説明

水性粘接着剤組成物及び水性粘接着剤製品

【課題】水性粘接着剤組成物に関し、湿潤状態にあるときはを感圧ゲル性を有し、乾燥後にはその皮膜が粘着性を有する水性粘接着剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)感圧ゲル性を有する合成ゴム系ラテックス、(B)室温で液状の粘着付与樹脂のエマルジョンを含有してなる水性粘接着剤組成物であって、(A)合成ゴム系ラテックスの固形分100質量部に対して、(B)室温で液状の粘着付与樹脂のエマルジョンの樹脂分が50〜250質量部であることを特徴とする水性粘接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性粘接着剤組成物に関し、具体的には湿潤状態にあるときは感圧ゲル性を有し、乾燥後にはその皮膜が粘着性を有する水性粘接着剤組成物及び容器入り水性粘接着剤製品に関するものである。さらには、細口(例えば開口部口径2mm以下)のノズルを備えた容器又はスポンジ若しくはフェルト等の塗布部を有する容器で長期間保存した後でも皮張りによるノズル詰まりやスポンジやフェルトの目詰まりがなく塗工可能な水性粘接着剤組成物及び水性粘接着剤製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘着剤組成物には水性形と溶剤形とがあるが、いずれもアクリル樹脂やゴムを主成分とするものである。これらのうち、水性の粘着剤組成物は、一般にアクリル樹脂エマルジョンやゴムラテックス(天然ゴムラテックス又は合成ゴム系ラテックス)、粘着付与樹脂、さらに恒久的な粘着性を付与するために必要に応じて可塑剤成分や少量の有機溶剤を水に分散させて得られる。
【0003】
また、一方でゴムラテックスを主成分とした、いわゆるコンタクト接着型の水性接着剤が知られている(例えば特許文献1)。これらの接着剤組成物はエマルジョンやラテックスを故意に不安定化させると、接着圧締した際にかかる圧力や水分の蒸発等によって急速にゲル化する性質を利用したものである。このような原理を利用した接着剤は、貼り合わせ直後に高い初期接着強さが得られることが大きな特徴であり、インラインでの大量生産が求められる工業用途においては広く用いられている。
【0004】
水性粘着剤組成物又はコンタクト型水性接着剤組成物のいずれにおいても、粘着付与樹脂については通常は常温固形の粘着付与樹脂が用いられる。これを水中に分散する手法としては、酸価の低い粘着付与樹脂を、芳香族炭化水素のような有機溶剤に溶解するか、又は微粉砕した後に、乳化剤と水とを加えて粘着付与樹脂のエマルジョンとする手法が用いられている。
しかし、このような粘着付与樹脂エマルジョンを配合した場合、環境に負荷を与える有機溶剤を含有することとなり、また充分な粘着性が得られなかった。そこで、酸価の高い粘着付与樹脂をアルコール系溶剤に溶解し、新たに乳化剤を添加することなく、クロロプレンゴムラテックスのようなポリマーエマルジョンに配合した接着剤組成物が開示されている(特許文献2)。
また、溶剤をまったく用いない粘着付与樹脂の分散方法としては、アルカリ性物質の存在下でクロロプレンゴムラテックス等に、酸価が100以上の粘着付与樹脂を予め溶媒に溶解することなく直接添加して、これらの液中で溶解配合してなる粘着剤組成物も開示されている(特許文献3)。
【0005】
一方で、水性粘接着剤組成物のメインポリマーに関しては、水性系においては良好な初期接着性を得るためにはより高分子量ポリマーである、ゴムラテックスを用いた方が有利である。しかし、天然ゴムラテックスについては、含有蛋白質により場合によってはアナフィラキシーショックを引き起こす等の問題があるため、使用原料の低タンパク質化や脱タンパク質化が近年検討されているのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特表2002−514255号公報
【特許文献2】特開平6−322347号公報
【特許文献3】特開平8−337765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、従来上記のような感圧ゲル性を有する接着剤組成物が一般顧客向け製品には展開されていないことに着目した。また、このような感圧ゲル性を有する接着剤組成物と組成的にも共通する粘着剤組成物の特性、すなわち乾燥後皮膜が恒久的に粘着性を有するならば、速固着性能と粘着特性とを併せ持った使い勝手のよい、いわゆる「粘接着剤」が得られ、一般家庭用途や文具用途においてこれまでにない製品になると考えた。
そこで、本発明者は上記水性粘接着剤組成物の開発に着手したところ、思わぬ課題に直面することとなった。
すなわち、一般顧客向けの製品とする場合には、水性粘接着剤組成物を小容量の容器に充填することになる。通常このような小容量容器は塗布作業性を考慮して、細口ノズルを通したり、スポンジやフェルトなどを湿潤させて塗布するタイプの塗布部を備えるものが多い。しかし、このような容器に対して従来のような感圧ゲル性を有する接着剤組成物を用いると、塗布部において水分がわずかに蒸発しただけで皮張りが生じ、ノズル詰まりやスポンジ等の目詰まりが生じてしまい、使用に耐えられないものであることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような問題を解決するために、本発明者は鋭意研究した結果、上記容器に充填した際に貯蔵安定性が悪い原因は、粘着付与樹脂に起因するものであることを突き止めた。すなわち、従来用いられているような常温で固形の粘着付与樹脂を水に分散させた系では、粘着特性を得るために粘着付与樹脂を増していくと系が不安定化して皮張りしやすくなり、水溶性高分子や乳化剤等を多量に添加して系の安定性を確保しようとすると所望の粘着特性が得られないというジレンマに陥るのである。
そこで、本発明者は研究を進めるうちに、合成ゴム系ラテックスに対して、従来は用いられていなかった常温液状樹脂のエマルジョンを粘着付与樹脂として配合することによって皮張りが極めて発生しづらくなることを見出した。さらに、この常温液状樹脂がエマルジョン状態のものをある範囲内の量用いると、系の安定性を確保しながらも、速固着性能と粘着特性とが両立でき、さらに乾燥後の粘接着剤皮膜を貼り合わせた後で被着体からはく離した際に被着材に皮膜が転着すること(いわゆるのり残り)を防止できることも見出し、本発明を完成させるに至ったものである。すなわち、本発明は次の第1〜4の発明から構成される。
【0009】
第1の発明は、(A)感圧ゲル性を有する合成ゴム系ラテックス、(B)室温で液状の粘着付与樹脂のエマルジョンを含有してなる水性粘接着剤組成物であって、(A)合成ゴム系ラテックスの固形分100質量部に対して、(B)室温で液状の粘着付与樹脂のエマルジョンの樹脂分が50〜250質量部であることを特徴とする水性粘接着剤組成物に関するものである。
この配合量の範囲内において、速固着性能と粘着特性とを両立できるため好ましい。
【0010】
第2の発明は、(B)室温で液状の粘着付与樹脂のエマルジョンにおける、粘着付与樹脂がロジンエステル及び/又はテルペンの低分子量重合体であることを特徴とする、第1の発明に係る水性粘接着剤組成物に関するものである。
室温液状樹脂のエマルジョンを粘着付与樹脂として用いることで、細口(例えば開口部口径2mm以下)のノズルを備えた容器で長期間保存した後でも皮張りによるノズル詰まりがなく、スポンジやフェルト等の塗布部を有するものでは皮張りによる目詰まりがなく、なおかつ乾燥後の粘接着剤皮膜を貼り合わせた後で被着体からはく離した際に被着材に皮膜が転着すること(いわゆるのり残り)を防止できるため好ましい。
【0011】
第3の発明は、(A)合成ゴム系ラテックスが、イソプレンゴム、NBR、クロロプレンゴムを主成分とするものであることを特徴とする、第1又は第2の発明に係る水性粘接
着剤組成物に関するものである。
合成ゴム系ラテックスがクロロプレンゴム等を主成分とするものであることで、より高い固着性能と粘着特性とが得られることから好ましい。
【0012】
第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明に係る水性粘接着剤組成物を、先端開口部の口径が直径2mm以下であるノズル状塗布部を有する容器又はスポンジ若しくはフェルトの塗布部を有する容器に収容したことを特徴とする、水性粘接着剤製品に関するものである。
このような容器に収容した場合に、本発明の水性粘接着剤組成物を最も効果的に用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る水性粘接着剤組成物は、湿潤状態にあるときは優れた感圧ゲル性(速固着性能)を有し、乾燥後にはその皮膜が優れた粘着特性を有する水性粘接着剤組成物である。さらには、細口(例えば開口部口径2mm以下)のノズルを備えた容器又はスポンジ若しくはフェルト等の塗布部を有する容器で長期間保存した後でも皮張りによるノズル詰まりやスポンジやフェルトの目詰まりがなく、なおかつ乾燥後の粘接着剤皮膜を貼り合わせた後で被着体からはく離した際に被着材に皮膜が転着すること(いわゆるのり残り)を防止できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0015】
[(A)合成ゴム系ラテックスについて]
本発明における(A)合成ゴム系ラテックスとは合成高分子の水分散体であり、合成高分子の種類としては、スチレン−ブタジエン系重合体(SBR)、ポリブタジエン系重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン系重合体、2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系重合体、アクリロニトリル−ブタジエン系重合体(NBR)、ポリイソプレン(IIR)、ポリクロロプレン(CR)等が挙げられる。
これらの中でも、感圧ゲル性を有するラテックスを用いることが好ましい。感圧性を有さないラテックスでは、湿潤状態で貼り合わせたときにゲル化による速い固着性能が得られない。また乾燥後に貼り合わせることを考慮すると、感圧ゲル性を有さないラテックスは感圧ゲル性を有するラテックスよりは、機械的安定性が良いために製膜が遅く、乾燥が遅いものになってしまう。感圧ゲル性を有するラテックスの中でも、イソプレンゴム、NBR、クロロプレンゴムが好ましく、特にクロロプレンゴムを主成分とするものであることが、より高い感圧接着性が得られ、また良好なコンタクト性が得られることから好ましい。
【0016】
本発明における感圧ゲル性とは、ラテックスに一定以上のシェアをかけた際に、ラテックス粒子同士が速やかに凝集する性質を意味する。
最も簡易的に評価する方法としては、例えば水性ラテックスを指先に一滴取り、これを人差し指と親指とですり潰すようにシェアをかける。この際に、ラテックスが速やかに皮膜化又は凝集すれば、そのラテックスは感圧ゲル性を有すると判断できる。
【0017】
本発明におけるクロロプレンゴム等を主成分とするラテックスは、アニオン性基又はノニオン性基をその分子内に有し、水中に安定分散する能力を有するラテックスを指す。これらのラテックスにはゲル含有量が多いものから少ないものまで種々存在するが、中でも比較的ゲル含有量が多くないものが好ましい。
【0018】
合成ゴム系ラテックスの市販品としては、例えばディスパコールC−84(バイエル株式会社製商品名/固形分55質量%、pH13.0)、ディスパコールC-74(バイエ
ル株式会社製商品名/固形分58質量%、pH13.0)、ディスパコールC VP LS2325(バイエル株式会社製商品名/固形分55質量%、pH13.0)、C VP
LS2372H(バイエル株式会社製商品名/固形分58質量%、pH13.0)、ALX−310(電気化学工業株式会社製商品名/固形分55質量%、pH12.5)等がある。
【0019】
[(B)室温で液状の粘着付与樹脂のエマルジョンについて]
本発明における(B)室温で液状の粘着付与樹脂のエマルジョンとは、室温で液状の粘着付与樹脂(以下「室温液状粘着付与樹脂」と記載することがある)が水中に予めエマルジョン粒子として分散されたものを指す。これはエマルジョンの状態で市販されているものを用いてもよいし、あるいは所望の室温液状粘着付与樹脂をディスパーなどの分散機を用いて水中に強制分散させたものを用いてもよい。
本発明において、室温で液状の粘着付与樹脂とは、エマルジョンとして分散される前の粘着付与樹脂の軟化点が25℃以下である樹脂を指す。また、本発明においては、これらの樹脂の中でも、ロジンエステル及び/又はテルペンの低分子量重合体であることが特に好ましい。
【0020】
室温で液状の粘着付与樹脂としては、スーパーエステルL、スーパーエステルA−18(以上、荒川化学社製商品名)、ダイマロン(ヤスハラケミカル社製商品名)等があり、室温で液状の粘着付与樹脂のエマルジョンとしては、スーパーエステルSK501−NS(ハリマ化成社製)等が挙げられる。
【0021】
[配合量について]
本発明に係る水性粘接着剤組成物は、(A)合成ゴム系ラテックスの固形分100質量部に対して、(B)室温で液状の粘着付与樹脂のエマルジョンの樹脂分が50〜250質量部であることが好ましく、さらに好ましくは100〜250質量部である。
(B)室温で液状の粘着付与樹脂のエマルジョンの配合量が50質量部を下回ると十分な粘着特性が得られず、かつノズルの詰まりを改善することができない。250質量部を上回ると乾燥後の粘接着剤皮膜を貼り合わせた後のいわゆるのり残りが生じやすくなる。
【0022】
本発明に係る水性粘接着剤組成物の製造方法としては、(A)感圧性を有する合成ゴムラテックスと、予め調製された(B)室温で液状の粘着付与樹脂のエマルジョンとを撹拌羽根付きの反応容器などで混合して得られる。
また、(B)室温で液状の粘着付与樹脂のエマルジョンの調製方法は、室温液状粘着付与樹脂に乳化剤を加え、必要に応じて加温して混合し、これに水、温水又は熱水を加えて高速撹拌して得られる。
上述したように、本発明における(A)合成ゴム系ラテックスは感圧ゲル性を有する、いわば不安定化されたものであるから、混合撹拌時に温液状粘着付与樹脂が予めエマルジョン状態となったものを用いないと、分散段階においてラテックスが凝集してしまい、安定な水性粘接着剤組成物を得ることは難しい。
また、本発明に係る水性粘接着剤組成物中には、従来公知の任意の化合物乃至物質を配合することができる。例えば老化防止剤、造膜剤、金属酸化物、加硫剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤等を任意に併用することができる。
【0023】
[塗工方法・使用方法・容器について]
本発明に係る水性粘接着剤組成物は、特に先端開口部の口径が直径2mm以下であるノズル状塗布部を有する容器や、スポンジやフェルトなどを湿潤させて塗布するタイプの塗
布部を備える容器に充填され、粘接着剤として供給される。本発明に係る水性粘接着剤組成物はこのようないわゆる細口ノズルを備えた容器に充填しても、長期間保存した後でも皮張りによるノズル詰まりがなく塗工可能である。また塗布部がスポンジやフェルトである従来公知の容器に充填して使用することもできる。
【0024】
本発明に係る粘接着剤組成物の使用方法としては、湿潤状態で用いる場合には被着材の一方又は両方の接着面に塗布し、これを貼り合わせ圧締すれば、感圧ゲル性により優れた初期接着強さを発現する。また、両方の接着面に塗布して乾燥してから貼り合わせて圧締すれば、直ちに高い初期接着強さが得られる。すなわち、通常の接着剤と同様の使用方法で使用すればよい。
また、粘着剤として用いる場合には、本発明の粘接着剤組成物を所望の被着材表面に塗布後完全に乾燥させる。乾燥後も本発明に係る粘接着剤組成物の皮膜は良好な粘着特性を有するので、被着材を再度はく離したいときや一時的に仮止めしたい際にはこのような使用法を採用すればよい。
被着材として紙を例にとると、従来用いられているような接着剤(のり)のような貼り合わせ方法も採用できるし、塗布後乾燥してから用いれば付箋紙のような使用方法も採用できる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0026】
[実施例1]
<水性粘接着剤組成物の調製>
ALX310(感圧ゲル性を有するクロロプレンゴムラテックス/電気化学工業社製商品名/固形分55質量%)100質量部と、ハリエスターSK−501NS(軟化点が25℃以下である室温で液状のロジンエステル樹脂のエマルジョン/ハリマ化成社製/樹脂分50質量%)55質量部とを、撹拌機付きのフラスコにて混合し、水性粘接着剤組成物を調製した。すなわち、(A)合成ゴム系ラテックスの固形分/(B)室温液状樹脂のエマルジョンの樹脂分(質量比、以下単に「(A)/(B)」と記載することがある)が100/50である。
【0027】
<感圧ゲル性試験>
上記で得られた水性粘接着剤組成物を人差し指の指先に一滴取り、これを親指で5秒間強くおしつけて、水性粘接着剤組成物が皮膜化又は凝集するかについて判定した。親指で押しつける動作を繰り返し、以下の3段階で評価した。
◎ : 3回以内の動作で皮膜化又は凝集し、両方の指をゆっくりと離すときに糸を
曳いて粘り気が良好であった
△ : 3回以内の動作で皮膜化又は凝集したが、両方の指をゆっくり離すときに糸
を曳くことがなく粘り気がなかった
× : 5回以の動作上でも皮膜化又は凝集しなかった
【0028】
<ノズル詰まり試験>
上記で得られた水性粘接着剤組成物を、口径1.2mm(開口部の口径2.0mm)のノズル付き容量20mlの容器(目薬の点眼用容器)に充填した。その後、この容器を用いて、紙に約5cmの長さでノズルから粘接着剤組成物を塗布した後に、キャップをしないでそのまま容器を立てて放置し、各時間後に再度塗布を試みた。再度塗布する際の様子を以下の4段階で評価した。
◎ : 良好に塗布できた
○ : ノズル先端に皮張りが生じてはいるが押し出して塗布できた
● : ノズル先端に詰まりが生じ、無理に塗布しようとすると飛び散ってしまった
× : ノズル詰まりを起こし全く塗布できなかった
【0029】
<紙面片面塗布・粘着特性評価>
Kライナー紙(東海パルプ製K180(180g/m))にバーコーター#22で粘
接着剤組成物を塗布し、23℃で24時間乾燥した。24時間後にステンレス板に、形成された粘接着剤組成物皮膜面を貼り付けてゴムハンドローラーで圧着し、圧着1時間後に引張試験器を用い、測定温度23℃、引張速度50mm/minで180度はく離接着強さを測定した。なお、ゴムハンドローラーで圧着した時点で全く密着しないものは×とした。
また、はく離接着強さが測定できた試験片については、試験後にステンレス板の表面を観察し、粘接着剤が残存していないものを◎、残存しているものを×とした。
【0030】
<紙面両面塗布・コンタクト性評価>
Kライナー紙(東海パルプ製K180(180g/m))にバーコーター#22で粘接着剤組成物を塗布し、23℃で4日間乾燥したものを2枚作成した。得られた2枚のKライナー紙を、粘接着剤塗布面同士が接触するように貼り合わせてゴムハンドローラーで圧着し、圧着1時間後に引張試験器を用い、引張速度50mm/minで180度はく離接着強さを測定した。なお、ゴムハンドローラーで圧着した時点で全く密着しないものは×とした。
【0031】
[実施例2]
ハリエスターSK−501NSの配合量を100質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして水性粘接着剤組成物を調製し、同様に試験を行った。すなわち(A)/(B)が100/91である。
【0032】
[実施例3]
ハリエスターSK−501NSの配合量を200質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして水性粘接着剤組成物を調製し、同様に試験を行った。すなわち(A)/(B)が100/182である。
【0033】
[実施例4]
ハリエスターSK−501NSの配合量を275質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして水性粘接着剤組成物を調製し、同様に試験を行った。すなわち(A)/(B)が100/250である。
【0034】
[比較例1]
ハリエスターSK−501NSの配合量を25質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして水性粘接着剤組成物を調製し、同様に試験を行った。すなわち(A)/(B)が100/23である。
[比較例2]
ハリエスターSK−501NSの配合量を330質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして水性粘接着剤組成物を調製し、同様に試験を行った。すなわち(A)/(B)が100/300である。
【0035】
[比較例3]
ハリエスターSK−501NSを、ハリエスターSK−218NS(常温で固体の樹脂である重合ロジンエステルを水性エマルジョンとしたもの/ハリマ化成社製/樹脂分50質量%)に変えた以外は実施例1と同様にして水性粘接着剤組成物を調製し、同様に試験を行った。すなわち(A)合成ゴム系ラテックスの固形分/粘着付与樹脂のエマルジョン
の樹脂分(質量比)が100/50である。
【0036】
[比較例4]
ハリエスターSK−501NSを、ハリエスターSK−218NSに変えた以外は実施例2と同様にして水性粘接着剤組成物を調製し、同様に試験を行った。すなわち(A)合成ゴム系ラテックスの固形分/粘着付与樹脂のエマルジョンの樹脂分(質量比)が100/91である。
【0037】
[比較例5]
ハリエスターSK−501NSを、ハリエスターSK−218NSに変えた以外は実施例3と同様にして水性粘接着剤組成物を調製し、同様に試験を行った。すなわち(A)合成ゴム系ラテックスの固形分/粘着付与樹脂のエマルジョンの樹脂分(質量比)が100/182である。
【0038】
[比較例6]
ハリエスターSK−501NSを、ハリエスターSK−218NSに変えた以外は実施例4と同様にして水性粘接着剤組成物を調製し、同様に試験を行った。すなわち(A)合成ゴム系ラテックスの固形分/粘着付与樹脂のエマルジョンの樹脂分(質量比)が100/250である。
[比較例7]
ALX−310を、ショウプレン115(感圧ゲル性のないクロロプレンゴムラテックス/昭和電工(株)製/不揮発分48質量%)に変えた以外は実施例3と同様にして水性粘接着剤組成物を調製し、同様に試験を行った。すなわちゴムラテックスの固形分/粘着付与樹脂のエマルジョンの樹脂分(質量比)が100/208である。
【0039】
実施例及び比較例の配合並びに各種試験の結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように本発明に係る水性粘接着剤組成物においては、湿潤状態にあるときは優れた感圧ゲル性(速固着性能)を有し、乾燥後にはその皮膜が優れた粘着特性及びコンタクト性を有する水性粘接着剤組成物であることが分かる。さらには、細口のノズルを備えた容器で長期間保存した後でも皮張りによるノズル詰まりがなく、なおかつ乾燥後の粘接着剤皮膜を貼り合わせた後で被着体からはく離した際に被着材に皮膜が転着すること(いわゆるのり残り)がないことも分かる。
【0040】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る水性粘接着剤組成物は、湿潤状態にあるときは優れた感圧ゲル性(速固着性能)を有し、乾燥後にはその皮膜が優れた粘着特性を有する水性粘接着剤組成物であり、細口のノズルを備えた容器或いはスポンジやフェルト等の塗布部を有する容器であっても長期間保存後にノズル詰まりやスポンジやフェルトの目詰まりがないため、従来採用できなかった容器(例えば細口ノズル付き容器)に充填して供給することが可能になり、一般家庭(例えば手芸・工芸)、オフィス(例えばメモや付箋紙の仮止め)、スポーツ用(例えば体育館等の室内で使用される卓球用ラバーの接着)等の室内で使用される種々の用途に様々な使用方法が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)感圧ゲル性を有する合成ゴム系ラテックス、(B)室温で液状の粘着付与樹脂のエマルジョンを含有してなる水性粘接着剤組成物であって、
(A)合成ゴム系ラテックスの固形分100質量部に対して、(B)室温で液状の粘着付与樹脂のエマルジョンの樹脂分が50〜250質量部であることを特徴とする水性粘接着剤組成物。
【請求項2】
(B)室温で液状の粘着付与樹脂のエマルジョンにおける、粘着付与樹脂がロジンエステル及び/又はテルペンの低分子量重合体であることを特徴とする、請求項1に記載の水性粘接着剤組成物。
【請求項3】
(A)合成ゴム系ラテックスが、イソプレンゴム、NBR又はクロロプレンゴムを主成分とするものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水性粘接着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性粘接着剤組成物を、先端開口部の口径が直径2mm以下であるノズル状塗布部を有する容器又はスポンジ若しくはフェルトの塗布部を有する容器に収容したことを特徴とする、水性粘接着剤製品。

【公開番号】特開2009−235234(P2009−235234A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82883(P2008−82883)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】