説明

水洗便器の水漏れ防止構造

【課題】給水ホースから吐出される洗浄水が逆流することがあっても水漏れを防ぐ。
【解決手段】引出孔12の外周縁からケース32の外側に向けて垂直に筒体1が突設され、中央部に差込孔3が形成された弾性を有する平板状のパッキン2が、差込孔を挿入孔13に重ね合わせて便器本体21の後部上面に固定され、筒体の外径は挿入孔の孔径より小さく、かつ差込孔の孔径は筒体の外径より小さく設定され、筒体を差込孔に上方より差し込み、パッキンの弾性によって差込孔を拡径させるとともに、押し伸ばし、パッキンを下方に撓ませて筒体の外周面にパッキンを密着させ、この密着状態において筒体およびパッキンの差込孔周辺を挿入孔に挿入し、挿入孔を筒体およびパッキンにより密閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道直結式のタンクレスタイプの水洗便器における水漏れを防止する水洗便器の水漏れ防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータンクを廃し、水道管に直結して、排泄物の排出およびボウル面の洗浄を行う水を一定量便器本体に供給するタンクレスタイプの水洗便器が知られている。
【0003】
タンクレスタイプの水洗便器では、たとえば図5に示したように、水道管に直結され、一定量の水を便器本体21に供給する給水制御装置31が便器本体21の後部上面に配設されている。給水制御装置31には、外郭を形成するケース32の内部に給水制御を行う給水制御部33が収められている。給水制御部33からは給水ホース11がのび、便器本体21に備えたボウル22の上端周縁部に設けられたリム23内部のリム通水路24に接続され、便器本体21の後方上部に配設された連絡通水路25に給水ホース11が挿入されている。排泄物の排出に際しては、ボウル22内への水の供給とともに、給水制御部33によって一定量の洗浄水が給水ホース11を通じて連絡通水路25に供給され、洗浄水はリム通水路24を回り、この間に、リム23の底部に形成されたリム通水路24と連通する複数の射水孔26からボウル面27に向けて射水され、ボウル面27の洗浄が行われる(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−60096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなタンクレスタイプの水洗便器については、その後の検討により改善すべき点が見出されている。
【0005】
図5図中の楕円A内を拡大した図6に示したように、給水制御装置31のケース32の底部に引出孔12が形成され、便器本体21には、後部上面に連絡通水路25と連通する挿入孔13が形成され、給水ホース11を引出孔12より引き出し、挿入孔13を通じて連絡通水路25に挿入している。給水制御装置31のケース32は一般に樹脂成形品であり、引出孔12の形成は比較的精度よく行われる。一方、便器本体21は陶磁器製であるので、挿入孔13の形成は、引出孔12の形成に比べて高い精度で行うことが難しい。このため、挿入孔13の孔径にはバラツキがあり、引出孔12の孔径と挿入孔13の孔径が異なることがしばしばある。概して挿入孔13の孔径は引出孔12の孔径より大きくなりやすい。
【0006】
給水ホース11から連絡通水路25に吐出される洗浄水の水勢が大きいと、連絡通水路25において洗浄水の逆流が起こる恐れがある。この場合、引出孔12と挿入孔13の孔径が一致していないと、逆流する洗浄水が孔径の大きな挿入孔13から溢れ出て、便器本体21と給水制御装置31との間に漏れ出たり、水勢によっては洗浄水が引出孔12を通じてケース32の内部に漏れ出たりすることも考えられる。給水制御部33には電装品が配設されているため、回路のショートや錆びの発生などの危険がある。
【0007】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、給水ホースから吐出される洗浄水が逆流することがあっても水漏れを防ぐことのできる水洗便器の水漏れ防止構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水洗便器の水漏れ防止構造は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0009】
第1に、水道管に直結され、排泄物の排出およびボウル面の洗浄を行う水を一定量便器本体に供給する給水制御装置が便器本体の後部上面に配設され、給水制御装置の外殻を形成するケースの底部に形成された引出孔よりケース内部に収められた給水制御部からのびる給水ホースを引き出し、便器本体の後部上面に形成され、リム通水路に接続された連絡通水路に連通する挿入孔を通じて連絡通水路に給水ホースを挿入し、洗浄水を給水ホースを通じてリム通水路に供給し、リム底部に形成された複数の射水孔からボウル面に洗浄水を射水してボウル面の洗浄を行う水洗便器において、引出孔の外周縁からケースの外側に向けて垂直に筒体が突設され、中央部に差込孔が形成された弾性を有する平板状のパッキンが、差込孔を挿入孔に重ね合わせて便器本体の後部上面に固定され、筒体の外径は挿入孔の孔径より小さく、かつ差込孔の孔径は筒体の外径より小さく設定され、給水制御装置を便器本体に配設する際に、筒体を差込孔に上方より差し込み、パッキンの弾性によって差込孔を拡径させるとともに、押し伸ばし、パッキンを下方に撓ませて筒体の外周面にパッキンを密着させ、この密着状態において筒体およびパッキンの差込孔周辺を挿入孔に挿入し、挿入孔を筒体およびパッキンにより密閉し、給水ホースを筒体内部を通じて連絡通水路に挿入する。
【0010】
第2に、上記において、給水ホースの外径が筒体の内径と略一致している。
【0011】
第3に、上記において、パッキンには外周部に差込孔の孔径方向に対置された一対または複数対の取付孔が形成され、便器本体の後方上部に取付孔に対応する位置に凹部が形成され、弾性を有する固着具が取付孔を通じて凹部に圧入され、弾性変形して凹部に嵌まり込み、パッキンが便器本体の後部上面に固定される。
【発明の効果】
【0012】
上記第1の発明によれば、引出孔の外周縁からケースの外側に向けて垂直に突設された筒体を、挿入孔に差込孔を重ね合わせて便器本体の後部上面に固定されたパッキンの差込孔に上方より差し込み、パッキンの弾性によって差込孔を拡径させるとともに、押し伸ばし、パッキンを下方に撓ませて筒体の外周面にパッキンを密着させ、この密着状態において筒体およびパッキンの差込孔周辺を挿入孔に挿入し、挿入孔を筒体およびパッキンにより密閉しているので、連絡通水路に挿入される給水ホースから吐出される洗浄水の水勢によって逆流が生じたとしても、洗浄水は挿入孔から外部に漏れ出ることはなく、水漏れが防止される。
【0013】
上記第2の発明によれば、上記の発明の効果に加え、給水ホースの外径が筒体の内径と略一致しているので、逆流する洗浄水が筒体内部に浸入することがなく、給水制御装置のケース内部への水漏れが一層防止される。
【0014】
上記第3の発明によれば、上記の発明の効果に加え、弾性を有する固着具の圧入により固着具が弾性変形して便器本体の後方上部に形成された凹部に嵌まり込むので、パッキンの便器本体の後部上面への固定が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の水洗便器の水漏れ防止構造の一実施形態を示した要部断面図である。図2は、図1に示した実施形態における給水制御装置を示した斜視図である。図3は、図1に示した実施形態における便器本体へのパッキンの固定について示した分解斜視図である。
【0016】
本実施形態において図5および図6に示した部分と共通する部分については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0017】
給水制御装置31には、引出孔12の外周縁からケース32の外側に向けてケース32の底面に対して垂直に円筒状の筒体1が突設されている。ケース32は樹脂成形品とすることができ、筒体1をケース32と一体成形することができる。給水制御部33からのびる給水ホース11は、引出孔12より筒体1の内部を通じて筒体1の先端から外側に引き出すことができる。
【0018】
便器本体21には、後部上面に形成された連絡通水路25に連通する挿入孔13の周辺にパッキン2が固定される。パッキン2は薄肉な円板状の部材であり、中央部に円形の差込孔3が形成されている。パッキン2はゴムなどの弾性を有する樹脂から形成されている。外周部には固定用の取付孔4が差込孔3の孔径方向に対置して一対形成され、パッキン2の表裏を貫通している。挿入孔13周辺の便器本体21の後方上部には、パッキン2の取付孔4に対応して重なり合う位置に凹部5が2つ形成されている。パッキン2は、差込孔3を挿入孔13に略同心状に重ね合わせ、取付孔4を凹部5に一致させて便器本体21の後部上面に配置される。固着具6が、パッキン2の取付孔4に挿入され、凹部5に嵌合して、パッキン2が、挿入孔13周辺の便器本体21の後部上面に固定される。固着具6には、ゴムなどの樹脂製の弾性を有するものを好適に用いることができる。弾性を有する固着具6は、凹部5に圧入することによって弾性変形し、凹部5に嵌まり込み、パッキン2の固定をワンタッチ式で行うことができる。パッキン2の固定が容易となる。このような弾性を有する固着具6には、たとえばウエルナットなどが例示される。
【0019】
本実施形態では、便器本体21の後部上面にパッキン2が固定された状態において、給水制御装置31の配設が行われる。すなわち、給水制御装置31のケース32の底面から外側に垂直に突設された筒体1をパッキン2の差込孔3に上方より差し込み、便器本体21の挿入孔13に挿入して、給水制御装置31を便器本体21の後部上面に配設する。いわゆるスリップイン式で筒体1を挿入孔13に挿入する。給水制御装置31と便器本体21とは、ビス、ボルトおよびナットなどの各種の固着具によって固定することができる。
【0020】
図4に示したように、本実施形態では、筒体1の外径Rは、便器本体21の後部上面に形成された挿入孔13の孔径Rより小さく、かつパッキン2の中央部に形成された差込孔3の孔径rは筒体1の外径Rより小さく設定されている。すなわち、r<R<Rの関係がある。このため、筒体1を差込孔3に差し込むと、パッキン2が有する弾性によって差込孔3が拡径し、パッキン2が押し伸ばされ、図1に示したように、差込孔3周辺のパッキン2が下方に撓み、筒体1の外周面にパッキン2が密着する。筒体1をさらに挿入孔13に向けて差し込むと、パッキン2が下方に撓んで筒体1の外周面に密着した状態において筒体1およびパッキン2の差込孔3周辺が挿入孔13に挿入され、挿入孔13が、筒体1およびパッキン2により密閉される。給水ホース11は、ケース32底部の引出孔12より筒体1の内部を通じて連絡通水路25に挿入される。
【0021】
したがって、給水ホース11から吐出される洗浄水の水勢によって洗浄水に逆流が生じたとしても、挿入孔13は筒体1およびパッキン2によって密閉されているので、洗浄水は挿入孔13から外部に漏れ出ることはない。挿入孔13の孔径Rが筒体1の外径Rより大きくても挿入孔13の外周部から水漏れは生じない。逆流する洗浄水が挿入孔13を通じて便器本体21と給水制御装置31との間に浸入することはなく、また、筒体1によって引出孔12へと向かう洗浄水の流れが阻止されるので、給水制御装置31のケース32の内部に洗浄水が浸入することも防止される。ケース32の内部に収められた給水制御部33の電装品の安全性が高まる。
【0022】
好ましくは、筒体1の外径Rはできるだけ挿入孔13の孔径Rに近づけるようにする。筒体1の外周面にパッキン2がより密着するとともに、密着したパッキン2と挿入孔13の内縁との間隔が小さくなり、挿入孔13の密閉性が高まる。
【0023】
また、図4に示したように、給水ホース11の外径Rを筒体1の内径Rと略一致させることも好ましい。給水ホース11と筒体1との間の間隔が最小となり、給水ホース11の外周面が筒体1の内周面に接触または近接するので、洗浄水が筒体1の内部に一層浸入しにくくなり、給水制御装置31のケース32の内部への水漏れが一層防止される。ケース32の内部に収められた給水制御部33の電装品の安全性が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の水洗便器の水漏れ防止構造の一実施形態を示した要部断面図である。
【図2】図1に示した実施形態における給水制御装置を示した斜視図である。
【図3】図1に示した実施形態における便器本体へのパッキンの固定について示した分解斜視図である。
【図4】図1に示した実施形態における筒体の外径、パッキンの差込孔の孔径および便器本体の挿入孔の孔径の相互関係を示した分解断面図である。
【図5】タンクレスタイプの水洗便器を示した一部切欠側面図である。
【図6】図5図中の楕円A内を拡大して示した要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 筒体
2 パッキン
3 差込孔
4 取付孔
5 凹部
6 固着具
11 給水ホース
12 引出孔
13 挿入孔
21 便器本体
24 リム通水路
25 連絡通水路
26 射水孔
27 ボウル面
31 給水制御装置
32 ケース
33 給水制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道管に直結され、排泄物の排出およびボウル面の洗浄を行う水を一定量便器本体に供給する給水制御装置が便器本体の後部上面に配設され、給水制御装置の外殻を形成するケースの底部に形成された引出孔よりケース内部に収められた給水制御部からのびる給水ホースを引き出し、便器本体の後部上面に形成され、リム通水路に接続された連絡通水路に連通する挿入孔を通じて連絡通水路に給水ホースを挿入し、洗浄水を給水ホースを通じてリム通水路に供給し、リム底部に形成された複数の射水孔からボウル面に洗浄水を射水してボウル面の洗浄を行う水洗便器において、引出孔の外周縁からケースの外側に向けて垂直に筒体が突設され、中央部に差込孔が形成された弾性を有する平板状のパッキンが、差込孔を挿入孔に重ね合わせて便器本体の後部上面に固定され、筒体の外径は挿入孔の孔径より小さく、かつ差込孔の孔径は筒体の外径より小さく設定され、給水制御装置を便器本体に配設する際に、筒体を差込孔に上方より差し込み、パッキンの弾性によって差込孔を拡径させるとともに、押し伸ばし、パッキンを下方に撓ませて筒体の外周面にパッキンを密着させ、この密着状態において筒体およびパッキンの差込孔周辺を挿入孔に挿入し、挿入孔を筒体およびパッキンにより密閉し、給水ホースを筒体内部を通じて連絡通水路に挿入することを特徴とする水洗便器の水漏れ防止構造。
【請求項2】
給水ホースの外径が筒体の内径と略一致していることを特徴とする請求項1に記載の水洗便器の水漏れ防止構造。
【請求項3】
パッキンには外周部に差込孔の孔径方向に対置された一対または複数対の取付孔が形成され、便器本体の後方上部に取付孔に対応する位置に凹部が形成され、弾性を有する固着具が取付孔を通じて凹部に圧入され、弾性変形して凹部に嵌まり込み、パッキンが便器本体の後部上面に固定されることを特徴とする請求項1または2に記載の水洗便器の水漏れ防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−7977(P2008−7977A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177303(P2006−177303)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】