水栓装置及びこれを用いた水抜きシステム
【課題】この発明は、不凍水栓柱等に用いられる水栓装置において、シール部材等の経年劣化があった場合でも、スピンドルの外方側(上方側)で水漏れが生じないようにして、商品性を高めることができる水栓装置及びこれを用いた水抜きシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】外部貫通路37の開口38a,38bが環状のパッキン部材7よりも内方側(下方側)に位置するように設定されているため、流れ出た水が操作スピンドル3の外方側(上方側)に、漏れ出ることはない。
【解決手段】外部貫通路37の開口38a,38bが環状のパッキン部材7よりも内方側(下方側)に位置するように設定されているため、流れ出た水が操作スピンドル3の外方側(上方側)に、漏れ出ることはない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、水道の凍結を防ぐ不凍水栓柱等に用いられる水栓装置及びこれを用いた水抜きシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寒冷地などにおいては、水道の凍結を防ぐために、いわゆる不凍水栓柱を用いることが知られている。この不凍水栓柱は、水栓装置の不使用時に水栓装置に水を導入する水道(水路)内の水を外部に排出することにより、水の凍結を防いでいる。
【0003】
不凍水栓柱の一例を、図5に示す模式図によって説明する。
地面Gに対して上下方向に延びるように設置された水栓柱本体100には、水栓装置(カラン)101が設けられており、通常時には、水栓柱本体100の内部に設けた水路102によって導かれる水Rが、水栓装置101から吐出されるように構成している。
この水栓柱本体100の上部には、水路102の途中に設けた切換え弁103を切換え操作する操作ノブ104を設けており、この操作ノブ104によって、切換え弁103を切換えた場合には、水路102の水R′を途中で堰き止めると共に、水栓柱本体100内の水路102の水R′を排出路102′から外部に排出するように構成している(なお、この「外部」には地中も含まれる)。
なお、このとき、水栓装置101の操作ハンドルを開放操作することで、水路102内に外気を導入すること等が知られている。
【0004】
ところで、下記特許文献1には、水栓装置内に残留する水も外部に排出するために、操作ハンドルを固定するスピンドル(栓棒)に、軸方向に延びる吸気孔を設け、この吸気孔を通じて外気を導入するようにしたものが、開示されている。
【特許文献1】実開昭49−110327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述のように、水栓装置101の操作ハンドルを開放操作することで、水路102内に外気を導入する場合には、操作ハンドルの開放操作を忘れると、水路内の水が排出されずに水道が凍結するおそれがある。
そこで、例えば、水栓装置101に、自動的に水路102内に外気を導入する吸気弁105を設けて、水R′の外部への排出を円滑に行なうことが考えられる。
【0006】
ここで、図6で、スピンドルに外気を導入する吸気孔を形成して吸気弁を設けた場合の水栓装置の詳細構造について、説明する。
この水栓装置101においては、水栓本体110に設けた上流側通路部111と下流側通路部112との間に、スピンドル113と一体となった水栓弁114を設け、この水栓弁114とスピンドル113に、上流側通路部111と連通した軸方向に延びる吸気孔115,116を設ける共に、この吸気孔115,116の内部に吸気弁となる吸気ピストン117と吸気プレート118を設けることが考えられる。
【0007】
この水栓装置101の上流側の水が、図示しない切換え弁(図5の103)によって外部に排出された場合には、上流側通路部111に負圧が発生するため、吸気弁の吸気ピストン117と吸気プレート118が内方側(下方側)に引き込まれることになり、自動的にスピンドル113の吸気孔116から上流側通路部111に、外気が導入されることになる。
【0008】
そして、このスピンドル113の吸気孔116の開口119は、できるだけ外気を導入しやすいように、スピンドル113の中間位置に設けられるシール部材(パッキン)120よりも外方側(上方側)に設定することが考えられる。
【0009】
しかし、このように、スピンドル113の吸気孔116の開口119をシール部材120よりも外方側に設定すると、以下のような問題が生じるおそれがある。
すなわち、吸気ピストン117のOリング121が、経年劣化によってシール性を維持できない状態になった場合や、ゴミかみが生じて吸気ピストン117が上方に移動しにくくなった場合には、上流側通路部111に水が導入されて高圧となった場合に、吸気ピストン117が外方側(上方側)に移動したとしても、Oリング121の部分から水が吹き出し、スピンドル113の吸気孔116の開口119から水が漏れる状態となってしまい、水漏れ状態がスピンドル113の外方側(上方側)で生じてしまうのである。
【0010】
そこで、この発明は、不凍水栓柱等に用いられる水栓装置において、シール部材等の経年劣化があった場合等でも、スピンドルの外方側(上方側)で水漏れが生じないようにして、商品性を高めることができる水栓装置及びこれを用いた水抜きシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、外部に水を排出できる切換え弁を上流側に備える水栓装置であって、前記水栓装置には、上流側水路と下流側水路との間に設置される水栓弁と、該水栓弁を開閉操作する操作ハンドルと、該操作ハンドルと前記水栓弁との間に設けられ、軸方向に移動することで操作ハンドルからの操作力を水栓弁に伝達する軸部材と、該軸部材の内部に軸方向に延びるように形成されて、前記上流側水路と外部とを連通する吸気孔と、該吸気孔の内部に設置されて、上流側水路の水が外部に排出される際には、上流側水路と外部とを連通して上流側通路に外気を取り入れる吸気弁とを備えており、前記水栓弁の閉鎖時には、前記吸気孔の外部側開口が、軸部材の中間位置でシールするシール部材より内方側に位置するように設定したものである。
【0012】
この構成によれば、水栓弁の閉鎖時には、軸部材の外部側開口がシール部材より内方側に位置するため、Oリング等が経年劣化することで、上流側水路から高圧(正圧)が作用した際に、軸部材の外部側開口から水が漏れたとしても、外方側に位置するシール部材によってシールされることになる。
このため、軸部材の外部側開口から水が漏れたとしても、軸部材の外方側からの水漏れを防ぐことができる。
【0013】
なお、軸部材の外部側開口から漏れる水は、軸部材の内方側に流れて下流側水路を経由して水栓装置の吐出口からシンク内に流れ出ることになるが、軸部材の外方側から水漏れする場合のように、水が外部に大きく飛散することもないため、水栓装置の商品性を悪化させることはない。
【0014】
この発明の一実施態様としては、前記水栓弁の開放時にも、前記吸気孔の外部側開口が、前記シール部材より内方側に位置するように設定したものである。
この構成によれば、水栓弁の開放時にも、軸部材の外部側開口がシール部材よりも内方側に位置するため、水栓弁の開放状態においても、軸部材の外部側開口から漏れる水は、外方側に位置するシール部材によってシールされる。
よって、水栓弁の閉鎖時、開放時、いずれの場合であっても、確実に軸部材の外方側からの水漏れを防ぐことができる。
【0015】
この発明の一実施態様としては、前記吸気孔の外部側開口を、前記軸部材の側周面に、約180度間隔で二箇所に形成したものである。
この構成によれば、軸部材の外部側開口が、軸部材の側周面に約180度間隔で二箇所に形成されることで、外部側開口から水が漏れる場合であっても、両開口からの吐出圧が相殺されるため、軸部材が径方向に変動することはない。
このため、軸部材の外部側開口から水が漏れたとしても、軸部材が径方向で変動せずに、その位置が維持されるため、シール部材のシール性が変化することがなく、確実にシール性能を維持できる。
よって、軸部材の外方側からの水漏れを、より確実に防ぐことができる。
【0016】
また、この発明は、前記水栓装置の上流側の上流側水路に分岐するように設けられ、水を外部に排出する排出路と、該排出路へ前記上流側水路内の水を排出して、前記水栓装置との間で負圧を生じさせる切換え弁と、該切換え弁を水排出時に切換え操作する操作部材とを備え、前記水栓装置を用いて水抜きを行なう、水抜きシステムである。
【0017】
この構成によれば、前述のような商品性の高い水栓装置を用いることで、水抜きシステムの商品性も、高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、シール部材が外方側に位置するため、軸部材の外部側開口から水が漏れたとしても、軸部材の外方側からの水漏れを防ぐことができる。
よって、不凍水栓柱等に用いられる水栓装置において、シール部材等の経年劣化があった場合でも、スピンドルの外方側(上方側)で水漏れが生じないようにして、商品性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の水栓装置の実施形態について、図面によって詳述する。図1はこの実施形態の水栓装置の全体断面図、図2は吸気弁閉鎖時の水栓装置の要部詳細断面図、図3は吸気弁開放時の水栓装置の要部詳細断面図、図4はOリングが経年劣化した際の水栓装置の要部詳細断面図である。
【0020】
この実施形態の水栓装置は、図1に示すように、鋳造成形等によって成形した金属製の水栓本体1と、操作者が操作する操作ハンドル2と、この操作ハンドル2に締結固定されて水栓本体1に組み付けられる操作スピンドル3とを備えている。
【0021】
そして、操作スピンドル3の内方側(図面で下方側)には、嵌め込み固定された水栓弁としての弁パッキン4と、弁パッキン4の外方側(図面で上方側)に設置されて、外気導入と外気遮断を切換える吸気弁としての吸気ピストン5及び吸気プレート6とを備えており、操作スピンドル3の中間位置には、操作スピンドル3の内方側と外方側とをシールする環状のパッキン部材7とを備えている。
【0022】
また、この環状のパッキン部材7の外方側には、このパッキン部材7を水栓本体1に固定するパッキン押え8を設けており、パッキン部材7の内方側には、ドーナツプレート状のパッキン受け9を設けている。
【0023】
さらに、水栓本体1の下流側(図面で右側)には、屈曲した筒状の先端パイプ部材10をパイプ用ナット11を介して回動自在に連結固定している。
【0024】
このうち、前述の水栓本体1は、略T字状の筒状部材で構成しており、内部には、上流側通路部21と下流側通路部22を形成して、両通路部21,22の間には、水平方向に延びる仕切り壁部23を形成している。そして、この仕切り壁部23には、上下方向に貫通する連通穴24を設けている。
また、水栓本体1の上流側(図面で左側)には、不凍水栓柱(図1では図示せず)に締結固定するために、締結ネジ部25と固定フランジ部26を形成している。
【0025】
上流側通路部21の下面21aは、上流側が下方に僅かに傾斜した傾斜勾配α(例えばα=3°)で、形成している。このように傾斜勾配αを設定することで、不凍水栓柱で上流側の水を外部に排出した際に、この上流側通路部21の水も外部に排出できるようにしている。
【0026】
前述の操作ハンドル2は、詳細には図示しないが、放射状に三方に広がる翼部2aを有する金属製のハンドル部材で構成している。この操作ハンドル2は、軸方向(上下方向)に延びる締結ボルトBで、操作スピンドル3に締結固定している。この操作ハンドル2を周方向に回転操作することで、操作スピンドル3を軸方向に移動できるように構成している。
【0027】
前述の操作スピンドル3は、図2に示すように、外方側の小径軸部31と、内方側の大径軸部32とを備えており、大径軸部32の外周面には、水栓本体1の上部12内面に形成した内ネジ13に螺合する外ネジ33を形成している。この外ネジ33に沿って操作スピンドル3を周方向に回転操作することで、操作スピンドル3が軸方向に移動するようにしている。
【0028】
操作スピンドル3には、軸方向に延びる吸気孔34を設けている。この吸気孔34は、外方側(上方側)34aが吸気ピストン5等を収容するように略円筒形状で形成されて、内方側(下方側)34bが弁パッキン4を嵌め込むように末広がりとなった略台形円筒形状で形成されている。
【0029】
前述の弁パッキン4は、この吸気孔34の内方側に嵌め込まれるように、末広がり形状の略台形円筒形状のゴム製部材で構成している。この弁パッキン4には、中央に軸方向に延びる貫通孔41を形成している。
【0030】
この弁パッキン4は、操作スピンドル3に連動して軸方向に移動する。そして、弁パッキン4を、連通穴24を封鎖するように仕切り壁部23に当接させることで、上流側通路部21と下流側通路部22を閉鎖して(図2参照)、仕切り壁部23から離間させることで、上流側通路部21と下流側通路部22を連通させて(図1参照)、水栓弁として機能させている。
【0031】
前述の吸気プレート6は、弁パッキン4の外方側に位置するドーナツプレート状の金属板で構成している。この吸気プレート6は、操作スピンドル3の内周段差部35と弁パッキン4との間で弾性的に挟持されている。そして、この弁パッキン4の貫通孔41を通じて上流側通路部21内の圧力変化を受けるように構成している。
【0032】
前述の吸気ピストン5は、吸気プレート6の外方側に位置する略分銅形状の金属部材で構成している。この吸気ピストン5の内部には、内方側(下方側)に開口する縦孔51と、縦孔51先端に連通する横貫通孔52を形成している。この縦孔51と横貫通孔52は、外気を取り入れる吸気通路として機能している。
【0033】
また、吸気ピストン5の外方側傾斜面53には、ゴム製のOリング54を組み付けている。このOリング54は、吸気ピストン5が操作スピンドル3の内周傾斜面36に押圧された際に(外方側に押圧された際に)、内周傾斜面36に当接して、外方側と内方側をシールするようにしている。
すなわち、上流側通路部21に水が充填されて圧力がかかった状態(図2の状態)では、吸気ピストン5が外方側(上方側)に押圧されることで、Oリング54が内周傾斜面36に当接して、外部への水漏れを防いでいるのである。
【0034】
この吸気ピストン5の上方には、吸気孔の先端空間部34cが形成されており、この先端空間部34cは、操作スピンドル3の径方向に貫通する外部貫通路37を介して外部に連通している。この外部貫通路37は、操作スピンドル3の側周面に180度間隔で開放する二箇所の開口38a,38bを有している。
【0035】
そして、この外部貫通路37の開口38a,38bは、弁パッキン4が閉鎖位置にあるときに(図2の位置)、前述の環状のパッキン部材7よりも内方側(下方側)に位置するように設定している。
このように、開口38a,38bをパッキン部材7よりも内方側に設定しても、その外周側空間39が、水栓本体1の内ネジ13と操作スピンドル3の外ネジ33との間の隙間を介して、下流側通路部22と連通しているため、外気を取り入れることができる。
【0036】
次に、このように構成した水栓装置の吸気弁(5,6)の作動状態を説明する。
【0037】
図2に示すように、上流側通路部21に水が充填されている通常時において、水栓装置の吸気ピストン5及び吸気プレート6には、高圧(正圧)が作用しているため、外方側(上方側)に押圧される。このため、吸気ピストン5のOリング54は内周傾斜面36に当接して、操作スピンドル3内からの水漏れを防いでいる。
よって、通常時においては、操作スピンドル3から水漏れは生じない。
【0038】
一方、図3に示すように、不凍水栓柱の切換え弁(図5参照)によって、上流側通路部21から水が排出される排水時においては、水栓装置の吸気ピストン5及び吸気プレート6には、負圧が作用するため、内方側(下方側)に引き込まれる。このため、吸気ピストン5のOリング54は、内周傾斜面36から離間して、この間に通気空間wを形成することになる。よって、排水時には、外部から空気を吸込むことができ、円滑に排水を行うことができる。
このように、この水栓装置では、水栓装置としての機能を確保しながら、不凍水栓柱の排水効果を高めている。
【0039】
ところで、この水栓装置のOリング54が経年劣化した場合には、図4に示すような状態になる。すなわち、Oリング54′が経年劣化すると、Oリング54′の弾性力が低下して、断面形状も楕円状等に変化することになる。
【0040】
このため、上流側通路部21に水が充填されている通常時であっても、吸気ピストン5のOリング54′が内周傾斜面36に当接せずに、隙間w′が生じることになる。そして、この隙間から上流側通路部21の水が吸気孔34の先端空間部34cに流れ出て、外部貫通路37を介して、操作スピンドル3の外部に流れ出ることになる(矢印参照)。
【0041】
もっとも、この実施形態では、外部貫通路37の開口38a,38bが環状のパッキン部材7よりも内方側(下方側)に位置するように設定されているため、流れ出た水が操作スピンドル3の外方側(上方側)に漏れることはない。
【0042】
このように、操作スピンドル3の外方側から水が漏れ出ることがないため、水が外部に大きく飛散することもないため、操作者等が、水漏れを強く意識することを防止できる。
【0043】
なお、この流れ出た水は、水栓本体1の内ネジ13と操作スピンドル3の外ネジ33との間を経由して、下流側通路部22に流れ出て、図示しないシンク内に滴下することになる。
【0044】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0045】
この実施形態では、弁パッキン4が閉鎖位置(図2の位置)にあるときに、操作スピンドル3の外部貫通路37の開口38a,38bが、パッキン部材7より内方側に位置するように設定している。
これにより、Oリング54が経年劣化して、上流側通路部21から高圧(正圧)が作用した際、又はゴミかみで吸気ピストン5が上方に移動しにくくなった際に、操作スピンドル3の外部貫通路37の開口38a,38bから、水が漏れたとしても、外方側に位置するパッキン部材7によってシールされる。
このため、操作スピンドル3の外部貫通路37の開口38a,38bから水が漏れたとしても、操作スピンドル3の外方側からの水漏れを防ぐことができる。
よって、不凍水栓柱等に用いられる水栓装置において、Oリング54の経年劣化やゴミかみがあった場合でも、操作スピンドル3の外方側(上方側)で水漏れが生じないため、商品性を高めることができる。
【0046】
また、この実施形態では、弁パッキン4が開放位置(図1の位置)にあるときでも、操作スピンドル3の外部貫通路の開口38a,38bが、パッキン部材7より内方側に位置するように設定している(図1参照)。
これにより、弁パッキン4の開放状態においても、操作スピンドル3の外部貫通路37の開口38a,38bから漏れる水が、外方側に位置するパッキン部材7でシールされることになる。
よって、弁パッキン4の開放時も含めて、確実に操作スピンドル3の外方側からの水漏れを防ぐことができる。
【0047】
また、この実施形態では、操作スピンドル3の外部貫通路37の開口38a,38bを、操作スピンドル3の側周面に180度間隔で二箇所に形成している。
これにより、操作スピンドル3の外部貫通路37の開口38a,38bから水が漏れる場合であっても、両開口38a,38bからの吐出圧が相殺されるため、操作スピンドル3が径方向に変動することはない。
このため、操作スピンドル3の外部貫通路37の開口38a,38bから水が漏れたとしても、操作スピンドル3が径方向で変動せず、その位置が維持されるため、パッキン部材7のシール性が変化することがなく、確実にシール性能を維持できる。
よって、操作スピンドル3の外方側からの水漏れを、より確実に防ぐことができる。
【0048】
また、この実施形態の水栓装置を、図5に示したような、不凍水栓柱に用いてもよい。すなわち、この水栓装置(100に対応)の上流側に位置する水路102の途中に分岐するように排水路102´を設けて、この排水路102´を用いて水路102内の水を外部に排出する切換え弁103を設け、さらに、その切換え弁103を水排出時に切換え操作する操作ノブ104を設けた不凍水栓柱に用いるのである。
このように、不凍水栓柱に用いた場合にも、水栓装置のからの水漏れを防止することで不凍水栓柱自体の商品性を高めることができる。
なお、この不凍水栓柱の切換え弁103については、高低差を利用して排水を行なうように構成しているが、別途、負圧を発生させる機構等を用いて排水するように構成してもよい。
【0049】
以上、この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の水栓弁は、実施形態の弁パッキン4に対応し、
以下、同様に、
上流側水路は、上流側連通路21に対応し、
下流側水路は、下流側連通路22に対応し、
軸部材は、操作スピンドル3に対応し、
吸気弁は、吸気ピストン5及び吸気プレート6に対応し、
外部側開口は、外部貫通路の開口38a,38bに対応し、
シール部材は、パッキン部材7に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、軸部材の外部側開口は、一つであってもよいし、また、水栓弁の閉鎖時にのみに外部側開口がシール部材より内方側に位置するように設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施形態の水栓装置の全体断面図。
【図2】吸気弁閉鎖時の水栓装置の要部詳細断面図。
【図3】吸気弁開放時の水栓装置の要部詳細断面図。
【図4】Oリングが経年劣化した際の水栓装置の要部詳細断面図。
【図5】不凍水栓柱の一例を示す模式図。
【図6】スピンドルに従来構造の吸気孔を設けた場合の水栓装置の詳細構造。
【符号の説明】
【0051】
1…水栓本体
2…操作ハンドル
3…操作スピンドル
4…弁パッキン
5…吸気ピストン
6…吸気プレート
7…パッキン部材
21…上流側連通路
22…下流側連通路
34…吸気孔
37…外部貫通路
38a…開口
38b…開口
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、水道の凍結を防ぐ不凍水栓柱等に用いられる水栓装置及びこれを用いた水抜きシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寒冷地などにおいては、水道の凍結を防ぐために、いわゆる不凍水栓柱を用いることが知られている。この不凍水栓柱は、水栓装置の不使用時に水栓装置に水を導入する水道(水路)内の水を外部に排出することにより、水の凍結を防いでいる。
【0003】
不凍水栓柱の一例を、図5に示す模式図によって説明する。
地面Gに対して上下方向に延びるように設置された水栓柱本体100には、水栓装置(カラン)101が設けられており、通常時には、水栓柱本体100の内部に設けた水路102によって導かれる水Rが、水栓装置101から吐出されるように構成している。
この水栓柱本体100の上部には、水路102の途中に設けた切換え弁103を切換え操作する操作ノブ104を設けており、この操作ノブ104によって、切換え弁103を切換えた場合には、水路102の水R′を途中で堰き止めると共に、水栓柱本体100内の水路102の水R′を排出路102′から外部に排出するように構成している(なお、この「外部」には地中も含まれる)。
なお、このとき、水栓装置101の操作ハンドルを開放操作することで、水路102内に外気を導入すること等が知られている。
【0004】
ところで、下記特許文献1には、水栓装置内に残留する水も外部に排出するために、操作ハンドルを固定するスピンドル(栓棒)に、軸方向に延びる吸気孔を設け、この吸気孔を通じて外気を導入するようにしたものが、開示されている。
【特許文献1】実開昭49−110327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述のように、水栓装置101の操作ハンドルを開放操作することで、水路102内に外気を導入する場合には、操作ハンドルの開放操作を忘れると、水路内の水が排出されずに水道が凍結するおそれがある。
そこで、例えば、水栓装置101に、自動的に水路102内に外気を導入する吸気弁105を設けて、水R′の外部への排出を円滑に行なうことが考えられる。
【0006】
ここで、図6で、スピンドルに外気を導入する吸気孔を形成して吸気弁を設けた場合の水栓装置の詳細構造について、説明する。
この水栓装置101においては、水栓本体110に設けた上流側通路部111と下流側通路部112との間に、スピンドル113と一体となった水栓弁114を設け、この水栓弁114とスピンドル113に、上流側通路部111と連通した軸方向に延びる吸気孔115,116を設ける共に、この吸気孔115,116の内部に吸気弁となる吸気ピストン117と吸気プレート118を設けることが考えられる。
【0007】
この水栓装置101の上流側の水が、図示しない切換え弁(図5の103)によって外部に排出された場合には、上流側通路部111に負圧が発生するため、吸気弁の吸気ピストン117と吸気プレート118が内方側(下方側)に引き込まれることになり、自動的にスピンドル113の吸気孔116から上流側通路部111に、外気が導入されることになる。
【0008】
そして、このスピンドル113の吸気孔116の開口119は、できるだけ外気を導入しやすいように、スピンドル113の中間位置に設けられるシール部材(パッキン)120よりも外方側(上方側)に設定することが考えられる。
【0009】
しかし、このように、スピンドル113の吸気孔116の開口119をシール部材120よりも外方側に設定すると、以下のような問題が生じるおそれがある。
すなわち、吸気ピストン117のOリング121が、経年劣化によってシール性を維持できない状態になった場合や、ゴミかみが生じて吸気ピストン117が上方に移動しにくくなった場合には、上流側通路部111に水が導入されて高圧となった場合に、吸気ピストン117が外方側(上方側)に移動したとしても、Oリング121の部分から水が吹き出し、スピンドル113の吸気孔116の開口119から水が漏れる状態となってしまい、水漏れ状態がスピンドル113の外方側(上方側)で生じてしまうのである。
【0010】
そこで、この発明は、不凍水栓柱等に用いられる水栓装置において、シール部材等の経年劣化があった場合等でも、スピンドルの外方側(上方側)で水漏れが生じないようにして、商品性を高めることができる水栓装置及びこれを用いた水抜きシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、外部に水を排出できる切換え弁を上流側に備える水栓装置であって、前記水栓装置には、上流側水路と下流側水路との間に設置される水栓弁と、該水栓弁を開閉操作する操作ハンドルと、該操作ハンドルと前記水栓弁との間に設けられ、軸方向に移動することで操作ハンドルからの操作力を水栓弁に伝達する軸部材と、該軸部材の内部に軸方向に延びるように形成されて、前記上流側水路と外部とを連通する吸気孔と、該吸気孔の内部に設置されて、上流側水路の水が外部に排出される際には、上流側水路と外部とを連通して上流側通路に外気を取り入れる吸気弁とを備えており、前記水栓弁の閉鎖時には、前記吸気孔の外部側開口が、軸部材の中間位置でシールするシール部材より内方側に位置するように設定したものである。
【0012】
この構成によれば、水栓弁の閉鎖時には、軸部材の外部側開口がシール部材より内方側に位置するため、Oリング等が経年劣化することで、上流側水路から高圧(正圧)が作用した際に、軸部材の外部側開口から水が漏れたとしても、外方側に位置するシール部材によってシールされることになる。
このため、軸部材の外部側開口から水が漏れたとしても、軸部材の外方側からの水漏れを防ぐことができる。
【0013】
なお、軸部材の外部側開口から漏れる水は、軸部材の内方側に流れて下流側水路を経由して水栓装置の吐出口からシンク内に流れ出ることになるが、軸部材の外方側から水漏れする場合のように、水が外部に大きく飛散することもないため、水栓装置の商品性を悪化させることはない。
【0014】
この発明の一実施態様としては、前記水栓弁の開放時にも、前記吸気孔の外部側開口が、前記シール部材より内方側に位置するように設定したものである。
この構成によれば、水栓弁の開放時にも、軸部材の外部側開口がシール部材よりも内方側に位置するため、水栓弁の開放状態においても、軸部材の外部側開口から漏れる水は、外方側に位置するシール部材によってシールされる。
よって、水栓弁の閉鎖時、開放時、いずれの場合であっても、確実に軸部材の外方側からの水漏れを防ぐことができる。
【0015】
この発明の一実施態様としては、前記吸気孔の外部側開口を、前記軸部材の側周面に、約180度間隔で二箇所に形成したものである。
この構成によれば、軸部材の外部側開口が、軸部材の側周面に約180度間隔で二箇所に形成されることで、外部側開口から水が漏れる場合であっても、両開口からの吐出圧が相殺されるため、軸部材が径方向に変動することはない。
このため、軸部材の外部側開口から水が漏れたとしても、軸部材が径方向で変動せずに、その位置が維持されるため、シール部材のシール性が変化することがなく、確実にシール性能を維持できる。
よって、軸部材の外方側からの水漏れを、より確実に防ぐことができる。
【0016】
また、この発明は、前記水栓装置の上流側の上流側水路に分岐するように設けられ、水を外部に排出する排出路と、該排出路へ前記上流側水路内の水を排出して、前記水栓装置との間で負圧を生じさせる切換え弁と、該切換え弁を水排出時に切換え操作する操作部材とを備え、前記水栓装置を用いて水抜きを行なう、水抜きシステムである。
【0017】
この構成によれば、前述のような商品性の高い水栓装置を用いることで、水抜きシステムの商品性も、高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、シール部材が外方側に位置するため、軸部材の外部側開口から水が漏れたとしても、軸部材の外方側からの水漏れを防ぐことができる。
よって、不凍水栓柱等に用いられる水栓装置において、シール部材等の経年劣化があった場合でも、スピンドルの外方側(上方側)で水漏れが生じないようにして、商品性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の水栓装置の実施形態について、図面によって詳述する。図1はこの実施形態の水栓装置の全体断面図、図2は吸気弁閉鎖時の水栓装置の要部詳細断面図、図3は吸気弁開放時の水栓装置の要部詳細断面図、図4はOリングが経年劣化した際の水栓装置の要部詳細断面図である。
【0020】
この実施形態の水栓装置は、図1に示すように、鋳造成形等によって成形した金属製の水栓本体1と、操作者が操作する操作ハンドル2と、この操作ハンドル2に締結固定されて水栓本体1に組み付けられる操作スピンドル3とを備えている。
【0021】
そして、操作スピンドル3の内方側(図面で下方側)には、嵌め込み固定された水栓弁としての弁パッキン4と、弁パッキン4の外方側(図面で上方側)に設置されて、外気導入と外気遮断を切換える吸気弁としての吸気ピストン5及び吸気プレート6とを備えており、操作スピンドル3の中間位置には、操作スピンドル3の内方側と外方側とをシールする環状のパッキン部材7とを備えている。
【0022】
また、この環状のパッキン部材7の外方側には、このパッキン部材7を水栓本体1に固定するパッキン押え8を設けており、パッキン部材7の内方側には、ドーナツプレート状のパッキン受け9を設けている。
【0023】
さらに、水栓本体1の下流側(図面で右側)には、屈曲した筒状の先端パイプ部材10をパイプ用ナット11を介して回動自在に連結固定している。
【0024】
このうち、前述の水栓本体1は、略T字状の筒状部材で構成しており、内部には、上流側通路部21と下流側通路部22を形成して、両通路部21,22の間には、水平方向に延びる仕切り壁部23を形成している。そして、この仕切り壁部23には、上下方向に貫通する連通穴24を設けている。
また、水栓本体1の上流側(図面で左側)には、不凍水栓柱(図1では図示せず)に締結固定するために、締結ネジ部25と固定フランジ部26を形成している。
【0025】
上流側通路部21の下面21aは、上流側が下方に僅かに傾斜した傾斜勾配α(例えばα=3°)で、形成している。このように傾斜勾配αを設定することで、不凍水栓柱で上流側の水を外部に排出した際に、この上流側通路部21の水も外部に排出できるようにしている。
【0026】
前述の操作ハンドル2は、詳細には図示しないが、放射状に三方に広がる翼部2aを有する金属製のハンドル部材で構成している。この操作ハンドル2は、軸方向(上下方向)に延びる締結ボルトBで、操作スピンドル3に締結固定している。この操作ハンドル2を周方向に回転操作することで、操作スピンドル3を軸方向に移動できるように構成している。
【0027】
前述の操作スピンドル3は、図2に示すように、外方側の小径軸部31と、内方側の大径軸部32とを備えており、大径軸部32の外周面には、水栓本体1の上部12内面に形成した内ネジ13に螺合する外ネジ33を形成している。この外ネジ33に沿って操作スピンドル3を周方向に回転操作することで、操作スピンドル3が軸方向に移動するようにしている。
【0028】
操作スピンドル3には、軸方向に延びる吸気孔34を設けている。この吸気孔34は、外方側(上方側)34aが吸気ピストン5等を収容するように略円筒形状で形成されて、内方側(下方側)34bが弁パッキン4を嵌め込むように末広がりとなった略台形円筒形状で形成されている。
【0029】
前述の弁パッキン4は、この吸気孔34の内方側に嵌め込まれるように、末広がり形状の略台形円筒形状のゴム製部材で構成している。この弁パッキン4には、中央に軸方向に延びる貫通孔41を形成している。
【0030】
この弁パッキン4は、操作スピンドル3に連動して軸方向に移動する。そして、弁パッキン4を、連通穴24を封鎖するように仕切り壁部23に当接させることで、上流側通路部21と下流側通路部22を閉鎖して(図2参照)、仕切り壁部23から離間させることで、上流側通路部21と下流側通路部22を連通させて(図1参照)、水栓弁として機能させている。
【0031】
前述の吸気プレート6は、弁パッキン4の外方側に位置するドーナツプレート状の金属板で構成している。この吸気プレート6は、操作スピンドル3の内周段差部35と弁パッキン4との間で弾性的に挟持されている。そして、この弁パッキン4の貫通孔41を通じて上流側通路部21内の圧力変化を受けるように構成している。
【0032】
前述の吸気ピストン5は、吸気プレート6の外方側に位置する略分銅形状の金属部材で構成している。この吸気ピストン5の内部には、内方側(下方側)に開口する縦孔51と、縦孔51先端に連通する横貫通孔52を形成している。この縦孔51と横貫通孔52は、外気を取り入れる吸気通路として機能している。
【0033】
また、吸気ピストン5の外方側傾斜面53には、ゴム製のOリング54を組み付けている。このOリング54は、吸気ピストン5が操作スピンドル3の内周傾斜面36に押圧された際に(外方側に押圧された際に)、内周傾斜面36に当接して、外方側と内方側をシールするようにしている。
すなわち、上流側通路部21に水が充填されて圧力がかかった状態(図2の状態)では、吸気ピストン5が外方側(上方側)に押圧されることで、Oリング54が内周傾斜面36に当接して、外部への水漏れを防いでいるのである。
【0034】
この吸気ピストン5の上方には、吸気孔の先端空間部34cが形成されており、この先端空間部34cは、操作スピンドル3の径方向に貫通する外部貫通路37を介して外部に連通している。この外部貫通路37は、操作スピンドル3の側周面に180度間隔で開放する二箇所の開口38a,38bを有している。
【0035】
そして、この外部貫通路37の開口38a,38bは、弁パッキン4が閉鎖位置にあるときに(図2の位置)、前述の環状のパッキン部材7よりも内方側(下方側)に位置するように設定している。
このように、開口38a,38bをパッキン部材7よりも内方側に設定しても、その外周側空間39が、水栓本体1の内ネジ13と操作スピンドル3の外ネジ33との間の隙間を介して、下流側通路部22と連通しているため、外気を取り入れることができる。
【0036】
次に、このように構成した水栓装置の吸気弁(5,6)の作動状態を説明する。
【0037】
図2に示すように、上流側通路部21に水が充填されている通常時において、水栓装置の吸気ピストン5及び吸気プレート6には、高圧(正圧)が作用しているため、外方側(上方側)に押圧される。このため、吸気ピストン5のOリング54は内周傾斜面36に当接して、操作スピンドル3内からの水漏れを防いでいる。
よって、通常時においては、操作スピンドル3から水漏れは生じない。
【0038】
一方、図3に示すように、不凍水栓柱の切換え弁(図5参照)によって、上流側通路部21から水が排出される排水時においては、水栓装置の吸気ピストン5及び吸気プレート6には、負圧が作用するため、内方側(下方側)に引き込まれる。このため、吸気ピストン5のOリング54は、内周傾斜面36から離間して、この間に通気空間wを形成することになる。よって、排水時には、外部から空気を吸込むことができ、円滑に排水を行うことができる。
このように、この水栓装置では、水栓装置としての機能を確保しながら、不凍水栓柱の排水効果を高めている。
【0039】
ところで、この水栓装置のOリング54が経年劣化した場合には、図4に示すような状態になる。すなわち、Oリング54′が経年劣化すると、Oリング54′の弾性力が低下して、断面形状も楕円状等に変化することになる。
【0040】
このため、上流側通路部21に水が充填されている通常時であっても、吸気ピストン5のOリング54′が内周傾斜面36に当接せずに、隙間w′が生じることになる。そして、この隙間から上流側通路部21の水が吸気孔34の先端空間部34cに流れ出て、外部貫通路37を介して、操作スピンドル3の外部に流れ出ることになる(矢印参照)。
【0041】
もっとも、この実施形態では、外部貫通路37の開口38a,38bが環状のパッキン部材7よりも内方側(下方側)に位置するように設定されているため、流れ出た水が操作スピンドル3の外方側(上方側)に漏れることはない。
【0042】
このように、操作スピンドル3の外方側から水が漏れ出ることがないため、水が外部に大きく飛散することもないため、操作者等が、水漏れを強く意識することを防止できる。
【0043】
なお、この流れ出た水は、水栓本体1の内ネジ13と操作スピンドル3の外ネジ33との間を経由して、下流側通路部22に流れ出て、図示しないシンク内に滴下することになる。
【0044】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0045】
この実施形態では、弁パッキン4が閉鎖位置(図2の位置)にあるときに、操作スピンドル3の外部貫通路37の開口38a,38bが、パッキン部材7より内方側に位置するように設定している。
これにより、Oリング54が経年劣化して、上流側通路部21から高圧(正圧)が作用した際、又はゴミかみで吸気ピストン5が上方に移動しにくくなった際に、操作スピンドル3の外部貫通路37の開口38a,38bから、水が漏れたとしても、外方側に位置するパッキン部材7によってシールされる。
このため、操作スピンドル3の外部貫通路37の開口38a,38bから水が漏れたとしても、操作スピンドル3の外方側からの水漏れを防ぐことができる。
よって、不凍水栓柱等に用いられる水栓装置において、Oリング54の経年劣化やゴミかみがあった場合でも、操作スピンドル3の外方側(上方側)で水漏れが生じないため、商品性を高めることができる。
【0046】
また、この実施形態では、弁パッキン4が開放位置(図1の位置)にあるときでも、操作スピンドル3の外部貫通路の開口38a,38bが、パッキン部材7より内方側に位置するように設定している(図1参照)。
これにより、弁パッキン4の開放状態においても、操作スピンドル3の外部貫通路37の開口38a,38bから漏れる水が、外方側に位置するパッキン部材7でシールされることになる。
よって、弁パッキン4の開放時も含めて、確実に操作スピンドル3の外方側からの水漏れを防ぐことができる。
【0047】
また、この実施形態では、操作スピンドル3の外部貫通路37の開口38a,38bを、操作スピンドル3の側周面に180度間隔で二箇所に形成している。
これにより、操作スピンドル3の外部貫通路37の開口38a,38bから水が漏れる場合であっても、両開口38a,38bからの吐出圧が相殺されるため、操作スピンドル3が径方向に変動することはない。
このため、操作スピンドル3の外部貫通路37の開口38a,38bから水が漏れたとしても、操作スピンドル3が径方向で変動せず、その位置が維持されるため、パッキン部材7のシール性が変化することがなく、確実にシール性能を維持できる。
よって、操作スピンドル3の外方側からの水漏れを、より確実に防ぐことができる。
【0048】
また、この実施形態の水栓装置を、図5に示したような、不凍水栓柱に用いてもよい。すなわち、この水栓装置(100に対応)の上流側に位置する水路102の途中に分岐するように排水路102´を設けて、この排水路102´を用いて水路102内の水を外部に排出する切換え弁103を設け、さらに、その切換え弁103を水排出時に切換え操作する操作ノブ104を設けた不凍水栓柱に用いるのである。
このように、不凍水栓柱に用いた場合にも、水栓装置のからの水漏れを防止することで不凍水栓柱自体の商品性を高めることができる。
なお、この不凍水栓柱の切換え弁103については、高低差を利用して排水を行なうように構成しているが、別途、負圧を発生させる機構等を用いて排水するように構成してもよい。
【0049】
以上、この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の水栓弁は、実施形態の弁パッキン4に対応し、
以下、同様に、
上流側水路は、上流側連通路21に対応し、
下流側水路は、下流側連通路22に対応し、
軸部材は、操作スピンドル3に対応し、
吸気弁は、吸気ピストン5及び吸気プレート6に対応し、
外部側開口は、外部貫通路の開口38a,38bに対応し、
シール部材は、パッキン部材7に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、軸部材の外部側開口は、一つであってもよいし、また、水栓弁の閉鎖時にのみに外部側開口がシール部材より内方側に位置するように設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施形態の水栓装置の全体断面図。
【図2】吸気弁閉鎖時の水栓装置の要部詳細断面図。
【図3】吸気弁開放時の水栓装置の要部詳細断面図。
【図4】Oリングが経年劣化した際の水栓装置の要部詳細断面図。
【図5】不凍水栓柱の一例を示す模式図。
【図6】スピンドルに従来構造の吸気孔を設けた場合の水栓装置の詳細構造。
【符号の説明】
【0051】
1…水栓本体
2…操作ハンドル
3…操作スピンドル
4…弁パッキン
5…吸気ピストン
6…吸気プレート
7…パッキン部材
21…上流側連通路
22…下流側連通路
34…吸気孔
37…外部貫通路
38a…開口
38b…開口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に水を排出できる切換え弁を上流側に備える水栓装置であって、
前記水栓装置には、上流側水路と下流側水路との間に設置される水栓弁と、
該水栓弁を開閉操作する操作ハンドルと、
該操作ハンドルと前記水栓弁との間に設けられ、軸方向に移動することで操作ハンドルからの操作力を水栓弁に伝達する軸部材と、
該軸部材の内部に軸方向に延びるように形成されて、前記上流側水路と外部とを連通する吸気孔と、
該吸気孔の内部に設置されて、上流側水路の水が外部に排出される際には、上流側水路と外部とを連通して上流側通路に外気を取り入れる吸気弁とを備えており、
前記水栓弁の閉鎖時には、前記吸気孔の外部側開口が、軸部材の中間位置でシールするシール部材より内方側に位置するように設定した
水栓装置。
【請求項2】
前記水栓弁の開放時にも、前記吸気孔の外部側開口が、前記シール部材より内方側に位置するように設定した
請求項1記載の水栓装置。
【請求項3】
前記吸気孔の外部側開口を、前記軸部材の側周面に、約180度間隔で二箇所に形成した
請求項1又は2記載の水栓装置。
【請求項4】
前記水栓装置の上流側の上流側水路に分岐するように設けられ、水を外部に排出する排出路と、
該排出路へ前記上流側水路内の水を排出して、前記水栓装置との間で負圧を生じさせる切換え弁と、
該切換え弁を水排出時に切換え操作する操作部材とを備え、
前記請求項1〜3いずれかに記載の水栓装置を用いて水抜きを行なう、
水抜きシステム。
【請求項1】
外部に水を排出できる切換え弁を上流側に備える水栓装置であって、
前記水栓装置には、上流側水路と下流側水路との間に設置される水栓弁と、
該水栓弁を開閉操作する操作ハンドルと、
該操作ハンドルと前記水栓弁との間に設けられ、軸方向に移動することで操作ハンドルからの操作力を水栓弁に伝達する軸部材と、
該軸部材の内部に軸方向に延びるように形成されて、前記上流側水路と外部とを連通する吸気孔と、
該吸気孔の内部に設置されて、上流側水路の水が外部に排出される際には、上流側水路と外部とを連通して上流側通路に外気を取り入れる吸気弁とを備えており、
前記水栓弁の閉鎖時には、前記吸気孔の外部側開口が、軸部材の中間位置でシールするシール部材より内方側に位置するように設定した
水栓装置。
【請求項2】
前記水栓弁の開放時にも、前記吸気孔の外部側開口が、前記シール部材より内方側に位置するように設定した
請求項1記載の水栓装置。
【請求項3】
前記吸気孔の外部側開口を、前記軸部材の側周面に、約180度間隔で二箇所に形成した
請求項1又は2記載の水栓装置。
【請求項4】
前記水栓装置の上流側の上流側水路に分岐するように設けられ、水を外部に排出する排出路と、
該排出路へ前記上流側水路内の水を排出して、前記水栓装置との間で負圧を生じさせる切換え弁と、
該切換え弁を水排出時に切換え操作する操作部材とを備え、
前記請求項1〜3いずれかに記載の水栓装置を用いて水抜きを行なう、
水抜きシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2009−256946(P2009−256946A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106371(P2008−106371)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000134811)株式会社ナニワ製作所 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000134811)株式会社ナニワ製作所 (13)
【Fターム(参考)】
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