説明

水槽覆蓋システム

【課題】比較的長いスパンであっても、覆蓋部材間の段差を小さくすることができ、十分な荷重強度を確保できる可動式の覆蓋部材を使用した水槽覆蓋システムを提供する。
【解決手段】覆蓋部材14A,14B,14Cにはそれぞれ、開口12aを覆う天板15A,15B,15Cと、各天板15A,15B,15Cから下方に延びる各一対の脚板16A,16B,16Cとが少なくとも設けられ、覆蓋部材14B,14Cの天板15B,15Cには、開口12aを跨ぐ方向に伸び且つ回動可能に取り付けられた回動補強板20Bb,20Cbがそれぞれ設けられ、覆蓋部材14B,14Cにそれぞれ覆蓋部材14A,14Bが収納される際に各回動補強板20Bb,20Cbが各天板15B,15Cに沿って折り畳まれ、かつ、被収納部材として機能する覆蓋部材14A,14Bが引き出される際に各回動補強板20Bb,20Cbが自重に基づき垂下される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理施設用水槽の上部開口を覆う可動式の覆蓋部材を使用した水槽覆蓋システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水処理施設用水槽の上部開口を覆う可動式の覆蓋部材を使用した水槽覆蓋システムが知られている。
【0003】
水処理施設のうち、例えば、下水処理施設には、沈砂槽、沈殿槽、生物反応槽などの大型水槽が設置されている。これらの水槽の上部開口は、安全上、衛生上、或いは、環境上などの観点から覆蓋部材によって覆われている。
【0004】
図1において、1は水処理施設、2は水槽、3a,3b,3cはレール部材、4A,4B,4Cは覆蓋部材である。
【0005】
本従来例に係る水槽覆蓋システムは、各一対のレール部材3a,3b,3cと、複数の覆蓋部材4A,4B,4Cとによって構成されている。
【0006】
水槽2は上部に開口2aを有しており、開口2aは略矩形状を呈している。
【0007】
水槽2を囲う周縁部のうち互いに対向する周縁部2b,2bには、開口2aを挟んで両側に一対のレール部材3a,3aが敷設されており、レール部材3a,3aの両外側にはレール部材3b,3bが敷設され、更に、レール部材3b,3bの両外側にはレール部材3c,3cが敷設されている。
【0008】
開口2aの上部には、覆蓋部材4A,4B,4Cが複数設けられており、覆蓋部材4A,4B,4Cは周縁部2b,2b間を跨いで開口2aを覆っている。
【0009】
そして、覆蓋部材4A,4B,4Cは、各一対のレール部材3a,3b,3cに沿って、すなわち、開口2aを跨ぐ方向に存在する一対の周縁部2b,2bに沿って移動可能となっている。
【0010】
覆蓋部材4Aは覆蓋部材4Bの内部に収納可能となっており、覆蓋部材4Bは覆蓋部材4Cの内部に収納可能となっている。
【0011】
本従来例の水槽覆蓋システムでは、これらの覆蓋部材4A,4B,4Cをそれぞれ相対的に移動させることにより、開口2aを開閉するようになっている。
【0012】
覆蓋部材4Aは、天板5Aと、脚板6Aとを有しており、これらは、いずれもFFU(Fiber reinforced Foamed Urethane:繊維強化発泡ウレタン)によって形成されている。
【0013】
天板5Aと、脚板6A,6Aとは平面視形状が略長方形状を呈している。
【0014】
一対の脚板6A,6Aは、天板5Aの長手方向両端部に接合されており、それぞれ天板5Aの下面側に向かって立設されている。
【0015】
各脚板6Aの下端部には、この下端部の長手方向両端付近に、一対の車輪(図示省略)がそれぞれ取り付けられている。
【0016】
覆蓋部材4B,4Cの構成は覆蓋部材4Aの構成と略同一であるので説明を省略するが、以下の説明では、対応する部分には対応した符号を用いて説明する。例えば、覆蓋部材4Bの天板5Bに対応させて、覆蓋部材4Cの天板の符号を5Cなどとする。
【0017】
覆蓋部材4Aはレール部材3a,3a上に載置され、覆蓋部材4Bはレール部材3b,3b上に載置され、覆蓋部材4Cはレール部材3c,3c上に載置されている。
【0018】
覆蓋部材4A,4B,4Cは、それぞれ高さと開口2aを跨ぐ方向の長さとが異なっており、覆蓋部材4A,4B,4Cをレール部材3a,3b,3c上で移動させる際に高さ方向や長さ方向には互いに干渉しないようになっている。
【0019】
本従来例に係る覆蓋部材4A,4B,4Cは、幅(移動方向の長さ)が約1m、スパン(架け渡し方向の長さ)が約2m程度になっており、天板5A,5B,5Cの厚さは1cm程度になっている。
【0020】
例えば水槽の保守点検の際には、覆蓋部材4Aと覆蓋部材4Bとを覆蓋部材4Cの内部に収納することにより水槽の上部を開放して水槽の点検を行う。
【0021】
この他に水槽覆蓋システムに関連するものとしては、大型の覆蓋部材でも比較的小さい力で移動させることが可能な貯水槽用の覆蓋部材が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−8245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ところで、覆蓋部材の強度は、保守点検などの際に作業者が覆蓋部材の上に載ることを前提として決められている。
【0023】
近年、浄水場や下水処理場などの水処理施設において、設備の大型化に伴い大型の水槽が設置されるようになり、6m以上のスパンの覆蓋部材が必要となっている。
【0024】
従来例の水槽用覆蓋システムでは、覆蓋部材4A,4B,4Cのスパンが2m以下の場合には、厚さ約1cmの天板5A,5B,5Cであっても強度は十分であり、図2(a)に示すように、天板5A,5B,5Cは撓まない。
【0025】
しかしながら、幅が約1mに対してスパンを2mより長く、例えば、6m程度にすると、厚さ約1cmの天板5A,5B,5Cでは強度が不十分となり、図2(b)に示すように、天板5A,5B,5Cの中央部に自重による撓みが生じてしまうという問題があった。
【0026】
しかも、保守点検などの際に覆蓋部材4A,4B,4Cの上に作業者が載るには強度が不十分であった。
【0027】
そこで、図2(c)に示すように、覆蓋部材4A,4B,4Cに補強のために長手方向に沿って梁板7A,7B,7Cを設けると、天板5Aと梁板7Bとの干渉や、天板5Bと梁板7Cとの干渉を避けるために、天板5Aに対して天板5Bの高さを梁板7B分だけ高くし、天板5Bに対して天板5Cの高さを梁板7C分だけ高くする必要が生じる。
【0028】
しかも、スパンが長くなればなるほど、強度を確保するために梁板7A,7B,7Cの高さを高くする必要があり、梁板7A,7B,7Cの高さを高くすると、一層、天板5A,5B,5C間の段差が大きくなってしまう。
【0029】
このように、補強のために梁板7A,7B,7Cを設けると、天板5A,5B,5C間の段差が大きくなって、保守点検などの際に、作業者が覆蓋部材4A,4B,4C上に載って作業をする場合に、足下が悪くなってしまうという問題があった。
【0030】
そこで本発明では、比較的長いスパンであっても、覆蓋部材間の段差を小さくすることができ、十分な荷重強度を確保できる可動式の覆蓋部材を使用した水槽覆蓋システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、水処理施設用水槽の略矩形状の上部開口を跨いで覆う少なくとも2つ以上の覆蓋部材が前記開口を跨ぐ方向に存在する一対の周縁部に沿って移動可能に設けられ、
前記覆蓋部材の一方は前記覆蓋部材の他方を収納する収納部材として機能し、前記覆蓋部材の他方は前記覆蓋部材の一方に収納される被収納部材として機能し、
前記被収納部材として機能する覆蓋部材と前記収納部材として機能する覆蓋部材とを相対移動させることにより前記開口を開閉する水槽覆蓋システムであって、
前記覆蓋部材には、前記開口を覆う天板と、該天板から下方に延びる一対の脚板とが少なくとも設けられ、
前記収納部材として機能する覆蓋部材の天板には、前記開口を跨ぐ方向に伸び且つ回動可能に取り付けられた回動補強板が設けられ、
前記収納部材として機能する覆蓋部材に前記被収納部材として機能する覆蓋部材が収納される際に前記回動補強板が天板に沿って折り畳まれ、かつ、前記被収納部材として機能する覆蓋部材が引き出される際に前記回動補強板が自重に基づき垂下されることを特徴とする水槽覆蓋システムを特徴としている。
【0032】
そして、請求項2に記載された発明は、前記回動補強板が垂下した状態で前記一対の脚板に固定可能とされている請求項1に記載された水槽覆蓋システムを特徴としている。
【発明の効果】
【0033】
このように構成された本発明の請求項1に記載されたものは、収納部材から被収納部材が引き出された際には、収納部材の回動補強板が自重によって垂下した状態になるので、この垂下した回動補強板により、収納部材の天板が上からの荷重に対して補強され、開口を跨ぐ方向の長さが比較的長い覆蓋部材であっても、自重により天板が撓むことはなく、天板に保守点検を行う作業者が載っても撓まない十分な強度が得られる。
【0034】
また、収納部材に被収納部材が収納された際には、収納部材の回動補強板が回動して天板に沿って折り畳まれ、被収納部材の天板と収納部材の回動補強板との高さ方向の干渉が回避されるので、被収納部材の天板と収納部材の天板との段差を垂下時の回動補強板の高さ分だけ小さくすることができる。
【0035】
そして、被収納部材の天板と収納部材の天板との段差を小さくすると、保守点検を行う作業者が覆蓋部材上を歩くのに足下がよい。
【0036】
更に、請求項2に記載されたものは、回動補強板が一対の脚板に固定可能とされているので、回動補強板を一対の脚板に固定することによって、回動補強板が不必要に動いてしまうのを防ぐことができる。
【0037】
また、回動補強板を一対の脚板に固定することによって、天板が回動補強板を介して一対の脚板に固定されるので、上からの荷重に対する天板の強度を一層強くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明に係る実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0039】
〈構成〉
図3において、11は水処理施設、12は水槽、13a,13b,13cはレール部材、14A,14B,14Cは覆蓋部材である。
【0040】
本実施例に係る水槽覆蓋システムは、各一対のレール部材13a,13b,13cと、複数の覆蓋部材14A,14B,14Cとによって構成されている。
【0041】
水槽12は上部に開口12aを有しており、開口12aは略矩形状を呈している。
【0042】
水槽12を囲う周縁部のうち互いに対向する周縁部12b,12bには、開口12aを挟んで両側に一対のレール部材13a,13aが敷設されており、レール部材13a,13aの両外側にはレール部材13b,13bが敷設され、更に、レール部材13b,13bの両外側にはレール部材13c,13cが敷設されている。
【0043】
開口12aの上部には、覆蓋部材14A,14B,14Cが複数設けられており、覆蓋部材14A,14B,14Cは周縁部12b,12b間を跨いで開口12aを覆っている。
【0044】
そして、覆蓋部材14A,14B,14Cは、各一対のレール部材13a,13b,13cに沿って、すなわち、開口12aを跨ぐ方向に存在する一対の周縁部12b,12bに沿って移動可能となっている。
【0045】
覆蓋部材14Cは覆蓋部材14Bを収納する収納部材として機能するようになっており、覆蓋部材14Bは覆蓋部材14Cに収納される被収納部材として機能する一方で覆蓋部材14Aを収納する収納部材として機能するようになっており、覆蓋部材14Aは覆蓋部材14Bに収納される被収納部材として機能するようになっている。
【0046】
本実施例の水槽覆蓋システムでは、これらの覆蓋部材14A,14B,14Cをそれぞれ相対的に移動させることにより、開口12aを開閉するようになっている。
【0047】
図4に示すように、被覆蓋部材として機能する覆蓋部材14Aは、天板15Aと、脚板16Aと、梁板17Aと、補強部材18Aとを有しており、これらは、いずれもFFUによって形成されている。
【0048】
FFU(Fiber reinforced Foamed Urethane)とは繊維強化発泡ウレタンのことであり、本実施例のFFU製板材は、繊維にガラス長繊維を用いている。
【0049】
FFUは、束ねたガラス長繊維をほぐしながらウレタン樹脂を含浸させて発泡させた樹脂素材であり、木材と同程度の比重に成形可能であり、剛性が高く、薬品などに対する耐浸食性に優れている。
【0050】
FFUは、エポキシ系接着剤との親和性がよく、更に、スクリュウ釘や木ネジなどによる接合が可能であり、穴開け加工や切断がドリルやノコギリなどによって容易に行うことができる。
【0051】
図4に示すように、覆蓋部材14Aは、下側から見た際に、全体として架け渡し方向に伸びる略筐体形状を呈している。
【0052】
天板15Aと、脚板16A,16Aと、梁板17A,17Aとは平面視形状が略長方形状を呈している。
【0053】
一対の脚板16A,16Aは、天板15Aの長手方向両端部に接合されており、それぞれ天板15Aの下面側に向かって立設されている。
【0054】
一対の梁板17A,17Aは、天板15Aの幅手方向両端部に接合されており、それぞれ天板15Aの下面側に向かって立設されており、脚板16Aの端部と梁板17Aの端部とは覆蓋部材14Aの角部においてそれぞれ接合されている。
【0055】
天板15Aの裏面側には、複数の補強部材18Aが、天板15Aの長手方向に沿ってハシゴ状に等間隔に並べて接合されており、各補強部材18Aの両端部はそれぞれ対向する梁板17A,17Aの各内側面に接合されている。
【0056】
各脚板16Aの下端部には、この下端部の長手方向両端付近に、一対の車輪19A,19Aがそれぞれ取り付けられている。
【0057】
車輪19Aは周方向に溝が設けられたプーリー様の形状を呈しており、レール部材13aの上に車輪19Aが載った際に、車輪19Aがレール部材13aの上端部から脱落しないようになっている。
【0058】
図5に示すように、収納部材として機能する覆蓋部材14Bは、天板15Bと、脚板16Bと、梁板17Bと、補強部材18Bと、支持板20Baと、回動補強板20Bbとを有している。これらは、いずれもFFUによって形成されている。
【0059】
天板15Bと、脚板16B,16Bと、梁板17Bと、回動補強板20Bbとは平面視形状が略長方形状を呈している。
【0060】
一対の脚板16B,16Bは、天板15Bの長手方向両端部に接合されており、それぞれ天板15Bの下面側に向かって立設されている。
【0061】
梁板17Bと支持板20Baとは、天板15Bの幅手方向両端部に接合されており、それぞれ天板15Bの下面側に向かって立設されており、脚板16Bの端部と梁板17Bの端部と支持板20Baの端部とは覆蓋部材14Bの角部においてそれぞれ接合されている。
【0062】
天板15Bの裏面側には、複数の補強部材18Bが、天板15Bの長手方向に沿ってハシゴ状に等間隔に並べて接合されており、各補強部材18Bの両端部はそれぞれ対向する梁板17Bと支持板20Baとの各内側面に接合されている。
【0063】
梁板17Bの内側面には、梁板17Bの長手方向に沿って緩衝用のクッション部材23Bが貼設されている。
【0064】
各脚板16Bの下端部には、この下端部の長手方向両端付近に、一対の車輪19B,19Bがそれぞれ取り付けられている。
【0065】
車輪19Bは周方向に溝が設けられたプーリー様の形状を呈しており、レール部材13bの上に車輪19Bが載った際に、車輪19Bがレール部材13bの上端部から脱落しないようになっている。
【0066】
支持板20Baの長手方向に沿って長手方向一端から他端に渡って等間隔に複数のヒンジ21Bが取り付けられている。
【0067】
回動補強板20Bbは天板15Bの長手方向(開口12aを跨ぐ方向)に伸びており、支持板20Baに複数のヒンジ21Bを介して回動可能に取り付けられている。
【0068】
回動補強板20Bbの両端部には、かんぬき受入金具22Ba,22Baがそれぞれ斜めに取付けられている。
【0069】
各脚板16B,16Bのかんぬき受入金具22Ba,22Baに対応する位置には、それぞれ、かんぬき用穴22Bb,22Bbが、かんぬき受入金具22Ba,22Baの傾斜に対応して斜め向きに形成されている。
【0070】
回動補強板20Bbを脚板16Bに固定する際には、かんぬき部材22Bcの握持部22Bdを持って、棒状部22Beをかんぬき用穴22Bbとかんぬき受入金具22Baの嵌合部22Bfとに貫通させて嵌合固定するようになっている。
【0071】
このように、回動補強板20Bbは天板15Bから下方に向かって垂下した状態で脚板16Bに固定可能となっている。
【0072】
覆蓋部材14Cの構成は覆蓋部材14Bの構成と略同一であるので説明を省略するが、以下の説明では、対応する部分には対応した符号を用いて説明する。例えば、覆蓋部材14Bの天板15Bに対応させて、覆蓋部材14Cの天板の符号を15Cなどとする。
【0073】
図3または図6に示すように、覆蓋部材14Aは覆蓋部材14Bに収納可能となっており、覆蓋部材14Bは覆蓋部材14Cに収納可能となっている。
【0074】
覆蓋部材14Aはレール部材13a,13a上に載置され、覆蓋部材14Bはレール部材13b,13b上に載置され、覆蓋部材14Cはレール部材13c,13c上に載置されている。
【0075】
覆蓋部材14A,14B,14Cは、高さと開口12aを跨ぐ方向の長さとがそれぞれ異なっており、覆蓋部材14A,14B,14Cをレール部材13a,13b,13c上で移動させる際に高さ方向や長さ方向には互いに干渉しないようになっている。
【0076】
本実施例に係る覆蓋部材14A,14B,14Cは、幅(移動方向の長さ)が約1m、スパン(架け渡し方向の長さ)が約6m程度になっており、天板15A,15B,15Cの厚さは1cm程度になっている。
【0077】
〈使用方法〉
通常は、水槽12の開口12aが複数の覆蓋部材14A,14B,14Cによって覆われた状態になっているが、水槽12の保守点検などの際には、いくつかの覆蓋部材14A,14B,14Cを移動させて、開口12aを開放して保守点検作業を行なう。
【0078】
複数の覆蓋部材14A,14B,14Cのうち、例えば、隣接している3つの覆蓋部材14A,14B,14Cについて、覆蓋部材14Aと覆蓋部材14Bとを覆蓋部材14Cの内部に収納する場合を説明する。
【0079】
まず、覆蓋部材14Bのかんぬき部材22Bcを引き抜いて回動補強板20Bbを回動可能とし、図7(a)に示すように、覆蓋部材14Aを覆蓋部材14Bに向けて移動させると、覆蓋部材14Aが覆蓋部材14Bの回動補強板20Bbを押込みながら、覆蓋部材14Bの内部に入り込む。
【0080】
このように被収納部材として機能する覆蓋部材14Aが収納部材として機能する覆蓋部材14Bに収納される際に覆蓋部材14Bの回動補強板20Bbが天板15Bに沿って折り畳まれる。
【0081】
そして、図7(b)に示すように、覆蓋部材14Aの梁板17Aの外側面が覆蓋部材14Bの梁板17Bの内側面に設けられたクッション部材23Bに突き当たるまで覆蓋部材14Aを押し込む。
【0082】
次に、覆蓋部材14Cのかんぬき部材22Ccを引き抜いて回動補強板20Cbを回動可能とし、図7(c)に示すように、覆蓋部材14Aと共に覆蓋部材14Bを覆蓋部材14Cに向けて移動させると、覆蓋部材14Bが覆蓋部材14Cの回動補強板20Cbを押込みながら、覆蓋部材14Bが覆蓋部材14Cの内部に入り込む。
【0083】
このように被収納部材として機能する覆蓋部材14Bが収納部材として機能する覆蓋部材14Cに収納される際に覆蓋部材14Cの回動補強板20Cbが天板15Cに沿って折り畳まれる。
【0084】
そして、覆蓋部材14Bの梁板17Bの外側面が覆蓋部材14Cの梁板17Cの内側面に設けられたクッション部材23Cに突き当たるまで覆蓋部材14Bを押し込む。
【0085】
このようにして、覆蓋部材14Aと覆蓋部材14Bとを覆蓋部材14Cの内部に収納する。
【0086】
水槽12の保守点検が終了したら、開口12aを再び複数の覆蓋部材14A,14B,14Cによって覆う。
【0087】
まず、覆蓋部材14Aを覆蓋部材14Bの内部から引き出す。
【0088】
このように収納部材として機能する覆蓋部材14Bから被収納部材として機能する覆蓋部材14Aが引き出される際に回動補強板20Bbが自重に基づき垂下される。
【0089】
そして、かんぬき部材22Bcをかんぬき用穴22Bbから差し込んで、かんぬき受入金具22Baに嵌合させて、回動補強板20Bbを脚板16Bに固定する。
【0090】
次に、覆蓋部材14Bを覆蓋部材14Cの内部から引き出す。
【0091】
このように収納部材として機能する覆蓋部材14Cから被収納部材として機能する覆蓋部材14Bが引き出される際に回動補強板20Cbが自重に基づき垂下される。
【0092】
そして、かんぬき部材22Ccをかんぬき用穴16Cbから差し込んで、かんぬき受入金具22Caに嵌合させて、覆蓋部材14Cの回動補強板20Cbを脚板16Cに固定する。
【0093】
このような作業を繰り返し、複数の覆蓋部材14A,14B,14Cを移動し、互いに隣接配置させることによって開口12aを覆う。
【0094】
〈作用効果〉
図8(c)に示されるように、例えば、覆蓋部材14Cから覆蓋部材14Bが引き出された場合には、覆蓋部材14Cの回動補強板20Cbが自重によって垂下した状態になる。
【0095】
この状態における天板15Cの上端面から回動補強板20Cbの下端縁までの長さcは、従来例の天板5Cの厚さa(図8(a)参照)に比べて十分に長いので、天板15Cが、この垂下した回動補強板20Cbにより、上からの荷重に対して補強され、スパンが比較的長い覆蓋部材14Cであっても、自重により天板15Cが撓むことはなく、天板15Cに保守点検を行う作業者が載っても撓まない十分な強度が得られる。
【0096】
同様に、覆蓋部材14Bについても、自重により撓むことはなく、保守点検を行う作業者が載っても撓まない十分な強度が得られる。
【0097】
また、覆蓋部材14Cに覆蓋部材14Bが収納された場合には、図6または図8(b)に示されるように、覆蓋部材14Cの回動補強板20Cbが回動して天板15Cに沿って折り畳まれ、覆蓋部材14Bの天板15Bと覆蓋部材14Cの回動補強板20Cbとの高さ方向の干渉が回避されるので、天板15Bと天板15Cとの段差を垂下時の回動補強板20Cbの高さ分だけ小さくすることができる。
【0098】
同様に、覆蓋部材14Bに覆蓋部材14Aが収納された場合には、天板15Aと天板15Bとの段差を垂下時の回動補強板20Bbの高さ分だけ小さくすることができる。
【0099】
したがって、従来例の覆蓋部材4A,4B,4Cにおいて、それぞれ梁板7A,7B,7Cを設けた場合の天板5A,5B,5C間の段差(図9(a)参照)に比べて、本実施例の天板15A,15B,15C間の段差(図9(b)参照)を小さくすることができて、保守点検を行う作業者が覆蓋部材上を歩くのに足下がよい。
【0100】
更に、覆蓋部材14Bの回動補強板20Bbが一対の脚板16B,16Bに固定可能とされているので、回動補強板20Bbを一対の脚板16B,16Bに固定することによって、回動補強板20Bbが不必要に動いてしまうのを防ぐことができる。
【0101】
また、天板15Bが回動補強板20Bbを介して一対の脚板16B,16Bに固定されるので、上からの荷重に対する天板15Bの強度を一層強くすることができる。
【0102】
覆蓋部材14Cについても同様に、回動補強板20Cbが不必要に動いてしまうのを防ぐことができ、上からの荷重に対する天板15Cの強度を一層強くすることができる。
【0103】
しかも、かんぬき部材22Bc,22Ccによる嵌合固定だけで、簡単に、回動補強板20Bb,20Cbを固定することができるので、覆蓋部材14A,14Bを収納する作業や、引き出す作業をスムーズに行うことができ、開口12aの開閉作業の作業効率がよい。
【0104】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は本発明に含まれる。
【0105】
なお、本実施例では、回動補強板20Bb,20Cbを天板15B,15Cの幅手方向端部側に設けたが、必ずしも端部側に設ける必要はない。また、梁板17B,17Cを必ずしも設ける必要ではない。例えば、図10に示す覆蓋部材14Bの変形例のように回動補強板20Bbを天板15Bの幅手方向中央部に設けてもよい。
【0106】
また、本実施例では、回動補強板20Bb,20Cbを天板15B,15Cの幅手方向片側に設けたが、必ずしも、片側だけでなくてもよい。例えば、回動補強板20Bb,20Cbを天板15B,15Cの幅手方向両側に設けてもよい。
【0107】
そして、本実施例では、覆蓋部材14A,14B,14Cの材料にFFUを用いたが、材料の素材はFFUに限らない。例えば、他の樹脂素材や、木材、アルミニューム板であってもよい。
【0108】
更に、本実施例では、覆蓋部材14A,14B,14Cの移動機構をレール部材13a,13b,13cと車輪19A,19B,19Cとによって構成したが、覆蓋部材14A,14B,14Cの移動機構はどのようなものであってもよい。例えば、電動によって開閉が行われてもよい。
【0109】
また、本実施例では、覆蓋部材14A,14Bを移動させて覆蓋部材15Cの内部に収納したが、覆蓋部材14A,14B,14Cのうち、どの覆蓋部材を移動させて収納してもよい
そして、本実施例では、かんぬき部材22Bc,22Ccの嵌合によって回動補強板20Bb,20Cbを固定したが、固定方法はどのような方法であってもよい。例えばネジによる螺合固定であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】従来例の水槽覆蓋システムの斜視図である。
【図2】従来例の水槽覆蓋システムの問題点を説明する図であり、(a)は図1のA−A線に沿った断面図、(b)は覆蓋部材のスパンを長くした場合の図、(c)は覆蓋部材の高さとスパンとを長くすると共に梁板を設けた場合の図である。
【図3】本発明の水槽覆蓋システムの斜視図である。
【図4】本発明に係る被収納部材として機能する覆蓋部材を下側から見た斜視図である。
【図5】本発明に係る収納部材として機能する覆蓋部材を下側から見た斜視図である。
【図6】図3のB−B線に沿った断面図である。
【図7】本発明の水槽覆蓋システムの使用方法を説明する図であり、図3のB−B線に沿った断面図である。(a)は収納前の状態を表し、(b)は被収納部材として機能する覆蓋部材を収納部材として機能する中央の覆蓋部材の内部に収納した状態を表し、(c)は、更に中央の覆蓋部材を収納部材として機能する他の覆蓋部材に収納した状態を表している。
【図8】本発明の水槽覆蓋システムの作用効果を説明する図であり、(a)は従来例の水槽覆蓋システムにおいて覆蓋部材のスパンを長くした場合の図、(b)は本実施例の収納部材として機能する覆蓋部材の回動補強板が垂下した状態の図、(c)は本実施例の収納部材として機能する覆蓋部材の回動補強板が天板に沿って折り畳まれた状態の図である。
【図9】本発明の水槽覆蓋システムの作用効果を説明する図であり、(a)は従来例において、高さとスパンとを長くすると共に梁板を設けた覆蓋部材を用いた場合の収納状態の図、(b)は本発明の覆蓋部材を用いた場合の収納状態の図である。
【図10】本発明に係る収納部材として機能する覆蓋部材の一変形例の斜視図である。
【符号の説明】
【0111】
11 水処理施設
12 水槽
12a 開口
14A,14B,14C 覆蓋部材
12b,12b 周縁部
15A,15B,15C 天板
16A,16B,16C 脚板
20Ab,20Bb,20Cb 回動補強板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理施設用水槽の略矩形状の上部開口を跨いで覆う少なくとも2つ以上の覆蓋部材が前記開口を跨ぐ方向に存在する一対の周縁部に沿って移動可能に設けられ、
前記覆蓋部材の一方は前記覆蓋部材の他方を収納する収納部材として機能し、前記覆蓋部材の他方は前記覆蓋部材の一方に収納される被収納部材として機能し、
前記被収納部材として機能する覆蓋部材と前記収納部材として機能する覆蓋部材とを相対移動させることにより前記開口を開閉する水槽覆蓋システムであって、
前記覆蓋部材には、前記開口を覆う天板と、該天板から下方に延びる一対の脚板とが少なくとも設けられ、
前記収納部材として機能する覆蓋部材の天板には、前記開口を跨ぐ方向に伸び且つ回動可能に取り付けられた回動補強板が設けられ、
前記収納部材として機能する覆蓋部材に前記被収納部材として機能する覆蓋部材が収納される際に前記回動補強板が天板に沿って折り畳まれ、かつ、前記被収納部材として機能する覆蓋部材が引き出される際に前記回動補強板が自重に基づき垂下されることを特徴とする水槽覆蓋システム。
【請求項2】
前記回動補強板が垂下した状態で前記一対の脚板に固定可能とされていることを特徴とする請求項1に記載された水槽覆蓋システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−74424(P2008−74424A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253861(P2006−253861)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】