説明

水槽用水中ろ過材および水槽用水中ろ過装置

【課題】水槽内で酸素が効率よく水中に溶解し、ゴミを均一に吸着し、交換時期を容易に判断できる水槽用水中ろ過材および水槽用水中ろ過装置を提供する。
【解決手段】回転軸31と、回転軸31が貫通する貫通路32aを設けたろ過材本体32と、回転軸31が貫通し、回転軸31を中心にして複数の羽根(33ab、33as)を設けた羽根具33とを備え、羽根具33を貫通路32aと同軸上に複数備える水槽用水中ろ過材30と、気泡2を放出する気泡放出口21aを設けた底部21と、この底部21の縁に連接されて複数の側壁スリット22sを設けた側壁部22と、気泡2を排出する気泡排出口23aを設けたフタ部23とからなるろ過材収納ケース20に、回転軸31を気泡放出口21aと気泡排出口23aとで支持して気泡2による上昇水流C1が前記羽根具33に当たって回転するように収納し、水槽用水中ろ過装置10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、観賞魚などを飼育、育成する水槽内の水を、循環、ろ過するための水槽用水中ろ過材および水槽用水中ろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金魚や熱帯魚などの観賞魚を飼育、育成するための観賞魚用水槽内で水をろ過する水槽用フィルタとして、エアポンプ式の水槽用フィルタが提案されている。水槽内に設置した水槽用フィルタにエアポンプなどで空気を送り込むと、フィルタの内部を気泡が上昇することによって水流が生じる。この水流により、水槽用フィルタは水槽内の水の循環、ろ過を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−107846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の水槽用フィルタにおいては、以下のような問題がある。
1)エアポンプにより供給された空気は、水中で気泡となる。気泡は、ほぼ真上に浮上し、短時間で水面に到達する。つまり、気泡が水中に滞在する時間は短い。したがって、従来の水槽用フィルタは、効率よく水中に酸素を溶解させることが難しいという問題がある。
2)従来の水槽用フィルタは、水槽内に配置する場所によって、残滓や懸濁物などのゴミの吸着が不均一となる。例えば、水槽用フィルタを水槽内のコーナーに設置すると、水槽内のコーナーは水の循環が悪いので、水槽内のコーナーに面した水槽用フィルタの側面でゴミの吸着量が少なくなる。したがって、水槽用フィルタ全体としてゴミの吸着が不均一となり、十分なろ過能力が得られないという問題がある。
3)従来の水槽用フィルタは、モーター式のフィルタに比べて、水を吸引する力が弱いという問題がある。水を吸引する力が弱いと、水槽用フィルタから離れた場所にあるゴミや、大きなゴミを吸着することが難しい。また、水中にゴミが残った水槽は、鑑賞する上で好ましくない。水中のゴミは分解され、観賞魚の発育に悪影響を及ぼしてしまう。
4)水中のゴミは、水槽用フィルタに吸着され、蓄積される。ゴミが蓄積されると、水槽用フィルタは目詰まりを起こす。しかし、吸着したゴミは微細である。従来の水槽用フィルタには、不織布やスポンジなどが用いられるため、その目詰まりを目視で確認するのが難しい。したがって、水槽用フィルタは交換する時期を判断するのが難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、以下の1)から4)の課題を解決した水槽用水中ろ過材および水槽用水中ろ過装置を提供することを目的とする。
1)気泡中の酸素を効率よく水中に溶解させる
2)水槽用水中ろ過材の広い範囲でゴミを均一に吸着する
3)水を吸引する力を向上させる
4)ろ過材本体または水槽用水中ろ過材の交換時期を容易に判断する
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、回転軸と、前記回転軸が貫通する貫通路が設けられたろ過材本体と、前記回転軸に貫通され、前記回転軸を中心にして複数の羽根が放射状に設けられた羽根具と、を備え、前記羽根具が、前記貫通路と同軸上に1又は複数備えられ、前記ろ過材本体と前記羽根具とが、前記回転軸と共に回転する、ことを特徴としている。
【0007】
また、上記の水槽用水中ろ過材と、気体が気泡として放出される気泡放出口が設けられ、この気泡放出口の周りに多孔質材が備えられた底部と、この底部の縁に連接され、複数の側壁スリットが設けられた側壁部と、この側壁部の縁と着脱可能であり、前記気泡が排出される気泡排出口が設けられたフタ部と、からなるろ過材収納ケースと、を備え、前記水槽用水中ろ過材は、前記回転軸が前記気泡放出口と前記気泡排出口とに支持され、前記気泡放出口から放出された気泡の浮上により生じる水流が前記羽根具に当たって回転する、ことを特徴としている。
【0008】
また、回転している前記水槽用水中ろ過材は、前記ろ過材本体に吸着したゴミの量がゴミ吸着許容量を超えると動きが遅くなる、あるいは停止する、ことを特徴としている。
【0009】
また、前記羽根具は、前記ろ過材収納ケースに収納され、前記貫通路の端に備えられている、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る水槽用水中ろ過材では、回転軸と、回転軸が貫通する貫通路が設けられたろ過材本体と、回転軸に貫通され、回転軸を中心にして複数の羽根が放射状に設けられた羽根具とが備えられ、羽根具が、貫通路と同軸上に1又は複数備えられ、ろ過材本体と羽根具とが、回転軸と共に回転する構成とした。
したがって、気泡中の酸素を効率よく水中に溶解させることができる。また、水中の溶存酸素を上昇させることができる。
【0011】
特に、羽根具は複数備えられていることが好ましい。この構成により、更に水流の影響を受けやすくなる。また、水中における気泡の滞留時間を更に延ばすことができる。
したがって、気泡中の酸素を更に効率よく水中に溶解させることができる。また、水中の溶存酸素を更に上昇させることができる。なお、水槽用水中ろ過材は、エアポンプから供給されたエア圧により回転させられる。この回転はエア量に比例するという特徴がある。
【0012】
本発明に係る水槽用水中ろ過装置では、上記の水槽用水中ろ過材と、気体が気泡として放出される気泡放出口が設けられ、この気泡放出口の周りに多孔質材が備えられた底部と、この底部の縁に連接され、複数の側壁スリットが設けられた側壁部と、この側壁部の縁と着脱可能であり、気泡が排出される気泡排出口が設けられたフタ部と、からなるろ過材収納ケースとが備えられ、水槽用水中ろ過材は、回転軸が気泡放出口と気泡排出口とに支持され、気泡放出口から放出された気泡の浮上により生じる水流が羽根具に当たって回転する構成とした。
したがって、回転する水槽用水中ろ過材の広い範囲で水中のゴミを均一に吸着することができる。
特に、側壁スリットの開口面積を最小限とすることが好ましい。水槽用水中ろ過装置が水を吸引する力を向上させることができるからである。また、離れた場所にあるゴミや、大きなゴミを吸着することもできる。
【0013】
上記の回転している水槽用水中ろ過材は、ろ過材本体に吸着したゴミの量がゴミ吸着許容量を超えると動きが遅くなる、あるいは停止する構成とした。この構成により、水槽用水中ろ過材の回転が遅くなる時期、あるいは停止する時期を、ろ過材本体または水槽用水中ろ過材を交換する時期の目安とすることができる。
したがって、ろ過材本体または水槽用水中ろ過材の交換時期を容易に判断することができる。
【0014】
上記の羽根具は、ろ過材収納ケースに収納され、貫通路の端に備えられている構成とした。この構成により、ろ過材本体に設けられた貫通路から浮上したすべての気泡は漏れなく羽根具によって大きく撹拌される。
したがって、気泡中の酸素を更に効率よく水中に溶解させることができる。また、水中の溶存酸素を更に上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る水槽用水中ろ過装置の一実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る水槽用水中ろ過装置の一実施例の分解斜視図である。
【図3】本発明に係る水槽用水中ろ過材の一実施例を示す一部断面側面図である。
【図4】本発明に係る水槽用水中ろ過材の一実施例を示す平面図(上面図)である。
【図5】図1のX−X断面図であって本発明に係る水槽用水中ろ過装置の一実施例の使用状態を説明する断面説明図である。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、本実施例は、本発明の実施例の一つを例示するものである。したがって、本発明は、本実施例に限定されるものではない。
【0017】
図1、図2において、本実施例に係る水槽用水中ろ過装置10は、ろ過材収納ケース20と、ろ過材収納ケース20に収納された水槽用水中ろ過材30とから構成されている。
【0018】
ろ過材収納ケース20は、底部21と、底部21の縁から連接された側壁部22と、側壁部22の縁と着脱可能なフタ部23とで構成され、略円筒状に形成されている。
なお、本実施例によれば、ろ過材収納ケース20の形状は略円筒状であるが、必ずしも円筒状に限られない。ろ過材収納ケースは、例えば、多角柱状であってもよい。ただし、後述するように、ろ過材収納ケース20に収納された水槽用水中ろ過材30は回転するものである。したがって、水槽用水中ろ過材30の回転が妨げられない形状とする。
【0019】
底部21には、図示しないエアポンプから供給された空気をろ過材収納ケース20内に送る空気供給通路21bが設けられている。空気供給通路21bは、底部21の縁の一部からほぼ中央に至るまで、底部21に沿って設けられている。空気供給通路21bによって、ろ過材収納ケース20の外側と内側とが連通されている。空気供給通路21bの一端であって、ろ過収納ケース20の外側の開口部には、空気を搬送する図示しないチューブを連結するための連結パイプ1が挿入されている。空気供給通路21bの他端であって、ろ過材収納ケース20の内側の開口部には、図示しないエアポンプから供給された空気が気泡として放出される気泡放出口21aが設けられている。気泡放出口21aは円筒状に形成され、気泡が浮上する方向に突出している。すなわち、気泡放出口21aは、底部21からフタ部23に向けて垂直に開口されている。気泡放出口21aには、気泡放出口21aの形状に合わせた略円筒状のエアストーン24が、開口面から底部21に至るまで挿入されている。底部21には、気泡放出口21aを囲うように多孔質材3が備えられている。
【0020】
多孔質材3は、底部21の形状に合わせた略円盤状で、気泡放出口21aおよび空気供給通路21bに面する部分がくり抜かれて形成されている。したがって、多孔質材3は、気泡放出口21aおよび空気供給通路21bの周りを囲って底部21を覆うように備えられている。多孔質材3は、水の浮力によって水槽用水中ろ過装置10が浮上したり位置ずれしたりするのを防ぐための錘となる。したがって、多孔質材3の材質には、浮力とつり合う重力が働くガラスなどが用いられる。また、多孔質材3では、繁殖したバクテリアなどの好気性微生物により、生物ろ過が行われる。したがって、多孔質材3の材質は、例えばセラミックスの他、バクテリアなどが繁殖することができる砂利などであってもよい。
なお、エアストーン24の材質にも、セラミックスなどの多孔質材が用いられる。
【0021】
側壁部22は、底部21の縁に連接されている。側壁部22には、周方向にほぼ等間隔に側壁スリット22sが複数設けられている。側壁スリット22sは、長辺を水槽用水中ろ過装置10の軸方向とする略長方形に形成されている。側壁スリット22sにより、ろ過材収納ケース20の付近でゴミを含んだ水は、ろ過材収納ケース20の内側へ吸引される。後述するように、側壁スリット22sの開口面積を最小限とすることで、水槽用水中ろ過装置10の水を吸引する力を向上させることができる。
【0022】
フタ部23の縁には、側壁部22の縁と着脱可能な嵌合部23bが設けられている。フタ部23のほぼ中央には、水槽用水中ろ過装置10の軸方向で気泡2が浮上する方向に突出した円筒状の気泡排出口23aが設けられている。すなわち、気泡排出口23aは、底部21に設けられた気泡放出口21aと同軸上になるように、フタ部23に設けられている。
【0023】
気泡排出口23aには、水槽用水中ろ過材30を支持する支持具4が備えられている。支持具4は、気泡排出口23aの形状に合わせた略円筒状で、径方向に複数の突起が設けられている。支持具4は、この複数の突起を介して、気泡排出口23aの内壁との間に隙間を形成している。
【0024】
フタ部23には、周方向にほぼ等間隔にフタ部スリット23sが複数設けられている。フタ部スリット23sは、縁側から気泡排出口23aに向けて略楕円形に形成されている。フタ部スリット23sにより、上記した側壁スリット22sと同様に、ろ過材収納ケース20の付近でゴミを含んだ水が、ろ過材収納ケース20の内側へ吸引される。
【0025】
図3、図4において、水槽用水中ろ過材30は、回転軸31と、回転軸31が貫通する貫通路32aが設けられたろ過材本体32と、回転軸31に貫通され、回転軸31を中心にして複数の羽根(33ab、33as)が放射状に設けられた羽根具33とが備えられている。また、羽根具33は、貫通路32aと同軸上で二段構成となっている。
【0026】
ろ過材本体32は、略筒状に形成されている。ろ過材本体32の径方向断面の縁は、凹凸が交互に周回して形成されている。すなわち、平面(上面)において、ろ過材本体32は歯車のような形状をしている(図4参照)。ろ過材本体32は、良好な通水性と、所定の形状を保持する性質とを有している。ろ過材本体32には、加水分解や腐食がしにくいスポンジなどが用いられる。スポンジには、例えば、グラスウール、ナイロンウール、ポリエーテル系ウレタンスポンジなどを用いることが好ましい。ろ過材本体32は、吸着したゴミによる汚れ具合を確認しやすくするため、無模様、白色である。
【0027】
ろ過材本体32には、同軸上に円筒状の貫通路32aが設けられている。貫通路32aには、活性炭フィルタ34と軸支持筒35とが挿入されている。具体的には、活性炭フィルタ34と、軸支持筒35とは、ろ過材本体32の側面側から回転軸31に向かって、活性炭フィルタ34、軸支持筒35の順に、貫通路32a内に配置されている。
【0028】
活性炭フィルタ34は、略長方形のスポンジ片であるが、短辺同士を向かい合わせて環状にすることで筒状に形成されている。筒状に形成された活性炭フィルタ34は、貫通路32aの内壁を覆うように設けられている。活性炭フィルタ34には、ポリエステル不織布に活性炭を含浸させたものを用いることが便宜である。
【0029】
軸支持筒35は、略筒状に形成されている。軸支持筒35には、両端に軸支持底部が設けられている。軸支持筒35の側面および軸支持底部には、複数の通水口が設けられている。したがって、軸支持筒35は活性炭フィルタ34の内壁を覆うように備えられているが、水は通水口を通過して貫通路32aに流れ込むことができる。
【0030】
貫通路32aを貫通する回転軸31は、軸支持筒35の両端に設けられた軸支持底部の中心で支持されている。回転軸31は、断面略円形の棒状に形成され、ステンレスなどの耐腐食性の材質で作られていることが好ましい。
【0031】
羽根具33は、大羽根具33bと小羽根具33sとの2つの羽根具により二段で構成されている。回転軸31を中心に、大羽根具33bには8枚の大羽根33abが放射状に設けられている。同様に、回転軸31を中心に、小羽根具33sには8枚の小羽根33asが放射状に設けられている。大羽根33ab、小羽根33asの形状は一般的なプロペラ型である。
【0032】
大羽根具33bと小羽根具33sとは、回転軸31に貫通され、ろ過材本体32と同軸上に備えられている。小羽根具33sは、貫通路32aの一端である下流側端32dに接触している。大羽根具33bは、小羽根具33sを介して下流側端32dと反対側に、小羽根具33sに近接させて備えられている。すなわち、ろ過材本体32と、小羽根具33sと、大羽根具33bとは、気泡の浮上により生じた水流の上流側から下流側へ向かって(ろ過材収納ケース20の底部21からフタ部23へ向かって(図1、図2参照))、ろ過材本体32、小羽根具33s、大羽根具33bの順に、回転軸31によって貫通されている。
【0033】
図3において、小羽根具33sの径方向の大きさは、貫通路32aの直径よりも大きく形成されている。大羽根具33bの径方向の大きさは、小羽根具33sの径方向の大きさよりも大きく形成されている。図4において、大羽根具33bと小羽根具33sとの周方向の位置関係は、大羽根具33bの大羽根33ab,33abの間に、小羽根具33sの小羽根33asが位置するように周方向にずらして配置されている。すなわち、軸方向から視した場合に、小羽根具33sの小羽根33asが、大羽根具33bの大羽根33abの陰に隠れないように配置されている。
【0034】
上記のように構成された水槽用水中ろ過材30は、図5において、回転軸31がろ過材収納ケース20の底部21に設けられた気泡放出口21aとフタ部23に設けられた気泡排出口23aとにより支持されることで、ろ過材収納ケース20に収納されている。より具体的には、回転軸31の一端は、気泡放出口21aに備えられたエアストーン24に支持されている。回転軸31の他端は、気泡排出口23aに備えられた支持具4に支持されている。ろ過材本体32に設けられた貫通路32aの一端である上流側端32uは、気泡放出口21aに近接している。
以上のようにして、本実施例に係る水槽用水中ろ過装置10は構成されている。
【0035】
次に、本実施例に係る水槽用水中ろ過装置10の作用について説明する。
【0036】
図5において、水槽用水中ろ過装置10を水で満たされた水槽の中の任意の位置に設置する。図示しないエアポンプから供給された空気Aは、連結パイプ1から、ろ過材収納ケース20の底部21に設けられた空気供給通路21bに送り込まれる。空気供給通路21bへ送り込まれた空気Aは、空気供給通路21bの端部に設けられた気泡放出口21aから、ろ過材本体32に形成された貫通路32aに放出される。この際、空気Aは、気泡放出口21aに備えられたエアストーン24を介することで、微細な気泡2となる。貫通路32aの一端である上流側端32uは、気泡放出口21aに近接しているため、気泡2はすべて貫通路32aへ放出される。貫通路32aへ放出された気泡2は、浮上して貫通路32aの他端である下流側端32dに達する。
【0037】
気泡放出口21aから放出され、貫通路32a内を上流側端32uから下流側端32dへ浮上した気泡2により、貫通路32a内には上昇水流C1が生じる。貫通路32a内に生じた上昇水流C1は、水槽用水中ろ過材30に備えられた羽根具33に当たる。上昇水流C1が羽根具33に当たると、羽根具33に設けられた羽根(大羽根33ab、小羽根33as)により水流の向きが変化して揚力が発生する。発生した揚力が羽根具33に働くことにより、ろ過材本体32と羽根具33とが、回転軸31と共に回転する。すなわち、水槽用水中ろ過材30が回転する。
【0038】
特に、本実施例では、羽根具33を大羽根具33bと小羽根具33sとの二段構成としたので、羽根具が一段構成である場合と比べて水流の影響を受けやすくすることができる。また、軸方向から視した場合に、小羽根具33sの小羽根33asが、大羽根具33bの大羽根33ab,33abの陰に隠れないように配置されている。この構成により、水流が確実に羽根具33に当たり揚力が発生する。したがって、発生した揚力が羽根具33に働くことにより、羽根具33を備えた水槽用水中ろ過材30を確実に回転させることができる。
【0039】
上昇水流C1により貫通路32a内が揚水されると、水槽用水中ろ過材30付近の水が、ろ過材本体32を介して側面側から貫通路32aに引き込まれる。同時に、水槽用水中ろ過装置10付近の水も、側壁部22に設けられた側壁スリット22sおよびフタ部23に設けられたフタ部スリット23sを介してろ過材収納ケース20内に引き込まれる。側壁スリット22s、フタ部スリット23sの開口面積は狭いため、側壁スリット22s、フタ部スリット23sからろ過材収納ケース20内に引き込まれる水の流れが速くなる。水の流れが速くなると側壁スリット22s、フタ部スリット23s付近では水圧が低下する。側壁スリット22s、フタ部スリット23s付近の水圧が低下すると、側壁スリット22s、フタ部スリット23s周囲の水圧との間で差が生じる。水圧に差が生じると、水は側壁スリット22s、フタ部スリット23sを介してろ過材収納ケース20内に強く引き込まれる。
【0040】
特に、本実施例では、側壁スリット22s、フタ部スリット23sの開口面積を最小限とした。開口面積を最小限とすることで、水槽用水中ろ過装置10が水を吸引する力を向上させることができる。水を吸引する力が向上するので、水槽用水中ろ過装置10に収納されたろ過材本体32は、離れた場所にあるゴミや、大きなゴミも吸着することができる。
【0041】
ろ過材本体32を介して側面側から貫通路32aに引き込まれた水に含まれるゴミは、貫通路32aを囲うろ過材本体32に付着する。仮に、ゴミの一部がろ過材本体32を通過しても、通過したゴミはすべて活性炭フィルタ34に付着する。ろ過材本体32および活性炭フィルタ34にろ過された水は、貫通路32a内を上昇水流C1とともに上昇する。この様にして、水槽内の水は循環され、水槽用水中ろ過装置10によってろ過される。特に、本実施例では、ろ過材本体32が回転しているため、ろ過材本体32の全体で均一に水中のゴミを吸着することができる。
【0042】
回転している水槽用水中ろ過材30は、ろ過材本体32が吸着したゴミの量がゴミ吸着許容量を超えると停止する。すなわち、吸着したゴミがろ過材本体32に蓄積すると、ろ過材本体32は吸着したゴミの量に応じて重くなるとともに目が詰まる。重くなり、目が詰まったろ過材本体32を備えた水槽用水中ろ過材30は回転が妨げられる。水槽用水中ろ過材30の回転が妨げられると、回転速度は遅くなり、最終的に回転は停止する。
【0043】
水槽用水中ろ過材30が回転を停止した時期を目安として、ろ過材本体32または水槽用水中ろ過材30を交換することができる。交換に際し、ろ過材収納ケース20のフタ部23は嵌合部23bによって側壁部22と着脱可能であるため、側壁部22から外すことができる。ろ過材本体32または水槽用水中ろ過材30を交換する時期の目安は、水槽用水中ろ過材30の回転が完全に停止した時期だけでなく、回転が遅くなった時期としてもよい。
なお、ゴミ吸着許容量とは、ろ過材本体が吸着することができる水中のゴミの最大許容容量をいう。ゴミ吸着許容量は、ろ過材本体の材質や形状によって異なる。
【0044】
一方、貫通路32a内を浮上して下流側端32dに達した気泡2は、水槽用水中ろ過材30の回転により撹拌され、羽根具33近辺の撹拌水流C2とともに、回転軸31の径方向に流れる。特に、本実施例では、羽根具33が貫通路32aの端に備えられているため、すべての気泡2が羽根具33により撹拌水流C2とともに流れる。撹拌水流C2とともに流れた気泡2は浮力により更に浮上し、フタ部23に形成された気泡排出口23aから水槽用水中ろ過装置10の外へ排出される。また、気泡2の一部は、フタ部スリット23sから排出される。なお、気泡排出口23aには、水槽用水中ろ過材30の回転軸31を支持する支持具4が備えられている。しかし、支持具4に設けられた複数の突起を介して支持具4と気泡排出口23aの内壁との間には隙間が形成されているため、気泡2はこの隙間を通って浮上することができる。
【0045】
特に、本実施例では、羽根具33を大羽根具33bと小羽根具33sとで二段構成としている。したがって、すべての気泡2が漏れなく羽根具33により大きく撹拌される。すわなち、羽根具が大羽根具33bのみで構成されていると、大羽根具33bの大羽根33ab,33abの間を気泡2の一部が通過してしまう場合がある。そこで、羽根具33を小羽根具33sと大羽根具33bとの二段構成とした。この構成により、大羽根33ab,33abの間を気泡2の一部が通過してしまうのを防ぐことができる。また、すべての気泡2が漏れなく羽根具33により大きく撹拌される。更に、本実施例では、軸方向から視した場合に、小羽根具33sの小羽根33asが、大羽根具33bの大羽根33abの陰に隠れないように配置されている。この構成により、大羽根33ab,33abの間を気泡2の一部が通過してしまうのを確実に防ぐことができる。
【0046】
上記したように、本実施例に係る水槽用水中ろ過材30では、回転軸31と、回転軸31が貫通する貫通路32aが設けられたろ過材本体32と、回転軸31に貫通され、回転軸31を中心にして複数の羽根(大羽根33ab、小羽根33as)が放射状に設けられた羽根具33とが備えられ、羽根具33が貫通路32aと同軸上に2つ備えられ、ろ過材本体32と羽根具33とが、回転軸31と共に回転する構成とした。この構成により、水槽用水中ろ過材30を介して羽根具33を回転させることで気泡2が撹拌されて、気泡が真上に浮上し続けて水面に到達する場合と比べて水中における気泡2の滞留時間を延ばすことができる。
したがって、気泡2中の酸素を効率よく水中に溶解させることができる。また、水中の溶存酸素を上昇させることができる。
【0047】
特に、羽根具33を二段構成としているため、更に水流の影響を受けやすくなる。また、水槽用水中ろ過材30を更に効率よく回転させ、気泡2を更に撹拌させることができる。
【0048】
また、本実施例に係る水槽用水中ろ過装置10では、水槽用水中ろ過材30と、図示しないエアポンプから供給された空気が気泡2として放出される気泡放出口21aが設けられ、この気泡放出口21aの周りに多孔質材3が備えられた底部21と、この底部21の縁に連接され、複数の側壁スリット22sが設けられた側壁部22と、この側壁部22の縁と着脱可能であり、前記気泡2が排出される気泡排出口23aが設けられたフタ部23とからなるろ過材収納ケース30とが備えられ、水槽用水中ろ過材30は、回転軸31が気泡放出口21aと気泡排出口23aとに支持され、気泡放出口21aから放出された気泡の浮上により生じる水流が羽根具33に当たって回転する構成とした。
したがって、回転する水槽用水中ろ過材30の広い範囲で水中のゴミを均一に吸着することができる。
【0049】
特に、側壁スリット22sの開口面積を最小限とすることで、水槽用水中ろ過装置10が水を吸引する力を向上させることができる。また、水槽用水中ろ過装置10は、離れた場所にあるゴミや、大きなゴミを吸着することができる。
【0050】
また、回転している水槽用水中ろ過材30は、ろ過材本体32に吸着したゴミの量がゴミ吸着許容量を超えると動きが遅くなる、あるいは停止する構成とした。この構成により、水槽用水中ろ過材30の回転が停止する時期を、ろ過材本体32または水槽用水中ろ過材30を交換する時期の目安とすることができる。
したがって、ろ過材本体32または水槽用水中ろ過材30の交換時期を容易に判断することができる。なお、ろ過材本体32または水槽用水中ろ過材30を交換する時期の目安は、水槽用水中ろ過材30の回転が完全に停止した時期だけでなく、回転が遅くなった時期としてもよい。
【0051】
また、羽根具33を、ろ過材収納ケース20に収納され、貫通路32aの端に備えられる構成とした。この構成により、ろ過材本体32の貫通路32aから浮上したすべての気泡2は漏れなく羽根具33によって大きく撹拌される。
したがって、気泡2中の酸素を更に効率よく水中に溶解させることができる。また、水中の溶存酸素を更に上昇させることができる。
【0052】
上記した実施例によれば、羽根具33を、大羽根具33bと小羽根具33sとの2つの羽根具による二段構成とした。しかし、羽根具は二段構成に限られず、一段とした簡便な構成でもよく、または3つ以上の多段構成としてもよい。一段構成とすれば、部品点数が減り、製造時の作業面で簡便となり、コスト面で安価となる。多段構成とすれば、水流の影響を受けやすく、また、気泡が漏れなく撹拌される。ただし、上記した実施例のように、羽根具は、大羽根具と小羽根具との2つの羽根具による二段構成とすることが好ましい。一段構成とした場合に比べて、十分な回転が得られるためである。また、多段構成とした場合と比べて、羽根具の数が増えて水槽用水中ろ過装置が必要以上に大きくなることがないためである。
【0053】
また、羽根具を、ろ過材本体の一端にのみ設けるのではなく、ろ過材本体の両端に設けてもよい。また、回転軸の下流側先端をろ過材収納ケースのフタ部に設けられた気泡排出口から突出させ、気泡排出口の先端に羽根具を備えてもよい。ただし、上記した実施例のように、羽根具がろ過材収納ケースに収納され、貫通路の端に備えられる構成とすることが好ましい。ろ過材本体に設けられた貫通路から浮上したすべての気泡が漏れなく羽根具によって大きく撹拌されるからである。
【0054】
また、複数の羽根具の大きさを、大小異ならせずに同一としてもよい。また、大羽根具と小羽根具との周方向における位置関係を、どのように配置しても本発明の効果を具備して実施することができる。
【0055】
上記した実施例によれば、羽根具33に設けられた羽根(大羽根33ab、小羽根33as)の形状を一般的なプロペラ型とし、枚数を8枚とした。しかし、羽根の形状はプロペラ型に限られず、また、羽根の枚数は8枚以上、または以下であってもよい。
【0056】
羽根具の数や位置関係、および、羽根の角度や形状や枚数は、上記したいずれの構成であってもよい。すなわち、羽根具に設けられた羽根が水流による揚力を受けて、水槽用水中ろ過材を回転させることができる構成であればよい。
【0057】
また、上記した実施例によれば、ろ過材本体32は、筒状に形成され、平面(上面)において歯車のような形状である(図4参照)。しかし、上記した実施例に限られず、ろ過材本体の形状は適宜変更することができる。
また、上記した実施例によれば、ろ過材本体32は、吸着したゴミによる汚れ具合を確認できるように、無模様、白色とした。しかし、本実施例に係る回転している水槽用水中ろ過材30では、ろ過材本体32に吸着したゴミの量がゴミ吸着許容量を超えると停止する構成としたため、ろ過材本体32の汚れ具合を目視で確認する必要がない。
したがって、ろ過材本体に模様や彩色を施すことができるため、鑑賞上も好ましい形態に適宜変更することができる。
【0058】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 連結パイプ
2 気泡
3 多孔質材
4 支持具
10 水槽用水中ろ過装置
20 ろ過材収納ケース
21 底部
21a 気泡放出口
21b 空気供給通路
22 側壁部
22s 側壁スリット
23 フタ部
23a 気泡排出口
23b 嵌合部
23s フタ部スリット
24 エアストーン
30 水槽用水中ろ過材
31 回転軸
32 ろ過材本体
32a 貫通路
32d 下流側端
32u 上流側端
33 羽根具
33b 大羽根具
33s 小羽根具
33ab 大羽根
33as 小羽根
34 活性炭フィルタ
35 軸支持筒
A 空気
C1 上昇水流
C2 撹拌水流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸が貫通する貫通路が設けられたろ過材本体と、
前記回転軸に貫通され、前記回転軸を中心にして複数の羽根が放射状に設けられた羽根具と、
を備え、
前記羽根具が、前記貫通路と同軸上に1又は複数備えられ、
前記ろ過材本体と前記羽根具とが、前記回転軸と共に回転する、
ことを特徴とする水槽用水中ろ過材。
【請求項2】
請求項1に記載の水槽用水中ろ過材と、
気体が気泡として放出される気泡放出口が設けられ、この気泡放出口の周りに多孔質材が備えられた底部と、この底部の縁に連接され、複数の側壁スリットが設けられた側壁部と、この側壁部の縁と着脱可能であり、前記気泡が排出される気泡排出口が設けられたフタ部と、からなるろ過材収納ケースと、
を備え、
前記水槽用水中ろ過材は、前記回転軸が前記気泡放出口と前記気泡排出口とに支持され、前記気泡放出口から放出された気泡の浮上により生じる水流が前記羽根具に当たって回転する、
ことを特徴とする水槽用水中ろ過装置。
【請求項3】
回転している前記水槽用水中ろ過材は、前記ろ過材本体に吸着したゴミの量がゴミ吸着許容量を超えると動きが遅くなる、あるいは停止する、
ことを特徴とする請求項2に記載の水槽用水中ろ過装置。
【請求項4】
前記羽根具は、前記ろ過材収納ケースに収納され、前記貫通路の端に備えられている、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の水槽用水中ろ過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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