く、げっ歯類を防除する方法を含む。
【0029】
ラット及びマウスに加えて、げっ歯類という用語はマスクラット、好ましくはラット又はマウス、特に好ましくはラットを意味するとも理解される。
【0030】
この目的のために、例えば、処理した種子穀物を適当な罠に入れること、及びそれらを出現場所、例えば、げっ歯類の通り道、げっ歯類が住む穴、又はそれらの排泄物によりマークされた場所に置くことが可能である。
【0031】
罠は、好ましくは、ラットが穀物に必ず気が付くような種類のものであるべきである。餌の量を時折確認することでそれらの効果及び動物の個体数について判断することが可能である。
【実施例1】
【0032】
水性製剤の調製
A)製剤1
最初に、Storm(登録商標)mastermix(40gの市販のフロクマフェン製剤、Storm(登録商標)0.5% mastermixは1kg当たり5gのフロクマフェンを含む)を150gの甜菜糖、100gのグリセロール、50gの固着剤であるPoligen WE 7(ポリエチレンワックス)及び648gの水と一緒に入れ、撹拌しながら溶解し、よく混合した。その後、10gのDispers Blauを混ぜ、バッチをホモジナイズした。100gの膨潤前のキサンタンガム(2重量%の水中のキサンタンガム)及び2gの殺菌剤(Acticide MBS)を計量し、投入した。得られた混合物をホモジナイズした。
【0033】
B)製剤2
最初に、Storm(登録商標)mastermix(40gの市販のフロクマフェン製剤、Storm(登録商標)0.5% mastermixは1kg当たり5gのフロクマフェンを含む)を200gの甜菜糖、100gのポリエチレングリコール E400 Lutrol E400(BASF)、100gの固着剤であるSemkote E 125(スチレン/ブタジエンベースの合成ラテックス)及び408gの水と一緒に入れ、撹拌しながら溶解させた。その後、50gのDispers Blau 69-0007を混ぜ、バッチをホモジナイズした。100gの膨潤前のキサンタンガム(2重量%の水中のキサンタンガム)及び2gの殺菌剤(Acticide MBS)を計量し、投入した。得られた混合物をホモジナイズした。
【実施例2】
【0034】
製剤1及び2を用いた処理
材料:
>2.5gの水
1000gのコムギ
2.5〜25gの製剤A又は製剤B
調製:
コムギを市販の連続式若しくはバッチ式運転の種子粉衣装置(バッチドレッサー)(Satec製のConcept ML 2000)に入れた。その後、続いて製剤A又はBを温和な条件下で、蠕動ポンプ又は別の計量ユニットを使用して、計量し、投入した。さらに30秒後、処理した穀物を適切な容器に移し、包装するまで乾燥条件下で保存する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の殺鼠剤;
(b)少なくとも1種のポリオール;
(c)固着剤(sticker);並びに
(d)単糖類、及び/又は二糖類、及び/又はオリゴ糖;
を含む水性殺鼠製剤。
【請求項2】
上記殺鼠剤の含有量が0.01重量%〜30重量%である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
上記ポリオールの含有量が1重量%〜50重量%である、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
上記固着剤の含有量が2重量%〜30重量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
フロクマフェンを殺鼠剤として使用する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
グリセロールをポリオールとして使用する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
ポリエチレンワックスを固着剤として使用する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
スチレン/ブタジエンをベースとする合成ラテックスを固着剤として使用する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
単糖類、及び/又は二糖類を成分d)として使用する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
成分d)の含有量が10重量%〜50.0重量%である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項11】
穀物を請求項1〜10のいずれか1項に記載の製剤で処理する、餌(bait)製剤の調製方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の製剤で処理した穀物。
【請求項13】
請求項12に記載の餌をげっ歯類が頻繁に現れる場所に置く、げっ歯類の防除方法。

【公表番号】特表2009−515931(P2009−515931A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540604(P2008−540604)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068453
【国際公開番号】WO2007/057393
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】