説明

水抜穴外装具

【課題】排水機能を損うことなく防塵機能を付与する。
【解決手段】屋外に設置される箱10の底面11に形成された水抜き穴13の外側に装着される水抜穴外装具30において、水抜き穴13と外部とを連通させる中空(13〜35)のうち断面積の広い拡大中空34に直径4〜5mmの球体からなる粒体36を多数充填する。また、拡大中空34を外嵌部材33に形成しておき、水抜き穴13を直に延長する内嵌筒体31に外嵌部材33を外嵌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、箱の底面の水抜き穴に外装される水抜穴外装具に関し、詳しくは、水抜き穴からの不所望な進入を阻止するため水抜き穴を延長する水抜穴外装具に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道では、信号機が線路脇に設置されて遠隔制御されるので、信号伝送ケーブルを中継する接続箱が信号機に付設される(例えば特許文献1参照)。また、鉄道の現場機器(信号機,踏切警報機・遮断機,電気転てつ機,軌道回路)に鉄道信号保安装置用知的端末を付設してそれとの通信ネットワークにて行うものもある(例えば特許文献2参照)。そのような端末の筐体や,上述した接続箱,さらには中間ネットワーク信号の器具箱などは、屋外に設置されるので、内蔵した電気部品が水に濡れないよう、防滴構造の箱になっている。また、結露等にて箱内に水が出た場合にその水が抜け落ちるよう、箱の底面に水抜き穴が形成されており、さらに、水抜き穴から飛沫などが不所望に進入するのを阻止するため、水抜き穴の外側に水抜穴外装具が装着されて水抜き穴が延長されている。
【0003】
図2は、そのような箱10と水抜穴外装具20の従来例を示し、(a)が箱10の底面の斜視図、(b)が水抜穴外装具20の詳細断面図である。
箱10は、内蔵品の保守等のため開閉可能な蓋12が付いており、本体の底面11には直径5mm程度の水抜き穴13が貫通して形成されている。
水抜穴外装具20は、円筒状部材が多用されており、その中空21は水Wを逃がすため水抜き穴13に適合して直径が5mm程度であり長さが10mm程度になっている。
その他、水抜穴外装具20に代えて、市販されている水抜きプラグが、水抜き穴13の外側に装着されることもある。水抜きプラグは中空が曲がりくねっている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−052988号公報(図6)
【特許文献2】特開2003−237579号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように従来の水抜穴外装具では、水抜き穴を設けて箱内から箱外へ水を排出する一方、水抜き穴を水抜穴外装具にて外側へ即ち設置状態では下方へ延長することで、箱外から箱内へは水が入ってこないようにしている。
もっとも、このような従来の水抜穴外装具では、飛沫等の水の進入は防げても塵埃の進入は防ぐことができない。塵埃は、細かくて風で舞い上がるので、水抜き穴とそれを延長した排水用の水抜き通路が真っ直ぐであろうと曲がりくねっていようと、その通路をすり抜けて箱の中に入ってしまう。このため、水を抜く排水と、塵埃の進入を防ぐ防塵は、両立していなかった。
【0006】
しかしながら、箱の中に塵埃が溜まると絶縁劣化などの不所望な現象が発生する心配もあることから、防塵機能を具備した除塵フィルタや金属粉体焼結フィルタなどを水抜穴外装具に組み込むことも考えられるが、そのようなフィルタは目が細かすぎるので、水が自重で滴下することを利用した簡便な排水機能が損なわれてしまう。
そこで、排水機能を損うことなく防塵機能を付与するべく、水抜穴外装具の構造に工夫を凝らすことが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水抜穴外装具は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、屋外に設置される箱の底面に形成された水抜き穴の外側に装着される水抜穴外装具において、前記水抜き穴と外部とを連通させる中空に多数の粒体が充填されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の水抜穴外装具は(解決手段2)、上記解決手段1の水抜穴外装具であって、前記粒体が球体であることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の水抜穴外装具は(解決手段3)、上記解決手段2の水抜穴外装具であって、前記球体の直径が4mm以上且つ5mm以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の水抜穴外装具は(解決手段4)、上記解決手段1〜3の水抜穴外装具であって、前記中空のうち前記粒体の充填箇所は前記水抜き穴より断面積の広い拡大中空になっていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の水抜穴外装具は(解決手段5)、上記解決手段4の水抜穴外装具であって、前記水抜き穴を直に延長する内嵌筒体と、これに外嵌される外嵌部材とが設けられ、前記拡大中空が前記外嵌部材のうち前記内嵌筒体の先端を囲う部分に形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明の水抜穴外装具にあっては(解決手段1)、水抜き穴と外部とを連通させる中空に多数の粒体を充填したことにより、粒体の充填箇所では中空が粒体間隙に取って代わられて多岐に分散するため、静止空気中で自然落下する塵埃は、中空を通り過ぎることができない。もちろん、飛沫などが不所望に進入するのも有効に阻止される。しかも、粒体は粉体より大きいので、水を自重落下させる排水機能は粒体間隙でも維持される。
したがって、この発明によれば、排水機能も防塵機能も共に具備した水抜穴外装具を実現することができる。
【0013】
また、本発明の水抜穴外装具にあっては(解決手段2)、粒体に球体を採用したので、粒体を中空へ無造作に詰めても整然と充填されるため、水抜穴外装具の製造が容易になるうえ、粒体間隙が揃って防塵機能が高位安定する。
したがって、この発明によれば、排水機能に加えて高い防塵機能をも具備した水抜穴外装具を簡便に実現することができる。
【0014】
さらに、本発明の水抜穴外装具にあっては(解決手段3)、球体の直径を4mm〜5mmに限定したことにより、撥水性の強い素材は別として一般的な素材からなる球体を粉体に用いることができるので、粉体の調達が容易になるとともに、コストアップが回避される。
したがって、この発明によれば、排水機能に加えて高い防塵機能をも具備した水抜穴外装具を簡便かつ安価に実現することができる。
【0015】
また、本発明の水抜穴外装具にあっては(解決手段4)、中空のうち粒体の充填箇所は水抜き穴より断面積の広い拡大中空になっているので、中空が多岐に分散しても十分な数量の粒体間隙が確保されるので、排水機能が高位に維持される。
したがって、この発明によれば、排水機能を全く損なうことなく防塵機能を付加した水抜穴外装具を実現することができる。
【0016】
また、本発明の水抜穴外装具にあっては(解決手段5)、水抜き穴を直に延長する内嵌筒体と、これに外嵌される外嵌部材とが設けられているが、そのうち内嵌筒体は、既存の円筒状の水抜穴外装具をそのまま流用しても良く、新規に設ける場合でも既存品と同様にして水抜き穴のところに外装することができる。そして、粒体を充填した外嵌部材を内嵌筒体に外嵌してから固定すれば、水抜穴外装具の装着が総て完了する。
したがって、この発明によれば、排水機能を全く損なうことなく防塵機能を付加した水抜穴外装具を装着容易な態様で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
このような本発明の水抜穴外装具について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1に示した実施例1は、上述した解決手段1〜5(出願当初の請求項1〜5)を総て具現化したものである。
なお、その図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の水抜穴外装具の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が箱10の底面11の斜視図、(b)が水抜穴外装具30の詳細断面図である。
【0019】
この水抜穴外装具30は、屋外に設置される既述の箱10の底面11に形成された水抜き穴13の外側に装着するため、水抜き穴13を直に延長する内嵌筒体31と、内嵌筒体31に外嵌される外嵌部材33と、外嵌部材33に形成された拡大中空34に充填された多数の粒体36と、粒体36が内嵌筒体31の中空へ入り込むを防止するといった必要があれば内嵌筒体31の中空と外嵌部材33の拡大中空34とを仕切るために内嵌筒体31の先端面のところに配置される仕切32とを具えている。
【0020】
内嵌筒体31は、既述した水抜穴外装具20と同じ円筒状部材でも良く、拡径して通気性を向上させたものでも良く、外嵌部材33を装着可能な範囲で長さを短くしたものでも良く、水抜穴外装具20と同様にして箱10の底面11の水抜き穴13のところに装着されるようになっている。
仕切32は、水を自重落下させる排水機能を損なわないよう目の粗い網や格子が使い易いが、粒体36を通過させないで排水機能を発揮するものであれば他の部材でも良い。
【0021】
外嵌部材33は、箱10の水抜き穴13を延長する内嵌筒体31の中空を更に外側へ延長して外部に連通させるため、中空が貫通して形成されている。装着は、内嵌筒体31への圧嵌めや、内嵌筒体31及び/又は箱10の底面11へのネジ止め等で、行える。
外嵌部材33の中空のうち、箱10の底面11寄りの部分は、内嵌筒体31に外嵌されるので、内嵌筒体31の外径に対応した内径の中空になっているが、内嵌筒体31に外嵌したときに内嵌筒体31の先端に位置する中空部分は、例えば直径25mm程度に拡径されて、内嵌筒体31の先端を囲う拡大中空34になっており、この拡大中空34の断面積は水抜き穴13の断面積より広い。さらに、外嵌部材33の中空のうち最も外側の部分は、直径・短径・幅が2〜3mm程度の丸穴群・長穴・スリット等になっている。
【0022】
粒体36は、直径が4mm〜5mmの球体であり、多数用いられるが、真球度の低い安価なもので足りる。材質も、撥水性・疎水性の強いものを避ければ、親水性強化処理など特別な追加処理は不要で、ソーダガラス等のガラスや,ABS樹脂等のプラスチック,SUS404等のステンレスなど、一般的で安価なものを用いることができる。球体間隙から水を自重落下させうる球体直径は材質によって異なるが、球体直径4mm〜5mmの範囲であれば大抵の材質が使えるようである。このような粒体36が、多数個、稠密な状態で、更には二層や多層に重なった状態で、拡大中空34に充填されている。
【0023】
このような構造の水抜穴外装具30は、使用に際して、既述した水抜穴外装具20と同様、屋外に設置される既述の箱10の底面11に形成された水抜き穴13の外側に装着される。装着対象の箱10が新規に製造されるものであれば、水抜穴外装具30も全部品が製造されて箱10に装着されるが、装着対象の箱10が既に現場に設置されており、それに水抜穴外装具20が装着されていれば、その水抜穴外装具20がそのまま水抜穴外装具30の内嵌筒体31として流用され、水抜穴外装具20に外嵌可能な外嵌部材33等が追加装着されて、水抜穴外装具30が現場で作り上げられるので、水抜穴外装具20を取り外す必要がなく、箱10や収納部材の機能を一時的であれ全く停止しないで済む。
【0024】
新規製造であれ既存品改造であれ、水抜穴外装具30の組立は、内嵌筒体31を除いて外嵌部材33に対して行う事前組立と、箱10への装着時に内嵌筒体31と外嵌部材33とを連結する最終組立とからなる。事前組立は、外嵌部材33のの拡大中空34に多数の粒体36を充填して、その上に仕切32を被せるというものであるが、粒体36が球体なので、所定個数の粒体36を拡大中空34に投入して外嵌部材33を軽く揺すれば、粒体36は拡大中空34内で稠密に整然と並ぶ。仕切32は、例えば、少し曲げて拡大中空34に差し込んでから広げる、等のことで容易に取り付けられる。
【0025】
最終組立と装着は、先に内嵌筒体31を箱10の底面11の水抜き穴13のところに外側からネジ込み等にて取り付け、次に内嵌筒体31に粒体36充填済み外嵌部材33を外嵌し、最後にネジ止め等で固定することで、なされる。箱10の底面11は下向きなので、そこに装着した水抜穴外装具30も下を向き、水抜き穴13と内嵌筒体31の中空と外嵌部材33の拡大中空34と排水口35とを連ねた排水用の水抜き通路も下を向く。
そして、箱10内に結露等にて水Wが出ると、その水Wが、水抜き穴13から内嵌筒体31の中空へ落ち、それから仕切32の目と粒体36の間隙を通り抜け、最後に排水口35から外へ排出される。
【0026】
また、暴風雨などで箱10の底面11に飛沫がかかると、その一部が水抜穴外装具30の排水口35に進入することもありうるが、その内側には粒体36を充填された拡大中空34が拡がっているので、飛沫は粒体36に衝突して大部分が止められ、粒体間隙に進んだ一部の飛沫も分散して速やかに勢いを失うので、内嵌筒体31の中空や水抜き穴13まで飛沫が進入するおそれはない。
さらに、強風などで水抜穴外装具30の排水口35に外気が吹き付けられたときにも、同様にして、外気は速やかに勢いを喪失するので、内嵌筒体31の中空や水抜き穴13では空気がほぼ静止し続ける。そのため、無風状態で自然落下するような塵埃は、水抜き穴13から箱10の中へ入り込むことができない。静かな大気中でも浮遊するほど微小な粉塵についても、同じ時間に入り込む量を従来と比べると、かなり少ない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の水抜穴外装具は、鉄道の現場機器に適用が限られる訳でなく、屋外に設置される防水性・防滴性の箱であって底面に水抜き穴が形成されているものであれば適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の水抜穴外装具の実施例1について、(a)が箱の底面の斜視図、(b)が水抜穴外装具の詳細断面図である。
【図2】従来の水抜穴外装具について、(a)が箱の底面の斜視図、(b)が水抜穴外装具の詳細断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10…箱11、11…底面、12…蓋、13…水抜き穴、
20…水抜穴外装具、21…中空、
30…水抜穴外装具、31…内嵌筒体、32…仕切、
33…外嵌部材、34…拡大中空、35…排水口、36…粒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置される箱の底面に形成された水抜き穴の外側に装着される水抜穴外装具において、前記水抜き穴と外部とを連通させる中空に多数の粒体が充填されていることを特徴とする水抜穴外装具。
【請求項2】
前記粒体が球体であることを特徴とする請求項1記載の水抜穴外装具。
【請求項3】
前記球体の直径が4mm以上且つ5mm以下であることを特徴とする請求項2記載の水抜穴外装具。
【請求項4】
前記中空のうち前記粒体の充填箇所は前記水抜き穴より断面積の広い拡大中空になっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載された水抜穴外装具。
【請求項5】
前記水抜き穴を直に延長する内嵌筒体と、これに外嵌される外嵌部材とが設けられ、前記拡大中空が前記外嵌部材のうち前記内嵌筒体の先端を囲う部分に形成されている、ことを特徴とする請求項4記載の水抜穴外装具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−282841(P2008−282841A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123147(P2007−123147)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000207470)大同信号株式会社 (83)
【Fターム(参考)】