説明

水槽用の覆蓋及び水槽用覆蓋装置

【課題】太陽電池モジュールを搭載した水槽用覆蓋の強度の改善、設計の自由度の拡大、及び太陽電池モジュールの取付け取外し作業の改善。
【解決手段】少なくとも二本の平行なアーチ形状の桁状部材を備え、両端部の脚部材に取り付けられた走行車輪により、水槽を覆った状態で一定方向へ往復走行可能な覆蓋であって、前記桁状部材相互間へ当該桁状部材に対して直角でかつ所定の間隔に配置された多数の梁状部材を前記各桁状部材へ連結し、前記桁状部材相互と隣合う梁状部材とが形成する多数の方形の窓孔状部の全部又は一部には、当該窓孔状部を塞ぎかつ対応する梁状部材へ保持させた状態で方形の太陽電池モジュールを設置したこと特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールを取り付けた水槽用覆蓋及び当該水槽用覆蓋を用いた水槽用覆蓋装置に関するものであり、特に浄水場,汚水処理場その他の屋外の水処理場における大型水槽の可動式覆蓋及び可動式覆蓋装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大型水槽の覆蓋は、点検,検査,沈殿物の搬出,水処理機器の整備や搬入等のため随時に開閉する必要上水槽の両側部に沿って設置されたレール上を走行させる可動式であるが、屋外の大型水槽の覆蓋では、設備の有効利用のため太陽電池モジュールを搭載することが推奨されている。
太陽電池モジュールを搭載した水槽用覆蓋には、水槽を覆う可動式のアーチ形覆蓋の上面に長さ方向に沿って幅の広い溝状の凹部を形成し、この凹部に多数の太陽電池パネルを並べて嵌め込んだ構造のものが提案されている(例えば後記特許文献1)。この覆蓋の太陽電池パネルを除いた部分(主体)は、例えばガラス繊維強化樹脂(FRP)により一体成形される。
【0003】
前記覆蓋は、上面を有効利用することができるばかりでなく、太陽電池パネルは覆蓋の上面の凹部へ嵌め込まれているので強風などにより吹き飛ばされるおそれがなく、しかも前記凹部はリブとして機能するので覆蓋の強度を高めることができるものとされている。
しかしながら前記覆蓋は、具体的にはその主体がFRP等により一体成形したものであるため、第1にスパンの大きい大型水槽に用いると強度上問題があった。
第2に、覆蓋の主体が一体成形であるために蓋設計の自由度が大きく制限され、かつ、覆蓋主体に部分的な破損や不具合が生じた場合にメンテナンスが不可能ないし極めて困難であった。
第3に、覆蓋は前記凹部を含む全体がアーチ形状であるため、凹部の両側に一体形成された凸条部の内側に庇を有するスライドカバーを取り付ける一方、太陽電池パネルの方形保持枠の両端下部へ一対の滑り部材又はスライドローラを取り付け、この太陽電池パネルを、その両端部が前記庇の内側に案内される状態で凹部の片側から順にスライドさせて押し込むように構成されているが、個々の太陽電池パネルを交換したり配線系統をメンテナンスする場合には、多数の太陽電池パネルを順に引き出さなくてはならず、その作業に多くの手間がかかるという課題があった。
【特許文献1】特開2002−43609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、太陽電池モジュールを搭載した水槽用覆蓋の強度の改善、設計の自由度の増大、及び太陽電池モジュールの取付け取外し作業の改善にある。 したがってその目的は、スパンの大きい大型水槽に設置しても十分な強度が保障される太陽電池モジュール搭載の水槽用覆蓋と水槽用覆蓋装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、個々の太陽電池モジュールの取付け取外しが容易で部分的なメンテナンス作業が容易な太陽電池モジュール搭載の水槽用覆蓋と水槽用覆蓋装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、設計の自由度を増した太陽電池モジュール搭載の水槽用覆蓋と水槽用覆蓋装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る水槽用覆蓋は、前記課題を解決するため、少なくとも二本の平行なアーチ形状の桁状部材を備え、両端部の脚部材に取り付けられた走行車輪により、水槽を覆った状態で一定方向へ往復走行可能な覆蓋であって、前記桁状部材相互間へ当該桁状部材に対して直角でかつ所定の間隔に配置された多数の梁状部材を前記各桁状部材へ連結し、前記各桁状部材と隣合う梁状部材とが形成する多数の方形の窓孔状部の全部又は一部には、当該窓孔状部を塞ぎかつ対応する梁状部材へ保持させた状態で方形の太陽電池モジュールを設置しことを最も主要な特徴としている。
【0006】
本発明に係る水槽用覆蓋装置は、前記課題を解決するため、水槽の両側部に沿ってそれぞれ平行に一対のレールが設置されており、水槽側から見て内側のレールに沿って走行可能な複数の下段の覆蓋と、外側のレールに沿って前記下段の覆蓋の上方を走行可能な複数の上段の覆蓋とを備え、前記下段の覆蓋及び上段の覆蓋は前記発明に係る水槽用覆蓋であることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る水槽用覆蓋及びそれを用いた水槽用覆蓋装置によれば、覆蓋のアーチ形状の桁状部材と梁状部材とは一体でなく独立の部材であるので、これらの材質を例えば金属とすることによりスパンの大きい水槽に設置した場合でも十分な強度が保障される。
梁状部材は太陽電池モジュールを保持するだけでなく、桁状部材相互を連結する補強部材をも兼ねるので覆蓋全体の強度がさらに向上する。
また、太陽電池モジュールは桁状部材でなく梁状部材(水平材)に保持されているので、桁状部材がアーチ形状であってもこれを個々に容易に取り付けたり取り外したりすることができ、部分的なメンテナンス作業が容易になるほか、設計の自由度が増す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
図1は本発明に係る覆蓋を含む水槽用覆蓋装置の一実施形態を示す部分平面図、図2は図1の矢印A−Aに沿う部分拡大断面図(但し、走行部分の構造を省略)、図3は図2の装置における一方(左側)の走行部分の水槽側部のみを断面とした拡大正面図、図4は図2の装置における覆蓋の太陽電池モジュールの梁状部材への取付部分の拡大断面図、図5は図4の矢印B−Bに沿う部分断面図、図6及び図7は図4の太陽電池モジュールの取付手順を順に説明するための分解断面図である。
【0009】
水槽1には両側部に沿ってレール4,4が設置され、各レール4の上には水槽1を覆うように覆蓋2が水槽1の長さ方向へ往復走行可能に多数設置されている。
この実施形態では、水槽1の所望の一部を開閉する際の便宜と、覆蓋2の走行操作を容易にするため、覆蓋2には複数の上段の覆蓋2aと複数の下段の覆蓋2bとの二種があり、各上下段の各覆蓋2a,2bは、静止して図1のように水槽1の全体を覆った状態では、交互に位置しかつ上段の覆蓋2aが隣接する下段の覆蓋2bと走行方向(水槽の長さ方向)に沿って所定量オーバーラップするように構成されている。この実施形態では、上段の覆蓋2aの桁状部材20がそれに隣接する下段の覆蓋2bの桁状部材20と部分的にオーバラップするように構成されている。
なお、この実施形態では上下段の覆蓋2a,2bが一個ずつ交互に位置するように構成されているが、上段の覆蓋2a又は下段の覆蓋2bが数個連続して並び、その連続した端部において上下の覆蓋2a,2bが前記のようにオーバラップするように運用することができる。静止状態で水槽1を覆ったときの上下の覆蓋2a,2bをどのように配置するかは、システムの運用の便宜により適宜選択される。
【0010】
図1〜図5で示すように、覆蓋2a,2bは、大円弧状のアーチ形状を呈する平行な一対の桁状部材20,20と、この桁状部材20相互の両端部を連結する却部材22(図2,3)と、桁状部材20,20相互間へ桁状部材20の長さ方向(水槽1の幅方向)に沿って一定の間隔で配置され、各桁状部材20へ連結された多数の梁状部材21とを備えている。
梁状部材21はその名称のとおり桁状部材20に対して直角に配置されており、桁状部材20,20とそれらに両端部が桁状部材20,20へ連結された隣合う梁状部材21とで囲まれた部分は窓孔状部を呈するが、これらの窓孔状部にはそれを塞ぐように太陽電池モジュール3が取り付けられている。
各太陽電池モジュール3は、それらに対応する梁状部材21へ保持され、当該部分の両側の桁状部材20,20の上に突出しないように埋め込まれた状態に取り付けてある。
【0011】
各覆蓋2a,2bには、図1〜図3で示すように、両端部両側上面に突出するようにそれぞれ把手23が取り付けられており、下段の各覆蓋2bには両端部上面に引き戸形態で開閉可能な点検窓24が取り付けられている。
各下段の覆蓋2bの両端部は、却部材22,22へ両端部が連結された緊結バー25によって緊結し、この緊結バー25の中間位置にターンバクル25aを取り付けている。
また、各覆蓋2a,2bは桁状部材20,20の下面相互を図示しない筋交いにより連結して補強している。
【0012】
図4〜図7を参照して各覆蓋2a,2bの構成をさらに詳しく説明する。
各桁状部材20は断面H形ないしI形に成形されたアルミニウム又はアルミニウム合金(以下「アルミ合金等」と言う。)の押出形材であり、当該押出形材をアーチ状に曲げ加工したものである。
各梁状部材21は断面ほぼコ字状に成形されたアルミ合金等の押出形材である。
図5で示すように、桁状部材20,20相互の対向面側の上下のフランジ20a,20bの間の各梁状部材21が連結される位置には、T字状に形成されたアルミ合金等の連結板(板状継手)200の頭部201が前記フランジ20a,20bに対してほぼ直角となるように挿入された状態で固定(溶接)されており、T字状の却部に相当する幅の狭い継手部202は前記上下のフランジ20a,20bから所定量突出している。
各梁状部材21の垂直な主部の両端部内側に各連結板200の継手部202が接触して位置するように、梁状部材21をセットし、前記継手部202と梁状部材21とをボルトナット203により固定する要領で、各梁状部材21を桁状部材20,20へ連結している。
【0013】
断面コ字状の形材である各梁状部材21の上面には、中央部に一定幅の凸条部21aを長さ方向に沿って形成することにより、当該凸条部21aの両側部に支承部21b,21bを形成し、前記凸条部21aの上部には開口部を狭めた溝状部21cを長さ方向に沿って形成している。
梁状部材が21が断面コ字状の形材である場合には、桁状部材20の下り傾斜部分では、内部に水が溜まらないように下り方向へ向けた状態で設置するのが好ましい。
【0014】
この実施形態において、各太陽電池モジュール3は図4で示すように、白板強化処理ガラス等のフロントカバー30bとPETその他の耐候性の樹脂シート等のバックカバー30cとで太陽電池素子30aを挟持させたモジュール主体30と、内側上部にモジュール主体30の周縁部をエッジシーラントを介して密にカバーする溝部31cを有する方形の保持枠31とから構成されている。
保持枠31は、隣合う梁状部材21相互の対向面間の間隔よりも必要量長い長さの一対の縦枠31aと、各桁状部材20相互の間隔よりもやや短い長さの一対の横枠31bとを平面視において方形に組み合わせたものである。各縦枠31aと横枠31bはアルミ合金等の押出形材であって、それらの表面には例えばアルマイト処理等の耐食処理を施すのが好ましい。
【0015】
縦枠31aは、図5で示すように上下に並ぶ中空を有する角パイプ状の主部31dと、その上部に形成された溝部31cと、底部へ溝部31cが向く方向に形成されたフランジ(符号なし)とからなり、各中空部の一つの隅角部に長さ方向に沿うねじ受溝(符号なし)を有している。
横枠31bは、図4で示すように下部の角パイプ部31iとその上に一体に形成された外向きの溝部(符号なし)とを有する主部31eと、その上に形成された溝部31cと、底部へ溝部31cが向く方向に形成されたフランジ(符号なし)とからなり、角パイプ部31i内の一隅角と溝部の一箇所に長さ方向に沿う断面円弧状のねじ受溝31fをそれぞれ有している。
【0016】
前記の太陽電池モジュール3は、例えば図8で示す要領で組み立てられる。
各縦枠31aの端部において、横枠31bの幅と対応する部分の垂直壁のみを残して他の部分を切除することにより前記垂直壁の部分を受板31gとする。
各横枠31bの溝部31c内へモジュール主体30の対応する縁辺部分をエッジシーラントを介して挿入し、各縦枠31aの溝部31c内へモジュール主体30の対応する縁辺部分を同要領で挿入することにより、横枠31bの端部を縦枠31aの前記受板31gへ当接させる。この状態で、前記受板31gの外側から各横枠31bのねじ受溝3f,31f内に向けて各ねじ釘31h,31hをねじ込んで太陽電池モジュール3を組み立てる。
【0017】
以下図4,図6及び図7を参照して前記太陽電池モジュール3の取付要領を説明する。
図5で示すように、各桁状部材20の対向側の上部のフランジ20aには、上面の縁部から対向先端面をカバーするように例えばガスケット等からなる膨縮性のシール材204を配置する。
梁状部材21の溝状部21c内には、あらかじめ複数(後述の規制板210の数と同数)のボルト211を逆さにしてその頭部をスライド可能に案内する。
各桁状部材20とそれらに両端部が連結されている隣合う梁状部材21とで囲まれた窓孔状部へ、図6のように一つの(図の右側の)太陽電池モジュール3の横枠31bが梁状部材21と対応する姿勢で当該太陽電池モジュール3を落とし込む要領で挿入する。これにより、各梁状部材21の支承部21bには対応する横枠31bが載置されて太陽電池モジュール3が支持され、図5のように桁状部材20の上部のフランジ20aの先端面のシール材204は圧縮され、当該フランジ20aの先端面と当該太陽電池モジュール3の縦枠31aとの隙間はシールされる。
【0018】
次いで、図7で示すように適正姿勢よりも90度姿勢を変えた状態で梁状部材21の溝状部21cの上に複数の規制板210を適切な間隔にセットする。この規制板210は、アルミ合金等により断面門形に成形された押出形材を、図4における両方の太陽電池モジュール(保持枠31を含む)3,3の間隔よりも小さい長さにカットしたもので、上面には長さ方向に沿って平行に二条の係止片214が形成されている。規制板210には、図4及び図7のようにボルト211を通すための挿通孔21dが形成されているので、各ボルト211の位置を調整して前記挿通孔21dへ対応するボルト211を通す。
各規制板210を図7のようにセットした後、左側の太陽電池モジュール3をその横枠31bが梁状部材21の左側の支承部21bへ載置されるようにセットする。このとき、梁状部材21の図示しない左隣の梁状部材の支承部へ前記左側の太陽電池モジュール3の他方の横枠を同時に支承させる。
次いで、規制板210を図4のように適切な姿勢に変化させ、各ボルト211へそれぞれナット212をねじ締めて規制板210を下限まで押し付けることにより、規制板210の両側下端を両側の太陽電池モジュール3における各横枠31bの角パイプ部31i上に接触又は近接させ、規制板210の両側端部により各太陽電池モジュール3の当該縁片部分をそれぞれの支承部21bから離脱不能となるように規制する。
【0019】
最後に、両側の太陽電池モジュール3相互の間へ両側部に長さ方向に沿ってガスケット等の膨縮性のシール材215を有する詰物部材213を押し込む。詰物部材213はアルミ合金等の押出形材であって断面門形に形成され、下部両側には各規制板210の各係止
片214とそれぞれ対応する係止凸条216が形成されているので、前記押し込みにより詰物部材213の各係止凸条216が規制板210の対応する係止凸条214へ離脱しないように係止される。同時に、両側に隣接する太陽電池モジュール3,3の間は詰物部材213によって塞がれ、当該詰物部材213と両側の太陽電池モジュール3,3との隙間は前記シール材215によってシールされる。
以上の要領により、各桁状部材20と隣合う梁状部材21とによって形成された全部の窓孔状部が太陽電池モジュール3によって塞がれる。
【0020】
個々の太陽電池モジュール3を取り外す場合には、前記の逆の手順で行う。
すなわち、取外し対象の太陽電池モジュール3の両側に位置する詰物部材213を図示しない適当な引っ掛け工具を用いて設置位置から引き上げる要領で取り外し、当該取外し部分の各ナット212を適当量緩める。この状態で各規制板210の姿勢を90度変化させ(図7を参照)、当該太陽電池モジュール3の各横枠31aの外向きの溝部を利用して当該太陽電池モジュール3を引き上げる要領で取り外す。
【0021】
この実施形態ではさらに、図5で示すように各桁状部材20の対向側の各下部のフランジ20bの上面には長さ方向に沿って水受け溝20cが形成されている。
他方、隣合う梁状部材21相互の下面には、両側縁の曲げ下げ部218が対応する水受け溝20cの上方へ臨む状態に、アルミ合金等の止水板217がねじビス219その他のねじにより取外し可能に取り付けられている。なお、ねじビス219等に代えてリベットを用いることができる。
各覆蓋2a,2bの両端部分には太陽電池モジュールは設置されていないが、前記止水板217と同様な止水板は覆蓋2a,2bの両端部分の下部にも同様に設置されている。
したがって、前記各止水板217により覆蓋2a,2bの下面は完全な止水構造となり、止水板217が受けた水は、各桁状部材20の水受け溝20cを通じて水槽1の周囲の路面へ起立した状態に設置されている後述の止水板の外側に流れ、水槽1内には流れ込まないようになっている。
なおこの実施形態では、太陽光発電のための配線構造は発明の主たる構成要素ではないため省略してある。
【0022】
この実施形態の水槽用覆蓋によれば、覆蓋2のアーチ形状の桁状部材20と梁状部材21とは独立の部材であるので、これらの材質を前記のようにアルミ合金等とすることによりスパンの大きい水槽に設置した場合でも十分な強度が保障され、かつ軽量になる。
覆蓋2は主体部分が一体でないので設計の自由度が増す。
梁状部材21は太陽電池モジュール3を保持するだけでなく、桁状部材20相互を連結する補強部材をも兼ねるので覆蓋2全体の強度がさらに向上する。
太陽電池モジュール3は桁状部材20でなく水平材である梁状部材21へ保持されているので、桁状部材20がアーチ形状であってもこれを個々に容易に取り付けたり取り外したりすることができ、これにより部分的なメンテナンス作業が容易になるほか、設計の自由度が増大する。
太陽電池モジュール3と各桁状部材20及び梁状部材21との隙間は前記のように水密状にシールされていて、水槽1側には雨水等が侵入し難い。また、シール部分の損傷その他により雨水等が覆蓋2の裏側へ侵入し、あるいは覆蓋2の太陽電池モジュール3の設置空間内で結露した場合には、前記止水板217により止水され、それらの水は各桁状部材20の水受け溝20cを通じて外部に排出される。
【0023】
次に、図3を参照しながら覆蓋装置における上下の各覆蓋2a,2bの走行作動部分を説明する。
水槽1の両側部へ設置されている各レール4は、上段の各覆蓋2aを走行させる外側のレール4aと、下段の各覆蓋2bを走行させる内側のレール4bとから構成されている。 これらの各レール4a,4bはアルミ合金等の押出形材であって、それぞれ断面外形が四角形のパイプにより構成され、それらの下面には長さ方向に沿って逆T字状の脚条部40がそれぞれ一体に形成されている。
【0024】
水槽1の両側部の路面上には、パイプ状の支柱42,42が水槽の長さ方向に沿って所定の間隔で配置され、これらの支柱42,42は下部に溶接された水平なベース板41を介して路面上に固定されている。各支柱42,42の上端には水平な受板43が溶接されており、これらの受板43の上に各脚条部40の下部のフランジを重ねてボルトナット44で両者を締め付けることにより、各レール4a,4bを設置している。
【0025】
上段の覆蓋2aと下段の覆蓋2bの一方の端部へ固定されているの各脚部材22,22の下部には、対応するレール4a,4bの上面へほぼ垂直状態で転接(転がり接触)する対の走行車輪5と、当該走行車輪5の走行方向の前後において対応するレール4a,4bの両側面へほぼ水平状態で転接する二対の拘束車輪50,50とが一つの組になったものが、それぞれ走行方向に沿って二組設けられている。
この実施形態では、各脚部材22,22の下部の走行方向に沿う二箇所に、両側下部にフランジ部52を有するアルミ合金等の押出形材からなる断面逆U字状の車枠51を、図示しないねじにより走行方向に沿って取り付けている。各車枠51内にはそれぞれ内部に走行車輪50が回転自在に保持された保持器5aが取り付けられ、各車枠51の両側下部のフランジ部52,52にはそれぞれ拘束車輪50,50が取り付けられている。したがって拘束車輪50は、一個の走行車輪5の走行方向の前後に位置する状態で二対設置される。
各上下の覆蓋2a,2bの他方の端部(水槽1の他方の側部)における走行作動部分は、前記のような各拘束車輪50がいずれも設置されていない点で構成を異にするが、他の構成は前記走行作動部分と同じであるのでそれらの図示や説明を省略する。
【0026】
以下水槽1の側部における止水構造を説明すると、11,12はそれぞれ対応するレール4a,4bよりも外側の路面上へ水槽1の側部と平行して起立するように固定された止水板であり、これらの止水板11,12の上端部は、それぞれ対応するレール4a,4bの脚条部40,40の下部フランジへ対応する前記ボルトナット44により固定されている。
一方、上下の各覆蓋2a,2bの外側には、下端部分がそれぞれ下方に設置された起立する止水板11,12の上部外側ヘ面するように垂下する止水板22aがそれぞれ取り付けられており、各止水板22aの下部にはゴム等の柔軟性のあるスカート22bが取り付けられている。
したがって、各覆蓋2a,2bによって水槽1が全面的に覆われている状態では、前述のように各覆蓋2a,2bの桁状部材20の水受け溝20cを流下する水や他の雨水等は、それぞれ各覆蓋2a,2bの脚部材22の外側面及び当該部分に取り付けられた止水板22aを通じて、それらの各止水板22a,22aよりも水槽1側に近寄った路面上に起立した前記各止水板11,12の外側に流れるので、水槽1内に流れ込むことはない。
【0027】
図9及び図5で示すように、各上下の覆蓋2a,2bの各桁状部材20の上面中央部には、長さ方向に沿って溝20dが形成されている。図示の形態では、各上段の覆蓋2aの桁状部材20の上面にも溝20dが形成されているが、これは覆蓋2a,2bの種別を問わずどの桁状部材20でも使用できるように配慮されたもので、溝20dは下段の覆蓋2bにおける桁状部材20に形成されていれば十分である。
すなわち図9で示すように、上段の覆蓋2bの桁状部材20にはゴム等の軟質シートからなる止水スカート206が長さ方向に沿って垂下状に取り付けられており、全覆蓋2a,2bによって水槽1の全面が覆われた状態では、前記止水スカート206の表面に沿って流下する水は、隣接の下段の覆蓋2bにおける桁状部材20の溝20dに沿って、水槽1の側部路面上の止水板11,12よりも外側へ流れるように構成されている。
【0028】
また、水槽1の全面が覆蓋2a,2bによって覆われた状態では、水槽1の長さ方向の両端部には下段の覆蓋2bが配置されるように構成されており、当該端部における下段の覆蓋2bの端部の桁状部材20には、下部へアルミ合金等の止水部材207が垂下状に取り付けられている。この止水部材207の下端部には、水槽1の端部近傍の路面上に起立するように水槽1の幅方向に沿って固定された止水板13よりも外側の路面へ裾部が接触するように、軟質シートからなる止水スカート208が取り付けられている。
したがって、止水部材207及び止水スカート208に沿って水槽1の外周路面上に流れる雨水等は水槽1内へは流れ込まない。
なお図2,図5及び図9において、符号205は、各桁状部材20の非対向面側の上下部フランジ20a,20bの間へ、所定間隔毎に各フランジ20a,20bに対して直角になるように挿入され固定された補強板である。
【0029】
前記実施形態の水槽用覆蓋装置によれば、大型の水槽1の広い上方空間を効率的に利用することができるほか、前述の各止水構造によって水槽1内に雨水,雪解け水,露等の雑水が水槽1内に侵入し難い。
【0030】
その他の実施形態
桁状部材20は前記のように断面H形又はI形であるのが強度上好ましいが、要求される強度上差し支えがなく、かつ梁状部材21を連結するのに差し支えなければ他の断面形状でもよい。
梁状部材21は断面コ字状でなく例えば断面H形の形材を横にして使用しても実施することができる。
梁状部材21に対する太陽電池モジュール3の取付構造は前記実施形態のものに限定されず、太陽電池モジュール3を個々に取付け取外しができるならば他の取付構造を採用することができる。
太陽電池モジュール3の縦横の枠31a,31bは、当該モジュール3を各桁状部材20と梁状部材21とで形成される窓孔状部から取り出すときに、手を差し込む部分があれば他の断面形状のものを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る覆蓋を含む水槽用覆蓋装置の一実施形態を示す部分平面図である。
【図2】図1の矢印A−Aに沿う部分拡大断面図(但し、走行部分の構造を省略)である。
【図3】図2の装置における一方(左側)の走行部分の水槽側部のみを断面とした拡大正面図である。
【図4】図2の装置における覆蓋の梁状部材へ太陽電池モジュールを取り付けた部分の拡大断面(切断端面)図である。
【図5】図4の矢印B−Bに沿う部分断面(切断端面)図である。
【図6】図4の状態に太陽電池モジュールを梁状部材へ取り付けるための取付要領の初期段階を説明するための分解断面図である。
【図7】太陽電池モジュールの取付要領の次の段階を説明するための分解断面図である。
【図8】太陽電池モジュールの組立要領を示す部分分解平面図である。
【図9】前記実施形態の水槽用覆蓋装置における棟部の部分切断端面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 水槽
2 覆蓋
2a 上段の覆蓋
2b 下段の覆蓋
20 桁状部材
20a,20b フランジ
20c 水受け溝
20d 溝
200 連結板
201 頭部
202 継手部
203 ボルトナット
204 シール材
206 スカート
207 止水部材
208 止水スカート
21 梁状部材
21a 凸条部
21b 支承部
21c 溝状部
210 規制板
211 ボルト
212 ナット
213 詰物部材
214 係止片
215 シール材
216 係止凸条
217 止水板
22 脚部材
25 緊結バー
25a ターンバクル
3 太陽電池モジュール
30 モジュール主体
30a 太陽電池素子
30b フロントカバー
30c バックカバー
31 保持枠
31a 縦枠
31b 横枠
31c 溝部
4 レール
4a 外側のレール
4b 内側のレール
5 走行車輪
5a 保持器
50 拘束車輪
51 車枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二本の平行なアーチ形状の桁状部材を備え、両端部の脚部材に取り付けられた走行車輪により、水槽を覆った状態で一定方向へ往復走行可能な覆蓋であって、前記桁状部材相互間へ当該桁状部材に対して直角でかつ所定の間隔に配置された多数の梁状部材を前記各桁状部材へ連結し、前記桁状部材相互と隣合う梁状部材とが形成する多数の方形の窓孔状部の全部又は一部には、当該窓孔状部を塞ぎかつ対応する梁状部材へ保持させた状態で方形の太陽電池モジュールを設置しことを特徴とする水槽用覆蓋。
【請求項2】
前記桁状部材及び前記梁状部材はアルミニウム又はアルミニウム合金による押出形材である、請求項1に記載の水槽用覆蓋。
【請求項3】
前記桁状部材は断面H形又は断面I形に成形され、各桁状部材と梁状部材は、各桁状部材の相対向する側の上下フランジ間へ当該フランジと垂直になるように固定され継手部が当該フランジ間から突出した連結板を介して連結されている、請求項2に記載の水槽用覆蓋。
【請求項4】
前記各梁状部材は、断面がほぼコ字状を呈するように形成するとともに前記桁状部材の下り傾斜部分では開口部を前記桁状部材の下り傾斜方向に向けて配置されている、請求項3に記載の水槽用覆蓋。
【請求項5】
前記各太陽電池モジュールは、太陽電池素子を含むモジュール主体の四周縁部を密にカバーする溝部を内側上部に備えた平面方形の保持枠を有し、前記各梁状部材の上面にはほぼ中央部へ長さ方向に沿って一定幅の凸条部を形成することにより当該凸条部の両側部に支承部を形成し、当該支承部ヘ太陽電池モジュールの保持枠を保持させた、請求項4に記載の水槽用覆蓋。
【請求項6】
前記各梁状部材の凸条部の上部には開口部を狭めた溝状部を長さ方向に沿って形成し、当該溝状部へ複数のボルトの頭部を抜け止めにかつスライド可能に案内し、前記各ボルトと各ナットにより前記溝状部の上に複数の規制板を所定間隔に固定し、当該各規制板の両側部により、前記梁状部材の支承部へ支持された隣合う太陽電池モジュールの保持枠を対応する支承部から離脱不能となるように規制し、前記規制板よりも上方において隣合う保持枠の上部相互の間に両側へ長さ方向に沿ってシール材を有する詰物部材を押し込み状に挿入し、当該詰物部材を前記規制板の係止片へ係止した、請求項5に記載の水槽用覆蓋。
【請求項7】
前記桁状部材の上部フランジと当該上部フランジと相対する前記太陽電池モジュールの保持枠の上側部との間にはシール材を介在させた、請求項5又は6に記載の水槽用覆蓋。
【請求項8】
前記各桁状部材の相対する側の下部フランジは上面へ長さ方向に沿う水受け溝を有し、隣合う梁状部材の下部には側縁部が対応する前記水受け溝の上方へ臨む状態に止水板を取り付けた、請求項3〜7のいずれかに記載の水槽用覆蓋。
【請求項9】
水槽の両側部に沿ってそれぞれ平行に一対のレールが設置されており、水槽側から見て内側のレールに沿って走行可能な複数の下段の覆蓋と、外側のレールに沿って前記下段の覆蓋の上方を走行可能な複数の上段の覆蓋とを備え、前記下段の覆蓋及び上段の覆蓋は請求項1〜8のいずれかに記載の水槽用覆蓋であることを特徴とする水槽用覆蓋装置。
【請求項10】
各下段の覆蓋の桁状部材は上部のほぼ中央部に長さ方向に沿って溝を有し、静止した前記各覆蓋により水槽を覆った状態で隣合う上下段の覆蓋において、上段の覆蓋の桁状部材は下段の覆蓋の対応する桁状部材と走行方向に沿って所定量オーバラップしており、上段の覆蓋の前記桁状部材ヘ垂下状に取り付けられた軟質シートからなる止水スカートの表面に沿って流下する水が下段の覆蓋の桁状部材の溝へ導かれるように構成されている、請求項9に記載の水槽用覆蓋装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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