説明

水洗便器の排水ソケット

【課題】ねじによる調整量を大きくとると共にねじによる耐荷重を大きく確保することが出来る水洗便器の排水ソケットを提供する。
【解決手段】本発明は、壁面Wに設けられた排水管路Dの入口端部と水洗便器本体の排水路8の出口端部10とを連通させる水洗便器の排水ソケットであって、排水路の出口端部に連結される流入口24と排水管路の入口端部に連結される流出口26とを備えた排水ソケット本体22と、この排水ソケット本体の下部に設けられ排水ソケット本体の流出口の床面からの高さを排水管路の床面からの高さにほぼ一致するように調整する高さ調整部を有する高さ調整部材30、32、34と、この高さ調整部材に取り付けられると共に床面に配置されて排水ソケット本体を支持する台座部36と、を有し、高さ調整部は、互いに螺合するねじ部30a、32a、32b、34aを少なくとも2組有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗便器の排水ソケットに係り、特に、壁面やトイレ内に上下方向に設置される縦排水管から分岐する床面より高い位置に設けられる排水管路の入口端部と水洗便器本体の排水路の出口端部とを連通させる水洗便器の排水ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図13に示すように、水洗便器の排水路212を壁面W1の排水管路D1に接続するために、台座部234に対する排水ソケット232の高さをねじ248により調整可能にした排水ソケット232が知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−48407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した排水ソケットのねじ248では、例えば、雌ねじと雄ねじの高さがそれぞれ所定量(例えば30mm)確保されているとしても、それを延ばして高さ調整する場合、有効に荷重を受けるために所定の引っかかり量(雌ねじと雄ねじの重なり部分の高さ)(例えば10mm)が必要であった。即ち、このような雌ねじと雄ねじによれば、ねじの全長より小さい、例えば20mmの高さ分しか調整出来ないものであった。
【0005】
また、台座部234は、通常、床面に形成されたねじ孔に合わせるために所定の向きに配置しなければならない。このような要求に対して上述した排水ソケット232では、ねじ部248のピッチを、排水路212の出口部と排水管路D1との間の寸法公差より小さくしており、先ず、排水路212の出口部と排水管路D1の高さをほぼ合わせた後、台座部234及びその台座部と一体になったねじ部(雄ねじ或いは雌ねじ)を回動させて台座部を床面のねじ孔に位置決めすることにより、台座部234の位置決めと、排水路212の出口部の排水管路D1への位置決めとを両立させていた。このようなピッチが小さいねじ部は、その強度が小さくなるので、水洗便器を施工する際に排水ソケットに大きな荷重が加わった場合、ねじ山が破損してしまう、という問題があった。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、ねじによる調整量を大きくとると共にねじによる耐荷重を大きく確保することが出来る水洗便器の排水ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明は、壁面に設けられた排水管路の入口端部と水洗便器本体の排水路の出口端部とを連通させる水洗便器の排水ソケットであって、排水路の出口端部に連結される流入口と排水管路の入口端部に連結される流出口とを備えた排水ソケット本体と、この排水ソケット本体の下部に設けられ排水ソケット本体の流出口の床面からの高さを排水管路の床面からの高さにほぼ一致するように調整する高さ調整部を有する高さ調整部材と、この高さ調整部材に取り付けられると共に床面に配置されて排水ソケット本体を支持する台座部と、を有し、高さ調整部は、互いに螺合するねじ部を少なくとも2組有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、外ねじと内ねじの引っかかり量(外ねじと内ねじの重なり部分の高さ)を所定量に確保しても、少なくとも2組の互いに螺合するねじ部を有するので、ねじの高さ調整量を大きくとることが出来る。例えば、外ねじと内ねじの高さがそれぞれ30mmであり、有効に荷重を受けるために10mmの引っかかり量(内ねじと外ねじの重なり部分の高さ)が必要である場合でも、少なくとも2組のねじ部があれば、それぞれの調整量を合わせて40mmの高さ調整量を確保することが出来る。さらに、2つのねじ部により、施工時に加わり得る大きな荷重を分散して受け止めることが出来るので、ねじ山の破損を防止して耐荷重を大きく確保することが出来る。これらの結果、ねじによる調整量を大きくとると共にねじによる耐荷重を大きく確保することが出来る。これらにより、例えば、便器の付け替えといったリフォーム時において、床面にパネルを置いてかさ上げする場合に、効果的に高さ調整量を大きくとると共に大きな過重を受け止めるようにすることが出来る。
【0008】
また、本発明において、好ましくは、高さ調整部材は、第1外ねじ部を有する第1筒部と、この第1筒部の第1外ねじ部と螺合する第2内ねじ部及び第2外ねじ部を有する第2筒部と、この第2筒部の第2外ねじ部と螺合する第3内ねじ部を有する第3筒部とで構成され、少なくとも2組の互いに螺合するねじ部は、第1外ねじ部及び第2内ねじ部の組と、第2外ねじ部と第3内ねじ部の組とで構成される2つのねじ部である。
このように構成された本発明においては、より効果的に、ねじによる調整量を大きくとると共にねじによる耐荷重を大きく確保することが出来る。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、第1外ねじ部及びこの第1外ねじ部と螺合する第2内ねじ部のねじピッチと、第2外ねじ部及びこの第2外ねじ部と螺合する第3内ねじ部のねじピッチが異なる。
このように構成された本発明においては、2つのねじ部のピッチが異なるので、それぞれの回転量を別々に調整すれば、排水ソケット本体の流出口の床面からの高さの微調整が可能となる。従って、排水ソケット本体の流出口の床面からの高さと排水管路の床面からの高さとの位置決めの寸法公差が非常に小さい場合であっても、高さ調整部により排水ソケット本体の流出口の床面からの高さを正確に合わせやすくすることが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ねじによる調整量を大きくとると共にねじによる耐荷重を大きく確保することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
先ず、図1及び図2により、本発明の実施形態による水洗便器の排水ソケットの配置及び構成を説明する。図1は、本発明の実施形態による水洗便器の排水ソケットが適用された水洗便器及び壁部の排水管路を示す全体縦断面図であり、図2(a)は、本発明の実施形態による水洗便器の排水ソケットの第1の位置にある場合の縦断面図であり、図2(b)は、本発明の実施形態による水洗便器の排水ソケットの第1の位置にある場合の側面図である。
【0012】
先ず、図1に示すように、床面F上には、水洗便器1の水洗便器本体2が固定されており、壁面Wには、この水洗便器本体2の排水を排出するための管路Dが設けられている。床面Fから管路Dの中心までの距離(排水心高さ)は、便器を施工する現場で種々の高さがあり、例えば、90〜180mmまでの間で変動する。本実施形態では、排水心高さ120mmと155mmの施工現場に好適な構造で説明する。
【0013】
水洗便器本体2は、ボウル部4と、このボウル部4の底部から斜め上方に延びる入口管路6と、この入口管路6と連通して下方に延び、鉛直下方に向かって開口する排水路8と、この排水路8の出口端部10とを有する。そして、本発明の実施形態による排水ソケット20が、この出口端部10と管路Dとを連通するように設けられている。排水ソケット20は、塩化ビニール等のプラスチック材料で構成される。
【0014】
図2(a)及び図2(b)に示すように、排水ソケット20は、排水ソケット本体22と、この排水ソケット本体22の上方に設けられ鉛直上方に向けて開口した円筒状の流入口部24及び排水ソケット本体22の側方に設けられ水平方向に向けて開口した円筒状の流出口部26とを有する。流入口部24及び流出口部26には、いずれもシール部24a、26aが取り付けられている。図1に示すように、便器の排水路8の出口端部10には流入口部24が挿入され、管路Dには流出口部26が接続されている。
【0015】
次に、排水ソケット本体22の下部には、第1円筒部30が本体22との一体成型により形成されている。この第1円筒部30の外周側には、本体22とは別体で形成される第2円筒部32が設けられ、さらに、この第2円筒部32の外周側には、本体22及び第2円筒部32とは別体で形成される第3円筒部34が設けられている。この第3円筒部34の周囲には、この第3円筒部34を囲むように台座部36が設けられている。
【0016】
次に、図2及び図3により、各円筒部の構成を説明する。図3は、本発明の実施形態による第1の位置にある第1円筒部、第2円筒部及び第3円筒部の構成を示す縦断面図である。
図2(a)及び図3に示すように、第1円筒部30の外周側には、雄ねじ部(外ねじ部)30aが形成されている。そして、第2円筒部32の内周側には、その雄ねじ部30aと螺合する雌ねじ部(内ねじ部)32aが形成されている。さらに、第2円筒部32の外周側には、雄ねじ部(外ねじ部)32bが形成されている。そして、第3円筒部34の内周側には、その雄ねじ部32bと螺合する雌ねじ部34a(内ねじ部)が形成されている。これらのねじ部30a、32a、32b、34aにより、第1円筒部30と第2円筒部32は互いに相対的に回転し且つ上下方向に移動することが出来、また、第2円筒部32と第3円筒部は互いに相対的に回転し且つ上下方向に移動することが出来る。
【0017】
第1円筒部30のねじ部30aと第2円筒部32のねじ部32aは、互いに同じピッチで形成され、第2円筒部32のねじ部32bと第3円筒部34のねじ部34aも互いに同じピッチで形成されている。一方、ねじ部30aとねじ部32aのピッチは、ねじ部32bとねじ部34aのピッチより、小さくなっている。例えば、ねじ部30aとねじ部32aのピッチは、3mmであり、ねじ部32bとねじ部34aのピッチは4mmである。
【0018】
そして、これらの各ねじ部30a、32a、32b、34aの各ピッチは、水洗便器本体2の荷重や、水洗便器本体2を排水ソケット20に据え付けるときに生じる荷重に十分耐えることができるように、比較的大きなピッチとなっている。また、第1円筒部の外径は、52mm、第2円筒部の外径は、65mmとなっている。外径は、大きい方が強度的に優れているので、便器本体2内空間における排水ソケット20の収納等を考慮して設定する。
【0019】
これらの各円筒部30、32、34の各ねじ部30a、32a、32b、34aにより、本実施形態においては、台座部36の底面から円筒状の流出口部26の中心までの距離が120mmから155mmまで変化するようになっている。これらの状態を図2乃至図6により示す。図4(a)は、本発明の実施形態による水洗便器の排水ソケットの第2の位置にある場合の縦断面図であり、図4(b)は、本発明の実施形態による水洗便器の排水ソケットの第2の位置にある場合の側面図であり、図5(a)は、本発明の実施形態による水洗便器の排水ソケットの第3の位置にある場合の縦断面図であり、図5(b)は、本発明の実施形態による水洗便器の排水ソケットの第3の位置にある場合の側面図であり、図6は、本発明の実施形態による第3の位置にある第1円筒部、第2円筒部及び第3円筒部の構成を示す縦断面図である。
【0020】
先ず、図2及び図3に示す状態は、第2円筒部32が第3円筒部34に対して最も上方に移動し、且つ、第1円筒部30が第2円筒部32に対して最も上方に移動した状態である(第1の位置)。この状態で、台座部36の底面から円筒状の流出口部26の中心までの距離が155mmとなっているので、排水心高さ155mmの現場での排水ソケットの高さ調整は、容易である。
【0021】
ここで、図3に示すように、第1円筒部30には、その中心部に円筒部30bが形成され、この円筒部30bの底面には、タッピンねじ40によりストッパ42が取り付けられている。そして、この図3で示すような第1の位置では、ストッパ42が、第2円筒部32のねじ部32aの最下端部32cに突き当たり、第1円筒部30が第2円筒部32に対して、それ以上、上方に移動しないようになっている。一方、第2円筒部32の最下端部32dには、外方に向けて延びるフランジ部32eが形成されており、このフランジ部32eが第3円筒部34のねじ部34aの最下端部34bに突き当たり、第2円筒部32が第3円筒部34に対して、それ以上、上方に移動しないようになっている。このようにして、第2円筒部32が第3円筒部34に対して最も上方に移動し、且つ、第1円筒部30が第2円筒部32に対して最も上方に移動した状態が規定される。
【0022】
次に、図4に示す状態は、台座部36の底面から円筒状の流出口部26の中心までの距離が120mmから155mmの間の中間位置における状態である(第2の位置)。この図4に示す例では、第2円筒部32が第3円筒部34に対して最も上方に移動し、第1円筒部30が第2円筒部32に対して最も下方に位置する状態である。一方、このような中間位置にするには、第2円筒部32が第3円筒部34に対して最も下方に移動し且つ第1円筒部30が第2円筒部32に対して最も上方に移動するようにしても良い。さらに、第2円筒部32が第3円筒部34に対して所定量上方に移動し且つ第1円筒部30も第2円筒部32に対して所定量上方に移動するようにしても良い。
【0023】
次に、図5及び図6に示す状態は、第1円筒部30が第2円筒部32に対して最も下方に移動し、且つ、第2円筒部32が第3円筒部34に対して最も下方に移動した状態である(第3の位置)。この状態で、台座部36の底面から円筒状の流出口部26の中心までの距離が120mmとなっているので、排水心高さ120mmの現場での排水ソケットの高さ調整は、容易である。
ここで、図6に示すように、排水ソケット本体22の底部28には、下方に延びるフランジ(ストッパ)44が形成されており、このフランジ44が第3円筒部34の上端部34cに突き当たり、第1円筒部30及び排水ソケット本体22がそれ以上、下方に移動しないようになっている。
【0024】
次に、図5(a)、図7及び図8により、第3円筒部34と台座部36の構成を説明する。図7は、本発明の実施形態による台座部を斜め上方から見た斜視図であり、図8は、本発明の実施形態による排水ソケット本体、第1円筒部、第2円筒部及び第3円筒部を斜め上方から見た斜視図であり、ここでは主に第3円筒部について説明する。
先ず、図7に示すように、台座部36は、第3円筒部34に嵌められる内孔36dが形成されている。この台座部36は、図8に示す排水ソケット本体22(第1円筒部30を含む)を第2円筒部32及び第3円筒部34から外した状態で、第3円筒部34の上方から第3円筒部34に嵌められ且つその外方側面34dに沿って回動可能となっている。
【0025】
図8に示すように、第3円筒部34の下縁には、その全周にわたり、側方に向けて延びるフランジ部34eが形成されている。そして、図5(a)(図2(a)、図4(a)も同様)に示すように、台座部36の内孔36dの下縁部は、第3円筒部34のフランジ部34eの上方に位置するようになっており、これにより、排水ソケット本体22を持ち上げたとき、台座部36の内孔36dの下縁部が第3円筒部34のフランジ部34eに当接して、台座部36が第3円筒部34から抜けないようになっている。
【0026】
ここで、図7に示すように、台座部36の内孔36dの下縁部には、その半径方向内方に向けて延びるリブ部36fが形成されている。一方、図8に示すように、第3円筒部34には、そのフランジ部34eから上方に向けて延びると共に外方側面34dから半径方向外方に向けて延びるリブ部34fが形成されている。図示を省略するが、これらのリブ部36d、34fの180度反対側にも、それぞれ、同様のリブ部が形成されている。そして、第3円筒部34の外方側面34dに嵌められた台座部36が回動するとき、リブ部36fがリブ部34fに当接すると、台座部36により第3円筒部34を回動させることが出来る。一方、リブ部36fがリブ部34fに当接するまでは、台座部36が第3円筒部34に対して180度自由に回動可能になる。
【0027】
また、図7に示すように、台座部36には、半径方向に延びる2つの突出部36aが形成されており、これらの突出部36aには、台座部36と便器とを固定する及び台座部36を便器床面F(図1参照)に固定するときのネジが通るネジ通し孔36c、ボルトを支持するボルト孔36bが形成されている。
【0028】
次に、図2、図9乃至図12により、排水ソケット20の壁面W及び床面Fへの施工手順及び水洗便器1の排水ソケット20及び床面Fへの施工手順を説明する。図9は、本発明の実施形態による排水ソケットの壁面への施工工程を示す斜視図であり、図10は、本発明の実施形態による排水ソケットの床面への施工工程の前半を示す斜視図であり、図11は、本発明の実施形態による排水ソケットの床面への施工工程の後半を示す斜視図であり、図12は、本発明の実施形態による排水ソケットへの水洗便器の施工工程を示す斜視図である。
【0029】
施工手順においては、先ず、台座部36を時計回りに回動させて、第1円筒部30、第2円筒部32及び第3円筒部34が相対的に最も短くなる状態、即ち、上述した図5に示すような、第1円筒部30が第2円筒部32に対して最も下方に移動し、且つ、第2円筒部32が第3円筒部34に対して最も下方に移動した状態(第3の位置)にしておく。
【0030】
次に、図9に示すように、排水ソケット本体22の流出口部26を壁面Wに設けられた管路Dの内方に接続する。接続した状態の断面図は図1に示す通りである。この状態では、図1と異なり、図9に示すように、台座部36は床面Fから上方に離れた状態となっている。そして、床面Fには、台座部36の突出部36aのネジ通し孔36cを通るネジが留められるネジ孔Fhが4箇所に形成されている。
【0031】
次に、図10に示すように、台座部36を、矢印Aで示すように反時計回りに回動させ、上述した台座部36のリブ部36fを第3円筒部34のリブ部34fに当接させ、その状態で第3円筒部34及び第2円筒部32を回動させる。このような回動により、第1円筒部30、第2円筒部32及び第3円筒部34は、ねじの作用により上下方向に延び、その結果、台座部36の底面から円筒状の流出口部26の中心までの距離が大きくなる。このような回動を、台座部36が床面Fに接するまで行う。このとき、図10に示すように、台座部36の突出部36aが、床面のネジ孔Fhとはずれた位置にあることがほとんどである。
【0032】
従って、次に、図10において仮想線に示す本来の位置(ネジ孔Fhとネジ通し孔36cが合う位置)に台座部36の突出部36が位置するようにする。本実施形態では、リブ部36fがリブ部34fに当接しなければ、第3円筒部34に対して台座部36が180度自由に回動可能となっているので、図11に示すように、台座部36を床面に対して矢印Bで示すように時計回りに回動させて、台座部36の突出部36aに形成されたネジ通し孔36cを床面のネジ孔Fhに合わせる。
次に、図12に示すように、ネジ通し孔36cからネジを通し、ネジ孔Fhにねじ込み固定する。その際、同時にボルトBのヘッド部をボルト孔に位置させてボルトBが上向きになるように台座部36に支持させる。なお、ボルトBは、台座部36の下面部から台座部36を上方に突き抜けるように固定されていても良い。
【0033】
ここで、図1及び図12に示すように、水洗便器1の後方側の補機2aの取付面2bには、紐Rが取り付けられている。次の施工手順としては、図12に示すように、施工者が紐Rを片手で持つと共に便器の一部を持って、水洗便器1をゆっくりと下げていく。そして、水洗便器1の排水路12の出口端部10が排水ソケット20の流入口部24に合わさり、また、水洗便器1の取付孔2cが台座部36に支持されたボルトBに合わさり、また、水洗便器1のセンターが固定片Fsに合わさるようにする。水洗便器1は、ボルトBにナットNを嵌めて固定される。また、そのようなナット締め及び水洗便器の自重により、水洗便器1の排水路8の出口端部10が排水ソケット20の流入口部24にしっかりと固定される。
【0034】
次に、本実施形態の主な作用効果を説明する。
先ず、本実施形態では、各ねじ部30a、32a、32b、34aのピッチが水洗便器本体2の荷重や水洗便器本体2を排水ソケット20に据え付けるときに生じる荷重に十分耐えることができるように、比較的大きなピッチとなっている。従って、より安全に且つ事故無く、水洗便器1を施工することが出来る。
【0035】
一方、このようにねじ部を大きなピッチにすると、台座部36の底面から円筒状の流出口部26の中心までの距離が調整しにくくなることが考えられる。しかしながら、実施形態では、第1円筒部30のねじ部30aと第2円筒部32のねじ部32aのピッチが、第2円筒部32のねじ部32bと第3円筒部34のねじ部34aのピッチより小さくなっている。従って、台座部36の底面から円筒状の流出口部26の中心までの距離を、床面Fから管路Dの中心までの距離に合わせ易くなっている。即ち、ピッチの異なる2つのねじをそれぞれ回動させることにより、第1乃至第3円筒部30、32、34の相対的な高さの調整が容易となっている。従って、上述したように比較的大きな荷重に耐えるために各ねじ部の30a、32a、32b、34aのピッチを比較的大きくしても、台座部36の底面から円筒状の流出口部26の中心までの距離を合わせやすくなる。
【0036】
さらに、第1円筒部30のねじ部30a及び第2円筒部32のねじ部32aによるねじと、第2円筒部32のねじ部32b及び第3円筒部34のねじ部34aによるねじと、ねじを2組設けることにより、ねじの回動による移動量、即ち、上下のストローク量を、ねじが1組しかない場合に比べて、大きくとることが出来る。例えば、床面から排水ソケットの底面までの距離を最短で30mm程度としたい場合を仮定すると、ねじ自体の高さを30mmとし、ねじ同士の残り代(最も離れるように相対移動した後のねじ同士の嵌合の高さ)が10mmとすると、ねじが1段階の場合には20mmしか移動しない。一方、ねじが2段階の場合には40mmも移動する。本実施形態では、このようにストローク量を確保した上で、ねじピッチを大きくとって荷重にも十分耐えうるようになっているのである。
【0037】
次に、本実施形態では、第3円筒部34の外方側面34dに嵌められた台座部36が回動するとき、リブ部36fがリブ部34fに当接すると、台座部36により第3円筒部34を回動させることが出来る。従って、台座部36を回すだけで簡単に第1乃至第3円筒部30、32、34の相対的な高さを変更することが出来る。
【0038】
さらに、上述したようにねじ部を大きなピッチにすると、台座部36の底面から円筒状の流出口部26の中心までの距離が調整しにくくなることが考えられる。即ち、仮にピッチが小さければ、台座部36の底面から円筒状の流出口部26の中心までの距離が多少ずれていても、シール部24aがつぶれることで流出口部26を管路Dに接続可能であるが、ピッチが大きい場合には、シール部24aのつぶれでは、高さの誤差を吸収しきれない場合がある。しかしながら、本実施形態では、リブ部36fがリブ部34fに当接するまでは、第3円筒部34に対して台座部36が180度自由に回動可能になっている。従って、施工時に、各ねじ部30a、32a、32b、34aにより台座部36をほぼ床面Fと合わせる高さに調節した後、台座部36を床面に対して回動させることにより、容易に、台座部36のボルト通し孔36cを床面のボルト孔Fhに合わせることが出来る。
【0039】
なお、本実施形態において、第1円筒部30のねじ部30a及び第2円筒部32のねじ部32aのねじピッチと、第2円筒部32のねじ部32b及び第3円筒部34のねじ部34aのねじピッチとが同じであっても良い。この場合、各ねじ部30a、32a、32b、34aにより台座部36をほぼ床面Fと合わせる高さに調節した後、上述した台座部36を床面に対して回動させることにより、台座部36のネジ通し孔36cを床面のネジ孔Fhに合わせれば良い。
【0040】
また、トイレの入口奥のコーナーの床面Fから天井側に抜けるように配置される縦排水管から排水管路を分岐させるような場合には、排水ソケット20の流入口が便器の後ろの壁面側でなく、便器の右又は左側面に向いて固定される場合がある。本発明では、上記したように、円筒部のねじ部を回転させることで高さ調整するので、流入口の方向についても任意に対応できるものであり、マンションなどに多い縦排水管を有するトイレにも効果的に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態による水洗便器の排水ソケットが適用された水洗便器及び壁部の排水管路を示す全体縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態による水洗便器の排水ソケットの第1の位置にある場合の縦断面図(a)であり、本発明の実施形態による水洗便器の排水ソケットの第1の位置にある場合の側面図(b)である。
【図3】本発明の実施形態による第1の位置にある第1乃至第3円筒部の構成を示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施形態による水洗便器の排水ソケットの第2の位置にある場合の縦断面図(a)であり、本発明の実施形態による水洗便器の排水ソケットの第2の位置にある場合の側面図(b)である。
【図5】本発明の実施形態による水洗便器の排水ソケットの第3の位置にある場合の縦断面図(a)であり、本発明の実施形態による水洗便器の排水ソケットの第3の位置にある場合の側面図(b)である。
【図6】本発明の実施形態による第3の位置にある第1円筒部、第2円筒部及び第3円筒部の構成を示す縦断面図である。
【図7】本発明の実施形態による台座部を斜め上方から見た斜視図である。
【図8】本発明の実施形態による排水ソケット本体、第1円筒部、第2円筒部及び第3円筒部を斜め上方から見た斜視図である。
【図9】本発明の実施形態による排水ソケットの壁面への施工工程を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施形態による排水ソケットの床面への施工工程の前半を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施形態による排水ソケットの床面への施工工程の後半を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施形態による排水ソケットへの水洗便器の施工工程を示す斜視図である。
【図13】従来技術による排水ソケットが適用された水洗便器を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0042】
D 管路
Fh ボルト孔
W 壁面
R 紐
1 水洗便器
2 水洗便器本体
2a 補機
2b 補機の取付面
2c 取付孔
8 排水路
10 出口端部
20 排水ソケット
22 排水ソケット本体
24 流入口部
26 流出口部
30 第1円筒部
30a 雄ねじ部
32 第2円筒部
32a 雌ねじ部
32b 雄ねじ部
32c ねじ部32aの最下端部
32d 第2円筒部の最下端部32d
32e フランジ部
34 第3円筒部
34a 雌ねじ部
34c 第3円筒部の上端部
34b ねじ部34aの最下端部34b
34d 外方側面
34e フランジ部
34f リブ部
36 台座部
36a 突出部
36c ねじ通し孔
36d 内孔
36f リブ部
42 ストッパ
44 フランジ(ストッパ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面より高い位置に設けられる排水管路の入口端部と水洗便器本体の排水路の出口端部とを連通させる水洗便器の排水ソケットであって、
上記排水路の出口端部に連結される流入口と上記排水管路の入口端部に連結される流出口とを備えた排水ソケット本体と、
この排水ソケット本体の下部に設けられ上記排水ソケット本体の上記流出口の床面からの高さを上記排水管路の床面からの高さにほぼ一致するように調整する高さ調整部を有する高さ調整部材と、
この高さ調整部材に取り付けられると共に床面に配置されて上記排水ソケット本体を支持する台座部と、を有し、
上記高さ調整部は、互いに螺合するねじ部を少なくとも2組有することを特徴とする水洗便器の排水ソケット。
【請求項2】
上記高さ調整部材は、第1外ねじ部を有する第1筒部と、この第1筒部の第1外ねじ部と螺合する第2内ねじ部及び第2外ねじ部を有する第2筒部と、この第2筒部の第2外ねじ部と螺合する第3内ねじ部を有する第3筒部とで構成され、
上記少なくとも2組の互いに螺合するねじ部は、上記第1外ねじ部及び上記第2内ねじ部の組と、上記第2外ねじ部と上記第3内ねじ部の組とで構成される2つのねじ部である請求項1に記載の水洗便器の排水ソケット。
【請求項3】
上記第1外ねじ部及びこの第1外ねじ部と螺合する上記第2内ねじ部のねじピッチと、上記第2外ねじ部及びこの第2外ねじ部と螺合する上記第3内ねじ部のねじピッチが異なる請求項2に記載の水洗便器の排水ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−303618(P2008−303618A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151821(P2007−151821)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】