説明

水槽底面用ろ過ブロック

【課題】 従来のろ過材及び水槽用ろ過システムは、水槽メンテナンス時の手間と時間を要することや、演出力、意匠性を損なうという問題があった。これは、水質の安定と維持を目的として、ろ過機能を重視するためである。
【解決手段】通水(透水)能力を有するケースの中に、水槽内の水、生体、生息環境などを向上、維持するための効能石等を収納し、砂利などの意匠性のある素材を通水(透水)可能な状態で固形化し、蓋状に被せる形で一体化したものを作る。このブロックを水槽内底面全体に隙間なく配置し、水槽内の水を循環させることでブロック体にろ過機能を与える。ブロック化することにより、水槽内からの取り出し(移動)や清掃が容易化できる。更に、表層部の意匠素材が演出力、意匠性の向上を果たし、内容素材である効能石が水質の安定、維持の機能をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽内で使用する意匠材及びろ過材又はそれを要する水槽底面式ろ過装置に係り、特に鑑賞用水槽の水槽底面用ろ過材及びろ過装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水生生物を飼育する鑑賞用水槽には、水槽内生物の生活に適した水環境を作り出し、それを維持するためのろ過装置が用いられる。又、人間的視野から鑑賞用として水槽を演出し楽しむための意匠用の材料、方法も用いられる。
【0003】
ろ過装置は、水槽内の汚水を装置内部のろ過材によって構成されたろ過層を通過させ不純物を取り除くことや、ろ過層に着床した微生物により水、生体に悪影響を及ぼす化学成分等を分解することで、綺麗な水とし水槽内へと戻す構造を要する。
【0004】
上記のろ過装置には、水槽外部にろ過装置を設置する外部式ろ過装置、水槽の上にろ過装置を設置する上部式ろ過装置、水中にろ過装置を設置する水中式ろ過装置などがあり、水中式ろ過装置には、水槽内壁面等に装置を設置するものと水槽底面に通水機能のある板状に形成されたものを設置し、その上に微生物の繁殖場所ともなる砂利やろ過装置でも使用するろ過材を敷き詰めた水槽底面式ろ過装置がある。
【0005】
上記装置の中で、水中式ろ過装置は、水槽外部にろ過装置を設置しないために、水槽外観の意匠性や水槽を設置した空間のデザイン性の向上、更には水槽外部の省スペース化を図れることなど利点がある反面、水槽内のスペースを狭めてしまうことや、水槽内の意匠性低下、水槽内の清掃及び水替え時にろ過装置が邪魔になるという問題がある。この問題を考慮し、水槽内のスペース確保を目的に、前述に記載した底面式ろ過装置がある。
【0006】
以下、図10により従来の水槽底面式ろ過装置の詳細を説明する。図に於いて、水槽16内の水30は、水槽底面20の上に設置された通水(透水)する孔3を設けた底板19とその上に敷き詰められた砂利やろ過材の層(以下、底砂層18とする)を通り、水槽底面20と底板19の隙間のろ過された水12をポンプ等13によって吸い上げ、通水パイプ14を通って噴出口15より水槽内へと戻る水循環31の構造となっている。
【0007】
従来の水槽底面式ろ過装置の発展型として、水槽内の演出・意匠性向上を目的として底砂層18の上に、演出用の意匠性を考慮した素材の層17を敷き詰める場合や、その上層17に異なる材質や色の素材を用いる場合がある。
【0008】
更には、演出・意匠性は見込めないものの、水槽管理上の手間を省くことを目的として、外部式や上部式ろ過装置に使用されるろ過材に底板19の機能を付加し、水槽底面式ろ過装置として水循環31を行う方法もある。この場合はメンテナンスの簡易化が目的であるため、底砂層18、上層17を使用しない場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−24204 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上に述べた、従来の水槽底面ろ過システムでは、第一に、水質向上を図る場合に於いて、微生物(バクテリア)の繁殖を促すことを目的とし、底砂層18に砂利や水質向上のための効能石などを大量に敷き詰める。しかし、水槽16をメンテナンスする上で、底砂層18を水槽16から取り出すことや、底砂層18の砂利やろ過材等そのものを洗浄する際に手間と時間がかかってしまう。
【0011】
第二に、底砂層18の砂利やろ過材を洗浄する際に、底砂層18に繁殖(着床)した微生物(バクテリア)を一緒に流してしまい、水槽16及び底砂層18のメンテナンス後に投入する水30に対する浄化能力を損なってしまうことになり、水槽内生態の健康と生息環境の悪化を招くこととなる。
【0012】
第三に、一般的な鑑賞魚用水槽に於いては、インテリアの一部として美観を追求し、演出するが、底砂層18に複数の演出用素材を使用する場合や、演出用素材の上層17と水質向上用素材の底砂層18を併せて使用した場合に、時間の経過とともに、複数の素材が混ざってしまうため美観の維持が困難である。
【0013】
第四に、前述の複数の素材が混ざる問題を懸念し、底砂層18に使用する素材を一種類に限定して使用することとなるため、結果的にインテリアとしての演出方法も限定されてしまうことになる。
【0014】
第五に、底砂層18は、主に水圧等の影響によって時間の経過とともに、底砂層18内の微生物(バクテリア)等の繁殖場所である隙間が少なくなり通水機能が低下するため、ろ過材としてのろ過能力の低下やろ過装置のポンプ等13に負担がかかり、水循環機能にも悪影響を及ぼす。
【0015】
本発明は、上述の様な従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、以下の記述に於いて示すとおりの効果を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は前述までの課題を解決するために、脚付の通水(透水)する孔を要するケースの内部に、水質改善、安定を促すろ過材や効能石等を収納し、その上部(ケース表層部)を、通水(透水)可能な状態及び多孔質状に接着によって固めた意匠性のある素材で蓋をした水槽底面用ろ過ブロックである。
【0017】
上記の課題解決手段による作用は次の通りである。本発明は、従来の底面式ろ過装置の底砂層18に敷き詰められる素材を前述の方法でブロック化することで、メンテナンス時に於いて、その素材の取り出し(移動)と洗浄等が容易となるため、手間と時間を省くことが可能となる。
【0018】
ケースの内容物は、その効能を得られる状態のそのままで、表層部は通水(透水)可能な多孔質状に接着によって固め蓋をした状態でブロック化しているため、内容物の効能を十分に活かした状態で微生物(バクテリア)の繁殖場所を確保できる。更に、表層部のみ洗浄することで、繁殖した微生物を洗い流す量を最小限に抑えることが出来る。
【0019】
表層部は通水(透水)可能な多孔質状で接着により固形化しているため、異なる材質、色の表層素材同士や表層素材と効能石等の内容素材が混合しないことで、水槽の演出、美観を追及し、楽しむことができる。
【0020】
更に、表層部は通水(透水)可能な多孔質状で接着し固形化しているため、水圧などによる経年変化に強く、長期的に微生物(バクテリア)の繁殖場所である隙間を維持し、ろ過能力を持続することが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明は従来の水槽に使用される砂利やろ過材、効能石などを上述の方法でブロック化していることから、水槽のメンテナンス時の手間や時間を省くこと、インテリアとしての美観や演出を楽しめること、ろ過機能や水質向上の能力を最大限に活かせる効果が見込める。
【0022】
更に、他のろ過システムの補助具として使用することで、ろ過装置の負担を軽くし、省エネルギー効果も見込める。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の立体外観図
【図2】本発明上面から見た平面図
【図3】本発明側面から見た平面図
【図4】本発明裏面から見た平面図
【図5】本発明の図2におけるA−A線断面図
【図6】本発明の図5における構造分解断面図
【図7】本発明の吸水孔を要する形態を示す図面
【図8】本発明の水槽内での実施形態を示す構成図
【図9】本発明を用いた水槽底面式ろ過装置の水循環を示す構成図
【図10】従来の水槽底面式ろ過装置の水循環を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以上に説明した、従来のろ過装置が有する問題点を解決するために、図面を参照して、本発明に係る水槽底面用ろ過ブロックの実施形態について説明する。(図の解説に於いて、本発明22とする。)
【0025】
図1は、本発明22の外観立体形状を示しており、本発明22は、表層部1、内容素材部11、ケース2の部位により構成されている。
【0026】
図2は、本発明22の上面形状を示しており、表層部1は、意匠性を考慮した素材を通水(透水)可能な多孔質状に接着し、ケース2の上部を蓋状に固定している。
【0027】
図3は、本発明22の側面形状を示しており、ケース2の側面5に通水(透水)する孔3を設け、表層部1から浸入した水がケース2の外へ流出し易くする機能を有している。又、(後の説明で示す図9の)水槽底面20と本発明22との隙間を作るために脚4を設けている。
【0028】
図4は、本発明22の裏面形状を示しており、(図3で示した)側面5と同様にケース2の裏面6にも通水(透水)する孔3を設け、脚4を裏面6の四隅に設けている。
【0029】
図5は、図1におけるA―A線の断面図で、本発明の内部構造を示している。通水(透水)孔3を要したケース2の中に水質浄化等の作用がある効能素材9で構成される内容素材部11を収納し、その上部の表層部1は、意匠性のある粒状の素材7を接着剤8によって通水(透水)可能な多孔質状に結合し、蓋状に被せる形で一体化したものである。又、ケース2は、固形化されていない各々が独立した効能素材9を纏めて一体化させる役割も担っている。
【0030】
図6は、図5における本発明の内部構造を分解した図で、表層部1の意匠素材7aと意匠素材7bは一般的な鑑賞魚用水槽に使用される砂利(自然石)、粒状のガラス、樹脂、木など、粒状の大きさで接着剤8によって接着可能であれば、様々な素材が使用できる。又、色に関しても、隣接する7a、7b同士が接着によって固定され混ざり合わないため、複数の色を使ってデザインすることが出来、長期に渡ってデザインの維持が可能となる。更に、図8で示す本発明22の構成によると、水槽底面20にてデザインし演出することも可能となる。
【0031】
内容素材部11には、水槽16内の水30、生体や生息環境などを改善、維持するための粒状の効能素材9を用いており、効能素材9同士の間に通水と微生物(バクテリア)の繁殖場所となる隙間10が確保できる。これらの効能素材9の効果を活かしつつ、本発明22の最も重要な特徴であるブロック化を実現するために、内容素材部11の固形化が必須となるが、効能素材9の効果を得易くするために、接着などの方法で固形化せず、ケース2を用いてその中に収納することで一体化を図っている。
【0032】
効能素材9には、水槽内の環境に有効な自然石9aや化学物質9bなどの異なった素材を併用することも出来る。又、効能素材9の代わりに、一般的なろ過装置に使用されるろ過材(ポリウレタンのスポンジ状のものやセラミック製のもの)などを内容素材部11として収納することも可能である。
【0033】
図7は、吸水口23を設けた本発明22の構造を示している。吸水口23は表層部1からケース2の裏面6まで貫通している孔であり、水槽底面20上のろ過された水12をポンプ等13によって吸い上げるために設けられたものである。
【0034】
図8は、水槽内での本発明22の実施形態を示しており、本発明22を水槽内側壁面21に沿って本発明22a、22b、22cの様に水槽底面20の上全体に設置する。本発明22cは前述の説明で示した吸水口23を有する本発明22の形態である。
【0035】
図9に於いて、本発明22を用いた水槽底面式ろ過装置について説明する。水槽16内の水30は、水槽底面20の上に設置された本発明22を通り、本発明22の脚4によって作られる水槽底面20と本発明22の裏面6との隙間へろ過される。ろ過された水12は、本発明22cに設けた吸水口23に接合している通水パイプ14を経由して、ポンプ等13によって吸い上げられ、水槽16上部の噴出口15より水槽内へと戻る水循環31の構造となっている。
【0036】
水循環31の際に、側壁面21と本発明22との隙間から水30がろ過されずに水槽底面20上の隙間へ浸入することを防ぐために、スポンジや綿状のシール材24で隙間を埋める。
【符号の説明】
【0037】
1 表層部
2 ケース
3 通水(透水)する孔
4 脚
5 ケース2の側面
6 ケース2の裏面
7a 意匠素材
7b 意匠素材
8 接着剤
9a 効能素材
9b 効能素材
10 効能素材9同士の隙間
11 内容素材部
12 ろ過された水
13 ポンプ等
14 通水パイプ
15 噴出口
16 水槽
17 底砂層の上層
18 底砂層
19 底板
20 水槽底面
21 水槽内側壁面
22a 水槽底面用ろ過ブロック
22b 水槽底面用ろ過ブロック
22c 水槽底面用ろ過ブロック
23 吸水口
24 シール材
30 水槽内の水
31 水循環

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水(透水)するケースの内部に、水質改善、安定を促すろ過材や効能石等を収納するスペースを有し、それらの上部(ケース表層部)を、通水(透水)可能な状態又は多孔質状に固めた意匠性のある素材で蓋をした水槽底面用ろ過ブロック。
【請求項2】
水が循環する際に、水槽底面とケース底面の間に隙間をつくり、水が流れ易くなるために、ケース外枠底面に脚を設けた請求項1記載の水槽底面用ろ過ブロック。
【請求項3】
表層部に於いて、接着剤によって通水可能な多孔質状に固形化し、水槽内演出に配慮した請求項1記載の水槽底面用ろ過ブロック。
【請求項4】
ケースを用いることによって、水槽使用環境に良い固形物層と、意匠性に配慮した材料の層など、多層化を実現することができる請求項1記載の水槽底面用ろ過ブロック。
【請求項5】
水槽用ろ過システム及び器具類と併用することで、ろ過能力を高めることが出来る請求項1記載の水槽底面用ろ過ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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