説明

水洗大便器

【課題】陶器製の水洗大便器の製造誤差に応じて便器洗浄性能を損なうことなく、確実な便器洗浄を行うことができ、節水化を図ることができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器1は、陶器で形成されたジェット側導水路48に接続され且つジェット吐水口10が形成されたボウル部6と、を備えた便器本体2と、ジェット吐水口から吐水させる洗浄水を加圧する加圧ポンプ16によって加圧すべき洗浄水を貯水する貯水タンク14と、加圧ポンプを駆動させ、貯水タンク内に貯水された洗浄水をボウル部へ供給する洗浄制御手段32と、を有し、この洗浄制御手段は、貯水タンク内の水位が洗浄開始前の初期水位W0から所定水位W1に低下するまでの水位低下時間τを検出する計時手段50と、この計時手段が検出した水位低下時間に基づいて、ジェット吐水口から吐水する洗浄水の吐水流量を調整するジェット吐水調整手段52と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器として、例えば、特許文献1に記載されているように、洗浄水を貯水する貯水タンクと、この貯水タンク内の洗浄水を便器本体のジェット吐水口に向けて加圧し、このジェット吐水口から洗浄水を吐水させる加圧ポンプとを備えたものが知られている。
【0003】
また、このような従来の水洗大便器は、洗浄水が使用された状態の貯水タンクに洗浄水の補給を開始してから貯水タンクの貯水量が規定の貯水量に復帰するまでの水補給時間を検出し、この水補給時間に基づいてリム吐水口から洗浄水を吐出させるリム吐水時間を調整する洗浄水補給手段を備えているため、水道の給水圧力の低い地域でも十分な洗浄を行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/026633号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の水洗大便器においては、加圧ポンプによって圧送された洗浄水は便器本体の導水路を通過してジェット吐水口に供給されるようになっているが、便器本体の導水路が陶器で形成されているため、陶器製の導水路の製造誤差等によって導水路の圧力損失が変動し、ジェット吐水口から吐出される洗浄水の瞬間流量等はその影響を受けていると考えられるが、実際には、このような導水路の圧力損失等の影響に応じて加圧ポンプによるジェット吐水口から吐水される洗浄水の瞬間流量等を調整していないという問題がある。
したがって、陶器製の導水路の製造誤差等によっては、加圧ポンプによってジェット吐水口から吐水される洗浄水の吐水流量が低下し、ジェット吐水によるサイホン作用の起動のタイミングが遅れたり、サイホン作用の終期における押し込み力が低下したりするため、洗浄性能が低下してしまうという問題がある。
また、実際のジェット吐水口の吐水流量等の規定においては、導水路の製造誤差による圧力損失の影響を最も受けた場合の悪条件下を想定し、ジェット吐水口の吐水流量値を規定している場合があるが、導水路の製造誤差が少ない便器を使用する程、余分な洗浄水量を使用することになり、洗浄水の無駄水が増えて、節水化を図ることができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、陶器製の水洗大便器の製造誤差に応じて便器洗浄性能を損なうことなく、確実な便器洗浄を行うことができ、節水化を図ることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、陶器で形成された導水路と、この導水路に接続され且つリム吐水口及びジェット吐水口が形成されたボウル部と、排水トラップ管路と、を備えた便器本体と、上記ジェット吐水口から吐水させる洗浄水を加圧する加圧ポンプと、この加圧ポンプによって加圧すべき洗浄水を貯水する貯水タンクと、上記加圧ポンプを駆動させ、上記貯水タンク内に貯水された洗浄水を上記ボウル部へ供給することにより上記ボウル部を洗浄する洗浄制御手段と、を有し、この洗浄制御手段は、上記貯水タンクから上記ボウル部へ洗浄水を供給して上記ボウル部の洗浄を開始し、上記貯水タンク内の水位が洗浄開始前の初期水位から所定水位に低下するまでの水位低下時間を検出する計時手段と、この計時手段が検出した上記水位低下時間に基づいて、上記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の吐水流量又は吐水量を調整するジェット吐水調整手段と、を備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、洗浄制御手段の計時手段によって貯水タンク内の洗浄開始前の初期水位から所定水位に低下するまでの水位低下時間を検出することにより、陶器で形成された導水路の製造誤差による圧力損失の影響を検出することができ、これらに基づいて、洗浄制御手段のジェット吐水調整手段により、ジェット吐水口から吐水する洗浄水の吐水流量又は吐水量を調整することができる。この結果、陶器製の水洗大便器の製造誤差に応じて便器洗浄性能を損なうことなく、確実な便器洗浄を行うことができる。また、導水路の製造誤差に応じてジェット吐水口から吐水する洗浄水の吐水流量又は吐水量を適宜調整することができるため、洗浄水の無駄水も少なくなり、節水化を図ることもできる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記洗浄制御手段のジェット吐水調整手段は、上記計時手段が検出した上記水位低下時間に基づいて、上記貯水タンク内に貯水された洗浄水を上記ボウル部へ供給しているときの上記加圧ポンプの駆動時間を調整し、上記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の吐水量を調整する。
このように構成された本発明においては、洗浄制御手段の計時手段が検出した水位低下時間に基づいて、洗浄制御手段のジェット吐水調整手段により、加圧ポンプを駆動させて貯水タンク内に貯水された洗浄水をボウル部へ供給しているときの加圧ポンプの駆動時間を調整することにより、ジェット吐水口から吐水する洗浄水の吐水量を容易に調整することができる。この結果、陶器製の水洗大便器の製造誤差に応じて便器洗浄性能を損なうことなく、確実な便器洗浄を容易に行うことができる。また、導水路の製造誤差に応じてジェット吐水口から吐水する洗浄水の吐水量を適宜調整することができるため、洗浄水の無駄水も少なくなり、節水化を図ることもできる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記洗浄制御手段のジェット吐水調整手段は、上記計時手段が検出した上記水位低下時間に基づいて、上記貯水タンク内に貯水された洗浄水を上記ボウル部へ供給しているときの上記加圧ポンプの回転数を調整し、上記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の吐水流量を調整する。
このように構成された本発明においては、洗浄制御手段の計時手段が検出した水位低下時間に基づいて、洗浄制御手段のジェット吐水調整手段により、加圧ポンプを駆動させて貯水タンク内に貯水された洗浄水をボウル部へ供給しているときの加圧ポンプの回転数を調整することにより、ジェット吐水口からの吐水流量を容易に調整することができる。この結果、予め定められた貯水タンクの容量で、陶器製の水洗大便器の製造誤差に応じて便器洗浄性能を損なうことなく、確実な便器洗浄を容易に行うことができ、洗浄水の無駄水も少なくなり、節水化を図ることもできる。
【0010】
本発明において、好ましくは、更に、上記貯水タンクの洗浄開始前の初期水位である第1の水位を検出する第1のフロートスイッチと、上記貯水タンクの上記第1の水位よりも低い第2の水位を検出する第2のフロートスイッチと、を有し、上記洗浄制御手段の計時手段は、上記貯水タンク内の上記第1の水位で水位低下が開始してから上記貯水タンク内の水位が上記第2の水位に低下するまでの時間を検出する。
このように構成された本発明においては、洗浄開始後、第1のフロートスイッチが、貯水タンクの洗浄開始前の初期水位である第1の水位を検出し、第2のフロートスイッチが、貯水タンクの第1の水位よりも低い第2の水位を検出し、洗浄制御手段の計時手段が、貯水タンク内の第1の水位が低下し始めてから第2の水位に低下するまでの時間を検出することにより、陶器で形成された導水路の製造誤差による圧力損失の影響を検出することができ、これらに基づいて、洗浄制御手段のジェット吐水調整手段により、ジェット吐水口から吐水する洗浄水の吐水流量又は吐水量を調整することができる。この結果、陶器製の水洗大便器の製造誤差に応じて便器洗浄性能を損なうことなく、確実な便器洗浄を行うことができる。また、導水路の製造誤差に応じてジェット吐水口から吐水する洗浄水の吐水流量又は吐水量を適宜調整することができるため、洗浄水の無駄水も少なくなり、節水化を図ることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水洗大便器によれば、陶器製の水洗大便器の製造誤差に応じて便器洗浄性能を損なうことなく、確実な便器洗浄を行うことができ、節水化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器におけるリム吐水及びジェット吐水の給水系統を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態による水洗大便器の洗浄時において各部が作動するタイミングを示すタイムチャートである。
【図3】本発明の第1実施形態による水洗大便器において、ジェット吐水調整手段によるジェット吐水の流量を調整する手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態による水洗大便器におけるリム吐水及びジェット吐水の給水系統を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2実施形態による水洗大便器の洗浄時において各部が作動するタイミングを示すタイムチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態による水洗大便器において、ジェット吐水調整手段によるジェット吐水の吐水量を調整する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1実施形態による水洗大便器について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施形態による水洗大便器におけるリム吐水及びジェット吐水の給水系統を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、符号1は水洗大便器を示し、この水洗大便器1は、陶器等からなる便器本体2と、この便器本体2の後方に配置された機能部4を有する。
便器本体2には、ボウル部6と、排水トラップ管路8と、ジェット吐水口10と、リム吐水口12が形成されている。
【0015】
水洗大便器1は、洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口12から洗浄水が吐出される。
また、ジェット吐水に関しては、機能部4に内蔵された貯水タンク14に貯水された洗浄水を加圧ポンプ16によって加圧して、大流量でジェット吐水口10から吐出させるようになっている。
【0016】
つぎに、機能部4の構成を説明する。
図1に示すように、機能部4には、リム吐水用の給水系統として、定流量弁18と、電磁弁20と、切替弁22と、リム吐水用バキュームブレーカ24と、リム吐水用フラッパー弁26が内蔵されている。
また、機能部4には、ジェット吐水用の給水系統として、貯水タンク14と、加圧ポンプ16と、ジェット吐水用バキュームブレーカ28と、ジェット吐水用フラッパー弁30が内蔵されている。
さらに、機能部4には、電磁弁20、切替弁22、及び加圧ポンプ16を制御する洗浄制御手段であるコントローラ32が内蔵されている。
【0017】
定流量弁18は、止水栓34、分岐金具36、及びストレーナ38を介して流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞るようになっている。
本実施形態においては、定流量弁18は、洗浄水の流量を公称値で12リットル/分に制限するものが使用されているが、この流量は、実際には定流量弁18の個体差により、約10〜15リットル/分の間にばらついている。
【0018】
また、定流量弁18を通過した洗浄水は、電磁弁20を介して切替弁22に流入するように接続されている。
電磁弁20は、コントローラ32の制御信号により開閉され、洗浄水を切替弁22に流入させ、又は停止させるようになっている。
切替弁22は、電磁弁20を通過した洗浄水を、コントローラ32の制御信号により、貯水タンク14の側及びリム吐水口12の側に振り分けるように配置されている。この切替弁22は、設定により貯水タンク14及びリム吐水口12の両方に任意の割合で洗浄水を振り分けることができるようになっている。
【0019】
リム吐水用バキュームブレーカ24は、切替弁22を通過した洗浄水をリム吐水口12へ導くリム側給水路40の途中に配置され、洗浄水のリム吐水口12からの逆流を防止している。
リム吐水用フラッパー弁26は、リム吐水用バキュームブレーカ24の下流側のリム側給水路40に配置され、洗浄水のリム吐水口12からの逆流を防止している。
【0020】
貯水タンク14は、ジェット吐水口10から吐水すべき洗浄水を貯水するようになっている。
さらに、本実施形態においては、切替弁22に接続されたタンク給水路42の先端は貯水タンク14に対してエアギャップが形成されるように配置されており、貯水タンク14内の洗浄水の逆流を防止している。
また、貯水タンク14の内部には、上方フロートスイッチ44及び下方フロートスイッチ46が配置されており、貯水タンク14内の水位を検出するようになっている。
【0021】
上方フロートスイッチ44は、貯水タンク14の水位が貯水タンク14内の上方の所定の貯水水位W0(ほぼ満水の水位)に達するとOFFからONに切り替わり、コントローラ32はこれを検知して、電磁弁20を閉鎖させるようになっている。
すなわち、上方フロートスイッチ44によって検出される貯水タンク14の所定の貯水水位W0は、洗浄開始前の貯水タンク14の初期水位であり、洗浄前の規定の貯水量及び計測貯水量に相当する。
【0022】
下方フロートスイッチ46は、貯水タンク14の底面近傍に配置されており、貯水タンク14内の水位が、貯水タンク14内の下方フロートスイッチ46よりも低下するとONからOFFに切り替わり、貯水タンク14がほぼ空、すなわち、貯水タンク14内の水位がほぼゼロとなる所定の貯水水位W1になったことを検知できるようになっている。
【0023】
加圧ポンプ16は、貯水タンク14に貯水された洗浄水を加圧して、ジェット吐水口10から吐出させるようになっている。
ジェット吐水用バキュームブレーカ28は、加圧ポンプ16の下流側に接続されており、ボウル部6内の溜水が貯水タンク14側へ逆流するのを防止すると共に、それらの間の縁切りを行うようになっている。ジェット吐水用バキュームブレーカ28を通過した洗浄水は、陶器で形成された便器本体2のジェット側導水路48を通ってジェット吐水口10から吐出されるようになっている。
【0024】
ジェット吐水用フラッパー弁30は、貯水タンク14と加圧ポンプ16との間の洗浄水管路31に接続されており、貯水タンク14内の水位が低下したとき、加圧ポンプ16内の洗浄水が貯水タンク14に逆流し、加圧ポンプ16内の洗浄水が抜けるのを防止している。
【0025】
洗浄制御手段であるコントローラ32は、使用者による便器洗浄スイッチ(図示せず)の操作により、電磁弁20、切替弁22、加圧ポンプ16を順次作動させ、リム吐水口12及びジェット吐水口10からの吐水を順次開始させて、ボウル部6を洗浄するようになっている。
さらに、コントローラ32は、ジェット吐水終了後、切替弁22を切り替えて貯水タンク14に洗浄水を補給し、上方フロートスイッチ44が規定の貯水量を検出すると、電磁弁20を閉鎖して給水を停止するようになっている。したがって、電磁弁20及び切替弁22は、洗浄水補給手段として作用する。
【0026】
また、コントローラ32は、貯水タンク14から洗浄水管路31及びジェット側導水路48を経てジェット吐水口10からボウル部6へ洗浄水が供給されてボウル部6の洗浄が開始され、貯水タンク14内の水位が洗浄開始前の初期水位W0から低下し始めてから、下方フロートスイッチ46が貯水タンク14内の下方の所定の貯水水位W1を検出するまでの貯水タンク14の規定の貯水量に相当する水位が低下する時間(以下「水位低下時間τ」)を計測する計時手段50を内蔵している。
さらに、コントローラ32は、計時手段50によって測定された水位低下時間τに基づいて、ジェット吐水口10からの洗浄水の吐水流量を調整するジェット吐水調整手段52を内蔵している。具体的には、コントローラ32は、CPU、メモリ、及びそれらを作動させるプログラムにより構成されている。
【0027】
つぎに、図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器1の動作(作用)を説明する。
図2は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の洗浄時において各部が作動するタイミングを示すタイムチャートである。
まず、図2の時刻t0の待機状態において、便器洗浄スイッチ(図示せず)が操作されると、1回目のリム吐水が開始される。すなわち、図2の時刻t1において、使用者が便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、コントローラ32は、切替弁22に信号を送り、リム吐水側に切り替えられていた切替弁22を、一旦貯水タンク14側に切り替える。
【0028】
つぎに、コントローラ32は、時刻t2において、電磁弁20に信号を送ってこれを開放させ、洗浄水を切替弁22に流入させる。これにより、切替弁22の上流側の管路54内に溜まっていた空気がタンク給水路42を介して排出される。このように、管路54内に溜まっていた空気を予め排出しておくことにより、管路54内の空気がリム吐水口12を通して排出される際に発生する不快な空気の排出音の発生を防止することができる。
【0029】
つぎに、コントローラ32は、時刻t3において、切替弁22に信号を送り、貯水タンク側に一旦切り替えた切替弁22をリム吐水側に切り替える。これにより、水道の給水圧力によりリム吐水口12から洗浄水が吐出される。
すなわち、水道から供給された洗浄水は、止水栓34、分岐金具36、ストレーナ38を経て定流量弁18に流入し、定流量弁18において洗浄水の流量が所定流量に制限されて通過される。定流量弁18を通過した洗浄水は、電磁弁20、切替弁22、リム吐水用バキュームブレーカ24、リム吐水用フラッパー弁26を通ってリム吐水口12から吐出される。リム吐水口12から吐出された洗浄水は、ボウル部6内を旋回しながら下方へ流下し、ボウル部6の内壁面が洗浄される。
【0030】
つぎに、所定時間経過後の時刻t5において、ジェット吐水が開始される。
すなわち、コントローラ32は、時刻t5において、加圧ポンプ16に信号を送り、これを起動させる。
なお、ジェット吐水を開始する時刻t5は、後述するように、コントローラ32に内蔵されたジェット吐水調整手段52によって調整される。
【0031】
また、図2に示すように、本実施形態においては、ジェット吐水中においても電磁弁20は開放され、切替弁22はリム吐水側に切り替えられたままであるため、ジェット吐水と並行して、リム吐水口12からの吐水も継続される。
さらに、加圧ポンプ16が起動すると、貯水タンク14内に貯水されていた洗浄水が加圧される。この加圧ポンプ16によって加圧された洗浄水は、ジェット側導水路48を通って、ボウル部6底部に開口したジェット吐水口10から吐出される。
【0032】
より詳細には、時刻t5において起動された加圧ポンプ16の回転数は、時刻t6までに所定の回転数N1[rpm]に上昇され、この回転数N1は時刻t7まで維持される。このように、加圧ポンプ16の起動直後の回転数を比較的低回転に抑えることにより、洗浄水管路31の頂部56近傍に溜まっていた空気がジェット吐水口10から急速に排出され、不快な空気排出音が発生するのを防止することができる。
また、時刻t6において、貯水タンク14の水位が洗浄開始前の貯水タンク14の初期水位初期水位W0よりも低下し始めると、上方フロートスイッチ44がONからOFFに切り替わり、コントローラ32に内蔵された計時手段50が水位低下時間τの計測を開始する。
【0033】
つぎに、コントローラ32は、時刻t7において、加圧ポンプ16の回転数を上昇させ、回転数は時刻t8までに、所定の回転数N1よりも大きい所定の回転数N2[rpm]に上昇される。この回転数N2は、サイホン起動領域である時刻t8から時刻t9まで維持される。加圧ポンプ16の回転数を上昇させることにより、貯水タンク14内の洗浄水は大流量でジェット吐水口10から吐出される。これにより、排水トラップ管路8内は急速に満水にされ、サイホン作用が急速に起動される。
なお、時刻t8から時刻t9までのサイホン起動領域の加圧ポンプ16の回転駆動時間TAと回転数N2については、後述するように、コントローラ32の計時手段50が計測した時刻t6から時刻t11までの水位低下時間τに基づいて、コントローラ32に内蔵されたジェット吐水調整手段52によって調整される。
【0034】
さらに、コントローラ32は、時刻t9において、加圧ポンプ16の回転数を回転数N1よりも大きく且つ回転数N2より小さい所定の回転数N3[rpm]まで低下させる。この回転数N3は、サイホン持続領域である時刻t9から所定時間維持される。このように、加圧ポンプ16の回転数を低下させることにより、ジェット吐水口10から吐出される流量も低下する。
しかしながら、サイホン持続領域においてジェット吐水口10から吐出される流量は、サイホン起動領域において発生されたサイホン作用を持続させるには十分な流量であるため、サイホン作用は、ほぼサイホン持続領域の終わりまで持続される。このように、サイホン持続領域において流量を低下させながらサイホン作用を持続させることにより、ジェット吐水口10から吐出される洗浄水の量を低く抑えながら、サイホン作用を長時間持続させることができる。
【0035】
サイホン持続領域の終わりまでにはボウル部6内の溜水がほぼ完全に排出されるため、排水トラップ管路8に流入する洗浄水の流量が減少し、サイホン作用は終了する。
つぎに、コントローラ32は、加圧ポンプ16の回転数を再び上昇させて時刻t10には所定の回転数N4[rpm]まで上昇させる。この回転数N4は、ブロー領域である時刻t10から時刻t11まで維持される。
また、時刻t11において、貯水タンク14の水位が貯水タンク14の底面近傍に配置された下方フロートスイッチ46よりも低下すると、下方フロートスイッチ46がONからOFFに切り替わり、コントローラ32の計時手段50が水位低下時間τの計測を終了する。
【0036】
なお、時刻t9から時刻t10までのサイホン持続領域の加圧ポンプ16の回転駆動時間TBと回転数N3、及び、時刻t10から時刻t11までのブロー領域の加圧ポンプ16の回転駆動時間TCと回転数N4については、後述するように、コントローラ32の計時手段50が計測した時刻t6から時刻t11までの水位低下時間τに基づいて、コントローラ32に内蔵されたジェット吐水調整手段52によって調整される。
【0037】
ここで、ブロー領域においてジェット吐水口10から吐出される洗浄水の流量は、サイホン起動領域と同じであるが、ブロー領域においては、ボウル部6内に溜水がほとんど残っていないため、排水トラップ管路8に流入する洗浄水の流量は比較的少なく、サイホン作用が再び起動されることはない。このブロー領域においては、ボウル部6や排水トラップ管路8内に残った汚物が、ジェット吐水口10からの洗浄水により排水管Dに押し出される。
なお、ブロー領域の終了時刻である時刻t11は、後述するように、コントローラ32に内蔵されたジェット吐水調整手段52によって調整される。
【0038】
つぎに、コントローラ32は、時刻t11において、加圧ポンプ16の回転数を低下させ、加圧ポンプ16は時刻t12までに停止される。ジェット吐水終了後もリム吐水は継続されており、これにより、ボウル部6内の溜水水位が上昇される。
また、コントローラ32は、時刻t13において、切替弁22に信号を送り、リム吐水側に切り替えられていた切替弁22を、タンク給水側に切り替える。
切替弁22は、時刻t14までには、タンク給水側に完全に切り替えられ、以後、供給された洗浄水は全て貯水タンク14に流入する。
【0039】
また、時刻t13から時刻t14までの間は、切替弁22が切り替えられる過渡状態にあるため、洗浄水が貯水タンク14及びボウル部6の両方に流入することにより、貯水タンク14内の水位が上昇する。そして、時刻t14において貯水タンク14の水位が上昇して下方フロートスイッチ46に達すると、下方フロートスイッチ46がOFFからONに切り替わる。
さらに、洗浄水が貯水タンク14に流入することにより貯水タンク14内の水位が上昇し、時刻t15において、水位が所定の水位W0まで上昇して上方フロートスイッチ44がONになる。
コントローラ32は、上方フロートスイッチ44がONになると、電磁弁20に信号を送り、これを閉鎖させる。
【0040】
さらに、コントローラ32は、電磁弁20が閉鎖された後、切替弁22に信号を送り、タンク給水側に切り替えられていた切替弁22をリム吐水側に切り替え、これにより、時刻t16において待機状態に復帰する。
コントローラ32に内蔵されたジェット吐水調整手段52は、後述するように、計時手段50によって計測された水位低下時間τに基づいて、時刻t5から時刻t12までの時間に相当する加圧ポンプ16の回転駆動時間と、加圧ポンプ16の回転数N2,N3,N4を変化させることにより、次回の洗浄時に加圧ポンプ16からジェット側導水路48を経てジェット吐水口10で吐出させるジェット吐水の瞬間流量を調整する。
なお、本実施形態の上述した加圧ポンプ16の回転数N1,N2,N3,N4、及び、回転駆動時間、TA,TB,TCについては、その水洗大便器の仕様により適時変更することが可能であり、それらに限定されるものではない。
【0041】
つぎに、図3を参照して、コントローラ32に内蔵されたジェット吐水調整手段52によるジェット吐水の流量の調整について説明する。
図3は、本発明の第1実施形態による水洗大便器において、ジェット吐水調整手段によるジェット吐水の流量を調整する手順を示すフローチャートである。
なお、本実施形態におけるジェット吐水の流量の調整は、主に、陶器製の便器本体2のジェット側導水路48の製造誤差によるジェット吐水の流量のばらつきにより、洗浄水が不足したり、洗浄水が無駄に使用されることを防止する目的で行われる。
【0042】
まず、ステップS0の待機状態において、便器洗浄スイッチ(図示せず)が大洗浄側に操作されると、ステップS1において、コントローラ32が大洗浄信号を電磁弁20等に出力する(図2の時刻t1)。
つぎに、ステップS2において、切替弁22が貯水タンク14側に切り替えられると共に電磁弁20が開放し(図2の時刻t2)、切替弁22の上流側の管路54内に溜まっていた空気がタンク給水路42を介して排出された後、切替弁22がリム吐水側に切り替えられ(図2の時刻t3)、水道の給水圧力によりリム吐水口12から洗浄水が吐出される前リム洗浄が開始される(図2の時刻t4)。
【0043】
つぎに、ステップS3において、コントローラ32が加圧ポンプ16に信号を送り、加圧ポンプ16が起動し(図2の時刻t5)、加圧ポンプ16に信号を送り、ジェット吐水によるジェット洗浄が開始される。
なお、この際、加圧ポンプ16からジェット側導水路48を経てジェット吐水口10で吐出させるジェット吐水の瞬間流量は、前回までの洗浄に基づいて、ジェット吐水調整手段52により決定されたものが使用される。
【0044】
つぎに、ステップS4において、貯水タンク14の水位が洗浄開始前の貯水タンク14の初期水位W0よりも低下し、上方フロートスイッチ44がONからOFFに切り替わると、ステップS5において、コントローラ32に内蔵されたタイマー(図示せず)が時間の積算を開始する(図2の時刻t6)。すなわち、計時手段50が水位低下時間τの計測を開始する。
【0045】
つぎに、ステップS6において、貯水タンク14の水位が貯水タンク14の底面近傍に配置された下方フロートスイッチ46よりも低下し、下方フロートスイッチ46がONからOFFに切り替わると、ステップS7において、コントローラ32に内蔵されたタイマー(図示せず)が時間の積算を終了する(図2の時刻t11)。すなわち、計時手段50が水位低下時間τの計測を終了する。
【0046】
つぎに、ステップS8において、加圧ポンプ16の作動スイッチ(図示せず)がOFFとなり(図2の時刻t11)、ジェット吐水によるジェット洗浄が終了するが、リム吐水によるリム洗浄(後リム洗浄)は継続される。
【0047】
つぎに、ステップS9において、計時手段50が計測した時刻t6から時刻t11までの水位低下時間τに基づいて、陶器である便器本体2のジェット側導水路48の圧力損失を計算し、この圧力損失の計算値から、加圧ポンプ16からジェット側導水路48を経てジェット吐水口10で吐出させるジェット吐水の瞬間流量を計算し、ステップS10において、これらの計算した圧力損失のデータと加圧ポンプ16によるジェット吐水の瞬間流量のデータがコントローラ32のメモリ(図示せず)に記憶される。
ここで、コントローラ32のメモリ(図示せず)には、デフォルト値としてのジェット吐水の瞬間流量が予め設定されており、通常水圧において、定流量弁18が設計値通りの流量を通過させる場合の最適な値が設定されている。このデフォルト値は、工場における検査等による通水時には変更されることがない。さらに、水洗大便器1が現場に設置され、試運転によって最初に大洗浄が実行されたときはデフォルト値により洗浄が実行され、以後の計時手段50が計測した水位低下時間τがジェット吐水の瞬間流量の調整のために参照される。
【0048】
つぎに、ステップS11において、ステップS10でコントローラ32のメモリ(図示せず)に記憶させた便器本体2のジェット側導水路48の圧力損失のデータと加圧ポンプ16によるジェット吐水の瞬間流量のデータとコントローラ32のメモリ(図示せず)にデフォルト値として予め記憶されたジェット吐水の瞬間流量に基づいて、コントローラ32に内蔵されたジェット吐水調整手段52が、図2の時刻t8から時刻t9までのサイホン起動領域の加圧ポンプ16の回転駆動時間TAと回転数N2、図2の時刻t9から時刻t10までのサイホン持続領域の加圧ポンプ16の回転駆動時間TBと回転数N3、図2の時刻t10から時刻t11までのブロー領域の加圧ポンプ16の回転駆動時間TCと回転数N4に関する加圧ポンプ16のデータを決定し、これらの加圧ポンプ16の回転駆動時間TA,TB,TC及び回転数N2,N3,N4のうちの少なくとも1つを調整することにより、次回の洗浄時に加圧ポンプ16からジェット側導水路48を経てジェット吐水口10で吐出させるジェット吐水の瞬間流量が調整される。
【0049】
つぎに、ステップS12において、コントローラ32から切替弁22に信号が送られ、リム吐水側に切り替えられていた切替弁22がタンク給水側に切り替えられ、貯水タンク14内に洗浄水が流入し(図2の時刻t13)、ステップS13において、貯水タンク14の水位が上昇して下方フロートスイッチ46に達すると、下方フロートスイッチ46がOFFからONに切り替わる(図2の時刻t14)。
【0050】
つぎに、ステップS14において、貯水タンク14内の水位が所定の初期水位W0まで上昇して上方フロートスイッチ44がONになると(図2の時刻t15)、ステップS15において、電磁弁20が閉鎖する。
そして、ステップS16において、便器洗浄が終了し、ステップS0の待機状態に復帰する。
【0051】
上述した本発明の第1実施形態の水洗大便器1によれば、コントローラ32の計時手段50が、貯水タンク14内の洗浄開始前の初期水位W0から所定水位W1に低下するまでの水位低下時間τを検出することにより、陶器で形成された便器本体2のジェット側導水路48の製造誤差による圧力損失の影響を検出することができ、これらに基づいて、コントローラ32のジェット吐水調整手段52により、ジェット吐水口10から吐水する洗浄水の吐水流量を調整することができる。この結果、陶器製の便器本体2の製造誤差に応じて便器洗浄性能を損なうことなく、確実な便器洗浄を行うことができる。また、便器本体2のジェット側導水路48の製造誤差に応じてジェット吐水口10から吐水する洗浄水の吐水流量を適宜調整することができるため、洗浄水の無駄水も少なくなり、節水化を図ることもできる。
【0052】
また、本実施形態の水洗大便器1によれば、コントローラ32の計時手段50が検出した水位低下時間τに基づいて、コントローラ32のジェット吐水調整手段52により、加圧ポンプ16を駆動させて貯水タンク14内に貯水された洗浄水をボウル部6へ供給しているときの加圧ポンプ16の回転駆動時間TA,TB,TCのうちの少なくとも1つを調整することにより、ジェット吐水口10から吐水する洗浄水の吐水量を容易に調整することができ、加圧ポンプ16の回転数N2,N3,N4のうちの少なくとも1つを調整することにより、ジェット吐水口10からの吐水流量を容易に調整することができる。この結果、陶器製の便器本体2の製造誤差に応じて便器洗浄性能を損なうことなく、確実な便器洗浄を行うことができる。また、便器本体2のジェット側導水路48の製造誤差に応じてジェット吐水口10から吐水する洗浄水の吐水流量を適宜調整することができるため、洗浄水の無駄水も少なくなり、節水化を図ることもできる。
【0053】
さらに、本実施形態の水洗大便器1によれば、洗浄開始後、上方フロートスイッチ44が、貯水タンク14の洗浄開始前の初期水位W0を検出し、下方フロートスイッチ46が、貯水タンク14の初期水位W0よりも低い所定の水位W1(ほぼゼロ)を検出し、コントローラ32の計時手段50が、貯水タンク14内の水位が所定水位W0よりも低下し始めてから所定の水位W1(ほぼゼロ)に低下するまでの時間を検出することにより、陶器で形成された便器本体2のジェット側導水路48の製造誤差による圧力損失の影響を検出することができ、これらに基づいて、コントローラ32のジェット吐水調整手段52により、ジェット吐水口10から吐水する洗浄水の吐水流量を調整することができる。この結果、陶器製の便器本体2の製造誤差に応じて便器洗浄性能を損なうことなく、確実な便器洗浄を行うことができる。また、ジェット側導水路48の製造誤差に応じてジェット吐水口10から吐水する洗浄水の吐水流量を適宜調整することができるため、洗浄水の無駄水も少なくなり、節水化を図ることもできる。
【0054】
なお、上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1においては、貯水タンク14が、ほぼ満水となる初期水位W0に相当する規定の貯水量から所定水位W1(ほぼ水位ゼロ)の空の状態になるまでの洗浄水量を計測貯水量として水位低下時間τを計測する例を説明したが、計測貯水量を規定の貯水量よりも少なく設定するようにしてもよい。この場合には、上端フロートスイッチ44と下端フロートスイッチ46の間に、計測貯水量を検出するための第3のセンサを設けておき、タンク給水開始後、第3のセンサが計測貯水量を検出するまでの時間を水位低下時間τとして、ジェット吐水口10から吐水する洗浄水の吐水量の調整を実行することができる。
【0055】
つぎに、図4〜図6を参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器を説明する。
図4は本発明の第2実施形態による水洗大便器におけるリム吐水及びジェット吐水の給水系統を示すブロック図である。
なお、図4において、図1に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器におけるリム吐水及びジェット吐水の給水系統と同一部分については同一の符号を付し、これらの説明は省略する。
【0056】
図4に示すように、本発明の第2実施形態による水洗大便器100においては、貯水タンク14内の上方フロートスイッチ44よりも下方に配置されている下方フロートスイッチ146が、第1実施形態による水洗大便器1の下方フロートスイッチ46の位置よりも上方に位置している点で第1実施形態による水洗大便器1とは異なった構成となっている。
すなわち、下方フロートスイッチ146は、第1実施形態による水洗大便器1の貯水タンク14の上方フロートスイッチ44と下方フロートスイッチ46との間に配置されており、貯水タンク14内の水位が、貯水タンク14内の下方フロートスイッチ146よりも低下するとONからOFFに切り替わり、貯水タンク14内に所定の貯水量が残されている状態である所定の貯水水位W2になったことを検知できるようになっている。
【0057】
また、コントローラ132の計時手段150は、貯水タンク14内の水位が洗浄開始前の初期水位W0から低下し始めてから、下方フロートスイッチ146が貯水タンク14内の下方の所定の貯水水位W2を検出するまでの水位低下時間τ1を計測するようになっている。
さらに、コントローラ132のジェット吐水調整手段152は、計時手段150によって測定された水位低下時間τ1に基づいて、下方フロートスイッチ146が貯水タンク14内の下方の所定の貯水水位W2を検出してから加圧ポンプ16を停止させるまでの貯水タンク14内の水位低下時間τ2を調整することにより、ジェット吐水口10からの洗浄水の吐水量を調整することができるようになっている。
【0058】
つぎに、図4〜図6を参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器100の動作(作用)を説明する。
図5は本発明の第2実施形態による水洗大便器の洗浄時において各部が作動するタイミングを示すタイムチャートであり、図6は本発明の第2実施形態による水洗大便器において、ジェット吐水調整手段によるジェット吐水量を調整する手順を示すフローチャートである。
【0059】
まず、図5に示されている時刻t100から時刻t110までの動作は、本発明の第1実施形態による水洗大便器1における図2に示されている時刻t0から時刻t10までの動作と同様であるため、説明は省略する。
なお、本実施形態の加圧ポンプ16の回転数N1,N2,N3,N4、及び、回転駆動時間、TA,TB,TCは、その水洗大便器の仕様により適時変更することが可能であり、それらに限定されるものではない。
また、図6に示されているステップS100からステップS105までの手順についても、本発明の第1実施形態による水洗大便器1における図3に示されているステップS1からステップS5までの手順と同様であるため、説明は省略する。
【0060】
図5の時刻t100及び図6のステップS100の待機状態で、便器洗浄スイッチ(図示せず)が操作された後、図5の時刻t101から時刻t105までの一連の動作及び図6のステップS101からステップS103までの一連の手順を行った後、図5の時刻t106及び図6のステップS104において、貯水タンク14の水位が洗浄開始前の貯水タンク14の初期水位初期水位W0よりも低下し、上方フロートスイッチ44がONからOFFに切り替わると、図5の時刻t106及び図6のステップS105において、コントローラ32に内蔵されたタイマー(図示せず)が時間の積算を開始する。すなわち、計時手段150が水位低下時間τ1の計測を開始する。
【0061】
つぎに、図5の時刻t111及び図6のステップS106において、貯水タンク14の水位が貯水タンク14の下方フロートスイッチ146よりも低下し、下方フロートスイッチ146がONからOFFに切り替わると、図6のステップS107において、コントローラ132に内蔵されたタイマー(図示せず)が時間の積算を終了する。すなわち、計時手段150が水位低下時間τ1の計測を終了する。
【0062】
つぎに、図6のステップS108において、計時手段150によって測定された水位低下時間τ1に基づいて、コントローラ132に内蔵されたジェット吐水調整手段152が、下方フロートスイッチ146が貯水タンク14内の下方の所定の貯水水位W2を検出してから図5の時刻t112aで加圧ポンプ16を停止させるまでの貯水タンク14内の水位低下時間τ2を決定し、次回の洗浄時に加圧ポンプ16からジェット側導水路48を経てジェット吐水口10で吐出させるジェット吐水量が調整される。
【0063】
つぎに、図6のステップS109において、計時手段150によって測定された図5の時刻t111からの経過時間が、図6のステップS108で決定された水位低下時間τ2を経過している場合には、図5の時刻t112a及び図6のステップS110において、加圧ポンプ16の作動スイッチ(図示せず)がOFFとなり、加圧ポンプ16は図5の時刻t112bまでに停止される。このとき、ジェット吐水によるジェット洗浄が終了するが、リム吐水によるリム洗浄(後リム洗浄)は継続される。
また、貯水タンク14内の水位は、所定の貯水水位W2よりも低い所定の貯水水位W3まで低下している。
なお、本実施形態では、図5の時刻t112bで加圧ポンプ16が停止し、ジェット吐水によるジェット洗浄が終了した時点で、貯水タンク14内に所定の貯水水位W3に相当する所定の貯水量の洗浄水が貯水されている状態について説明しているが、貯水水位W3がほぼゼロとなるように、コントローラ132に内蔵されたジェット吐水調整手段152が、貯水タンク14内の水位低下時間τ2を決定するようにしてもよい。
【0064】
つぎに、図5の時刻t113及び図6のステップS111において、コントローラ132から切替弁22に信号が送られ、リム吐水側に切り替えられていた切替弁22がタンク給水側に切り替えられ、貯水タンク14内に洗浄水が流入し、図5の時刻t114及び図6のステップS112において、貯水タンク14の水位が上昇して下方フロートスイッチ146に達し、所定の貯水水位W2になると、下方フロートスイッチ146がOFFからONに切り替わる。
【0065】
また、図5の時刻t115及び図6のステップS113において、貯水タンク14内の水位が所定の水位W0まで上昇して上方フロートスイッチ44がONになると、ステップS114において、電磁弁20が閉鎖する。
そして、図5の時刻t116及び図6のステップS115において、便器洗浄が終了し、ステップS100の待機状態に復帰する。
【0066】
上述した本発明の第2実施形態の水洗大便器100によれば、コントローラ132の計時手段150が、貯水タンク14内の洗浄開始前の初期水位W0から所定水位W2に低下するまでの水位低下時間τ1を検出し、この検出した水位低下時間τ1に基づいて、コントローラ132のジェット吐水調整手段152により、下方フロートスイッチ146が貯水タンク14内の下方の所定の貯水水位W2を検出してから加圧ポンプ16を停止させるまでの貯水タンク14内の水位低下時間τ2を調整し、ジェット吐水口10からの洗浄水の吐水量を調整することができる。この結果、陶器で形成された便器本体2のジェット側導水路48の製造誤差による圧力損失の影響を考慮し、ジェット吐水口10から吐水する洗浄水の吐水量を調整することができるため、陶器製の便器本体2の製造誤差に応じて便器洗浄性能を損なうことなく、確実な便器洗浄を行うことができる。また、便器本体2のジェット側導水路48の製造誤差に応じてジェット吐水口10から吐水する洗浄水の吐水流量を適宜調整することができるため、洗浄水の無駄水も少なくなり、節水化を図ることもできる。
また、上述した本発明の第2実施形態の水洗大便器100によれば、加圧ポンプ16を停止させた後に貯水タンク14内に残留している残留水を削減することができる。そのような残留水は、従来、貯水タンク14内の洗浄水がジェット吐水口10へ全て吐水され加圧ポンプ16に空気が進入し不具合等が生じることを防止するために、設計時に予め最悪条件を想定して規定されているものであるが、上述した本実施形態の水洗大便器100により貯水タンク14内の水位低下時間τ2を調整しジェット吐水口10からの洗浄水の吐水量を調整することができるため、貯水タンク14内に残留している残留水を削減することができる。したがって、この結果として、貯水タンク14を小型化することができる。
【0067】
なお、上述した本発明の第1実施形態及び第2実施形態による水洗大便器においては、上方フロートスイッチ及び下方フロートスイッチによって貯水タンク14内の貯水量を測定していたが、貯水量は、貯水タンク内に配置した圧力センサ等、任意のセンサによって測定するようにしてもよい。
【0068】
また、上述した本発明の第1実施形態及び第2実施形態による水洗大便器においては、例として、貯水タンク内の洗浄水を加圧ポンプにより洗浄水管路及びジェット側導水路を経てジェット吐水口に供給するような形態について説明したが、このような形態に限定されず、加圧ポンプ16により貯水タンク14内の洗浄水をリム吐水口18及びジェット吐水口10の双方に供給するような形態についても適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 機能部
6 ボウル部
8 排水トラップ管路
10 ジェット吐水口
12 リム吐水口
14 貯水タンク
16 加圧ポンプ
18 定流量弁
20 電磁弁
22 切替弁
24 リム吐水用バキュームブレーカ
26 リム吐水用フラッパー弁
28 ジェット吐水用バキュームブレーカ
30 ジェット吐水用フラッパー弁
31 洗浄水管路
32 コントローラ
34 止水栓
36 分岐金具
38 ストレーナ
40 リム側給水路
42 タンク給水路
44 上方フロートスイッチ
46 下方フロートスイッチ
48 ジェット側導水路
50 計時手段
52 ジェット吐水調整手段
54 管路
56 洗浄水管路の頂部
100 水洗大便器
132 コントローラ
146 下方フロートスイッチ
150 計時手段
152 ジェット吐水調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、
陶器で形成された導水路と、この導水路に接続され且つリム吐水口及びジェット吐水口が形成されたボウル部と、排水トラップ管路と、を備えた便器本体と、
上記ジェット吐水口から吐水させる洗浄水を加圧する加圧ポンプと、
この加圧ポンプによって加圧すべき洗浄水を貯水する貯水タンクと、
上記加圧ポンプを駆動させ、上記貯水タンク内に貯水された洗浄水を上記ボウル部へ供給することにより上記ボウル部を洗浄する洗浄制御手段と、を有し、
この洗浄制御手段は、上記貯水タンクから上記ボウル部へ洗浄水を供給して上記ボウル部の洗浄を開始し、上記貯水タンク内の水位が洗浄開始前の初期水位から所定水位に低下するまでの水位低下時間を検出する計時手段と、この計時手段が検出した上記水位低下時間に基づいて、上記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の吐水流量又は吐水量を調整するジェット吐水調整手段と、を備えていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記洗浄制御手段のジェット吐水調整手段は、上記計時手段が検出した上記水位低下時間に基づいて、上記貯水タンク内に貯水された洗浄水を上記ボウル部へ供給しているときの上記加圧ポンプの駆動時間を調整し、上記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の吐水量を調整する請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記洗浄制御手段のジェット吐水調整手段は、上記計時手段が検出した上記水位低下時間に基づいて、上記貯水タンク内に貯水された洗浄水を上記ボウル部へ供給しているときの上記加圧ポンプの回転数を調整し、上記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の吐水流量を調整する請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
更に、上記貯水タンクの洗浄開始前の初期水位である第1の水位を検出する第1のフロートスイッチと、上記貯水タンクの上記第1の水位よりも低い第2の水位を検出する第2のフロートスイッチと、を有し、上記洗浄制御手段の計時手段は、上記貯水タンク内の上記第1の水位で水位低下が開始してから上記貯水タンク内の水位が上記第2の水位に低下するまでの時間を検出する請求項1乃至3の何れか1項に記載の水洗大便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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