説明

水洗トイレ設備

【課題】気泡を水洗水に十分拡散して、トイレ水洗効果の向上等の種々の効果を更に高める。
【解決手段】水洗トイレ設備3に備えた微細気泡発生器は、水洗水流路332に設けられる。この微細気泡発生器は、流路断面積が次第に小さくなる絞りと、絞りの流路断面積が最も小さい部分の近傍に別ラインからの気体を直接供給する気体混合部343とを備える。気体混合部343からの気体と水洗水流路332内の水との間にせん断力を発生させることにより気体をせん断し、これにより該微細気泡を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗トイレ設備、より詳しくは、気泡を水洗水に含める水洗トイレ設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の水洗トイレ設備は、例えば、特許文献1等に開示され、トイレ水洗効果の向上、水洗水量の低減、水跳ね防止及び水の衝突音低減等の種々の効果を発揮する。
【0003】
しかしながら、上記従来の水洗トイレ設備は、泡径が比較的大きい例えばミリオーダーの気泡を水洗水に含めるため、上記種々の効果を十分発揮することができない。なぜならミリオーダーの気泡は水洗水に十分に拡散しないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−88880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、気泡を水洗水に十分拡散して、トイレ水洗効果の向上等の種々の効果を更に高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水洗トイレ設備は、ボウルと、水洗水を前記ボウルに水洗水流路を介して供給する水洗機構と、泡径が0.1〜1000μmであり、前記水洗水と混合される微細気泡を発生させる微細気泡発生器と、を備えた水洗トイレ設備であって、前記発生器は、前記水洗水流路に設けられ、流路断面積が次第に小さくなる絞りと、この絞りの流路断面積が最も小さい部分の近傍に別ラインからの気体を直接供給する気体混合部とを備え、この気体混合部からの気体と前記水洗水流路内の水との間にせん断力を発生させることにより気体をせん断し、これにより前記微細気泡を発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、気泡を水洗水に十分拡散して、トイレ水洗効果の向上等の種々の効果を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1基本構成の概要図である。
【図2】図1における溶解部の断面図である。
【図3】図1における急圧変部の断面図である。
【図4】本発明の第2基本構成の概要図である。
【図5】一の代替実施形態の概要図である。
【図6A】図5における溶解部の断面図である。
【図6B】図5における溶解部の断面図である。
【図7】本発明による第1実施形態の概要図である。
【図8】図7における急圧変部の断面図である。
【図9】一の変形実施形態における急圧変部の断面図である。
【図10】別の変形実施形態の概要図である。
【図11】別の変形実施形態の概要図である。
【図12】別の変形実施形態における気体混合部のブロック図である。
【図13】他の変形実施形態におけるせん断部の概要図である。
【図14】別のせん断部の概要図である。
【図15】他の変形実施形態における超音波振動子の配置図である。
【図16A】本発明による第2実施形態の概要図である。
【図16B】第2実施形態の概要図である。
【図17】本発明による第3実施形態の概要図である。
【図18】第3実施形態における急圧変部の断面図である。
【図19】第3実施形態で使用される特性図である。
【図20】一の変形実施形態の概要図である。
【図21】一の代替実施形態の概要図である。
【図22】一の代替実施形態における急圧変部の断面図である。
【図23】別の強化された実施形態の概要図である。
【図24】一の変形実施形態の動作説明図である。
【図25】本発明による第4実施形態の概要図である。
【図26】第4実施形態における急圧変部の断面図である。
【図27】第4実施形態の動作説明図である。
【図28】一の代替実施形態の概要図である。
【図29】本発明による第5実施形態の概要図である。
【図30】第5実施形態における殺菌部の概要図である。
【図31】第5実施形態の殺菌効果等の説明図である。
【図32】一の代替実施形態の概要図である。
【図33】該実施形態における殺菌部の概要図である。
【図34】一の好ましい実施形態の概要図である。
【図35】一の変形実施形態の概要図である。
【図36】別の変形実施形態の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明の第1基本構成の水洗トイレ設備1を示す。設備1は、便器10、便座11、便座カバー12、水洗機構13及び微細気泡発生器14を備える。
【0011】
便器(ボウル)10は、例えば、ヴィテロスチャイナ又は樹脂等で形成され、開口部100aの面に隣接して積載面100bを持つ容器100と、容器100の内部と配水管(図示しない)との間に配置されるトラップ101(例えば、サイホンジェット式)とを有する。容器100は、トラップ101によりエアートラップを形成するのに十分な小量の水を含む。つまり、トラップ101は、容器100に水をためるための手段として設けられる。便座11は、開口部100a上に開閉自在に置かれる一方、便座カバー12は、便座11上に開閉自在に置かれる。
【0012】
水洗機構13は、例えば、ロータンク131及び水洗水流路132で構成され、水洗水(flushwater)をボウル10(容器100)に流路132を介して供給する。タンク131は、水供給ライン(図示しない)と連結されて、フロート弁等により該ラインからの所定量の水(水道水)をためる。流路132は、その上流端の流入口をタンク131の底に配置してボウル10に取り付けられ、流路132の下流端の流出口は、容器100内のリム100cに向けられる。従って、タンク131内の水は、水洗水として、流路132の流出口から、直接又は容器100のリム部を経て容器100内に吐き出される。
【0013】
微細気泡発生器14は、循環部140を備え、これは、タンク131に連結される両端を持つ循環流路141と、流路141の両端間に置かれるポンプ142とで構成される。ポンプ142は、微細気泡発生器14全体の駆動源であり、例えば、人感センサスイッチ又は手動スイッチ等のスイッチで作動され、流路141の一端の流入口141aから水を吸い込んで、流路141の他端の流出口141bから押し出し、これにより流路141を介してタンク131内の水を循環させる。
【0014】
更に、発生器14は、流入口141aから流出口141bに、気体混合部143、溶解部144及び析出部としての急圧変部145をこの順番に並べて備える。
【0015】
気体混合部143は、気体供給源(例えば、トイレ室内の空気等の周囲大気)と別ラインを介して繋がる弁143aと、エゼクター機構(図示しない)とで構成され、該水供給ラインからの水と該別ラインからの気体(例えば、空気)を混合して、気体混合水を溶解部144に供給する。弁143aは、逆止弁であり、別ラインから流路141内への気体の通過を許容する一方、流路141内から別ラインへの水の逆流を防止する。エゼクター機構は、流路141内に形成される絞り部等の負圧発生部であり、この発生部は弁143aの出力と連結される。従って、気体は、流路141内の水の流れから得られるエゼクター効果で、流路141内に自然に引き込まれる。なお、このような構造に限らず、エアポンプ等により気体供給源の気体を流路141内に強制的に圧入してもよい。
【0016】
溶解部144は、上記ポンプ142を構成要素として含み、ポンプ142による高圧環境下で、該気体混合水の気体の一部又は全部を該水に溶解して、気体溶解水を急圧変部145に供給する。具体的には、図2に示すように、溶解部144は、溶解槽であり、仕切り144aで分けられる1次槽(バブリング槽)144b及び2次槽(水位検知槽)144cと、1次槽144bの上部に形成される流入口144dと、2次槽144cの上部側及び下部にそれぞれ形成される排気口144e及び流出口144fとを有する。槽144b及び144cは、上部の気体還流孔及び下部の水通過孔を介して相互に連通される。流入口144dは、噴霧ノズル144gを含み、ポンプ142から圧入される気体混合水を1次槽144bに向けて高速噴霧してバブリング状態を創る。これにより、気体混合水の気体の一部は、該水通過孔を経由して流出口144fに到達するまでに溶解槽内の水に溶解され、気体溶解水が、流路141を介して急圧変部145に供給される。一方、該気体の残部は、2次槽144c内を上昇し、続いて、該気体還流孔を介して1次槽144b内に戻されるか、排気口144eを介して外部に排気される。この場合、余分な気体が排気口144eを介して外部に排気されることにより、溶解槽内の水位が一定に保たれる。
【0017】
急圧変部145は、循環流路141の流出口141bに配置され、該気体溶解水の圧力を急変させて、該気体溶解水から泡径が0.1〜1000μmであり、該水洗水と混合される微細気泡を析出及び発生させる。例えば、急圧変部145は、特殊形状のノズルであり、上流部材1451の流出口側のねじ凸部1451aを下流部材1452の流入側のねじ孔1452aに回してはめ込むことにより組み立てられる。上流部材1451は、底部が流入口に配置される円錐台状の孔1451bと、半円断面を持ち流出口側の端面上に形成される一の溝1451cとを有する。下流部材1452は、複数の孔1452b(例えば6つの孔)を持つリボルバー(拳銃)の弾倉のような形状に形成され、各孔1452bは、溝1451cと対向される。また、微小な一の隙間(微小流路)1450が、上流部材1451の流出口側の端面と下流部材1452の中央部の端面との間に形成され、隙間1450の流出口側の溝1451c側の領域がうず巻きを起こす領域となる。このような構造では、気体溶解水の圧力が隙間1450で急激に低減されて、該気体が減圧沸騰を起こす結果、上記微細気泡が該気体溶解水から析出される。続いて図3に示す矢印“A”のように、うずがうず巻きを起こす領域で発生し、図3に示す矢印“B”のように、泡径が21μm以下の均質な微細気泡だけが急圧変部145の流出口からタンク131に供給される。具体的には、うずの中心部の流速はうずの外周部のそれよりも遅いので、中心部の圧力は外周部のそれよりも低くなる結果、より小さな泡径を持つ気泡が外周部に集まる一方、より大きな泡径を持つ気泡が中心部に集まる。外周部における所定径以下の気泡は、水洗水と共にうずの外周部からタンク131内に連続的に供給される。他方、中心部における気泡は互いに衝突する結果、大きな泡径を持つ気泡が中心部にたまるが、うずは、その半径方向の速度勾配によりせん断力を持つので、大きな泡径を持つ気泡は、遠心力で外周部に移動する際にそのせん断力で小さな気泡にせん断される。従って、この構造によれば、少なくとも泡径が0.1〜1000μm(好ましくは210μm以下)である微細気泡を安定に発生させることができる。また、微細気泡の泡径は、うず巻きを起こす領域におけるうずの角速度で決定され、角速度が速いほどより小さくなるので、隙間1450から該領域への流速を調整することにより、微細気泡の泡径を所望の径に設定可能である。
【0018】
このように、微細気泡を水洗水に混合することにより、ボウルの水洗効果の向上、水洗水量の低減、水洗水に起因するボウルでの水跳ね防止及び水の衝突音低減等の効果を得ることができる。即ち、該微細気泡は水洗水に隈なく拡散して長時間留まるので、大量の微細気泡を水洗水と共にボウル内面に衝突させることができる。このとき、微細気泡は、ボウルへの衝突による破裂の力及び崩壊時に生じる超音波でボウル内の汚れを落とし、また界面に吸着特性(マランゴニ効果等)を持つので、汚れに吸着して汚れを落とす。更に、微細気泡は、懸濁物質に吸着して浮上分離し、また表面が負に帯電されることで、懸濁物質に静電吸着して懸濁物質を包み込む。水跳ね防止及び水の衝突音低減の効果は、水洗水及び微細気泡全体の摩擦抵抗の減少により得られる。微細気泡は、従来の気泡に比べてより長時間水洗水に留まるので、見かけの嵩比重を安定的に低減することができ、水洗水量を低減することができる。微細気泡が水洗水に隈なく拡散するので、水洗水全体を白濁化することができ、好ましい視覚効果が得られる。
【0019】
図4は本発明の第2基本構成の水洗トイレ設備2を示す。設備2は、便器(ボウル)20、便座21及び便座カバー22を第1基本構成のそれらと同様に備える。加えて、一の特徴により、設備2は、水洗機構23及び微細気泡発生器24を備える。
【0020】
水洗機構23は、例えば、水供給弁230、浅いタンク231及び水洗水流路232で構成され、水洗水をボウル20に流路232を介して供給する。弁230は、電磁弁で構成される供給弁(タップ)であり、水供給ライン23aと連結され、ライン23aからの水をタンク231に供給する。タンク231は、弁230からの水をためる。流路232は、上流端の流入口をタンク231の底に配置してボウル20に取り付けられ、その下流端の流出口は、ボウル20のリムに向けられる。また、機構23は、後述のポンプ242を構成要素として含み、ポンプ242は、弁230からの水をタンク231及び流路232を介してボウル20に圧送する。他方、タンク231はまた、微細気泡発生器24の構成要素として使用される。
【0021】
微細気泡発生器24は、水供給弁230から水洗水流路232に、気体混合部243、ポンプ242、溶解部としての上記タンク231、及び析出部としての急圧変部245をこの順番に並べて備える。溶解部は、ポンプ242による高圧環境下で、気体混合部243からの気体混合水の気体を溶解部内の水に溶解して、気体溶解水を急圧変部245に供給する。急圧変部245は、第1基本構成のそれと同様に構成され、流路232の下流端の流出口に配置される。このように、タンクを溶解部として使用することで、循環流路141を省略することができる。
【0022】
一の代替例において、図5に示すように、水洗トイレ設備2は、タンク231に代えて、管状の溶解部244を備える。図6A及び6Bに示すように、溶解部244は、蛇腹形状に形成され、圧力及び流速を急変させるための連続した抵抗部244aを持つ。各抵抗部244aは、中央部が外向きのC状断面を持ち、溶解部244の内部からみてC状の凹所を形成する。ポンプ242からの気体混合水が溶解部244に圧入されると、気体混合水は、図6A及び6Bに示す“C”のように、各抵抗部244aの凹所の下流側に当たって回転及び撹乱され、これにより高圧環境下で頻繁に攪拌及び混合される。同時に、溶解部244内を流れる気体混合水は、各抵抗部244aから頻繁に圧力の変化を受ける。即ち、各抵抗部244aの境界付近において、気体混合水の流速は速くなり、気体混合水の圧力は低くなる。逆に、各抵抗部244aの中央付近においては、気体混合水の流速は遅くなり、気体混合水の圧力は高くなる。それ故に、気体混合水の気体を該水に好適に溶解することができる。また、溶解されない気体は、流速が遅い各凹所の底にたまるが、より高い圧力環境下で、回転及び撹乱される気体混合水に効果的に溶解される。また、設備2の小型化が可能である。更に、加圧溶解後の気体溶解水の圧力が急圧変部245で低減されるので、極めて微細かつ均一性の高い微細気泡を生成することができる。
【0023】
図7は本発明による第1実施形態(即ち、水洗トイレ設備3)を示す。設備3は、便器(ボウル)30、便座31、便座カバー32、及び水供給弁330及び水洗水流路332で構成される水洗機構33を第2基本構成のそれらと同様に備える。加えて、一の特徴により、設備3は微細気泡発生器34を備える。
【0024】
微細気泡発生器34は、水供給弁330から水洗水流路332に、気体混合部343、ポンプ342、及びせん断部としての急圧変部345をこの順番に並べて備える。気体混合部343及びポンプ342は第2基本構成のそれらと同様であるが、溶解部を含まず、また図8に示すように、急圧変部345が、ベンチュリ管から構成され、流路332の下流端の流出口に配置される。具体的には、急圧変部345は、上流側から下流側に、円柱状の孔345a、その両側よりも径の小さいスロート345b、及び底が下流端に配置される円錐台状の孔345cを持つ。スロート345bでは、ポンプ342からの気体混合水の流速は速くなり、気体混合水の圧力は低くなるので、気体混合水の気体が膨張する。続いて、孔345cにおいて、該気体の圧力が連続的に増大されるので、該気体は連続的に収縮する。このとき、該気体は、せん断力を受けて、泡径が100〜500μmである微細気泡に分割される。このような構成によれば、析出部としての急圧変部を備える上記各設備に比べて、設備3を簡単化することができる。
【0025】
一の強化された実施形態において、微細気泡発生器34は、急圧変部345の下流側にメッシュを持つ。この構成では、微細気泡を含む水洗水がメッシュを通るので、微細気泡の泡径を更に低減することができる。例えば、泡径が数十μm(好ましくは30〜90μm)の微細気泡を生成することができる。また、所定径以下の微細気泡を含む水洗水を生成するために、急圧変部345は、下流側に急圧変部143と同様のうず巻きを起こす領域を有してもよい。
【0026】
一の変形実施形態において、図9に示すように、水洗トイレ設備3は、複数のスロートを持つ急圧変部345を備える。即ち、急圧変部345は、上流側から下流側に、円柱状の孔345a、スロート345b、円柱状の孔345c、複数の孔(分岐流路)から構成される変形スロート345d及び円柱状の孔345eを持つ。換言すると、スロート345bは一のベンチュリ管から構成される一方、変形スロート345dは、複数のベンチュリ管から構成される。また、変形スロート345dの全通過断面は、スロート345bの通過断面に等しくなるように設定され、変形スロート345dの各通過断面(径)は、微細気泡の泡径に基づいて設定される。例えば、4つの分岐流路を形成する変形スロート345dの各通過断面(径)は、スロート345bのそれの1/4(1/2)等に設定される。図8の構造では、微細気泡が一箇所に集まると連結して大きな気泡になる場合があるが、この実施形態では、変形スロート345dによりそのような大きな気泡が発生するのを防止することができる。
【0027】
別の変形実施形態において、図10に示すように、水洗トイレ設備3は、ポンプ342に代えて、水供給ライン33aの圧力を利用する。せん断部としての急圧変部345を備える設備3では、高出力の動力源を必要としないので、水供給ライン33aの圧力が所定レベル以上あれば、ポンプ342に代えて、水供給ライン33aの圧力を利用することができる。この実施形態によれば、設備3を更に簡単化することができる。
【0028】
また、図11に示すように、気体混合部343は、弁343aの入力側にオゾン発生用の高圧放電部343bを備えてもよい。この場合、オゾンを含む気体が、気体混合部343で水供給ライン33aからの水に混合されるので、オゾンを含む微細気泡を水洗水と共にボウル30に吐出することができる。微細気泡は、高い比表面積及び内部圧力を持ち、直ぐに浮上せずに水中に分散するので、微細気泡にオゾンを含めることにより、オゾンを効率的に汚物やボウル等の水洗対象物に接触させることができる。また、オゾンの強力な酸化力により高い殺菌効果及び有機物分解効果を得ることができる。それ故に、より効果的なトイレの水洗(flush) が可能となり、ボウル内全体の殺菌及び制菌に加えて、汚物、尿石及びぬめりの除去及びボウル表面への付着防止等が可能である。
【0029】
更に、図12に示すように、気体混合部343は、気体供給源(例えば周囲大気)から高圧放電部343bに、吸湿部343c及び酸素富化膜343dをこの順番に並べて備えてもよい。吸湿部343cは、除湿用のシリカゲル等を含み、酸素富化膜343dは、酸素を担持するフィルターであり、気体に酸素を付与して気体の酸素濃度を高める。気体が空気である場合、酸素濃度は、21〜40%の範囲内に高められる。このように、吸湿部343cで除湿された気体を酸素富化膜343dに供給し、酸素富化膜343dで高圧放電部343bへの気体の酸素濃度を高めることで、高圧放電部343bはオゾンを効率的に発生することができる。これにより、殺菌効果を更に高めることができる。ところで、高圧放電部等は、例えば後述の図17の構成にも適用可能である。
【0030】
他の変形実施形態において、図13に示すように、水洗トイレ設備3は、上記急圧変部345に代えて、別のせん断部を備える。このせん断部は、気体混合部343の出力直の位置で気体混合部343からの気体と水洗水流路332内の水との間にせん断力を発生させることにより、気体をせん断し、これにより気体から微細気泡を生成する。例えば、該せん断部は、水洗水流路332の絞り等で構成され、水洗水流路内の流れをジェット憤流に変え、気体混合部343が該せん断部近傍に気体を直接供給する。この場合、せん断力が気体とジェット憤流の水(水洗水)との境界面(気液せん断層)に発生するので、微細気泡を生成することができる。
【0031】
また、図14に示すように、水洗トイレ設備3は、上記急圧変部345に代えて、別のせん断部345を備えてもよい。このせん断部345は、図3の隙間1430及びうず巻きを起こす領域と同様に、それぞれ微小流路3451及びうず巻きを起こす領域3452を含む。なお、これに限らず、せん断部345は、微小流路3451及び領域3452の一方を備えてもよい。せん断部345は、微小流路3451内の気体混合水の気体(気体集合体)と水との間の境界面(気液せん断層)にその断面方向の速度勾配によってせん断力を発生し、これにより気体をせん断して微細気泡を生成する。続いて、領域3452もまた、領域3452の中心部と外周部との間の速度勾配によってせん断力を発生し、これにより気体及び微細気泡をせん断してより好適に微細気泡を生成する。これら図13及び14の構成によれば、圧力損失をより低減することができる。
【0032】
他の変形実施形態において、図15に示すように、水洗トイレ設備3は、急圧変部345に代えて、水洗水流路332に配置される超音波振動子346を備える。超音波振動子346は、水洗水流路332内の気体混合水の気体に超音波振動を伝達し、その定常波領域で気泡を微細化して微細気泡を発生する。この実施形態では、圧力損失はほぼゼロであり、また超音波の周波数を変えることで微細気泡の泡径を制御することができる。
【0033】
図16A及び16Bは本発明による第2実施形態(即ち、水洗トイレ設備4)を示す。設備4は、便器40と、便座41と、便座カバー42と、水供給弁430及び水洗水流路432で構成される水洗機構43と、気体混合部443及びせん断部としての急圧変部445で構成される微細気泡発生器44とを、図10の実施形態のそれらと同様に備える。加えて、一の特徴により、設備4は、薬液(chemical liquid)注入部45を更に備える。
【0034】
薬液注入部45は、薬液を貯留するタンク451及びタンク451の流出口に配置される薬液供給弁452で構成され、水供給弁430と気体混合部443との間の水流路内に所定量(例えば、1回当たり0.5mL)の薬液を注入する。タンク451は、例えば界面活性剤を貯留する。弁452は、弁430と同期して動作する。
【0035】
この設備4によれば、界面活性剤が水洗水流路432の上流に注入されるので、気体混合水の表面張力を低下させることができ、微細気泡の生成を促進することができる。加えて、微細気泡の界面に界面活性剤を含ませることができるので、好ましいトイレ水洗が可能になる。また、微細気泡がボウル内の水面に浮上しても破裂して消滅し難くなるため、図16Bに示すように、微細気泡層Dをボウル内の水面に形成することができる。これにより、臭気防止及び水跳ね防止が可能になる。
【0036】
一の代替実施形態において、タンク451は、芳香剤を貯留する。この実施形態では、芳香剤が水洗水に注入されるので、悪臭を抑えることができる上、効果的な芳香効果をトイレ室内にもたらすことができる。なお、これに限らず、薬液供給弁452は、界面活性剤及び芳香剤の両方を注入してもよい。
【0037】
図17は本発明による第3実施形態(即ち、水洗トイレ設備5)を示す。設備5は、便器(ボウル)50、便座51、便座カバー52、及び水供給弁530及び水洗水流路532で構成される水洗機構53を、図10の実施形態のそれらと同様に備える。加えて、一の特徴により、設備5は、サイズがmmオーダーの気泡及びサイズがμmオーダーの微細気泡を発生させる微細気泡発生器54、及び制御部(気泡径制御部)58を更に備える。
【0038】
微細気泡発生器54は、気体混合部543、及びせん断部としての急圧変部545で構成され、気体混合部543が、気体を急圧変部545内のせん断部(急圧変領域)の先頭に供給する点で、図10の構造と相違する。
【0039】
即ち、急圧変部545は、急圧変部345と同様にベンチュリ管を含む。具体的には、図18に示すように、急圧変部545は、流入部5451、せん断部5452及び流出部5453で構成される。流入部5451は、図13と同様に、流出口側に絞り部5451aを持ち、流入部5451及びせん断部5452は、せん断部5452の流入口側が絞り部5451aの外周部を覆うように相互に連結される。せん断部5452は、図8と同様のベンチュリ管であり、気体混合部543からの気体がせん断部5452の流入口側の側部に形成された孔5452aを介してせん断部5452の先頭(水洗水流路532内)に供給される。流出部5453は、上記実施形態の一の強化された実施形態と同様に、メッシュ(整流部)5453aを持つ。また、外側に伸びる凹所(隙間)545aが、せん断部5452の流入口側と絞り部5451aの外周部との間に形成される。この凹所545aは、水洗水流路532を流れる水によって負圧を発生し、気体混合部543から気体をエゼクター効果で水洗水流路532を流れる水に効率的に混合する。
【0040】
制御部58は、例えば、マイコン(マイクロコンピュータ)及び記憶装置等から構成され、水供給弁530及び気体混合部543の弁543aの各々の開閉制御等の各種制御を実行する。具体的には、制御部58は、トイレ水洗(水洗及び排出動作)の場合、気体の供給量が予め決められた第1の量になるように、弁530及び弁543aを開く。また、制御部58は、該トイレ水洗後(サイホン作動後の貯留動作の場合)、気体の供給量が予め決められた第2の量になるように弁530及び弁543aの各出力(開度)を調整し、所定時間後に弁530及び弁543aを閉じる。換言すると、図19に示す特性に基づいて、制御部58は、トイレ水洗の場合、水洗水に含まれる気泡の径が微細気泡よりも大きい径(mmオーダー)になるように弁530及び弁543aの各出力を制御し、またボウル50が該トイレ水洗後に機構53からの水をためる場合に水洗水に含まれる気泡が該mmオーダーの気泡よりも小さい該微細気泡になるように弁530及び弁543aの各出力を制御する。つまり、第1の量は、第2の量よりも多い。
【0041】
第1基本構成で述べた効果は、微細気泡の径が約200μm以下である場合に効果的に得られる。また、微細気泡の径が約50μm以下である場合には、微細気泡をボウル50内に長く滞留させることができ、汚れ除去効果や防汚効果等をより長く持続させることができる。他方、mmオーダー(好ましくは1〜5mm)の気泡が水洗水に含まれる場合、微視的にみた流量の変動が大きくなり、また気泡が破裂し易いため、ボウル50に付着した汚物を効果的に水洗することができる。また、気泡が変化するので、利用者の使用感を向上できる。
【0042】
一の変形実施形態において、図20に示すように、水洗トイレ設備5は、水供給弁530の下流側に一対の水洗水流路532及び532を備え、更に流路532及び532にそれぞれ配置される一対の微細気泡発生器54及び54を備える。発生器54及び54は、主としてボウル50の左右を水洗する。なお、これに限らず、設備5は、少なくとも3組の水洗水流路及び微細気泡発生器を備えてもよい。
【0043】
また、複数組の水洗水流路及び微細気泡発生器を備える設備5は、一の微細気泡発生器でmmオーダーの気泡を発生させ、別の微細気泡発生器で微細気泡を発生させてもよい。この場合、mmオーダーの気泡及び微細気泡を含む水洗水がボウル50内に供給されるので、上記双方の効果を一度に発揮することができる。また、上記薬液注入部を更に備えてもよい。
【0044】
一の代替実施形態において、図21に示すように、水洗トイレ設備5は、微細気泡発生器54の気体混合部543の入力側にエアポンプ543eを更に備え、制御部58は、弁530及び543aに代えて、ポンプ543eの出力を制御する。また、この実施形態の弁543aは逆止弁である。この設備5では、水洗水流路532内の流速に関係なく、エアポンプ543eの出力だけを調整することにより、水洗水に含まれる気泡の径を制御することができるので、制御が簡単になる。また、気体の供給量を正確に調整することができる。
【0045】
一の代替実施形態において、図22に示すように、水洗トイレ設備5の急圧変部545は、流入部5451に代えて渦巻き発生部5454を備える。発生部5454は、水供給ラインからの水を回転させ、また弁543aからの気体をその回転される水の回転中心付近に供給する。該水の回転中心付近では負圧が発生するので、その負圧から得られるエゼクター効果で、水供給ラインからの水と弁543aからの気体を好適に混合することができる。また、エアポンプが不要であるので、装置を簡単化できる。
【0046】
別の強化された実施形態において、図23に示すように、水洗トイレ設備5のボウル50は、トラップ101に代えて、回転自在のターントラップ501を備える。制御部58は、排出動作を開始するとき、ターントラップ501の流出口を下方に回転し、排出動作を終了するとき、ターントラップ501の流出口を上方に回転して元の状態に戻す。この実施形態によれば、水洗動作(水洗及び排出動作)及び防汚動作(貯留動作)を無駄なく明確に区分することができる。また、ターントラップを使用することで、より高い節水効果を得ることができる。このターントラップは、他の各実施形態に適用可能である。
【0047】
なお、この水洗トイレ設備5は、薬液注入部を第2実施形態のそれと同様に更に備えてもよい。図24に示すように、制御部58は、水洗及び排出動作の場合、弁543aをその開度が大きくなるように制御し、水供給弁530をON(オープン)し、そしてターントラップ501の流出口を下方に回転する。これにより、比較的大きな気泡(例えば、平均径が約1〜3mm)を生成して水洗水に含めることができる。所定時間後の貯留動作の場合、制御部58は、ターントラップ501の流出口を上方に回転し、薬液注入部から例えば界面活性剤を水洗水に注入し、また弁543aをその開度が小さくなるように制御する。これにより、微細気泡(例えば、平均径が約50μm)を生成して水洗水に含めることができる。
【0048】
図25は本発明による第4実施形態(即ち、水洗トイレ設備6)を示す。設備6は、便器60と、便座61と、便座カバー62と、水供給弁630及び水洗水流路632で構成される水洗機構63と、気体混合部643及びせん断部としての急圧変部645で構成される微細気泡発生器64とを、第3実施形態のそれらと同様に備える。図26に示すように、急圧変部645は、第3実施形態のそれと同様に、流入部6451、せん断部6452及び流出部6453で構成されるが、流出部6453は、メッシュに代えて絞り部(整流部)を有する。
【0049】
加えて、一の特徴により、設備6は、薬液注入部65及び制御部68を備える。薬液注入部65は、薬液(例えば、界面活性剤)を貯留するタンク651及びタンク651の流出口に配置される薬液供給弁652で構成され、せん断部6452の側部中央の孔からせん断部6452内に所定量の薬液を注入する。弁652の出力をせん断部6452の側部中央の孔に連結することで、せん断部6452内の負圧から得られるエゼクター効果を利用することができるので、装置を簡単化できる。図27に示すように、制御部68は、貯留動作の場合に、薬液の注入量を調整するように、弁652の開閉を制御する。この設備6によれば、第2実施形態と同様の効果を更に得ることができる。特に汚物の油分に対する水洗効果を高めることができ、またボウル60内の水面を微細気泡の層で覆うことができるから、微細気泡を長時間保持することができる。また、界面活性剤及び芳香剤の一方を注入してもよい。
【0050】
一の代替実施形態において、図28に示すように、水洗トイレ設備6の薬液注入部65は、薬液供給弁652に代えてポンプ653を備える。制御部68は、弁652の制御に代えて、ポンプ653の出力を制御する。
【0051】
図29は本発明による第5実施形態(即ち、水洗トイレ設備7)を示す。設備7は、便器(ボウル)70と、便座71と、便座カバー72と、水供給弁730及び水洗水流路732で構成される水洗機構73と、気体混合部743及びせん断部としての急圧変部745で構成される微細気泡発生器74と、制御部78とを、図10の実施形態又は第4実施形態のそれらと同様に備える。加えて、一の特徴により、設備7は殺菌部76を備える。
【0052】
図30に示すように、殺菌部76は、電源760と、Agからなる陽極761と、Tiからなる陰極762とを備え、気体混合部743と急圧変部745との間を流れる水に陽極761及び陰極762の各一端を浸して、水洗水に銀イオンを添加する。この構成によれば、図31に示すように、抗菌性の金属イオンである銀イオンが、マイナスに帯電している微細気泡を覆う。一方、微細気泡の界面は、疎水性表面と親和性を持つので、微細気泡は、表面に脂質を持ち疎水性を有する細胞表面に引っ付き易い。それ故に、銀イオンで覆われた微細気泡を含む水洗水をボウル70内に供給することで、殺菌及び抗菌効果を得ることができ、トイレを清潔に保つことができる。
【0053】
一の代替実施形態において、殺菌部76は、銀イオンに代えて、銅又は亜鉛等の抗菌性の金属イオンを水洗水に添加する。この実施形態でも、殺菌及び抗菌効果を得ることができ、トイレを清潔に保つことができる。
【0054】
一の代替実施形態において、図32及び33に示すように、水洗トイレ設備7は、電源(図示しない)と、一対の通常の電極761及び762と、NaCl溶液槽763と、溶液槽763の流出口に連結される電磁弁764とで構成され、銀イオンに代えて遊離塩素を気体混合部743と急圧変部745との間を流れる水に添加する。このように、遊離塩素を水洗水に添加することにより、殺菌及び抗菌効果を得ることができ、トイレを清潔に保つことができる。ところで、溶液槽763での反応は以下の通りである。
【0055】
陽極:2Cl-→Cl2+2e
陰極:H2O+2e→H2+2OH-
液相: 2NaCl+2H2O
→2NaOH+Cl2+H2
→NaClO+NaCl+H2O+H2
NaClO+H2O→/←HClO+NaCl
Cl2+H2O→/←HClO+H++Cl-
HClO→/←ClO-+H++Cl-
一の好ましい実施形態において、図34に示すように、水洗トイレ設備7は、殺菌部76の電源760として、水力発電機を備える。また、図35に示すように、設備7は、電源760と電極761及び762との間に、蓄電器765及び制御部78を備え、制御部78が電源760で充電された蓄電器765の電力を電極761及び762に供給してもよい。更に、図36に示すように、設備7は、殺菌部76の電源760として、光発電パネルを備えてもよい。これらいずれの構成でも省エネ効果が得られる。
【0056】
本発明を幾つかの好ましい実施形態について記述したが、この発明の本来の精神および範囲を逸脱することなく、当業者によって様々な修正および変形が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 水洗トイレ設備
10,20,30,40,50,60,70 便器
11,21,31,41,51,61,71 便座
12,22,32,42,52,62,72 便座カバー
13,23,33,43,53,63,73 水洗機構
14,24,34,44,54,64,74 微細気泡発生器
142,242,342 ポンプ
143,243,343,443,543,643,743 気体混合部
144,244 溶解部
145,245,345,445,545,645,745 急圧変部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウルと、水洗水を前記ボウルに水洗水流路を介して供給する水洗機構と、
泡径が0.1〜1000μmであり、前記水洗水と混合される微細気泡を発生させる微細気泡発生器と、を備えた水洗トイレ設備であって、
前記発生器は、前記水洗水流路に設けられ、流路断面積が次第に小さくなる絞りと、
この絞りの流路断面積が最も小さい部分の近傍に別ラインからの気体を直接供給する気体混合部とを備え、
この気体混合部からの気体と前記水洗水流路内の水との間にせん断力を発生させることにより気体をせん断し、これにより前記微細気泡を発生させる水洗トイレ設備。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2011−256708(P2011−256708A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183644(P2011−183644)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【分割の表示】特願2008−230185(P2008−230185)の分割
【原出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】