説明

水流抵抗低減装置

【課題】船舶用ラダーの抵抗を低減する水流抵抗低減装置を提供する。
【解決手段】ガス気泡放出装置20およびガス導入装置30を備える。ガス気泡放出装置20は、船舶用ラダー14の前縁部に配置される。ガス気泡放出装置20は、船舶用ラダー14の迎え角に配置された中空部品21から構成され、少なくとも一つのガス導入口211および両側に形成された複数のガス気泡放出口を有する。ガス導入装置30は、少なくとも一つのガス導入管31および上端に形成された吸気口32を有する。ガス導入管31の下段部とガス気泡放出装置20のガス導入口211とは接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用ラダーの抵抗を低減する水流抵抗低減装置に関し、詳しくは負圧を介してガス気泡を導入することによって船舶用ラダーの抵抗を低減する水流抵抗低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の船舶は、特許文献1に記載の船舶のように、船体のほかに船体外部に取り付けられている附属品を含む。また、例えば、図1に示した船舶10は、船体11、喫水線12の下方に位置するように船体11に装着されるスクリュー13、および、先進方向の制御に用いるためにスクリュー13の後方に設けられている船舶用ラダー14を備える。
【0003】
図2は、船舶10のスクリュー13の生じた水流が船舶用ラダー14を流れる状態を示す模式図である。船舶用ラダー14は、スクリュー13の高速水流の後方に位置し、走行抵抗を増大させてしまう。しかしながらこのような船舶10にとっては、船舶用ラダー14は欠かせない附属品であるため、スクリュー13の高速水流による船舶用ラダー14の水流抵抗を避けることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−150794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した問題点を解決するために、構造強度に影響を与えない限り、船舶用ラダーの形を流線形に構成するか、船舶用ラダーに対して表面処理を行うことにより、船舶用ラダーの抵抗を低減する試みがある。しかしながら、このような方法は抵抗を低減する効果が不十分であるか、かかる費用が相当高い。従って如何にコストを削減し、かつ船舶用ラダーの抵抗および燃料消費量を低減することができるかということが船舶製造メーカおよび学会研究の解決課題となっている。
本発明は、船舶用ラダーの抵抗を低減する水流抵抗低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明による水流抵抗低減装置は、船体を進行させるために所定位置に装着されたスクリューの後方に配置される船舶用ラダーの水流抵抗を低減する。水流抵抗低減装置は、ガス気泡放出装置およびガス導入装置を備える。 ガス気泡放出装置は、船舶用ラダーの前縁部に配置される。ガス気泡放出装置は、船舶用ラダーの迎え角に配置された中空部品から構成され、少なくとも一つのガス導入口および両側に形成された複数のガス気泡放出口を有する。
ガス導入装置は、少なくとも一つのガス導入管および上端に形成された吸気口を有する。ガス導入管の下段部とガス気泡放出装置のガス導入口とは接続されている。
【0007】
船体が進行し、スクリューの生じた高速水流Fが船舶用ラダーの迎え角に衝突する際、ベルヌーイの定理により、前記高速水流(F)がガス気泡放出口の近傍を流れ、ガス気泡放出口の近傍に負圧が発生することでガスを吸入する。
負圧により吸い込まれたガスは、ガス導入管を経由してガス導入口に流入し、ガス気泡放出口から放出され、水流と混合した後、ガス気泡を大量に発生する。
放出されたガス気泡を介して水流と船舶用ラダーとの間の接触摩擦を部分的に遮断することによって船舶用ラダーがスクリューの高速水流に対して生じた抵抗を低減する。
【0008】
また、本発明のガス導入装置は、ガス導入を補助する方式を利用する。ガス導入を補助する方式は排気ガス、エンジンの排気ガスまたは蒸気タービンの排気ガスなどの低圧気体をガス導入管内に導入する。
【0009】
本発明は、加圧装置をさらに備える。加圧装置は、船体の空気圧機器、ブロワー、エンジン、蒸気タービンまたはタービン増圧器のうちのいずれか一つから構成され、加圧方式によってガス導入管にガスを導入する。
【0010】
本発明は、本来の構成を変更する必要なく、本来の船舶用ラダーの前縁部にガス気泡放出装置を配置し、かつ船体が進行する際に生じた高速水流が船舶用ラダーの迎え角に衝突して負圧を発生させることによってガス気泡を導入し、導入されたガス気泡を介して水流と船舶用ラダーとの接触を部分的に遮断する。これにより、船舶用ラダーがスクリューの高速水流に対して生じた抵抗を低減し、省エネルギー効果を増進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の船舶用ラダーを示す模式図である。
【図2】水流が従来の船舶用ラダーを流れる状態を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態による水流抵抗低減装置のガス気泡を生成する状態を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施形態による水流抵抗低減装置のガス導入装置を示す模式図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】図5の破線6の箇所を示す拡大図、即ち負圧が発生した際のガス気泡の状態を示す模式図である。
【図7】図6中のガス気泡放出装置の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による水流抵抗低減装置を図面に基づいて説明する。そのうち船舶用ラダーによって形式が多様化であるだけでなく、形および構造が異なるため、本発明は比較的よい実施例を挙げ、説明を進め、かつ採用した技術手段が同じ点については重複する説明を省略する。
【0013】
(一実施形態)
図3は本発明による水流抵抗低減装置1に基づいてガス気泡50を介して船舶用ラダーの抵抗を低減する状態を示す模式図であり、図2に示した従来の船舶用ラダー14の表面抵抗との比較に用いられる。図4および図5は本発明の一実施形態を示す模式図である。
【0014】
図4に示すように、船舶10の船体11はスクリュー13を有する。スクリュー13はエンジン131によって駆動され、高速水流Fを発生させる。船舶用ラダー14はスクリュー13の後方に配置される。
【0015】
水流抵抗低減装置1は、船舶用ラダー14の前縁部に配置され、ガス気泡放出装置20およびガス導入装置30を有する。図6および図7に示すように、本実施形態において、ガス気泡放出装置20は、中空部品21から構成され、船舶用ラダー14の迎え角に配置される。中空部品21は、少なくとも一つのガス導入口211および両側に形成された複数のガス気泡放出口を212有する。ガス気泡放出口212は円孔状または別の形を呈する。本実施形態において、中空部品21は、船舶用ラダー14の前縁部の迎え角に装着され、円筒体を呈するが、これに限らない。つまり中空部品21は、別の形を呈してもよい。複数のガス気泡放出口212は筒体上に形成されている。ガス気泡放出口212は円孔状または別の形を呈する。形の変更は本発明の実施できる範囲である。また船舶が仕上がる際、中空部品21は、船舶用ラダー14と一体成型されている。現役の船舶に対し、船舶用ラダー14の迎え角に中空部品21を増設および固定することができるため、船舶用ラダー14の構造を破壊することがないだけでなく、設置に非常に便利である。
【0016】
図4に示すように、ガス導入装置30は、少なくとも一つのガス導入管31および上端に形成された吸気口32を有する。ガス導入管31の下段部とガス気泡放出装置20のガス導入口211とは接続されている。ガス導入管31の上端の吸気口32は船体11内または喫水線12より高い部位に配置されている。
【0017】
船体11が進行し、スクリュー13の生じた高速水流Fが船舶用ラダー14の迎え角に衝突する際、ベルヌーイの定理(Bernoulli's Principle)より、高速水流(F)がガス気泡放出口212の近傍を流れ、ガス気泡放出口212の近傍に負圧が発生することでガスを吸入する。スクリュー13が回転する際に生じた軸方向の水流は速度が極めて速いため、ガス気泡放出口212に非常に大きい負圧を発生させることによってガスを吸入することができる。このような水流抵抗低減装置1によるガス導入方法は動力に頼る必要なく、スクリュー13の回転のみによってガスを導入し、無数のガス気泡50を発生させることができるため、非常に省エネルギー効果がある。
【0018】
負圧により吸入されたガスがガス導入管31を介してガス導入口211に流入し、ガス気泡放出口212から放出され、水流と混合した後、ガス気泡50を大量発生させる。
【0019】
図3に示すように放出されたガス気泡50を介して水流Fと船舶用ラダー14との間の接触摩擦を部分的に遮断することによって船舶用ラダー14がスクリュー13の高速水流に対して生じた抵抗を低減する。
【0020】
詳しく言えば、水の抵抗は空気より700倍から800倍大きいため、ガス気泡50を介して水流Fと船舶用ラダー14との接触を部分的に遮断すれば、抵抗を低減することができる。ガス気泡50によって遮断された船舶用ラダー14と水流との接触部分が大きければ大きいほど、抵抗低減効果がよくなる。
【0021】
上述した構成により、ガス気泡50を導入する際、動力に頼ったり本来の構成を変更したりする必要なく、船舶用ラダー14の前縁部の高速水流区にガス気泡放出装置20を配置することだけでよい。
【0022】
図4に示すように、ガス導入を補助する必要がある場合、船体11内の現有の資源を利用することができる。例えばガス導入装置30のガス導入管31と加圧装置34とを連結し、ガス導入管31と加圧装置34との間に制御弁33を配置し、加圧装置34の補助加圧方式によって船体11の空気、エンジンの排気ガスまたは蒸気タービンの排気ガスなどのガスをガス導入管31内に導入することができる。
【0023】
加圧装置34は、船体11内の現有の空気圧機器、ブロワー、エンジン、蒸気タービンのうちのいずれか一つから構成されてもよい。使用の際、上述した通りエンジンの排気ガスまたは蒸気タービンの排気ガスなどの低圧気体を直接導入すればよいため、資源のリサイクルになるだけでなく、資源およびコストを増加することがない。またエンジンの排気ガスまたは蒸気タービンの排気ガスなどを介してタービン増圧器を駆動することによって加圧ガスを生成し、かつ生成した加圧ガスをガス気泡放出口212から放出することができる。またブロワーなどから構成される加圧装置34は少量の動力によって加圧ガスを供給し、かつ大量のガス気泡50を介して高速水流Fと船舶用ラダー14との接触を遮断することによって抵抗低減効果をより高めることができる。つまり加圧装置34は少量の動力によって数倍の動力効果を得ることができる。また上述した通り、ガス導入を直接補助する形態または加圧方式によってガスを導入する形態は加圧装置34が実施できるため、詳細な説明を省略する。
【0024】
本発明は、船舶用ラダー14の前縁部にガス気泡放出装置20を配置し、かつベルヌーイの定理に基づいて「高速流体を介して周囲に負圧を発生させる」構成によってガスを導入し、そして放出されたガス気泡50によって水流と船舶用ラダー14との間の接触を部分的に遮断するため、最も省エネルギー方式および効果がある構成によってスクリュー13の高速水流Fが船舶用ラダー14に対して生じた抵抗を確実に低減することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 ・・・水流抵抗低減装置、
10 ・・・船舶、
11 ・・・船体、
12 ・・・喫水線、
13 ・・・スクリュー、
131・・・エンジン、
14 ・・・船舶用ラダー、
20 ・・・ガス気泡放出装置、
21 ・・・中空部品、
211・・・ガス導入口、
212・・・ガス気泡放出口、
30 ・・・ガス導入装置、
31 ・・・ガス導入管、
32 ・・・吸気口、
33 ・・・制御弁、
34 ・・・加圧装置、
50 ・・・ガス気泡、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体を進行させるために所定位置に装着されたスクリューの後方に配置される船舶用ラダーの水流抵抗を低減する水流抵抗低減装置であって、
前記船舶用ラダーの前縁部に配置され、前記船舶用ラダーの迎え角に配置された中空部品から構成され、少なくとも一つのガス導入口および両側に形成された複数のガス気泡放出口を有するガス気泡放出装置と、
下段部を前記ガス気泡放出装置の前記ガス導入口と接続する少なくとも一つのガス導入管、および、上端に形成された吸気口を有するガス導入装置と、を備え、
船体が進行し、前記スクリューの生じた高速水流が前記船舶用ラダーの迎え角に衝突する際、ベルヌーイの定理により、前記高速水流が前記ガス気泡放出口の近傍を流れ、前記ガス気泡放出口の近傍に負圧が発生することでガスを吸い込み、
負圧により吸い込まれた前記ガスは、前記ガス導入管を経由して前記ガス導入口に流入し、前記ガス気泡放出口から放出され、水流と混合した後、ガス気泡を大量に発生し、
放出された前記ガス気泡を介して水流と前記船舶用ラダーとの間の接触摩擦を部分的に遮断することによって前記船舶用ラダーが前記スクリューの高速水流に対して生じた抵抗を低減することを特徴とする水流抵抗低減装置。
【請求項2】
前記ガス導入管の上端の前記吸気口は、前記船体内または喫水線より高い部位に配置されることを特徴とする請求項1に記載の水流抵抗低減装置。
【請求項3】
前記ガス導入装置は、排気ガス、エンジンの排気ガス、または、蒸気タービンの排気ガスなどの低圧気体を前記ガス導入管内に導入するガス導入を補助する方式を利用することを特徴とする請求項2に記載の水流抵抗低減装置。
【請求項4】
加圧装置をさらに備え、
前記加圧装置は、前記船体の空気圧機器、ブロワー、エンジン、蒸気タービン、または、タービン増圧器のうちのいずれか一つから構成され、加圧方式によって前記ガス導入管にガスを導入することを特徴とする請求項3に記載の水流抵抗低減装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−52718(P2013−52718A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190815(P2011−190815)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(505351393)