説明

水性被覆材およびエマルションの製造方法

【課題】
耐ブロッキング性、耐水性及び耐候性に優れた塗膜を形成する水性被覆材を提供すること。
【解決手段】
エチレン性不飽和単量体(a)を乳化重合して重合体を形成し、その後に、エチレン性不飽和単量体(b)を加え、乳化重合して重合体を形成して得られたエマルション粒子を主成分とする水性被覆材であって、
エチレン性不飽和単量体(a)は、アリル基を2つ以上有するエチレン性不飽和単量体(a1)を含み、かつ溶解性パラメータ(SP値)が20〜25(J/cm1/2のエチレン性不飽和単量体(a2)を75質量%以上含んでいる水性被覆材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐ブロッキング性、耐凍害性、平滑性、耐水性及び耐候性に優れた塗膜を形成する水性被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物、土木構造物に使用する塗料分野においては、塗装作業者や周辺住民の健康及び環境保護を考慮して、揮発性有機化合物(以下「VOC」という)を溶媒とする溶剤系塗料から、水を分散媒とする水性塗料への変換が図られている。しかし、水性塗料を代表する水性エマルション塗料に用いられるエマルション樹脂は固有の最低造膜温度(以下「MFT」という)を持っており、塗膜を形成するためにMFT以下の温度で造膜を行う場合、造膜助剤としてのVOCの添加が必要であった。
【0003】
一方、塗板を積み重ねた際に発生しやすいブロッキングを防止するために、バインダーとして高硬度の樹脂を使用する必要があるが、高硬度の樹脂を使用した被覆材の塗膜は耐凍害性に問題があり、また、MFTも高いことから、造膜助剤を多量に配合する必要がある。従って、水性エマルション塗料も相当量のVOCを含んでおり、塗装後の乾燥が不十分な場合には、残存するVOCにより、塗膜の耐ブロッキング性や耐水性が悪くなるという問題があった。そこで、耐ブロッキング性及び耐凍害性を有し、且つ、耐水性及び耐候性の良好な塗膜を形成する水性被覆材の検討が行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、分散安定性、耐アルコールショック性、耐水性に優れた塗膜を形成する樹脂組成物として、少なくとも1つのアリル基を有する多官能性単量体を共重合したアクリル樹脂組成物が開示されている。しかしながら、溶剤が含まれているため水性被覆材としては使用できず、また酸価が非常に高いため、外装用途に用いた場合、塗膜の耐水性及び耐候性が低いという問題がある。
【0005】
また、特許文献2には、柔軟性、溶融流動性及び透明性に優れた塗膜を形成する樹脂組成物として、コア/シェル構造を有し、トリアリルイソシアヌレートやアリルメタクリレート等のグラフト結合性多官能ビニル単量体を共重合したアクリル樹脂組成物が開示されている。しかしながら、内層の親水性が高いため、外装用途に用いた場合、塗膜の耐水性を低下させるという問題がある。
【特許文献1】特開2006−316185号公報
【特許文献2】特開平7−10937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐ブロッキング性、耐水性及び耐候性に優れた塗膜を形成する水性被覆材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の要旨は、エチレン性不飽和単量体(a)を乳化重合して重合体を形成し、その後に、エチレン性不飽和単量体(b)を加え、乳化重合して重合体を形成して得られたエマルションを主成分とする水性被覆材であって、
エチレン性不飽和単量体(a)は、アリル基を2つ以上有するエチレン性不飽和単量体(a1)を含み、かつ溶解性パラメータ(SP値)が20〜25(J/cm1/2のエチレン性不飽和単量体(a2)を75質量%以上含んでいる水性被覆材である。
【0008】
本発明の第2の要旨は、エチレン性不飽和単量体(a)を乳化重合して重合体を形成し、その後に、エチレン性不飽和単量体(b)を加え、乳化重合して重合体を形成してエマルションを製造する方法であって、
エチレン性不飽和単量体(a)は、アリル基を2つ以上有するエチレン性不飽和単量体(a1)を含み、かつ溶解性パラメータ(SP値)が20〜25(J/cm1/2のエチレン性不飽和単量体(a2)を75質量%以上含んでいる方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、耐ブロッキング性、耐水性及び耐候性に優れた塗膜を形成する水性被覆材を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
エチレン性不飽和単量体(a)
本発明において、エチレン性不飽和単量体(a)(以下、「単量体(a)」とする。)は、アリル基を2つ以上有するエチレン性不飽和単量体(a1)(以下、「単量体(a1)」とする。)及び、溶解性パラメータ(SP値)が20〜25(J/cm1/2のエチレン性不飽和単量体(a2)(以下、「単量体(a2)」とする。)を含むことが必須である。単量体(a)は重合してエマルション粒子の内部層またはフリーポリマーとなる。
【0011】
単量体(a1)は架橋構造を形成して塗膜の耐ブロッキング性、耐水性、耐候性を向上させる成分であり、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、イソ(テレ)フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等が挙げられる。なかでも、耐水性および耐候性の点から、アリル基を3つ有するトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートの使用が好ましい。
【0012】
単量体(a1)は、ラジカル重合反応性が比較的遅いアリル基を2つ以上有するため、エチレングリコールジメタクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリス(2−アクリロイルオキシエチレン)イソシアヌレート等のアリル基ではないラジカル重合性基を2つ以上有する単量体に比べて、耐ブロッキング性、耐水性及び耐候性に優れる塗膜が得られる。
【0013】
また、単量体(a1)の含有量は、乳化重合に供される全単量体(以下、単に「全単量体」とする。)中に0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜8質量%がより好ましく、0.5〜8質量%が更に好ましい。その含有量が0.1質量%以上で、塗膜の耐ブロッキング性、耐水性、耐候性が向上し、10質量%以下で成膜性や塗膜伸度の低下を抑制できる。
【0014】
本発明において、SP値は、下記式(1)に記載のFedorsの式(R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14,(2),1974)により求めた値をいう。
【0015】
【数1】

【0016】
単量体(a)には、単量体(a2)を75質量%以上、好ましくは80質量%以上含有される。
【0017】
単量体(a2)が75質量%以上であると、単量体(a)由来の重合体成分と重合体(b)由来の重合体成分の相溶化を抑制し、単量体(a)由来の重合体成分により親水性付与および耐ブロッキング性向上が可能となり、単量体(b)由来の重合体成分により疎水性付与および耐候性向上が可能となる。また、単量体(a)由来の重合体成分を高Tg化した場合、塗膜の耐凍害性を低下させることなく塗膜の耐ブロッキング性を向上することができる。
【0018】
単量体(a2)としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチルアクリレート、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、ダイアセトンアクリルアミド、スチレン等のSP値が20〜25のエチレン性不飽和単量体挙げられる。
【0019】
また、単量体(a)として、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、イタコン酸、アクリロニトリル等のSP値が25を超えるエチレン性不飽和単量体を使用することも出来る。
【0020】
また、塗膜の耐ブロッキング性の面で、メチルメタクリレートを、全単量体中に25質量%以上含有することが好ましい。より好ましくは30質量%以上である。また、塗膜の耐凍害性の面で65質量%以下が好ましい。
【0021】
単量体(a)由来の重合体成分のTgは、50〜150℃であるのが好ましく、70〜110℃であるのがより好ましい。Tgが50℃以上であれば、塗膜の耐ブロッキング性が向上し、150℃以下であれば、塗膜の耐凍害性が向上する。
【0022】
単量体(a)由来の重合体成分のTgを50〜150℃とするために、単量体(a)には、メチルメタクリレート以外に、イソボルニル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和単量体が使用できる。しかし、イソボルニル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のSP値が20(J/cm1/2以下のエチレン性不飽和単量体を使用する場合には、単量体(a)由来の重合体成分と単量体(b)由来の重合体成分が相溶化しやすくなることや、塗膜の耐凍害性の観点から、使用量を抑えることが好ましい。また、単量体(a)として(メタ)アクリル酸等の親水性の高いエチレン性不飽和単量体を使用する場合には、重合工程での安定性や、塗膜の耐水性、耐候性の面から使用量を制限することが好ましい。
【0023】
Tgとは、式(2)に示したFoxの式により求められる値である。
【0024】
1/(273+Tg)=Σ(W/(273+Tg))・・・(2)
ここで、Wは単量体iの質量分率、Tgは単量体iの単独重合体のTg(℃)を示す。
【0025】
単量体(a)の使用量は、全単量体量を基準として20〜70質量%であるのが好ましく、30〜65質量%であるのがより好ましい。使用量が20質量%以上であれば、塗膜の耐ブロッキング性が高くなる。また、使用量が70質量%以下であれば、塗膜の耐凍害性が高くなる。
【0026】
また、本発明の水性被覆材においては、以下に示すように、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体、分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有するエチレン性不飽和単量体(単量体(a1)は除く)を単量体(a)中に含有させることで、より高度な塗料物性、塗膜物性を発現することができる。これらの単量体は必要に応じて2種以上を使用することができる。
【0027】
単量体(a)中にヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートを含有させることにより、水性被覆材を製造する際の配合安定性や、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、及び各種下地に対する密着性を向上させられる。全単量体中のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの使用量は、0.1〜15質量%であるのが好ましく、0.5〜12質量%がより好ましい。全単量体中の比率が0.1質量%以上であれば上記性能が向上し、15質量%以下であれば塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。
【0028】
単量体(a)中に自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体を含有させることにより、塗膜の耐ブロッキング性、耐汚染性、耐候性、耐水性、及び各種下地に対する密着性を向上させられる。自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体の使用量は、全単量体中に0.1〜15質量%であるのが好ましく、0.5〜12質量%がより好ましい。使用量が0.1質量%以上であれば上記性能が向上し、15質量%以下であれば、塗膜の耐水性及び耐候性の低下を抑制できる。
【0029】
自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体とは、得られたエマルション粒子中に残存する自己架橋性官能基が、エマルション粒子が室温で分散液として保管されている間は化学的に安定であり、塗装時の乾燥、加熱又はその他の外的要因によって側鎖の官能基同士で反応して側鎖間に化学結合が形成する単量体をいう。
【0030】
自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等のオキシラン基含有エチレン性不飽和単量体、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミドのアルキロール又はアルコキシアルキル化合物が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
【0031】
また、単量体(a)中に重合性不飽和二重結合を2個以上有するエチレン性不飽和単量体(単量体(a1)は除く)を含有させることで、塗膜の耐ブロッキング性、耐水性及び耐候性を向上させられる。前記エチレン性不飽和単量体の含有量は、全単量体中に0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.2〜8質量%がより好ましい。含有量が0.1質量%以上であれば、塗膜の耐ブロッキング性、耐水性及び耐候性が向上し、10質量%以下であれば、塗膜の耐凍害性の低下が抑制できる。
【0032】
重合性不飽和二重結合を2個以上有するエチレン性不飽和単量体(単量体(a1)は除く)としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチレン)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
【0033】
単量体(a)由来の重合体成分は乳化重合を行うことによって製造できる。
【0034】
乳化重合は、例えば、界面活性剤の存在下、単量体(a)を重合系内に供給し、ラジカル重合開始剤により重合する公知の方法が使用できる。
【0035】
ラジカル重合開始剤としては、ラジカル重合に使用される公知のものが使用可能であり、例えば、過硫酸塩類、油溶性アゾ化合物類、水溶性アゾ化合物類、有機過酸化物類が挙げられる。
【0036】
過硫酸塩類としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0037】
油溶性アゾ化合物類としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等が挙げられる。
【0038】
水溶性アゾ化合物類としては、例えば、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}及びその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)及びその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピンアミジン)及びその塩類、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]及びその塩類等が挙げられる。
【0039】
有機過酸化物類としては、例えば、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等が挙げられる。
【0040】
これらは単独で、又は2種類以上の混合物として使用できる。また、重合速度の促進、及び70℃以下での低温の重合が望まれるときには、例えば、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いるのがよい。
【0041】
ラジカル重合開始剤の添加量は、通常、単量体(a)中に0.01〜10質量%であるが、重合の進行や反応の制御の観点から、0.05〜5質量%とするのが好ましい。
【0042】
単量体(a)由来の重合体成分の分子量を調整する場合には、重合する際に、分子量調整剤として、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類や、四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー等の公知の連鎖移動剤を用いることができる。耐候性の低下を抑えるため、連鎖移動剤の使用量は単量体(a)に対して1質量%以下であることが好ましい。
【0043】
また、単量体(a)には、単量体(a)100質量部に対して、界面活性剤が0.1〜10質量部含まれるのが好ましく、0.5〜8質量部含まれるのがより好ましい。単量体(a)に界面活性剤を0.1質量部以上含有させることによって、得られるエマルション粒子の重合安定性及び貯蔵安定性が向上する。また、含有させる界面活性剤を10質量部以下とすることによって、塗膜の耐水性を損なうことなく、塗料化時の安定性、塗料の経時的安定性等を維持できる。
【0044】
界面活性剤としては、各種のアニオン性、カチオン性、又はノニオン性の界面活性剤、高分子乳化剤が挙げられる。また、界面活性剤成分中にエチレン性不飽和結合を持つ、反応性界面活性剤も使用できる。なかでも、塗膜の耐候性及び耐水性の観点から反応性界面活性剤を使用することが好ましい。このとき、塗膜の耐候性及び耐水性を向上させるためには、界面活性剤成分のうち50質量%以上が反応性界面活性剤であるのが好ましい。
【0045】
また、塗装後の乾燥の際、形成される塗膜が収縮する「より」と呼ばれる現象や塗膜がひび割れる「マッドクラック」と呼ばれる現象が発生せず、平滑性の高い塗膜を得るという観点及び得られるエマルション粒子の分散液での起泡性を低くするという観点から、リン酸エステル型反応性界面活性剤を併用して使用するのが好ましい。このとき、リン酸エステル型反応性界面活性剤の含有量は、合計単量体量を100質量部として、0.05〜5質量部であるのが好ましく、0.1〜3質量部であるのがより好ましい。含有量が0.05質量部以上で効果が得られ、5質量部以下で塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。
【0046】
リン酸エステル型反応性界面活性剤は市販のものを使用でき、例えば、東邦化学工業(株)製のサーフマーシリーズである、FP−80、FP−100、FP−120、FP−160、FP−200、FP−125、旭電化工業(株)製のアデカリアソープシリーズであるPP−70、PPE−710等が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
【0047】

エチレン性不飽和単量体(b)
単量体(a)を乳化重合して重合体を形成した後に、単量体(a)と組成の異なるエチレン性不飽和単量体(b)(以下、「単量体(b)」とする。)を加え、乳化重合することにより重合体を得る。単量体(b)は重合してエマルション粒子の外部層またはフリーポリマーとなる。単量体(b)は単量体(a)と組成が異なることで、生成するエマルション粒子が組成の異なる重合体成分から構成されることになり、そのため耐ブロッキング性、耐水性、耐候性に優れる。
【0048】
単量体(b)は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されないが、SP値が20(J/cm1/2未満のエチレン性不飽和単量体(以下、「単量体(b1)」とする)を含有するのが好ましい。単量体(b)中に含有される単量体(b1)の含有量は、50〜100質量%が好ましく、55〜95質量%がより好ましい。単量体(b1)の割合が50質量%以上であれば、耐吸水性が向上するため、塗膜の耐水性、耐候性及び耐凍害性が向上し、平滑性も高くなる。また、塗膜の平滑性を高くするためには、SP値が19.5以下の単量体(b1)を使用するのがより好ましい。
【0049】
単量体(b1)としては、例えば、エチルメタクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルアクリレート、n−プロポキシエチルアクリレート、メトキシエトキシエチルアクリレート等のSP値が19.5〜20のエチレン性不飽和単量体、n−プロピルメタクリレート、i−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2−エトキシエチルメタクリレート、i−プロポキシエチルアクリレート、n−ブトキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のSP値が19.0〜19.5のエチレン性不飽和単量体、i−プロピルメタクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレート、t−ブトキシエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のSP値が19.0以下のエチレン性不飽和単量体が挙げられる。
【0050】
単量体(b)由来の重合体成分のTgは、−50〜50℃であるのが好ましく、−30〜30℃であるのがより好ましい。単量体(b)由来の重合体成分のTgが−50℃以上であれば、塗膜の耐ブロッキング性及び耐汚染性が得られる。また、単量体(b)由来の重合体成分のTgが50℃以下であれば、成膜性が高くなり、塗装後の乾燥が不十分な場合でも、残存するVOCによる塗膜の耐ブロッキング性、耐水性及び耐凍害性への悪影響が少なくなる。
【0051】
また、得られるエマルション粒子中の単量体(b)の使用量は、全単量体量を基準として30〜80質量%であるのが好ましく、35〜70質量%であるのがより好ましい。単量体(b)の使用量が30質量%以上であれば、塗膜の耐凍害性、平滑性、耐水性及び耐候性が高くなり、80質量%以下であれば、塗膜の耐ブロッキング性が向上する。
【0052】
また、以下に説明するような、高度な塗料物性及び塗膜物性を発現させるために、単量体(b)には、t−ブチルメタクリレート及び/又はシクロヘキシルメタクリレート、加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体、エチレン性不飽和カルボン酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリレート、自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体、耐紫外線エチレン性不飽和単量体、金属含有エチレン性不飽和単量体、カルボニル基及び/又はアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体を含有させることができる。これらは必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0053】
単量体(b)にt−ブチルメタクリレート及び/又はシクロヘキシルメタクリレートを含有させれば、塗膜の耐候性及び耐水性が向上する。全単量体中のt−ブチルメタクリレート及び/又はシクロヘキシルメタクリレートの含有量は、5〜70質量%であるのが好ましく、10〜60質量%であるのがより好ましい。含有量が5質量%以上で塗膜の耐候性及び耐水性が向上でき、70質量%以下とすれば塗膜の耐凍害性の低下が抑制できる。
【0054】
単量体(b)に加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体を含有させれば、塗膜の耐候性及び耐水性が向上する。全単量体中の加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体の含有量は、0.05〜15質量%であるのが好ましく、0.1〜12質量%であるのがより好ましい。含有量が0.05質量%以上で塗膜の耐候性及び耐水性が向上でき、15質量%以下とすれば塗膜の耐凍害性の低下が抑制できる。
【0055】
加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン等のビニルシラン類や、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルシラン類が挙げられる。
【0056】
なかでも、ビニル重合の反応性並びに塗膜の耐汚染性、耐候性及び耐水性の観点から、(メタ)アクリロイルオキシアルキルシラン類であるのが好ましく、γ−メタクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリクロロシランがさらに好ましい。また、これらは必要に応じて2種以上を選択して使用することもできる。
【0057】
単量体(b)にエチレン性不飽和カルボン酸を含有させれば、エマルション粒子の分散液の貯蔵安定性、及びエマルション粒子の分散液に顔料や添加物を入れて塗料化する際の配合安定性が向上する。全単量体中のエチレン性不飽和カルボン酸の含有量は、0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.2〜8質量%であるのがより好ましい。含有量が0.1質量%以上であれば上記性能が向上し、10質量%以下とすることで塗膜の耐候性及び耐水性の低下が抑制できる。
【0058】
エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、5−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
【0059】
単量体(b)にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含有させれば、エマルション粒子の分散液の配合安定性や、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、及び塗膜の各種下地に対する密着性が向上する。全単量体中のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、0.1〜15質量%であるが好ましく、0.5〜12質量%であるのがより好ましい。含有量を0.1質量%以上とすれば上記性能が充分に向上し、15質量%以下とすることで塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。
【0060】
単量体(b)中にポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリレートを含有させれば、エマルション粒子の分散液の配合安定性や塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、及び塗膜の各種下地に対する密着性が向上する。全単量体中のポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリレートの含有量は、0.1〜15質量%であるのが好ましく、0.5〜12質量%であるのがより好ましい。含有量が0.1質量%以上で効果が充分に得られ、15質量%以下であれば塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。
【0061】
ポリオキシアルキレン基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリ(エチレンオキシド/テトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリプロピレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリ(プロピレンオキシド/テトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート等の末端ヒドロキシ型ポリアルキレンオキシド基含有エチレン性不飽和単量体や、メトキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ(ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート等のアルキル基末端封止型ポリアルキレンオキシド基含有エチレン性不飽和単量体が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
【0062】
単量体(b)中に自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体を含有させれば、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、及び塗膜の各種下地に対する密着性が向上する。全単量体中の自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体の含有量は、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜12質量%であるのがより好ましい。含有量が0.1質量%以上で効果が充分に得られ、15質量%以下で塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体としては、単量体(a)の場合に挙げたものが使用でき、必要に応じてそれらの2種以上を選択して使用してもよい。
【0063】
単量体(b)中に耐紫外線エチレン性不飽和単量体を含有させれば、塗膜の耐候性が向上する。全単量体中の耐紫外線エチレン性不飽和単量体の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜15質量%であるのがより好ましい。こ含有量が0.1質量%以上で効果が充分に得られ、20質量%以下であれば重合安定性の低下が抑制できる。
【0064】
耐紫外線エチレン性不飽和単量体としては、例えば、光安定化作用を有する(メタ)アクリレート及び紫外線吸収性成分を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0065】
光安定化作用を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0066】
紫外線吸収性成分を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−アミル−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0067】
これら耐紫外線エチレン性不飽和単量体は必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
【0068】
塗膜の高い耐汚染性が要求される場合や、可塑剤のブリードアウトにより塗膜の耐汚染性が低下する場合には、全単量体中に金属含有エチレン性不飽和単量体や、特定の架橋システムを含有させれば、塗膜の耐汚染性が向上する。
【0069】
金属含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、モノフルオロ酢酸金属(メタ)アクリレート、プロピオン酸金属(メタ)アクリレート、オクチル酸金属(メタ)アクリレート、バーサチック酸金属(メタ)アクリレート、イソステアリン酸金属(メタ)アクリレート、パルミチン酸金属(メタ)アクリレート、クレソチン酸金属(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸金属(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸金属(メタ)アクリレート、安息香酸金属(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸金属(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸金属(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸金属(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸金属(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸金属(メタ)アクリレート、プルビン酸金属(メタ)アクリレート、等が挙げられ、金属としてはマグネシウム、カルシウム、鉄、銅、亜鉛、ジルコニウムが挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用することもできるが、なかでも、亜鉛含有エチレン性不飽和単量体を用いるのが好ましい。
【0070】
全単量体中の金属含有エチレン性不飽和単量体の含有量は、0〜10質量%であるのが好ましく、0.1〜8質量%であるのがより好ましい。含有量が0.1質量%以上で塗膜の耐汚染性が向上し、10質量%以下で塗膜の耐水性及び耐候性の低下が抑制できる。
【0071】
単量体(b)中にカルボニル基及び/又はアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体を含有させ、水性被覆材を調製する際、エマルション粒子の分散液中に、分子中に少なくとも2個のヒドラジノ基を有する有機ヒドラジン化合物(以下、「ヒドラジン化合物」とする。)を配合すれば、塗膜の耐ブロッキング性、耐凍害性、耐水性、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性及び塗膜の各種下地に対する密着性が向上する。この効果は、塗装後の乾燥の際に、エマルション粒子中のカルボニル基と、配合されたヒドラジン化合物のヒドラジノ基との間で架橋反応が進行することに起因する。
【0072】
カルボニル基及び/又はアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルアルキルケトン等が挙げられる。なかでも、炭素数4〜7個のビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、(メタ)アクリルオキシアルキルプロパナールの他、(メタ)アクリルアミド、ピバリンアルデヒド、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニルアクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトンがより好ましい。これらは、必要に応じて2種以上を選択して使用することもできる。
【0073】
全単量体中のカルボニル基及び/又はアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体の含有量は、0.2〜10質量%であるのが好ましく、0.5〜8質量%であるのがより好ましい。含有量が0.2質量%以上であれば、塗膜の耐ブロッキング性、耐凍害性、耐水性、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性及び各種下地に対する密着性が向上し、10質量%以下であれば重合安定性や塗膜の耐水性の低下が抑制できる。
【0074】
ヒドラジン化合物としては、例えば、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等の炭素数が2〜15のジカルボン酸のジヒドラジドや、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントイン、1−ヒドラジノカルボエチル−3−ヒドラジノカルボイソプロピル−5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントイン等のヒダントイン骨格を有する化合物が挙げられる。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
【0075】
塗膜の耐汚染性を向上させる上では、ヒダントイン骨格を有するヒドラジン化合物が好ましく、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインがより好ましい。
【0076】
また、カルボニル基及び/又はアルデヒド基含有エチレン性不飽和単量体とヒドラジン化合物の比率は、エマルション粒子中のカルボニル基及び/又はアルデヒド基のモル数を(P)、エマルション粒子の分散液に配合されるヒドラジン化合物のヒドラジノ基のモル数を(Q)としたとき、比率(P)/(Q)を0.1〜10とすることが好ましく、0.8〜2とするのがより好ましい。(P)/(Q)が0.1以上であれば、未反応のヒドラジン化合物による塗膜の耐水性の低下が抑制でき、(P)/(Q)が10以下であれば、エマルション粒子の架橋度が高くなり、塗膜の耐ブロッキング性、耐凍害性、耐水性、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性及び塗膜の各種下地に対する密着性が向上する。
【0077】
単量体(b)由来の重合体成分は1段以上の乳化重合を行うことによって製造するが、2段以上の多段重合法によって製造することが好ましい。多段重合の場合、必要に応じて各段の重合に使用する単量体組成を変更することが出来る。
【0078】
単量体(b)由来の重合体成分の製造は、単量体(a)由来の重合体成分の製造の場合と同様に、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤が使用できる。界面活性剤の使用量は、単量体(a)と単量体(b)を形成する重合反応を通じた合計量が、全単量体中0.1〜10質量部となるようにするのが好ましい。
【0079】
本発明の水性被覆材は、単量体(a)を乳化重合して重合体を形成する段階と、その後に、単量体(b)を加え、1段以上で乳化重合して重合体を形成する段階とを含む。ここで、段乳化重合は、水媒体中で、公知の乳化重合法にて2段階以上の重合が繰り返し行われるが、通常、2〜5段重合であるのが一般的である。
【0080】
乳化重合の後、得られたエマルション粒子の分散液は、塩基性化合物の添加により、pHを6.5〜10.0の範囲とすれば、安定性を高められる。なかでも、pHを7.0〜10.0とすれば、より優れた凍結−融解安定性を付与できる。
【0081】
塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジブチルアミン、アミルアミン、1−アミノオクタン、2−ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、2−プロピルアミノエタノール、エトキシプロピルアミン、アミノベンジルアルコール、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0082】
これらの中で、VOCを含まないことが望まれる内装用途等の場合は、無機系塩基性化合物を用いることが好ましい。更に、僅かな臭気が問題となる場合には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の非揮発性塩基性化合物を用いることが好ましい。
[エマルション粒子]
エマルション粒子の粒子径としては、粒子の安定性及び塗膜性能のバランスを考慮すると30〜300nmであることが好ましく、50〜130nmであることがより好ましい。30nm以上の粒子径となる重合条件であれば、重合中に凝集物が生じにくく、少量の界面活性化剤でよいことから、塗膜の耐水性を維持することができる。また300nm以下で造膜欠陥を生じにくく、成膜性が向上することから、塗膜のより優れた耐水性及び耐候性を発揮することができる。
【0083】
エマルション粒子のMFTは、60℃以下であるのが好ましく、50℃以下であるのがより好ましい。MFTが60℃以下であれば、多量のVOC(成膜助剤)を配合する必要がなく、塗装後の乾燥が不十分な場合でも、残存するVOCによる塗膜の耐ブロッキング性、耐水性の低下がなく、塗膜の耐凍害性も維持できる。
【0084】
また、単量体(b)由来の重合体成分のTgとエマルション粒子のMFTの関係は、(エマルション粒子のMFT)≦(単量体(b)由来の重合体成分のTg+30℃)であることが好ましく、(エマルション粒子のMFT)≦単量体(b)由来の重合体成分のTg+20℃)であることがより好ましい。上記の条件を満足すれば、多量の成膜助剤を配合する必要がなく、塗装後の乾燥が不十分な場合でも、残存するVOCによる塗膜の耐ブロッキング性や耐水性の低下がないため、塗膜の耐凍害性も維持できる。
【0085】
また、全単量体に対して、造膜助剤、可塑剤等の有機揮発化合物を0〜20質量部添加することでMFTが10℃以下となるようにすることが好ましい。より好ましくは0〜10質量部である。造膜助剤及び可塑剤等のVOCの添加量を20質量部以下とすることで塗装後の乾燥が不十分な場合でも残存するVOCによる塗膜の耐ブロッキング性や耐水性への悪影響もなく、塗膜の耐凍害性も維持できる。
[水性被覆材]
本発明の水性被覆材は、主成分であるエマルション粒子及び前記界面活性剤、添加剤等で固形分を形成し、通常、固形分20〜80質量%の状態で使用される。
【0086】
水性被覆材は、必要に応じて各種顔料、消泡剤、顔料分散剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、防腐剤等を含有してもよい。また、他のエマルション樹脂、水溶性樹脂、粘性制御剤、メラミン類等の硬化剤と混合して使用してもよい。
【0087】
本発明の水性被覆材を各種基材の表面に塗装する方法としては、例えば、噴霧コート法、ローラーコート法、バーコート法、エアナイフコート法、刷毛塗り法、ディッピング法、フローコート法等の各種の塗装法が選択できる。また、本発明の水性被覆材は、室温乾燥又は50〜180℃の加熱乾燥で十分に造膜した塗膜が得られる。
【0088】
以上説明した、本発明の水性被覆材では、単量体(a)由来の重合体成分は高い硬度であるため、良好な耐ブロッキング性を有する塗膜となる。また、単量体(b)由来の重合体成分により、塗膜の耐凍害性、平滑性、耐水性及び耐候性が高くなる。また、アリル基を2つ以上有するエチレン性不飽和単量体(a1)により、単量体(a)由来の重合体成分と単量体(b)由来の重合体成分の結合を強固にすることから耐水性及び耐候性が更に高くなる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。尚、以下の記載において「部」及び「%」は質量基準である。水性被覆材の評価は下記方法に従って実施した。

<評価用水性被覆材(クリヤー塗料)の作製>
エマルション粒子のMFTが10℃を超えるものは、造膜助剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテル(以下「BDG」という)をエマルション粒子の分散液に添加しMFTを10℃以下にした。次いで、エマルション粒子の分散液100gに対し、RHEOLATE350(RHEOX(株)製、増粘剤)を0.5g、サーフィノールDF−58(エア・プロダクツ(株)製、消泡剤)0.5gを加え、十分に攪拌し、粘度がフォードカップ#4で30秒程度になるように脱イオン水を加えて調整した。その後、100メッシュナイロン紗を用いて濾過を行い、評価用水性被覆材を得た。

<評価方法>
[評価方法]
本実施例では、得られた水性被覆材により塗膜を形成し、該塗膜の耐ブロッキング性、耐水性及び耐候性の評価を実施した。また、得られた水性被覆材におけるエマルション粒子の粒子径の測定を行った。
(1)耐ブロッキング性
評価用水性被覆材をガラス板に4ミルアプリケーターにて塗装(縦80mm×横80mm)し、100℃で20分間強制乾燥させた。次いで、50℃まで冷却した後、50℃雰囲気下で塗膜表面にガーゼを載せ、更にその上に事前に50℃まで加温した分銅を置き、3kg/cmの荷重をかけて30分間維持した。次いで、常温まで冷却した後、ゆっくりガラス板を逆さまにしてガーゼを剥がし、その時の剥がし難さ、及びガーゼの痕跡を目視にて観察し、下記の基準に従って評価した。ガーゼを剥がす際は、ガーゼが自然に落下しない場合について、ガーゼを手で引き剥がした。
◎:ガーゼが自然に落下し、塗膜上にガーゼの痕跡がほとんど残っていない。
○:ガーゼが自然に落下することはないが、塗膜上にガーゼの痕跡はほとんど残っていない。
△:ガーゼが自然に落下することはないが、少しの力で剥離することができ、ガーゼの痕跡が多少残っている。
×:ガーゼを剥離する時に塗膜の一部も剥離し、ガーゼの痕跡がくっきりと残っている。
(2)耐水性
評価用水性被覆材をリン酸亜鉛処理鋼鈑(ボンデライト#100処理鋼鈑、板厚0.8mm、縦150mm×横70mm)にバーコーター#48にて塗装し、130℃で20分間強制乾燥した。次いで、室温まで放冷した。その後、50℃の温水に該リン酸亜鉛処理鋼鈑を100時間浸漬し、引き上げ直後、及び所定時間経過後の塗膜外観を目視にて観察し、下記の基準に従って評価した。
◎:塗装面の白化は少なく、引き上げ直後に完全にクリヤー塗膜(外観が透明)となった。
○:多少塗装面の白化は認められるが、引き上げ後は2〜3時間程度でほぼクリヤー塗膜となった。
△:多少塗装面の白化が認められ、引き上げてから24時間経過後でも少し濁っており、48時間後で辛うじて、クリヤー塗膜となった。
×:かなり塗装面が白化しており、引き上げ後も白化したままで、最後までクリヤー塗膜にならなかった。
(3)耐候性
耐水性評価に使用したものと同様の試験板を用い、ダイプラ・メタルウエザーKU−R4−W型(ダイプラ・ウィンテス(株)製)にて耐候性試験を行った。このとき、試験サイクルは、照射4時間(噴霧5秒/15分)/結露4時間、UV強度:65mW/cm2、ブラックパネル温度:照射時63℃/結露時30℃、湿度:照射時50%RH/結露時96%RHの条件で、1200時間経過後の60°光沢度の保持率と色差を耐候性の指標とし、下記の基準に従って評価した。
◎:光沢保持率80%以上、かつ色差2未満
○:光沢保持率70%以上、かつ色差2以上3未満
△:光沢保持率60%以上、かつ色差3以上5未満
×:光沢保持率60%未満、または色差5以上
(4)粒子径
大塚電子(株)製濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000を用いて室温下にて測定し、キュムラント解析により算出した。

<実施例1>
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプを備えたフラスコに、脱イオン水:110質量部、ニューコール707SF(日本乳化剤(株)製、固形分30%):5質量部、表1の「単量体(a)」に示すラジカル重合性単量体の混合物、及びパーブチルH69(日本油脂(株)製):0.02質量部を仕込んだ。フラスコの内温を40℃に昇温した後、硫酸第一鉄:0.0002質量部/EDTA:0.0005質量部/アスコルビン酸ナトリウム:0.12質量部/脱イオン水:6質量部の還元剤水溶液を添加した。重合発熱によるピークトップ温度を確認後、フラスコの内温を75℃に保持した。
【0090】
上記還元剤水溶液添加0.5時間後に、表1の「単量体(b)」に示すラジカル重合性単量体の混合物、脱イオン水:25質量部、ニューコール707SF:2.5質量部、サーフマーFP−120(東邦化学工業(株)製):0.5質量部及び28%アンモニア水溶液:0.17質量部を予め乳化分散させたプレエマルション液及び、パーブチルH69:0.03質量部を脱イオン水5部に溶解した重合開始剤溶液を2時間かけて滴下した。この滴下中はフラスコの内温を75℃に保持した。28%アンモニア水を1.25質量部添加後、室温まで冷却し、アジピン酸ジヒドラジド:0.7質量部および脱イオン水:1.5質量部添加してエマルション粒子の分散液を得た。
【0091】
このエマルション粒子の分散液を用い、エマルション粒子100質量部に対し造膜助剤BDGを12部添加し、評価用水性被覆材を作製した。
【0092】
表3に記載の通り、塗膜は耐ブロッキング性、耐水性、耐候性の全ての性能を兼ね備えていた。
<実施例2>
最初にフラスコに仕込むニューコール707SFの量を2.5質量部とする以外は実施例1と同様にして評価用水性被覆材を作製した。
【0093】
表3に記載の通り、塗膜は耐ブロッキング性、耐水性、耐候性の全ての性能を兼ね備えていた。
<実施例3>
表1に記載の組成の「単量体(b)」を使用し、室温冷却後のアジピン酸ジヒドラジド/脱イオン水を添加しない以外は実施例1と同様にして評価用水性被覆材を作製した。
【0094】
表3に記載の通り、塗膜は耐ブロッキング性、耐水性、耐候性の全ての性能を兼ね備えていた。
<実施例4〜8、11、12>
表1に記載の組成の「単量体(a)」を使用する以外は実施例1と同様にして評価用水性被覆材を作製した。
【0095】
表3に記載の通り、塗膜は耐ブロッキング性、耐水性、耐候性の全ての性能を兼ね備えていた。
<実施例9>
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプを備えたフラスコに、脱イオン水:110質量部、アデカリアソープSR−1025(アデカ(株)製、固形分25%):6質量部、表1の「単量体(a)」に示すラジカル重合性単量体の混合物、及びパーブチルH69(日本油脂(株)製):0.02質量部を仕込んだ。フラスコの内温を40℃に昇温した後、硫酸第一鉄:0.0002質量部/EDTA:0.0005質量部/アスコルビン酸ナトリウム:0.12質量部/脱イオン水:6質量部の還元剤水溶液を添加した。重合発熱によるピークトップ温度を確認後、フラスコの内温を75℃に保持した。
【0096】
上記還元剤水溶液添加0.5時間後に、表1の「単量体(b)」に示すラジカル重合性単量体の混合物、脱イオン水:25質量部、アデカリアソープSR−1025:3質量部、サーフマーFP−120:0.5質量部及び28%アンモニア水溶液:0.17質量部を予め乳化分散させたプレエマルション液ならびにパーブチルH69:0.03質量部を脱イオン水5部に溶解した重合開始剤溶液を2時間かけて滴下した。この滴下中はフラスコの内温を75℃に保持し、滴下が終了してからさらに75℃にて1.5時間保持した。28%アンモニア水を1.25質量部添加後、室温まで冷却し、アジピン酸ジヒドラジド:0.7質量部/脱イオン水:1.5質量部添加してエマルション粒子の分散液を得た。
【0097】
このエマルション粒子の分散液を用い、エマルション粒子100質量部に対し造膜助剤BDGを12部添加し、評価用水性被覆材を作製した。
【0098】
表3に記載の通り、塗膜は耐ブロッキング性、耐水性、耐候性の全ての性能を兼ね備えていた。
<実施例10>
表1に記載の組成の「単量体(b)」を使用する以外は実施例9と同様にして評価用水性被覆材を作製した。
【0099】
表3に記載の通り、塗膜は耐ブロッキング性、耐水性、耐候性の全ての性能を兼ね備えていた。
<実施例13>
表1に記載の組成の「単量体(b)」を使用する以外は実施例1と同様にして評価用水性被覆材を作製した。
【0100】
表3に記載の通り、塗膜は耐ブロッキング性、耐水性、耐候性の全ての性能を兼ね備えていた。
<比較例1〜7>
表2に記載の組成の「単量体(a)」を使用する以外は実施例1と同様にして評価用水性被覆材を作製した。
【0101】
表4に記載の通り、塗膜は耐ブロッキング性、耐水性、耐候性の物性バランスに劣っていた。
<比較例8>
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプを備えたフラスコに、脱イオン水:100質量部、ニューコール707SF:4質量部、表1の「単量体(a)」に示すラジカル重合性単量体の混合物、脱イオン水:35質量部、ニューコール707SF:3.5質量部、サーフマーFP−120:0.5質量部及び28%アンモニア水溶液:0.17質量部を予め乳化分散させたプレエマルション液の10%分ならびにパーブチルH69:0.02質量部を仕込んだ。フラスコの内温を40℃に昇温した後、硫酸第一鉄:0.0002質量部/EDTA:0.0005質量部/アスコルビン酸ナトリウム:0.12質量部/脱イオン水:6質量部の還元剤水溶液を添加した。重合発熱によるピークトップ温度を確認後、フラスコの内温を75℃に保持した。
【0102】
上記還元剤水溶液添加0.5時間後に残りのプレエマルション液及びパーブチルH69:0.03質量部を脱イオン水5部に溶解した重合開始剤溶液を2時間かけて滴下した。この滴下中はフラスコの内温を75℃に保持し、滴下が終了してからさらに75℃にて1.5時間保持した。28%アンモニア水を1.25質量部添加後、室温まで冷却し、アジピン酸ジヒドラジド:0.7質量部/脱イオン水:1.5質量部添加してエマルション粒子の分散液を得た。
【0103】
このエマルション粒子の分散液を用い、エマルション粒子100質量部に対し造膜助剤BDGを12部添加し、評価用水性被覆材を作製した。
【0104】
表4に記載の通り、塗膜は耐ブロッキング性、耐水性、耐候性の物性バランスに劣っていた。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
尚、表中の略号は以下の通りである。
TAC:トリアリルシアヌレート
TAIC:トリアリルイソシアヌレート
MMA:メチルメタクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
t−BMA:t−ブチルメタクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
n−BMA:n−ブチルメタクリレート
2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
AA:アクリル酸
DAAm:ジアセトンアクリルアミド
EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
TMP−TMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート
FA−731A:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(日立化成工業(株)製)
AMA:アリルメタクリレート
DVB:ジビニルベンゼン
ニューコール 707SF:非反応性アニオン性界面活性剤(日本乳化剤(株)製)
サーフマーFP−120:リン酸エステル型反応性界面活性剤(商品名、東邦化学工業(株)製)
アデカリアソープ SR−1025:反応性アニオン性界面活性剤(商品名、アデカ(株)製)
ADH:アジピン酸ジヒドラジド
【0108】
【表3】

【0109】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和単量体(a)を乳化重合して重合体を形成し、その後に、エチレン性不飽和単量体(b)を加え、乳化重合して重合体を形成して得られたエマルション粒子を主成分とする水性被覆材であって、
エチレン性不飽和単量体(a)は、アリル基を2つ以上有するエチレン性不飽和単量体(a1)を含み、かつ溶解性パラメータ(SP値)が20〜25(J/cm1/2のエチレン性不飽和単量体(a2)を75質量%以上含んでいる水性被覆材。
【請求項2】
エチレン性不飽和単量体(a)を乳化重合して重合体を形成し、その後に、エチレン性不飽和単量体(b)を加え、乳化重合して重合体を形成してエマルションを製造する方法であって、
エチレン性不飽和単量体(a)は、アリル基を2つ以上有するエチレン性不飽和単量体(a1)を含み、かつ溶解性パラメータ(SP値)が20〜25(J/cm1/2のエチレン性不飽和単量体(a2)を75質量%以上含んでいる方法。


【公開番号】特開2010−106095(P2010−106095A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277774(P2008−277774)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】