説明

水溶性フッ素化添加剤の存在下での硫酸銀粒子の製造

水溶性銀塩と、水溶性の無機硫酸イオン源とを攪拌されている沈殿反応器内で反応させること、そして主として硫酸銀を含む粒子を沈殿させることを含んでなる、主として硫酸銀を含む粒子の沈殿のための水性沈殿方法であって、該反応及び沈殿が、水溶性の有機硫酸塩又は有機スルホン酸塩添加化合物の存在において実施され、添加化合物の量が、沈殿させられる硫酸銀のモル量に対して少ないモル百分率であり、且つ50マイクロメートル未満の平均粒子サイズを有する主として硫酸銀を含む粒子の沈殿を生じさせるのに効果的であることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性沈殿法によって製造される硫酸銀粒子、特に、フッ素化添加剤を使用して均一なサイズで製造されるミクロンサイズの硫酸銀粒子の製造、並びにプラスチック及びポリマー材料において、変色の低減を伴う、抗微生物剤及び抗ウイルス剤としての当該硫酸銀粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
硫酸銀には、合成試薬;触媒、プラスチック複合材料及び種々の白金錯体の製造における銀の供給源;並びにいくつかの写真プロセスにおける銀の供給源などの種々の用途がある。最近では、硫酸銀は、プラスチック及びフェイシャルクリーム中に、抗微生物剤及び抗菌剤として加えられている。多くの現代の用途の要求を満たすために、材料の粒子サイズをミクロン及びナノメートルサイズ範囲に低減することが、これらの物質形態に固有の、より大きい表面積、表面エネルギー、反応性、分散性及び均一性、並びにこれらから形成されたコーティングの均一性及び平滑性、光散乱の低減による光学的透明性などを利用するために、しばしば必要とされる。さらに、多くの物体及び装置の物理的大きさの小型化に伴い、材料成分の物理的大きさに対する同様の制限に、現在、一般的に遭遇する。
【0003】
硫酸銀は、従来の水性沈殿法により製造される商業的に入手可能な材料である。硫酸銀を形成するために硝酸銀及び硫酸の水溶液を等モル量で反応させることが、Th. W. Richards及びG. JonesによるZ. anorg. Allg. Chem. 55, 72 (1907)に記載されている。硫酸イオンの供給源として硫酸ナトリウムを使用する同様の沈殿法が、O. Honigschmid及びR. SachtlebenによるZ. anorg. Allg. Chem. 195, 207 (1931)に報告されている。硫酸溶液中への銀金属の浸漬を用いる別の方法も、O. Honigschmid及びR. Sachtlebenにより(上記引用文中に)報告されている。その後、アルコールの添加を介して水溶液から微粉砕硫酸銀を調製することが、H. Hahn及びE. GilbertによりZ. anorg. Allg. Chem. 258, 91 (1949)に報告された。銀塩は、熱的且つ光分解的に不安定であり、変色により褐色、灰色又は黒色の生成物を形成することが広く知られている。銀イオンは還元されることによりその金属状態になることがあり、又は酸化されることにより酸化銀になることがあり、又は硫黄と反応することにより硫化銀を形成することがある。硫酸銀は、光によって分解して紫色になることが観察されている。
【0004】
銀の抗微生物特性は、数千年間にわたって知られている。銀の一般的な薬理学的特性は、例えば、MacMillan Publishing Company(ニューヨーク)により1975年に発行されたLouis S. Goodman及びAlfred Gilman編, The Pharmacological Basis of Therapeutics(第5版, 第46章)中のStewart C. Harveyによる「Heavy Metals」、及びMacMillan Publishing Company(ニューヨーク)により1980年に発行されたLouis S. Goodman及びAlfred Gilman編, The Pharmacological Basis of Therapeutics(第6版, 第41章)中のStewart Harveyによる「Antiseptics and Disinfectants: Fungicides; Ectoparasiticides」に要約されている。現在では、銀イオンの、生物学的に重要な部分、例えばスルフヒドリル、アミノ、イミダゾール、カルボキシル及びリン酸基などに対する親和力がその抗微生物活性に主に関与すると、理解されている。
【0005】
タンパク質上のこれらの反応基のうちの1つとの銀イオンの結合は、タンパク質の沈殿及び変性をもたらす。反応の程度は、銀イオンの濃度に関係する。哺乳動物組織内への銀イオンの拡散は、タンパク質上の種々の生物学的に重要な部分を介してタンパク質に結合する固有の優先傾向、並びに環境内の塩化物イオンによる沈殿によって、自動調節される。こうして、数多くの生物学的に重要な化学的部分に対する銀イオンの極めて高い親和力(殺細菌/殺生物/殺ウイルス/殺菌/殺バクテリア剤としてのその作用に関与する親和力)は、その全身作用を制限することにも関与し、銀は身体によって容易には吸収されない。このことが、微生物、例えばバクテリア、酵母、菌類及び藻類並びにウイルスなどの成長を破壊又は阻害することができる作用物質としての銀含有化学種を使用することに多大な関心が持たれる主な理由である。タンパク質の変性及び沈殿をもたらす生物学的に重要な種に対する銀イオンの親和力に加えて、イオン化能力又は溶解能力が低いいくつかの銀化合物も、防腐剤としての機能を果たす。金属銀と接触した蒸留水は、銀イオンの溶解濃度が100ppb未満であるにもかかわらず、抗バクテリア性になる。この微量作用効果が明示される数多くの機構経路、すなわち銀イオンが、細胞レベルでバクテリアの基礎代謝活性を妨害して殺バクテリア効果及び/又は静バクテリア効果を提供する経路が存在する。
【0006】
銀の微量作用効果の詳細な概説は、Lea and Fibiger発行(1968)のC.A. Lawrence及びS.S. Bloek編, Disinfection, Sterilization and Preservation中のI.B. Romansによる「Oligodynamic Metals」に、また、Reinhold Publishing Corporation 発行(1940)のLawrence Addicks編, Silver in Industry中のA. Goetz, R.L. Tracy及びF.S. Harris, Jr.による「The Oligodynamic Effect of Silver」に見い出すことができる。これらの概説には、銀が広範囲のバクテリアに対する抗微生物剤として効果的であること、そして銀が多様な生化学的経路を通して細胞に影響を与えることができ、細胞が耐銀性を発生させるのを難しくすることを実証する結果を記載されている。しかし、抗微生物剤としての銀の効力は、銀供給源の化学的及び物理的同一性に決定的に依存することも知られている。銀供給源は、種々のサイズの金属粒子の形態を成す銀、やや難溶性の材料としての銀、例えば塩化銀など、中可溶性の塩としての銀、例えば硫酸銀など、高可溶性塩としての銀、例えば硝酸銀などであることが可能である。銀の効力は、また、i)活性種(それがAg+イオンであるか又は錯体種、例えば(AgSO4- などであるかにかかわらず)の分子同一性、及びii)活性銀種が生物と相互作用する生物のタイプに依存するメカニズムに依存する。メカニズムとしては、例えば、断裂を引き起こす細胞壁への吸着;銀種が原形質膜に入り込んで原形質膜に結合する原形質分離;吸着とそれに続く原形質の凝固;又はバクテリア細胞の原形質アルブミンの沈殿などが挙げられる。銀の抗バクテリア効力は、数ある因子の中でも、特に、活性種の性質及び濃度、バクテリアのタイプ;活性種との相互作用のために利用可能なバクテリアの表面積、バクテリア濃度、活性種を消費してその活性を低下させ得る種の濃度及び/又は表面積、並びに失活メカニズムによって決定される。
【0007】
硫酸銀は、多くの医療用途において抗微生物剤として提案されてきた。エンドプロテーゼ整形外科用インプラントの挿入後の術後感染のリスクを低減するために、骨セメント内に無機銀化合物を加えることが、J. A. Spadaro他により提案され、研究されている(Clinical Orthopaedics and Related Research, 143, 266-270, 1979)。塩化銀、酸化銀、硫酸銀及びリン酸銀が、0.5%の濃度でポリメチルメタクリレート骨セメント中に加えられ、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を有意に阻害することが示された。抗微生物創傷ドレッシングが米国特許第4,728,323号明細書に開示されており、この抗微生物創傷ドレッシングでは、基材に、銀塩、好ましくは塩化銀又は硫酸銀の抗微生物的に有効なフィルムが蒸気又はスパッタコートされる。抗微生物創傷ドレッシングは国際公開第2006/113052A2号に開示されており、この抗微生物創傷ドレッシングでは、硫酸銀水溶液を制御された条件下で基材上で乾燥させて初期カラー(initial color)とする。これは周囲光及び湿度条件下で好ましくは1週間色安定である。カテーテルのための抗微生物性の取付具(fitting)が米国特許第5,049,140号明細書に開示されており、これには、1〜15重量%の抗微生物剤、好ましくは硫酸銀が均一に分散されたシリコーン/ポリウレタンエラストマーから成る管状部材を製造する提案が記載されている。セルロースと尿素/ホルムアルデヒド樹脂とを含む成形可能なプラスチック複合材料が国際公開第2005/080488A1号パンフレットに開示されており、この複合材料には、SARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルスに対して抗ウイルス活性を有する表面を提供するために銀塩、特に硫酸銀が加えられている。
【0008】
銀を基剤とする抗微生物剤について急速に現れた1つの用途はプラスチック及び合成繊維に使用されるポリマーに含めるということである。対象とする繊維に抗微生物特性を付与する種々の方法が当業者に知られている。無機抗微生物剤、例えばゼオライトを、コンジュゲート繊維の低融点成分内に埋め込むアプローチが米国特許第4,525,410号及び第5,064,599号明細書に記載されている。別のアプローチでは、抗微生物剤は、米国特許第5,180,402号、第5,880,044号及び第5,888,526号明細書に記載されているもののように、合成繊維の製造プロセス中に供給することができ、あるいは、米国特許第6,479,144号及び第6,585,843号明細書に記載されている溶融押出プロセスを通じて供給することもできる。あるいは、樹脂フィルム又は対象となる繊維上に抗微生物性の金属又は金属含有化合物を堆積させることが米国特許第6,274,519号及び第6,436,420号明細書にも記載されている。
【0009】
具体的には、従来技術は、水溶性生成物を有する高溶解性銀塩(ここではpKspが1未満であるものをいう)にとって有用な配合物を開示している。一般的に、これらの銀塩は、抗微生物性挙動と耐久性との所望の組み合わせを提供するために、疎水性添加剤の使用を必要とする。逆に、pKspが15を上回る極めて難溶性の金属銀粒子は、抗微生物性挙動と耐久性との所望の組み合わせを提供するために、親水性添加剤を必要とする。プラスチック及びポリマー材料中に直接に組み込まれると、抗微生物性及び抗ウイルス性挙動において極めて効率的であることができる、pKspが3〜8の範囲内にあるやや難溶性の銀塩を用意する必要性がある。
【0010】
米国特許第7,261,867号には、沈殿硫酸銀の粒子サイズを制御する手段として有機サルフェート又は有機スルホネート添加剤の使用が記載されている。2007年3月30日に出願された米国特許出願第11/694,582号明細書には、沈殿硫酸銀の粒子サイズを制御する手段として、硫酸銀よりも溶解性の低い硫酸塩を形成することのできるカチオン又は硫酸銀よりも溶解性の低い銀塩を形成することのできるハロゲン化物アニオンもしくはオキシアニオンを含む無機添加剤化合物の使用が開示されている。しかしながら、硫酸銀材料に有機物性を有する添加剤をかなりの量含めることによって、熱安定性が低下し、変色をもたらすことが示された。
【0011】
銀に基づく薬剤(silver-based agents)は、優れた抗微生物特性を提供することがよく知られているが、変色による審美的問題がしばしば懸念される。これは、銀イオンの固有の熱及び光不安定性や、他の機構などの幾つかの原因によると考えられる。様々な銀塩が熱的及び光分解的に不安定であることが知られており、変色によって、褐色、灰色又は黒色の静止得物が形成される。銀イオンは、形式的にはその金属状態に還元されるであろうが、様々な物理的形態及び形状(粒子及びフィラメント)をとることで、しばしば褐色、灰色又は黒色に見える。可視光の波長程度の大きさを有する粒子を形成する銀の還元形態は、光散乱効果のために、ピンク、オレンジ、イエロー、ベージュであるように見えることもある。あるいは、銀イオンは、銀過酸化物(灰色乃至黒色の物質)に形式的に酸化されることがある。さらに、銀イオンは、たんに、周囲の薬剤(例えば粒子サイズ調節剤、ポリマー添加剤、触媒残留物、不純物、表面コーティングなど)と錯化して、形式的な酸化還元プロセスを経ずに着色化学種を形成することがある。銀イオンは、人間の皮膚中に存在するタンパク質上にある各種の基に結合して、銀沈着症として知られている潜在的に永久的な黒っぽい染み状態をもたらすことがある。銀イオンは、硫黄と反応して硫化銀を形成することがあり、アカンサイト(acanthite)とアルゲンタイト(argentite)の2種類の天然鉱物形態の場合には、黒色であることが知られている。純粋な硫酸銀(白色)は、紫色光への露光により分解することが観察された。
【0012】
いかなる所与の実際の状況においても、多くの機構又は原因が銀に基づく変色を生じることに作用するため、課題解決法を提供する取り組みを複雑にする。例えば、コロプラスト社は、米国特許第6,468,521号及び米国特許第6,726,791号明細書に記載されているように、抗微生物、抗ウイルス及び/又は抗菌活性を有する安定化された創傷ドレッシングであって、特定のアミンと錯化し、かつ、1又は2種以上の親水性ポリマーと会合した結果、放射線殺菌中に安定であり、貯蔵中の当該ドレッシングの暗色化又は変色を生じずに活性を保持することを特徴とする創傷ドレッシングの開発について開示した。CONTREET(登録商標)として登録されたドレッシング製品は、特にエチルアミン又はトリ−ヒドロキシメチル−アミノメタンと錯化した銀化合物を含む。これらの特定の銀化合物は、特定のポリマー、すなわちカルボキシメチルセルロース又は豚コラーゲンとともに使用された場合に、熱、光又は放射線殺菌に曝された場合に改善された耐変色性を有するとされており、皮膚又は組織と接触する。
【0013】
銀に基づく添加剤が関連する組成物の変色が現れる時点は製造プロセスの初期から管制した製品の有効寿命の後期に及びうる。例えば、熱不安定性は、銀に基づく添加剤を高温溶融加工ポリマーに導入した直後に生じるか、あるいは、材料又は完成した製品の低い(例えば周囲)温度での長期間貯蔵中のかなり後期に生じる(しばしば、長期間熱安定性と呼ばれる)。同様に、光不安定性は、高エネルギー放射線処理又は放射線殺菌への短期間暴露により生じるか、あるいは、材料又は完成した製品の周囲光への長期間露光の後に生じることがある(例えば紫外線(UV)安定化を必要とする)。さらに、ポリマー材料は、高温溶融処理中に、又は光、酸素及び熱の存在下でのエージングのために後で、もともとある程度変色することがよく知られている。熱可塑性ポリマー、例えばポリオレフィンなどは、典型的には、200〜280℃の温度で処理されるのに対し、ポリエステルは典型的には240〜320℃のより高い温度で処理される。
【0014】
銀に固有の色不安定性及びポリマー材料自体に固有の色不安定性に加えて、ポリマー複合材料中に組み込まれた銀イオンは、ポリマー分解生成物(例えば、フリーラジカル、過酸化物、ヒドロペルオキシド、アルコール、水素原子及び水)、調整剤(例えば、塩素系難燃剤)、安定剤及び残留添加剤(例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、チーグラー−ナッタ触媒に由来するトリアルキルアルミニウム化合物など)と反応して着色している可能性のある生成物を形成することがある。より具体的には、ポリマー複合材料中に組み込まれた銀イオンは、粒子サイズ調節剤及びそれから形成された分解生成物と反応することがある。このように、可能性のある化学的相互作用の複雑さは、プラスチック及びポリマー用の有効な銀に基づく抗微生物剤を設計する際に現在の労働者が直面するさらなる課題である。
【0015】
溶融加工ポリマー中に銀に基づく化合物を含めることによりもたらされる変色を低減するために、過去に様々な手法が図られた。Niiraらは米国特許第4,938,955号明細書において、銀含有ゼオライトと、ヒンダードアミン(CHIMASSORB(登録商標)944LD又はTINUVIN(登録商標)622LD)、ベンゾトリアゾール、又はヒンダードフェノール(特にオクタでシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(IRGANOX(登録商標)1076)として市販)から成る群から選ばれた1種の安定剤(変色抑制剤)とを含む溶融加工された抗微生物性樹脂組成物が開示している。空気中で日光に60日間暴露したことによる長期間変色の減少が報告されている唯一の応答である。
【0016】
Ohsumiらは米国特許第5,405,644号明細書において、2種類の繊維処理方法を開示しており、これらの方法では、処理溶液へのベンゾトリアゾール、好ましくはメチルベンゾトリアゾールに添加によって、銀含有4価金属リン酸塩抗微生物剤を含む繊維の変色を抑制する。より具体的には、エステル紡糸オイルへのベンゾトリアゾールの添加によって、処理された繊維の屋外太陽光への1日間の暴露後の変色は低減し、第2に、アルカリ性処理溶液へのベンゾトリアゾールの添加によって、処理直後に調べた場合の処理された繊維の変色は低減する。ベンゾトリアゾールは、銀イオンの溶解を妨げるか、あるいは繊維処理溶液中に存在する様々な化学物質との少量の可溶性銀イオンの反応を阻止するということが示唆されている。
【0017】
Leverは米国特許第6,187,456号明細書において、ステアリン酸ナトリウムをアルミニウムマグネシウムハイドロタルサイトに置き換えた場合の、銀に基づく抗微生物剤であるリン酸銀ジルコニウム又は銀ゼオライトを含有する溶融加工されたポリオレフィンの黄変の低減を開示している。Tomiokaは日本国特開平08-026921号公報において、特定量の亜硫酸及びチオ硫酸イオンを含む銀混合物を配合したポリプロピレンの場合に、当該抗微生物銀混合物をシリカゲル支持体上に含浸したときに、高温による変色を防止できることを開示している。キャリアーとしてワックス又は低分子量ポリマーに銀に基づく抗微生物剤を分散させ、次に、高分子量ポリマーにブレンドすることが、皮膚を変色せずに高濃度の銀に基づく抗微生物剤を取り扱う安全な手段として、日本国特開平03-271208号公報及び日本国特許第2841115号公報に開示されている。
【0018】
ある労働者は、所与の配合物における銀の総量を減らすために、銀に基づく抗微生物剤と他の抗微生物剤とをたんに組み合わせることによって、変色を低減することを報告している。Otaらは日本国特開平04-114038号公報において、硫酸銀と有機抗菌剤TBZ(2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール)とを併用して、射出成形ポリプロピレンの変色を低減することを開示している。Herbstは米国特許第6,585,989号明細書において、銀含有ゼオライトと有機抗微生物剤TRICLOSAN(登録商標)(2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル)とをポリエチレン及びポリプロピレン中で併用して、加速耐候試験においてUV安定化の向上(黄変しにくい)がもたらされることを開示している。Kimuraは、米国特許第7,014,723号明細書において、(A)銀含有ゼオライト、(B)銀イオン含有ホスフェート又は(C)可溶性銀イオン含有ガラス粉末からなる抗微生物の組み合わせを含むポリオレフィンの場合に、加速耐候試験における紫外線露光による変色が低減されるなどの、各抗微生物剤の幾つかの欠点が軽減されることを開示している。
【0019】
抗微生物マスターバッチ配合物が日本国特許第2841115号公報に開示されており、銀塩及び有機抗菌剤を低融点ワックスと組み合わせて、分散性及び取扱い安全性が改善されたマスターバッチを形成する。より具体的には、硫酸銀を、100メッシュスクリーン(149ミクロン未満の粒子サイズ)に通し、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾールと組み合わせ、ポリエチレンワックス中に混練する。このマスターバッチ材料をポリプロピレン中に配合し、その後、これを射出成形して薄い試験ブロックにする。これらの試験ブロックは、着色及び熱安定性について許容可能であるとともに、大腸菌(E. coli)及びブドウ球菌(Staphylococcus)に対して抗微生物特性を示し、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger,黒麹菌)に対して抗菌特性を示すことが報告されている。同様なマスターバッチが日本国特開平03-271208号公報にも記載されており、当該マスターバッチには、樹脂変色防止剤(例えば紫外線吸収剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤)も含まれている。
【0020】
フェノール系酸化防止剤、有機ジスルフィド酸化防止剤及び銀に基づく抗微生物剤(この特定の酸化防止安定化剤の組み合わせは望ましくない変色を防止するのに優れている)を配合した熱可塑性ポリマーを含むポリマー複合材料が、2007年1月31日に出願された米国特許出願第11/669,830号に開示されている。代わりに、銀に基づく抗微生物剤を配合した溶融加工ポリマーの熱又は光により誘発される変色を妨げるために臭化物又はヨウ化物イオンを使用することが、2007年3月30日に出願された米国特許出願第11/694,390号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第4,728,323号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/113052A2号
【特許文献3】米国特許第5,049,140号明細書
【特許文献4】国際公開第2005/080488A1号
【特許文献5】米国特許第4,525,410号明細書
【特許文献6】米国特許第5,064,599号明細書
【特許文献7】米国特許第5,180,402号明細書
【特許文献8】米国特許第5,880,044号明細書
【特許文献9】米国特許第5,888,526号明細書
【特許文献10】米国特許第6,479,144号明細書
【特許文献11】米国特許第6,585,843号明細書
【特許文献12】米国特許第6,274,519号明細書
【特許文献13】米国特許第6,436,420号明細書
【特許文献14】米国特許第7,261,867号明細書
【特許文献15】米国特許第6,468,521号明細書
【特許文献16】米国特許第6,726,791号明細書
【特許文献17】米国特許第4,938,955号明細書
【特許文献18】米国特許第5,405,644号明細書
【特許文献19】米国特許第6,187,456号明細書
【特許文献20】特開平08-026921号公報
【特許文献21】特開平03-271208号公報
【特許文献22】特許第2841115号公報
【特許文献23】特開平04-114038号公報
【特許文献24】米国特許第6,585,989号明細書
【特許文献25】米国特許第7,014,723号明細書
【特許文献26】特許第2841115号公報
【特許文献27】特開平03-271208号公報
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Th. W. Richards及びG. JonesによるZ. anorg. Allg. Chem. 55, 72 (1907)
【非特許文献2】O. Honigschmid及びR. SachtlebenによるZ. anorg. Allg. Chem. 195, 207 (1931)
【非特許文献3】H. Hahn及びE. GilbertによるZ. anorg. Allg. Chem. 258, 91 (1949)
【非特許文献4】MacMillan Publishing Company(ニューヨーク)により1975年に発行されたLouis S. Goodman及びAlfred Gilman編, The Pharmacological Basis of Therapeutics(第5版, 第46章)中のStewart C. Harveyによる「Heavy Metals」
【非特許文献5】MacMillan Publishing Company(ニューヨーク)により1980年に発行されたLouis S. Goodman及びAlfred Gilman編, The Pharmacological Basis of Therapeutics(第6版, 第41章)中のStewart Harveyによる「Antiseptics and Disinfectants: Fungicides; Ectoparasiticides」
【非特許文献6】Lea and Fibiger発行(1968)のC.A. Lawrence及びS.S. Bloek編, Disinfection, Sterilization and Preservation中のI.B. Romansによる「Oligodynamic Metals」
【非特許文献7】Reinhold Publishing Corporation 発行(1940)のLawrence Addicks編, Silver in Industry中のA. Goetz, R.L. Tracy及びF.S. Harris, Jr.による「The Oligodynamic Effect of Silver」
【非特許文献8】J. A. Spadaroによる Clinical Orthopaedics and Related Research, 143, 266-270, 1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
先に引用した様々な分野における抗微生物剤としての銀塩の提案されている使用についての様々な文献にも関わらず、従来技術における、特定の用途に対して望ましいであろう十分に小さい粒子サイズ及び最適な粒子サイズ分布を有する銀塩、特に硫酸銀を製造する方法についての記載は限られている。抗微生物効果の改善、コストの低減及び変色の低減を伴う、プラスチック及びポリマー含有材料で使用するための、粒子サイズが制御された、例えば銀塩、特に硫酸銀などの抗微生物剤を提供する必要性が存在する。このような目的で、総表面積、反応性及び分散性を増加させるために抗微生物剤の粒子サイズを小さくすることがしばしば望ましい。さらに、粒子サイズが小さく及び/又は粒子サイズ分布が狭い銀に基づく抗微生物剤を含有するプラスチック又はポリマー複合材料及び得られる製品の望ましくない変色の程度をかなり低減することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
一実施態様に従うと、本発明は、水溶性銀塩と、無機硫酸イオンの水溶性の供給源とを、攪拌式沈殿反応容器内で反応させること、及び一次硫酸銀を含む粒子を沈殿させることを含み、反応及び沈殿が水溶性のフッ素化添加剤の存在下で行われ、フッ素化添加剤の量が、沈殿した硫酸銀のモル量に対して少ないモル百分率であり、かつ、50マイクロメートル未満の平均粒子サイズを有する一次硫酸銀を含む粒子の沈殿をもたらすのに有効な量である方法に関する。
【0025】
本発明は、大規模な商業生産によく適合している水性沈殿法によって製造される、均一なモルフォロジー及びサイズを有するマイクロメートル粒子サイズの主に硫酸銀粒子の実質的に自由流動性粉末の簡便かつ迅速な製造方法を提供する。沈殿したミクロンサイズの粒子は、フッ素化添加剤によって過剰な凝集に対して安定化され、凝集の少ない水性分散体がもたらされ、硫酸銀のより容易に分散されるドライな又は実質的にドライな粉末をもたらす。本発明は、本発明において使用されるフッ素化添加剤の不在下で沈殿した材料から、硫酸銀の等しいサイズの粒子を得るのに必要であろう練磨(milling)、磨砕(grinding)及び篩い分けといういかなるさらなる及び潜在的に複雑な工程の必要性をなくす又は制限する。
本発明によって提供される材料は、プラスチック、ポリマー、樹脂などとの組み合わせで、本発明の材料の混合物及び複合材料に、改善された抗バクテリア特性、抗菌特性及び抗ウイルス特性と変色の低減をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の方法に従って、可溶性銀塩の水溶液と、無機硫酸イオンの供給源の水溶液とを、沈殿反応器内に、乱流混合条件下で、混ぜ合わせることができる。本発明がない場合には、かかる沈殿反応は、沈殿した一次結晶子のかなりのアグロメレーション(凝集)を通常もたらし、その結果、実際の沈殿粒子の粒子サイズが、幾つかの用途にとって望ましいであろうものよりもかなり大きくなることが判った。本発明に従って、有効量の特定のフッ素化添加剤の存在下で、反応器内で硫酸銀粒子の沈殿を行うことによって、当該フッ素化添加剤の不在下で得られるものよりも小さい粒子サイズを有する安定なマイクロメートルサイズ(例えば50マイクロメートル未満)の分散した一次硫酸銀粒子を得ることができる。
【0027】
本発明において使用される特定のフッ素化添加剤は、硫酸銀粒子のイオン性表面と相互作用することのできる極性基又はセグメントと、硫酸銀粒子のイオン性表面との相互作用がより少ないが当該粒子を分散させるのに有効であるより極性の低い基又はセグメントとを含み、さらに、少なくとも1つの炭素−フッ素結合を含む両親媒性物質を指す。本発明において使用されるフッ素化添加剤は、フッ素化添加剤は、1又は2個以上の炭素−フッ素結合を含むことができる。本発明において使用されるフッ素化添加剤は、炭素−フッ素結合の数が当該物質(分子又はポリマー)中で最大(飽和)であるペルフルオロ化部分を好ましくは含む。ペルフルオロ化部分は、内部セグメントとして位置していても、末端置換基として位置していてもよい。幾つかの一般的なペルフルオロ化置換基の例としては、ペルフルオロメチル(-CF3)、ペルフルオロエチル(-CF2CF3)、n-ペルフルオロヘキシル(-CF2CF2CF2CF2CF2CF3)、及びn-ペルフルオロオクチル(-CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF3)が挙げられる。ペルフルオロ化セグメント又は置換基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。本発明において使用されるフッ素化添加剤は、1又は2個以上のペルフルオロ化セグメント及び/又はペルフルオロ化置換基を含むことができる。フッ素化添加剤はモノマー又はポリマーであることができる。本発明において、2又は3種以上のフッ素化添加剤を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本発明において使用されるフッ素化添加剤は、当該物質の極性部分にアニオン性、カチオン性、両性イオン性(デュアル電荷)又は非イオン性として存在する電荷に従って幅広く分類することができる。本発明において使用されるアニオン性フッ素化添加剤の例としては、例の一部であるが、有機サルフェート、有機スルホネート、有機スルフィネート、有機ホスフェート、有機ホスホネート、有機ホスフィネート及びカルボキシレート、例えばカルボン酸のフッ素化誘導体が挙げられる。本発明において使用されるカチオン性フッ素化添加剤としては、例えば、フッ素化第4級アンモニウム塩、例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド、ポリエトキシ化タローアミン、ベンザルコニウムクロリド及びベンゼトニウムクロリドから誘導されたものなどが挙げられる。本発明において使用される両性イオン性フッ素化添加剤としては、例えば、有機アミンオキシドのフッ素化誘導体、例えばドデシルジメチルアミンオキシドから誘導されたものなど、フッ素化ベタイン、例えばドデシルベタイン、コカミドプロピルベタイン及びグリシンベタインから誘導されたものなど、並びにフッ素化グリシネート、例えばココアンホグリシネートから誘導されたものなどが挙げられる。本発明において使用される非イオン性フッ素化添加剤としては、例えば、ポリ(エチレンオキシド)のフッ素化誘導体、フッ素化ポリ(プロピレンオキシド)、アルキルポリ(エチレンオキシド)のフッ素化誘導体、フッ素化アルキルポリ(プロピレンオキシド)(オキセタンポリマーとしても知られている)、アルキルポリ(エチレンオキシド)のフッ素化ブロックコポリマー、アルキルポリ(プロピレンオキシド)、例えばそれらのポロキサマー(例えばBASFから入手可能なPLURONICS(登録商標))、及びポリオキサミン、フッ素化ポリエチレングリコール、例えばポリ(オキシ-1,2-エタンジイル),α-ヒドロ-ω-ヒドロキシ-,エーテルとα-フルオロ-ω-(2-ヒドロキシエチル)ポリ(ジフルオロメチレン)(1:1)(すなわち、Dupont ZONYL(登録商標)FS-300)など、フッ素化アルキルポリグルコシド、例えばオクチルグルコシド及びデシルマルトシドから誘導されたものなど、フッ素化脂肪アルコール、例えばセチルアルコール及びオレイルアルコールから誘導されたものなど、並びにフッ素化アミド、例えば、コカミドMEA、コカミドDEA及びコカミドTEAから誘導されたものなどが挙げられる。
【0029】
本発明において使用されるアニオン性フッ素化添加剤の塩形態は、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基又はカルボン酸基の酸性プロトンを、全部又は一部、他のカチオン、例えばアルカリ金属カチオン(例えばナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなど)、アルカリ土類金属イオン(例えばカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム及びバリウムなど)、アンモニウムイオンと置換アンモニウムイオン(例えばテトラアルキルアンモニウムイオン(例えばテトラエチルアンモニウムイオンなど)などのアルキルアンモニウムイオンなど)、又はこれらの混合物と交換することにより形成することができる。本発明において使用されるカチオン性フッ素化添加剤の塩形態としては、例えば、ハロゲン化物イオン、例えば臭化物イオン、塩化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオンなど;オキソアニオン、例えばヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン、ホウ酸イオン、臭素酸イオン、次亜臭素酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、重炭酸イオン、水酸化物イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、次塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、クロム酸イオン、二クロム酸イオン、ヨウ素酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン、過マンガン酸イオン、亜リン酸イオン、硫酸イオン、チオ硫酸イオン、硫酸水素イオン、重硫酸イオン、亜硫酸イオン、亜硫酸水素イオン、重亜硫酸イオンなど;有機酸に由来するアニオン、例えば酢酸イオン、ギ酸イオン、シュウ酸イオン、シュウ酸水素イオン、重シュウ酸イオンなど;他のアニオン、例えば、アミド、ヒ化物、アジド、シアン化物、シアン酸、チオシアン酸、水素化物、窒化物、酸化物、リン化物、硫化物、過酸化物、硫化水素、二硫化物及びテルル化物など;又はこれらの混合物を含むことができる。フッ素化添加剤は、少なくとも1g/Lの水溶解度を有することが好ましい。
【0030】
本発明において使用される好ましいアニオン性フッ素化添加剤としては、有機スルホン酸及びその塩の部分的にペルフルオロ化された誘導体が挙げられる。本発明において使用される好ましいカチオン性フッ素化添加剤としては、有機第4級アンモニウム塩の部分的にペルフルオロ化された誘導体が挙げられる。本発明において使用される好ましい高分子アニオン性フッ素化添加剤としてはペルフルオロアルキル置換オキセタンポリマーが挙げられる。
【0031】
フッ素化添加剤は、50ミクロン未満の平均粒子サイズを有する安定な一次硫酸銀粒子を得るのに有効な、銀のモル量に対して副次成分(すなわち、50モル%未満)として、沈殿反応器に加えられる。実施例に示されているように、必要な添加剤の有効量は、使用される個々のフッ素化添加剤に依存しうるが、概して、反応した銀のモル量を基準としてモノマーフッ素化添加剤の場合に典型的には少なくとも0.5モル%である。けれども、最適化された沈殿反応条件に応じてより低い濃度が有効なこともある。本発明において使用されるフッ素化添加剤の最低又は最適な有効量の決定は、当業者の能力の範囲内である。添加剤を銀の量に対して少ないモル量に制限することによって、一次硫酸銀を含む得られた沈殿粒子において、添加剤の有機物性に関連する負の特性を制御することができるとともに、少量の添加剤が、所望の沈殿粒子サイズを達成するのに有効なままにすることができる。本発明の好ましい態様において、添加剤は、銀のモル量を基準として、10%未満のモル量で有効であるもの、より好ましくは5%未満、非常に好ましくは1%未満のモル量で有効であるものが選ばれる。本発明の様々な態様において、反応器に可溶性銀塩の水溶液を加える前、間及び/又は後に、フッ素化添加剤が反応器に加えられる。可溶性銀塩の水溶液を加える前に、フッ素化添加剤の少なくとも幾らかを反応器に加えることが好ましい。
【0032】
本発明の方法において使用することができる可溶性銀塩としては、硝酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀、塩素酸銀、過塩素酸銀、フッ化銀、乳酸銀などが挙げられる。無機硫酸イオン源としては、硫酸、硫酸アンモニウム、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム)の硫酸塩、及びアルカリ土類金属(例えばマグネシウム)の硫酸塩、遷移金属(例えば亜鉛、カドミウム、ジルコニウム、イットリウム、銅、ニッケル、鉄など)の硫酸塩などが挙げられる。本発明の好ましい実施態様において、使用される可溶性銀塩は硝酸銀であり、また無機硫酸イオン源は、硫酸アンモニウム又は硫酸である。
【0033】
本発明の方法に従って沈殿反応器で使用される乱流混合条件は、コンベンショナルな攪拌器及びインペラーによって得ることができる。本発明の具体的な態様の場合、反応物質は好ましくは、沈殿反応器の高攪拌ゾーン内で接触させられる。このような態様に従って使用することができる好ましい混合装置としては、同時に導入された銀とハロゲン化物との塩溶液フィード流を反応させることにより、ハロゲン化銀粒子を沈殿させるために、写真用ハロゲン化銀乳剤分野で使用するために以前に開示されたタイプの回転攪拌機が挙げられる。このような回転攪拌機としては、例えばタービン、船舶用プロペラ、ディスク、及び当業者に知られた他の混合用インペラー(例えば米国特許第3,415,650号;米国特許第6,513,965号;米国特許第6,422,736号;米国特許第5,690,428号;米国特許第5,334,359号;米国特許第4,289,733号;米国特許第5,096,690号;米国特許第4,666,669号明細書;欧州特許第1156875号明細書、国際公開第0160511号参照)が挙げられる。
【0034】
本発明の好ましい態様において使用することができる回転攪拌機の具体的な形態は大きく変えることができるが、これらは好ましくは、所定の表面及び所定の直径を有する少なくとも1つのインペラーをそれぞれ使用する。インペラーは攪拌機の近くに高攪拌ゾーンを形成する上で効果的である。「高攪拌ゾーン」という用語は、混合のために供給された出力のかなりの部分が材料流によって散逸させられる攪拌機近傍のゾーンを表す。典型的には、このゾーンは、回転インペラー表面から1インペラー直径分の距離内に含まれる。反応物質フィード流が回転攪拌機の作用によって形成された比較的高度に攪拌されるゾーン内に導入されるように、反応物質フィード流を回転混合器の近傍で沈殿反応器内に導入することは、フィード流成分を実際に有用な程度まで、メソ−、ミクロ−及びマクロ混合することを可能にする。使用される特定の材料と関連する処理流体特性、及び転移又は変換プロセスの動的時間スケールに応じて、好ましく使用される回転攪拌機は、種々の実際に有用な程度まで行われるメソ−、ミクロ−及びマクロ混合を最適化するように選択することができる。
【0035】
本発明の具体的な一実施態様において使用できる混合装置としては、リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure), Vol. 382, 1996年2月, Item 38213に開示されたタイプの混合装置が挙げられる。このような装置には、混合装置の隣接入口ゾーン(混合器インペラーの表面からの距離が1インペラー直径未満である)に近接して終わっている導管によって、遠隔位置にある源からフィード流を導入するための手段が設けられている。複数のフィード流の混合を容易にするために、これらは混合装置の入口ゾーンの近くで、対向方向で導入することができる。混合装置は、反応容器内に鉛直方向に配置され、そして好適な手段、例えばモーターによって高速で駆動される軸の端部に取り付けられている。回転混合装置の下端部は、反応容器の底部から所定の間隔を置いて上側に、しかし容器内部に含有された流体の表面よりも下方に位置している。容器の内容物の水平方向の回転を阻害するのに十分な数のバッフルが、混合装置の周りに配置されていてよい。このような混合装置は、米国特許第5,549,879号明細書及び第6,048,683号明細書にも概略的に示されている。
【0036】
本発明の別の実施態様において使用できる混合装置は、米国特許第6,422,736号明細書に記載されているもののように、フィード流分散(ミクロ混合及びメソ混合)と、沈殿反応器内のバルク循環(マクロ混合)とを別個に制御するのを容易にする混合器を含む。このような装置は、鉛直方向に配向されたドラフト管と、ドラフト管内に配置された下側インペラーと、ドラフト管内に第1インペラーの上方で、第1インペラーから個々の動作に十分な距離を置いて配置された上側インペラーとを含んでなる。下側インペラーは、好ましくは、フラットブレードタービン(FBT)であり、ドラフト管の底部で加えられたフィード流を効率的に分散するために使用される。上側インペラーは好ましくは傾斜ブレードタービン(PBT)であり、バルク流体を、ドラフト管を通して上方に向かって循環させ、反応ゾーン全体にわたる狭い循環時間分布を提供するために使用される。適切なバッフルを使用できる。これら2つのインペラーは所定の間隔を置いて配置されるので、独立した動作が達成される。この独立した動作及びそのジオメトリの単純さは、この混合器を、沈殿法のスケールアップに、よく適したものにする特徴である。このような装置は、強力なミクロ混合を提供し、すなわち、フィード流導入領域内の極めて高い出力散逸を可能にする。
【0037】
本発明に従う水性沈殿法で超微細硫酸銀粒子が形成されたら、得られた超微細粒子を洗浄し、乾燥させ、白色の自由流動性粉末として捕集することができる。粒子サイズ測定基準に関して、沈殿法は好ましくは、狭い粒子サイズ分布と共に、小さな一次結晶子サイズと、小さな粒子サイズとの両方を生じる。
【0038】
硫酸銀粒子のモルホロジー及び計測を論じる上で、いくつかの基本的な、そして広く使用されている用語の定義を明確に理解することが重要である。一次結晶子サイズとは、X線粉末回折(XRPD)によって一般に決定されるサイズを意味する。より広いXRPD線幅はより小さな一次結晶子サイズを暗示する。定量的には、結晶子サイズ(t)は、測定されたX線ピークの半値幅(B(ラジアン))、X線の波長(λ)及び回折角(θ)から、シェラー(Scherrer)の等式:
t=0.9λ/(Bcosθ)
を用いて計算される。B. D. Cullity,「Elements of X-Ray Diffraction」(1956) Addison-Wesley Publishing Company, Inc., 第9章を参照されたい。
【0039】
構造の観点から、結晶子は、典型的には、多くの単位格子から成っており、1つの単位格子は、結晶構造の最既約表現である。一次結晶子サイズは、最終粒子サイズと混同するべきではない。最終粒子サイズは、どれほど多くの結晶子が凝塊形成するかによって決定される。典型的には、サイズ頻度分布などの粒子サイズ測定は、例えばHORIBA Instruments Inc.(米国カリフォルニア州アービン)から入手可能なLA-920分析装置によって提供される光散乱測定から決定できる。小さな一次結晶子サイズを有することが小さな最終粒子サイズを保証するものではないという区別をなすことが重要である。この最終粒子サイズは、XRPDスペクトルから別に測定しなければならない。しかしながら、大きい一次結晶子サイズは、小さな最終粒子サイズを排除することになる。このように、粒子分散体を十分に特徴づけるために、最終粒子サイズ(例えばHORIBA)、例えば標準偏差(例えばHORIBA)において具体化されたサイズ頻度分布、及び一次結晶子サイズ(XRPD)に関する知識を必要とする。
【0040】
好ましい実施態様において、本発明に従って得られた硫酸銀粒子を、溶融加工ポリマー(例えば熱可塑性及び熱硬化性)と組み合わせて複合材料を形成することができる。ここで、複合材料とは、熱処理後にポリマー中に分散されている硫酸銀として定義される。複合材料を製造するのに適した好ましい熱可塑性ポリマーは、良好な熱安定性、及び所定の範囲のメルトインデックス、好ましくは0.3〜99のメルトインデックスを有するポリマー化合物である。複合材料中の硫酸銀と熱可塑性ポリマーとの質量比は、用途に応じて幅広く変えることができる。しかしながら、比は≧0.01:99.99であることが好ましく、より好ましくは≧1:99であり、そして最も好ましくは≧5:95である。
【0041】
ポリマー中に、任意選択の添加剤と共に硫酸銀の複合材料をするための好ましい方法は、任意の好適な混合装置、例えば一軸スクリュー配合機、ブレンダー、パドル配合機、例えばブラベンダー(Brabender)、スパチュラ、プレス、押出機、又は成形機、例えば射出成形機などを使用して、熱可塑性ポリマーと溶融ブレンドすることである。しかし、適切な混合及びより均一な分散が確保されるように、適切なバッチミキサー、連続ミキサー二軸配合機、例えばPolyLab又はLeistrizを使用することが好ましい。二軸押出機は、ビルディングブロック原理に基づいて形成される。そのため、硫酸銀の混合、温度、1分間当たりの混合回転数(rpm)、樹脂の滞留時間、並びに硫酸銀の添加点は、スクリューの設計、バレルの設計、及び処理パラメータを変化させることにより容易に変化させることができる。Werner and Pfleiderrer、及びBerstorffなどのような他の二軸配合機製造業者によっても、類似の機械が提供されている。これらの配合機は、同方向回転又は対向方向回転モードで動作することができる。
【0042】
本発明に係る複合材料の1つの製造方法は、ガラス、金属、又はその他の好適な容器内でポリマーを溶融し、続いて本発明の硫酸銀塩を添加することである。硫酸銀がポリマー中に均一に分散されるまで、ポリマーと硫酸銀とをスパチュラを使用して混合する。複合材料の別の製造方法は、小さな配合機、例えばブラベンダー配合機内でポリマーを溶融させ、次に、本発明の硫酸銀塩を添加することである。ポリマーと硫酸銀とを、硫酸銀がポリマー中に均一に分散されるまで、配合機を使用して混合される。あるいは、本発明の硫酸銀をポリマー中に予め分散させ、次に、その混合物を混合装置に添加することができる。さらに、例えば二軸配合機の場合のような別の方法では、この配合機は主フィーダを備えており、これらの主フィーダを通って樹脂がフィードされるのに対して、硫酸銀は、主フィーダのうちの1つを使用して、又はサイドスタッファを使用してフィードされてもよい。サイドスタッファが硫酸銀をフィードするために使用される場合には、スクリューの設計を適宜構成する必要がある。硫酸銀材料を熱可塑性ポリマーに添加する好ましい様式は、サイドスタッファの使用を介して(ただし上側フィーダを使用することもできる)、適切な粘性混合を確保すること、及びポリマーマトリックス全体にわたる硫酸銀の分散を確保すること、並びに熱履歴を制御することである。この様式では、熱可塑性ポリマーは、主樹脂フィーダを使用して供給され、続いて、下流側のサイドスタッファを通して硫酸銀が添加される。あるいは、ポリマーと硫酸銀とを、主フィーダを使用して同じ場所でフィードすることもできる。さらに別の態様の場合、硫酸銀をマスターバッチで熱可塑性ポリマー中に予め分散させ、次いで、さらに配合機内で希釈することもできる。以前と同様に、マスターバッチと熱可塑性ポリマーとを、具体的な目的に応じて、主樹脂フィーダ及び/又はサイド又はトップフィーダを通してフィードすることができる。配合後に得られる複合材料を、その後の使用のために、ペレット、顆粒、ストランド、リボン、繊維、粉末、フィルム、プラークなどにさらに加工することが好ましい。
【0043】
本発明に好適なポリマーとしては、60〜500℃で溶融加工可能なものが挙げられる。かかるポリマー材料の非限定的な例として下記のものが挙げられる。
【0044】
1.モノオレフィン類及びジオレフィン類のポリマー、例えば、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ-ブト-1-エン、ポリ-4-メチルペント-1-エン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリイソプレン又はポリブタジエン、及びシクロオレフィン類、例えばシクロペンテン又はノルボルネンのポリマー、ポリエチレン(必要に応じて架橋されていてもよい、PEXとして知られている)、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、高密度高分子量ポリエチレン(HDPE-HMW)、高密度超高分子量ポリエチレン(HDPE-UHMW)、中密度ポリエチレン(PDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、(VLDPE)及び(ULDPE)。
【0045】
2.上記ポリマーの混合物、例えば、ポリプロピレンとポリイソブチレンの混合物、ポリプロピレンとポリエチレンの混合物(例えばPP/HDPE、PP/LDPE)、及び異なるタイプのポリエチレンの混合物(例えばLDPE/HDPE)。
【0046】
3.モノオレフィン類とジオレフィン類とのコポリマー又はモノオレフィン類と他のビニルモノマーとのコポリマー及びジオレフィン類と他のビニルモノマーとのコポリマー、例えばエチレン/プロピレンコポリマー、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)とのそれらの混合物、プロピレン/ブト-1-エンコポリマー、プロピレン/イソブチレンコポリマー、エチレン/ブト-1-エンコポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマー、エチレン/メチルペンテンコポリマー、エチレン/ヘプテンコポリマー、エチレン/オクテンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキサンコポリマー、エチレン/シクロオレフィンコポリマー(例えばエチレン/ノルボルネン類COC)、1-オレフィンが現場で生成されたものであるエチレン/1-オレフィンコポリマー、プロピレン/ブタジエンコポリマー、イソブチレン/イソプレンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキセンコポリマー、エチレン/アルキルアクレートコポリマー、エチレン/アルキルメタクリレートコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマーもしくはエチレン/アクリル酸コポリマー及びそれらの塩(アイオノマー)並びにエチレンとプロピレン及びジエン、例えばヘキサジエン、ジシクロペンタジエンもしくはエチリデン−ノルボルネンなどとのターポリマー;並びにかかるコポリマー同士の混合物及びかかるコポリマーと上記1)に記載したポリマーとの混合物、例えばポリプロピレン/エチレン−プロピレンコポリマー、LDPE/エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、LDPE/エチレン−アクリル酸コポリマー(EAA)、LLDPE/EVA、LLDPE/EAA及び交互もしくはランダムポリアルキレン/一酸化炭素コポリマー及びそれらの他のポリマー、例えばポリアミドとの混合物など。
【0047】
4.熱可塑性樹脂で使用されるビニルポリマー及びコポリマー、例えばポリ塩化ビニル及びその誘導体;ポリスチレン及びその誘導体;ポリアクリル酸;ポリアクリレート;ポリシアノアクリレート;ポリ(アルキルアクリレート)、例えばポリ(メチルアクリレート)及びポリ(エチルアクリレート);ポリメタクリル酸(PMAA);ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA);ポリアクリルアミド;ポリアクリロニトリル;ポリイソブチレン;ポリブテン;ポリジシクロペンタジエン;ポリテトラフルオロエチレン(TEFLON(登録商標));ポリトリクロロフルオロエチレン;ポリクロロトリフルオロエチレン;ポリ酢酸ビニル;ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルブチラール)(BUTVAR(登録商標));ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリ(ビニルクロライド−アセテート);ポリ(ビニルエーテル);ポリ(塩化ビニリデン);ポリ(フッ化ビニリデン);ポリ(フッ化ビニル);ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(ビニルピロリジノン);アリル樹脂(架橋ジアリル及びトリアリルエステル)など。
【0048】
5.ポリエステル類、例えば、市販の線状ポリエステル類、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PIT)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレンナフタレン-2,6-ジカルボキシレート)(PEN)、ポリ(4-ヒドロキシベンゾエート)、ポリ(ビスフェノールAテレフタレート/イソフタレート)、ポリ(1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキシルテレフタレート)、ポリカーボネート(例えばビスフェノールAポリカーボネート)、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸;ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(PHA)と総称されている微生物産生ポリエステル類、例えばポリ(3-ヒドロキシブチレート)(PHB)、フェニル置換PHA及び不飽和PHA;及び合成ランダムコポリマーであるポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV);超分岐ポリエステル;例えばi)エステル化反応中に架橋させるために多官能性のアルコール及び酸、例えばグリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、クエン酸、トリメリト酸、又はピロメリト酸二無水物などを使用する飽和ポリエステル樹脂(典型的には、オイル変性アルキド及びスチレン化アルキドを製造するために使用される)、及びii)別の付加重合反応工程で架橋させるためにポリエステル主鎖中に組み込まれた二重結合を利用する不飽和ポリエステル樹脂などの、アルキド又はポリエステル樹脂と通常呼ばれている架橋又は網目構造ポリエステル樹脂など。
【0049】
6.ポリアミド類及びポリペプチド類、例えば、市販の汎用ナイロン、例えばナイロン6(ポリカプロラクタム);ナイロン6,6[ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)];ナイロン6とナイロン6,6のブレンドなど;市販の特殊ナイロン、例えば、ナイロン7[ポリ(7-ヘプタンアミド)]、ナイロン8[ポリカプリルラクタム]、ナイロン9[ポリ(9-ノナンアミド)]、ナイロン11[ポリ(11-ウンデカンアミド)]、ナイロン12[ポリラウリルラクタム]、ナイロン4,6[(テトラメチレンアジパミド)]、ナイロン6,9[ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)]、ナイロン6,10[ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)]、ナイロン6,12[ポリ(ヘキサメチレンドデカンジアミド)];市販のポリマーであるポリ(メチレン-4,4'-ジシクロへキシレンドデカンジアミド)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンスベラミド)、ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)(DuPont NOMEX(登録商標))、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)(DuPont KEVLAR(登録商標))、ポリ(2,4,4-トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(2,2,4-トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド);他のナイロン、例えばナイロン1及びその誘導体、ナイロン3(ポリ-β-アラニン)、ナイロン4、ナイロン5など;分岐ナイロン;全芳香族ポリアミド;脂肪族−芳香族ポリアミド;ポリウレア;ポリウレタン繊維、例えばエラストマーABブロックコポリマー(DuPontのスパンデックス(Spandex)技術)の「ハード」セグメントで使用されるもの、自動車部品(例えばバンパー)を製造するために反応射出成形(RIM)で使用されるもの、及び硬質フォーム及び軟質フォームで使用されるもの(例えばW. R. Grace & Co.(米国)から入手可能なHYPOL(登録商標)など);ポリヒドラジド;ポリイミド、例えばポリ(4,4'-オキシジフェニレン-ピロメリトイミド)(DuPont KAPTON(登録商標))など;ポリアスパルトイミド;ポリイミドスルホン;ポリスルホンアミド;ポリホスホンアミド;並びに羊毛、絹、コラーゲン、遺伝子組換えヒトコラーゲン、ゼラチン、タンパク質及び再生タンパク質など。
【0050】
7.エンジニアリングプラスチックで使用される他のポリマー、例えば、ポリエーテル、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(エチレングリコール)、ポリテトラヒドロフラン、又は、例えばエラストマーABブロック共重合体(DuPontのスパンデックス技術)の「ソフト」セグメントで使用される他のポリエーテル、ポリオキシメチレン(アセタール)、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)、ポリ[3,3-(ジクロロメチル)トリメチレンオキシド]、ポリテトラヒドロフラン、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルイミド(PEI);ポリエーテルスルホン(PES)、例えばICIから入手可能なVICTREX(登録商標);ポリスルホン(PSU)、例えば3Mから入手可能なASTREL(登録商標);ポリスーパースルホン(PSS);ポリベンゾイミダゾール(PBI);ポリスルフィド、例えばポリ(p-フェニレンスルフィド)(PPS)及びポリ(アルキレンポリスルフィド)(チオコールゴムとして知られている);並びに熱可塑性エラストマー、例えばポリエーテルブロックアミド(PEBAX(登録商標))など。
【0051】
8.熱硬化性プラスチック、積層体及び接着剤において使用されるポリマー、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド(しばしばフェノール樹脂と呼ばれる)、化学的に変性されたフェノール樹脂(必要に応じて、フルフラール、5-ヒドロキシメチルフルフラール、アクロレイン、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、レゾルシノール、ビスフェノールA、o-又はp-クレゾールをo-又はp-クロロフェノール、p-t-ブチルフェノール、p-フェニルフェノール、p-n-オクチルフェノール)、カシューナッツ殻液から誘導された不飽和フェノール類(例えばカルダノールなど)、桐油に由来する不飽和フェノール類(例えばα-エレオステアリン酸など)、2-アリルフェノール、天然に産出するフェノール類、例えば加水分解性タンニン類(ピロガロール、エラグ酸、グルコースエステル又は没食子酸の縮合形)、縮合タンニン類(炭水化物と連結したフラボノイド単位)及びリグニン;リン酸エステル化フェノール樹脂;フラン樹脂;ビスフェノールA−フルフラール樹脂;不飽和ポリエステル;ポリエーテルエポキシ樹脂;アミノ樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド及びメラミン−ホルムアルデヒド(FORMICA(登録商標)及びBASOFIL(登録商標))など;レゾール類;ノボラック類;架橋ノボラック類(例えばKYNOL(登録商標));エポキシクレゾールノボラック類;並びにエポキシフェノールノボラック類など。
【0052】
9.合成エラストマーにおいて使用されるポリマー及びコポリマー、例えば、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン);ポリ(スチレン−ブタジエン)(SBR)、ポリ(スチレン−ブタジエン)ブロック及び星形共重合体;ポリ(スチレン−アクリロニトリル)(SAN)、ポリ(スチレン−無水マレイン酸)(SMA)、ポリ(スチレン−メチルメタクリレート);ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)(ABS);ポリ(アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン);ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−アクリレート);ポリブタジエン、特にcis-1,4-ポリマー;エチレン−プロピレン−ジエン−モノマー(EPDM製);ネオプレンゴム、例えばcis又はtrans-1,4-ポリクロロプレン及び1,2-ポリクロロプレン;cis又はtrans-1,4-ポリイソプレン;ポリ(イソブチレン−イソプレン);ポリ(イソブチレン−シクロペンタジエン);ポリ(1-オクテニレン)(ポリオクテネマー);ポリ(1,3-シクロ-ペンテニレンビニレン)(ノルボルネンポリマー)など。
【0053】
10.他の天然ポリマー、例えば、天然ゴム、例えばヘベア(cis-1,4-ポリイソプレン)、グアユール(cis-1,4-ポリイソプレン)、グタペルカ(trans-1,4-ポリイソプレン)、バラタ(trans-1,4-ポリイソプレン)とチクル(cis及びtrans-1,4-ポリイソプレン);リグニン;腐植土;セラック;琥珀;トール油由来ポリマー(ロジン);アスファルテン(ビチューメン);多糖類、例えば種子毛繊維(綿、カポック、コイア)、靱皮繊維(亜麻、麻、ジュート、ラミー)及び葉繊維(マニラ麻、サイザル麻)に由来する天然繊維など;再生セルロース、例えばビスコースレーヨン及びセロファンなど;セルロースの硝酸エステル(例えばCELLULOID)、酢酸エステル(その繊維はセルロースレーヨンとして知られている)、プロピオン酸エステル、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル及び酪酸エステルなどのセルロースの誘導体;セルロースの酢酸プロピオン酸エステル及びセルロースの酢酸酪酸エステル、及びそれらの混合物;セルロースのメチルエーテル誘導体、セルロースのエチルエーテル誘導体、セルロースのカルボキシメチルエーテル誘導体、セルロースのアミノエチルエーテル誘導体、セルロースのメルカプトエチルエーテル誘導体、セルロースのヒドロキシエチルエーテル誘導体、セルロースのヒドロキシプロピルエーテル誘導体及びセルロースのベンジルエーテル誘導体(例えば「熱可塑性スターチ」);ニトロセルロース;セルロースのビニル及び非ビニルグラフトコポリマー(例えばETHYLOSE(登録商標));架橋セルロース;ヘミセルロース(アモルファス)、例えばキシラン、マンナン、アラバン及びガラクタン;アミラーゼとアミロペクチンを含むスターチ;スターチ誘導体、例えばアリルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ、スターチニトレート、スターチアセテート、スターチのビニルグラフトコポリマー、例えばスチレン化スターチ;例えばエピクロロヒドリンを使用して製造された架橋スターチ;キチン;キトサン;アルギン酸ポリマー;カラギーナン;寒天;グリコーゲン;デキストラン;イヌリン;並びに天然ガム、アラビアゴム、トラガカントガム、グアーガム、キサンタンガム、ジェランガムとイナゴ豆ガムなど。
【0054】
11.複素環式ポリマー、例えば、ポリピロール、ポリピラゾール、ポリフラン、ポリチオフェン、ポリシアヌレート、ポリフタロシアニン、ポリベンゾキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリイミダゾピロロン、ポリ(1,3,4-オキサヂアゾール)(POD)、ポリ(1,2,4-トリアゾール)、ポリ(1,3,4-チアジアゾール)、ポリヒダントイン、ポリ(1,3-イミダゾリジン-2,4,5-トリオン)としても知られているポリ(パラバン酸)、ポリチアゾリン、ポリイミジン、ポリベンゾオキサジノン、ポリベンゾオキサジンジオン、ポリイソインドロキナゾリンジオン、ポリテトラアゾピレン、ポリキノリン、ポリアントラゾリン、ポリ(as-トリアジン)など。
【0055】
12.他の有機ポリマー、例えば、ポリアミン、例えばポリアニリン、マンニッヒ塩基ポリマー;ポリアジリジン;ポリカルボジイミド;ポリイミン(アゾメチン又はシッフ塩基ポリマーとも呼ばれている);ポリアミジン;ポリイソシアニド;アゾポリマー;ポリアセチレン;ポリ(p-フェニレン);ポリ(o-キシリレン);ポリ(m-キシリレン);ポリ(p-キシリレン)及び塩素ポリ(p-キシリレン)(Union Carbide PARYLENE(登録商標));ポリケトン;フリーデル−クラフツポリマー;ディールス−アルダーポリマー;脂肪族及び芳香族ポリ酸無水物;イオネン;イオネン−ポリエーテル−イオネンABAブロックコポリマー;ハラトポリマー;及び合成生体吸収性ポリマーは、例えばポリエステル/ポリアクトン、例えばポリグリコール酸のポリマー、グリコリド、酪酸、ラクチド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、ポリ酸無水物、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、並びにこれら及び関連するポリマーのコポリマーなど。
【0056】
13.無機ポリマー、例えばポリシロキサン、ポリシラン、ポリホスファジン、カルボランポリマー、ポリカルボランシロキサン(DEXSIL(登録商標)及びUCARSIL(登録商標))、ポリ(窒化硫黄)、高分子硫黄、高分子セレン、高分子テルル、窒化ホウ素繊維、フェロセン及びルテノセンのポリ(ビニルメタロセン)、メタロセンを含有するポリエステル及びポリアミド、ポリ(フェロセニルシラン);ポリ(フェロセニルエチレン);マンガン、パラジウム又は錫を含有する有機金属ビニルポリマー、及び前者とポリ(メチルメタクリレート)とのコポリマー(これらは船体及び海上掘削プラットホームなどの海洋用途用の殺生物ペイントとして使用される);金属含有ポリエステル及びポリアミド;ポリマーニッケル(0)−シクロオクタテトラエン、ポリマーノルボルナジエン−硝酸銀;アリールエチニル銅ポリマー;配位ポリマー、例えばビス(1,2-ジオキシム)と酢酸ニッケルとの反応から得られるポリマー、フタロシアニン型ポリマー、イミド又はベンゾイミダゾール基を通じて連結した網目構造遷移金属ポリフタロシアニン、共平面的に連結したポリフタロシアニン、ビス(β-ジケトン)とアセチルアセトン酸金属塩又はチタン酸テトラブチルとの反応から得られる配位子交換ポリマー、ビス(8-ヒドロキシ-5-キノリル)誘導体及びそのチオール類似体とアセチルアセトン酸金属塩との反応から得られるポリマー;ポリマーキレート、例えば二酸塩化物とチオピコリンアミドとの反応から得られるポリアミド、並びにペンダントクラウンエーテルを含むビニルポリマー、例えばポリ(4'-ビニルベンゾ-18-クラウン-6)など。
【0057】
ホモポリマー、コポリマー及び上記ポリマーのブレンドを使用することができ、シンジオタクチック、アイソタクチック、ヘミ−アイソタクチック又はアタクチックを包含する任意の立体構造を有することができる。ステレオブロックポリマーも包含される。ポリマーは、アモルファス、結晶性、半結晶性又はこれらの混合物であることができ、ある範囲のメルトインデックス、好ましくは0.05〜1400のメルトインデックスを有する。ポリマーは、ある範囲の固有粘度、好ましくは0.05〜99の固有粘度を有することができる。上記ポリマーは、他の特徴(例えば、物理的/化学的、末端基変換、生分解性及び光分解性)を付与するため、又は後続の架橋、ブロックグラフト共重合のための準備として、さらに誘導体化又は官能化(例えば、塩素化、臭素化、フッ素化、スルホン化、クロロスルホン化、鹸化、ヒドロホウ素化、エポキシ化)してもよい。
【0058】
先の段落で例示したポリオレフィン、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンは、種々の方法、特に下記の方法により調製できる:a)ラジカル重合(通常、高圧及び高温下);b)周期表の第IVb、Vb、VIb又はVIII族のうちの1種又は2種以上の金属を通常含む触媒を使用する触媒重合。これらの金属は、通常、1又は2個以上の配位子、典型的には、π-又はσ-配位した、酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、エステル、エーテル、アミン、アルキル、アルケニル、及び/又はアリールを有する。これらの金属錯体は、自由形態、又は基材上、典型的には活性化塩化マグネシウム、塩化チタン(III)、アルミナ又は酸化ケイ素上に固定することができる。これらの触媒は、重合媒体に可溶性又は不溶性であることができる。触媒は、それら自体で重合に使用でき、あるいは、さらに活性化剤、典型的には金属アルキル、金属水素化物、金属ハロゲン化アルキル、金属アルキルオキシド又は金属アルキルオキサンを使用でき、これらの金属は周期表の第Ia、IIa及び/又はIII族の元素である。活性化剤は、さらなるエステル、エーテル、アミン又はシリルエーテル基により都合の良く修飾できる。これらの触媒系は、通常、フィリップス(Phillips)、スタンダードオイルインディアナ(Standard Oil Indiana)、チーグラー(−ナッタ)、TNZ(DuPont)、メタロセン又はシングルサイト触媒(SSC)と呼ばれている。
【0059】
本発明において使用されるポリエステルは、任意の既知の合成法、例えば、直接エステル化、エステル交換、アシドリシス、アシル塩化物又は酸無水物とのアルコールの反応、エポキシド又はハロゲン化アルキルとのカルボン酸の反応、及び環状エステルの開環反応により製造できる。コポリエステル、ポリエステルを含有するコポリマー、及びポリマーブレンド、例えばポリカーボネートとPBT又はABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)のポリブレンド又はポリアミドとPBTのポリブレンド、例えばナイロン6とPBT又はナイロン6,6とPBT、を含むエンジニアリングプラスチックが特に考えられる。溶液及び界面(相間移動)法、触媒低温及び高温合成法を使用できる。
【0060】
本発明で使用されるポリアミドは、例えば、溶液重合、酸塩化物とジアミンを原料として使用する界面重合、溶融重合、固相重合、又はジカルボン酸とジアミンを原料として使用する溶融押出重合などの任意の既知の方法で製造できる。
【0061】
本発明で使用されるエラストマーポリマーとしては、ライクラ(LYCRA)(登録商標)、ELASPAN(登録商標)、DORLASTAN(登録商標)及びLINEL(登録商標)などの様々なブランド名の商標で市販されている、「スパンデックス」又はエラスタン(elastane)として総称されているもの、好ましくは少なくとも85%のセグメント化ポリウレタンを含むものが挙げられる。スパンデックス繊維は、長くアモルファスな「ソフトセグメント」と、短く硬い「ハードセグメント」との2つのタイプのセグメントから成る多数のポリマーストランドから構成される。スパンデックスポリマーの主鎖は、2種類のプレポリマー溶液を反応させることにより形成される。長くアモルファスなセグメントは、柔軟なマクロ−グリコール(ポリオール)から成り、末端ヒドロキシル基が存在する。一般的な最初のステップは、慎重に選択された条件下にある反応容器内でマクロ−グリコール(ポリオール)とジイソシアネートモノマーとを反応させてプレポリマーを形成する反応である。グリコール(ポリオール)とジイソシアネートとの典型的な比は1:2であるが、この比は、望ましい特性を有する繊維が製造されるように厳しく制御される。例えばジアゾビシクロ[2.2.2]オクタンなどの触媒を使用できる。連鎖延長反応として知られている反応で、プレポリマーを、等量のジオール(ポリウレタンをもたらす)又はジアミン(ポリウレタンウレアをもたらす)とさらに反応させることできる。
【0062】
スパンデックス繊維は、溶融押出、反応紡糸、溶液湿式紡糸及び溶液乾式紡糸の4つの方法により製造でき、後者はスパンデックス繊維の世界中の供給量の90%以上を生産するために使用されている。これらのスパンデックスポリマー製造方法は当該技術分野でよく知られており、一部であるが、米国特許第2,929,804、3,097,192号、第3,428,711号、第3,533,290号及び第3,555,115号明細書に開示されている。溶液乾式紡糸プロセスにおいて、プレポリマー溶液又は連鎖延長反応から得られた溶液を溶剤により希釈して紡糸溶液を生成させる。溶剤は、溶液を希釈してより取り扱いやすくするのを助ける。溶液を次に繊維製造セルであるシリンダー状の紡糸セルにポンプで注入し、紡糸セル中で溶液を硬化させ、繊維に変換する。このセル中で、ポリマー溶液を、小さい貫通孔を有する紡糸口金と呼ばれている金属プレートに通す。これによって、溶液は、液体ポリマーのストランドに整列する。ストランドがセルを通過する際に、ストランドは窒素及び溶剤ガスの存在下で加熱される。これらの条件によって、液体ポリマーが化学的に反応して固体ストランドが形成する。繊維がセルを出る際に、固体ストランドは束になり、望ましい最終厚さをもたらす。これは、繊維同士をより合せる圧縮空気装置を使用して行われる。実際には、スパンデックスの各繊維は、それらの表面のもともとの粘着性のために互いに接着した多数の小さな個々の繊維から構成される。最終加工工程の一部として、繊維が互いに粘着し合うのを妨げて繊維の製造を助けるために、仕上げ剤、例えばステアリン酸金属塩など、又はさらに別のポリマー、たとえばポリ(ジメチル−シロキサン)などを加えてもよい。この処理の後、スプール上の一連のローラーを通して送る。スパンデックス繊維は、スパンデックス繊維は、衣類の製造に使用される生地を生産するために、綿、ナイロン又はポリエステルなどの他の繊維と織られる。
【0063】
本発明において使用するのに適するスパンデックスの長いアモルファス「ソフトセグメント」に使用するのに好適ないくつかのマクログリコール(ポリオール)は、ポリエーテル(例えばポリ(エチレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル-co-エチレンエーテル)グリコール及びポリ(テトラメチレンエーテル-co-2-メチルテトラメチレンエーテル)グリコール)、ポリエステル(例えばポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロパンドデカンジオエート)グリコール、ポリ(エチレン-co-1,2-プロピレンアジペート)グリコール、ポリ(ヘキサメチレン-co-2,2-ジメチルトリメチレンアジペート)グリコール及びポリ(エチレン-co-ブチレンアジペート)グリコール)、ポリカーボネート(例えばポリ(ペンタン-1,5-カーボネート)グリコール及びポリ(ヘキサン-1,6-カーボネート)グリコール)、ポリカプロラクトン、又はこれらのいくつかの組み合わせ(例えばポリエステルエーテル)から構成される。本発明において使用するのに適するスパンデックスの短い硬質「ハードセグメント」に使用するのに好適ないくつかの市販の有機ジイソシアネートとしては、1-イソシアナト-4-[(4-イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼン(「4,4'-MDI」)、1-イソシアナト-2-[(4-イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼン(「2,4'-MDI」)、4,4'-MDIと2,4-MDIの混合物、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン(PICM)、5-イソシアナト-l-(イソシアナトメチル)-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナト-4-メチルベンゼン、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、α,α,α',α'-テトラメチル-m-キシリレンジイソシアネート(mTMXDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、及びそれらの混合物などが挙げられる。
【0064】
ポリウレタンスパンデックスが望ましい場合には、ポリマーを製造する際に使用される連鎖延長剤は、ジオール、例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、及び1,4-ブタンジオール、並びにこれらの混合物である。必要に応じて、単官能性アルコール連鎖停止剤、例えばブタノールなどを使用して、ポリマー分子量を調節することができ、また、高官能性アルコール「連鎖停止剤」、例えばペンタエリスリトールなどを使用して、粘度を調節することができます。得られるポリウレタンを、スパンデックスに溶融紡糸、乾式紡糸又は湿式紡糸することができる。
【0065】
ポリウレタンウレア(ポリウレタンのサブクラス)スパンデックスが望ましい場合には、連鎖延長剤は、ジアミン、例えばエチレンジアミン、1,3-ブタンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,3-ジアミノ-2,2-ジメチルブタン、1,6-ヘキサンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、N-メチルアミノビス(3-プロピルアミン)、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-ジアミノ-4-メチルシクロヘキサン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,1'-メチレン-ビス(4,4'-ジアミノヘキサン)、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ジアミノペンタン、m-キシリレンジアミン、及びこれらの混合物である。必要に応じて、連鎖停止剤、例えばジエチルアミン、シクロヘキシルアミン、又はn-ヘキシルアミンを、ポリマーの分子量を調節するために使用でき、三官能性の「連鎖分岐剤」、例えばジエチレントリアミンを、溶液粘度を調節するために使用できる。ポリウレタンウレアは、典型的にはスパンデックスに乾式紡糸又は湿式紡糸される。
【0066】
スパンデックス繊維は、通常、ポリマーの保全性を保護するために安定化剤を含む。ヒンダードアミンフェノール酸化防止剤は当該技術分野で知られている。米国特許第4,548,975及び第3,553,290号明細書並びに日本国公開特許公報第50-004387号には、スパンデックス用のフェノール系添加安定化剤が開示されている。本発明において使用されるスパンデックス用のいくつかの好ましい安定化剤としては、例えば、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)トリオン[Cytec Technology Corp.により販売されているCYANOX(登録商標)1790];1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン[IRGANOX(登録商標)1330(Ciba)又はETHANOX(登録商標)330(Albemarle)];1,1-ビス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン[LOWINOX(登録商標)44B25(Great Lakes Chemicals)];1,1,3-トリス(2-メチル-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン[LOWINOX(登録商標)CA22(Great Lakes Chemicals)];エチレン-1,2-ビス(3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]ブチレート[HOSTANOX(登録商標)03(Clariant Corporation)];p-クレゾールとジシクロペンタジエンとイソブテンの縮合生成物[もともとグッドイヤー化学株式会社により販売されたWINGSTAY(登録商標)L];p-クレゾールとジビニルベンゼンの縮合ポリマー[METHACROL(登録商標)2390, E. I. du Pont de Nemours and Company]などが挙げられる。米国特許第6,846,866号明細書には、1)少なくとも300ダルトンの分子量を有するモノ-ヒンダードフェノール、2)i)p-クレゾールとジビニルベンゼンとの縮合ポリマー、及びii)少なくとも1つの非対称なジ-ヒンダードフェノール基を含み、かつ、少なくとも300ダルトンの分子量を有する縮合ポリマー、からなる群から選ばれる第2の添加剤、及び3)ハイドロタルサイト、ハンタイトとハイドロマグネサイトとの物理的混合物、炭酸塩、酸化物及び水酸化物からなる群から選ばれる周期表の第II族金属の化合物、並びに炭酸塩、酸化物及び水酸化物からなる群から選ばれる周期表の第II及びIIb族の混合金属化合物からなる群から選ばれる安定化剤のスパンデックス中での相乗効果が開示されている。スパンデックス中のフェノール系酸化防止剤の濃度は、通常、スパンデックスポリマーの質量を基準として0.05〜5%、好ましくは0.5〜2%である。米国特許第4,340,527号及び第5,626,960号明細書には、本発明における使用に考えられる、スパンデックス用の無機添加剤(例えば酸化亜鉛及びハイドロタルサイト)が開示されている。
【0067】
本発明の硫酸銀などの安定化剤や添加剤をスパンデックスポリマーに添加するために従来の方法を使用できる。たとえば、本発明の硫酸銀粒子の濃縮スラリー又は分散体を、混和性溶剤(compatible solvent)、好ましくはスパンデックスポリマー紡糸溶液を調製するのに使用したものと同じ溶剤中で調製でき、ポリマーを製品、例えば繊維又はフィルムなどに成形する前にスパンデックスプレポリマー溶液に添加される。より具体的には、本発明の硫酸銀粒子を、マクロ-グリコール(ポリオール)プレポリマー溶液、ジイソシアネートプレポリマー溶液、連鎖延長反応溶液、紡糸溶液、又はこれらの溶液の1種以上もしくは全てに加えることができる。代わりに、本発明の硫酸銀粒子を、スパンデックス繊維に、最終加工(仕上げ及び乾燥)工程の間に適用してもよい。溶融押出製造法の場合に、本発明の硫酸銀粒子は、本発明の硫酸銀粒子を含むマスターバッチ濃縮物のブレンド及び混合中に直接混合又は配合することによって、あるいは、先に述べたような二軸スクリュー配合機などに備えられた従来のフィーダ又はスタッファによって、スパンデックスに加えることができる。
【0068】
米国特許第は6,479,144号明細書には、銀に基づく抗微生物剤(例えばリン酸銀ジルコニウム、銀ガラス又は銀ゼオライト)の粒子を標準的なスパンデックス滑剤(KELMAR(登録商標)660)と一緒に添加する溶融押出方法により製造されたスパンデックス繊維が開示されている。スパンデックス滑剤は、優れた粘着防止特性をスパンデックス繊維に付与した。鞘/芯構造のスパンデックス繊維における銀に基づく抗微生物剤の均一な分布及び多数の不均一な分布。
【0069】
ポリマー及び硫酸銀の他に、本発明の複合材料又はマスターバッチは、任意の添加剤を含んでも良い。これらの添加剤としては、造核剤、フィラー(例えば繊維補強フィラー、例えばガラスや黒鉛繊維など、及び粒子状補強フィラー、例えばカーボンブラックなど)、可塑剤(例えば内部型及び外部型など、後者としては、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレートにより例示される芳香族フタル酸エステル、例えばジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート及びジ-2-エチルヘキシルアゼレートなどの脂肪族エステル、例えばエポキシ化亜麻仁油及びエポキシ化大豆油などのエポキシ可塑剤、例えばポリ(アルキレンアジペート、セバケート又はアゼレート)、塩素化パラフィン及びリン酸エステルなどのポリマー可塑剤など)、層間化合物、相溶化剤、カップリング剤、耐衝撃性改良剤(例えばポリブタジエンコポリマー)、連鎖延長剤、着色剤、滑剤、帯電防止剤、顔料及び艶消し剤、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなど、分散剤、例えば脂肪アミド(例えばステアラミド)、脂肪酸の金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸マグネシウム)、染料、例えばウルトラマリンブルー、コバルトバイオレットなど、酸化防止剤、着臭剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤(例えばヒドロキシベンゾトリアゾール(例えばTinuvins)など)、窒素酸化物などの大気汚染物質に対して保護するために第3級アミン化合物、難燃剤、例えば臭素化難燃剤、例えばペンタブロモジフェニルエーテル、研磨剤又は粗面化剤、例えば珪藻土など、架橋剤、湿潤剤、増粘剤、発泡剤などが挙げられる。特に考えられるものは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及び有機ジスルフィド安定化剤、並びに2007年1月31日に出願された米国特許出願第11/669,830号明細書に開示されているような安定化剤の組み合わせである。2007年3月30日に出願された米国特許出願第11/694,390号明細書に開示されているような、変色を防止するための臭素酸イオン及びヨウ素酸イオンの使用も特に考えられる。また、銀に基づく抗微生物剤の調製(例えば硫酸銀の沈殿工程中の銀イオンの添加よりも前に添加、銀イオンの添加中に添加又は銀イオンの添加後に添加)又はその後のポリマーの溶融加工中、好ましくは銀に基づく抗微生物剤の添加又は配合前に、臭素酸イオンの塩(例えば臭素酸ナトリウム)及び/又はヨウ素酸イオンの塩(例えばヨウ素酸カリウム)を添加することも特に考えられる。これらの任意添加剤及びそれらの対応する量は、必要に応じて選択できる。パージ材料中にこれらの任意添加剤を含めることは、任意の既知の方法により達成できる。
【0070】
本発明のポリマー複合材料は、任意の既知の形状、例えば繊維、フィルム又はブロックで製造するか、あるいは様々な形状に射出成形できる。繊維は、中実又は中空で、円形又は非円形の断面であることができる。後者は、リボン形断面、ウェッジ(三角形)とコア(ハブ・アンド・スポーク(hub & spokes))の断面、多裂形断面(例えば三裂形、十字形、星形、及びより高度な多裂形断面など)、楕円形断面、及び溝付き断面(例えばCOOLMAX(登録商標)繊維におけるように水分吸収を促進するように設計された断面)を有する。二成分及び多成分繊維形態、例えば同心円状鞘/芯、偏心鞘/芯、サイド・バイ・サイド(side-by-side)、パイ・ウェッジ(pie wedge)、中空パイ・ウェッジ(hollow pie wedge)、コア・パイ・ウェッジ(core pie wedge)、スリーアイランド(three islands)及び海島などが特に考えられる。銀に基づく抗微生物剤は、多成分繊維の様々な成分中に均一に分布させることを意図して添加することができ、あるいは、異なる繊維成分間で不均一な分布をもたらすことを意図して添加することができる。例えば銀に基づく抗微生物剤は、二成分繊維の表面に又は表面付近における抗微生物効果又は他の特性、例えば滑性又は凝集性を高めるために、鞘/芯二成分繊維構造の鞘に、全体的又は部分的に、選択的に添加することができる。代わりに、鞘/芯繊維のコア領域、例えば繊維の中心から特定の距離外側に位置する領域(例えば半径の2分の1、3分の1、4分の1又は5分の1)などに、銀に基づく抗微生物剤の大部分を含めることによって、多成分繊維の抗微生物効果又は他の特性の持続性を高めることができる。同様に、スパンデックスの「ソフトセグメント」中に銀に基づく抗微生物剤の大部分が含まれることにより、恐らく繊維の表面又は繊維の表面付近における抗微生物効果が高まり、場合によっては、スパンデックスの「ハードセグメント」中に銀に基づく抗微生物剤の一部が含まれることにより恐らく抗微生物効果の持続性が高まると考えられる。
【0071】
スプリット可能な繊維、例えば2種の異なるポリマーを、セグメントスプリット可能な形態又は溶解可能な「海島」形態のいずれかで紡糸されたものが、本発明において使用するのに考えられる。セグメントスプリット可能な繊維は、典型的には、円形繊維で2〜32のセグメントで紡糸されるが、生産規模では、パイ・ウェッジ(又は「シトラス」)断面で16セグメント及び中空もしくはコア・パイ・ウェッジ断面で8セグメントが通常使用される。直径2〜4ミクロンの、典型的にはウェッジ形断面を有する繊維は、後の繊維加工(例えばハイドロエンタングルメント(水流交絡)、カーディング、エアレイイング、ウェットレイイング、ニードルパンチング)の間に受けたいくらかのエネルギー入力がセグメントの分離を引き起こした後に生成する。セグメント化リボン形断面及びセグメント化多裂形(例えばセグメント化した十字形及び先細りの三裂形)断面は、高い繊維スプリット性をもたらすが、これらの断面形状を形成できる紡糸口金のコストは高い。ナイロン/ポリエステルのスプリット可能なセグメント化二成分繊維は市販されている(例えばDUOTEX(登録商標)とSTARFIBER(登録商標))。スプリット可能な二成分繊維において使用される他のポリマーの組み合わせとしては、ポリプロピレン/ナイロン、ポリプロピレン/ポリエステル、ポリプロピレン/ポリ(アクリロニトリル)、ポリプロピレン/ポリウレタン、ポリ乳酸/PETから製造された全ポリエステルのスプリット可能な繊維、ポリプロピレン/ポリ(メチルペンテン)から製造された全ポリオレフィンのスプリット可能な繊維が挙げられる。
【0072】
米国特許第3,705,226号明細書に最初に開示されたスプリット可能な繊維の技術は、ステープル繊維を極めて微細な直径のPET繊維とともに紡糸してPET繊維がコポリマーの溶解可能な海により取り囲まれている「海島」形態を用いた。好適な溶解用ポリマーとしては、ポリスチレン(有機溶剤に可溶)、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、熱可塑性スターチ、及び熱水中に可溶な他のコポリエステルが挙げられる。直径6ミクロンのナイロンマイクロファイバーは、アルカリ可溶性コポリエステルの海の中にナイロン6の37個の島をもともと含む繊維から商業的に生産されてきた。600個以下の島を有する海島繊維は、直径1ミクロンの繊維を生じた。
【0073】
本発明に従って沈殿させられた硫酸銀粒子は、種々様々な最終用途においてプラスチック及びポリマーに抗微生物性(抗バクテリア性及び/又は抗菌性)又は抗ウイルス性の保護をもたらすために、プラスチック及びポリマー内に添加することができる。典型的な最終用途としては、カーペット及びエリアラグ(例えば、ポリプロピレンフェースファイバーを有するラグ(例えば商業用、リテール用又は住居用カーペット))のための押出及び非押出フェースファイバー(ポリエチレン面繊維(例えば商業用、リテール用又は住居用);カーペット裏地(一次又は二次裏地、織布又は不織ポリプロピレン繊維を含む)、又はカーペット(商業用、住居用又はリテール用)に使用されるラテックス接着剤裏地が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、抗微生物作用を組み込んだポリマー及び抗ウイルス作用を組み込んだポリマーは、液体濾過媒体(例えばプール及び温泉、排水処理、携帯用水処理及び工業用途、例えば金属加工のための不織布濾過媒体など);不織布空気濾過媒体(例えば商業用及び住居用炉、HVAC又は湿度調節フィルター、空気清浄機、及びHEPAフィルター、及び自動車及び飛行機のための客室用空気フィルターなど)において使用することもできる。さらに、抗微生物作用を組み込んだポリマーは、屋外用布地(例えば、織布及び不織布製の、自動車及びボートのカバー、防水シート、テント、キャンバス、帆、プールのカバー、中庭用装飾品(例えば傘、日よけ幕、シートなど)、キャンプ用具及びジオテキスタイルなど)、建築材料(例えば乾式壁材、隙間充填材、窓サッシ、断熱材、ハウスラップ及びルーフラップ、壁紙、床材、例えばセメント、コンクリート、モルタル及びタイル、台所及び浴室のカウンター及びシンクのための合成大理石、衛生陶器、便器、シャワー室及びカーテンなど)、シーリング材(例えば、ラテックスペイント及び有機溶剤系ペイント/ステイン及び屋外耐候ステイン、配管工事及び包装用の接着剤、窓ガラス、タイル及びガラス質陶器及びグラウト取り付け用の接着剤など)、エレベータの押しボタン、階段の手すり、マット及びノブなど)、工業用設備(例えばテープ、管、バリヤ用布地、コンベヤベルト、インシュレータ、及びワイヤ及びケーブルのための絶縁材、配管補給材料及び取り付け具、ガスケット、収集及び貯蔵設備(配管系、サイロ、タンク及び処理容器)、及び火災システムのスプリンクラー管内部に使用されるコーティングなど)、生活必需品(例えば、まな板、使い捨て手袋、ボウル、台所排水口用カゴ、台所生ゴミ用カゴ、料理用ナイフの取っ手、箸、食器類、テーブルクロス、ナプキン、トレイ、容器、ランチボックス、箸箱、ふきん、スポンジ、ほうき、モップ、拭き取り布、浴室のいす、洗面器、バケツ、食器棚、石鹸箱、シャンプーホルダー、歯ブラシホルダー、歯ブラシ、カミソリの柄、食品用ラップ及び包装材料、水筒、非常用水タンク、便座、ヘアブラシ、櫛、たわし、工具及び工具の取っ手、化粧品及び化粧品容器、及び衣料品など)のために使用することができる。考えられ得る他の用途としては、事務用品及び筆記用具(例えばシャープペンシル、ボールペン、鉛筆、消しゴム、フロッピー(登録商標)ディスクのケース、クリップボード、クリア紙ホルダー、ファンシーケース、ビデオテープケース、光磁気ディスクシェル、コンパクトディスクケース、デスクマット、バインダー、ブックカバー、筆記用紙、及び財布など)、自動車部品(例えばステアリングホイール、アームレスト、パネル、シフトノブ、スイッチ、鍵、ドアノブ、補助グリップなど)、電気製品(例えば冷蔵庫、洗濯機、真空掃除機及びバッグ、エアコンディショナー、衣類用アイロン、加湿器、除湿器、浄水器、食器洗浄機及び乾燥器、炊飯器、固定及び携帯電話機、複写機、ATM又はリテールキオスク(例えば写真キオスクなど)のためのタッチパネルなど)、繊維製品(例えばソックス、レギンス、靴下・メリヤス類(例えばパンティストッキング、矯正ストッキング、支持ストッキング)、ファンデーション・ガーメント、ジャケットの内側裏地、手袋及びヘルメット、水着、ボディースーツ及びモーションキャプチャスーツ、タオル、トイレカバー、カーテン、カーペット繊維、枕、シーツ、寝具、マットレス地、寝袋、鼻・口用マスク、タオル、縁なし帽、縁あり帽、かつらなど)、公共交通機関に関連する物品(例えばつり革、ハンドル及びグリップ、レバー、座席、シートベルト、手荷物・保管棚など)、スポーツ用具(例えばボール、ネット、パック、ホイッスル、マウスピース、ラケットの柄、パフォーマンス衣服、例えばサイクリングショーツ、防具、ヘルメット、インドア及びアウトドア用人工芝、靴の内張り及び補強材、競技イベント及び格闘技に使用される道具、構造物及び式典用物品など)、医療用品(例えば包帯、ガーゼ、カテーテル、義肢、インプラント、器具、医療衣、フェイスマスク、シールド、再利用可能なおむつ及び使い捨ておむつ、衛生ナプキン、タンポン、コンドーム、ユニフォーム、ガウン、及び衣類が2人以上によって安全に着用されることを可能にするために攻撃的且つ過酷なクリーニングを必要とするその他の病院用衣類など)中に本発明の材料を含めることが挙げられる。本発明の多岐にわたる用途はさらに、楽器(例えばリード、弦及びマウスピースなど)、コンタクトレンズ、レンズ保持器及びホルダー、プラスチック製クレジット/デビットカード、遊び場の砂様材料、猫及びペットのトイレ砂、宝石及び腕時計のバンドの中に含めることに関する。
【0074】
医療用途に対する本発明の抗微生物剤の使用が特に考えられ、様々な形態で配合物を含めることができる:
・1.医療グレードの基材、例えば、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ラテックス、シリコーン、綿、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、セルロース、アセテート、カルボキシメチルセルロース、アルジネート、キチン、キトサン及びハイドロファイバーから構成された、例えばドレッシング、パッキング、メッシュ、フィルム、濾過面、フィルター、インフューザー、デンタルフロスや縫合糸などの繊維、容器もしくは瓶上への抗微生物剤のコーティング;
・2.抗微生物剤の粉末(すなわち自立構造(free-standing)粉末)、又は粉末形態で生体適合性基材上、好ましくはハイドロコロイド、生体吸収性及び/又は吸湿性基材、例えば
合成生体吸収性ポリマー:例えば、ポリエステル/ポリアクトン、例えばポリグリコール酸、グリコリド、乳酸、ラクチド、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、ポリ酸無水物、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、並びにこれらと類似のポリマーもしくはモノマーとのコポリマー、あるいは
天然に産出するポリマー:
タンパク質:アルブミン、フィブリン、コラーゲン、エラスチン;
多糖類は:キトサン、アルジネート、ヒアルロン酸;及び
生合成ポリエステル:3-ヒドロキシブチレートポリマー;
などの上に、抗微生物剤のコーティングとして;
・3.閉塞又は水和ドレッシング(ドレッシングに抗微生物剤の粉末又は溶液が含浸されているか、あるいはドレッシングは抗微生物剤の局所製剤とともに使用される)、例えばハイドロコロイド、ハイドロゲル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリビニリデン、シロキサン又はシリコーンドレッシングなど;
・4.防腐剤、ペクチン及び増粘材などの添加剤とともに、カルボキシメチルセルロース、アルジネート、キチン、キトサン及びハイドロファイバーなどのハイドロコロイド粉末のような材料と、抗微生物剤の粉末又は溶液を用いて配合されたゲル;
・5.例えばエマルジョンとして又は乾燥エモリエントとともに抗微生物剤の粉末又は溶液を配合したクリーム、ローション、ペースト、フォーム及び軟膏;
・6.例えば膀胱、前立腺、ペリンシアル(perintheal)、ペリカルクリアル(pericharcliar)、胸膜、腸管及び消化管などの体腔及び管のための、例えば局所溶液、エアロゾル、ミスト、スプレー、ドロップ、点滴及び輸液として、抗微生物剤のコーティング又は粉末を溶解させることにより溶液、分散体又は懸濁液として配合された液体;
・7.例えばトローチ、歯磨き粉、ゲル、粉末、被覆歯科インプラント、デンタルフロス又はテープ、チューインガム、ウエハー、マウスウォッシュ又はリンス、ドロップ、スプレー、エリキシール剤、シロップ、タブレット又はカプセルなどの形態にある、抗微生物剤の粉末もしくは液体又は貴金属を配合した、鼻膜、口腔又は消化管への投与に適する配合物;
・8.例えば座薬、ドレッシング、パッキング、タンポン、クリーム、ゲル、軟膏、ペースト、フォーム、スプレー、及び停留浣腸又は点滴のための溶液などの形態にある、抗微生物剤の粉末又は液体が配合された、膣又は直腸投与に適する配合物。
【0075】
本発明を使用することが考えられる幾つかの特定の医療最終用途としては、例えば:
・1.例えば、絹、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、リネン、スチールワイヤ、腸線(牛漿膜や羊粘膜下層)、ポリグリコラクチド、ポリアミド(例えばポリアミドナイロン)、フィブロイン、ポリグリコール酸及びそれらのコポリマー、例えばポリグリコリド(又はポリグリコール酸)/ポリカプロラクトンコポリマー又はポリグリコール酸/ポリカプロラクタムコポリマーなどを使用して、モノフィラメント又は編組もしくはより合わされたマルチフィラメントとして形成された吸収性と非吸収性縫合材料;
・2.外科用接着剤及びシーラント、例えば、シアノアクリレート、例えばブチル-4-シアノアクリレート及びポリマー2-オクチルシアノアクリレート(DERMABOND(登録商標))など;ポリエチレングリコールハイドロゲル、例えばCOSEAL(登録商標)(Baxter Healthcare Corporation(米国))及びDuraSeal Dural(Confluent Surgical(米国))、精製牛血清アルブミン(BSA)及びグルタルアルデヒド、例えばBIOGLUE(登録商標)(Cryolife, Inc.(米国))など;フィブリン、例えばCROSSEAL(登録商標)(Ethicon, Inc.(米国))及びTISSEAL(登録商標)など;ミクロフィブリルコラーゲン、例えばAVITENE(登録商標)フラワーENDOAVITENE(登録商標)プリロードアプリケーション及びSYRINGEAVITENE(登録商標)(Davol, Inc.(米国));分解性コラーゲン、例えば BIOBLANKET(登録商標)(Kensey Nash(米国))など;遺伝子組換えヒトコラーゲン;転相バイオポリマー、例えばPOLIPHASE(登録商標)(Avalon Medical, Ltd.)など;フィブリノゲン及びトロンビン、例えばHEMASEEL(登録商標)APR(Haemacure Corporation(カナダ))、及びFIBRX(登録商標)(Cryolife, Inc.(米国));オートロガス処理プラズマ、例えばATELES(登録商標)、CEBUS(登録商標)及びPROTEUS(登録商標)(PlasmaSeal(米国));ポリエチレン及びポリウレタン系接着剤フォーム、例えばScapa Medical製のものなど;ゴムに基づく医療用接着剤(Scapa Medical); 美容用注入可能な接着剤、例えばBIOHESIVE(登録商標)(Bone Solutions, Inc(米国);並びにBAND-AID(登録商標)ブランドのリキッド・バンデージ・スキン・クラック・ゲル(Liquid Bandage Skin Crack Gel)、Surgical Sealants, Inc.(米国)から入手可能なTHOREX(登録商標);並びに米国特許出願公開第2006-253094号明細書に開示されているような「脂肪族ポリエステルマクロマー」など。
・3.プライマリ創傷包帯、例えば、3M(米国)から入手可能な、TEGADERM(登録商標)Ag Mesh、TEGADERM(登録商標)Ag Mesh With Silver、TEGADERM(登録商標)HI及びHGアルジネートドレッシング、TEGADERM(登録商標)ハイドロゲル創傷フィラー、TEGADERM(登録商標)フォーム接着性及び非接着性ドレッシング、COBAN(登録商標)自己接着性ラップ、CAVILON(登録商標)無刺激性バリア・フィルム(No-Sting Barrier Film)。
・4.外科用閉鎖テープ、例えば、3M(米国)製のSTERI-STRIP(登録商標)S外科用皮膚閉鎖テープ(Surgical Skin Closure Tape)及びMEDIPORE(登録商標)Hソフトクロス外科用テープ(Soft Cloth Surgical Tape)など;
・5.例えばトロンビン;マトリックス用途、例えば架橋ゼラチン顆粒を含む牛トロンビン(Baxter International製のFLOSEAL(登録商標))など;シート、例えばDavol, Inc.(米国)製のAVITENE(登録商標)ミクロフィブリルコラーゲンなど;ガーゼ、例えばBLOODSTOP(登録商標)及びBLOODSTOP(登録商標)iX(LifesciencePlus(米国))、及びActCel(ActSys Medical(米国))など;ゼラチンスポンジ、例えばGELFOAM(登録商標)など;コラーゲンスポンジ、例えばULTRAFOAM(登録商標)(Davol, Inc.(米国))など;凍結乾燥されたコラーゲンスポンジ、例えばINSTAT(登録商標)(Ethicon, Inc.(米国))など;酸化再生セルロース、例えばOXYCEL(登録商標)及びSURGICEL(登録商標)(Ethicon, Inc.(米国))などの、様々な局所用途用の形態にある止血剤。
・6.歯科用ピット及び裂溝シーラント並びに合着セメント。
【0076】
本発明の材料をポリマー−木材複合材料中に使用することも考えられる。木材のコストが上昇し、成木が不足するのに伴って、より高い耐久性を有し、より長持ちする(シロアリによる破壊及び木材腐朽を被りにくい)、木材の良好な品質の代替品を見いだすことが必要である。過去数年間にわたって、伝統的な中実木材製品の代わりに、ポリマー−木材複合材料を最終用途、例えば押出及びフォーム充填押出建築・建設材料(例えば窓枠、外装用クラッディング、外装用サイディング、ドア枠、ダクト、屋根板、及び関連するルーフライン製品、及び外装用板張り通路及び通路など);内装材及び屋内用仕上げ材(例えば内装用パネル、装飾用異形材、オフィス家具、台所キャビネット、棚材料、ワークトップ、ブラインド及びシャッター、幅木、及び内装用レール);自動車(例えばドア及び天井のライナー、ダクト、内装パネル、ダッシュボード、後部棚、トランク床及びスペアタイヤのカバーなど);庭用及び屋外用の製品(例えばデッキ材料、フェンス支柱及びフェンス材、レール及び柵、庭用備品、物置及びシェルター、公園のベンチ、遊び場の設備、遊び場の地面);そして最後に、工業用途(例えば工業用床材、柵、海洋杭、船舶隔壁、漁網、枕木、パレットなど)に使用するための市場が成長してきている。ポリマー−木材複合材料は、抗腐朽菌保護も提供する。
【0077】
ポリマー−木材複合材料の組成は幅広く変化してよく、ポリマー含有率は典型的には、最終用途に応じて3〜80重量%である。射出成形製品は、溶融材料の十分な流れを必要とし、従って、好ましくは65〜80重量%のポリマー成分を含有する。構造強度を必要とする組成物は、典型的には、ポリマーを3〜20重量%だけ含有することができ、ポリマーは、典型的には、主として接着剤として機能する。おそらく、最も一般的に使用されるポリマー成分は、ポリオレフィン(ポリエチレン又はポリプロピレン、それらの高密度及び低密度のもの、並びにこれらの混合物)であるが、ポリブテン、ポリスチレン、及び溶融温度130〜200℃の他のポリマーを使用することもできる。原則的には、セルロース系繊維成分の分解温度を下回る溶融温度を有する任意のポリマーを使用することができる。架橋性化学薬品(過酸化物及びビニルシラン)、相溶化剤、及びポリマーとセルロース系成分との内部又は間に共有結合を形成することができる官能基を含むカップリング剤(例えばグラフト化無水マレイン酸ポリマー又はコポリマー)を含めることができる。セルロース系材料は種々様々な源:木材及び木材生成物、例えば木材パルプ繊維;綿から形成された非パルプ製紙繊維;藁及び草;稲及びエスパルト;籐及び葦、例えばバガス;竹;靱皮繊維を有する茎、例えばジュート、フラックス、ケナフ、リネン、及びラミー;及び葉繊維、例えばアバカ及びサイザル;リサイクルされた紙及びポリマーコート紙などの紙又はポリマーコート紙から得ることができる。1種又は2種以上のセルロース系材料を使用することができる。より一般的には、使用されるセルロース系材料は、木材を源とする。好適な木材源としては、軟木源、例えば松、トウヒ、及び樅、並びに硬木源、例えばオーク、楓、ユーカリ、ポプラ、ブナ及びアスペンが挙げられる。木材源のセルロース系材料の形態は、おがくず、木材チップ、又は木粉などであってよい。それでもやはり、微生物、例えばバクテリア及び菌類が可塑剤又は他の添加剤、及びポリマー成分内又は成分上に見いだされた環境的食料を餌にし、結果として変色及び構造的(化学的又は機械的)分解をもたらすおそれがある。本発明は、これらの複合材料のうちのポリマー及び木材成分のいずれか又は両方に抗微生物剤又は抗ウイルス剤を含めることにより、これらの問題により効果的に対処する手段を提供する。
【0078】
本発明を特に適用可能な別の新興用途は、抗微生物性の不織布(織られても編まれてもいない布)である。不織布は、典型的には、小さい繊維をシート又はウェブの形態にまとめ、次に、それらを、機械的に結合(フェルトの場合、鋸歯状のニードルにより繊維を交絡させ、その結果、繊維間の摩擦によってより強い布となる)させるか、接着剤により結合させるか、又は熱により結合(バインダー(粉末、ペースト又はポリマー溶融物の形態にある)を適用し、温度を上昇させることによりバインダーをウェブ上で溶融させることによるか、あるいは熱スポット結合による)させることによって製造される。不織布はしばしば、最終用途に応じて、耐久性のあるものとして、又は1回使い切り(使い捨て)のものとして分類される。
【0079】
ステープル不織布は、2つの工程で製造される。まず最初に、繊維を紡糸し、数センチメートルの長さに切断し、梱(bale)にする。これらの梱は、次に、コンベヤベルト上に分散され、ウェットレイ法又はカーディングによって、繊維は均一なウェブ状に広げられる。ウェットレイ作業は、典型的には、4分の1インチ乃至4分の3インチ長の繊維を使用するが、繊維が剛直であるか又は直径が大きい場合には、場合により、より長くてもよい。カーディング作業は、典型的には、長さが約1.5インチの繊維を使用する。ガラス繊維を、ルーフィング及び屋根板に使用するためのマットにウェットレイすることができる。1回使い切りの布を得るために、合成繊維のブレンドをセルロースとともにウェットレイする。ステープル不織布は、樹脂飽和もしくは全体的な熱結合によりウェブ全体にわたって結合させるか、あるいは、樹脂の印刷もしくは熱スポット結合を通じて特徴的パターンで結合させる。ステープル繊維との共形成は、高性能繊維絶縁体で使用されるメルトブローンとの組み合わせを通常指す。
【0080】
スパンレイ不織布は、1つの連続プロセスで製造される。繊維を紡糸し、次に直接分散させてウェブとするか、ディフレクタにより、又は空気流により案内して直接分散させてウェブとする。この方法は、より速いベルト速度と、より低いコストをもたらす。このコンセプトの幾つかのバリエーションは商業的に利用可能であり、最先端の技術は、Reifenhauser(ドイツ)で製造されたライコフィル(Reicofil)機である。さらに、スパンボンドは、SMS(スピン−メルト−スパン)と呼ばれる層状製品に当てはまるように、メルトブローン不織布と組み合わされてきた。メルトブローン不織布は、非常に細かい繊維径を有するが、強固な布ではない。ポリプロピレンから全て作られたSMS布は撥水性であり、使い捨て可能な布として機能するのに十分に優れた品質を有する。メルトブローン不織布は、しばしば、非常に微細な粒子を捕捉できるフィルター材として使用されている。
【0081】
他の方法では、不織布、フィルムから初め、フィブリル化し、鋸歯状にし、又はパターン化された孔を有する真空成形形状にする。スパンレース方法はウォータージェット(ハイドロエンタングルメント)の使用により、不織布繊維の機械的交絡を実現する。超音波パターン結合は、高ロフト又はファブリック絶縁/キルト/寝具で使用される。通常とは異なる方法では、不織布ハウスラップは(例えばDuPont TYVEK(登録商標))は、フレオン(Freon)のような流体中のポリエチレンフィブリルを用い、紙のような製品にそれらを成形及びカレンダリングし、一方、スパンボンドポリプロピレンは(例えばDuPont TYPAR(登録商標))は、カーペットバッキング、包装、建設(屋根及びハウスラップ)及びジオテキスタイル用途で使用される。
【0082】
ガラス繊維不織布には、2つの基本的な種類がある。ウェットレイマット又は「ガラスティッシュ」は、直径範囲6〜20マイクロメートルのウェットチョップド高デニール繊維を用いる。防火マット又は「バット(batts)」は、0.1〜6ミクロン範囲の不連続な微細デニール繊維を使用する。後者は似ているが、メルトブローン熱可塑性不織布よりもはるかに高い温度で機能する。ウェットレイマットは、大抵、カーテンコーターによりウェット樹脂結合されるのに対し、バットは通常ウェット又はドライ樹脂でスプレー結合される。
【0083】
不織布(例えばTEGADERM(登録商標)として入手可能な不織布綿メッシュガーゼ、及びBEMLIESE(登録商標)として入手可能な不織布レーヨン)における天然繊維、例えばセルロースなどの使用は、例えばポリオレフィン及びポリエステル(ほとんどPET)などの合成繊維と多く取って代わられてきた。PETに基づく不織布は、弾力性、しわ回復性、及び皮膚と接触した場合の快適性、並びに高温性能に優れている。ポリエステル(並びにポリエチレン及びポリプロピレン)不織布用の用途としては、医療(例えばアイソキャップ、ガウン、カバー及びマスク;手術ドレープ、ガウン及びスクラブスーツなど)、衛生(赤ちゃんのおむつ、女性用衛生用品、大人用尿失禁製品、拭き取り用具、包帯及び創傷ドレッシング)、フィルター(ガソリン、オイル及び空気(HEPA濾過を含む)、水、プール及び温泉、コーヒー及びティーバッグ)、ジオテキスタイル(土壌安定化剤及び道路下地、農業マルチ、池や運河のバリア、及び下水溝タイル用の砂ろ過バリア)、工業(天井タイルのフェーシング、回路基板の補強、電気絶縁、絶縁バッキング、ハニカム構造部品、ロールルーフィング及び屋根板補強、壁装材、ビニル床補強及びプラスチック表面補強(ベール))及び様々な用途(カーペットバッキング、海洋帆及び卓上ラミネート、機械刺繍用のバッキング/安定材、ガラス繊維充填絶縁材、枕、クッション及び室内装飾品、パディング、キルトや布団の詰め物)が挙げられる。創傷ドレッシングとして有用な商業的に提供されている物としては、例えば、有孔非接着性不織メッシュ、例えば、Applied Extrusion Technologies, Inc.(米国デラウェア州ミドルタウン)により製造されたDELNET(登録商標)P530(これは、押出し、型押し、及び延伸プロセスを使用して高密度ポリエチレンから形成された不織ベールである)が挙げられる。これと同じ製品は、Frass Survival Systems. Inc.(米国デラウェア州ブロックス)からExu-Dry CONFORMANT 2(登録商標)創傷ベースとして、同社の創傷ドレッシングロール(非接着性)製品群のサブセットとして入手可能である。他の有用な不織メッシュとしては、Carolina Formed Fabrics Corp.から入手可能なCARELLE(登録商標)及びWinfield Laboratories, Inc.(米国テキサス州リチャードソン)から入手可能なN-TERFACE(登録商標)が挙げられる。
【0084】
ナイロンは、高温用途で優れているが、不織布でのその使用は、レーヨン、ポリオレフィン及びポリエステルに対するその高いコストのため、及び布として使用された場合に、ポリエステルよりも快適性に劣るために、限られている。それにも関わらず、ナイロンは、優れた引裂強さを付与するために、アスレチックウェア、不織衣服の裏地、及び拭き取り用具においてブレンド繊維として使用されている(商業的に提供されているものとしては、例えばCarolina Formed Fabrics Corporation(米国)から入手可能なNYLON90(登録商標)が挙げられる)。ナイロンは、研磨剤粒子が樹脂により不織布ナイロンバッキング/支持体の内部繊維表面に接着されている表面コンディショニング研磨製品においてしばしば使用されている。かかる研磨剤/ナイロン系を含む用具は、不織布パッド、不織布ホイール、不織布シート及びロール、表面コンディショニングディスク、回転ホイール、ホイールとフラップが統合又は一体化された不織布ホイールの形態をとる。不織布ナイロンは、Ni/H及びNi/Cdバッテリーの電極セパレーターとしても使用されている。一般的でない特殊なスパンボンドナイロン(CEREX(登録商標))は、気相酸性化法により自己接着される。
【0085】
天然及び合成繊維材料の両方を含む複数の繊維タイプから構成される不織布基材を本発明において使用できる。かかるブレンド不織布層材料の商業的に提供されているものは、、Dupont Canada(カナダ国オンタリオ州ミシサーガ)から入手可能なSONTARA(登録商標)8868(水流交絡材料、50/50セルロース/ポリエステルを含有)及びSONTARA(登録商標)8411(70/30レーヨン/ポリエステルブレンド);HFE-40-047(レーヨン50%及びポリエステル50%を含有する有孔水流交絡材料)及びNOVENET(登録商標)149-191(レーヨン69%、ポリプロピレン25%及び綿6%を含有する熱結合グリッドパターン材料)(両方ともVeratec, Inc.(米国マサチューセッツ州ウォルポール));Chicopee Corporation(米国ニュージャージー州ニューブランズウィック)製のKEYBAK(登録商標)951V(レーヨン75%及びアクリル繊維25%を含有する乾式形成された有孔材料)が挙げられる。
【0086】
長さがわずか数センチメートルの短繊維をしたステープル不織布とは対照的に、連続フィラメントの不織布は、低粘度溶融ポリマーを供給し、次に、その低粘度溶融ポリマーを、紡糸口金又はダイとして知られているプレート中の多数のマイクロオリフィスを通して加圧下で押出して、多数の連続ポリマーフィラメントを生成させることにより形成される。次に、フィラメントを急冷及び牽引し、集めて不織布ウェブを形成する。マイクロオリフィスを通しての溶融ポリマーの押出しは、ポリマー添加剤がオリフィス直径よりもかなり小さい粒子サイズを有することが必要とされる。フィラメントの破壊及び絡み合いなどのプロセス不安定性を防止するため、又はフィラメントがまだ溶融状態にある間のフィラメントの「ローピング(roping)」を防止するために、添加剤粒子は、オリフィス孔の直径の4分の1未満であることが好ましい。マイクロフィラメントは、典型的には20ミクロン程度の直径を有するものであり、超マイクロフィラメント(super microfilaments)は、3〜5ミクロン以下程度の直径を有するものである。超マイクロフィラメントから形成された連続フィラメント不織布は、主に、エアフィルター並びに人工皮革及び拭き取り用具において使用される。多くのポリマー(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ナイロン)について連続マイクロフィラメント不織布を製造するための連続法が当該技術分野でよく知られている。直径2〜3ミクロンのスプリット可能なマイクロファイバーは、不織布装置(カード式、エアレイ式、ウェットレイ式、ニードルパンチ式及びハイドロエンタングルメント式)で容易に加工できる。下記実施例で実証されているように、本発明は、50マイクロメートル未満の平均粒子サイズを有し、そのため細径モノフィラメントにより有効に組み込むことができる安定な硫酸銀の製造を可能にする。
【0087】
下記実施例は、本発明を実証すること意図するが、本発明を限定することを意図していない。
【実施例】
【0088】
下記実施例の硫酸銀材料に対して、HORIBA LS-920分析器で粒子の平衡水性分散液を使用して粒子サイズ測定を行った。測定に先だって、60秒間の音波処理レベル7に設定されたHORIBA LS-920分析器内で硫酸銀材料の穏やかな音波処理を行なって、緩い凝集体を分散させた。例1〜21で沈殿した材料について得られた粒子サイズ測定の評価を下記表1〜6にまとめた。フッ素化添加剤の量は、グラム数での質量、あるいは、反応器に添加された銀のモル数に対するモル百分率(モノマー添加剤)として表されている。
【0089】
例1〜17
例3〜17は、本発明の単量体アニオン性フッ素化有機スルホン酸添加剤又はそれらの塩を例示する。
【0090】
例1:比較、添加剤なし
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。3000rpmで動作する前述の平面混合装置(リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)38213, 1996年2月、第111〜114頁、「Mixer for Improved Control Over Reaction Environment」)を使用して反応器内容物を均質にした。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mLを加えた。蠕動ポンプを使用して、225mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL及び117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。粉末X線回折から、生成物が単一相の硫酸銀であることを確認した。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは51μmであった。
【0091】
例2:比較、ドデシル硫酸ナトリウム;銀と一緒に活性0.68gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mLを加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度で0.68gのドデシル硫酸ナトリウムを含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。粉末X線回折から、生成物が単一相の硫酸銀であることを確認した。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは34μmであった。
【0092】
例3:比較、オクチルサルフェート(POLYSTEP(登録商標)B29);銀と一緒に活性な0.56gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mLを加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度で1.75gのStepan POLYSTEP(登録商標)B29(オクチルサルフェート0.56g)を含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは44μmであった。
【0093】
例4:発明、Dupont ZONYL(登録商標)1033D(30%活性);銀と一緒に活性な1gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mLを加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度で3.3gのDupont ZONYL(登録商標)1033D(30%テトラエチルアンモニウムペルフルオロヘキシルエチルスルホネート)を含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは13μmであった。
【0094】
例5:発明、Dupont ZONYL(登録商標)1033D(30%活性);銀よりも前に活性な0.5gを添加、銀と一緒に活性な0.5gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mL及び1.7gのDupont ZONYL(登録商標)1033D(30%テトラエチルアンモニウムペルフルオロヘキシルエチルスルホネート)を加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度で3.3gのDupont ZONYL(登録商標)1033D(30%テトラエチルアンモニウムペルフルオロヘキシルエチルスルホネート)を含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは16μmであった。
【0095】
例6:発明、Dupont ZONYL(登録商標)1033D(30%活性);銀よりも前に活性な1gを添加、銀と一緒に活性な1gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mL及び3.3gのDupont ZONYL(登録商標)1033D(30%テトラエチルアンモニウムペルフルオロヘキシルエチルスルホネート)を加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度で3.3gのDupont ZONYL(登録商標)1033Dを含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは16μmであった。
【0096】
例7:発明、Dupont ZONYL(登録商標)1033D(30%活性);銀よりも前に活性な1gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mL及び3.3gのDupont ZONYL(登録商標)1033D(30%テトラエチルアンモニウムペルフルオロヘキシルエチルスルホネート)を加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL及び117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは36μmであった。
【0097】
下記表1は、テトラエチルアンモニウムペルフルオロヘキシルエチルスルホネートの存在下で沈殿した硫酸銀材料についての粒子サイズ結果をまとめたものである。
【0098】
【表1】

【0099】
比較例2〜3についての先に示した平均粒子サイズの結果の比較から、例1の添加剤なしの比較例と比べて、非フッ素化アルキルサルフェート添加剤が粒子サイズを減少させる程度が限られていることが判る。対照的に、例4の結果を例3の結果と比べると、等モル量のオクチルサルフェートのフッ素化誘導体(すなわち、ペルフルオロヘキシルエチルスルホネート)を同じように添加することは、平均粒子サイズを大幅に低減するのに、具体的には44ミクロンから16ミクロンに低減するのに有効であることが判る。等しい量のペルフルオロヘキシルエチルスルホネートを沈殿の前と銀の添加と一緒に加えるというように添加のやり方を変更した例5〜6で同様な結果が得られた。例7の結果から、沈殿よりも完全に前に反応器にペルフルオロヘキシルエチルスルホネートを添加する方法は、銀と一緒に添加する方法と比べて、粒子サイズの減少にあまり有効でないことが判る。
【0100】
例8〜14は、商業的に入手したDupont ZONYL(登録商標)FS-62から誘導された80%のテトラエチルアンモニウムペルフルオロヘキシルエチルスルホネートと20%のテトラエチルアンモニウムペルフルオロオクチルエチルスルホネートとの活性成分混合物(後で水酸化テトラエチルアンモニウムによりpH中和して25質量%の活性添加剤混合物を含む溶液とした)の使用を例示するものである。
【0101】
例8:発明、水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62(25%活性);銀と一緒に活性な1gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mLを加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度で水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62を4g含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは19μmであった。
【0102】
例9:発明、水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62(25%活性);銀よりも前に活性な1gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mL及び水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62を4g含有する溶液16.7gを加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは40μmであった。
【0103】
例10:発明、水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62(25%活性);銀よりも後に活性な1gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mLを加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL及び117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った後、蠕動ポンプを使用して、水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62を4g含有する溶液16.7gを23.3mL/分の速度で供給した。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは44μmであった。
【0104】
例11:発明、水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62(25%活性);銀よりも前に活性な0.25gを添加、銀と一緒に活性な0.25gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mL及び水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62を1g含有する溶液4.2gを加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度で水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62を1g含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは30μmであった。
【0105】
例12:発明、水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62(25%活性);銀よりも前に活性な0.5gを添加、銀と一緒に活性な0.5gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mL及び水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62を2g含有する溶液8.3gを加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度で水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62を2g含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは24μmであった。
【0106】
例13:発明、水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62(25%活性);銀よりも前に活性な1gを添加、銀と一緒に活性な1gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mL及び水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62を4g含有する溶液16.7gを加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度で水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62を4g含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは16μmであった。
【0107】
例14:発明、Dupont ZONYL(登録商標)FS-62(25%活性);銀よりも前に活性な1gを添加、銀と一緒に活性な1gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mL及び4.0gのDupont ZONYL(登録商標)FS-62を加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度でDupont ZONYL(登録商標)FS-62を4.0g含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは17μmであった。
【0108】
下記表2に、80%のテトラエチルアンモニウムペルフルオロヘキシルエチルスルホネート及び20%のテトラエチルアンモニウムペルフルオロオクチルエチルスルホネートの活性成分混合物の存在下で沈殿した硫酸銀についての粒子サイズの結果をまとめた。
【0109】
【表2】

【0110】
例1〜3及び例8についての上記の平均粒子サイズの結果の比較から、例1の添加剤なしの比較例と比べて、非フッ素化アルキルサルフェート添加剤が粒子サイズを減少させる限られた程度が例8で使用されたフッ素化アルキルスルホネートの混合物により大幅に拡大したことが判る。例9〜10の結果と例8の結果とを比較することによって、可溶性銀水溶液の添加の完全に前又は完全に後に本発明のフッ素化添加剤を加えることは、銀と一緒に添加する方法と比べて、粒子サイズの減少にあまり有効でないことが判る。例11〜13と例8との比較から、銀と一緒に反応器に添加されるフッ素化添加剤の量が粒子サイズの減少の程度を決める主たる因子であることが判るが、銀の添加よりも前にフッ素化添加剤をさらに添加することによって幾らかの小幅なさらなる減少を達成できる。例14と例13とを比較することによって、pH中和されていない酸性のZONYL(登録商標)FS-62を使用して同様な結果が得られることが判る。
【0111】
例15〜17は、本発明の幾つかのさらなるペルフルオロアルキル有機スルホン酸又はそれらの塩を示す。
【0112】
例15:ノナフルオロ-1-ブタンスルホン酸カリウム塩;銀よりも前に活性な1gを添加、銀と一緒に活性な1gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mL及び1gのノナフルオロ-1-ブタンスルホン酸カリウム塩を加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度でノナフルオロ-1-ブタンスルホン酸カリウム塩を1g含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは54μmであった。
【0113】
例16:ノナフルオロ-1-ブタンスルホン酸カリウム塩;銀よりも前に活性な3gを添加、銀と一緒に活性な3gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mL及び3gのノナフルオロ-1-ブタンスルホン酸カリウム塩を加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度でノナフルオロ-1-ブタンスルホン酸カリウム塩を3g含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは40μmであった。
【0114】
例17:Ciba LODYNE(登録商標)S103A(45%活性);銀よりも前に活性な1gを添加、銀と一緒に活性な1gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mL及び2.2gのLODYNE(登録商標)S103Aを加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度でLODYNE(登録商標)S103Aを2.2g含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは29μmであった。
【0115】
LODYNE(登録商標)S103A(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能)中の活性成分の化学構造を以下に示す。
【0116】
【化1】

【0117】
下記表3に、例15〜17のペルフルオロアルキル有機スルホン酸又はそれらの塩の存在下で沈殿した硫酸銀材料についての粒子サイズ結果をまとめた。
【0118】
【表3】

【0119】
例1〜3と例15〜16との上記の平均粒子サイズの結果を比較することにより、例1の添加剤なしの比較例と比べて、粒子サイズを減少させるのに0.888の相対モル量のナノフルオロ-1-ブタンスルホン酸が十分であることが判る。例1〜3と例17の上記の結果を比較することによって、例1の添加剤なしの比較例と比べて、非フッ素化アルキルサルフェート添加剤が粒子サイズを減少させる限られた程度が、LODYNE(登録商標)S103Aのパーフッ素化スルホネートにより大幅に拡大することが判る。
【0120】
例18
例18は、本発明のポリマーアニオンフルオロアルキルリン酸塩の混合物を例示する。
例18:発明、Dupont ZONYL(登録商標)FS-610(22%活性);銀よりも前に活性な1gを添加、銀と一緒に活性な1gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mL及び4.4gのDupont ZONYL(登録商標)FS-610を加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度でDupont ZONYL(登録商標)FS-610を4.5g含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは47μmであった。
【0121】
Dupont ZONYL(登録商標)FS-610中の活性成分としては、5%のポリ(ジフルオロメチレン),α-フルオロ-ω-[2-(ホスホノオキシ)エチル]-,モノアンモニウム塩、12%のポリ(ジフルオロメチレン),α-フルオロ-ω-[2-(ホスホノオキシ)エチル]-,ジアンモニウム塩;及び9%のポリ(ジフルオロメチレン),α,α'-[ホスフィニコビス(オキシ-2,1-エタンジイル)ビスω-フルオロ-],アンモニウム塩が挙げられる。
【0122】
下記表4に、ポリマーアニオンフルオロアルキルリン酸塩の混合物の存在下で沈殿した硫酸銀材料の粒子サイズ結果をまとめた。
【0123】
【表4】

【0124】
上記の結果の比較から、Zonyl(登録商標)FS-610のポリマーフルオロアルキルリン酸塩が、添加剤なしの比較例と比べて、硫酸銀の粒子サイズをかなり減少させることが判る。
【0125】
例19〜20
例19〜20は、本発明のポリマーアニオンフッ素化ポリエーテルサルフェート添加剤塩を例示する。
【0126】
例19:発明、POLYFOX(登録商標)PF136A(30%活性);銀よりも前に活性な1gを添加、銀と一緒に活性な1gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mL及び3.3gのPOLYFOX(登録商標)PF136Aを加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度でPOLYFOX(登録商標)PF136Aを3.3g含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは19μmであった。
【0127】
POLYFOX(登録商標)PF136A(米国ペンシルベニア州ワリントン所在のPolysciences, Inc.から入手可能)中の活性成分は下記の構造により表されるペルフルオロメチル化オキセタンサルフェートポリマーである。
【0128】
【化2】

【0129】
例20:発明、POLYFOX(登録商標)PF156A(30%活性);銀よりも前に活性な1gを添加、銀と一緒に活性な1gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mL及び3.3gのPOLYFOX(登録商標)PF156Aを加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度でPOLYFOX(登録商標)PF156Aを3.3g含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは34μmであった。
【0130】
POLYFOX(登録商標)PF156A(米国オハイオ州フェアローン所在のOmnova Solutions, Inc.から入手可能)中の活性成分は下記の構造により表されるペルフルオロエチル化オキセタンサルフェートポリマーである。
【0131】
【化3】

【0132】
下記表5に、例19〜20のペルフルオロアルキルオキセタンサルフェートポリマーのアンモニウム塩の存在下で沈殿した硫酸銀材料の粒子サイズ結果をまとめた。
【0133】
【表5】

【0134】
例1〜3と例19〜20との上記結果を比較することにより、例1の添加剤なしの比較例と比べて、非フッ素化アルキルサルフェート添加剤が硫酸銀の粒子サイズを減少させる限られた程度が、POLYFOX(登録商標)PF136Aのペルフルオロアルキルオキセタンサルフェートポリマーにより大幅に増大し、POLYFOX(登録商標)PF156Aにより幾分増大することが判る。
【0135】
例21
例21は、本発明の部分的にペルフルオロ化されたカチオン性第4級アンモニウム塩を例示する。
例21:発明、Ciba LODYNE(登録商標)S106A(30%活性);銀よりも前に活性な1gを添加、銀と一緒に活性な1gを添加
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mL及び3.3gのLODYNE(登録商標)S106Aを加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度でLODYNE(登録商標)S106Aを3.3g含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。緩い凝集体を分散させるための穏やかな音波処理後、光散乱(HORIBA)により求められた平均粒子サイズは45μmであった。
【0136】
LODYNE(登録商標)S103A中の活性成分の化学構造を以下に示す:
【0137】
【化4】

【0138】
下記表6に、例21のペルフルオロヘキシル置換第4級アンモニウムクロライドの存在下で沈殿した硫酸銀材料の粒子サイズ結果をまとめた。
【0139】
【表6】

【0140】
上記結果を比較することにより、LODYNE(登録商標)S-103Aのカチオン性の部分的にペルフルオロ化された第4級アンモニウム塩が、添加剤なしの比較例と比べて、硫酸銀の粒子サイズをかなり減少させることが判る。
【0141】
例22〜31
例22〜31は、本発明のフッ素化添加剤の存在下で沈殿した硫酸銀材料を配合したポリエステルポリマーの色及び抗微生物特性に及ぼす影響を実証する。
【0142】
例22:比較、PET対照物の製造
ガラス容器に20gのEASTMAN(登録商標)7352ポリエチレンテレフタレート(PET)を装入した。次に、この容器を、加熱設定値5に設定されたCorning PC-35ホットプレート上に載せた。PETを、視覚的に溶融するまで加熱した。PET混合物を次にステンレススチールスパチュラにより2分間攪拌した。スパチュラを使用して、得られたPET試料をガラス容器から取り出し、スチールプレート上に載せ、室温(23℃)まで放冷し、固体プラークを得た。混合、溶融及び冷却工程は全て大気中で行った。固体プラークの色は、薄い灰色であった[Sb2O3触媒の存在のため]。
【0143】
例23:比較、PET中のRiverside Chemical硫酸銀
ガラス容器に19gのEASTMAN(登録商標)7352ポリエチレンテレフタレート(PET)を装入した。次に、この容器を、加熱設定値5に設定されたCorning PC-35ホットプレート上に載せた。PETを、視覚的に溶融するまで加熱した。Riverside Chemical Companyから市販入手可能な硫酸銀1gをガラス容器内の溶融PETに加えた。硫酸銀とPETの混合物を次にステンレススチールスパチュラにより2分間攪拌した。スパチュラを使用して、得られた複合材料をガラス容器から取り出し、スチールプレート上に載せ、室温(23℃)まで放冷し、固体プラークを得た。混合、溶融及び冷却工程は全て大気中で行った。固体プラークの色は暗いベージュであった。このことは、この比較のための硫酸銀とPETの混合が許容できない色の硫酸銀-PET複合材料の製造をもたらすことを示している。
【0144】
例24:比較、PET中のSDSとともに沈殿した硫酸銀
ガラス容器に19gのEASTMAN(登録商標)7352ポリエチレンテレフタレート(PET)を装入した。次に、この容器を、加熱設定値5に設定されたCorning PC-35ホットプレート上に載せた。PETを、視覚的に溶融するまで加熱した。ドデシル硫酸ナトリウム(1.74mmol/mol銀)の存在下で沈殿した硫酸銀1gをガラス容器内の溶融PETに加えた。硫酸銀とPETの混合物を次にステンレススチールスパチュラにより2分間攪拌した。スパチュラを使用して、得られた複合材料をガラス容器から取り出し、スチールプレート上に載せ、室温(23℃)まで放冷し、固体プラークを得た。混合、溶融及び冷却工程は全て大気中で行った。固体プラークの色は暗褐色であった。このことは、この比較のためのこの硫酸銀とPETの混合が許容できない色の硫酸銀-PET複合材料の製造をもたらすことを示している。
【0145】
例25:比較、PET中のAerosol OTとともに沈殿した硫酸銀
ガラス容器に19gのEASTMAN(登録商標)7352ポリエチレンテレフタレート(PET)を装入した。次に、この容器を、加熱設定値5に設定されたCorning PC-35ホットプレート上に載せた。PETを、視覚的に溶融するまで加熱した。Aerosol OT(活性成分は1,4-ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム;1.12mmol活性/mol銀)の存在下で沈殿した硫酸銀1gをガラス容器内の溶融PETに加えた。硫酸銀とPETの混合物を次にステンレススチールスパチュラにより2分間攪拌した。スパチュラを使用して、得られた複合材料をガラス容器から取り出し、スチールプレート上に載せ、室温(23℃)まで放冷し、固体プラークを得た。混合、溶融及び冷却工程は全て大気中で行った。固体プラークの色はベージュであった。このことは、この比較のためのこの硫酸銀とPETの混合が許容できない色の硫酸銀-PET複合材料の製造をもたらすことを示している。
【0146】
例26:発明、PET中に配合されたZONYL(登録商標)1033Dとともに沈殿した硫酸銀
ガラス容器に19gのEASTMAN(登録商標)7352ポリエチレンテレフタレート(PET)を装入した。次に、この容器を、加熱設定値5に設定されたCorning PC-35ホットプレート上に載せた。PETを、視覚的に溶融するまで加熱した。例5から得た硫酸銀1gをガラス容器内の溶融PETに加えた。硫酸銀とPETの混合物を次にステンレススチールスパチュラにより2分間攪拌した。スパチュラを使用して、得られた複合材料をガラス容器から取り出し、スチールプレート上に載せ、室温(23℃)まで放冷し、固体プラークを得た。混合、溶融及び冷却工程は全て大気中で行った。固体プラークの色は薄いベージュであった。このことは、本発明の硫酸銀とPETの混合が許容可能な色の硫酸銀-PET複合材料の製造をもたらすことを示している。
【0147】
例27:発明、PET中のZONYL(登録商標)1033Dとともに沈殿した硫酸銀
ガラス容器に19gのEASTMAN(登録商標)7352ポリエチレンテレフタレート(PET)を装入した。次に、この容器を、加熱設定値5に設定されたCorning PC-35ホットプレート上に載せた。PETを、視覚的に溶融するまで加熱した。例6から得た硫酸銀1gをガラス容器内の溶融PETに加えた。硫酸銀とPETの混合物を次にステンレススチールスパチュラにより2分間攪拌した。スパチュラを使用して、得られた複合材料をガラス容器から取り出し、スチールプレート上に載せ、室温(23℃)まで放冷し、固体プラークを得た。混合、溶融及び冷却工程は全て大気中で行った。固体プラークの色は薄いベージュであった。このことは、本発明の硫酸銀とPETの混合が許容可能な色の硫酸銀-PET複合材料の製造をもたらすことを示している。
【0148】
添加剤なしで又は非フッ素化添加剤の存在下で沈殿した硫酸銀を含む5%硫酸銀-PET複合材料(例23〜25)では、かなり色が濃かったために、本発明のフッ素化添加剤(ペルフルオロヘキシルエチルスルホネート)の存在下で沈殿した硫酸銀を含む例26〜27の5%硫酸銀-PET複合材料の色の強度は、大幅に改善された。下記例28〜31に記載するように、本発明の別のフッ素化添加剤を使用してより大きな処理装置内でより大きな材料バッチサイズで同様な実験を行った。
【0149】
例28:比較、PET対照物の製造
ブラベンダーパドル配合機を270℃に予熱し、混合パドルを60rpmに設定した。フィードチャンバに40.0gのEASTMAN(登録商標)ポリエステルF53HCを装入し、乾燥窒素パージ下で6分間混合した。混合パドルを停止し、フィードチャンバを取り外した。配合した試料をチャンバ壁及びパドルから取り除き、次いで配合した試料を、温度22℃のステンレススチールプレート上に押しつけることにより複合材料プラークを作製した。固体プラークの色は薄灰色であった(Sb2O3触媒の存在のため)。
【0150】
例29:発明、PET中に配合された、Dupont ZONYL(登録商標)FS-62とともに沈殿した硫酸銀
ブラベンダーパドル配合機を270℃に予熱し、混合パドルを60rpmに設定した。フィードチャンバに39.0gのEASTMAN(登録商標)ポリエステルF53HCを装入し、乾燥窒素パージ下で2分間混合した。このポリエステルが溶融したら、フィードチャンバに1.0gの硫酸銀粉末(例13から)を加え、複合材料を窒素パージ下で4分間混合した。混合パドルを停止し、フィードチャンバを取り外した。配合した試料をチャンバ壁及びパドルから取り除き、次いで配合した試料を、温度22℃のステンレススチールプレート上に押しつけることにより複合材料プラークを作製した。固体プラークの色は薄褐色であった。
【0151】
例30:発明、PET中に配合された、Dupont ZONYL(登録商標)FS-62とともに沈殿した硫酸銀
6リットルのステンレススチールスポンジケトルに、2Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液71.2mL及び水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont(登録商標)ZONYL(登録商標)FS-62を4g加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液640mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液333mL及び23.3mL/分の速度で水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたZONYL(登録商標)FS-62を4g含有する溶液67mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保ち、その後、6.7mL/分の速度で2.0gのヨウ化カリウムを含有する溶液67mLを蠕動ポンプで供給した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で乾燥させた。
【0152】
ブラベンダーパドル配合機を270℃に予熱し、混合パドルを60rpmに設定した。フィードチャンバに39.0gのEASTMAN(登録商標)ポリエステルF53HCを装入し、乾燥窒素パージ下で2分間混合した。このポリエステルが溶融したら、フィードチャンバに1.0gの上記硫酸銀粉末を加え、複合材料を窒素パージ下で4分間混合した。混合パドルを停止し、フィードチャンバを取り外した。配合した試料をチャンバ壁及びパドルから取り除き、次いで配合した試料を、温度22℃のステンレススチールプレート上に押しつけることにより複合材料プラークを作製した。固体プラークの色は薄褐色(比較例28と同様)であった。このことは、本発明のフッ素化添加剤とともに沈殿し、ヨウ化物イオンの存在下でポリエチレンテレフタレート中に配合された硫酸銀の使用が変色をなくすのに驚くほどに有効であることを示している。
【0153】
例31:発明、抗微生物性評価のための、PET中の、Dupont ZONYL FS-62添加剤とともに沈殿した硫酸銀を含有するCarverプレス試料
274℃に予熱されたCarverプレスを使用して例29で製造した複合材料プラークのごく一部から複合材料フィルム(公称2〜3ミル)を製造した。複合材料プラークから得たアリコートを2枚のポリイミドポリマーシートの間に配置することによりサンドイッチを作製した。このサンドイッチをCarverプレス定盤間に置き、次に定盤同士を引き合わせ、複合材料プラークからのアリコートを溶融させ、ポリイミドシート間にフィルムを生じさせた。Carverプレスからサンドイッチを取り出し、サンドイッチを室温(22℃)で2枚の金属板の間で急冷した。ポリイミドシートを剥がすと、自立性の複合材料フィルムが残った。数枚の複合材料フィルムを作製した。
【0154】
ASTM E-2149「Standard Test Method for Determining the Antimicrobial Activity of Immobilized Antimicrobial Agents Under Dynamic Contact Conditions」の改訂版を使用して、上記複合材料フィルムを抗微生物活性について評価した。この試験では、合計0.25gの複合材料フィルムを125mLエルレンマイヤーフラスコに入れた。ストリップに細菌(クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pnuemoniae, 肺炎桿菌)(ATCC #4352))又は菌類(アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger, 黒麹菌)(ATCC #6275))を含む50Lを105細胞/ミリリットルを接種した。細菌の場合、接種は、媒体としてホスフェート緩衝液(pH=7.2)を併用して行った。手首動作式振とう機によりストリップを周囲温度で24時間振とうし、次いで振とう機から排出した。各フラスコから0.1mLのアリコートを採取し、9.9mLの中和培養液を含む試験管にピペットで入れ、ボルテックスし、希釈倍率-2及び-4でトリプトカーゼ大豆寒天上にフィルタープレート接種し、次いで、さらに35℃で24時間インキュベートした。この最終インキュベーション後、フィルタープレートを細菌の生長について調べ、コロニー数をカウントした。菌類の場合には、ストリップをSabouraudデキストローズ寒天上にフィルタープレート接種して28℃で48時間インキュベートしたことを除き、ストリップを細菌と同じ手順にかけた。48時間のインキュベーション後、フィルタープレートを菌類の生長について調べ、コロニー数をカウントした。
【0155】
t=0に対する減少率(%)で記録したクレブシエラ・ニューモニエ及びアスペルギルス・ニガーに対する例31のPET複合材料フィルムについての抗微生物試験の結果が表7に含まれている。
【0156】
【表7】

【0157】
上記結果から、本発明のフッ素化添加剤(具体的には、80%のテトラエチルアンモニウムペルフルオロヘキシルエチルスルホネートと20%のテトラエチルアンモニウムペルフルオロオクチルエチルスルホネートの混合物)の存在下で沈殿した硫酸銀は、ポリエチレンテレフタレートのフィルムに配合された場合に、抗菌特性及び抗菌特性の両方を付与するのに有効であることが判る。
【0158】
要約すると、上記例22〜31の教示を総合すると、本発明のフッ素化添加剤の存在下で沈殿した、任意選択的にヨウ化物イオンを含有する硫酸銀を、変色を低減しつつ抗菌特性を付与することを見込んでポリエチレンテレフタレートに配合することができることが判る。
【0159】
例32〜35
例32〜35は、本発明のフッ素化添加剤の存在下で沈殿した硫酸銀を配合したポリプロピレンポリマーの色及び抗菌特性に及ぼす影響を実証する。
【0160】
例32:比較、PP対照物の製造
10個のゾーンを有するLeistritz二軸スクリュー配合機を200℃に予熱し、スクリュー速度を200rpmに設定した。ゾーン1の供給位置に、単軸スクリューペレットフィーダーを使用してHUNTSMAN(登録商標)ポリプロピレン4C6Z-049を毎時30.0ポンドの割合で供給した。混合、溶融及び混練は全て大気中で行った。得られた複合材料を4本のストランドとして押し出し、流水槽を使用して室温(22℃)に急冷した。得られた固体ストランドをマルチブレードチョッパーに供給して、複合材料ペレット(約1cm×2cmの大きさ)とした。ペレットはわずかに白色の曇りを帯びた透明であった。
【0161】
例33:発明、水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62(25%活性);銀よりも前に活性な3gを添加、銀と一緒に活性な3gを添加;PP中に配合
18リットルのステンレススチールスポンジケトルに、5.5Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液427mLと、水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和された12gのDupont ZONYL(登録商標)FS-62を加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液3840mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液2000mL及び23.3mL/分の速度で水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62を12g含有する溶液400mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で24時間乾燥させ、さらに85℃で4時間乾燥させた。
【0162】
10個のゾーンを有するLeistritz二軸スクリュー配合機を200℃に予熱し、スクリュー速度を200rpmに設定した。ゾーン1の供給位置に、単軸スクリューペレットフィーダーを使用してHUNTSMAN(登録商標)ポリプロピレン4C6Z-049を毎時28.5ポンドの割合で供給した。ポリプロピレンの溶融後、上記の硫酸銀粉末を二軸スクリューのサイドポートフィーダーを使用してゾーン4の供給位置に毎時1.5ポンドの割合で供給した。混合、溶融及び混練は全て大気中で行った。得られた複合材料を4本のストランドとして押し出し、流水槽を使用して室温(22℃)に急冷した。得られた固体ストランドをマルチブレードチョッパーに供給して、複合材料ペレット(約1cm×2cmの大きさ)とした。ペレットの色は淡褐色であった。
【0163】
例34:発明、水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62(25%活性);銀よりも前に活性な3gを添加、銀と一緒に活性な3gを添加;銀の後に6gのヨウ化カリウムを添加;PP中に配合
18リットルのステンレススチールスポンジケトルに、5.5Lの蒸留水を装入し、温度を40℃に調節した。例1に記載したように反応器内容物を混合した。この反応器に、硫酸アンモニウムの3.6M溶液427mLと、水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和された12gのDupont ZONYL(登録商標)FS-62を加えた。蠕動ポンプを使用して、225.0mL/分の速度で3.1Mの硝酸銀を含有する溶液3840mL、117.1mL/分の速度で2.9Mの硫酸アンモニウムを含有する溶液2000mL及び23.3mL/分の速度で水酸化テトラエチルアンモニウムにより中和されたDupont ZONYL(登録商標)FS-62を12g含有する溶液400mLを同時に供給すると、白色生成物が沈殿した。反応を40℃で5分間保った後、蠕動ポンプを使用して、40.0mLの速度で6gのヨウ化カリウムを含有する溶液400mLを供給した。反応を40℃で5分間保った。最終生成物を導電率<10mSまで洗浄し、そして一部を周囲温度で24時間乾燥させ、さらに85℃で4時間乾燥させた。
【0164】
10個のゾーンを有するLeistritz二軸スクリュー配合機を200℃に予熱し、スクリュー速度を200rpmに設定した。ゾーン1の供給位置に、単軸スクリューペレットフィーダーを使用してHUNTSMAN(登録商標)ポリプロピレン4C6Z-049を毎時28.5ポンドの割合で供給した。ポリプロピレンの溶融後、上記の硫酸銀粉末を二軸スクリューのサイドポートフィーダーを使用してゾーン4の供給位置に毎時1.5ポンドの割合で供給した。混合、溶融及び混練は全て大気中で行った。得られた複合材料を4本のストランドとして押し出し、流水槽を使用して室温(22℃)に急冷した。得られた固体ストランドをマルチブレードチョッパーに供給して、複合材料ペレット(約1cm×2cmの大きさ)とした。ペレットの色は淡褐色であった。ペレットの色はオフホワイトであった。このことは、本発明のフッ素化添加剤とともに沈殿し、ヨウ化物イオンも含み、ポリプロピレン中に配合された硫酸銀の使用が、変色をなくすのに驚くほどに有効であることを示している。
【0165】
例35:抗微生物性評価のための、PP中の、Dupont ZONYL(登録商標)FS-62添加剤とともに沈殿した硫酸銀を含有するCarverプレス試料
182℃に予熱されたCarverプレスを使用して例33で製造したペレットから複合材料フィルム(公称2〜3ミル)を製造した。ペレットのアリコートを2枚のポリイミドポリマーシートの間に配置することによりサンドイッチを作製した。このサンドイッチをCarverプレス定盤間に置き、次に定盤同士を引き合わせ、ペレットのアリコートを溶融させ、ポリイミドシート間にフィルムを生じさせた。Carverプレスからサンドイッチを取り出し、サンドイッチを室温(22℃)で2枚の金属板の間で急冷した。ポリイミドシートを剥がすと、自立性の複合材料フィルムが残った。数枚の複合材料フィルムを作製した。
【0166】
上記のポリプロピレン複合材料フィルムを、例31に記載したように抗微生物活性について評価した。結果を下記表8に示す。
【0167】
【表8】

【0168】
上記結果から、本発明のフッ素化添加剤(具体的には、80%のテトラエチルアンモニウムペルフルオロヘキシルエチルスルホネートと20%のテトラエチルアンモニウムペルフルオロオクチルエチルスルホネートの混合物)の存在下で沈殿した硫酸銀は、ポリプロピレンのフィルムに配合された場合に、抗菌特性及び抗菌特性の両方を付与するのに有効であることが判る。
【0169】
要約すると、上記例32〜35の教示を総合すると、本発明のフッ素化添加剤の存在下で沈殿した、任意選択的にヨウ化物イオンを含有する硫酸銀を、変色を大幅に低減又は有効になくしつつ抗菌特性を付与することを見込んでポリプロピレンに配合することができることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性銀塩と、無機硫酸イオンの水溶性の供給源とを、攪拌式沈殿反応容器内で反応させること、及び一次硫酸銀を含む粒子を沈殿させることを含み、反応及び沈殿が水溶性のフッ素化添加剤の存在下で行われ、フッ素化添加剤の量が、沈殿した硫酸銀のモル量に対して少ないモル百分率であり、かつ、50マイクロメートル未満の平均粒子サイズを有する一次硫酸銀を含む粒子の沈殿をもたらすのに有効な量である方法。
【請求項2】
沈殿中に存在するフッ素化添加剤の量が、沈殿させる硫酸銀のモル量に対して10モルパーセント未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
沈殿中に存在するフッ素化添加剤の量が、沈殿させる硫酸銀のモル量に対して少なくとも0.05である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
フッ素化添加剤が、ペルフルオロ化セグメント又はペルフルオロ化置換基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
フッ素化添加剤が、有機サルフェート又は有機スルホン酸もしくはその塩のペルフルオロ化誘導体を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
フッ素化添加剤が、有機第4級アンモニウム塩のペルフルオロ化誘導体を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
フッ素化添加剤が、ペルフルオロアルキル置換オキセタンポリマーを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
フッ素化添加剤が、フルオロアルキルアルコール置換ポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
臭素酸塩又はヨウ素酸塩を含むさらなる添加剤が沈殿中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記さらなる添加剤がヨウ素酸カリウムを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
フッ素化添加剤又はその塩が少なくとも1g/Lの水溶解度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
可溶性銀塩が硝酸銀を含み、無機硫酸イオンの可溶性供給源が硫酸アンモニウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
無機硫酸イオンの可溶性供給源の溶液の少なくとも一部が可溶性銀塩の溶液と同時に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
一次硫酸銀の粒子を含む組成物であって、前記粒子が50マイクロメートル未満の平均粒子サイズを有し、かつ、硫酸銀のモル量に対して少ないモル量のフッ素化添加剤を含むことを特徴とする組成物。
【請求項15】
前記粒子が、硫酸銀のモル量に対して少ないモル量の臭素酸又はヨウ素酸アニオンをさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記粒子が、硫酸銀のモル量に対して少ないモル量のヨウ素酸カリウムを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
ポリマー相と、その中に分散された請求項14に記載の組成物の粒子を含む複合材料。
【請求項18】
前記ポリマー相が、押出フィルムもしくは繊維又は射出成形品の形態にある、請求項17に記載の複合材料。
【請求項19】
前記ポリマー相がポリオレフィンを含む、請求項17に記載の複合材料。
【請求項20】
前記ポリマー相がポリプロピレンを含む、請求項19に記載の複合材料。
【請求項21】
前記粒子が、硫酸銀のモル量に対して少ないモル量のヨウ素酸アニオンを含み、前記ポリマー相が押出フィルムもしくは繊維又は射出成形品の形態にある、請求項20に記載の複合材料。
【請求項22】
前記ポリマー相がポリエステルを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
前記ポリマー相がポリエチレンテレフタレートを含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記粒子が、硫酸銀のモル量に対して少ないモル量のヨウ素酸アニオンを含み、前記ポリマー相が押出フィルムもしくは繊維又は射出成形品の形態にある、請求項23に記載の複合材料。
【請求項25】
前記粒子が、硫酸銀のモル量に対して少ないモル量の臭素酸又はヨウ素酸アニオンをさらに含む、請求項17に記載の複合材料。

【公表番号】特表2011−516391(P2011−516391A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503971(P2011−503971)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/001961
【国際公開番号】WO2009/126214
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】