説明

水溶性高分子の活性化形

本発明は、水溶性高分子修飾ペプチドを作製するための活性化水溶性高分子の合成を提供する。発明の模範となる化合物は、活性化脱離基に共有的に付けられた水溶性高分子である。ここで、水溶性高分子は、PEG、PPG、PEG誘導体、そしてPPG誘導体の中から選択されたものであり、活性化脱離基は(化学式I)から選択されたものである。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
特定の生理現象の発生に対してグリコシル化および非グリコシル化ペプチドを投与することは、医療で公知である。治療用ペプチドの使用を制限する主たる要因は、多くのペプチドの免疫性である。これまで可溶性ペプチド治療を提供するために、ペプチド主鎖に水溶性高分子が付けられてきた。
【0002】
ポリエチレングリコール(“PEG”)は、ペプチドにコンジュゲートされた模範的な水溶性高分子である。誘導ペプチド治療にPEGを利用することは、ペプチドの免疫原性を減少させることが実証されてきた。
【0003】
現在、PEGとその誘導体は、無秩序かつ非特異的に、ペプチド主鎖上の反応性残基に付けられている。治療用ペプチドの生産に対して、特異的にラベル出来て、容易にその特性が明らかに出来て、本質的に均一な生成物が生成されるような誘導体化方策を利用することは、明らかに望ましいことである。特異的にラベル出来るペプチドの調製のための見込みのアルルートは、グリコシルトランスフェラーゼのような酵素を利用して、ペプチドに水溶性高分子で修飾された糖部分を付加することである。
【0004】
想定された修飾糖を創造するために、PEGのような水溶性高分子の活性化形が必要とされる。本発明は、これら及びその他の必要性を満たす。
【発明の開示】
【0005】
水溶性高分子修飾ペプチドを調整するための改良された方法の必要性を受けて、本発明は、活性化水溶性高分子の合成を提供する。
【0006】
1つの態様では、本発明は、活性化脱離基に共役的に付けられた水溶性高分子から成る、活性化水溶性高分子を提供する。ここで、水溶性高分子は、PEG、PPG、PEG誘導体、そしてPPG誘導体の中から選択されたものであり、活性化脱離基は



から選択されたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
略語
ここで使われる略語は、化学および生物学の内での慣用的な意味を持つ。例えば、PEGはポリエチレングリコールを表し、PPGはポリプロピレングリコールを表す。
【0008】
定義
特に定義しなければ、ここで使われる総ての技術用語及び科学用語は一般に、この発明が属する普通の当業者によって普通に理解されるような意味を持つ。一般的に、ここおよび有機化学の研究操作で使われる命名法は、良く知られ、当業者で普通に用いられている。標準的な技術またはその変形したものは、化学合成や化学分析で使われている。
【0009】
用語「高分子(polymer)」は、それぞれが相対的に軽くて単純な分子の繰り返し結合単位から成る、普通は高分子量の、数多くの天然化合物および合成化合物を意味する。
【0010】
用語「活性化脱離基(activated leaving group)」は、親核置換反応で容易に置換される部分を意味する。
【0011】
記号「〜〜〜」は、示した部分が、結合として使われるか、又は結合に垂直に表示して、表示部分が分子の残りの部分に付いている点を表す。
【0012】
緒言
活性化水溶性高分子誘導体は、水溶性高分子と活性化脱離基との反応で創造される。
a)水溶性高分子
【0013】
選択されたペプチドの親水性は、アミン、エステル、水酸基、多価水酸基を持つ分子のような極性分子とのコンジュゲーションによって増大させられる。代表的な例は、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコールであるが、これらに限られない。
【0014】
本発明は更に、ポリエチレングリコール誘導体を参照することによって説明される。PEGの機能化やコンジュゲーションに関して幾つかの総説やモノグラフが入手できる。例えば、Harris, Macromol. Chem. Chem. Phys. C25: 325-373(1985);Scouten, Methods in Enzymology 135:30-65(1987);Wong et al.,Enzyme Microb. Technol. 14:866-874(1992);Delgado et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 9: 249-304(1992);Zalipsky, Bioconjugate Chem. 6:150-165(1995); Bhadra et al., Pharmazie, 57: 5-29(2002)を参照されたい。
【0015】
発明の構成を作るのに有用なポリエチレングリコールは、線形か又は分岐したもののいずれかである。分岐高分子の例は、引用文献としてここに挿入するが、Shearwater Polymers, Inc., Huntsville, AL のカタログ、そして米国特許第6,437,025号、第6,436,386号、第6,362,254号に見出すことが出来る。
【0016】
ここに公開される模範的なPEGとPEG誘導体は、PEG誘導体(例えば、アルキル−PEG、アシル−PEG、アシル−アルキル−PEG、アルキル−アシル−PEG、カルバモイル−PEG、アリル−PEG)とPPG誘導体(例えば、アシル−PPG、アシル−アルキル−PPG、アルキル−アシル−PPG、カルバモイル−PPG、アリル−PPG)であるが、これらに限られるものではない。好ましい実施例では、線状PEG分子の1つの端、あるいは分岐PEG分子主鎖の1つの端で、メチル基に水酸基が共有的に付いている。
b)活性化脱離基
【0017】
本発明で用いる、好ましい活性化脱離基は、糖部分が水溶性高分子へ移行することを著しく妨げないようなものである。従って、好ましい実施例は、


である。
【実施例】
【0018】
更に、本発明の材料、方法、装置について、続く例で説明する。例は説明のために提供するが、請求範囲に記載された発明を制限するためのものではない。
例1
HOAt−PEG−OMe
【0019】
HOAt−mPEGの合成: 250mLの丸底フラスコで、10g(水酸基:10mmol)のPEGメチルエーテル(Aldrich, St. Louis, MO)を120mLのトルエンに溶解させ、次にその高分子溶液は、ディーン・シュタルク トラップを使って2時間、還流させながら共沸的に乾燥させた。高分子溶液は次に、25℃に冷却され、ホスゲン20%のトルエン溶液(1.93M)を15mL(29mmol)が加えられた。反応混合物は、25℃で終夜攪拌され、次に、ロータリーエバポレーター(ウォーターバスの温度は40℃に保持)で蒸発乾燥された。さらに100mLのトルエンを加え、蒸発させて、ホスゲンは残らず取り除かれた。その高分子クロロギ酸エステルに、乾燥トルエン30mL、塩化メチレン10mL、1−ハイドロオキシ−7−アザベンゾトリアゾ−ル(HOAt)(Aldrich, St. Louis, MO)1.7g(14.8mmol)が加えられた。混合物は激しく攪拌された。次に反応フラスコは、氷水浴で冷やされ、トリエチルアミン1.5g(14.9mmol)を徐々に加えられた。即刻トリエチルアミンハイドロクロライドの沈殿が見られた。冷却浴は取り除かれ、25℃で5時間、攪拌は続けられた。次に、トルエン10mLが加えられ、トリエチルアミンハイドロクロライド沈殿を最大にするために、反応混合物は4℃に冷やされた。
【0020】
沈殿はろ過され、ろ液は元の体積の約半分に濃縮された。濃縮溶液は次に、高分子生成物を沈殿させるために、攪拌しながらエーテル60mLに加えられた。40℃に冷却の後、粗製の生成物は、ろ過して回収され、乾燥して45℃で2−プロパノール100mL中に再溶解させた。そして再結晶させた。生成物はろ過で回収され、エーテルで洗浄され、高真空で乾燥された。白色結晶性固体が回収された。
【0021】
この中に記述された例および実施例は、説明目的だけのものであること、そして当業者にはこれらに照らして種々の変形や変化が示唆されるであろうこと、さらにそれらは、この申請の精神とその範囲および添付した請求範囲の範囲内に含まれることが理解される。ここで引用された総ての出版物、特許、そして特許申請は、総て参照することにより本書に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化脱離基に共役的に付加された水溶性高分子から成り、該水溶性高分子は、PEG、PPG、PEG誘導体、及びPPG誘導体の群から選ばれる水溶性高分子であって、該活性化脱離基は、

の群から選ばれる活性化脱離基である活性化水溶性高分子。
【請求項2】
前記水溶性高分子はPEG−OCHである請求項1記載の活性化水溶性高分子。

【公表番号】特表2006−520840(P2006−520840A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507419(P2006−507419)
【出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/008593
【国際公開番号】WO2004/083259
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(500062254)ネオス テクノロジーズ インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】